説明

冷陰極蛍光放電灯及びその製造方法

【課題】冷陰極蛍光放電灯のコストを低減する。
【解決手段】冷陰極蛍光放電灯1は、電極部6と該電極部と同一材料で形成された封止部7とから成る導電性ガラス部品2を備えている。導電性ガラス部品2に対してリード3が電気的及び機械的に結合されている。ガラス管4が導電性ガラス部品2の封止部7に溶着されている。電極部6と封止部7とが同一材料で形成された導電性ガラス部品2を使用して冷陰極蛍光放電灯1を構成すると、冷陰極蛍光放電灯1の部品点数が少なくなり、冷陰極蛍光放電灯1のコストの低減が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光放電灯即ちCCFL(Cold‐Cathode Fluorescent Lamp)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TVモニター、パソコン等の液晶表示装置のバックライト光源として使用する冷陰極蛍光放電灯(CCFL)は、例えば特開2007−234551号公報(特許文献1)等で公知である。この種の冷陰極蛍光放電灯は、鉄、ニッケル、アルミニウム・ジルコニウム合金等の金属から成る対の電極と、該対の電極を包囲し且つAr等の希ガス(レアガス)と水銀が封入された円筒状のガラス管と、このガラス管の内壁に形成された蛍光体層と、ガラス管の軸方向外側に導出された対のリードとから成る。ガラス管の両端の封止は、対のリードにガラスビーズ(ガラス球)をそれぞれ設け、ガラス管をビーズに溶着することによって達成されている。従って、冷陰極蛍光放電灯を製作する時には、少なくとも対の電極と、ガラス管と、蛍光体と、対のリードと、対のガラスビーズとが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−234551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷陰極蛍光放電灯のコストの低減が要求されている。従って、本発明の目的は、コストの低減が可能な冷陰極蛍光放電灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従う冷陰極蛍光放電灯は、電極部と該電極部と同一材料で形成された封止部とを備えた導電性ガラス部品と、前記導電性ガラス部品の前記封止部に機械的に結合された端部を有し且つ前記電極部を収容しているガラス管とを備えている。
【0006】
なお、請求項2に示すように、更に前記導電性ガラス部品に電気的及び機械的に結合された外部接続導体(例えばリード又はキャップ又はこれらの両方)を有していることが望ましい。
請求項3に示すように、前記導電性ガラス部品の前記電極部は前記封止部と同一な外形寸法を有し、前記封止部と共に前記ガラス管に機械的に結合されていることが望ましい。
また、請求項4に示すように、前記導電性ガラス部品は、バナジン酸塩ガラスから成ることが望ましい。
また、請求項5に示すように、更に、前記電極部の外周面の少なくとも一部に被着された電子放出物質膜を有することが望ましい。
また、請求項6に示すように、電極部と該電極部と同一材料で形成された封止部とを備えた導電性ガラス部品を用意する工程と、前記導電性ガラス部品をガラス管の端部の内側に挿入し、前記ガラス管を前記導電性ガラス部品に溶着する工程と備えて冷陰極蛍光放電灯を製造することが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本願の発明に従う冷陰極蛍光放電灯は、電極部と該電極部と同一材料で形成された封止部とを備えた導電性ガラス部品を使用して構成されている。即ち、電極部と封止部とが一体化されている。これにより冷陰極蛍光放電灯を構成する部品点数が少なくなり、冷陰極蛍光放電灯のコストの低減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は実施例1の冷陰極蛍光放電灯を示す断面図である。
【図2】図2は図1の導電性ガラス部品を示す拡大斜視図である。
【図3】図3は図2の導電性ガラス部品の正面図である。
【図4】図4は図2の導電性ガラス部品の左側面図である。
【図5】図5は図2の導電性ガラス部品の右側面図である。
【図6】図6は実施例2の冷陰極蛍光放電灯の一部を示す断面図である。
【図7】図7は実施例3の冷陰極蛍光放電灯の一部を示す断面図である。
【図8】図8は実施例4の冷陰極蛍光放電灯の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して本発明の実施形態に従う冷陰極蛍光放電灯を説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1に従う冷陰極蛍光放電灯1即ちCCFLは、図1に示すように対の導電性ガラス部品2と、対のリード3と、Ar等の希ガス(レアガス)と水銀が封入された円筒状のガラス管4と、このガラス管4の内壁に形成された蛍光体層5とを備えている。
【0011】
導電性ガラス部品2は、バナジン酸塩ガラスからなる電子放出機能を有する導電性ガラスで形成されたものであって、円筒状の電極部6と該電極部6と同一材料で形成された円筒状の封止部7とを備えている。バナジン酸塩ガラスは、特開2003−34548号公報等で公知のものであって、バナジウム、バリウム及び鉄を主成分として含む酸化物系ガラス組成物から成り、導電性を有している。この実施例のバナジン酸塩ガラスは、バナジウム酸化物(V2O5)50〜90モル%、バリウム酸化物(BaO)5〜35モル%、及び鉄酸化物(Fe2O3)5〜15モル%からなり、10-4〜10-1S/cmの電気伝導度を有する。
なお、導電性ガラス部品2を、上記のバナジン酸塩ガラス以外の、例えば、特開2006−151793号公報に開示されているP25系電子伝導性ガラス等の導電性ガラスで形成することもできる。
【0012】
導電性ガラス部品2の電極部6は、従来の電極のように金属製のカップ状電極基体を有さず、導電性ガラス(バナジン酸塩ガラス)のみで形成されている。この導電性ガラス部品2の電極部6は、良好な放電を得るためにガラス管4の軸方向に延びる深さ約1.0mm、径1.0mmの穴8を有している。なお、この実施例では、導電性ガラス部品2の穴8を有している部分を電極部6と定義している。導電性ガラス部品2の電極部6は、ガラス管4に挿入可能な外径(例えば2.8mm)を有し、ガラス管4に結合されている。
【0013】
導電性ガラス部品2の封止部7は、従来の放電灯のガラスビーズと同様な機能を有する部分である。しかし、本実施例の導電性ガラス部品2の封止部7は、電極部6と別体に形成されず一体に形成されている。即ち、導電性ガラス部品2の封止部7は、導電性ガラス(バナジン酸塩ガラス)の成形によって電極部6と一体に形成されている。導電性ガラス部品2の封止部7は、ガラス管4に挿入可能な外径(例えば2.8mm)を有し、ガラス管4に結合されている。導電性ガラス部品2の封止部7のガラス管4に対する結合は、放電ガスの漏れが生じないように行われている。
電極部6及び封止部7を有する導電性ガラス部品2は、導電性ガラスの原料混合物を加熱溶融し、所望の型に注入することによって形成されている。
なお、導電性ガラス部品2を型を使用して形成する代りに、導電性ガラスをダイヤモンドカッターで所望形状に加工すること、又は導電性ガラスをレーザー加工装置、又はFIB(Focused Ion Beam、集束イオンビーム)加工装置等で所望形状に加工すること等で形成することもできる。
【0014】
外部接続導体としての金属製のリード3は、導電性ガラス部品2の膨張係数に近い膨張係数を有する材料(例えば、50%のFeと50%のNiとから成る合金)で棒状に形成されている。このリード3の一端は、導電性ガラス部品2の封止部7に形成された穴9に挿入され、導電性ガラス部品2の封止部7に電気的及び機械的に結合されている。また、リード3は封止部7を介して電極部6にも電気的に結合されている。
導電性ガラス部品2の封止部7とリード3との結合は、導電性ガラス部品2の封止部7とリード3との一方又は両方を溶融させて行う方法、又は導電性接合材を使用して行う方法等で実行できる。なお、導電性ガラスの溶融物を所望の型に注入する時に、リード3の先端部を導電性ガラスの溶融物で包囲し、導電性ガラス部品2に対するリード3の結合を達成することもできる。
【0015】
導電性ガラス部品2によって対の端部が封止された円筒状ガラス管4は、例えば、軟質ガラスで形成され、この内部で発生した光を外部に取り出すことができるように光透過性を有している。この実施例における円筒状ガラス管4の内径は3.0mm、外径は4.0mm、長さは1000mmである。
ガラス管4の端部は導電性ガラス部品2に溶着によって気密的に結合されている。
【0016】
図1の放電灯1を製作する時には、図2及び図3に示すようにリード3と導電性ガラス部品2とが一体化された組立体と、内面に蛍光体5が塗布されたガラス管4を用意する。次に、リード3を伴った導電性ガラス部品2の電極部6及び封止部7をガラス管4に挿入する。次に、ガラス管4内に所望のガス(例えばAr等の希ガスと水銀)を封入する。しかる後、ガラス管4を導電性ガラス部品2に溶着する。
【0017】
完成した放電灯1の対のリード3間に1000Vの電圧を印加した時の発光強度は30000カンデラ/m2であり、導電性ガラス部品2の電極部6が放電電極として機能していることが確認された。
【0018】
本実施例は次の効果を有する。
(1)電極部6と封止部7とが同一の導電性ガラスによって一体に形成されている。従って、従来の電極とガラスビーズとを別に形成するものに比較して部品点数を減らすことができ、放電灯のコストの低減が可能になる。
(2)電極部6はバナジン酸塩ガラス(導電性ガラス)から成り、従来のカップ状金属基体に相当するものを有していない。従って、電極部6を容易に形成でき、放電灯のコストの低減が可能になる。
(3)バナジン酸塩ガラス(導電性ガラス)から成る電極部6は電子の衝撃作用(スパッタリング)による摩耗が著しく少ない。これにより放電灯の寿命が伸びる。
(4)ガラス管4が導電性ガラス部品2の電極部6と封止部7との両方に溶着されているので、ガラス管4の封止即ち閉塞を良好に達成でき、且つガラス管4の端部の機械的強度が高くなる。
(5)封止部7が導電性を有しているので、外部接続導体としてのリード3の電極部6に対する電気的接続を容易に達成できる。
【実施例2】
【0019】
次に実施例2に従う冷陰極蛍光放電灯1aを、図6を参照して説明する。但し、図6において、実施例1を示す図1と実質的に同一の部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。図6の冷陰極蛍光放電灯1aは、変形された導電性ガラス部品2aを有する他は図1の冷陰極蛍光放電灯1と同一に形成されている。変形された導電性ガラス部品2aは、変形された電極部6aを有する他は図1の導電性ガラス部品2と同一に形成されている。変形された電極部6aはこの外周面とガラス管4との間に隙間10を有する他は図1の電極部6と同一に形成されている。この実施例2に従う放電灯1aによっても、実施例1の上記(1)(2)(3)(5)の効果と同様な効果を得ることができる。
更に、発熱する電極部6aが隙間10によってガラス管4から離間し、ガラス管4と接触していない。これにより、電極部6aからガラス管4への熱伝導が抑制でき、放電灯の寿命向上の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0020】
次に実施例3に従う冷陰極蛍光放電灯1bを、図7を参照して説明する。但し、図7において、図1及び図6と実質的に同一の部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。図7の冷陰極蛍光放電灯1bは、図6と実質的に同一に形成された導電性ガラス部品2aの電極部6aに電子放出物質膜20を付加した他は図6の冷陰極蛍光放電灯1aと同一に形成されている。電子放出物質膜20は穴8を有する電極部6aの表面全体に形成されている。勿論、電子放出物質膜20を電極部6aの表面の一部のみに形成もできる。
【0021】
電子放出物質膜20は、電極部6aよりも高い電子放出機能を有する材料を電極部6aの表面に被着(好ましくは塗布して乾燥、焼き付けるか、又は蒸着)することによって形成される。電子放出物質膜20の材料として、特開平10−302714号公報に開示されているLa,Sr及びMnを含む導電性酸化物(例えば、La0.8Sr0.2Mn0.92.9)、又は特開平10−302712号公報に開示されているLi,Al及びOを含む化合物、Li、Ta及びOを含む化合物、Li、W及びOを含む化合物、又はCsやBaを含む化合物等を使用することができる。
【0022】
この実施例3に従う冷陰極蛍光放電灯1bによっても、実施例1の上記(1)(2)(3)(5)の効果と同様な効果を得ることができ、更に電子放出物質膜20に基づいて発光効率の向上を図ることができる。また、実施例2と同様に発熱する電極部6aが隙間10によってガラス管4から離間し、ガラス管4と接触していないので、電極部6aからガラス管4への熱伝導が抑制でき、放電灯の寿命向上の効果を得ることができる。
なお、電子放出物質膜20を図1の電極部6の表面に形成することもできる。
【実施例4】
【0023】
次に実施例4に従う冷陰極蛍光放電灯1cを、図8を参照して説明する。但し、図8において、図1及び図7と実質的に同一の部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。図8の冷陰極蛍光放電灯1cは、変形された導電性ガラス部品2bを有し且つ外部接続導体として金属キャップ3aを有する他は図7の放電灯1bと同一に形成されている。図8の形成された導電性ガラス部品2bは、図7に比べて軸方向に長く形成された封止部7aを有する他は図7の導電性ガラス部品2aと同一に形成されている。
【0024】
金属キャップ3aは、導電性ガラス部品2bの封止部7aに被せられ、ここに電気的及び機械的に結合されている。この金属キャップ3aは、図7のリード3と同様に外部回路に放電灯1cを接続するために使用される。
図8の放電灯1cは、実施例1の上記(1)(2)(3)(5)の効果と同様な効果を得ることができ、更に実施例3の電子放出物質膜20に基づく発光効率の向上効果を得ることができ、更に金属キャップ3aに基づく放電灯1cの外部接続の簡略化効果を得ることができる。更に、実施例2と同様に発熱する電極部6aが隙間10によってガラス管4から離間し、ガラス管4と接触していないので、電極部6aからガラス管4への熱伝導が抑制でき、放電灯の寿命向上の効果を得ることができる。
なお、図8の金属キャップ3aを、図1及び図6の冷陰極蛍光放電灯1、1aに適用することもできる。
また、金属キャップ3aを特許文献1に開示されているようにリード3に電気的及び機械的に結合するように変形することもできる。
また、図8において、金属キャップ3aをガラス管4の上に延在するように変形することもできる。
【0025】
本発明は、上述の実施例に限定されるものでなく、例えば、次の変形が可能なものである。
(1)図1に示すように、ガラス管4の両端に同一構成の導電性ガラス部品2を配置する代りに、異なる形状の導電性ガラス部品又は電極を配置することができる。
(2)ガラス管4に封入される放電用ガスを、例えばHe,Ne,Ar,Kr,及びXeから選択された1つ又は複数とすることができる。また、ガラス管4に封入されている水銀ガスを省くことができる。
(3)リード3及び金属キャップ3aを省いた構造にすることもできる。
(4)リード3の全体を同一材料で形成せずに異なる材料の組み合わせで形成することができる。例えば、図1において封止部7に挿入されるリード3の先端部を封止部7と熱膨張係数の差が小さい材料で形成し、それ以外の部分を異なる材料で形成することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 放電灯
2,2a、2b 導電性ガラス部品
3 リード
6 電極部
7 封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極部と該電極部と同一材料で連続に形成された封止部とを備えた導電性ガラス部品と、
前記導電性ガラス部品の前記封止部に対して機械的に結合された端部を有し且つ前記電極部を収容しているガラス管と
を備えていることを特徴とする冷陰極蛍光放電灯。
【請求項2】
更に前記導電性ガラス部品に電気的及び機械的に結合された外部接続導体を有していることを特徴とする請求項1記載の冷陰極蛍光放電灯。
【請求項3】
前記導電性ガラス部品の前記電極部は前記封止部と同一な外形寸法を有し、前記封止部と共に前記ガラス管に機械的に結合されていることを特徴とする請求項1又は2記載の冷陰極蛍光放電灯。
【請求項4】
前記導電性ガラス部品は、バナジン酸塩ガラスで形成されていることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の冷陰極蛍光放電灯。
【請求項5】
更に、前記電極部の外周面の少なくとも一部に被着された電子放出物質膜を有することを特徴とする請求項1又は2又は3又は4記載の冷陰極蛍光放電灯。
【請求項6】
電極部と該電極部と同一材料で形成された封止部とを備えた導電性ガラス部品を用意する工程と、
前記組立体の前記導電性ガラス部品をガラス管の端部の内側に挿入し、前記ガラス管を前記導電性ガラス部品に溶着する工程と
を備えていることを特徴とする冷陰極蛍光放電灯の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−29003(P2011−29003A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173696(P2009−173696)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】