説明

冷陰極管点灯装置及び冷陰極管点灯方法

【課題】簡易な構成で且つ低消費電力で冷陰極管の適切な温度補償を行い、低温環境下においても冷陰極管の迅速確実な点灯を可能にする冷陰極管点灯装置及び冷陰極管点灯方法を提供する。
【解決手段】冷陰極管2の環境温度を検出する温度センサ5と、温度センサ5により検出された環境温度が第1所定温度未満である場合に、所定の演算処理を行うことにより熱を発生するとともに、発生した熱を利用して冷陰極管2を加熱するプロセッサ7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶ディスプレイ等のバックライト等に使用される冷陰極管を点灯する冷陰極管点灯装置及び冷陰極管点灯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイ等のバックライトには複数の冷陰極管が光源として利用されている。このような冷陰極管は、一般的にガラス管の内壁面に蛍光体が塗布されるとともに、当該ガラス管内に不活性ガス(Ar等)及び水銀が封入されて構成されている。また、冷陰極管の点灯は、一般的にインバータが高周波電圧を供給することにより行われる。高電圧の印加により放電が開始すると、蒸気化された水銀は、電子や封入ガスの原子との衝突により励起されて紫外線を発生させる。これにより、ガラス管の内壁面に塗布された蛍光体は、放射された紫外線によって可視光線を発光する。
【0003】
冷陰極管を利用した液晶表示装置は、例えば航空機等の操縦席におけるディスプレイあるいはパーソナルコンピュータ等に多く使用されているため、屋内のみならず屋外等の様々な環境下において使用されることがあり、極端な低温環境下において使用される可能性も想定される。しかしながら、冷陰極管は、低温環境下においては、水銀蒸気圧が下降して蒸気状態の水銀量が低下するため、紫外線の放射強度が低下し、これに伴って発光効率が低下するという問題点がある。
【0004】
そこで、低温環境下においても冷陰極管を安定して点灯させるために、冷陰極管付近にヒータを設置した冷陰極管点灯装置も存在する。このような冷陰極管点灯装置は、低温時にヒータを用いて冷陰極管を加熱し、水銀蒸気圧を上昇させることにより、点灯開始電圧を低下させ、点灯の立ち上がり特性を改善し、点灯輝度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−260571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すような従来の冷陰極管点灯装置は、ヒータを設置することにより、部品点数の増加に伴う高コスト化といった問題や、重量・設置面積の増大に伴う装置の大型化といった問題を有する。さらに、従来の冷陰極管点灯装置は、低温時に設置したヒータを用いて加熱することによって、消費電力が増大するという問題点も有する。
【0007】
また、冷陰極管点灯装置内に設置されたヒータは、通常、温度センサを用いて冷陰極管周辺の温度を検知し、所定の温度以下の場合に自動的に加熱を開始するが、ノイズの影響によりヒータ内の温度制御機能に誤動作が生じ、常温にもかかわらずヒータによる加熱が開始され、あるいは極端な低温にもかかわらずヒータが加熱を開始しないといった問題が起きる場合もある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、簡易な構成で且つ低消費電力で冷陰極管の適切な温度補償を行い、低温環境下においても冷陰極管の迅速確実な点灯を可能にする冷陰極管点灯装置及び冷陰極管点灯方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の冷陰極管点灯装置は、上記課題を解決するために、冷陰極管の環境温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部により検出された環境温度が第1所定温度未満である場合に、所定の演算処理を行うことにより熱を発生するとともに、発生した熱を利用して前記冷陰極管を加熱するプロセッサとを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の形態の冷陰極管点灯装置を液晶表示装置に適用した場合の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の冷陰極管点灯装置及び冷陰極管点灯方法の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例1の冷陰極管点灯装置を液晶表示装置に適用した場合の構成を示すブロック図である。また、図1(a)は側面図を示し、図1(b)は正面図を示す。本実施例の冷陰極管点灯装置は、温度センサ5とプロセッサ7とにより構成される。また、図1に示すように、液晶表示装置は、一般的な構成を有しており、液晶パネル1、冷陰極管2、拡散シート3、及び導光板4により構成される。
【0013】
液晶パネル1は、例えば液晶材料を2枚のガラス基板間に封止し、それぞれのガラス基板に偏光板を付着した構造を有しており、ガラス基板に形成した電極に所定の電圧を印加することにより、種々の文字画像を表示するものである。
【0014】
冷陰極管2は、線状光源として導光板4の一端部に併設され、導光板4とともにバックライトを形成している。この冷陰極管2は、図示されないインバータにより高周波電圧を供給され、点灯する。
【0015】
透光性の導光板4は、冷陰極管2による光を透過し、面光源化して効果的に液晶パネル1に光を照射する。また、拡散シート3は、光を分散して均等にするシートであり、導光板4の出射面の側(すなわち導光板4と液晶パネル1との間)に設けられ、バックライトの照明光による集光及び分散の均一化を図る。
【0016】
温度センサ5は、本発明の温度検出部に対応し、冷陰極管2の環境温度を検出する。すなわち、温度センサ5は、冷陰極管2の近傍に設置され、冷陰極管2の周囲の温度を検出する。
【0017】
プロセッサ(CPU)7は、他の電子部品6とともに基板に実装され、冷陰極管2の近傍に設置されている。このプロセッサ7は、温度センサ5により検出された環境温度が第1所定温度未満である場合に、所定の演算処理を行うことにより熱を発生するとともに、発生した熱を利用して冷陰極管2を加熱する。
【0018】
すなわち、プロセッサ7は、冷陰極管2の近傍に設置されているため、所定の演算処理によって発生した熱を大気を介して冷陰極管2に伝達させることで、低温の冷陰極管2を暖めることができる。
【0019】
「第1所定温度」は、この温度未満では冷陰極管2による十分な輝度が得られないと考えられる温度であり、1例として−10℃程度の温度が考えられる。また、「所定の演算処理」とは、低温の冷陰極管2を暖めることができる程度にプロセッサ7を加熱するための演算処理を指し、例えば円周率の計算といった演算処理が考えられる。
【0020】
さらに、プロセッサ7は、温度センサ5により検出された環境温度が第2所定温度以上であり、且つ上述した所定の演算処理を行っている場合に、その演算処理を停止する。「第2所定温度」とは、この温度以上であれば冷陰極管2による十分な輝度が得られると考えられる温度であり、1例として5℃程度の温度が考えられる。
【0021】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。なお、本実施例の冷陰極管点灯装置は、冷陰極管2が点灯する際の動作を補助する役割を担う装置であり、冷陰極管2の点灯に直接的に関わるインバータを制御するものではない。したがって、本実施例の冷陰極管点灯装置は、インバータによる電力供給状況にかかわらずに動作するものとするが、必ずしもそれに限定するものではなく、例えばインバータの動作状況を監視し、インバータが電力供給を開始したときに限って動作する装置でもよい。
【0022】
最初に、温度センサ5は、冷陰極管2の環境温度を検出し(本発明の温度検出ステップに対応)、検出結果に応じた温度信号を生成し、制御基板に実装されたプロセッサ7に生成した温度信号を出力する。
【0023】
プロセッサ7は、冷陰極管2が点灯不可能な低温であると判断した場合に、自己の熱により冷陰極管2を加熱する。具体的には、プロセッサ7は、温度センサ5により検出された環境温度が第1所定温度(本実施例では−10℃とする)未満である場合に、所定の演算処理(本実施例では円周率計算とする)を行うことにより熱を発生するとともに、発生した熱を利用して冷陰極管2を加熱する(本発明の加熱ステップに対応)。
【0024】
したがって、例えば温度センサ5が検出した冷陰極管2の周囲の温度が−20℃である場合に、プロセッサ7は、温度センサ5により検出された環境温度が−10℃未満であるため、円周率計算のような過大な演算処理プログラムを追加起動し、大量の熱を発生させる。
【0025】
プロセッサ7が冷陰極管2の近傍に設置されているため、発生した熱は、大気を介して冷陰極管2に自然伝達し、冷陰極管2を加熱する。これにより、加熱された冷陰極管2の内部の水銀の蒸気圧が上昇するので、冷陰極管2は、インバータから点灯開始のための電力を供給された際に、点灯開始電圧を低下させるとともに、発光効率が改善して高い輝度を得ることができる。
【0026】
その後、プロセッサ7から伝達された熱及び冷陰極管2自体の発熱により、冷陰極管2において発光可能な温度が持続されるとプロセッサ7が判断した場合には、プロセッサ7は、自己の過大な処理プログラムを終了する。すなわち、プロセッサ7は、温度センサ5により検出された環境温度が第2所定温度(本実施例では5℃とする)以上であり、且つ円周率計算等の所定の演算処理を行っている場合に、その演算処理を停止する。
【0027】
温度が上昇し続けるとバックライトの寿命を縮めるので、プロセッサ7は、冷陰極管2の環境温度が5℃以上となった場合に、円周率計算のような熱発生のための演算処理を停止し、冷陰極管2に対する熱供給を停止してバックライトの長寿命化を図る。
【0028】
なお、プロセッサ7から冷陰極管2に対する熱の伝達は、大気を介した自然伝達と説明したが、ヒートパイプ等の金属を使用して熱を伝達してもよい。この場合におけるヒートパイプは、本発明の熱伝達部に対応し、プロセッサ7に発生した熱を冷陰極管2に伝達する。
【0029】
プロセッサ7は、冷陰極管2を加熱する際に、ヒートパイプを介して冷陰極管2を加熱する。この場合においては、プロセッサ7は、必ずしも冷陰極管2の近傍に設置される必要が無く、ヒートパイプにより熱を伝達できる場所に設置されればよいため、設計の自由度が上がるという利点も有する。
【0030】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る冷陰極管点灯装置及び冷陰極管点灯方法によれば、簡易な構成で且つ低消費電力で冷陰極管の適切な温度補償を行い、低温環境下においても冷陰極管の迅速確実な点灯を行うことができる。
【0031】
すなわち、本実施例の冷陰極管点灯装置は、従来装置のようにヒータを設置する必要が無いため、低コストであるとともに設置スペースをとらないため装置の軽量小型化が可能となる。さらに、従来装置におけるヒータは加熱の際の電力消費が激しいところ、本実施例の冷陰極管点灯装置は、ヒータが不要であるため、消費電力を抑えることができる。
【0032】
また、本実施例の冷陰極管点灯装置は、物理的な加熱装置を新たに設ける必要が無く、プロセッサ7の温度を上昇させるための演算処理プログラムを備えていればよいため、簡易な構成で実現できるとともに、冷陰極管2の適切な温度補償を行うことができ、温度環境によらずに迅速確実にバックライトの点灯を行うことができる。
【0033】
さらに、本実施例の冷陰極管点灯装置は、冷陰極管2の環境温度が5℃以上となった場合に、プロセッサ7における円周率計算のような熱発生のための演算処理を停止するので、熱による劣化を防止してバックライトの長寿命化を図ることができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 液晶パネル
2 冷陰極管
3 拡散シート
4 導光板
5 温度センサ
6 電子部品
7 プロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷陰極管の環境温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された環境温度が第1所定温度未満である場合に、所定の演算処理を行うことにより熱を発生するとともに、発生した熱を利用して前記冷陰極管を加熱するプロセッサと、
を備えることを特徴とする冷陰極管点灯装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記温度検出部により検出された環境温度が第2所定温度以上であり且つ前記演算処理を行っている場合に、前記演算処理を停止することを特徴とする請求項1記載の冷陰極管点灯装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記冷陰極管の近傍に設置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の冷陰極管点灯装置。
【請求項4】
前記プロセッサに発生した熱を前記冷陰極管に伝達するための熱伝達部を備え、
前記プロセッサは、前記冷陰極管を加熱する際に、前記熱伝達部を介して前記冷陰極管を加熱することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の冷陰極管点灯装置。
【請求項5】
冷陰極管の環境温度を検出する温度検出ステップと、
前記温度検出ステップにより検出された環境温度が第1所定温度未満である場合に、プロセッサが所定の演算処理を行うことにより熱を発生するとともに、前記プロセッサに発生した熱を利用して前記冷陰極管を加熱する加熱ステップと、
を備えることを特徴とする冷陰極管点灯方法。

【図1】
image rotate