説明

冷陰極管用電極の製造治具及び冷陰極管用電極の製造方法

【課題】冷陰極管を封止するための封止部材をインナーリード上の決められた位置に高い精度で接合させることが可能な冷陰極管用電極の製造治具及び冷陰極管用電極の製造方法を提供する。
【解決手段】電極1、電極1に接続されたインナーリード2及びインナーリード2に接続されたアウターリード3を備える冷陰極管用電極のインナーリード2上に、冷陰極管22を封止するための封止部材4を接合させる、冷陰極管用電極の製造治具15であって、(a)基材10と、(b)基材10の内部に設けられインナーリード2及びインナーリード2の外周に配置される封止部材4を収容するとともに封止部材4を底面11a上で支える第1の溝11と、(c)第1の溝11の底面11aに接続されインナーリード2の端部を底面12a上で支える第2の溝12と、(d)第2の溝12の底面12aに接続されアウターリード3を収容する第3の溝13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極管用電極の製造治具及びこれを用いた冷陰極管用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや液晶テレビを始めとする液晶表示装置(LCD)には、表示画面を照明するためのバックライトが組み込まれており、このバックライトの光源として冷陰極蛍光ランプが一般的に用いられている。
【0003】
冷陰極蛍光ランプは、例えば、蛍光体が内面に塗布されたガラス管内に、水銀及び希ガスを充填し、ガラス管の両端部に電極及びリード線を装着する。リード線は電極の端部に接続されたインナーリードとインナーリードに接続されたアウターリードとを備える。ガラス管との密着性を向上させるため、インナーリードの外周にはガラス製等の封止部材が接合される。リード線と封止部材とを予め一体となるように接合させておき、この一体物をガラス管の両端にそれぞれ配置することで、冷陰極蛍光ランプが製造できる。
【0004】
リード線と封止部材を接合させる方法として、例えば特開2008−130396号公報では、バーナーや電気炉を用いて2段階加熱法によりインナーリードの外周上に封止部材を接合させる方法が記載されている。更に特開2008−130396号公報では、接合の際に、インナーリードとアウターリードとの間の溶接コブを、封止部材のあたり止めとして利用することで、封止部材の位置決めを行うことも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−130396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、溶接工程の性質上、溶接コブの形状が必ずしも同一形状にはならないため、大体の位置を決定することは可能であるが、インナーリード上の決められた位置に高い精度で封止部材を接合させることは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、冷陰極管を封止するための封止部材を、インナーリード上の決められた位置に高い精度で容易に接合させることが可能な冷陰極管用電極の製造治具及び冷陰極管用電極の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討の結果、封止部材をインナーリード上の特定の位置に保持させるための溝を有する適正形状の耐熱性の製造治具を利用することにより、封止部材をインナーリード上の所定の位置に容易且つ高精度に位置決めできることを見出した。
【0009】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、電極、電極に接続されたインナーリード及びインナーリードに接続されたアウターリードを備える冷陰極管用電極のインナーリード上に、冷陰極管を封止するための封止部材を接合させる、冷陰極管用電極の製造治具であって、基材と、基材の内部に設けられインナーリード及びインナーリードの外周に配置される封止部材を収容するとともに封止部材を底面上で支える第1の溝と、第1の溝の底面に接続されインナーリードの端部を底面上で支える第2の溝と、第2の溝の底面に接続されアウターリードを収容する第3の溝と、を備える冷陰極管用電極の製造治具である。
【0010】
本発明の冷陰極管用電極の製造治具は、第1の溝は、封止部材の最大直径よりも大きい第1寸法を有し、第2の溝は、インナーリードの直径よりも大きく封止部材の最大直径よりも小さい第2寸法を有し、第3の溝は、インナーリードの直径よりも小さくアウターリードの直径よりも大きい第3寸法を有する。
【0011】
本発明の冷陰極管用電極の製造治具は、基材の耐熱温度が800℃以上である。
【0012】
本発明の冷陰極管用電極の製造治具は、第3の溝が、基材の厚み方向に貫通して設けられている。
【0013】
本発明の冷陰極管用電極の製造治具は、第2の溝の底面上に配置され、アウターリードを第3の溝内へ通すための開口部を有するスペーサを更に備える。
【0014】
本発明は他の一側面において、インナーリードとアウターリードとを接合する工程と、インナーリードの表面を酸化処理する工程と、冷陰極管用電極の治具内にインナーリード及びアウターリードを配置する工程と、インナーリードの外周上に筒状の封止部材を通し、治具の第1の溝の底面により封止部材を保持させる工程と、治具内で封止部材を加熱及び溶融させ、インナーリード上の定められた位置に封止部材を接合させる工程と、インナーリードの端部に電極を配置する工程とを含む冷陰極管用電極の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本発明は、冷陰極管を封止するための封止部材をインナーリード上の決められた位置に高い精度で容易に接合させることが可能な冷陰極管用電極の製造治具及び冷陰極管用電極の製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る冷陰極管用電極の一例を示す概略図である。
【図2】図2(a)は、本発明の実施の形態に係る製造治具内に設けられた複数の溝を表す上面図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A断面からみた場合の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る冷陰極管用電極の製造治具の一例を示す上面図である。
【図4】図4(a)〜図4(d)は、本発明の実施の形態に係る冷陰極管用電極の製造方法の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る冷陰極管用電極の製造方法の一例であり、図4(d)の後の工程を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る冷陰極管の一例を示す概略図である。
【図7】図7(a)は、本発明の実施の形態の変形例に係る冷陰極管用電極の製造治具に用いられるスペーサを示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)のスペーサを装着した状態の製造治具を表す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る冷陰極管用電極の外観を示す写真である。
【図9】比較例1の冷陰極管用電極の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の図面は模式的なものであり、厚みと平均寸法の関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0018】
(冷陰極管用電極)
本発明の実施の形態に係る冷陰極管用電極は、図1に示すように、電極1と、電極1の端部に接続されたインナーリード2と、インナーリード2の端部に接続されたアウターリード3と、インナーリード2の外周面上に配置された封止部材4とを備える。
【0019】
電極1は筒状又は有底筒(カップ)形状を有している。インナーリード2及びアウターリード3は、電極1に電圧を印加するためのリード線である。インナーリード2及びアウターリード3は、抵抗溶接等により互いに接合されており、インナーリード2の直径はアウターリード3の直径よりも大きい。インナーリード2及びアウターリード3の直径は同一としてもよい。その場合、インナーリード2とアウターリード3との間の接合部分に凸部を設けておくのが好ましい。
【0020】
電極1としては、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、ニッケル合金(NiにAl、Si、Ti、V、Mn、Fe、Y、Zr、Nb、Mo、Wなどを添加した合金)等の金属材料を用いることができる。電極1の耐熱性を向上させるために、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の高融点金属で形成されていてもよい。電極1の内部には必要に応じて放電特性を改良するための放電特性改良剤等を封着させても構わない。
【0021】
インナーリード2、アウターリード3の材料に特に制限はないが、例えば、インナーリード2として、Fe、Ni、Coからなる合金であるコバール、W、Mo等が利用できる。アウターリード3としてはニッケル(Ni)、Niとマンガン(Mn)との合金、ジュメット(鉄(Fe)とニッケル(Ni)合金線に銅(Cu)をクラッドした)線等が利用できる。封止部材4としては、ガラス管バルブ(図6のガラス管22)と同等の熱膨張係数を有するほう珪酸ガラスが利用できる。
【0022】
(冷陰極管用電極の製造治具)
図2(a)の上面図及び図2(b)の断面図に示すように、実施の形態に係る冷陰極管用電極の製造治具は、基材10と、基材10中に同心円状に設けられた第1の溝11、第2の溝12及び第3の溝13を備えている。
【0023】
第1の溝11は、基材10の表面から厚み方向に延びる円柱状の溝であり、図2(b)に示すように、基材10の表面に平行な第1方向(図2(a)参照)に、第1寸法(=直径)d1を有する。第1寸法d1は、インナーリード2の直径D1(図5参照)及びインナーリード2の外周上に配置される封止部材4の最大直径D2よりも大きい。例えば、第1寸法d1=D2+(0.2〜0.6mm)とすることができる。第1寸法d1は、製造対象とする電極の大きさにより異なるが、例えば2.2〜2.6mmとすることができる。
【0024】
第1の溝11は、図5に示すように、インナーリード2及びインナーリード2の外周に配置される封止部材4を収容する。この際、封止部材4は、第1の溝11の底面11aにより、第1の溝11内の定められた位置で保持される。
【0025】
第2の溝12は、図2(a)に示すように、第1の溝11の中に設けられた円柱状の溝であり、図2(b)に示すように、基材10の表面に平行な第1方向に第2寸法(=直径)d2を有する。第2寸法d2は、インナーリード2の直径D1(図5参照)よりも大きく封止部材4の最大直径D2よりも小さい。例えば、d2=D1+(0.05〜1.0mm)、但しd2<D2、とすることができる。第2寸法d2は、製造対象とする電極の大きさにより異なるが、例えば1.6〜1.8mmとすることができる。
【0026】
第2の溝12は、図5に示すように、インナーリード2の一部を収容する。インナーリード2のアウターリード3と接続される側の端部(インナーリード2とアウターリード3との接合部分)は、第2の溝12の底面12aにより支持されており、第2の溝12内に保持される。
【0027】
第3の溝13は、図2(a)に示すように、第2の溝12の中に更に設けられた円柱状の溝であり、図2(b)に示すように、基材10の表面に平行な第1方向に第3寸法d3を有する。第3寸法d3は、インナーリード2の直径D1(図5参照)よりも小さくアウターリード3の直径D3よりも大きい。例えば、d3+0.05≦D1とすることができる。第3寸法d3は、製造対象とする電極の大きさにより異なるが、例えば0.65〜0.70mmとすることができる。第3の溝13は、基材10の厚み方向に貫通して設けられている。これによりアウターリード3の長さに関わらず、インナーリード2、封止部材4及びアウターリード3のインナーリード2との接続部分を基材10の内部に保持できる。
【0028】
第1の溝11、第2の溝12及び第3の溝13の深さ(基材10の表面に垂直な方向の溝の長さ:図2(b)参照)m1、m2、m3は、それぞれ製造対象とする冷陰極管用電極の特性に応じて変更が可能である。例えば、封止部材4をアウターリード3側に近接させる場合は、第2の溝12の深さm2の大きさを小さく形成すればよいし、封止部材4をアウターリード3から離間させる場合は、第2の溝12の深さm2を大きく形成すればよい。
【0029】
図3に示すように、第1の溝11、第2の溝12及び第3の溝13により構成されるユニット20は、基材10の表面に対してマトリクス状に複数個配置することができる。これにより1台の治具15で、多量の電極を同時に形成することができる。複数のユニット20の配置例は図3に示す構成に限られず、他にも様々な態様を含むことは勿論である。
【0030】
後述する製造方法により明らかとなるが、ガラス等の封止部材4の加熱、溶融及び接合を基材10内で行うために、基材10としては800℃以上の耐熱性を持つ材料を用いるのが好ましい。そのため、基材10としては加工が容易で、溶融したガラスと反応しにくく、濡れにくい窒化硼素とアルミナの焼結体、グラファイト(黒鉛)、銅および銅合金が好ましい。
【0031】
実施の形態に係る冷陰極管用電極の製造治具によれば、治具15を利用することにより、図5に示すように、インナーリード2の端部(インナーリード2とアウターリード3との接続部分)が、第2の溝12の底面12aで支持され、第1の溝11の底面11a上に封止部材4が支持される。このため、封止部材4を加熱してインナーリード2の外周に接合する際に、封止部材4をインナーリード2上の決められた位置に高い精度で接合させることが可能となる。更に、図3に示す治具15を用いることにより、複数の冷陰極管用電極間でほぼ同一形状のものを製造することができるため、冷陰極管用電極の製造歩留まり及び品質を向上させることができる。
【0032】
(冷陰極管用電極の製造方法)
図2(a)、図2(b)及び図3に示す治具を用いた冷陰極管用電極の製造方法を、図4(a)〜図4(d)及び図5の断面図を用いて説明する。なお、以下に示す製造方法は一例であり、各工程の順番は下記に限定されるものではない。
【0033】
図4(a)に示すように、平板状の金属板100を、絞り加工又はプレス加工すること等によりカップ状又は筒状の電極1を製造する。金属板100としてはCu、Ni、Al、Fe、W、Mo等の金属材料を用いることができる。次いで図4(b)に示すように、例えばコバール製のインナーリード2とNi合金製のアウターリード3とを、抵抗溶接等により接合する。
【0034】
図4(c)に示すように、インナーリード2と封止部材4との濡れ性を向上させるために、インナーリード2の表面を、電気炉により800〜1000℃に加熱し、インナーリード2の表面に酸化膜(Fe34、FeO)を形成する。酸化膜の厚さは、厚すぎると封止部材4内に酸化膜が残存する、或いは封止部材4内に気泡が発生するなどの不具合が発生し、逆に薄すぎると封止部材4とインナーリード2との接合強度が弱くなり、封止部材4とインナーリード2の接合部から空気や水分が浸入して冷陰極蛍光管の性能が劣化するため、0.2〜1.5μm、更に好ましくは0.3〜1.0μmの酸化膜を形成させることが好ましい。更に、酸化膜と母材のインナーリード2との密着性低下、空隙の生成を回避するため、Fe23を形成させるよりも、Fe34、FeOを形成させる方が好ましい。本実施形態においては、処理条件として、例えば、酸素分圧1×10-3Pa以下、加熱温度800〜1000℃、加熱時間5〜15分、露点−5〜+30℃、好ましくは0〜25℃とすることにより、厚さ0.2〜1.5μmのFe34、FeO酸化膜を形成させることができる。また、バーナー等により加熱する場合は、バーナー等の酸化炎、還元炎のガス量や酸素量を調整し黒色の酸化層(Fe34、FeO)を生成させる。
【0035】
図4(d)に示すように、表面が酸化処理されたインナーリード2の端部から、筒状の封止部材(ビードガラス)4を通し、インナーリード2、アウターリード3、封止部材4を治具15の中に配置する。なお封止部材4は、インナーリード2及びアウターリード3を治具15の中にセットした後に配置しても構わないことは勿論である。図5に示すように、第1の溝11内には、インナーリード2及び封止部材4が収容され、第2の溝12内には、インナーリード2の端部が保持され、第3の溝13内には、アウターリード3が収容される。
【0036】
引き続き、図5に示す治具15を電気炉(図示せず)に入れ、非酸化性ガス雰囲気、例えば窒素ガス雰囲気で封止部材4を850〜1000℃で5〜15分間、露点−60℃〜−10℃、好ましくは−20〜−60℃で加熱して封止部材4を溶融させる。筒状の封止部材4は、加熱により変形し、封止部材4内周面がインナーリード2上の酸化膜に付着する。この際、封止部材4は、治具15により第1の溝11内に保持されたまま溶融するため、インナーリード2上の決められた位置への接合が可能となり、酸化膜が封止部材4内へ拡散する。これにより、インナーリード2と封止部材4とを密着させる。
【0037】
電気炉中に水素ガスを入れ、還元性雰囲気中で加熱温度600〜700℃、加熱時間5〜20分程度加熱して、インナーリード2上の封止部材4との接合に寄与しないインナーリード2上の酸化膜を、還元させ除去する。その後、インナーリード2の端部に溶接等により電極1を接合させれば、図1に示す冷陰極管用電極が製造される。
【0038】
得られた冷陰極管用電極から、図6に示すような冷陰極管を製造する場合は、まず内部に蛍光体21を配置したガラス管22を用意する。そして、ガラス管22の内部に水銀及び希ガスを充填した状態でガラス管22の両端にそれぞれ電極1を対向させて挿入し、封止部材4でガラス管22の両端を封止する。
【0039】
実施の形態に係る冷陰極管用電極の製造方法によれば、第1〜第3の溝11、12、13を有する治具15内に、インナーリード2及びアウターリード3及び封止部材4をセットして加熱することにより、インナーリード2上の決められた位置に高い精度で接合させることが可能となる。なお、インナーリード2とアウターリード3との接合部分は、インナーリード2の中間部分に比べて酸化膜の厚さが薄くなりやすい。このため、封止部材4の固定位置をインナーリード2とアウターリード3との接合部分からずらした位置に封止部材4を位置決めすることにより、封止部材4内へ酸化膜を十分に拡散させることができる。その結果、封止部材4とインナーリード2との密着性を向上させることができる。
【0040】
なお上記では、電気炉又はバーナーによる酸化処理の例を説明した。しかしながら、図4(c)及び図4(d)に示す工程を、連続炉を用いて、治具15にインナーリード2をセットした状態で連続的に行うことも好ましい。治具15を用いて連続的に製造することにより、従来に比べて製造工程が簡略化され、量産が容易になる。
【0041】
(変形例)
実施の形態の変形例に係る冷陰極管用電極の製造治具は、図7(a)に示すように、略中心にアウターリード3を第3の溝13内に通すための開口部31を有するスペーサ30を更に備えていてもよい。開口部31は、図7(b)に示すように、第3の溝13の底面12a上に配置される。スペーサ30を配置することにより、第2の溝12の深さm2を深さm4に形式上変更することができる。そのため、第2の溝12の深さにかかわらず、対象電極の大きさに応じて、封止部材4の接合位置を自在に変更できる。なお、スペーサ30としては、基材10と同一の材料を用いることにより、封止部材4を加熱する際の熱による基材10とスペーサ30間の熱膨張を同一に揃えることができるため、別材質を用いる場合に比べて位置合わせの精度を向上できる。
【0042】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの考案を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態及び運用技術が明らかとなろう。本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論であり、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によって定められる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例)
平板状の金属板から絞り加工によりカップ状の電極を製造した。次いで、コバール製のインナーリードとNi合金製のアウターリードとを抵抗溶接等により接合した。電気炉を用いてインナーリードの表面に酸化膜(Fe34、FeO)を0.50μm形成させた。電気炉による加熱条件は、酸素分圧1×10-3Pa以下、加熱温度900℃、加熱時間6分、露点20℃とした。表面が酸化処理されたインナーリードの端部から、筒状のビードガラスを通し、インナーリード、アウターリード、ビードガラスを図2(b)に示す治具の中に配置した。引き続き、治具を電気炉に入れ、窒素ガス雰囲気でビードガラスを930℃で7分間、露点−45℃以下で加熱してビードガラスを溶融させ、インナーリードとビードガラスとを密着させた。電気炉中に水素ガスを入れ、還元性雰囲気中で加熱温度650℃、加熱時間15分程度加熱した。その後、インナーリードの端部に溶接等により電極を接合させて、冷陰極管用電極を1000本作製した。
【0045】
(比較例1)
インナーリードとビードガラスとの密着作業を、別の治具、即ち、図2(b)に示す第2の溝12を配置せずに、第1の溝11及び第3の溝13の2つの溝のみで構成した治具を用いて行った他は、実施例と同様に冷陰極管用電極を1000本作製した。
(比較例2)
また、ガスバーナー法でインナーリードとビードガラスとの密着作業を行い、冷陰極管用電極を10本作製した。
【0046】
(製品ばらつき)
実施例と比較例1及び2に関し、10本の冷陰極管用電極を抜き取り、拡大投影機で寸法測定を行った。図8及び図9に示すように、電極の底からビードガラスまでの距離をL(mm)、ビードガラスの最大直径をD(mm)として1/100mmまで測定した。
測定値の平均と標準偏差を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
距離Lは0.65±0.10mm、直径Dは1.90±0.05mmが要求される製品である。発明例は、L値、D値ともに平均値が要求値を満足し、標準偏差(ばらつき)が小さい。一方、比較例1は距離Lの平均値が要求値から外れ、標準偏差が大きく、直径Dの平均値は満足するが、標準偏差が大きい。比較例2はL値、D値ともに平均値は要求値を満足するが、標準偏差がL、Dとも大きい。
【符号の説明】
【0049】
1…電極
2…インナーリード
3…アウターリード
4…封止部材
10…基材
11…第1の溝
12…第2の溝
13…第3の溝
15…治具
20…ユニット
30…スペーサ
31…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極、前記電極に接続されたインナーリード及び前記インナーリードに接続されたアウターリードを備える冷陰極管用電極の前記インナーリード上に、冷陰極管を封止するための封止部材を接合させる、冷陰極管用電極の製造治具であって、
基材と、
前記基材の内部に設けられ、前記インナーリード及び前記インナーリードの外周に配置される前記封止部材を収容するとともに、前記封止部材を底面上で支える第1の溝と、
前記第1の溝の底面に接続され、前記インナーリードの端部を底面上で支える第2の溝と、
前記第2の溝の底面に接続され、前記アウターリードを収容する第3の溝と
を備えることを特徴とする冷陰極管用電極の製造治具。
【請求項2】
前記第1の溝は、前記封止部材の最大直径よりも大きい第1寸法を有し、
前記第2の溝は、前記インナーリードの直径よりも大きく前記封止部材の最大直径よりも小さい第2寸法を有し、
前記第3の溝は、前記インナーリードの直径よりも小さく前記アウターリードの直径よりも大きい第3寸法を有する請求項1に記載の冷陰極管用電極の製造治具。
【請求項3】
前記基材の耐熱温度が800℃以上である請求項1又は2に記載の冷陰極管用電極の製造治具。
【請求項4】
前記第3の溝が、前記基材の厚み方向に貫通して設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷陰極管用電極の製造治具。
【請求項5】
前記第2の溝の底面上に配置され、前記アウターリードを前記第3の溝内へ通すための開口部を有するスペーサを更に備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷陰極管用電極の製造治具。
【請求項6】
インナーリードとアウターリードとを接合する工程と、
前記インナーリードの表面を酸化処理する工程と、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷陰極管用電極の治具内に前記インナーリード及び前記アウターリードを配置する工程と、
前記インナーリードの外周上に筒状の封止部材を通し、前記治具の第1の溝の底面により前記封止部材を保持させる工程と、
前記治具内で前記封止部材を加熱及び溶融させ、前記インナーリード上の定められた位置に前記封止部材を接合させる工程と、
前記インナーリードの端部に電極を配置する工程と
を含む冷陰極管用電極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−204560(P2011−204560A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72290(P2010−72290)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】