説明

凝集検査用微粒子

【課題】抗原あるいは抗体との非特異的な結合性が低く、検査感度を大幅に向上させることのできる凝集検査用微粒子、その製法、及びこれらを用いた凝集検査試薬を提供する。
【解決手段】その表面に、特定抗原あるいは特定抗体に対する結合性の低い部位を有し、当該部位が、下記式(1)で表される構造及び/又は下記式(2)で表される構造を含むものであることを特徴とする、粒子径1nm〜100μmの、凝集検査用微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集反応を利用した検査に用いる凝集検査用微粒子、特に試料中の抗原あるいは抗体の有無を凝集反応を利用して検査するのに適した凝集検査用微粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応をはじめとした分子間の特異的相互作用を利用した凝集反応は、生体試料、食品、環境中の特定の成分等の測定、検査に広く用いられている。
特にポリスチレン系ラテックス粒子は、他の担体に比べ保存時の安定性に優れ、抗原抗体反応等のタンパク質や脂質等の生理活性物質を強く吸着固定化し、さらに固定化した抗原あるいは抗体を長期間安定に保存しうる点でも優れているため、多くの検査反応試薬、特に凝集反応試薬の担体として汎用されている。
こうした検査用微粒子は、ポリスチレン微粒子の表面に特定物質に対する特異的な結合性を有する分子、例えば抗体等、を物理吸着、あるいは共有結合によって固定化した後に、非特異的吸着の低減のためウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumine, BSA)やカゼイン、スキムミルク等を飽和吸着させる等のブロッキング操作を行う(例えば特許文献1等)。
【0003】
しかし、このようにして調製したポリスチレン粒子は分散・保存安定性に欠け非特異的吸着の低減も十分ではない。このため、微粒子表面に固定化した抗体本来の感度を大きく低下させてしまうことが多く、擬陽性の原因ともなっている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−215128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、抗原あるいは抗体に対する特異的な結合性の高い部位を有するだけでなく、これ以外の部位においてこれら抗原あるいは抗体との非特異的な結合性が低く、検査感度を大幅に向上させることのできる凝集検査用微粒子、その製法、及びこれらを用いた凝集検査試薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その表面に、特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗原に対する結合性の低い部位を有するか、又は、特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗体に対する結合性の低い部位を有する、粒子径1nm〜100μmの凝集検査用微粒子であって、当該特定抗原に対する結合性の低い部位あるいは当該特定抗体に対する結合性の低い部位が、下記式(1)で表される構造及び/又は下記式(2)で表される構造を含むものであることを特徴とする、凝集検査用微粒子を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0007】
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4の炭化水素基を表し、nは10〜600の数を表す。)
【0008】
【化2】

(式中、mは10〜600の数を表す。)
【0009】
また本発明は、上記凝集検査用微粒子の好ましい製造方法として、下記式(4)で表されるマクロモノマー及び/又は下記式(5)で表されるマクロモノマーと、下記式(6)で表されるマクロモノマーと、スチレンとを、極性溶媒中で重合させてポリマー粒子を得、次いでこのポリマー粒子の表面に抗原又は抗体を、結合又は吸着させることを特徴とする、凝集検査用粒子の製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
【化3】

(式中、nは上記式(3)と同義である。)
【0011】
【化4】

(式中、R’及びmは上記式(3)と同義である。)
【0012】
【化5】

(式中、kは上記式(3)と同義である。)
【0013】
また本発明は、上記凝集検査用微粒子を、リン酸緩衝食塩水に分散させたことを特徴とする、凝集検査用試薬を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果は、抗原あるいは抗体に対する特異的な結合性の高い部位を有するだけでなく、これ以外の部位においてこれら抗原あるいは抗体との非特異的な結合性が低く、検査感度を大幅に向上させることのできる凝集検査用微粒子、その製法、及びこれらを用いた凝集検査試薬を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明の凝集検査用微粒子について、好ましい実施態様を例に説明する。
本発明の凝集検査用微粒子は、粒子径1nm〜100μmの粒子であって、その粒子の表面に、特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗原に対する結合性の低い部位を有するか、又は、特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗体に対する結合性の低い部位を有し、当該特定抗原に対する結合性の低い部位あるいは当該特定抗体に対する結合性の低い部位が、上記式(1)で表される構造及び/又は上記式(2)で表される構造を含むものであれば特に限定されるものではない。
【0016】
本発明の凝集検査用微粒子において、ベースとなる粒子は、特に限定されるものではなく、シリカ、金、磁性微粒子、半導体粒子等の金属化合物微粒子等の無機粒子でも、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、有機ポリシロキサン、有機ポリシルセスキオキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル等の有機ポリマーでもよいが、好ましくは水中や生理食塩水中での分散安定性の観点からは有機ポリマーが適しており、特にポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0017】
上記凝集検査用微粒子は、その粒子径が1nm〜100μmの粒子であることが必要であり、好ましくは10nm〜100μm、より好ましくは50nm〜100μm、最も好ましくは100nm〜10μmの粒子であることがよい。粒子径が1nm未満であると検査時の凝集効率が悪く検査精度が低下する。また粒子径が100μm超であると安定性が悪くなり不要な凝集を来たす等のためやはり検査精度が低下する。
【0018】
本発明の凝集検査用微粒子は、上記粒子表面に、特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗原にに対する結合性の低い部位を有するか、又は、特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗体に対する結合性の低い部位を有するものである。
【0019】
この特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、抗体、若しくはレクチンを例示することができる。レクチンとしては、特に限定されるものではなく、天然のレクチンでも人工のレクチンでもよく、例えばArachis hypogaea(ピーナッツレクチンとも称される。以下PNAと略記する場合がある。)、Agaricus bisporus、Bauhinia purpurea等を例示することができる。
具体的には、特定抗原としての腫瘍マーカーである癌胎児性抗原(CEA)に対しては、抗癌胎児性抗原(癌胎児性抗体)、α−フェトプロテイン(AFP)に対しては、抗α−フェトプロテイン、ヒト絨毛性刺激ホルモンβ鎖に対しては抗ヒト絨毛性刺激ホルモンβ鎖、炎症マーカーであるC−反応性蛋白質(CRP)に対しては抗C−反応性蛋白質(C−反応性蛋白質抗体)、ガラクトシルβ1−3−N−アセチルガラクトサミン残基を有するThomsen Friedenreich抗原(TF抗原)に対してはPNA、等を例示することができ、より好ましくはC-反応性蛋白質(CRP)に対して抗C−反応性蛋白質(C−反応性蛋白質抗体)、Thomsen Friedenreich抗原(TF抗原)に対してはPNAを有することが特性の高さ等から好ましい。
【0020】
また、特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、抗原を例示することができる。
具体的には、特定抗体としてのリウマチ因子に対してはヒト変性IgG、イムノグロブリンG(IgG)に対しては抗イムノグロブリンG(Anti−IgG)、インフルエンザ等のウイルス抗体に対してはウイルス自体や抗原性部位、感染症マーカーである抗ストレプトリジン−O(ASO)に対してはストレプトリジンO、等を例示することができ、より好ましくは感染症マーカーである抗ストレプトリジン−O(ASO)に対してストレプトリジンOを有することが特性の高さ等から好ましい。
【0021】
上記粒子表面をこれらの特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位、あるいは特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位とするため、上記抗原あるいは抗体を粒子表面に導入する方法については、特に限定されない。共有結合による方法が最も好ましいが、物理的吸着によってもよい。
【0022】
上記抗原あるいは抗体を共有結合で結合させる場合、その方法は限定されないが、一般的にタンパク質やペプチドの固定化に用いられる縮合剤(カルボジイミド等)を用いたアミド結合の形成による導入が最も好ましい。ここで用いられる縮合剤は特に限定されないが、特に1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCD)や1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSCI)が好ましい。
【0023】
本発明の凝集検査用微粒子における、粒子の表面に有する特定抗原に対する結合性の低い部位又は特定抗体に対する結合性の低い部位は、ノニオン性で且つ水和力が高い、N−ビニルアセトアミドを構成単位とする重合鎖及び/又はポリエチレングリコール鎖、具体的には、下記式(1)で表される構造及び/又は下記式(2)で表される構造を含む。
【0024】
【化6】

(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4の炭化水素基を表し、nは10〜600、好ましくは30〜300、より好ましくは50〜200の数を表す。)
【0025】
【化7】

(式中、mは10〜600、好ましくは50〜300、より好ましくは80〜200の数を表す。)
【0026】
このような、特定抗原に対する結合性の低い部位又は特定抗体に対する結合性の低い部位を、その表面に有する粒子として、好ましくは、下記式(3)で表される構造を有するポリマーを主成分とする粒子を例示することができる。
【0027】
【化8】

(式中、R’は水素原子又は炭素原子数1〜4の炭化水素基を表す。nは上記式(1)と同義である。mは上記式(2)と同義である。kは10〜600、好ましくは30〜300、より好ましくは50〜200の数を表す。Aは抗原又は抗体を表す。w、x、y、zはポリマーの分子量を1万〜100万、好ましくは5万〜100万、より好ましくは10万〜100万とする数であり、且つ(x+y):z:w=1:0.2〜2.5:5〜300、好ましくは1:0.2〜2.5:10〜200、より好ましくは1:0.2〜2.5:20〜100の割合である。尚、xとyは何れか一方が0であってもよい。w、x、y、zの各繰り返し数に対応する各繰り返し単位の主鎖における順序は任意である。)
【0028】
尚、上記式(3)で表される構造を有するポリマーは、本発明の効果を阻害しない範囲内(好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜25質量%)でその他の構造(例えば、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)を有していてもよい。
【0029】
本発明の凝集検査用微粒子は、上記のような特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗原に対する結合性の低い部位を有するか、又は、特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗体に対する結合性の低い部位を、粒子の表面に有するものである。
本発明の凝集検査用微粒子においては、これら特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗原に対する結合性の低い部位、あるいは、特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗体に対する結合性の低い部位が存在する、本発明で言うところの「粒子の表面」とは、必ずしも粒子の最外層末端にこれらの部位が存在する必要はなく、概ね最外層末端から10nmの深さまでのなかに存在すればよい。従って、粒子径が20nm以下の粒子の場合は、単に粒子中に有することと同義であり、そのような状態でも差し支えない。
尚、最外層末端から10nmの深さまでのなかの分子構造の存在量は、X線光電子分光法(XPS)によって分析可能である。また、抗原あるいは抗体を結合させる場合、粒子形成後に結合させれば当然に粒子表面に存在することとなり、粒子全体としての抗原あるいは抗体の存在量を分析すれば得ることができる。
【0030】
本発明の凝集検査用微粒子において、特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗原に対する結合性の低い部位の存在量(濃度)は、それぞれ下記の通りである。
特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位の存在量(濃度):粒子1g当たりの該部位の存在質量として、好ましくは1mg/g〜1g/g、より好ましくは1mg/g〜100mg/g、さらに好ましくは2mg/g〜50mg/g。
当該特定抗原に対する結合性の低い部位の存在量(濃度):好ましくは1〜99質量%、より好ましくは5〜90質量%、さらに好ましくは20〜70質量%。
また、本発明の凝集検査用微粒子において、特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位と当該特定抗原に対する結合性の低い部位との存在比率(質量比)は、好ましくは1:9〜9:1(前者:後者)、より好ましくは2:8〜8:2である。
【0031】
本発明の凝集検査用微粒子において、特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗体に対する結合性の低い部位の存在量(濃度)は、それぞれ下記の通りである。
特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位の存在量(濃度):粒子1g当たりの該部位の存在質量として、好ましくは1mg/g〜1g/g、より好ましくは1mg/g〜100mg/g、さらに好ましくは2mg/g〜50mg/g。
当該特定抗体に対する結合性の低い部位の存在量(濃度):好ましくは1〜99質量%、より好ましくは5〜90質量%、さらに好ましくは20〜70質量%。
また、本発明の凝集検査用微粒子において、特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位と当該特定抗体に対する結合性の低い部位との存在比率(質量比)は、好ましくは1:9〜9:1(前者:後者)、より好ましくは2:8〜8:2である。
【0032】
本発明の凝集検査用微粒子は、どのような態様で用いてもよいが、好ましくは該凝集検査用微粒子を分散媒に分散させた態様であることがよい。この場合、分散媒としては、該凝集用検査微粒子中のタンパク質を失活させないものであれば特に限定されず、例えば、免疫反応を利用した通常の凝集検査用試薬に使用されることが知られている水性の分散媒であれば使用することができる。このような分散媒の一例としては、例えば生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(CaやMgを含有しているものでも、していないものでも可)等を例示することができる。
【0033】
次に本発明の凝集検査用微粒子の好ましい製造方法について説明する。
本発明の凝集検査用微粒子は、下記式(4)で表されるマクロモノマー及び/又は下記式(5)で表されるマクロモノマーと、下記式(6)で表されるマクロモノマーと、スチレンとを、極性溶媒中で重合させてポリマー微粒子を得、次いでこのポリマー微粒子の表面に抗原又は抗体を、結合又は吸着させることにより、製造される。
【0034】
【化9】

(式中、nは上記式(3)と同義である。)
【0035】
【化10】

(式中、R’及びmは上記式(3)と同義である。)
【0036】
【化11】

(式中、kは上記式(3)と同義である。)
【0037】
上記式(4)で表されるマクロモノマーの製造方法は、任意であり特に限定されず常法によればよいが、例えばまず、2−メルカプトエタノールを出発物質としてN−ビニルアセトアミド(NVA)を、重合開始剤(例えば、N,N−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等)の存在下に、有機溶媒(例えばトルエン等)中で重合させる等して次式で表されるポリマーを得る。
【0038】
【化12】

(式中、nは上記式(4)と同義である。)
【0039】
次いで、このポリマーをビニルベンジルクロライドと反応(例えばジメチルフォルムアミド溶媒中で、NaH及びテトラブチルホスホニウムブロマイドの存在下で反応)させることにより得ることができる。
【0040】
上記式(5)で表されるマクロモノマーの製造方法は、任意であり特に限定されず常法によればよいが、例えば、常法により重合させたポリエチレングリコール(或いはさらに水酸化ナトリウム等を反応させた後にメチルクロライド等のアルキルクロライド等を反応させて末端をアルキル化した誘導体)を、ビニルベンジルクロライドと反応させることにより得ることができる。
【0041】
上記式(6)で表されるマクロモノマーの製造方法は、任意であり特に限定されず常法によればよいが、例えばまず、2−メルカプトエタノールを出発物質として、メタクリル酸tert−ブチル(t−BMA)を、重合開始剤(例えば、N,N−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等)の存在下に、有機溶媒(例えばTHF等)中で重合させる等して次式で表されるポリマーを得る。
【0042】
【化13】

(式中、kは上記式(6)と同義である。)
【0043】
次いで、このポリマーをビニルベンジルクロライドと反応(例えばジメチルフォルムアミド溶媒中で、NaH及びテトラブチルホスホニウムブロマイドの存在下で反応)させた後、加水分解することによりt−Bu基を外すことによって得ることができる。
【0044】
本発明の凝集検査用微粒子の製造方法はまず、上記式(4)で表されるマクロモノマー及び/又は上記式(5)で表されるマクロモノマーと、上記式(6)で表されるマクロモノマーと、スチレンとを、極性溶媒中で重合させてポリマー微粒子を得る。
【0045】
上記式(4)で表されるマクロモノマーのモル数を〔4〕、上記式(5)で表されるマクロモノマーのモル数を〔5〕、上記式(6)で表されるマクロモノマーのモル数を〔6〕、スチレンのモル数を〔S〕とすると、本発明の微粒子の製造方法においては、これらの割合は、(〔4〕+〔5〕):〔6〕:〔S〕=1:0.2〜2.5:5〜300となる割合である。尚、この割合は、それぞれのマクロモノマー或いはモノマーの実際に重合反応する割合であり、反応条件等によってそれぞれのマクロモノマー或いはモノマーの反応率が100%に満たなければ反応率を勘案して、実際に使用するマクロモノマー或いはモノマーの割合は上記範囲の通りでなくても差し支えない。
【0046】
上記極性溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、水等の無機極性溶媒、エタノール等の有機極性溶媒、或いはこれら無機極性溶媒と有機極性溶媒の混合溶媒等、周知の極性溶媒を利用することができるが、マクロモノマー或いはモノマーの溶解性ないしは分散性の観点からエタノール等の極性有機溶媒、若しくはこれと水等の無機極性溶媒との混合溶媒(混合溶媒の場合、好ましくは無機極性溶媒は30容量%以下がよい)を用いることが好ましい。
【0047】
これらマクロモノマー或いはモノマーの重合は、周知の反応条件、例えば、AIBN等の触媒を用いて、例えば40℃〜80℃の温度で3時間〜48時間程度反応させることにより行なうことができる。
【0048】
これらマクロモノマー或いはモノマーは、上記極性溶媒中で重合させると、重合したポリマーは、極性溶媒に対する溶解性の高い、上記の式(4)〜式(6)で表されるマクロモノマーに由来する構造部分を外側に、上記極性溶媒に対する溶解性の低いスチレンに由来する構造部分を内側となるように集積されて粒子化する。その結果、このようにして得られるポリマー微粒子は、粒子表面に、上記式(1)で表される構造及び/又は上記式(2)で表される構造を含むものとなる。また同様に粒子表面に、上記の式(4)〜式(6)で表されるマクロモノマーに由来する構造部分を有するものとなる。
得られたポリマー微粒子の粒子径は、使用するマクロモノマー或いはモノマーの割合や極性溶媒の種類にもよるが、得られるポリマーの分子量を概ね1万〜100万程度に制御すれば、概ね50nm〜100μm程度の微粒子となる。
【0049】
尚、本発明の効果を阻害しない範囲内(好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜20質量%)で、上記の式(4)〜式(6)で表されるマクロモノマー及びスチレンの他に、その他のモノマーを使用してもよく、例えば、ポリマー構造として、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリシジルメタクリレート等を導入しても差し支えない。
【0050】
次に、上記のようにして得たポリマー微粒子の表面に、抗原又は抗体を、結合又は吸着させる。
ここで用いる抗原又は抗体は上記と同様であり、好ましい抗原又は抗体も上記と同様である。
抗原又は抗体をポリマー微粒子の表面に結合又は吸着させる方法については特に限定されず、共有結合によっても物理的吸着によってもよいが、好ましくは共有結合によることがよい。
抗原又は抗体をポリマー微粒子の表面に共有結合させる方法も特に限定されないが、一般的にタンパク質やペプチドの固定化に用いられる縮合剤(例えばカルボジイミド等)を用いたアミド結合の形成による導入が最も好ましい。ここで用いられる縮合剤は特に限定されないが、特に1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCD)や1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSCI)が好ましい。
【0051】
次に本発明の凝集検査用試薬について説明する。
本発明の凝集検査用試薬は、上記本発明の凝集検査用微粒子、好ましくは上記本発明の凝集検査用微粒子の製造方法で製造された凝集検査用微粒子を、リン酸緩衝食塩水に分散させたものである。
【0052】
上記リン酸緩衝食塩水としては特に限定されるものではなく、免疫反応を利用した通常の凝集検査用試薬に用いられるリン酸緩衝食塩水であればどのようなものでもよく、市販のリン酸緩衝食塩水を利用することもでき、例えば、商品名:Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline D8537(シグマアルドリッチジャパン社製。以下PBSと略記する。)等を例示することができる。
【0053】
本発明の凝集検査用試薬は、上記本発明の凝集検査用微粒子、好ましくは上記本発明の凝集検査用微粒子の製造方法で製造された凝集検査用微粒子を50〜0.001質量%、好ましくは10〜0.01質量%含有することが好ましい。
【0054】
また、本発明の凝集検査用試薬には、本発明の効果を阻害しない範囲で、免疫反応を利用した通常の凝集検査用試薬に使用される添加剤を添加することができる。
このような添加剤としては、例えば界面活性剤やアジ化ナトリウム等の防腐剤等が挙げられ、これら添加剤の添加量は、本発明の凝集検査用試薬中、好ましくは50質量%以下とする。
【実施例】
【0055】
以下に実施例及び比較例を挙げ本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
〔上記式(4)で表されるマクロモノマーAの製造〕
N−ビニルアセトアミド50g、2−メルカプトエタノール18.4g及びN,N−アゾビスイソブチロニトリル0.96gをトルエン250mLに加えて、窒素バブリングしながら60℃で6時間攪拌還流させた。沈殿物をエタノールに溶解させて、アセトンへ再沈殿させることで生成物24gを回収した。生成物であるN−ビニルアセトアミドポリマーをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析した結果、その分子量はMw/Mn=9,500/4,000であった。前記式(4)のnに相当する数としては約100であった。
【0057】
得られたN−ビニルアセトアミドポリマー20gをDMF100mLに溶解させて、NaH(オイルディスパージョン)0.26g及びテトラブチルホスホニウムブロマイド0.34g加えて室温で3時間攪拌した後、4―ビニルベンジルクロライド2.6gを添加して室温で24時間攪拌した。反応溶液を水/メタノール=1/1混合溶媒へ再沈殿させることで生成物15gを回収した。生成物であるビニルベンジル末端N−ビニルアセトアミドポリマーを 1H−NMRで分析した結果、ビニルベンジル基のプロトン由来のピークを確認した。これをマクロモノマーAとする。
【0058】
〔上記式(6)で表されるマクロモノマーBの製造〕
メタクリル酸tert−ブチル50g、2−メルカプトエタノール0.29g及びN,N−アゾビスイソブチロニトリル0.55gをTHF100mLに溶解させて、窒素バブリングしながら60℃で6時間攪拌還流させた。反応溶液を水/メタノール=1/1混合溶媒へ再沈殿させることで生成物35gを回収した。生成物であるメタクリル酸tert−ブチルポリマーをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分析した結果、その分子量はMw/Mn=18,000/9,600であった。前記式(6)のkに相当する数としては約70であった。
【0059】
得られたメタクリル酸tert−ブチルポリマー20gをDMF400mLに溶解させて、NaH(オイルディスパージョン)0.43g及びテトラブチルホスホニウムブロマイド3.20g加えて室温で3時間攪拌した後、4―ビニルベンジルクロライド3.0gを添加して室温で24時間攪拌した。反応溶液を水/メタノール=1/1混合溶媒へ再沈殿させることで生成物18gを回収した。得られた生成物18gをエタノール200mLに溶解し、これに濃塩酸20mL及びヒドロキノン0.8gを加えた。これを70℃で6時間還流させることで加水分解を行いポリメタクリル酸に誘導した。エタノールを留去後、イオン交換水に溶媒を置換して、さらに中性になるまでイオン交換水で透析を行った。これを凍結乾燥してビニルベンジル末端メタクリル酸ポリマーを得た。得られたビニルベンジル末端メタクリル酸ポリマーを 1H−NMRで分析した結果、ビニルベンジル基のプロトン由来のピークを確認した。これをマクロモノマーBとする。
【0060】
〔実施例1〕
上記で得られたマクロモノマーA0.5g、上記で得られたマクロモノマーB0.5g、スチレン1.0g及びN,N−アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mL及びエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで、封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。
遠心分離(12000rpm、15分間)によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は230nm(動的光散乱法にて測定)であった。
得られた微粒子10mgを0.05M−KH2PO4水溶液800μLに分散させた。
【0061】
一方、0.05M−KH2PO4水溶液に水溶性カルボジイミドである1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを1質量%溶解させた溶液200μLを用意しておき、上記で得られた微粒子分散液800μLを加えて4℃で30分間震盪した。これを遠心分離(6000rpm、10分間)で上澄みを除去し、ウシ血清アルブミン(以下、BSAともいう)1mgをPBS1mLに溶解した溶液を1mL加えて攪拌して微粒子を分散させた。これを24時間震盪させることで微粒子の表面に抗原としてのウシ血清アルブミンを結合させた。
これをさらに遠心分離(15000rpm、10分間)後、上澄みを除去し、PBSへの再分散を3回繰り返すことで、未反応BSAを除去して本発明の凝集検査用微粒子1の9.5mg(収率95%)を得た。この凝集性検査用微粒子1の9.5mgをPBS9.5mLに分散させることで、本発明の凝集検査用試薬1を製造した。
尚、上記凝集検査用微粒子1は、上記式(3)における各繰り返し数(w、x、y、z)が、(100、1.3、0、0.93)であり、ポリマーの平均分子量が、30万であって、上記凝集検査用微粒子中の、特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位の存在量は、8mg/gであり、特定抗原に対する特異的な結合性の低い部位の存在量は、20質量%であった。
【0062】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、上記で得られたマクロモノマーA0.5g、上記で得られたマクロモノマーB0.5g、スチレン1.0g及びN,N−アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mL及びエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで、封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。遠心分離(12000rpm、15分間)によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は230nm(動的光散乱法にて測定)であった。
得られた微粒子10mgを0.05M−KH2PO4水溶液800μLに分散させた。
【0063】
一方、0.05M−KH2PO4水溶液に水溶性カルボジイミドである1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを1質量%溶解させた溶液200μLを用意しておき、上記で得られた微粒子分散液800μLを加えて4℃で30分間震盪した。これを遠心分離(6000rpm、10分間)で上澄みを除去し、BSAポリクローナル抗体(RockLand inc., Anti−Albumin [Bovine Serum][Rabbit])1mgをPBS1mLに溶解した溶液を1mL加えて攪拌して微粒子を分散させた。これを24時間震盪させることで微粒子の表面に抗原としてBSAポリクローナル抗体を結合させた。
これをさらに遠心分離(15000rpm、10分間)後、上澄みを除去し、PBSへの再分散を3回繰り返すことで、未反応BSAポリクローナル抗体を除去して本発明の凝集検査用微粒子2の9.5mg(収率95%)を得た。この凝集性検査用微粒子2の9.5mgをPBS9.5mLに分散させることで、本発明の凝集検査用試薬2を製造した。
尚、上記凝集検査用微粒子2は、上記式(3)における各繰り返し数(w、x、y、z)が、(100、1.3、0、0.93)であり、ポリマーの平均分子量が、30万であって、上記凝集検査用微粒子中の、特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位の存在量は、8mg/gであり、特定抗体に対する特異的な結合性の低い部位の存在量は、20質量%であった。
【0064】
〔比較例1〕
市販のカルボキシル化微粒子(POLYBEAD(登録商標) 0.25μm Carboxylate microsphere 2.5wt%,polyscience社製)400μLを遠心分離で上澄みを除き、0.05M−KH2PO4水溶液800μLに分散させた。
一方、0.05M−KH2PO4水溶液に水溶性カルボジイミドである1−エチル−3−(3‘−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを1質量%溶解させた溶液200μLを用意しておき、上記分散液を加えて4℃で30分震蕩した。これを遠心分離(6000rpm、10分間)で上澄みを除去し、ウシ血清アルブミン(BSA)1mgをPBS1mLに溶解した溶液を1mL加えて攪拌して微粒子を分散させた。これを4℃で24時間震蕩させることで微粒子の表面に、抗原としてウシ血清アルブミンを結合させた。
これをさらに遠心分離(15000rpm、10分間)後、上澄みを除去し、PBSへの再分散を3回繰り返すことで、未反応BSAを除去して比較凝集検査用微粒子1を製造した。
この比較凝集検査用微粒子1をPBS1.0mLに分散させ、ブロッキング処理として、ヒト血清アルブミン1mg/mLのPBS溶液を1.0mL加えて1時間室温で震蕩した後に遠心分離後、上澄みを除き、10mLのPBSへ再分散して比較凝集検査用試薬1を得た。
【0065】
〔比較例2〕
市販のカルボキシル化微粒子(POLYBEAD(登録商標) 0.25μm Carboxylate microsphere 2.5wt%,polyscience社製)400μLを遠心分離で上澄みを除き、0.05M−KH2PO4水溶液800μLに分散させた。
一方、0.05M−KH2PO4水溶液に水溶性カルボジイミドである1−エチル−3−(3‘−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを1質量%溶解させた溶液200μLを用意しておき、上記分散液を加えて4℃で30分震蕩した。これを遠心分離(6000rpm、10分間)で上澄みを除去し、BSAポリクローナル抗体(RockLand inc., Anti−Albumin [Bovine Serum][Rabbit])1mgをPBS1mLに溶解した溶液を1mL加えて攪拌して微粒子を分散させた。これを4℃で24時間震蕩させることで微粒子の表面に、抗原としてウシ血清アルブミンを結合させた。
これをさらに遠心分離(15000rpm、10分間)後、上澄みを除去し、PBSへの再分散を3回繰り返すことで、未反応BSAを除去して比較凝集検査用微粒子2を製造した。
この比較凝集検査用微粒子2をPBS1.0mLに分散させ、ブロッキング処理として、ヒト血清アルブミン1mg/mLのPBS溶液を1.0mL加えて1時間室温で震蕩した後に遠心分離後、上澄みを除き、10mLのPBSへ再分散して比較凝集検査用試薬2を得た。
【0066】
〔検体溶液の作成〕
ブランク溶液はPBSそのものを用いた。
検体1−1:BSAポリクローナル抗体(RockLand inc., Anti−Albumin [Bovine Serum][Rabbit])を1.0mg/mL、HSA(Sigma−Aldrich社,Human Serum albumin[Rabbit])を0.1mg/mLになるようPBSで希釈した溶液を検体溶液1−1とした。
検体2−1:HSA(Sigma−Aldrich社)を0.1mg/mLになるようにPBSで希釈した溶液を検体溶液2−1とした。
検体1−2:BSA(Sigma−Aldrich社)を0.01mg/mLになるようにPBSで希釈した溶液を検体溶液1−2とした。
検体2−2:HSA(Sigma−Aldrich社)を0.01mg/mLになるようにPBSで希釈した溶液を検体溶液2−2とした。
【0067】
〔凝集量試験〕
実施例1の凝集検査用試薬1と、検体1−1をそれぞれ9.5mLずつ混合し、1時間静置した後、ポアサイズ1μmのフィルターでこの混合液を濾過し、粒径1μm以上の凝集体を濾別して、その重量を測定したところ9.3mgであった。
一方、実施例1の凝集検査用試薬1と、検体2−1をそれぞれ9.5mLずつ混合し、同様にして測定したところ、0.2mgであった。このことから、本発明の凝集検査用試薬1は、BSAポリクローナル抗体の存在を検出するための凝集検査用試薬として極めて高感度であることがわかった。
【0068】
実施例2の凝集検査用試薬2と、検体1−2をそれぞれ9.5mLずつ混合し、同様にして測定したところ9.1mgであった。
また、実施例2の凝集検査用試薬2と、検体2−2をそれぞれ9.5mLずつ混合し、同様にして測定したところ、0.3mgであった。このことから、本発明の凝集検査用試薬2は、BSAの存在を検出するための凝集検査用試薬として極めて高感度であることがわかった。
【0069】
同様に比較例1の比較凝集検査用試薬1と、検体1−1をそれぞれ9.5mLずつ混合し、同様にして測定したところ9.0mgであった。
また、比較例1の比較凝集検査用試薬1と、検体2−1をそれぞれ9.5mLずつ混合し、同様にして測定したところ、7.3mgであった。このことから、比較凝集検査用試薬1は、BSAポリクローナル抗体の存在を検出するための凝集検査用試薬としては感度が低いものであった。
【0070】
同様に比較例2の比較凝集検査用試薬2と、検体1−2をそれぞれ9.5mLずつ混合し、同様にして測定したところ9.1mgであった。
また、比較例2の比較凝集検査用試薬2と、検体2−2をそれぞれ9.5mLずつ混合し、同様にして測定したところ、7.6mgであった。このことから、比較凝集検査用試薬2は、BSAの存在を検出するための凝集検査用試薬としては感度が低いものであった。
【0071】
〔実施例3〕
実施例1と同様に、上記で得られたマクロモノマーA0.5g、上記で得られたマクロモノマーB0.5g、スチレン1.0g及びN,N−アゾビスイソブチロニトリル15mgを、イオン交換水5mL及びエタノール10mLの混合液に溶解させ、窒素バブリングを30分間行った。次いで、封をして、これを60℃の湯浴中で24時間震蕩することで微粒子を生成させた。遠心分離(12000rpm、15分間)によって微粒子を分離した後、凍結乾燥させて生成物としての微粒子を得た。微粒子の平均粒子径は230nm(動的光散乱法にて測定)であった。
得られた微粒子10mgを0.05M−KH2PO4水溶液800μLに分散させた。
【0072】
一方、0.05M−KH2PO4水溶液に水溶性カルボジイミドである1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを1質量%溶解させた溶液200μLを用意しておき、上記で得られた微粒子分散液800μLを加えて4℃で30分間震盪した。これを遠心分離(6000rpm、10分間)で上澄みを除去し、ピーナッツレクチン(PNA)1mgをPBS1mLに溶解した溶液を1mL加えて攪拌して微粒子を分散させた。これを24時間震盪させることで微粒子の表面にPNAを結合させた。
これをさらに遠心分離(15000rpm、10分間)後、上澄みを除去し、PBSへの再分散を3回繰り返すことで、未反応PNAを除去して本発明の凝集検査用微粒子3の9.5mg(収率95%)を得た。この凝集性検査微粒子3の9.5mgをPBS9.5mLに分散させることで、本発明の凝集検査用試薬3を製造した。
尚、上記凝集検査用微粒子3は、上記式(3)における各繰り返し数(w、x、y、z)が、(100、1.3、0、0.93)であり、ポリマーの平均分子量が、30万であって、上記凝集検査用微粒子中の、特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位の存在量は、8mg/gであり、特定抗体に対する特異的な結合性の低い部位の存在量は、20質量%であった。
【0073】
〔比較例3〕
市販のカルボキシル化微粒子(POLYBEAD(登録商標) 0.25μm Carboxylate microsphere 2.5wt%,polyscience社製)400μLを遠心分離で上澄みを除き、0.05M−KH2PO4水溶液800μLに分散させた。
一方、0.05M−KH2PO4水溶液に水溶性カルボジイミドである1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを1質量%溶解させた溶液200μLを用意しておき、上記分散液を加えて4℃で30分震蕩した。これを遠心分離(6000rpm、10分間)で上澄みを除去し、PNA1mgをPBS1mLに溶解した溶液を1mL加えて攪拌して微粒子を分散させた。これを4℃で24時間震蕩させることで微粒子の表面にPNAを結合させた。
これをさらに遠心分離(15000rpm、10分間)後、上澄みを除去し、PBSへの際分散を3回繰り返すことで、未反応BSAを除去して比較凝集検査用微粒子3を製造した。この比較凝集検査用微粒子3をPBS10mLに分散させることで比較凝集検査用試薬3を得た。
【0074】
〔TF抗原への特異的結合性評価試験〕
ウサギ保存血液3mLをPBSで5倍希釈し、2000rpm×5分間の遠心分離を行い、上澄みを捨ててさらにこれをPBSで5倍希釈する。この操作を3回繰り返して赤血球分画を取り出す。
赤血球分画と等量のシアリダーゼ(由来:Arthrobactor ureafaciens、Roche社製)1U/mLを加えて、37℃で1時間静かに震蕩した。これをPBSで4倍に希釈して、2000rpm×5分間の遠心分離を行い、リン酸緩衝食塩水(Ca及びMg含有)(商品名:Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline D8662、シグマアルドリッチジャパン社製。以下PBS(Ca+Mg)と略記する。)に分散させる。その後、2000rpm×5分間の遠心分離を行い、PBS(Ca+Mg)に分散させる操作を3回繰り返して、シアリダーゼ処理赤血球分画を得る。
これをPBS(Ca+Mg)に対して2v/v%溶液としてシアリダーゼ処理赤血球浮遊液とする。96穴のタイタープレート(U底)に各ウェルの2列目以降に50μLずつPBS(Ca+Mg)を分注する。固定化されたPNA量を基に、PNA濃度が同じになるように調製した凝集検査用試薬の100μLを1列目に入れて2倍希釈列を作る。
各ウェルにシアリダーゼ処理赤血球浮遊液を50μLずつ分注し、室温で60分間放置する。各ウェルの底部への沈殿状態(凝集の有無)により結合性を判定する。底部の中心部のみに丸く固まって沈殿したものは、赤血球のみが強く凝集しており、凝集検査用試薬との結合性が低い(陰性)。一方、底部全体に広がって沈殿したものは凝集検査用試薬との結合性が強い(陽性)。ここで、陽性であった最も薄い濃度を最低結合活性濃度(試料1mL当たりに含まれるPNA質量)とする。この評価法では、最低結合活性濃度が低いほど、TF抗原への特異的結合性が高いと評価できる。
このような評価法にて、本発明の凝集検査用試薬3について評価したところ、1.0μg/mLであり、比較凝集検査用試薬3について評価したところ、1.0μg/mLであった。
【0075】
一方、ウサギ保存血液3mLをPBSで5倍希釈し、2000rpm×5分間の遠心分離を行い、上澄みを捨ててさらにこれをPBSで5倍希釈する。この操作を3回繰り返して赤血球分画を取り出す。
これをPBS(Ca+Mg)に対して2v/v%溶液として赤血球浮遊液とする。96穴のタイタープレート(U底)に各ウェルの2列目以降に50μLずつPBS(Ca+Mg)を分注する。固定化されたPNA量を基に、PNA濃度が同じになるように調製した凝集検査用試薬の100μLを1列目に入れて2倍希釈列を作る。
各ウェルにシアリダーゼ処理赤血球浮遊液を50μLずつ分注し、室温で60分間放置する。各ウェルの底部への沈殿状態(凝集の有無)により結合性を判定する。底部の中心部のみに丸く固まって沈殿したものは、赤血球のみが強く凝集しており、凝集検査用試薬との結合性が低い(陰性)。一方、底部全体に広がって沈殿したものは凝集検査用試薬との結合性が強い(陽性)。ここで、陽性であった最も薄い濃度を最低結合活性濃度(試料1mL当たりに含まれるPNA質量)とする。この評価法では、最低結合活性濃度が低いほど、非特異的結合性が高いと評価できる。
このような評価法にて、本発明の凝集検査用試薬3について評価したところ、12.5μg/mL以上であり、比較凝集検査用試薬3について評価したところ、1.0μg/mLであった。
【0076】
以上から、本発明の凝集検査用試薬3はTF抗原への特異的結合性が極めて高く、TF抗原の存在を検出するための凝集検査用試薬として極めて高感度であることがわかった。
一方、比較凝集検査用試薬3はTF抗原への特異的結合性が低く、TF抗原の存在を検出するための凝集検査用試薬として低感度であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面に、特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗原に対する結合性の低い部位を有するか、又は、特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位及び当該特定抗体に対する結合性の低い部位を有する、粒子径1nm〜100μmの凝集検査用微粒子であって、当該特定抗原に対する結合性の低い部位あるいは当該特定抗体に対する結合性の低い部位が、下記式(1)で表される構造及び/又は下記式(2)で表される構造を含むものであることを特徴とする、凝集検査用微粒子。
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4の炭化水素基を表し、nは10〜600の数を表す。)
【化2】

(式中、mは10〜600の数を表す。)
【請求項2】
上記の特定抗原に対する特異的な結合性の高い部位が抗体であり、上記の特定抗体に対する特異的な結合性の高い部位が抗原である、請求項1に記載の凝集検査用微粒子。
【請求項3】
下記式(3)で表される構造を有するポリマーを主成分とするものである、請求項1又は2に記載の凝集検査用微粒子。
【化3】

(式中、R’は水素原子又は炭素原子数1〜4の炭化水素基を表す。nは上記式(1)と同義である。mは上記式(2)と同義である。kは10〜600の数を表す。Aは抗原又は抗体を表す。w、x、y、zはポリマーの分子量を1万〜100万とする数であり、且つ(x+y):z:w=1:0.2〜2.5:5〜300の割合である。尚、xとyは何れか一方が0であってもよい。w、x、y、zの各繰り返し数に対応する各繰り返し単位の主鎖における順序は任意である。)
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の凝集検査用微粒子の製造方法であって、下記式(4)で表されるマクロモノマー及び/又は下記式(5)で表されるマクロモノマーと、下記式(6)で表されるマクロモノマーと、スチレンとを、極性溶媒中で重合させてポリマー粒子を得、次いでこのポリマー粒子の表面に抗原又は抗体を、結合又は吸着させることを特徴とする、凝集検査用微粒子の製造方法。
【化4】

(式中、nは上記式(3)と同義である。)
【化5】

(式中、R’及びmは上記式(3)と同義である。)
【化6】

(式中、kは上記式(3)と同義である。)
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の凝集検査用微粒子を、リン酸緩衝食塩水に分散させたことを特徴とする凝集検査用試薬。
【請求項6】
上記凝集検査用微粒子が、請求項4に記載の凝集検査用微粒子の製造方法で製造されたものである、請求項5記載の凝集検査用試薬。

【公開番号】特開2009−53071(P2009−53071A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220633(P2007−220633)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】