説明

冷陰極型電子放出装置および映像装置

【課題】内部を高真空に維持することができ、且つ、ゲッターフラッシュによるエミッション特性の劣化を防止する。
【解決手段】真空容器1は、電界放出型冷陰極を備えた電子源構体200が配置された第1基板111、及び第1基板と対向する透明基板110とにより少なくとも形成された第1部屋11と、ゲッター230が配置された第2部屋12と、少なくとも1つの第3部屋13とを備える。第1部屋と、少なくとも1つの第3部屋と、第2部屋とが、隣り合う部屋間の隔壁に設けられた空孔21,22を介してこの順に繋がっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子源として電界放出型冷陰極を備えた冷陰極型電子放出装置に関する。また、本発明はこの冷陰極型電子放出装置を備えた映像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、電界放出型冷陰極を備えた従来の電子源構体200の概略構成を示した部分拡大断面図である(例えば特許文献1、特許文献2参照)。シリコン基板等の絶縁基板201上にストライプ状のエミッタ電極202が形成され、エミッタ電極202上に微小な円錐形状を有する複数の冷陰極(以下、「エミッタ」という)203が形成されている。各エミッタ203を取り囲むような開口が形成された絶縁層204が絶縁基板201及びエミッタ電極202上に形成され、絶縁層204上にストライプ状のゲート電極205が形成されている。ゲート電極205には、各エミッタ203に対応する位置に開口205aが形成されている。上方から見たとき、開口205aの開口形状は半径がサブミクロン程度の略円形であり、その中心にエミッタ203の先端が位置している。エミッタ電極202に対してゲート電極205に相対的に高電位を印加すると、エミッタ203の先端に電界が集中し、エミッタ203の先端から電子が放出される。
【0003】
このような電子源構体200は例えば通常の半導体製造工程を利用して以下のようにして製造される(例えば特許文献2参照)。シリコン基板の表面を熱酸化して、その表面にSiO2からなる熱酸化膜を形成する。この熱酸化膜上に無機レジスト膜及び有機レジスト膜を順に形成し、有機レジスト膜を円形にパターニングして無機レジスト膜をエッチングする。そして、無機レジスト膜をマスクとして熱酸化膜を円形にエッチングする。次いで、円形の熱酸化膜をマスクとしてシリコン基板をエッチングして、熱酸化膜の下に略円錐台形状を形成する。このエッチングは、SF6+O2ガスを用いた反応性イオンエッチング、あるいは、KOH水溶液等を用いた異方性ウェットエッチングなどにより行うことが出来る。次いで、シリコン基板を再度熱酸化し、その表面にSiO2からなる熱酸化膜を形成する。次いで、絶縁層とゲート電極となる金属層(Nb、シリコン)とを順に堆積する。最後に、BHFを用いたリフトオフ法により熱酸化膜を除去する。かくして電子源構体200が得られる。
【0004】
図6は、従来の電子源構体200の概略構成を示した平面図である。絶縁基板201上に、複数のストライプ状のエミッタ電極202がX軸と平行に形成され、複数のストライプ状のゲート電極205がX軸と直交するY軸と平行に形成されている。エミッタ電極202上には絶縁層204及びゲート電極205が形成されるため、実際にはエミッタ電極202は見えないが、図6ではエミッタ電極202及びゲート電極205の配置が分かるようにこれらを透視して描いている。複数のエミッタ電極202と複数のゲート電極205との交点がマトリクス状(または格子点状)に配置され、各交点上の円形の領域内に数百から数千のエミッタ203からなるエミッタ群207が形成されている。
【0005】
各エミッタ電極202の一端にはエミッタ電極パッド212が形成され、各ゲート電極205の一端にはゲート電極パッド215が形成されている。エミッタ電極パッド212及びゲート電極パッド215は、絶縁基板201のエミッタ203等が形成された側の面に形成されている。互いに隣り合うエミッタ電極202同士及び互いに隣り合うゲート電極205同士は、絶縁基板201上にて分離され絶縁されている。
【0006】
複数のエミッタ電極202のうちの1つにエミッタ電極パッド212を介して負電位を印加し、複数のゲート電極205の1つにゲート電極パッド215を介して正電位を印加する。負電位が印加されたエミッタ電極202と正電位が印加されたゲート電極205との交点に位置するエミッタ群207の各エミッタから電子が放出される。負電位を印加するエミッタ電極202と正電位を印加するゲート電極205とを時間的に順次切り替えることにより、電子を放出するエミッタ群207をいわゆる点順次走査にて順次切り替える。このようにして、電子源構体200をマトリクス駆動することができる。
【0007】
このような電子源構体200を備えた冷陰極型電子放出装置は例えば映像装置として利用される。
【0008】
映像装置の一例として平面ディスプレイ(Field Emission Display)が知られている(例えば特許文献2参照)。真空容器内に電子源構体200を配置し、電子源構体200に対向する透明基板上に、アノード電極と蛍光体層とを順に形成する。電子源構体200のゲート電極205を順次走査しながら、各エミッタ電極202に画像信号を供給する。一方、アノード電極にはアノード電圧を印加しておく。これによりエミッタ群207から放出された電子が蛍光体層に衝突して蛍光体を発光させることで、表示動作が行われる。
【0009】
また、映像装置の別の例として撮像装置が知られている(例えば特許文献1参照)。真空容器内に電子源構体200を配置し、電子源構体200に対向する透明基板上に、アノード電極と光電変換膜とを順に形成する。負電位を印加するエミッタ電極202と正電位を印加するゲート電極205とを時間的に順次切り替えることにより、電子を放出するエミッタ群207を順次切り替える。一方、アノード電極にはアノード電圧を印加しておく。これにより、光電変換膜が電子で走査され、光電変化膜に蓄積された電荷が時系列信号として読み出されることで、撮像動作が行われる。
【0010】
以上の冷陰極型電子放出装置では、エミッタ203から電子を安定的に効率良く放出させるために、電子源構体200は真空容器内に配置され真空環境で用いられる。例えば、上記の映像装置では、電子源構体200とこれに対向するアノード電極が形成される透明基板との間の微小な間隔の空間は高真空に維持される必要がある。そのために、ゲッターが用いられる。ゲッターは電子源構体200が配置された部屋と繋がった部屋内に配置される(例えば特許文献1、特許文献3、特許文献4参照)。
【0011】
真空容器内の排気(排気工程)を行った後、真空容器を封止する。次いで、ゲッターを外部から高周波電磁誘導加熱又は通電加熱してゲッター材料を蒸発させ(ゲッターフラッシュ)、ゲッターが配置された部屋の壁面にゲッター材料からなる蒸着膜(以下、「ゲッターミラー」という)を形成する。ゲッターミラーは、真空容器内に残存しているガスや、その後、真空容器内の各種電子材料や壁面から放出されるガスを吸着して真空容器内を高真空に維持する。ゲッターミラーの形成面積が大きいほどガスの吸着能力が向上するので、通常、ゲッターミラーはゲッターが配置された部屋の壁面に広範囲にわたって形成される。
【特許文献1】特開2000−48743号公報
【特許文献2】特開平9−274845号公報
【特許文献3】特開平11−213920号公報
【特許文献4】特許第3492299号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、真空容器内において、ゲッターが配置された部屋と、電子源構体が配置された部屋とが1つの空孔のみを通じて繋がっている場合、ゲッターフラッシュ時に蒸発したゲッター材料が空孔を通って電子源構体が配置された部屋へ移動し、エミッタに付着することがある。エミッタにゲッター材料が付着すると、所定の電圧を印加してもエミッタから電子放出がされなかったり、電子放出が不安定になったりするなどのエミッション特性の劣化が生じることがある。
【0013】
本発明は、上記の従来の問題を解決し、真空容器内を高真空に維持することができ、且つ、ゲッターフラッシュによってエミッション特性の劣化が生じない冷陰極型電界放出装置及び映像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の冷陰極型電界放出装置は、電界放出型冷陰極を備えた電子源構体が配置された第1基板、及び前記第1基板と対向する透明基板とにより形成された第1部屋と、ゲッターが配置された第2部屋と、少なくとも1つの第3部屋とを真空容器内に備える。前記第1部屋と、前記少なくとも1つの第3部屋と、前記第2部屋とが、隣り合う部屋間の隔壁に設けられた空孔を介してこの順に繋がっている。
【0015】
本発明の映像装置は、上記の本発明の冷陰極型電界放出装置を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゲッターミラーの形成面積を増やすことができるので真空容器内を高真空に維持することができ、また、ゲッターフラッシュによってエミッション特性が劣化するのを抑制できる。従って、高品位で高信頼性の冷陰極型電界放出装置及び映像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷陰極型電子放出装置を用いた撮像装置の概略構成を示した側面断面図である。
【0019】
図1に示すように、この撮像装置は、上から順に、第1部屋11、第3部屋13、第2部屋12を備えた真空容器1を有する。円板状の透明基板(フェースプレート)110の下面に、インジウムなどの封着材料101を介して円筒状の第1スペーサ121の上端が気密に接合され、第1スペーサ121の下端に円板状の第1ベース基板111の上面がフリットガラス102を介して気密に接合されている。第1ベース基板111の下面側には、円筒状の第3スペーサ123、円板状の第2ベース基板112、円筒状の第2スペーサ122、円板状の最終ベース基板119が、この順にそれぞれフリットガラス102を介して気密に接合されている。透明基板110と第1スペーサ121と第1ベース基板111とで第1部屋11が形成され、第1ベース基板111と第3スペーサ123と第2ベース基板112とで第3部屋13が形成され、第2ベース基板112と第2スペーサ122と最終ベース基板119とで第2部屋12が形成される。透明基板110、第1ベース基板111、第2ベース基板112、最終ベース基板119は互いに平行である。1aは真空容器1の中心軸であり、円板状の透明基板110、第1ベース基板111、第2ベース基板112、及び最終ベース基板119の中心を通り、且つ、円筒状の第1スペーサ121、第2スペーサ122、及び第3スペーサ123の中心軸と一致する。
【0020】
第1ベース基板111の透明基板110側の面に、電界放出型冷陰極を備えた電子源構体が配置されている。本発明において使用可能な電子源構体としては特に制限はなく、公知の任意の電子源構体を適宜選択して使用することができる。ここでは、図5及び図6に示した従来の電子源構体200を使用する場合を説明する。第1ベース基板111上に電子源構体200の絶縁基板201が固定される。電子源構体200のエミッタ電極202及びゲート電極205に所定の電圧を印加するために、第1ベース基板111上に所定パターンの複数の配線が形成されている。複数の配線の真空容器内の各端には電極パッドが形成されており、これらは絶縁基板201上に形成されたエミッタ電極パッド212及びゲート電極パッド215とワイヤボンディングにより接続される。複数の配線の真空容器外の端は図示しないFPC(フレキシブル・プリンティッド・サーキット)を介して外部駆動回路と接続される。第1ベース基板111としては、一実施例ではコーニング社製の1737を用いた。但し、もちろんこれに限定されず、例えば青板ガラスと呼ばれるガラス材を用いることができる。
【0021】
透明基板110の第1ベース基板111側の面には、スパッタリングや真空蒸着法などによって形成された、アノード電極及び光電変換膜を含む光電変換ターゲット220が設けられている。一実施例では、透明基板110上に、アノード電極として約10nm厚さのSnを含む光透過性のIn23膜をスパッタリング法により形成した。この上に、光電変換膜として、厚さ約15nmのCeO2からなる正孔注入阻止層と、厚さ約5μmの非結晶Seからなる光導電膜とを真空蒸着法により形成し、更に、厚さ約100nmのSb23多孔質膜からなる電子ビームランディング層を低Arガス雰囲気で蒸着法により形成した。アノード電極には、透明基板110を貫通する棒状電極(図示せず)を介して真空容器外の電源装置に接続されて、所定のアノード電圧が印加される。
【0022】
第2部屋12内には、ゲッター230が一対のリード231,232により支持されて配置されている。ゲッター230に接続された一対のリード231,232はフリットガラス102を貫通して真空容器外に導出されている。
【0023】
第1ベース基板111は、互いに隣り合う第1部屋11と第3部屋13との間に設けられており、両者を隔てる隔壁として機能する。この第1ベース基板111には第1空孔21が形成されており、この第1空孔21を介して第1部屋11と第3部屋13とが繋がっている。第2ベース基板112は、互いに隣り合う第3部屋13と第2部屋12との間に設けられており、両者を隔てる隔壁として機能する。この第2ベース基板112には第2空孔22が形成されており、この第2空孔22を介して第3部屋13と第2部屋12とが繋がっている。最終ベース基板119には排気孔29が形成されており、排気孔29に排気管240が接続されている。
【0024】
このような真空容器1内は以下の手順を経て真空にされる。排気管240の開放端を油拡散ポンプ等の真空ポンプに接続し、真空容器1内を排気し(排気工程)、真空容器1内が所定の真空度に達すると排気管240の一部をヒータ等で局所的に加熱し、排気管240を溶融させ封止切りする(チップオフ工程)。次いで、一対のリード231,232を介してゲッター230に通電して加熱し、ゲッター230の材料を蒸発させて、第3部屋13を構成する壁面全面に蒸着させてゲッターミラーを形成する(ゲッターフラッシュ工程)。ゲッターミラーは、真空容器1内に残存しているガスや、その後、真空容器1内の各種電子材料や壁面から放出されるガスを吸着する。
【0025】
上述のように、第1部屋11と第3部屋13とが第1空孔21を介して繋がっており、第3部屋13と第2部屋12とが第2空孔22を介して繋がっているので、第1,第2,第3部屋11,12,13は均一な真空度に維持される。また、撮像装置を動作させることにより、第1部屋11内の電子源構体200や光電変換ターゲット220等から発生したガスは第1空孔21、第3部屋13、第2空孔22を順に通って第2部屋12に移動してゲッターミラーに吸着される。ゲッターミラーは第2部屋12を形成する壁面全面に広範囲に形成することができ、第2部屋12の寸法(容積等)を適切に設定してゲッターミラーの面積を増やすこともできる。従って、高いガス吸着能力を有するゲッターミラーを形成できる。よって、真空容器1内は常に高真空に維持されるので、エミッション特性が長期に安定する。
【0026】
また、ゲッター230が配置された第2部屋12と、電子源構体200及び光電変換ターゲット220が配置された第1部屋11との間に第3部屋13が設けられ、隣り合う部屋間が隔壁に設けられた空孔21,22を介して繋がっているので、ゲッターフラッシュ工程時に第2部屋12内で発生したゲッター230の材料の蒸気の飛散に対して、第3部屋13は緩衝層として機能する。従って、第2部屋12内で発生したゲッター230の材料の蒸気が第1部屋11にまで飛散して、電子源構体200のエミッタ等に付着するのを防止できる。その結果、ゲッターフラッシュによってエミッション特性が劣化することがない。
【0027】
図2は、図1の撮像装置の空孔21,22及びゲッター230の平面配置を透視して示した透視平面図である。図2に示すように、第3部屋13を形成する第1ベース基板111及び第2ベース基板112にそれぞれ形成された空孔21と空孔22とは互いに対向して配置されていないことが好ましい。「2つの空孔が対向して配置されている」とは、一方の空孔の開口方向の延長線上に他方の空孔が存在し、その逆の関係も成立することをいう。空孔21と空孔22とをこのように上下に重ならない位置に形成することにより、ゲッターフラッシュ工程時に第2部屋12内で発生したゲッター230の材料の蒸気が第1部屋11にまで飛散するのを更に抑制することができる。
【0028】
特に、図2に示すように平面視したときに、空孔21と空孔22とが真空容器1の中心軸1aに対してなす角度θが170度以上190度以下であることが好ましい(本実施の形態1ではθ=180度である)。これにより、ゲッターフラッシュ工程時に第2部屋12内で発生したゲッター230の材料の蒸気が第1部屋11にまで飛散するのを一層抑制することができる。
【0029】
また、ゲッター230が配置された第2部屋12とこれに隣接する第3部屋13との間の第2ベース基板112に形成された空孔22がゲッター230に対向して配置されていないことが好ましい。これにより、ゲッターフラッシュ工程時に第2部屋12内で発生したゲッター230の材料の蒸気が空孔22を通過する可能性を低減できるので、該蒸気が第1部屋11にまで飛散するのを更に抑制することができる。
【0030】
以上のように本実施の形態1によれば、ゲッターミラーの形成面積を増やすことができるので真空容器1内を高真空に維持することができ、また、ゲッターフラッシュによってエミッション特性が劣化するのを抑制できる。従って、高品位で高信頼性の撮像装置を提供することができる。
【0031】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る冷陰極型電子放出装置を用いた撮像装置の概略構成を示した側面断面図である。図3において図1と同一の機能、作用を有する部材には同一の符号を付して、それらについての詳細な説明を省略する。以下、実施の形態1と相違する点を中心に本実施の形態2を説明する。
【0032】
図3に示すように、本実施の形態の撮像装置の真空容器2は、第1部屋11と第2部屋12との間に2つの第3部屋13a,13bを有する点で、実施の形態1の真空容器1と異なる。
【0033】
円板状の透明基板110の下面に、インジウムなどの封着材料101を介して円筒状の第1スペーサ121の上端が気密に接合され、第1スペーサ121の下端に円板状の第1ベース基板111の上面がフリットガラス102を介して気密に接合されている。第1ベース基板111の下面側には、円筒状の第3スペーサ123、円板状の第3ベース基板113、円筒状の第4スペーサ124、円板状の第2ベース基板112、円筒状の第2スペーサ122、円板状の最終ベース基板119が、この順にそれぞれフリットガラス102を介して気密に接合されている。透明基板110と第1スペーサ121と第1ベース基板111とで第1部屋11が形成され、第1ベース基板111と第3スペーサ123と第3ベース基板113とで第3部屋13aが形成され、第3ベース基板113と第4スペーサ124と第2ベース基板112とで第3部屋13bが形成され、第2ベース基板112と第2スペーサ122と最終ベース基板119とで第2部屋が形成される。透明基板110、第1ベース基板111、第2ベース基板112、第3ベース基板113、最終ベース基板119は互いに平行である。2aは真空容器2の中心軸であり、円板状の透明基板110、第1ベース基板111、第2ベース基板112、第3ベース基板113、及び最終ベース基板119の中心を通り、且つ、円筒状の第1スペーサ121、第2スペーサ122、第3スペーサ123、及び第4スペーサ124の中心軸と一致する。
【0034】
第1ベース基板111は、互いに隣り合う第1部屋11と第3部屋13aとの間に設けられており、両者を隔てる隔壁として機能する。この第1ベース基板111には第1空孔21が形成されており、この第1空孔21を介して第1部屋11と第3部屋13aとが繋がっている。第3ベース基板113は、互いに隣り合う第3部屋13aと第3部屋13bとの間に設けられており、両者を隔てる隔壁として機能する。この第3ベース基板113には第3空孔23が形成されており、この第3空孔23を介して第3部屋13aと第3部屋13bとが繋がっている。第2ベース基板112は、互いに隣り合う第3部屋13bと第2部屋12との間に設けられており、両者を隔てる隔壁として機能する。この第2ベース基板112には第2空孔22が形成されており、この第2空孔22を介して第3部屋13bと第2部屋12とが繋がっている。最終ベース基板119には排気孔29が形成されており、排気孔29に排気管240が接続されている。
【0035】
上述のように、第1部屋11と第3部屋13aとが第1空孔21を介して繋がっており、第3部屋13aと第3部屋13bとが第3空孔23を介して繋がっており、第3部屋13bと第2部屋12とが第2空孔22を介して繋がっているので、第1,第2,第3部屋11,12,13a,13bは均一な真空度に維持される。また、撮像装置を動作させることにより、第1部屋11内の電子源構体200や光電変換ターゲット220等から発生したガスは第1空孔21、第3部屋13a,13b、第2空孔22を順に通って第2部屋12に移動してゲッターミラーに吸着される。ゲッターミラーは第2部屋12を形成する壁面全面に広範囲に形成することができ、第2部屋12の寸法(容積等)を適切に設定してゲッターミラーの面積を増やすこともできる。従って、高いガス吸着能力を有するゲッターミラーを形成できる。よって、実施の形態1と同様に、真空容器2内は常に高真空に維持されるので、エミッション特性が長期に安定する。
【0036】
また、ゲッター230が配置された第2部屋12と、電子源構体200及び光電変換ターゲット220が配置された第1部屋11との間に2つの第3部屋13a,13bが設けられ、隣り合う部屋間が隔壁に設けられた空孔21,22,23を介して繋がっているので、ゲッターフラッシュ工程時に第2部屋12内で発生したゲッター230の材料の蒸気の飛散に対して、2つの第3部屋13a,13bは緩衝層として機能する。実施の形態1に比べて緩衝層が多いので、第2部屋12内で発生したゲッター230の材料の蒸気が第1部屋11にまで飛散して、電子源構体200のエミッタ等に付着するのを一層防止できる。その結果、ゲッターフラッシュによってエミッション特性が劣化することがない。
【0037】
図4は、図3の撮像装置の空孔21,22,23及びゲッター230の平面配置を透視して示した透視平面図である。図4に示すように、第3部屋13aを形成する第1ベース基板111及び第3ベース基板113にそれぞれ形成された空孔21と空孔23とは互いに対向して配置されていないことが好ましい。また、第3部屋13bを形成する第3ベース基板113及び第2ベース基板112にそれぞれ形成された空孔23と空孔22とは互いに対向して配置されていないことが好ましい。空孔21と空孔23、空孔23と空孔22とを、それぞれこのように上下に重ならない位置に形成することにより、ゲッターフラッシュ工程時に第2部屋12内で発生したゲッター230の材料の蒸気が第1部屋11にまで飛散するのを更に抑制することができる。
【0038】
本実施の形態では、図4に示すように平面視したときに、空孔21と空孔23とが真空容器2の中心軸2aに対してなす角度θ1及び空孔23と空孔22とが真空容器2の中心軸2aに対してなす角度θ2はいずれも120度である。但し、実施の形態1で説明したのと同様に、角度θ1,θ2がいずれも170度以上190度以下であることが好ましい(この場合、空孔21と空孔22とが上下方向にほぼ重なり合う)。これにより、ゲッターフラッシュ工程時に第2部屋12内で発生したゲッター230の材料の蒸気が第1部屋11にまで飛散するのを一層抑制することができる。
【0039】
以上のように本実施の形態2によれば、ゲッターミラーの形成面積を増やすことができるので真空容器1内を高真空に維持することができ、また、第1部屋11と第2部屋12との間に2つの第3部屋13a,13bが設けられているので、ゲッターフラッシュによってエミッション特性が劣化するのを実施の形態1よりも更に抑制できる。従って、高品位で高信頼性の撮像装置を提供することができる。
【0040】
第1部屋11と第2部屋12との間に第3部屋を、実施の形態1では1つ設け、実施の形態2では2つ設ける例を示したが、第3部屋の数はこれに限定されず、3以上であっても良い。第3部屋の数にかかわらず、第1部屋11と、少なくとも1つの第3部屋と、第2部屋12とが、隣り合う部屋間の隔壁に設けられた空孔を介してこの順に繋がっていれば、ゲッターフラッシュによってエミッション特性が劣化するのを抑制することができる。
【0041】
実施の形態1,2では、ゲッターとして、一対のリード231,232を介して通電することで加熱される通電型のゲッター230を用いる場合を示しているが、本発明はこれに限定されず、例えば真空容器外から高周波電磁誘導等の方法により加熱されるゲッターを用いることもできる。
【0042】
実施の形態1,2では、本発明の冷陰極型電子放出装置を撮像装置として使用する場合を説明したが、本発明の冷陰極型電子放出装置の用途はこれに限定されず、例えば表示装置(平面ディスプレイ)として使用することも可能である。この場合、光電変換ターゲット220に代えて、第1ベース基板111上に、光透過性のアノード電極と、3色に発光する蛍光体が規則正しく配列された蛍光体層とを順に形成すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の利用分野は特に制限はなく、高品位で高信頼性の撮像装置や表示装置として広範囲に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る冷陰極型電子放出装置を用いた撮像装置の概略構成を示した側面断面図である。
【図2】図2は、図1の撮像装置の空孔及びゲッターの平面配置を示した透視平面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2に係る冷陰極型電子放出装置を用いた撮像装置の概略構成を示した側面断面図である。
【図4】図4は、図3の撮像装置の空孔及びゲッターの平面配置を示した透視平面図である。
【図5】図5は、電界放出型冷陰極を備えた従来の電子源構体の概略構成を示した部分拡大断面図である。
【図6】図6は、電界放出型冷陰極を備えた従来の電子源構体の概略構成を示した平面図である。
【符号の説明】
【0045】
1,2 真空容器
1a,2a 真空容器の中心軸
11 第1部屋
12 第2部屋
13,13a,13b 第3部屋
21 第1空孔
22 第2空孔
23 第3空孔
29 排気孔
101 封着材料
102 フリットガラス
110 透明基板
111 第1ベース基板
112 第2ベース基板
113 第3ベース基板
119 最終ベース基板
121 第1スペーサ
122 第2スペーサ
123 第3スペーサ
124 第4スペーサ
200 電子源構体
201 絶縁基板
202 エミッタ電極
203 エミッタ
204 絶縁層
205 ゲート電極
205a ゲート電極の開口
207 エミッタ群
212 エミッタ電極パッド
215 ゲート電極パッド
220 光電変換ターゲット
230 ゲッター
231,232 リード
240 排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界放出型冷陰極を備えた電子源構体が配置された第1基板、及び前記第1基板と対向する透明基板とにより形成された第1部屋と、ゲッターが配置された第2部屋と、少なくとも1つの第3部屋とを真空容器内に備えた冷陰極型電子放出装置であって、
前記第1部屋と、前記少なくとも1つの第3部屋と、前記第2部屋とが、隣り合う部屋間の隔壁に設けられた空孔を介してこの順に繋がっていることを特徴とする冷陰極型電子放出装置。
【請求項2】
前記第3部屋を形成する2つの前記隔壁にそれぞれ形成された2つの前記空孔は互いに対向して配置されていない請求項1に記載の冷陰極型電子放出装置。
【請求項3】
前記第3部屋を形成する前記2つの隔壁にそれぞれ形成された前記2つの空孔が前記真空容器の中心軸に対してなす角度が170度以上190度以下である請求項2に記載の冷陰極型電子放出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の冷陰極型電子放出装置を備えた映像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−59536(P2009−59536A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224549(P2007−224549)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(503217783)MT映像ディスプレイ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】