説明

処理装置及び処理方法

【課題】処理液に含まれる成分の濃度を適切に制御し、当該処理液を用いた被処理物の均一な表面処理を提供する。
【解決手段】メッキ液を用いてウエハ13を表面処理する無電解メッキ装置100は、処理槽1及び循環ライン3内を循環するメッキ液に含まれる成分の濃度を検出する第1濃度計4と、第1の濃度計とは異なる位置におけるメッキ液に含まれる成分の濃度を検出する第2濃度計5と、第1濃度計4及び第2濃度計5が検出した成分濃度又はこれらの成分濃度差が、所定の目標値になるように、処理槽1内及び循環ライン3内のメッキ液の流量を調整する制御部14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液を用いて被処理物を表面処理する処理装置及び処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬剤を含む処理液を用いて被処理物に施す表面処理として、電解メッキ、無電解メッキ、エッチング等が挙げられる。半導体製造においてもこのような表面処理技術が用いられており、特に近年、低コストで処理可能な無電解メッキが実用化されている。
【0003】
無電解メッキは低コストである一方、電解メッキと比較して、成分濃度、液温等の処理液の条件制御を非常に細かく行う必要がある。従来、無電解メッキの処理液を自動で制御する多くの方法が提案されている。例えば特許文献1及び2には、処理槽内の処理液に含まれる成分濃度を測定し、測定結果に基づいて処理液成分の補充量をオンライン制御する技術が記載されている。
【0004】
また、無電解メッキにおいては、処理液に含まれる成分の適切な濃度を維持するために、処理液の供給流速も制御する必要がある。例えば、特許文献3には、処理液の供給流速を規定することによって、被処理物に設けられた穴の内壁面をメッキ処理する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−41764号公報(1994年2月15日公開)
【特許文献2】特開2002−47575号公報(2002年2月15日公開)
【特許文献3】特開平9−13174号公報(1997年1月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無電解メッキの特徴として、処理の対象となるウエハサイズを限定せずに処理することができることが挙げられる。しかしながら、処理の対象となるウエハサイズは、大口径化する傾向にあり、特に多品種混合ラインの場合には、ウエハの被メッキ面積が非常に大きく変動する。また、半導体ウエハは、搭載されるデバイスによって被メッキ面積が異なり、チップサイズの縮小、パッド数の増大等により、ウエハの被メッキ面積は増大傾向にある。さらに、パッケージの小型化及び高密度化に伴い、ウエハの実装精度も求められており、メッキ膜厚のばらつきを低減してより高精度にメッキ処理する必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のように、従来の処理液条件の制御方法では、処理槽内の特定の1箇所において測定した処理液の状態に基づいて、処理槽内の処理液の状態を制御しており、処理槽全体の処理液条件を十分に制御できていない。また、特許文献1及び2に記載の方法においては、処理液成分の補充量によってのみ処理液条件を制御しており、被処理物の面積の増大や、多品種混合処理に対して適用するには不十分である。
【0008】
また、無電解メッキ処理においては、特許文献3に記載のように、処理液の流量を極力小さく設定することが一般的であるが、ウエハサイズの大口径化に伴い、処理槽の容積も大きくなるため、流量が小さいと成分補充に対する成分濃度計の応答時間が長くなり、処理液の条件制御が不安定となる。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理槽内の処理液に含まれる成分の濃度を適切に制御し、当該処理液を用いて被処理物の均一な表面処理を実現することが可能な処理装置及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る処理装置は、上記課題を解決するために、処理液を用いて被処理物を表面処理する処理装置であって、上記被処理物が導入された処理槽内、及び上記処理槽における上記処理液の導入口及び導出口に接続された循環ライン内において循環する上記処理液に含まれる成分の濃度を第1成分濃度として検出する第1濃度検出手段と、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記第1濃度検出手段とは異なる位置において、上記処理液に含まれる成分の濃度を第2成分濃度として検出する第2濃度検出手段と、上記第1濃度検出手段が検出した第1成分濃度及び上記第2濃度検出手段が検出した第2成分濃度が予め定められた目標濃度になるように、又は上記第1成分濃度と上記第2成分濃度との濃度差が予め定められた目標濃度差になるように、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記処理液の流量を調整する流量制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る処理方法は、上記課題を解決するために、処理液を用いて被処理物を表面処理する処理方法であって、上記被処理物が導入された処理槽内、及び上記処理槽における上記処理液の導入口及び導出口に接続された循環ライン内において循環する上記処理液に含まれる成分の濃度を第1成分濃度として検出する第1濃度検出工程と、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記第1濃度検出工程とは異なる位置において、上記処理液に含まれる成分の濃度を第2成分濃度として検出する第2濃度検出工程と、上記第1濃度検出工程において検出した上記第1成分濃度及び上記第2濃度検出工程において検出した上記第2成分濃度が予め定められた目標濃度になるように、又は上記第1成分濃度と上記第2成分濃度との濃度差が予め定められた目標濃度差になるように、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記処理液の流量を調整する流量制御工程と包含することを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、処理槽内および処理槽に接続された循環ライン内を循環する処理液に含まれる成分の濃度を、複数の異なる位置において第1濃度検出手段及び第2濃度検出手段によりそれぞれ検出する。そして、制御手段は、第1濃度検出手段及び第2濃度検出手段により検出された、異なる位置の成分濃度、又はそれぞれの成分濃度の濃度差が、予め設定した所定の目標値になるように、処理槽内及び循環ライン内の処理液の流量を調整する。
【0013】
このように、循環する処理液の流量を調整することによって、処理槽内の処理液の成分濃度を制御するので、例えば被処理物の処理面積が大きくなった場合でも、処理面積に係らず適切に成分濃度を制御することが可能である。これにより、処理槽内の処理液の成分濃度を均一に維持することができるので、被処理物の均一な表面処理を再現性よく実現することができる。したがって、例えば、処理液の成分濃度又は流量に処理プロセスが強く影響を受ける無電解メッキ、電解メッキ、エッチング等の表面処理を好適に行うことが可能である。
【0014】
本発明に係る処理装置は、上記第2濃度検出手段を複数備え、上記流量制御手段は、複数の上記第2濃度検出手段が検出した第2成分濃度のうち、上記第1成分濃度との濃度差が最も大きい第2成分濃度があらかじめ定められた目標濃度になるように、又は当該第2成分濃度と上記第1成分濃度との濃度差が予め定められた目標濃度差になるように、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記処理液の流量を調整することが好ましい。これにより、より精度よく処理槽内および循環ライン内の濃度を制御することができる。
【0015】
本発明に係る処理装置において、上記第1濃度検出手段は、上記処理槽内において上記第2濃度検出手段よりも上記導入口に近い位置の上記第1成分濃度を検出し、上記第2濃度検出手段は、上記処理槽内において上記第1濃度検出手段よりも上記導出口に近い位置の上記第2成分濃度を検出し、上記流量制御手段は、上記第2成分濃度を予め定められた第2目標濃度にするための上記第1成分濃度の第1目標濃度を算出し、上記第1成分濃度が上記第1目標濃度になるように、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記処理液の流量を調整することが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、処理槽において処理液の導入口側と導出口側との成分濃度差が大きい部分の成分濃度又は成分濃度差が、所定の目標値になるように流量を制御し、処理槽内の処理液の成分濃度を調整する。したがって、より適切な濃度制御が可能であり、被処理物の均一な表面処理を実現することができる。
【0017】
本発明に係る処理装置は、上記流量制御手段により調整される上記処理液の流量が、予め定められた流量限界値を超えたとき、上記処理槽又は上記循環ライン内に上記処理液を補充する処理液補充手段をさらに備え、上記流量制御手段は、調整する上記処理液の流量が上記流量限界値を超えたとき、上記処理液の流量が上記流量限界値になるように調整することが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、所定の流量限界値までは流量の制御により処理槽内における処理液の成分濃度を適切に調整し、流量限界値を超えるときには、超過した流量に対応する量の処理液を処理槽及び循環ラインに補充する。これにより、処理槽及び循環ライン内を適切な流量に保ちつつ、処理槽内の処理液の成分濃度を制御することが可能であり、より適切な濃度制御が可能になる。
【0019】
本発明に係る処理装置において、上記第1濃度検出手段及び上記第2濃度検出手段は、上記処理液の吸光度に基づいて上記処理液に含まれる成分の濃度を検出することが好ましい。これにより、処理槽内における処理液の成分濃度をより精度よく制御することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る処理装置は、処理液を用いて被処理物を表面処理する処理装置であって、上記被処理物が導入された処理槽内、及び上記処理槽の導入口及び導出口に接続された循環ライン内において循環する上記処理液に含まれる成分の濃度を第1成分濃度として検出する第1濃度検出手段と、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記第1濃度検出手段とは異なる位置において、上記処理液に含まれる成分の濃度を第2成分濃度として検出する第2濃度検出手段と、上記第1濃度検出手段が検出した第1成分濃度及び上記第2濃度検出手段が検出した第2成分濃度が予め定められた目標濃度になるように、又は上記第1成分濃度と上記第2成分濃度との濃度差が予め定められた目標濃度差になるように、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記処理液の流量を調整する流量制御手段とを備えているので、処理液に含まれる成分の濃度を適切に制御することが可能であり、当該処理液を用いて被処理物の均一な表面処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態に係る無電解メッキ装置を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る無電解メッキ装置における流量の調整処理の流れを説明するフロー図である。
【図3】他の実施形態に係る無電解メッキ装置を示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る無電解メッキ装置における流量及び補充量の調整処理の流れを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
本発明に係る処理装置の第1の実施形態について、図1及び2を参照して以下に説明する。なお、本実施形態においては、本発明に係る処理装置を、ニッケルメッキ液を用いて無電解メッキする無電解メッキ装置として説明するが本発明はこれに限定されず、メッキ液の成分濃度や流量に処理プロセスが強く影響を受ける他の無電解メッキ、電解メッキ、エッチング等の表面処理にも適用できる。
【0023】
図1は、無電解メッキ装置100の一実施形態を示す概略図であり、図2は、無電解メッキ装置100における流量の調整処理の流れを説明するフロー図である。図1に示すように、無電解メッキ装置100は、第1濃度計(第1濃度検出手段)4、第2濃度計(第2濃度検出手段)5、及び制御部(流量制御手段)14を備えている。また、無電解メッキ装置100は、処理槽1、循環ポンプ2、循環ライン3、フィルター6、流量計7、ヒーター8、ノズル9、純水ライン10、及びエアオペバルブ11を備えていてもよい。無電解メッキ装置100は、処理槽1内に導入され、キャリア12に把持されたウエハ(被処理物)13を、処理槽1内に導入したメッキ液(処理液)を用いて無電解メッキにより表面処理する装置である。
【0024】
ウエハの無電解メッキに用いられるメッキ液は、循環ライン3を介してノズル9から処理槽1内に供給される。したがって、ノズル9がメッキ液の処理槽1への導入口として機能する。循環ライン3は、処理槽1内に設けられたノズル9に接続され、また、処理槽1の上部の開口部(導出口)から流出したメッキ液を貯留する貯留槽に接続されており、処理槽1に導入されて処理槽1から流出するメッキ液を、その内部において循環させる。
【0025】
処理槽1から流出したメッキ液は貯留槽に貯留され、蒸発した水分を補うために純水ライン10から水が供給される。純水ライン10からメッキ液への水の供給はエアオペバルブの開閉により制御され、水分の蒸発速度に基づいて予め定められた速度で水分が供給される。
【0026】
循環ライン3は、処理槽1の開口部との接続部と、ノズル9との接続部との間に、循環ポンプ2、フィルター6、流量計7及びヒーター8を備えている。循環ポンプ2は、循環ライン3内のメッキ液を図1おける時計回りに循環させる動力をメッキ液に与えるものであり、遠心ポンプ等の公知のポンプを使用可能である。循環ポンプ2は、制御部14からの命令に基づいて駆動し、メッキ液を循環させる。処理槽1及び循環ライン3内のメッキ液は、循環ポンプ2によってその流量が調整される。
【0027】
フィルター6は、循環ライン3内を循環するメッキ液をろ過し、メッキ液中の不純物を取り除くものである。流量計7は、循環ライン3内のメッキ液の流速を検出するものであり、処理槽1内に供給されるメッキ液の単位時間当たりの流量を管理するために用いられる。ヒーター8は、循環ライン3から処理槽1に供給されるメッキ液の温度を、所定の適切な温度に加温するものである。ヒーター8によるメッキ液の加温は、メッキ液の含有成分、メッキ処理するウエハの種類、メッキ条件等により適宜設定された温度になるように調整される。
【0028】
第1濃度計4及び第2濃度計5はそれぞれ、処理槽1内のメッキ液中のメッキ成分のイオン濃度(成分濃度)を検出するものである。本実施形態において、第1濃度計4は第2濃度計5よりも、処理槽1にメッキ液を供給するノズル9の近くに設けられており、ノズル9の近傍、すなわちメッキ液の導入口付近のメッキ成分のイオン濃度(第1成分濃度)を検出する。また、第2濃度計5は第1濃度計4よりも、処理槽1からメッキ液が流出する導出口の近くに設けられており、導出口付近のメッキ成分のイオン濃度(第2成分濃度)を検出する。第2濃度計5は処理槽1内の複数箇所に設置してもよい。
【0029】
第1濃度計4及び第2濃度計5が検出した第1イオン濃度及び第2イオン濃度はそれぞれ、制御部14にフィードバックされ制御部14は、これらの値に基づいて循環ポンプにメッキ液の流量を調整させる。第1濃度計4及び第2濃度計5の設置位置や、イオン濃度の検出位置はこれに限定されず、処理槽1及び循環ライン3により構成されるメッキ液の循環経路内の複数の異なる位置に設けられていてもよいし、濃度計の数もこれに限定されない。
【0030】
3つ以上の濃度計を用いる場合には、それぞれが検出したイオン濃度を制御部14にフィードバックし、例えばノズル9の近傍の濃度計と最小のイオン濃度を示す濃度計との差分に基づいて制御してもよい。濃度計を複数設けることによって、制御部14による制御をより高精度に行うことができる。
【0031】
第1濃度計4及び第2濃度計5としては、メッキ液中の成分の正確な同定及び定量が可能であり、かつその分析時間が比較的速いものであれば特に制限されず、公知の濃度計を使用可能であるが、特に特許文献1及び2に記載のオンライン測定に有用な吸光光度測定装置を好適に使用可能である。第1濃度計4及び第2濃度計5として吸光光度測定装置を用いる場合、後述するニッケルイオン(Ni2+)と次亜リン酸イオン(HPO)とでは一般に測定波長が異なるため、これらのどちらか一方の成分を代表して測定し、制御部14にフィードバックする。
【0032】
無電解メッキ装置100において用いるメッキ液としては、従来公知の無電解メッキ液を使用することができる。本実施形態においては、無電解ニッケルメッキ液を用いており、金属源としての硫酸ニッケル、還元剤としての次亜リン酸に微量添加剤が加えられたものを、有効成分として含んでいる。無電解メッキ装置100においては、処理槽1に導入されたメッキ液中の次亜リン酸の酸化により放出された電子によってニッケルイオンが析出し、析出したニッケルによって当該メッキ液中に浸漬されたウエハ13の表面を被覆することによって、ウエハ13を表面処理する。
【0033】
ここで、ウエハ13は、無電解メッキ装置100により表面処理する前に、所定の前処理が施されていてもよい。このような前処理として、アルミニウム上にメッキ処理する場合には公知のシンジケート処理を、銅上又は半導体上にメッキする場合には公知のパラジウム活性処理を施すことができる。
【0034】
無電解ニッケルメッキ液を用いた無電解メッキ処理は、下記の反応式(1)〜(3)により進行する;
(主反応)
Ni2++HPO+HO → Ni+HPO+2H・・・(1)
(副反応:水素の発生)
O+HPO → H↑+HPO・・・(2)
(副反応:リンの共析)
PO+H → P+OH+HO・・・(3)
反応式(1)〜(3)による無電解メッキ処理が進行するにしたがって、メッキ液中のニッケルイオン(Ni2+)及び次亜リン酸イオン(HPO)が減少する。したがって、処理槽1内において、ノズル9側から処理槽1の開口部に向かって循環するメッキ液中においては、ノズル9側のイオン濃度が開口部側のイオン濃度よりも高くなる。すなわち、第1濃度計4が検出する第1金属イオン濃度は、第2濃度計5が検出する第2金属イオン濃度よりも高くなる。
【0035】
このような処理槽1内におけるイオン濃度の傾斜によって、ウエハ13に形成されるメッキ膜の膜厚にばらつきが生じ、高精度にメッキ処理することが困難になるという問題があった。このような問題は、ウエハ13のメッキ面積が大きい場合に大きく影響を受ける。
【0036】
無電解メッキ装置100においては、濃度差が大きくなる複数の箇所において第1濃度計4及び第2濃度計5により、ニッケルイオン及び次亜リン酸イオン等のメッキ成分のイオン濃度を測定し、測定したイオン濃度又はイオン濃度差が予め定められた目標濃度又は目標濃度差になるように、制御部14が循環ポンプ2を制御する。すなわち、循環ポンプ2によりメッキ液の流量を調整することによって、処理槽1内に供給されるメッキ液の流量を調整し、処理槽1内におけるイオン濃度を均一に保つ。これにより、ウエハ13に膜厚が均一なメッキ膜を形成することが可能である。
【0037】
従来の無電解メッキ装置においては、処理槽内のメッキ液のイオン濃度を調整するために、メッキ処理により消費される成分の補充により制御していた。しかしながら、成分の補充によるイオン濃度管理では、メッキ面積の増大により生じる濃度差の補正に迅速に対応することができず、また成分の消費量が増大するという問題がある。無電解メッキ装置100によれば、メッキ液の流量を制御することによって処理槽1内に流入するメッキ液の流入量を調整するので、このような問題が生じない。
【0038】
次に、無電解メッキ装置100の制御部14による、メッキ液の流量の調整処理について図2を参照して説明する。図2に示すように、まず、制御部14に備えられた第2減算器20において、第2イオン濃度の目標値として予め定められた第2目標値(第2目標濃度)SV2と第2濃度計5により検出された第2イオン濃度PV2との濃度差を算出する。第2減算器20において算出された濃度差を表す信号を第2PID制御器21に送信し、第2PID制御器21は当該濃度差に基づいて、第2イオン濃度PV2が第2目標値SV2の濃度になるような、第1イオン濃度の目標値を第1目標値(第1目標濃度)SV1として第1減算器22に出力する。なお、第2目標値SV2と、第2目標値SV2と第1目標値SV1との差を、メッキ膜厚のばらつきが規格範囲内におさまるような値になるように予め設定し、第2PID制御器41内の記憶部(図示せず)に記憶させておく。
【0039】
そして、第1減算器22において、第1目標値SV1と第1濃度計4により検出された第1イオン濃度PV1との濃度差を算出する。第1減算器22において算出された濃度差を表す信号を第1PID制御部23に送信し、第1PID制御部23は当該濃度差に基づいて、第1イオン濃度PV1が第1目標値SV1の濃度になるような、メッキ液の流量を第3目標値SV3として第3減算器24に出力する。第3減算器24において、第3目標値SV3と流量計7により検出された流量PV3との流量差を算出する。第3減算器24において算出された流量差を表す信号を第3PID制御部25に送信し、第3PID制御部25は当該流量差に基づいて、処理槽1及び循環ライン3内のメッキ液の流量PV3が第3目標値SV3になるように循環ポンプ2を制御する信号を循環ポンプ2に送信する。
【0040】
循環ポンプ2は、当該信号に基づいてその回転数等を調整し、処理槽1及び循環ライン3内のメッキ液の流量を第3目標値SV3にする。
【0041】
なお、循環ポンプ2による流量の調整は、循環ポンプ2の回転数を調整することによって行うことができる。また、無電解メッキ処理により消費されたメッキ液成分を、第1濃度計4及び第2濃度計5の検出結果に基づいて適宜手動で補充してもよい。
【0042】
(第2の実施形態)
無電解メッキ装置の他の実施形態について、図3及び4を参照して以下に説明する。図3は、無電解メッキ装置101の一実施形態を示す概略図であり、図4は、無電解メッキ装置101における流量の調整処理の流れを説明するフロー図である。図3に示すように、本実施形態の無電解メッキ装置101は、インジェクター15、インジェクションポンプ(処理液補充手段)16及び補充液タンク17を備えている点において、第1の実施形態の無電解メッキ装置100と異なっている。したがって、本実施形態においては、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明し、他の詳細な説明については省略する。
【0043】
インジェクター15は、循環ライン3において循環ポンプ2よりも処理槽1の開口部側に接続されており、かつインジェクションポンプ16を介して補充液タンク17に接続されている。補充液タンク17には、処理槽1内及び循環ライン3内を循環するメッキ液と同様の成分を含有するメッキ液が導入されている。補充液タンク17内のメッキ液は、インジェクションポンプ16によって送り出され、インジェクター15から循環ライン3内に導入される。無電解メッキ装置101においては、制御部14がインジェクションポンプ16を制御することによって、補充液タンク17からのメッキ液の補充を制御する。制御部14によるメッキ液の補充は、第1濃度計4及び第2濃度計5により測定される第1イオン濃度及び第2イオン濃度に基づく流量の制御と共にPID制御される。
【0044】
無電解メッキ装置101の制御部14による、メッキ液の流量及び補充量の調整処理について図4を参照して説明する。図4に示すように、まず、制御部14に備えられた第2減算器40において、第2イオン濃度の目標値として予め定められた第2目標値SV2と第2濃度計5により検出された第2イオン濃度PV2との濃度差を算出する。第2減算器40において算出された濃度差を表す信号を第2PID制御器41に送信し、第2PID制御器41は当該濃度差に基づいて、第2イオン濃度PV2が第2目標値SV2の濃度になるような、第1イオン濃度の目標値を第1目標値SV1として第1減算器42に出力する。なお、第2目標値SV2と、第2目標値SV2と第1目標値SV1との差を、メッキ膜厚のばらつきが規格範囲内におさまるような値になるように予め設定し、第2PID制御器41内の記憶部(図示せず)に記憶させておく。
【0045】
そして、第1減算器42において、第1目標値SV1と第1濃度計4により検出された第1イオン濃度PV1との濃度差を算出する。第1減算器42において算出された濃度差を表す信号を第1PID制御部43に送信し、第1PID制御部43は当該濃度差に基づいて、第1イオン濃度PV1が第1目標値SV1の濃度になるような、メッキ液の流量を第3目標値SV3としてリミッター回路44に出力する。
【0046】
リミッター回路44において、メッキ液の流量の上限値として予め定められた流量制限値(流量限界値)LV3と第3目標値SV3とを比較し、第3目標値SV3が流量制限値LV3以下である場合、第3目標値SV3をそのまま第3減算器45に出力する。第3目標値SV3が流量制限値LV3よりも大きい場合、流量制限値LV3を第3減算器45に出力すると共に、第3目標値SV3と流量制限値LV3との流量差に比例したメッキ液の補充量を示す補充値SV4をインジェクションポンプ16に出力する。なお、流量制限値LV3としてメッキ処理に適した流量上限値を予め設定し、リミッター回路44内の記憶部(図示せず)に記憶させておく。
【0047】
そして、第3減算器45において、第3目標値SV3又は流量制限値LV3と流量計7により検出された流量PV3との流量差を算出する。第3減算器45において算出された流量差を表す信号を第3PID制御部46に送信し、第3PID制御部46は当該流量差に基づいて、処理槽1及び循環ライン3内のメッキ液の流量PV3が第3目標値SV3になるように循環ポンプ2を制御する信号を循環ポンプ2に送信する。循環ポンプ2は、当該信号に基づいてその回転数等を調整し、処理槽1及び循環ライン3内のメッキ液の流量を第3目標値SV3にする。
【0048】
リミッター回路44から出力された補充値SV4を表す信号を受信したインジェクションポンプ16は、補充値SV4に対応する量のメッキ液を循環ライン3内に供給するように駆動する。すなわち、補充値SV4>0のとき、インジェクションポンプ16が駆動して所定流量でメッキ液を循環ラインに補充し、補充値SV4=0のとき、インジェクションポンプ16は停止してメッキ液の補充は行わない。
【0049】
無電解メッキ装置101においては、第2濃度計5が処理槽1内の複数箇所に設置されていてもよい。第2濃度計5が複数個設置されていることにより、さらに濃度制御の精度を高められる。この場合、最小値回路を介して、第2濃度計5の測定した第2イオン濃度PV2が第2減算器40に送られる。すなわち、第1イオン濃度PV1との濃度差が最も大きい第2イオン濃度を第2イオン濃度PV2として濃度制御に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、処理液の成分濃度や流量に処理プロセスが強く影響を受ける無電解メッキ、電解メッキ、エッチング等の表面処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 処理槽
2 循環ポンプ
3 循環ライン
4 第1濃度計(第1濃度検出手段)
5 第2濃度計(第2濃度検出手段)
6 フィルター
7 流量計
8 ヒーター
9 ノズル
10 純水ライン
11 エアオペバルブ
12 キャリア
13 ウエハ(被処理物)
14 制御部(制御手段)
15 インジェクター
16 インジェクションポンプ(処理液補充手段)
17 補充液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を用いて被処理物を表面処理する処理装置であって、
上記被処理物が導入された処理槽内、及び上記処理槽における上記処理液の導入口及び導出口に接続された循環ライン内において循環する上記処理液に含まれる成分の濃度を第1成分濃度として検出する第1濃度検出手段と、
上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記第1濃度検出手段とは異なる位置において、上記処理液に含まれる成分の濃度を第2成分濃度として検出する第2濃度検出手段と、
上記第1濃度検出手段が検出した第1成分濃度及び上記第2濃度検出手段が検出した第2成分濃度が予め定められた目標濃度になるように、又は上記第1成分濃度と上記第2成分濃度との濃度差が予め定められた目標濃度差になるように、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記処理液の流量を調整する流量制御手段と
を備えていることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
上記第2濃度検出手段を複数備え、
上記流量制御手段は、複数の上記第2濃度検出手段が検出した第2成分濃度のうち、上記第1成分濃度との濃度差が最も大きい第2成分濃度があらかじめ定められた目標濃度になるように、又は当該第2成分濃度と上記第1成分濃度との濃度差が予め定められた目標濃度差になるように、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記処理液の流量を調整することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
上記第1濃度検出手段は、上記処理槽内において上記第2濃度検出手段よりも上記導入口に近い位置の上記第1成分濃度を検出し、
上記第2濃度検出手段は、上記処理槽内において上記第1濃度検出手段よりも上記導出口に近い位置の上記第2成分濃度を検出し、
上記流量制御手段は、上記第2成分濃度を予め定められた第2目標濃度にするための上記第1成分濃度の第1目標濃度を算出し、上記第1成分濃度が上記第1目標濃度になるように、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記処理液の流量を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
上記流量制御手段により調整される上記処理液の流量が、予め定められた流量限界値を超えたとき、上記処理槽又は上記循環ライン内に上記処理液を補充する処理液補充手段をさらに備え、
上記流量制御手段は、調整する上記処理液の流量が上記流量限界値を超えたとき、上記処理液の流量が上記流量限界値になるように調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
上記第1濃度検出手段及び上記第2濃度検出手段は、上記処理液の吸光度に基づいて上記処理液に含まれる成分の濃度を検出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項6】
処理液を用いて被処理物を表面処理する処理方法であって、
上記被処理物が導入された処理槽内、及び上記処理槽における上記処理液の導入口及び導出口に接続された循環ライン内において循環する上記処理液に含まれる成分の濃度を第1成分濃度として検出する第1濃度検出工程と、
上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記第1濃度検出工程とは異なる位置において、上記処理液に含まれる成分の濃度を第2成分濃度として検出する第2濃度検出工程と、
上記第1濃度検出工程において検出した上記第1成分濃度及び上記第2濃度検出工程において検出した上記第2成分濃度が予め定められた目標濃度になるように、又は上記第1成分濃度と上記第2成分濃度との濃度差が予め定められた目標濃度差になるように、上記処理槽内及び上記循環ライン内における上記処理液の流量を調整する流量制御工程と
を包含することを特徴とする処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−6720(P2011−6720A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148947(P2009−148947)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】