説明

凍結製剤解凍装置

【課題】適正な温度での解凍、細菌汚染リスクの低減、安全作業、品質管理、作業効率向上を可能とした凍結製剤解凍装置の提供を図る。
【解決手段】プロテクタホルダーと、プロテクタバッグと、振盪ユニットと、コントロールユニットと、恒温水槽と、からなる凍結製剤解凍装置であって、凍結製剤バッグをプロテクタバッグ内に入れて該プロテクタバッグをプロテクタホルダーにより保持しつつ恒温水槽内で振盪させることで、凍結製剤を解凍する構成を採用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結製剤解凍装置に関し、詳しくは、適正な温度での解凍、細菌汚染リスクの低減、安全作業、品質管理、作業効率向上を可能とした凍結製剤を加温水槽方式で解凍する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
凍結製剤には、FFP製剤や赤血球製剤等の血液製剤が代表として挙げられる。FFP製剤は、献血された血液から得られた血漿を採血後6時間以内に凍結したもので、−20℃以下で保存されるFFP製剤の解凍は、米国では、30〜37℃の温度で解凍するか、米国食品医薬品局(FDA)承認の電子レンジで解凍するとされている。一方、日本国内では、30〜37℃の恒温水槽または、やむを得ず37℃の温水を張った容器で解凍する場合は、温度計を使用し、適宜温水を加えて30〜37℃の温度を保つことと定められているが、該方法は病院施設毎に異なっており、統一されていないのが現状である。
【0003】
また、FFPの投与は、凝固因子の欠乏による出血傾向の是正を目的に行うものであり、特に複数の凝固因子を補充することによる止血効果をもたらすことにある。しかし、解凍時の温度が適正でない場合、FFP製剤に悪影響を及ぼすことは必知であり、高温で解凍すると蛋白の変性を引き起こすことがある。また、逆に低い温度で解凍すると不溶性のクリオプレシピテートを生じることがあるため、特に解凍時の温度管理は非常に重要であることから、FFPの解凍には適正な温度での解凍、細菌汚染リスクの低減、安全作業、品質管理、作業効率向上などが求められていることから、それらの条件を満たしたFFPの解凍時間の短縮および簡易な操作方法を備えたFFP解凍専用装置の開発が望まれている。
【0004】
従来より世界的に採用されている解凍方法は、加温水槽方式、空気加温方式、マイクロウェーブ方式並びに温嚢方式が上げられ、各方式の利点を備えた専用解凍装置が夫々製品化されている。以下に加温水槽方式、空気加温方式、マイクロウェーブ方式及び温嚢方式について簡単に特徴を述べる。
【0005】
加温水槽方式は、いわゆる温水によるウォーターバス方式で、温水の攪拌による水温の管理がし易く、水温制御・水温安定性という利点がある。しかし、凍結製剤の水槽中での浮き、温水の交換を必要とするなどの欠点がある。
【0006】
また、空気加温方式は、いわゆる送風ブロワによる温風循環方式で、上記ウォーターバス方式の欠点である凍結製剤の水槽中での浮き、温水の交換といったことが生じないという利点がある。しかしながら、製剤全体を均一に加温することが難しく、温度制御・温度安定性が比較的難しいなどの欠点がある。
【0007】
さらに、マイクロウェーブ方式は、いわゆる電子レンジによる加熱方式で、作業が容易であるという利点はある。しかしながら、米国食品医薬品局(FDA)承認の電子レンジを使用しなければならず、また、温度管理が比較的困難であるという欠点がある。
【0008】
そして、温嚢方式は、いわゆる温水の入った袋体を当接する方式で、直接温水に触れることがないため衛生的であるという利点がある。しかしながら、製剤への加温が間接的であるため、解凍に時間を要するという欠点がある。
【0009】
以上のことから、それらの問題点を解決する空気加温方式の提案「凍結血漿用解凍装置」(特許文献1)や「凍結血液の解凍装置」(特許文献2)、また、金属粉や活性炭粉等からなる加温による提案「凍結血漿製の加温具」(特許文献3)などが提案されているが、それらのいずれも構造や手法に改善点が見られるものの、前述の解凍方法に跨った根本的な長所が得られたり、共通する欠点を補うものではなかった。
【0010】
【特許文献1】特開2001−218817号公報
【特許文献2】特開昭62−189073号公報
【特許文献3】特開2006−149678号公報
【非特許文献4】米国ヘルマー社製 凍結バック自動解凍器製品カタログ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、適正な温度での解凍、細菌汚染リスクの低減、安全作業,品質管理、作業効率向上を可能とした凍結製剤解凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、プロテクタホルダーと、プロテクタバッグと、振盪ユニットと、コントロールユニットと、恒温水槽と、からなる凍結製剤解凍装置であって、プロテクタホルダーは、フレーム構造であって、所定箇所に前記プロテクタバッグを保持するための保持手段を備え、プロテクタバッグは、上方に開口部を有するとともに、前記プロテクタホルダーに備えられた保持手段に対応する箇所に該プロテクタホルダーへの係止手段を備え、振盪ユニットは、固定フレームと振盪フレームからなり、固定フレームは、恒温水槽上辺に載置可能な構造となっており、振盪フレームは、前記プロテクタホルダーを保持するための保持機構を備えるとともに、振盪発生機構による振盪を伝達するための伝達機構を備え、且つ、一辺を回動枢軸として上下に振盪可能となるよう固定フレームに枢支され、コントロールユニットは、恒温水槽上辺に載置可能な構造となっており、少なくとも振盪発生機構、温度管理機構並びに攪拌機構を備えた構成となっている。
【0013】
また、本発明は、前記プロテクタホルダーが、U字型フレームと該U字型フレームの上部外側に接続されるC字型フレームとからなる構成を採ることができる。
【0014】
さらに、本発明は、前記プロテクタバッグの開口部が、外側に折り畳まれている構成を採用することができる。
【0015】
またさらに、本発明は、前記プロテクタバッグが、透明あるいは半透明である構成を採ることも可能である。
【0016】
またさらに、本発明は、前記振盪ユニットにおいて、固定フレームの下方に消波板が備えられている構成を採用し得る。
【0017】
そしてまた、本発明は、前記恒温水槽が、透明あるいは半透明である構成を採ることも可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる凍結製剤解凍装置によれば、凍結保存された凍結製剤をプロテクタバッグで内封して恒温水槽内の温水と隔離することによって、凍結製剤の破損による内容物が温水内に流れるのを防止するとともに、凍結製剤の細菌汚染リスクの低減を図ることができ、また、軟らかい材質のプロテクタバッグにより凍結製剤を保持しているため、突起物との接触等による凍結製剤の破損を防止することができ、さらには、凍結製剤が垂直に立てた状態で吊持され、恒温水槽内の水圧によってソフトに密着包持されるため、凍結製剤全体へ均一に温度が伝わることによって効率的な解凍を可能とするものである。
【0019】
また、本発明にかかる凍結製剤解凍装置によれば、プロテクタバッグの恒温水槽内への浸漬は、プロテクタホルダーの自重による浸漬がなされることにより、プロテクタバッグで内封された凍結製剤の浮き現象を防ぐことができ、また凍結製剤を包持したプロテクタホルダーを振盪フレームにおける保持機構により斜めに立てかけた状態で係止することも可能なため、製剤の出入時に温水に触れることなく出入可能であるとともに、製剤投与待機時間の微調整も可能とするものである。
【0020】
さらに、本発明にかかる凍結製剤解凍装置によれば、プロテクタバッグを透明あるいは半透明とすることにより、さらには、恒温水槽を透明あるいは半透明とすることにより、水槽内部の視認性が高くなり、解凍進行状態が外部から常時確認でき、破損した製剤の早期発見にも資するものである。
【0021】
またさらに、本発明にかかる凍結製剤解凍装置によれば、プロテクタホルダー、プロテクタバッグ、振盪ユニット、コントロールユニット並びに恒温水槽の各ユニットが夫々容易に分離可能であるため、部品交換などのメンテナンスにおける分解作業や清掃洗浄作業が容易に行えるものである。
【0022】
さらにまた、本発明にかかる凍結製剤解凍装置によれば、コントロールユニットに備えられた振盪発生機構と振盪ユニットにより、凍結製剤を水槽内で振盪させて効率的な早期解凍が可能となっている。
【0023】
そしてまた、本発明にかかる凍結製剤解凍装置によれば、凍結製剤がプロテクタバッグ内に収まることで温水に凍結製剤バッグが直接温水に触れることがなくなるため、温水付着による細菌汚染の防止が図れるとともに、プロテクタバックを暫時新しいものと交換可能であるため衛生的であるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明にかかる凍結製剤解凍装置の実施形態を、図面に基づいて詳しく説明する。
【0025】
図1及び図2は、本発明にかかる凍結製剤解凍装置1を示しており、図1は斜視図、図2は分解斜視図である。
該凍結製剤解凍装置1は、プロテクタホルダー8と、プロテクタバッグ6と、振盪ユニット3と、コントロールユニット4と、恒温水槽5から構成されている。
【0026】
本発明にかかる凍結製剤解凍装置1は、図2に示す通り、各ユニットとも容易に分離することが可能である。すなわち、図2は、分離可能なユニットごとに分解した状態を示したものである。
各ユニットとも容易に分離可能な構成とすることにより、部品交換などのメンテナンスにおける分解作業や清掃洗浄作業などが容易に行えることとなる。
【0027】
図3は、本発明にかかる凍結製剤解凍装置1におけるプロテクタホルダー8並びにプロテクタバッグ6を示す説明図である。
プロテクタホルダー8は、フレーム構造であって、所定箇所に前記プロテクタバッグ6を保持するための保持手段9を備えている。
【0028】
図面に示す通り、プロテクタホルダー8について、U字型フレーム8aと、該U字型フレーム8aの上部外側に接続されるC字型フレーム8bとからなる構造を採用することができる。かかる構造とすることで、U字型フレーム8aの上端部をプロテクタバッグ6の保持手段9bとして機能させることができるとともに、C字型フレーム8bがプロテクタホルダー8の恒温水槽5内への差込み及び取出しの際における把手機能を果たすことが可能となる。
【0029】
また、C字型フレーム8bの両端部(U字型フレーム8aから外側へはみ出した部分)は、プロテクタホルダー8を振盪ユニット3に差し込む際の係止機能としての役割を果たす。すなわち、プロテクタホルダー8を振盪ユニット3に差し込んだ際、該C字型フレーム8bの両端部が、振盪ユニット3における振盪フレーム10に備えられた保持機構14上に引っ掛かり、プロテクタホルダー8がそれ以上差し込まれない位置で係止されることとなる。
【0030】
なお、プロテクタホルダー8の材質については、特に限定するものではないが、金属製などの質量の重い材質からなることが好ましい。金属製など質量が重い材質とすることにより、プロテクタバッグ6の恒温水槽5内への浸漬において、プロテクタホルダー8の自重による浸漬がなされることとなり、プロテクタバッグ6で内封された凍結製剤Fの浮き現象を防止できる。
【0031】
プロテクタバッグ6は、上方に開口部6aを有するとともに、前記プロテクタホルダー8に備えられた保持手段9に対応する箇所に、該プロテクタホルダー8への係止手段7を備えている。
【0032】
プロテクタバッグ6の開口部6aについて、外側に折り畳まれている構造を採用することができる。かかる構造を採用することにより、開口端に厚みが出て、凍結製剤Fを開口部6aからプロテクタバッグ6内に差し入れる際に、スムーズに差し入れることが可能となるとともに、逆に凍結製剤Fを取り出す際に、開口部6aから手を差し入れても開口端に手が引っ掛かることなくスムーズに作業が可能となる。
【0033】
なお、プロテクタバッグ6について、透明あるいは半透明であることが好ましい。透明あるいは半透明であることで、プロテクタバッグ6内の視認性が高くなり、解凍進行状態が外部から確認できるとともに、破損した製剤の早期発見にも資することとなる。
【0034】
また、プロテクタバッグ6の材質については、柔軟材質のものであることが望ましい。柔軟材質とすることで、温水の水圧で製剤自体を保持可能であるとともに、製剤の破損リスクの低減・防止を図ることが可能となる。
【0035】
振盪ユニット3は、固定フレーム11及び振盪フレーム10から構成されている。
【0036】
固定フレーム11は、恒温水槽5上辺に載置可能な構造となっている。固定フレーム11を恒温水槽5上辺に載置した際に該固定フレーム11を固定すべく、例えば図2に示すように、固定フレーム11側に係止手段11aを備え、恒温水槽5側に保持手段5aを備える構造等が考え得る。
【0037】
振盪フレーム10は、プロテクタホルダー8を保持するための保持機構14を備えるとともに、振盪発生機構19による振盪を伝達するための伝達機構26を備えた構造となっている。
【0038】
保持機構14は、プロテクタホルダー8の差込みを受け入れるべく、該プロテクタホルダー8のフレームを差込み可能な一以上の凹部14aが形成された構造となっている。一の保持機構14における凹部14aの数については特に限定するものではないが、複数設けることが好ましく、FFP製剤Fの解凍効率やFFP温水解凍装置1全体の大きさ等を考慮して決定される。また、該凹部14aの上端部は、プロテクタホルダー8を差込み易くすべく、図面に示す通り、上端に向かって徐々に拡がる形状に成形されることが好ましい。
【0039】
かかる保持機構14は、振盪フレーム10における対向する両辺に夫々対になって備えられ、プロテクタホルダー8のU字型フレーム8aを挟持するとともに、C字型フレーム8bの両端部を係止する。
【0040】
なお、図7に示すように、少なくとも一辺の保持機構14における凹部14aの中間位置には、さらに凹状窪み14bを設ける態様が考え得る。かかる態様を採ることにより、図6(a)及び図7(a)に示すように、プロテクタホルダー8を振盪ユニット3上に立て掛けようとする際に、U字型フレーム8aの一曲部が該凹状窪み14b内に入り込んで安定して保持され、作業効率の向上に資することとなる。
【0041】
かかる振盪フレーム10は、一辺を回動枢軸15として上下に振盪可能となるよう前記固定フレーム11に枢支されている。そして回動枢軸15に対向する辺上には、振盪発生機構19による振盪を伝達するための伝達機構26が備えられており、該振盪発生機構19の動作により伝達機構26が上下に振盪し、それによって振盪フレーム10が固定フレーム11に枢支された一辺を回動枢軸15として上下に振盪する。
【0042】
なお、振盪ユニット3において、図面に示すように、固定フレーム11の下方に消波板27が備えられた構造とすることが好ましい。振盪フレーム10の振盪により、保持されたプロテクタホルダー8並びにプロテクタバッグ6が恒温水槽5の温水中で振盪するが、その際に温水に波が発生することとなる。かかる波は、恒温水槽5を越えて温水がこぼれる原因となる。したがって、かかる消波板27を備えることによって、振盪により発生する波を打ち消し、温水こぼれ防止を図ることが可能となる。
【0043】
コントロールユニット4は、振盪の発生や温水の温度管理等をコントロールするものであり、恒温水槽5上辺に載置可能な構造となっている。コントロールユニット4を恒温水槽5上辺に載置した際に該コントロールユニット4を固定すべく、例えば図2に示すように、コントロールユニット4側に係止手段4aを備え、恒温水槽5側に保持手段5bを備える構造等が考え得る。
【0044】
コントロールユニット4には、少なくとも振盪発生機構19、温度管理機構20並びに攪拌機構21が備えられている。
振盪発生機構19は、コントロールユニット4内に内蔵された変芯カムモーター等から伝達機構26を介して振盪ユニット3を振盪させるものである。
温度管理機能20は、コントロールユニット4内に内蔵されたヒーターやサーモスタッド等を作動し、温水の温度管理を司るものである。
攪拌機能21は、コントロールユニット4内に内蔵されたスクリューモーター等により、恒温水槽5内の水温が均一になるよう温水の攪拌・回流を行うものである。
【0045】
コントロールユニット4には、上記した機構以外にも、時間制御機構や安全機構、電源回路機構など、必要に応じて各種機構を内蔵させることが可能である。
そしてこれら各機構は、コントロールユニット4上の操作盤18によって操作・設定が行われ、かかる操作・設定によって各機構が自動制御あるいは手動制御されることとなる。
【0046】
恒温水槽5は、温水を貯留するとともに、振盪ユニット3並びにコントロールユニット4を載置可能な構造となっており、該各ユニットを保持すべく恒温水槽5上辺に保持手段5a,5bを備えた構造となっている。
【0047】
かかる恒温水槽5について、透明あるいは半透明であることが好ましい。透明あるいは半透明であることで、恒温水槽5内の視認性が高くなり、プロテクタバッグ6の透明・半透明との相乗作用によって、解凍進行状態が外部から確認できるとともに、破損した製剤の早期発見にも資することとなる。
【0048】
図4乃至図7は、凍結製剤解凍装置1の実施態様を示す側面図である。
凍結製剤解凍装置1において、振盪ユニット3とコントロールユニット4が恒温水槽5の上辺に載置される。コントロールユニット4に備えられた温度管理機構20が、サーモスタッド等によって恒温水槽5内の水温を測定し、該測定値に応じてヒーター等のON・OFF制御を行う。さらに、コントロールユニット4に備えられた攪拌機構21が、スクリューモーター等によって恒温水槽5内の温水の攪拌・回流を行う。その際の水流について、図4中の黒矢印で示す。
【0049】
図5に示すように、コントロールユニット4に備えられた振盪発生機構19の変芯カムモーター等による動作が伝達機構26を介して振盪ユニット3に伝達することで、振盪ユニット3が連動して上下に振盪する。これにより、振盪ユニット3に保持手段14を介して保持されているプロテクタホルダー8が同様に上下に振盪し、併せて該プロテクタホルダー8に保持されているプロテクタバッグ6が上下に振盪することで、該プロテクタバッグ6内に挿入されている凍結製剤Fを上下に振盪させる。
【0050】
なお、振盪の単位時間あたりの回数について、特に限定するものではないが、1分間に140〜180回の範囲で上下に往復する程度が好ましい。ゆっくりの場合(1分間に140回より少ない場合)では、振盪による解凍時間の加速に効果がなく、逆に早すぎる場合(1分間に180回より多い場合)においても、同様であるからである。
【0051】
また、振盪のストローク(上下動の距離)について、20mm前後が好ましい。ストロークが小さいと、構造的に小型化が可能であるが、振盪があたえる解凍への影響力も少なくなってしまい、逆にストロークが大きいと振盪の影響力は大きいが、構造的に大型化してしまうだけでなく、水槽内の温水の波立ちが激しくなるなど、不具合が生じる。そこで、振盪が解凍へあたえる影響力と構造的小型化を考慮し、振盪のストロークは20mm前後であることが好ましい。
【0052】
図6(a)及び図7(a)に示すように、プロテクタバッグ6内からの凍結製剤Fの出入時に、プロテクタホルダー8を振盪ユニット3上に斜めに立て掛け状態で係止することも可能な構造となっており、凍結製剤Fの出入時における作業効率や衛生面の向上、製剤投与待機時間の微調整が可能となる。
なお、プロテクタホルダー8の振盪ユニット3への差込み及び取出しに際しては、C字型フレーム8bが把手機能を果たすこととなる。
【0053】
図8は、凍結製剤解凍装置1の解凍性能を示すグラフ図並びに表である。なお、かかる解凍性能は、FFP製剤の解凍についての実験例を基としている。
図8(a)は、本装置による解凍性能の所要時間を示すグラフ図である。図面からわかるように、従来の比較対照群はFFP−1を完全に解凍するまでには、平均17.0分費やしたのに対し、本装置群は、平均4.6分で解凍することができた。
【0054】
図8(b)は、本装置による単位数とバッグ数別における所要解凍時間に関するグラフ図である。FFP−1で平均5.1分、FFP−2で平均8.8分、FFP−5で平均14.5分が計測された。3種のFFP製剤Fともバッグ数が4バッグまで増えても解凍時間が長くなることがない結果が得られた。
【0055】
図8(c)は、本装置による解凍時における水槽5に貯留された温水の水温変動を示すグラフ図である。FFP−1とFFP−2では1〜4バッグと各バッグ数において水温の変化は見られず、温度条件は37℃で安定している。FFP−5では1〜2バッグの解凍までは温度変化は見られなかったが、3バッグの解凍で開始1分経過までに36℃まで水温が低下し、解凍終了と同時に37℃に水温が上昇し安定した。また、4バッグ場合、解凍開始から徐々に水温が低下し、10分後に最低温度34.4℃を示した。解凍終了してから再び水温が上昇し、その後、5分で37℃に戻り安定した結果が得られた。
【0056】
図8(d)は、本装置による凝固因子活性の測定結果を示すデータ表である。プロトロンビン時間(PT)は本装置群で88.2%、比較対照群で81.7%であり有意差が認められた(p<0.005)。
その他の項目の活性化部分トロンボプラスチン(APTT)、フィブリノーゲン、不安定凝固因子(第5因子、第8因子)では、有意差は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、人体部位、人体体液、冷凍医療薬、研究材料、医療サンプル、細菌培養薬など各使用目的に合わせて解凍される医薬品ならび食品の医療機関ならびに研究分野に応用することも可能であり、その応用範囲は広い。したがって、本発明にかかる凍結製剤解凍装置1の産業上の利用可能性は極めて高いものと解される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明にかかる凍結製剤解凍装置を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる凍結製剤解凍装置を示す分解斜視図である。
【図3】本発明にかかる凍結製剤解凍装置におけるプロテクタホルダー並びにプロテクタバッグを示す説明図である。
【図4】本発明にかかる凍結製剤解凍装置の実施態様を示す側面図である。
【図5】本発明にかかる凍結製剤解凍装置の実施態様を示す側面図である。
【図6】本発明にかかる凍結製剤解凍装置の実施態様を示す側面図である。
【図7】本発明にかかる凍結製剤解凍装置におけるホルダー保持プレートを示す拡大斜視図である。
【図8】本発明にかかる凍結製剤解凍装置の解凍性能を示すグラフ図並びに表である。
【符号の説明】
【0059】
1 凍結製剤解凍装置
3 振盪ユニット
4 コントロールユニット
5 恒温水槽
6 プロテクタバッグ
7 係止手段
8 プロテクタホルダー
9 保持手段
10 振盪フレーム
11 固定フレーム
14 保持機構
15 回動枢軸
18 操作盤
19 振盪発生機構
20 温度管理機構
21 攪拌機構
26 伝達機構
27 消波板
F 凍結製剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテクタホルダーと、プロテクタバッグと、振盪ユニットと、コントロールユニットと、恒温水槽と、からなる凍結製剤解凍装置であって、
プロテクタホルダーは、フレーム構造であって、所定箇所に前記プロテクタバッグを保持するための保持手段を備え、
プロテクタバッグは、上方に開口部を有するとともに、前記プロテクタホルダーに備えられた保持手段に対応する箇所に該プロテクタホルダーへの係止手段を備え、
振盪ユニットは、固定フレームと振盪フレームからなり、固定フレームは、恒温水槽上辺に載置可能な構造となっており、振盪フレームは、前記プロテクタホルダーを保持するための保持機構を備えるとともに、振盪発生機構による振盪を伝達するための伝達機構を備え、且つ、一辺を回動枢軸として上下に振盪可能となるよう固定フレームに枢支され、
コントロールユニットは、恒温水槽上辺に載置可能な構造となっており、少なくとも振盪発生機構、温度管理機構並びに攪拌機構を備えていることを特徴とする凍結製剤解凍装置。
【請求項2】
前記プロテクタホルダーが、U字型フレームと該U字型フレームの上部外側に接続されるC字型フレームとからなることを特徴とする請求項1に記載の凍結製剤解凍装置。
【請求項3】
前記プロテクタバッグの開口部が、外側に折り畳まれていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の凍結製剤解凍装置。
【請求項4】
前記プロテクタバッグが、透明あるいは半透明であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の凍結製剤解凍装置。
【請求項5】
前記振盪ユニットにおいて、固定フレームの下方に消波板が備えられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の凍結製剤解凍装置。
【請求項6】
前記恒温水槽が、透明あるいは半透明であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の凍結製剤解凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−50316(P2009−50316A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217333(P2007−217333)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(393005277)北陽電機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】