説明

処理装置、負荷分散システムおよび自律型分散処理方法

【課題】ネットワークの負荷が大きくなるという問題を解決する処理装置を提供する。
【解決手段】要求部201は、自処理装置の起動時に、負荷分散システムに参加する旨の参加要求を、情報処理の委託先となる処理装置を示す委託先情報の取得要求として送信する。受信部202は、要求部201にて送信された取得要求に応じた委託先情報を受信する。測定部203は、自処理装置の負荷を求める。制御部204は、測定部203にて求められた負荷に基づいて、情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断する。送信部205は、制御部204にて情報処理を他の処理装置に委託すると判断されると、受信部202にて受信された委託先情報が示す処理装置に、その情報処理装置を実行する旨の処理要求を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律的に負荷を分散させることが可能な処理装置、負荷分散システムおよび自律型分散処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の処理装置に負荷を分散させて種々の情報処理を行うことが可能な分散処理システムでは、処理能力に余裕のある処理装置が委託先として決定され、その委託先に情報処理が委託される方式が主流である。
【0003】
上記の分散処理システムには、専用サーバが委託先を決定する集約型分散処理方式と、専用サーバがなく、各処理装置が自律して委託先を決定する自律型分散処理方式とがある。
【0004】
集約型分散処理方式では、専用サーバを設ける必要があるため、コストが高くなるという問題がある。また、集約型分散処理方式では、情報処理の開始時に、専用サーバが、処理装置の処理能力を表すリソース情報を、分散処理システム内の全ての処理装置から収集し、そのリソース情報に基づいて委託先を決定している。このため、委託先の決定にかかる通信量が大きくなるので、ネットワークの負荷が増大し、分散処理システム全体の処理能力が低下するなどの問題もある。なお、処理装置のいずれかに専用サーバの機能を付加することで、コストの低減化を図ることは可能であるが、委託先の決定にかかる通信量はほとんど変化しない。このため、集約型分散処理方式は使い勝手が悪く、利用用途が限定される。
【0005】
一方、自律型分散処理方式では、全ての処理装置からリソース情報を収集する必要がないので、委託先の決定にかかる通信量が集約型分散処理方式に比べて小さくなる。
【0006】
例えば、特許文献1に記載のネットワーク負荷平滑化方法では、各処理装置が、自処理装置に接続されている処理装置のリソース情報を監視し、そのリソース情報に応じて委託先を決定している。したがって、自処理装置に接続されている処理装置からのみリソース情報を収集すればよいため、委託先の決定にかかる通信量を低減することが可能になっている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のネットワーク負荷平滑化方法のように、各処理装置が自処理装置に接続されている処理装置のリソース情報を監視する場合、自処理装置に接続されている処理装置の数が多いと、リソース情報を収集するための通信量が大きくなるので、通信量の低減率が低い。
【0008】
これに対して、特許文献2には、各処理装置が他の処理装置のリソース情報を収集しなくても、負荷を分散させることが可能な自律分散協調処理方式が記載されている。
【0009】
特許文献2に記載の自律分散協調処理方式では、各処理装置は、情報処理の開始時に、自処理装置のリソース情報を含む処理要求を、同報通信を用いて他の処理装置に送信する。各処理装置は、処理要求を受信すると、その処理要求内のリソース情報と、自処理装置のリソース情報とに応じて、その処理要求にて要求された情報処理を実行するか否かを判断する。
【0010】
したがって、他の処理装置のリソース情報を収集する必要がなくなるため、委託先の決定にかかる通信量を低減化することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−250068号公報
【特許文献2】特許平7−129520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に記載の自律分散協調処理方式では、自処理装置のリソース情報を、同報通信を用いて他の処理装置に通知する必要があるため、通信量の低減率が低く、ネットワークの負荷が大きいという問題があった。特に、情報処理の開始時に、ネットワークに同時に大量の情報が伝送されるため、ネットワークの負荷が大きくなると。
【0013】
なお、同報通知された各処理装置にて同じ情報処理が重複して実行されることを回避するための仕組みが必要となり、分散処理システムが複雑になるという問題もある。
【0014】
本発明の目的は、上記の課題である、ネットワークの負荷が大きくなるという問題を解決する処理装置、負荷分散システムおよび自律型分散処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による処理装置は、複数の処理装置に負荷を分散させることが可能な負荷分散システムに参加可能な処理装置であって、起動時に、前記負荷分散システムに参加する旨の参加要求を、情報処理の委託先となる処理装置を示す委託先情報の取得要求として送信する要求手段と、前記要求手段にて送信された取得要求に応じた委託先情報を受信する受信手段と、自処理装置の負荷を求める測定手段と、前記測定手段にて求められた負荷に基づいて、情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断する判断手段と、前記判断手段にて前記情報処理を他の処理装置に委託すると判断すると、前記受信手段にて受信された委託先情報が示す処理装置に、当該情報処理を実行する旨の処理要求を送信する送信手段と、を有する。
【0016】
また、本発明による負荷分散システムは、上記の処理装置を複数有する。
【0017】
また、本発明による自律型分散処理方法は、複数の処理装置に負荷を分散させることが可能な負荷分散システムに参加可能な処理装置による自律型分散処理方法であって、起動時に、前記負荷分散システムに参加する旨の参加要求を、情報処理の委託先となる処理装置を示す委託先情報の取得要求として送信し、前記取得要求に応じた委託先情報を受信し、自処理装置の負荷を求め、前記負荷に基づいて、情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断し、前記情報処理を他の処理装置に委託すると判断されると、前記委託先情報が示す処理装置に、当該情報処理を実行する旨の処理要求を送信する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ネットワークの負荷を軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一の実施形態の負荷分散システムを示したブロック図である。
【図2】第一の実施形態における処理装置の構成を示したブロック図である。
【図3】第一の実施形態における処理装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図4】第二の実施形態における処理装置の構成を示したブロック図である。
【図5】経路情報の一例を示した説明図である。
【図6】第二の実施形態における処理装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図7】第二の実施形態における処理装置の動作の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図8】第二の実施形態における処理装置の動作の他の例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同じ機能を有する構成には同じ符号を付け、その説明を省略する場合がある。
【0021】
図1は、本発明の第一の実施形態の負荷分散システムを示したブロック図である。図1において、負荷分散システムは、処理装置101〜104を有する。なお、処理装置101〜104は、集線装置105を介して相互に接続可能である。また、処理装置の数は、図1では、4つであるが、実際には、複数あればよい。
【0022】
図2は、処理装置101〜104の構成を示したブロック図である。図2において、処理装置101〜104は、要求部201と、受信部202と、測定部203と、制御部204と、送信部205とを有する。
【0023】
要求部201は、要求手段と呼ばれることもある。要求部201は、自処理装置の起動時に、負荷分散システムに参加する旨の参加要求を、情報処理の委託先となる処理装置を示す委託先情報の取得要求として送信する。
【0024】
受信部202は、受信手段と呼ばれることもある。受信部202は、要求部201にて送信された取得要求に応じた委託先情報を受信する。
【0025】
測定部203は、測定手段と呼ばれることもある。測定部203は、自処理装置の負荷を求める。
【0026】
制御部204は、判断手段と呼ばれることもある。制御部204は、測定部203にて求められた負荷に基づいて、情報処理を自処理装置で実行するか、それとも、その情報処理を他の処理装置に委託するかを判断する。
【0027】
送信部205は、制御部204にて情報処理を他の処理装置に委託すると判断されると、受信部202にて受信された委託先情報が示す処理装置に、その情報処理装置を実行する旨の処理要求を送信する。
【0028】
次に動作を説明する。
【0029】
図3は、処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。処理装置101が起動したものとする。このとき、要求部201は、自処理装置の起動を検知してステップ301を実行する。
【0030】
ステップ301では、要求部201は、参加要求を取得要求として作成し、その取得要求を、送信部205を介して他の処理装置に送信する。その後、制御部204は、受信部202が委託先情報を受信したか否かを監視する。受信部202が委託先情報を受信すると、制御部204は、ステップ302を実行する。
【0031】
ステップ302では、制御部204は、情報処理の実行が要求されるまで待機する。制御部204は、情報処理の実行が要求されると、ステップ303を実行する。
【0032】
ステップ303では、制御部204は、測定部203から自処理装置の負荷を取得し、その負荷に基づいて、情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断する。
【0033】
情報処理を自処理装置で実行する場合、ステップ304が実行され、情報処理を他の処理装置に委託する場合、ステップ305が実行される。
【0034】
ステップ304では、情報処理が自処理装置で実行され、処理が終了する。
【0035】
一方、ステップ305では、制御部204は、その要求された情報処理を実行する旨の処理要求を作成する。制御部204は、その処理要求を、送信部205を介して、ステップ301で受信部202が受信した委託先情報にて示される処理装置に送信して、処理を終了する。
【0036】
本実施形態によれば、要求部201は、自処理装置の起動時に、負荷分散システムに参加する旨の参加要求を、情報処理の委託先となる処理装置を示す委託先情報の取得要求として送信する。受信部202は、要求部201にて送信された取得要求に応じた委託先情報を受信する。測定部203は、自処理装置の負荷を求める。制御部204は、測定部203にて求められた負荷に基づいて、情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断する。送信部205は、制御部204にて情報処理を他の処理装置に委託すると判断されると、受信部202にて受信された委託先情報が示す処理装置に、その情報処理装置を実行する旨の処理要求を送信する。
【0037】
この場合、起動時に、負荷分散システムに参加する旨の参加要求が、委託先情報の取得要求として送信され、その取得要求に応じた委託先情報が受信される。
【0038】
したがって、他の処理装置の処理能力を監視したり、他の処理装置に自処理装置の処理能力を通知したりする必要がなくなるため、委託先の決定にかかる通信量を軽減することが可能になる。また、情報処理の開始時に、同報通信を用いてリソース情報を送信する必要がないため、ネットワークに同時に伝送される情報量を軽減することが可能になり、ネットワークの負荷を軽減することが可能になる。
【0039】
さらに、処理要求が同報通信で複数の処理装置に送信する必要がないため、同じ情報処理が重複して実行されることがなくなる。したがって、各処理装置にて同じ情報処理が重複して実行されることを回避するための仕組みが必要なくなるので、分散処理システムを簡単に構築することが可能になる。
【0040】
次に第二の実施形態について説明する。
【0041】
図4は、本実施形態における処理装置101〜104の構成を示したブロック図である
図4において、処理装置101〜104は、要求部201と、受信部202と、測定部203と、制御部204と、送信部205と、記憶部206と、委託先決定部207と、実行部208とを有する。
【0042】
要求部201は、取得要求を、同報通信を用いて負荷分散システムに参加可能な処理装置の全てに送信する。
【0043】
受信部202は、他の処理装置から取得要求および処理要求をさらに受信する。
【0044】
測定部203は、自処理装置の負荷に基づいて、情報処理に利用可能な空きリソース量を求める。
【0045】
制御部204は、受信部202が処理要求を受信した場合、および、後述する実行部208が処理要求を作成した場合、測定部203が求めた空きリソース量に基づいて、その処理要求にて要求された情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断する。
【0046】
記憶部206は、記憶手段と呼ばれることもある。記憶部206は、自処理装置の識別情報と、委託先情報とを記憶する。本実施形態では、記憶部206は、委託先情報として、負荷分散システムに参加可能な処理装置の全ての委託先を示す経路情報を記憶するものとする。
【0047】
図5は、経路情報の一例を示した説明図である。図5において、経路情報500では、処理装置の識別情報501が並べられている。このとき、処理装置の委託先は、自処理装置の識別情報501の次の識別情報501にて特定される処理装置になる。また、最後の識別情報501にて特定される処理装置の委託先は、最初の識別情報501にて特定される処理装置になる。
【0048】
図4に戻る。委託先決定部207は、委託先決定手段と呼ばれることもある。委託先決定部207は、受信部202にて取得要求が受信されると、予め定められた決定条件に従って、その取得要求の送信元である処理装置の委託先を決定する。このとき、委託先は、処理装置ごとに一意的に決定されるものとする。
【0049】
より具体的には、委託先決定部207は、決定条件に従って、送信元の処理装置からの情報処理の委託を引き受けるか否かを判断する。委託先決定部207は、その情報処理の委託を引き受ける場合、自処理装置を委託先として決定する。
【0050】
決定条件は、例えば、「送信元の処理装置の一つ前に起動された処理装置が情報処理の委託先として決定される」である。この場合、委託先決定部207は、要求部201が取得要求を送信した後で、初めて受信部202が他の処理装置から取得要求を受信した場合、情報処理の委託を引き受ける。
【0051】
また、決定条件は、「自処理装置を委託先として決定されたことがない」でもよい。この場合、委託先決定部207は、自処理装置を委託先として決定したか否かを示す情報を保持しておき、委託先決定部207は、受信部202にて取得要求が受信されたときに、その情報が「自処理装置を委託先として決定していない」を示すと、情報処理の委託を引き受ける。
【0052】
なお、決定条件は、上記の例に限らず適宜変更可能である。
【0053】
委託先決定部207は、委託先を決定すると、その委託先を示す経路情報を作成し、その経路情報を記憶部206に記憶する。例えば、委託先決定部207は、記憶部206に記憶された識別情報を、記憶部206に記憶された経路情報内の、取得要求の送信元の識別情報の次に挿入することで、経路情報を作成する。
【0054】
実行部208は、実行手段と呼ばれることもある。実行部208は、ユーザなどからの情報処理の実行が要求されると、処理要求を作成する。また、実行部208は、制御部204にて情報処理を自処理装置で実行すると判断されると、その情報処理を実行する。
【0055】
次に動作を説明する。
【0056】
先ず、起動時の動作について説明する。図6は、起動時の動作として処理装置101が起動した場合における動作を説明するためのフローチャートである。
【0057】
ステップ601では、処理装置101が起動すると、制御部204がその起動を検知し、記憶部206内の自処理装置の識別情報を要求部201に渡す。要求部201は、その識別情報を受け取ると、その識別情報を含む取得要求を作成し、その取得要求を、送信部205を介して他の処理装置の受信部202に送信する。このとき、要求部201は、同報通信を用いて取得要求を送信する。他の処理装置の受信部202は、取得要求を受信すると、ステップ602を実行する。
【0058】
ステップ602では、受信部202は、取得要求を制御部204を介して委託先決定部207に送信する。委託先決定部207は、取得要求を受信すると、その取得要求に応じて取得要求の送信元である処理装置からの情報処理の委託を引き受けるか否かを判断する。
【0059】
委託先決定部207は、情報処理の委託を引き受ける場合、ステップ603を実行し、情報処理の委託を引き受けない場合、処理を終了する。
【0060】
ステップ603では、委託先決定部207は、記憶部206から経路情報を取得し、その経路情報に、取得要求内の識別情報を加えて新たに経路情報を作成する。例えば、経路情報が図5で示した経路情報500の場合、委託先決定部207は、自処理装置の識別情報501の次に、取得要求内の識別情報を加えて新たに経路情報を作成する。
【0061】
委託先決定部207は、その作成した経路情報を記憶部206に記憶するとともに、その経路情報を、制御部204および送信部205を介して他の処理装置の受信部202に送信する。このとき、委託先決定部207は、同報通信を用いて経路情報を送信する。
【0062】
他の処理装置の受信部202は、経路情報を受信すると、ステップ604を実行する。
【0063】
ステップ604では、受信部202は、経路情報を制御部204に送信する。制御部204は、経路情報を受信すると、その経路情報を記憶部206に記憶して、処理を終了する。
【0064】
また、ステップ601において、全ての処理装置が停止している状態で処理装置101が起動した場合、他の処理装置が停止しているため、他の処理装置で取得要求が受信されない。このため、処理装置101は経路情報を取得することができない。
【0065】
この場合、処理装置101の制御部204は、タイムアウト検出などにより、経路情報を取得できないことを検出し、待機状態となる。その後、処理装置102が起動すると、処理装置102がステップ601と同様な処理を行い、取得要求を同報通信にて送信する。このとき、処理装置101が、既に起動しているため、取得要求を受信する。そして、処理装置101は、ステップ602の判断を経て経路情報を作成する。
【0066】
この状態では、処理装置は2台しか起動していないため、処理装置101の委託先は処理装置102となり、処理装置102の委託先を処理装置101となる。
【0067】
その後、処理装置101は、ステップ603で経路情報を同報通信で送信し、ステップ604で処理装置102がその経路情報に記憶する。
【0068】
次に、処理要求の作成時の動作について説明する。図7は、処理要求の作成時の動作として処理装置101にて処理要求が作成された場合における動作を説明するためのフローチャートである。
【0069】
処理装置101の実行部208は、処理要求を作成すると、その処理要求を制御部204に送信する。制御部204は、処理要求を受信すると、ステップ701を実行する。
【0070】
ステップ701では、制御部204は、その処理要求が自処理装置にて作成された要求か否かを判断する。制御部204は、処理要求が自処理装置にて作成された要求であると、ステップ702を実行し、処理要求が自処理装置にて作成された要求でないとステップ703を実行する。ここでは、処理要求が自処理装置にて作成されているので、ステップ702が実行される。
【0071】
ステップ702では、制御部204は、処理要求に応じた情報処理に必要な必要リソース量を取得する。例えば、予め記憶部206に情報処理ごとに必要リソースを記憶しておき、制御部204は、その情報処理に応じた必要リソースを記憶部206から取得する。なお、必要リソースは、例えば、情報処理に必要なメモリの空き容量などである。
【0072】
制御部204は、その取得した必要リソース量を処理要求に付加し、その後、ステップ703を実行する。
【0073】
ステップ703では、制御部204は、測定部203から空きリソース量を取得し、その空きリソース量と、処理要求に付加された必要リソース量とを比較して、処理要求にて実行が要求されている情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断する。
【0074】
例えば、制御部204は、空きリソース量が必要リソース量以上であると、情報処理を自処理装置で実行すると判断し、空きリソース量が必要リソース量未満であると、情報処理装置を他の処理装置に委託すると判断する。
【0075】
制御部204は、情報処理を自処理装置で実行する場合、ステップ704を実行し、情報処理装置を他の処理装置に委託する場合、ステップ705を実行する。
【0076】
ステップ704では、制御部204は、必要リソース量を測定部203に送信するともに、処理要求を実行部208に送信する。
【0077】
測定部203は、必要リソース量を受信すると、その必要リソース量を自処理装置の負荷として求め、その負荷である空きリソース量からその必要リソース量を減算して空きリソース量を求める。
【0078】
また、実行部208は、処理要求を受信すると、その処理要求に応じた情報処理を実行することを示す処理受付情報を制御部204に送信するとともに、その処理要求に応じた情報処理を実行する。制御部204は、処理受付情報を受信すると、処理を終了する。
【0079】
一方、ステップ705では、制御部204は、記憶部206内の経路情報に基づいて、自処理装置の委託先を特定する。制御部204は、処理要求に記憶部206内の自処理装置の識別情報を追加し、その処理要求を、委託先である処理装置(処理装置102とする)の受信部202に送信部205を介して送信して、処理を終了する。
【0080】
また、処理装置102の受信部202は、処理要求を受信すると、その処理要求を制御部204に送信する。制御部204は、処理要求を受信すると、ステップ701を実行する。このとき、ステップ701において、制御部204は、その処理要求が自処理装置にて作成された要求でないと判断し、ステップ703を実行する。
【0081】
ステップ703において、情報処理を自処理装置(処理装置102)で実行すると判断されると、ステップ704が実行される。なお、ステップ704では、制御部204は、処理受付情報を処理装置101に通知し、情報処理を実行する。
【0082】
また、情報処理を他の処理装置に委託すると判断すると、委託先である処理装置101へ処理要求が送信される。
【0083】
処理装置101の制御部204は、その処理要求を受信した場合、処理要求内に自処理装置の識別情報が存在するため、その処理要求が自処理装置で作成されたものであることが分かる。このため、制御部204は、ネットワーク上に処理可能な処理装置が存在せず、負荷分散システム全体として処理能力が不足していることがわかる。制御部204は、負荷分散システム全体として処理能力が不足していることを保存しユーザに通知すれば、ユーザは処理装置の増設の要否を判断することができる。
【0084】
なお、処理装置101は、自処理装置の処理要求を他の処理装置から受信した場合でも、図7で説明した動作と同様な動作が行われる。
【0085】
次に、処理装置の停止時の動作について説明する。図8は、処理装置の停止時の動作として処理装置101が終了した場合を説明するためのフローチャートである。
【0086】
ステップ801では、処理装置101の制御部204は、処理装置101のユーザにて、処理装置101の動作の終了を示す情報が入力されると、制御部204は、処理装置が終了されると判断して、ステップ802を実行する。
【0087】
ステップ802では、制御部204は、記憶部206から自処理装置の識別情報を取得し、その識別情報を含む終了要求を作成する。制御部204は、その終了要求を送信部205を介して他の処理装置の受信部202に送信する。ここで、制御部204は、終了要求を同報通信で送信する。また、制御部204が終了要求を送信すると、処理装置101が停止される。
【0088】
他の処理装置の受信部202が終了要求を受信すると、ステップ803を実行する。
【0089】
ステップ803では、受信部202は、終了要求を制御部204を介して委託先決定部207に送信する。委託先決定部207は、終了要求を受信すると、経路情報の作成を引き受けるか否かを判断する。このとき、処理装置のいずれか一つが経路情報の作成を行うようにその判断が行われるようにすることが望ましい。
【0090】
例えば、委託先決定部207は、自処理装置が取得要求を送信した送信時刻と、取得要求を受信した受信時刻とその取得要求内の識別情報とを対応付けた時刻情報を保持しておく。委託先決定部207は、終了要求を受信した場合、時刻情報内に送信時刻より前の受信時刻がないと、経路情報の作成を引き受ける。さらに、委託先決定部207は、経路情報の作成を引き受けるか否かを判断した後に、終了要求内の識別情報とそれに対応する受信時刻を時刻情報から削除する。この場合、起動中の処理装置の中で、最も早く起動された処理装置が経路情報の作成を引き受けることになる。
【0091】
委託先決定部207は、経路情報の作成を行う場合、ステップ804を実行し、経路情報の作成を行わない場合、処理を終了する。
【0092】
ステップ804では、委託先決定部207は、記憶部206から経路情報を取得し、その経路情報から、終了要求内の識別情報を削除して新たに経路情報を作成する。
【0093】
例えば、現在の経路情報が、処理装置102→処理装置101→処理装置103→処理装置102のように委託先を示す場合、委託先決定部207は、処理装置102→処理装置103→処理装置102を示す経路情報を作成する。なお、処理装置A→処理装置Bは、処理装置Aの委託先が処理装置Bであることを示す。
【0094】
委託先決定部207は、その作成した経路情報を記憶部206に記憶するとともに、その経路情報を、制御部204および送信部205を介して他の処理装置の受信部202に送信する。このとき、委託先決定部207は、同報通信を用いて経路情報を送信する。
【0095】
他の処理装置の受信部202は、経路情報を受信すると、ステップ805を実行する。
【0096】
ステップ805では、受信部202は、経路情報を制御部204に送信する。制御部204は、経路情報を受信すると、その経路情報を記憶部206に記憶して、処理を終了する。
【0097】
最後に、図1に示した全での処理装置が起動しており、かつ、各処理装置の委託先が、処理装置101→処理装置102→処理装置103→処理装置104→処理装置101で表わされる場合について考える。
【0098】
処理装置101および103のそれぞれで処理要求がされ、かつ、処理装置101および103では、処理要求に応じた情報処理を行うのに十分な空きリソースがない場合、それぞれの処理要求は、処理装置102および104に送信される。
【0099】
処理装置102および103に十分な空きリソースがある場合、処理装置102および103において、その処理要求に応じた情報処理が実行される。
【0100】
また、処理装置102にも十分な空きリソースがなかった場合は、その処理要求は処理装置103へ送信され、処理装置103は十分なリソースを持っていないため、さらに処理装置104へ送信される。
【0101】
このようにして、個々の処理装置で処理できない場合でも、ネットワーク上に十分な空きリソースを有する処理装置が存在すれば、処理要求に応じた情報処理を実行することが可能になる。
【0102】
また、処理装置101にて作成された処理要求に応じた情報処理が処理装置102で実行され、かつ、処理装置103にて作成された処理要求に応じた情報処理が処理装置104で実行された場合について考える。
【0103】
この場合、処理装置101からの処理要求は集線装置105を経由して処理装置102へ送られるため、処理装置101から集線装置105までの通信と、集線装置105から処理装置102までの通信との2つの通信が発生する。また、同様に、処理受付情報の返信にも、2つの通信が発生する。したがって、処理装置101および102間では、4つの通信が行われる。
【0104】
さらに、処理装置103および104の間でも、同様に4つの通信が行われるので、ネットワーク全体で8つの通信が発生する。
【0105】
特許文献2に記載の技術のように、処理要求に同報通信を用いることで委託先を決定する必要がある場合、処理装置101の処理要求は、集線装置105に送信され、修正装置から、処理装置102、処理装置103および処理装置104のそれぞれに同時に送信される。4つの通信が発生することになる。また、処理装置102および104で情報処理が実行可能であるため、処理装置102および104の両方で処理受付情報の返信が行われる。このとき、処理装置102および104のそれぞれが同報通信を用いて、処理受付情報の返信を行ったとすると、8つの通信が発生することになる。したがって、処理装置101および102間では、12の通信が行われる。
【0106】
また、処理装置103の処理要求に対しても、12の通信が行われるので、ネットワーク全体で24の通信が発生することになる。
【0107】
さらに、各処理要求に応じた情報処理を実行可能な処理装置が複数存在するため、それらの処理装置にて同じ情報処理が重複して実行されることを回避するための通信が必要となる。
【0108】
以上により、本負荷分散システムでは、通信量を軽減することができることが分かる。
【0109】
本実施形態によれば、受信部202は、他の処理装置から取得要求を受信する。委託先決定部207は、受信部202にて取得要求が受信されると、決定条件に従って、その取得要求の送信元である処理装置からの情報処理の委託を引き受けるか否かを判断する。委託先決定部207は、情報処理の委託を引き受ける場合、自処理装置を示す委託先情報を、その取得要求の送信元である処理装置に送信する。
【0110】
この場合、委託先を処理要求だけで決定することが可能になる。
【0111】
また、本実施形態では、受信部202は、他の処理装置から処理要求を受信する。制御部204は、受信部202が処理要求を受信した場合、自処理装置の負荷に基づいて、その処理要求に応じた情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断する。
【0112】
この場合、他の処理装置からの処理要求に応じた情報処理が実行できない場合にでも、その処理要求を委託先に送信することができるので、ネットワーク上に情報処理を実行できる処理装置が存在すれば、処理要求に応じた情報処理を実行することが可能になる。
【0113】
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0114】
101〜104 処理装置
105 集線装置
201 要求部
202 受信部
203 測定部
204 制御部
205 送信部
206 記憶部
207 委託先決定部
208 実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理装置に負荷を分散させることが可能な負荷分散システムに参加可能な処理装置であって、
起動時に、前記負荷分散システムに参加する旨の参加要求を、情報処理の委託先となる処理装置を示す委託先情報の取得要求として送信する要求手段と、
前記要求手段にて送信された取得要求に応じた委託先情報を受信する受信手段と、
自処理装置の負荷を求める測定手段と、
前記測定手段にて求められた負荷に基づいて、情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断する判断手段と、
前記判断手段にて前記情報処理を他の処理装置に委託すると判断されると、前記受信手段にて受信された委託先情報が示す処理装置に、当該情報処理を実行する旨の処理要求を送信する送信手段と、を有する処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理装置において、
前記受信手段は、他の処理装置から前記取得要求をさらに受信し、
前記受信手段にて取得要求が受信されると、予め定められた決定条件に従って、当該取得要求の送信元である処理装置からの情報処理の委託を引き受けるか否かを判断し、当該情報処理の委託を引き受ける場合、自処理装置を示す委託先情報を、当該取得要求の送信元である処理装置に送信する委託先決定手段をさらに有する処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の処理装置において、
前記受信手段は、他の処理装置から前記処理要求をさらに受信し、
前記制御手段は、前記受信手段が前記処理要求を受信した場合、前記負荷に基づいて、当該処理要求に応じた情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断する、処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の処理装置を複数有する負荷分散システム。
【請求項5】
複数の処理装置に負荷を分散させることが可能な負荷分散システムに参加可能な処理装置による自律型分散処理方法であって、
起動時に、前記負荷分散システムに参加する旨の参加要求を、情報処理の委託先となる処理装置を示す委託先情報の取得要求として送信し、
前記取得要求に応じた委託先情報を受信し、
自処理装置の負荷を求め、
前記負荷に基づいて、情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断し、
前記情報処理を他の処理装置に委託すると判断されると、前記委託先情報が示す処理装置に、当該情報処理を実行する旨の処理要求を送信する、自律型分散処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の自律型分散処理方法において、
他の処理装置から前記取得要求をさらに受信し、
前記取得要求が受信されると、予め定められた決定条件に従って、当該取得要求の送信元である処理装置からの情報処理の委託を引き受けるか否かを判断し、
前記情報処理の委託を引き受ける場合、自処理装置を示す委託先情報を、当該取得要求の送信元である処理装置に送信する、自律型分散処理方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の自律型分散処理方法において、
他の処理装置から前記処理要求をさらに受信し、
前記処理要求を受信した場合、前記負荷に基づいて、当該処理要求に応じた情報処理を自処理装置で実行するか他の処理装置に委託するかを判断する、自律型分散処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−59916(P2011−59916A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207889(P2009−207889)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)