説明

冷陰極用電極部材および冷陰極放電ランプ

【課題】軟質ガラスとの気密封着性が確保できるとともに水銀との反応を抑制して、封着部のリーク発生を防止できる安価な冷陰極電極部材およびこの電極部材を用いた冷陰極放電ランプ置を提供する。
【解決手段】冷陰極用電極部材5は、ニッケル成分の含有率が50〜52%である鉄・ニッケルを主成分とする合金からなる芯線10を有し、銅を含有しない封着用リード線7と、封着用リード線7の一端に接続された冷陰極8と、封着用リード線7の他端に接続された外部リード線9とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極用電極部材およびこの電極部材を用いた冷陰極放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビやパソコンなどの液晶表示装置のバックライトあるいはファクシミリなどのOA機器の光源として、寿命が長い冷陰極蛍光ランプが多く使用されている。この冷陰極蛍光ランプは、例えば内面に蛍光体膜が形成されたホウケイ酸ガラスなどの硬質ガラスからなるガラス管バルブの両端部にカップ状の冷陰極を接続したモリブデン(Mo)、タングステン(W)やコバール(鉄(Fe)・ニッケル(Ni)・コバルト・(Co))などからなる封着用線材を気密に封着し、バルブ内に水銀を含む放電媒体を封入して構成されている。
【0003】
このような構成の冷陰極蛍光ランプは、機器の小形化や高性能化に対応できる。しかし、ガラス管バルブの材質には硬質ガラスが用いられており、これに伴ってバルブ端部に気密封着される封着用線材がモリブデン(Mo)、タングステン(W)やコバール(鉄(Fe)・ニッケル(Ni)・コバルト・(Co))などが用いられているので、材料費が高価であるなど、硬質バルブを用いた場合は他の部材や加工性を含めコストアップを招いていた。
【0004】
そこで、硬質ガラスに代えて安価な軟質ガラスからなるガラス管バルブを用いて冷陰極蛍光ランプを形成することが検討されている。例えば、ガラス管バルブをソーダライムガラスなどの軟質ガラスで形成した場合には、このガラスと膨張率などが近似したジュメット線や鉄(Fe)・ニッケル(Ni)合金線などが封着用線材として用いることができる。
【特許文献1】特許第3423729号公報(特開平5−121051号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ジュメット線を用いた冷陰極蛍光ランプは、封着用線材と封着部ガラスとの間に剥離が起こり、封着用線材部分からリークが生じてランプの短寿命を招くことがあった。
【0006】
本発明は、軟質ガラスとの気密封着性が確保できるとともに水銀との反応を抑制して、封着部のリーク発生を防止できる安価な冷陰極電極部材およびこの電極部材を用いた冷陰極放電ランプ置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の冷陰極用電極部材の発明は、ニッケル成分の含有率が50〜52%である鉄・ニッケルを主成分とする合金からなる芯線を有し、銅を含有しない封着用リード線と;この封着用リード線の一端に接続された冷陰極と;前記封着用リード線の他端に接続された外部リード線と;を具備していることを特徴とする。
【0008】
ジュメット線は、鉄(Fe)・ニッケル(Ni)合金からなる芯線の表面に銅(Cu)が被覆されており、冷陰極蛍光ランプの封着用線材として用いた場合、軟質ガラスとの気密封着性はよいがバルブ内に銅層があると放電媒体として封入した水銀と反応してアマルガムを生成し、バルブ内端部の封着用線材において生成したアマルガムが封着部内に浸透することによってリークが発生していたことが判明した。
【0009】
封着用リード線は、ニッケル(Ni)を50〜52%含有しているものであり、例えば、線膨脹係数が94〜104×10−6/℃の鉄(Fe)・ニッケル(Ni)合金、線膨脹係数が99〜106×10−6/℃の鉄(Fe)・ニッケル(Ni)・クロム(Cr)の芯線の表面をCr酸化層で被覆したもの、線膨脹係数が110〜133×10−6/℃の鉄(Fe)・ニッケル(Ni)合金にニッケル(Ni)を厚く被覆したものなどとすることができる。
【0010】
ニッケル(Ni)を50〜52%とした鉄・ニッケルを主成分とする合金からなる封着用リード線は、冷陰極との溶接が良好であるとともに、線膨脹係数が上記範囲内である軟質ガラスとの気密封着性にすぐれている。
【0011】
本発明によれば、封着リード線は、銅を含有しないので、冷陰極蛍光ランプの封着用リード線として用いた場合に、バルブ内の水銀が銅の化合物を生成することがなく、封着リード線部分にリークが生じにくい。
【0012】
請求項2に記載の冷陰極用電極部材の発明は、請求項1記載の冷陰極用電極部材において、封着用リード線および冷陰極の間に銅を含有しない介在物が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、介在物は、銅を含有しないので、冷陰極蛍光ランプの封着用リード線として用いた場合に、バルブ内の水銀が銅の化合物を生成することがなく、封着リード線部分からリークが生じにくい。
【0014】
請求項3に記載の冷陰極放電ランプの発明は、軟質ガラス製の管形バルブと、このバルブの両端にそれぞれ封着用リード線が気密に封着された請求項1または2記載の冷陰極用電極部材と、上記バルブ内に封入された放電媒体とを具備していることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、冷陰極用電極部材の封着用リード線が銅を含有しなく、線膨脹係数が軟質ガラスに近似する冷陰極用電極部材からなるので、気密封着性に優れ、封着リード線部分からリークが生じにくい軟質ガラス製のバルブを有する冷陰極放電ランプが提供される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、冷陰極用電極部材の封着リード線が銅を含有しないので、冷陰極蛍光ランプのバルブ内に封入された水銀と銅の化合物に起因する封着リード線部分のリークの発生が防止できる。
【0017】
請求項2の発明によれば、冷陰極用電極部材は、封着リード線に加え、封着リード線および冷陰極の間に介在する介在物が銅を含有しないので、冷陰極蛍光ランプのバルブ内に封入された水銀と銅の化合物に起因する封着リード線部分のリークの発生が防止できる。
【0018】
請求項3の発明によれば、封着用リード線が銅を含有しなく、線膨脹係数が軟質ガラスに近似する冷陰極用電極部材からなるので、安価であって気密封着性に優れた軟質ガラス製のバルブを有する冷陰極放電ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0020】
図1ないし図3は、本発明の第1の実施形態を示し、図1は冷陰極蛍光ランプの一部切り欠き断面図、図2は図1の冷陰極蛍光ランプに用いられている冷陰極用電極部材を示す正面図、図3は図2中に示す冷陰極用電極部材を構成する封着用リード線の拡大横断面図である。
【0021】
図1に示す冷陰極蛍光ランプ1は、例えば定格消費電力が5Wである。直管形をなす管形バルブとしてのガラスバルブ2は、外径が約4mm、内径が約3mm、長さが約1000mmのソーダライムガラス(膨張率係数約96×10-6/℃)などの軟質ガラスからなっている。そして、ガラス管バルブ2の内面には、例えば青色、緑色、赤色に発光領域を有する蛍光体を混合塗布した3波長形蛍光体膜3が形成されている。
【0022】
また、このガラス管バルブ2の両端には、ソーダライムガラスからなるビード4を介し後述する冷陰極用電極部材5を封止した封着部6,6が形成している。ガラス管バルブ2内には、放電媒体として、水銀(Hg)と、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)やネオン(Ne)などの希ガスが約8kPa(パスカル)封入されている。
【0023】
冷陰極電極部材5は、図2および図3に示すようにソーダライムガラスと気密封着性の高い例えば外径が約0.8mm、長さが約5mmの封着用リード線7と、この封着用リード線7の一端に接続された例えば板厚が約0.2mmのニッケル(Ni)薄板を用いプレス加工によって外径が約1.7mm、長さが約5.0mmの有底円筒状に成形された冷陰極としてのカップ状電極8と、封着用リード線7の他端に接続された例えば線径が約0.8mmの鉄(Fe)・ニッケル(Ni)合金からなる外部リード線9とにより構成されている。
【0024】
封着用リード線7は、図3に示すように、例えば鉄(Fe)約48質量%・ニッケル(Ni)約52質量%の合金(膨張率係数約96×10-6/℃)からなる外径が約0.8mmの芯線10の表面に、めっきなどの手段でクロム(Cr)を約8μmの厚さ被覆し、クロム(Cr)層11を形成して、その後、約900度で熱処理を行ったものを用いている。あるいは、鉄(Fe)約48質量%・ニッケル(Ni)約52質量%の合金(膨張率係数約96×10-6/℃)を用いている。
【0025】
そして、冷陰極用電極部材5を構成する封着用リード線7と、カップ状電極8との接続は、封着用リード線7の一方の先端面と、カップ状電極8の筒底外面とを対面当接し、レーザ光により熱を加えて当接面で両者を融合した溶接をしている。
【0026】
また、封着用リード線7と鉄(Fe)・ニッケル(Ni)合金線からなる外部リード線9との接続も、両部材7,9の端面を当接してレーザ光により溶接している。
【0027】
上記の各溶接部は、融点の低い金属側が多く溶けるが融合し、この溶接した接続部が冷めると、瘤状の塊12,13が形成された冷陰極電極部材5が得られる。なお、封着用電極部材5は、封着用リード線7と、カップ状電極8との接続、封着用リード線7と外部リード線9との接続作業の順序は問わないし、これら3者を同時に接続するようにしてもよい。
【0028】
また、図2に示すように、冷陰極用電極部材5の封着用リード線7の外表面に、ガラス管バルブ2と線膨張係数が近いか、またはガラス管バルブ2と封着用リード線7との中間の線膨脹係数を有するガラス材料、例えばソーダライムガラスからなるガラス層ないしはビード(塊)4を気密体(層)として形成しておいてもよい。
【0029】
そして、冷陰極電極部材5は、蛍光体膜3を形成したガラス管バルブ2の端部内のほぼ中心軸に沿ってカップ状電極8および封着用リード線7を配設して、封着用リード線7が対応しているガラス管バルブ2部分をガスバーナーなどで外部から加熱し、ガラス管バルブ2のガラスおよびビード4を軟化溶融させ、ガラスバルブ2側のガラスを縮径して、ビード4の表面と融合したガラス管バルブ2との封着を行う。このとき、封着用リード線7は、ガラスと気密封着されるが、外部リード線9の基部は、ガラスと気密には封着されていないものである。
【0030】
この後、ガラス管バルブ2内は、図示しない排気管を介し排気し、内部に希ガスおよび水銀(Hg)からなる放電媒体を封入して排気管が封切され、必要に応じてガラス管バルブ2の端部に口金を接合して、冷陰極蛍光ランプ1が完成される。
【0031】
冷陰極蛍光ランプ1は、ソーダライムガラスからなるガラス管バルブ2と、例えば鉄(Fe)・ニッケル(Ni)・クロム(Cr)合金とした封着用リード線7とは、封着時、両者の線膨脹係数が近似しているので、封着時、封着用リード線7とガラスとの馴染みがよく、封着後のリーク発生を低減できる。
【0032】
また、ガラスバルブ2内において、封着部6とカップ状電極8との間に露出している封着用リード線7は、例えば鉄(Fe)・ニッケル(Ni)・クロム(Cr)合金(GNC)であり、銅(Cu)を含有しないので、ガラス管バルブ2内に封入した水銀との反応によるアマルガム生成に起因する封着部6を気密貫通する封着用リード線7のガラスとの剥離が起こらず、これにより、封着部6にリークを生じることがなく、冷陰極放電ランプ1の短寿命を防止できる。
【0033】
さらに、冷陰極としてカップ状の電極8を用いているので、高いホローカソード効果を呈する発光特性および寿命特性の向上した冷陰極蛍光ランプ1を提供することができる。
【0034】
したがって、冷陰極用電極部材5およびこの冷陰極用電極部材5を用いた冷陰極蛍光ランプ1は、ガラス管バルブ2の材質を硬質ガラスから軟質ガラスに代えるとともに、ニッケル成分の含有率が50〜52%である鉄(Fe)・ニッケル(Ni)を主成分とする合金からなる芯線10を有し、銅(Cu)を含まない封着用リード線7を封着線とすることによって、ガラス管バルブ2内に封入した水銀(Hg)とのアマルガム生成による冷陰極ランプ1の短寿命を防止することができ、コストの低減を図ることができる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0036】
図4は、本発明の第2の実施形態を示す冷陰極用電極部材の概略正面図である。なお、図2および図3と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0037】
図4に示す冷陰極用電極部材14は、封着用リード線7に、例えばニッケル(Ni)棒(線)からなる冷陰極15が第1の実施の形態と同様な手段で溶接接続して構成されている。封着用リード線7の他端に接続された外部リード線9は、例えば鉄(Fe)・ニッケル(Ni)合金からなっている。
【0038】
冷陰極電極部材14は、ガラスバルブ2内に延在する封着用リード線7が銅(Cu)を含有しないので、ガラス管バルブ2内に封入された水銀(Hg)と反応することがなく、封着用リード線7に起因するリークがなく、これにより、冷陰極蛍光ランプ1の短寿命の発生を低減することができる。
【0039】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0040】
図5は、本発明の第3の実施形態を示す冷陰極用電極部材の概略正面図である。なお、図2と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0041】
図5に示す冷陰極用電極部材16は、封着用リード線7および冷陰極8の間に銅(Cu)を含まない介在物17が設けられたものである。介在物17は、冷陰極8の底面より小さい例えばニッケル(Ni)板に形成され、第1の実施の形態と同様な手段で封着用リード線7を溶接接続している。
【0042】
冷陰極電極部材15は、ガラス管バルブ2内に延在する封着用リード線7および介在物17が銅(Cu)を含有しないので、ガラス管バルブ2に封入された水銀(Hg)と反応することがなく、封着用リード線7に起因するリークがなく、これにより、冷陰極蛍光ランプ1の短寿命の発生を低減することができる。
【0043】
なお、上記実施の形態において、ガラス管バルブ2の材質は、封着用リード線7と線膨脹係数が近似しているソーダライムガラスや鉛ガラスなどの軟質ガラスからなるものを用いることができる。また、ガラス管バルブ2の形状は直管形に限らず、U字形、W字形、環形など屈曲したもの、直管を複数本直列的に接続して成形した形状などでもよい。また、封着部6は、ビード4を介して行うものに限らず、封着用リード線7を直接ガラス管バルブ2と封止するガラス管をバーナなどで縮径していく絞り封止や金型を用いた圧潰封止などで形成したものであっても差し支えない。また、ガラス管バルブ2の内面または外面に反射膜、着色膜や保護膜などが形成してあってもよい。
【0044】
また、封着用リード線7と突き合わせ溶接されるカップ状電極8や棒(線)状電極14などの冷陰極の材質は、ニッケル(Ni)に限らず、ニオブ(Nb)あるいはこれら金属を主成分とした合金からなるものを用いることもできる。また、冷陰極8には、ホウ化ランタン(LaB6)などの易電子放射性物質を付着や充填しておくことによって、放電の生起を容易にして始動特性を高めることができる。
【0045】
また、封着用リード線7の他端側に接続した外部リード線9は、鉄(Fe)・ニッケル(Ni)合金線で形成したが、材質はこれに限らず、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)やニッケル(Ni)・マンガン(Mn)などからなる線材やジュメット線であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す冷陰極蛍光ランプの一部切り欠き断面図。
【図2】図1の冷陰極蛍光ランプに用いられている冷陰極用電極部材を示す正面図。
【図3】図2中に示す冷陰極用電極部材を構成する封着用リード線の拡大横断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す冷陰極用電極部材の概略正面図。
【図5】本発明の第3の実施形態を示す冷陰極用電極部材の概略正面図。
【符号の説明】
【0047】
1…冷陰極蛍光ランプ
2…管形バルブとしてのガラス管バルブ
5,14,16…冷陰極用電極部材
7…封着用リード線
8,15…冷陰極
9…外部リード線
17…介在物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル成分の含有率が50〜52%である鉄・ニッケルを主成分とする合金からなる芯線を有し、銅を含有しない封着用リード線と;
この封着用リード線の一端に接続された冷陰極と;
前記封着用リード線の他端に接続された外部リード線と;
を具備していることを特徴とする冷陰極用電極部材。
【請求項2】
封着用リード線および冷陰極の間に銅を含有しない介在物が設けられていることを特徴とする請求項1記載の冷陰極用電極部材。
【請求項3】
軟質ガラス製の管形バルブと;
このバルブの両端にそれぞれ封着用リード線が気密に封着された請求項1または2記載の冷陰極用電極部材と;
上記バルブ内に封入された放電媒体と;
を具備していることを特徴とする冷陰極放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−245813(P2009−245813A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92301(P2008−92301)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】