説明

凝縮性ガスを送風により除く装置を具備したマイクロスコープ

【課題】従来の装置では、マイクロスコープを用いて濡れた試料やヒトの皮膚表面を観察するとき、時間が経つにつれて撮像素子や光学系のレンズに水蒸気の吸着が吸着することの原因で、撮像素子により得られる画像が徐々に曇っていくことの防止を課題とする。
【解決手段】水蒸気や有機化合物蒸気が、レンズ、隔壁、CCD画像素子の表面上に凝縮することを防ぐために、マイクロスコープ観察部位に常に風を送風し解決した。二ヶ所の穴のうち一ヶ所をチューブ挿入口とし、一例としてポリエチレンチューブを挿入し固定する。このチューブ管の他方の端に、送風用あるいは吸引用マイクロポンプを取り付ける。送風用マイクロポンプのチューブには途中に風量調整器を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロスコープや光学顕微鏡やカメラを用いて被写体として湿った試料を用いる際に、明瞭な映像を得るマイクロスコープや光学顕微鏡やカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトの発汗状態の連続的な観察において、発汗の微分的な状態を観察するため、乾燥空気を送風する技術はある。しかしながら、送風による水蒸気の吸着が光学素子表面におけるくもり除去を目指しているものではない。また、光学素子表面への吸着防止、有機ガスの吸着防止が光学観察において必須であることに着目し発明した。本発明の発明者は過去、局所発汗の状態を研究すると同時に発汗量を測定する局所発汗顕微プローブ(特許第2050701号)の特許を有している。この発明は発汗を観察するために間を設けたプローブを皮膚上に設置し、そのプローブ内に乾燥空気を送風し、ついで発汗より湿度の上昇を測定する手段を内蔵する局所発汗顕微プローブである。この局所発汗顕微プローブには空気が除湿部を通過する過程で除湿され、湿度がほぼゼロパーセントの乾燥空気となって供給されるとあるが、発汗による水蒸気がレンズ表面に付着し鮮明な映像を得るには完全ではなかった。
【0003】
【特許文献1】特許第2050701号公報
【特許文献2】特開平10− 57322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、本発明の発明者等が湿度を指標とした局所発汗量連続測定装置(特許文献1)が出願されている。この局所発汗量連続測定装置は、皮膚表面に装着されたカプセルの前室において皮膚表面から放散された汗の湿水分と外部から供給された乾燥空気とが拡散混合された拡散気湿がカプセルの後室に導かれ、後室に配設された湿度センサ及び温度センサにより拡散気湿の相対湿度と温度とが検知されると、湿度センサ及び温度センサからの検知信号に基づいて皮膚表面から放散された発汗量を温度依存性の無い絶対的な発汗量として演算し、その発汗量を連続的にプリンタ等でプリントアウトさせるように構成されている。
【0005】
これからわかるように、上記乾燥空気は発汗量を測定するものであり、この局所発汗量連続測定装置は、皮膚表面から放散された汗の量は連続して測定することはできるが、同一部位にある多数の汗腺から汗が拍出される状況を観察することはできないため、発汗量だけでは診断不能な、例えば汗腺の異常、あるいは神経伝達の異常などを発見することができないという問題があった。
【0006】
そのため、本発明の発明者は特願第2538538号の「汗腺活動観察可能な発汗量連続測定装置」を出願し、皮膚表面から放散された汗の量を連続して測定するとともに同一部位にある汗腺の活動状態を映像で観察し、発汗量の変化と、汗腺の活動状態とを同期的に映像で表示できるようにして、汗腺の異常、あるいは神経伝達の異常などを診断できるようにした。しかしながら上記「汗腺活動観察可能な発汗量連続測定装置」は皮膚表面に着接されて発汗を検知する部位や汗腺活動を撮影する部位の構造が複雑で小型化が困難であったため、例えば小さな凹部のような身体部位に着接させることが極めて難しく、着接可能な身体部位が限定されるため、身体の任意部位の発汗量の計測や発汗活動を観察することは極めて困難であるという問題がある。
【0007】
そこで特許文献2に示すように、身体の任意部位に着接させることが可能で、その着接部位の皮膚表面からの発汗の検知や発汗活動を撮影することができるハンディ型の局所発汗顕微プローブが示されている。
【0008】
ここにも皮膚表面からの発汗を導入する発汗導入孔と、この発汗導入孔から導入された前記発汗と外部から供給された乾燥空気とを混合して拡散気湿とする拡散室と、前記拡散室から導いた前記拡散気湿の相対湿度及び温度を検知する湿度センサ及び温度センサを取着したセンサ室と、前記皮膚表面における汗腺の活動を撮影してビデオ信号を出力する撮影手段を取着した撮影室とをカプセル内に形成したプローブにおいて、前記カプセルをハンディ型に形成するとともに、このカプセルの先端を凸状外形面に形成し、前記凸状外形面の先端部に前記発汗導入孔を形成することである。
【0009】
この乾燥空気の導入は、皮膚表面に着接されるハンディ型のカプセル先端部分の外形面が凸形に形成されており、プローブを手で持って身体の任意部位の皮膚表面に着接させることができるため、身体の任意部位の皮膚表面からの発汗を発汗導入孔から拡散室に導入することができる。拡散室において、皮膚表面からの発汗と外部から供給された乾燥空気とが混合され拡散気湿となった後、拡散気湿がセンサ室に導入されると、センサ室に設けられた湿度センサ及び温度センサは、この拡散気湿の相対湿度及び温度を検知し、それぞれの検知信号を出力する。一方、撮影手段は皮膚表面における汗腺の活動を撮影してビデオ信号を出力する。尚、前記凸状外形面に光ファイバーを設け、前記発汗導入孔の周面から前記皮膚表面を照明することができるため、皮膚表面における汗腺の活動を明瞭に撮影することができるものである。然しながらこの場合の乾燥空気もまた発汗量を明瞭に撮影するための拡散空気である。この技術の基本が汗の微分的観察であったが、同時に送風により光学素子への水蒸気による曇りを防ぐことになり鮮明な画像が得られることに気がついた。本発明はこの送風による光学系光学素子への水蒸気の吸着防止に関する。従来の顕微鏡やマイクロスコープやカメラの観察装置は収納箱から取り出すと室温、または、それ以下の温度になっていることもあり、マイクロスコープによりヒトの皮膚表面を撮影したりすると、そのレンズがくもり被写体がうまく撮影できない問題があった。前記現象は、時間が経つにつれてCCD集積回路素子により得られる画像が徐々に曇っていくときにも見られた。
【0010】
これはヒト皮膚表面から常に放出されている水蒸気や汗が、そのマイクロスコープ内部のCCD画像素子へ至る光学系に用いられているレンズや透明な隔壁板に水蒸気等が付着することにより生じる。同様のことは、ぬれた木の葉の観察や、ぬれた材料表面を直接観察するときにも、レンズの曇りによるマイクロスコープより得られる画像の鮮明さが失われる。これはマイクロスコープや顕微鏡の対物レンズや光学系の装置の温度が低いとき、とくにきわだって生じる。そこで、このくもりを除去することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
くもりを解決するための手段として、光学素子表面における水蒸気の存在量を低くすればよい。すなはち、飽和湿度に達しないようにすればよい。このためには、光学素子表面を加熱するか、あるいは乾燥した風を連続的に送り、レンズ表面における水蒸気の吸着を防げばよい。
【発明の効果】
【0012】
マイクロスコープ、及び顕微鏡対物レンズの撮像素子を用いて多湿試料表面の明瞭な画像を得るために、送風により水蒸気や試料から発生するガスの光学素子への吸着を防ぐための送風装置を設置することにより蒸気を発散する試料の明瞭な拡大撮影が可能となった。
また、ガス流は撮像素子のCCD表面、あるいは対象試料と撮像素子間のレンズ、あるいは試料との間に設けた間隙板の表面に風を送風するとともに、風は乾燥空気、空気、窒素ガス、あるいは気体状態の有機ガス、及び無機ガスとし、光学素子表面の加熱をする手段として、熱線を用いてのレンズの表面の加熱、送風ガスの加熱、及び光学素子の表面に附着させた電気抵抗への通電による加熱を用いて、光学素子へのガス吸着防止を送風と併せて併用することにより、撮像素子への蒸気の吸着による曇り、すなわち一例として水蒸気による曇りを防ぐことが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は水蒸気や有機化合物の蒸気の凝縮を除く工夫を行なった。すなはち、マイクロスコープの観察部位が密閉された空間であるため、水蒸気や有機化合物蒸気が飽和蒸気圧に達し、レンズ、隔壁、あるいはCCD画像素子の表面上に凝縮することを防ぐために、マイクロスコープ観察部位に常に室内空気を直接用いた風または乾燥した風を送風し解決した。送風は吸引あるいは吐出形小型ポンプを用いて送風する。小型ポンプからの風はチューブにより直接または間接的に連絡した。このチューブを通じて送風を実施することにより、曇りが完全に除去できた。また、同時に光学素子の加熱も併用することで一層鮮やかな映像がCCD画像素子により得られることを見いだした。
【実施例1】
【0014】
図1は、マイクロスコープの縦断面図である。湿ったり濡れたりしている被写体1に、装置であるマイクロスコープを接近させる。装置のレンズ5側の該レンズ5の周りのみに風が送風2できるようにし、レンズ5後方の撮像素子4を配置したものである。このようにして、レンズ5の周りのみの水蒸気の湿度を下げ、レンズ5への曇りを防いだ。
マイクロスコープの接触部において密閉空間内で生じるレンズ5への水蒸気やガスの吸着に基づいた結果生じるくもりを除去するために送風2を行なうようにしたもので、送風2を導く穴は開口部を除いた箇所であればよい。すなはち、側面あるいは前面の被写体が接触しない部分に設ける。
二ヶ所の穴のうち一ヶ所をチューブ挿入口とし、一例としてポリエチレンチューブを挿入し固定する。このチューブ管の他方の端に、送風用あるいは吸引用マイクロポンプを取り付ける。送風用マイクロポンプのチューブには途中に風量調整器を設ける。風の出口は前室壁面のどの部分でもよい。また被写体が開口部へ密着して撮像するときは風の出口は必ず必要であるが、被写体を開口部よりはなして観察するときは風の出口は開口部と被写体の間隙を利用することもできる。
【0015】
図2は、図1と同じくマイクロスコープの縦断面図であり、透明な隔壁板9の周囲に送風2を行うようにしたものである。
【0016】
図3は図2と同様にマイクロスコープの縦断面図であるが赤外LED7によりレンズ5表面を加熱するようにしたものである。
【0017】
図4は他の実施例であり、撮像用ファイバー8を用いる実施例である。この場合は撮像素子4と湿ったり、濡れたりしている被写体1との間に撮像用ファイバー8が設置されている。この場合は撮像用ファイバー8の被写体1側に送風2を配置する。
【0018】
図5は、さらに他の実施例としてマイクロスコープと水に浮かんだ試料の側面図である。この場合は水11に浮かんだ試料12を撮像するものであり、レンズ5と該試料12との間に開口を有する仕切り板12を設け送風2を行うようにしたものである。
【実施例2】
【0019】
手の指の皮膚表面からの汗の拍出をマイクロスコープ開口部へ指の指紋部を接触させることにより観察した。送風がないときは得られる画像に曇りが生じ明確な観察が得られなかった。マイクロスコープ前室内レンズ5への送風により指紋部の発汗活動が明確に観察された。送風は同時に被写体である指紋の皮膚表面の水蒸気を取る作用が風量が多いときには認められた。この効果は風量を調節することによりレンズ5表面のみの曇り除去を行い、また同時に多量の風量で皮膚表面からの水分除去も兼ねることが可能であった。
【実施例3】
【0020】
湿った木の葉の表面の観察を顕微鏡で行ったところ対物レンズに曇りが生じた。これは収納して低温に保管されていた顕微鏡の対物レンズが曇ったために生じた。対物レンズに送風を実施することにより水蒸気の付着による曇りも長期に発生するせず非常に鮮明な画像が得られた。また長く室温保管されていた顕微鏡においても湿った試料を観察するときは曇りが生じたので、対物レンズへの送風が必要であった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
理科教育において顕微鏡は多用されている。また産業においても計測することが第一に大切で、マイクロスコープによる観察は欠かせない。計測産業において利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】前室にレンズを用いたときのマイクロスコープの縦断面図である。
【図2】前室に透明な隔壁板を用いたときのマイクロスコープの縦断面図である。
【図3】赤外LEDを使用した場合を使用した場合のマイクロスコープの縦断面図である。
【図4】撮像用ファイバーを使用した場合のマイクロスコープの側面図である。
【図5】水に浮かんだ試料を撮像するときのマイクロスコープと試料の側面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 湿った被写体あるいは濡れた被写体
2 送風
3 送風管
4 撮像素子
5 レンズ
6 風の出口
7 赤外LED
8 撮像用ファイバー
9 透明な隔壁板
10 開口部
11 前室
12 仕切り板
13 水
14 水に浮かんだ試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロスコープあるいは顕微鏡あるいはカメラにおいて、水蒸気あるいは凝集性ガスを発生する試料表面の明瞭な画像を得るために、該光学素子のレンズ表面に向け開口した送風管により送風する送風装置を設置したマイクロスコープあるいは顕微鏡あるいはカメラ。
【請求項2】
送風管により送風されるガス流は撮像素子と対象試料との間に設けた隔壁板表面に風を送風する請求項1記載のマイクロスコープあるいは顕微鏡あるいはカメラ。
【請求項3】
風は乾燥空気、空気、窒素ガス、亜酸化窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、炭酸ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガスとした請求項1記載のマイクロスコープあるいは顕微鏡あるいはカメラ。
【請求項4】
撮像素子と試料間に設置された光学素子表面の加熱をする手段として、熱線を用いての光学素子表面の加熱、送風ガスの加熱、及び光学素子表面に附着させた電気抵抗への通電による加熱を用いて、光学素子へのガス吸着を送風と併せて併用する請求項1記載のマイクロスコープあるいは顕微鏡あるいはカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−52387(P2007−52387A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269120(P2005−269120)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(504253980)有限会社ピコデバイス (11)
【Fターム(参考)】