説明

凸版印刷装置および印刷物の製造方法

【課題】高品質な印刷が可能な印刷毎にアニロックス洗浄を行う凸版印刷装置および印刷物の製造方法において使用材料を回収し再利用することで材料利用効率を向上する凸版印刷装置および印刷物の製造方法を提供すること。
【解決手段】基板定盤106と、凸版104と、凸版104が装着されている回転式の版胴105と、インクを凸版104へ転写するアニロックスロール101と、アニロックスロール101の表面にインクを塗布するインク供給装置110と、アニロックスロール101の洗浄機構114を備え、洗浄機構114は、少なくとも洗浄液をアニロックスロール101の表面に洗浄液を供給する洗浄液供給ユニット116と、アニロックスロール101の表面に供給した洗浄液を飛散させずに回収する洗浄液回収ユニット117と、アニロックスロール101の表面から洗浄液を乾燥除去する送風ユニット115を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸版印刷法や樹脂凸版を用いて微細なパターンを被印刷体に面内均一かつ高い位置精度で形成でき、さらに連続的に安定して形成できる凸版印刷装置および印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェットプロセスで微細なパターンを被印刷体に面内均一かつ高い位置精度で形成し、さらに連続的に安定して形成する方法としては、フォトリソグラフィー法が主に使用されている。しかし、このフォトリソグラフィー法はプロセスが複雑で、パターン形成に必要な製造設備等が高価であり、また材料の無駄が多いため、製造コストが高くなるという問題がある。
【0003】
また、フォトリソグラフィー法以外のパターニング方法として、オフセット印刷や凸版印刷等の印刷法や、インクジェット法が実際に有機EL素子の発光層形成等の薄膜パターン形成が試みられている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。特に、凸版印刷法は薄膜でのパターニング精度の点で有利だと考えられる。
図6は、従来の凸版印刷装置の一例を示している。凸版印刷装置は、印刷パターンに対応した凸形状のパターンを有する凸版104と、版下クッション103を介して凸版104が装着される回転式の版胴105と、凸版104の版面にインクを供給するためのアニロックスロール101と、アニロックスロール101にインクを供給するインクチャンバー108と、アニロックスロール上の余分なインクを掻き落とすドクターブレード102と、被印刷基板107が載置される基板定盤106と、を有して構成されている。この凸版印刷装置では、版胴を回転させることで、凸版上のインクを被印刷基板に転写させて、印刷が完了する。
【0004】
上述したような従来の凸版印刷装置では、図6に示すように、アニロックスロール101にインクチャンバー108からインクが供給された後、ドクターブレード102がアニロックスロールから版へ供給されるインクをある程度均一にするために、アニロックスロールの表面の余分なインクを掻き落としている。このように、アニロックスロールが保持するインク量が調整される。
【0005】
しかし、アニロックスロール101やドクターブレード102は精度や耐久性の面から材質が金属であることが多く、両者が印刷工程において常に接触しているため、徐々にドクターブレード102もしくはアニロックスロール101の表面が削れて異物が発生する。例えば、このような異物の発生は、紙への印刷物ならばそれほど問題とならないが、半導体やカラーフィルタなどのエレクトロニクス部品では、削れた異物が原因で製品不良となったり、異物が金属の場合で、導電することによりショートを起こしたりするなどの不具合が発生してしまう。
【0006】
一方、アニロックスロール101およびドクターブレード102を用いない凸版印刷法として、ベタロール上にインク塗膜を形成して、これを凸版に供給する印刷装置も試みられている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、ベタロールの場合、上述のようにアニロックスロール101による膜厚の制御ができないことから、被印刷基板に転写するインクの膜厚の制御が難しく、高い膜厚精度および均一性が求められるようなエレクトロニクス部品の製造は困難であった。
【0007】
さらに、アニロックスロール101上のインクが乾燥してしまわないように、インクチャンバーにインクを溜め、アニロックスロール101の一部を浸漬させるように回転することで、インク塗布と乾燥防止の役割を持たせたりもするが、この方式ではインクが大気に触れる面積が広く、インクの酸化が起こりやすく、乾燥もしてしまうため乾燥異物が発生するといった問題もある。
【0008】
凸版104上へインクを供給するためには、アニロックスロール101が必要不可欠であるが、ドクターブレード102を用いないとすると、余剰インクが掻き取られないためにアニロックスロール101上にインクが堆積し、厚膜化やアニロックスロール101のセル間でのインク濃度のバラツキが生じ、印刷品質の低下を招くという問題があった。
まず、アニロックスロール101へのインク供給工程として、アニロックスロール101の表面にインク塗膜を形成する。前述のように、アニロックスロール101の回転速度と、インク供給装置からのインク吐出量を同期させることで、アニロックスロール表面に膜厚を制御してインク塗膜を形成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−155858号公報
【特許文献3】特開2008−296547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような背景から、インク供給装置を用いてアニロックスロール101上にインク膜を直接形成して凸版104に転移させ、これを刷版へ転写することで異物の少ない印刷が可能となり、さらに凸版104への一回の転移ごとにアニロックスロール101洗浄し、非接触で行うことができるので、高品質な印刷が可能となるが、印刷毎にアニロックスロール101を洗浄することで、版への転写しきれない残ったインク材料を廃棄してしまい使用材料利用効率低下の問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みて創案されたものであって、高品質な印刷が可能な印刷毎にアニロックス洗浄を行う凸版印刷装置および印刷物の製造方法において使用材料を回収し再利用することで材料利用効率を向上する凸版印刷装置および印刷物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様は、凸版が印刷版として周面に配置される回転式の版胴と、被印刷基板を載置する基板定盤と、凸版にインクを供給するアニロックスロールと、アニロックスロールに非接触でインク供給するインク供給装置と、アニロックスロールの表面を洗浄するアニロックスロール洗浄装置と、アニロックスロール洗浄後の洗浄液回収する回収ユニットと、回収ユニットで回収した洗浄液からインクと溶剤を分けるセパレートユニットと揮発溶剤を回収する溶剤回収ユニットと、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記の態様では、アニロックスロール洗浄装置が、アニロックスロール表面に洗浄液を噴射するノズルを備えることが好ましい。
上記の態様では、前記洗浄液が揮発性の有機溶媒であることが好ましい。
上記の態様では、回収ユニットと、セパレートユニットと、溶剤回収ユニットと、が配管で連結されおり、それぞれのユニットを洗浄液が通過する構成とすることが好ましい。
【0014】
上記の態様では、洗浄液回収ユニットは洗浄機構カバー内に収容され、洗浄機構カバーの版シリンダの外周曲面と対応する箇所はアニロックスロールの外周曲面と対応した曲面形状に形成され、洗浄機構カバーは曲面形状部分のみが開口している構成とすることが好ましい。
上記の態様では、セパレートユニット内により洗浄液を揮発させ、洗浄液を濃縮し揮発性物質とインクとを分離しインクのみを回収するようにすることが好ましい。
上記の態様では、溶剤回収ユニットは、セパレートユニットにより分離された揮発性の有機溶媒を回収することが好ましい。
【0015】
本発明の他の態様としては、印刷物の製造方法であって、上記の凸版印刷装置を用いて、被印刷基板にインクを転写する工程と、アニロックスロールに残留しているインクを除去する工程とを備え、インクを除去する工程は、アニロックスロールに洗浄液を供給する工程と、アニロックスロールから洗浄液を除去する工程と、を有することを特徴とする。
上記の態様では、洗浄液は揮発性の有機溶媒であり、アニロックスロールから洗浄液を除去する工程が、加圧された気体の噴射による洗浄液の除去する工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、これまで廃棄していた洗浄液を回収しインクを再利用することで材料使用効率を向上させた凸版印刷装置を実現でき、印刷品質の高い印刷物を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る凸版印刷装置を模式的に示す構成図である。
【図2】図2(A)〜(C)は、本発明の実施の形態に係る凸版印刷装置におけるアニロックスロール表面の状態を示す断面説明図である。
【図3】図3(A)〜(C)は、本発明の実施の形態に係る凸版印刷装置におけるアニロックスロール表面の状態を示す断面説明図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る凸版印刷装置における洗浄機構の構成を表す模式図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る凸版印刷装置における洗浄機構の構成を示す模式図である。
【図6】図6は、図6は、従来の凸版印刷装置を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態に係る凸版印刷装置および印刷物の製造方法の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各部材の寸法や寸法の比率などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。なお、本実施の形態においては、図6に示す従来の凸版印刷装置と同一部分には、同一の符号を付して説明する。
【0019】
本実施の形態に係る凸版印刷装置および印刷物の製造方法では、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)用カラーフィルタにおけるパターン、有機エレクトロルミネセンス(EL)素子の発光層や電荷輸送層、有機薄膜トランジスタ(TFT)基板における電極パターン、電磁波シールドにおけるシールドパターン等の高精細パターンの形成に適した凸版印刷に用いることができる。
【0020】
(凸版印刷装置)
図1は、本発明の実施の形態に係る凸版印刷装置模式的に示す構成図である。本実施の形態による凸版印刷装置は、被印刷基板107を配置して搬送可能な基板定盤106と、被印刷基板107にインクを転写する凸版104と、凸版104が直接もしくはクッション103を挟んで装着されている回転式の版胴105と、インクを凸版104へ転写するアニロックスロール101と、アニロックスロール101の表面にインクを塗布するインク供給装置110を備えている。なお、凸版印刷装置の形態は、図1に示す構成に限られない。例えば、基板定盤106が版胴105の下を移動する方式を採ってもよく、あるいは版胴105が基板定盤106上を移動する方式でも良い。また、インク供給装置110は、非接触で定量的であれば、いずれの方式でもかまわない。
【0021】
本発明の実施の形態に係る凸版印刷装置は、さらにアニロックスロール101の洗浄機構114を備えている。洗浄機構114は、少なくとも洗浄液をアニロックスロール101の表面に洗浄液を供給する洗浄液供給ユニット116と、アニロックスロール101の表面に供給した洗浄液を飛散させずに回収する洗浄液回収ユニット117と、アニロックスロール101の表面から洗浄液を乾燥除去する送風ユニット115を有する。
【0022】
本発明の実施の形態に係る凸版印刷装置におけるインク供給装置110としては、アニロックスロール101上に均一に塗膜を形成できことが好ましく、膜厚が制御される点で従来のインクチャンバーと異なる。このようなインク供給装置110としては、具体的にはスリットコーターが挙げられる。スリットコーターは、インクを吐出する塗工ノズルがアニロックスロール101の回転軸に平行で、アニロックスロール101の表面に対向するように配置されており、アニロックスロール101の表面にインク塗膜を形成することができる。
【0023】
また、インクタンク109とインク供給装置110の間に定量ポンプ108が接続されている。この定量ポンプ108は、指定膜厚分のインクをアニロックスロール101の回転速度にあった塗布レートで送液するように、定量ポンプ108に接続された制御コントローラ(図示せず)が、アニロックスロール101の回転速度にポンプを同期させ、塗工ヘッドからのインク吐出量を制御して塗工する。このような構成により印刷毎に指定膜厚分だけ正確に送液することができる。
【0024】
インク供給装置110においては、インク吐出部(例えば、スリットコーターの塗工ノズル先端)以外ではインクが空気に触れないように閉鎖系とし、インクをポンプへ加圧供給する際にも窒素を使用することが好ましい。印刷体が電子デバイスの場合、有機機能性材料を含むインクの劣化が問題となるが、このように空気を遮断することにより、インクの特性を劣化させずに安定した塗工が可能となる。
【0025】
アニロックスロール101としては、公知一般のアニロックスロールを用いることができる。アニロックスロールのメッシュ線数、及びメッシュのセル容積(溝の容積)を選択することにより、凸版へのインクの供給量、ひいては被印刷基板へのインクの転写量を制御することができる。アニロックスロールの表面101Aは、クロムメッキ処理を施すことで、洗浄時後のインク付着や沈着を低減することができる。
【0026】
ドクターブレードを用いずにアニロックスロール101へインクを供給する場合には、均一にアニロックスロール101上に塗膜を形成するために従来よりも粘度が低い状態でインク供給装置110からインクを塗工することが好ましい。一方で、アニロックスロール101から凸版104にインクを転移させる際には、凸版104の凹部にインクが流入しないように、ある程度粘度が必要である。具体的には、アニロックスロール101へインクを供給する際のインクの粘度が15Pa・s未満であるとすると、凸版104上へ転移させる際はそれよりも大きい粘度が好適であり、40Pa・s以上であることが好ましい。
【0027】
このようなインク濃度は、インクの溶媒を部分的に揮発させることで調整することが可能である。特にインクの溶媒が揮発性の高い有機溶媒の場合、大気圧・室温状態でも溶媒成分の揮発によって、徐々に濃度を上げることができる。従って、アニロックスロール101へインクが塗工されてから凸版104へインクを転移させるまでの時間を利用した自然揮発、あるいはブロワーを用いた送風、加熱等のインク溶媒を揮発させる手段により凸版印刷に適したインク粘度を持つインク濃度にすることができる。また、アニロックスロール101へインクが塗工された段階で、図2(A)に示すようなインク塗膜320Aの膜厚から凸版104へインクを転移させる段階で、図2(B)に示すようなインク塗膜320Bの膜厚までアニロックスロール101の表面101Aでのインク塗膜の膜厚を変化させることにより適切な量のインクが凸版に転移される。
【0028】
ここで、連続的に印刷を行なう場合には、上述のインクの濃度変化が問題となる。すなわち、凸版104が設置された版胴105とアニロックスロール101を同期させて回転させ、凸版104にインクを転移させた後、同じアニロックスロール101の表面101Aの領域にインク供給装置110からインクを塗工すると、図2(C)に示すように、残留していたインクの濃度が高いため、インク濃度にバラツキが生じてしまう。
【0029】
そこで、本実施の形態に係る印刷物の製造方法においては、凸版104へインクを転移させる工程から、再度アニロックスロール101上にインクを供給する工程までの間に、アニロックスロール101を洗浄する工程を設けることにより、この問題を解決している。すなわち、図3(A)に示すように、アニロックスロール101上にインク供給し、凸版104へインク転写すると図3(B)に示すようになる。そして、図3(C)に示すように、アニロックスロール101の表面101A上のインク除去し、図3(A)に示すように、アニロックスロール101上にインクを供給するというサイクルとなって、インクの状態が適正に保たれる。
【0030】
図4は、図1に示した凸版印刷装置のアニロックスロール101の洗浄機構114の模式図である。図4に示すように、洗浄機構114は、アニロックスロール101の回転方向(図の矢印)に対して、アニロックスロール101と凸版104とが当接する位置よりも後で、アニロックスロール101とインク供給装置110が対向する位置よりも前の領域に設置されている。
【0031】
洗浄液供給ユニット116は、図4に示すように、アニロックスロール101の表面に洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズル116aを有し、この洗浄液噴射ノズル116aは洗浄液供給ホース116bにより図示していない洗浄液タンクに接続されている。アニロックスロール101を洗浄する洗浄液としては、インクの媒質に対して溶解性を持つ揮発性のある有機溶媒が好ましい。これは、水や洗剤を混合させてしまうと、アニロックスロール101表面101Aに残留した場合にインクの特性に悪影響を及ぼす可能性があるためである。また、揮発性のある有機溶媒を用いることで、後述のように送風ユニット115による気体の吹き付けによって洗浄液を残留させることなくアニロックスロール101上から除去することが可能である。特に、インクの特性に悪影響を及ぼさないように、インク溶媒と同一の有機溶媒か、インク溶媒に含まれる有機溶媒のうち、揮発しやすい、あるいは幾つかを混合した有機溶媒が好適である。
【0032】
洗浄液噴射ノズル116aの形態としては、アニロックスロール101の幅方向(回転軸に平行な方向)に等間隔で並列した形態や、洗浄液噴射ノズル116aがアニロックスロール101の幅方向に移動する形態、アニロックスロール101の幅方向に均一に洗浄液を供給できるスリットノズル形態等が考えられる。
また、図3(B)に示すように、アニロックスロール101の凹部(セル)101Bに溜まったインク残渣を掻き出すため、加圧気体と一緒に洗浄液を噴射する二流体ノズルとしてもよい。また洗浄液噴射ノズル116の噴射方向は、同様にアニロックスロール101の凹部101Bに溜まったインク残渣を掻き出すため、アニロックスロール101の表面101Aに直行する角度、あるいは下方に傾けた角度での配置が効率的である。
【0033】
洗浄液供給ユニット116によってアニロックスロール101上の洗浄液を吹き飛ばすあるいは揮発させることで除去するものである。図4に示す形態によれば、洗浄液が供給されたアニロックスロール101の表面101Aに加圧気体を噴射する気体噴射ノズル115aを有し、この気体噴射ノズル115aは加圧気体供給ホース115bに接続され、加圧気体供給ホース115bより加圧された気体が供給される。
【0034】
なお、用いる加圧気体としては、空気あるいは、窒素や希ガス等の不活性気体が好ましい。図4に示す形態では、アニロックスロール101上に洗浄液が供給された後に洗浄液を除去するため、洗浄液噴射ノズル116に対して、気体噴射ノズル115aは、アニロックスロール101の回転方向において、インク供給装置110によるアニロックスロール101への塗布位置により近い位置に配置されている。
【0035】
図5に示すように、アニロックスロール101の洗浄機構114のように、洗浄液をアニロックスロール101の表面に噴射するノズルと、加圧気体を洗浄液が供給された後のアニロックスロール101に噴射するノズルを単一の共通ノズル121とし、洗浄液供給ホース116bおよび加圧気体供給ホース115bがそれぞれ共通ノズル121に接続されている構成しとしてもよい。
【0036】
また、共通ノズル121から洗浄液と加圧された気体を切り替えてアニロックスロール101に噴射するように構成してもよい。この場合、共通ノズル121から洗浄液を噴射させた後、乾燥のため加圧気体を噴射する際、共通ノズル121の先端に残った洗浄液の滴を同時に吹き飛ばすため、共通ノズル121の先端からアニロックスロール101への洗浄液の滴垂れによる洗浄ムラ不良の発生を防げる。
【0037】
アニロックスロール101の洗浄機構114は、洗浄液噴射ノズル116及び気体噴射ノズル115a又は共通ノズル121並びに受け皿119を収容する洗浄機構カバー120を有し、この洗浄機構カバー120のアニロックスロール101の外周曲面と対応する箇所はアニロックスロール101の外周曲面と対応した曲面形状に形成され、当該洗浄機構カバー120の曲面形状部分120Aは開口されている。
【0038】
この洗浄機構カバー120によって、送風ユニット及び洗浄液供給ユニットの各ノズル及び洗浄液回収ユニット117を覆っているので、洗浄液を飛散させずに洗浄処理するとともに、異物の混入を防ぐことが可能である。アニロックスロール101の外周曲面と曲面形状部分120Aとの間の隙間は5mm以下であることが好ましい。また、洗浄液噴射ノズル116と気体噴射ノズル115aは、図4に示すように、曲面形状部分の開口に臨ませてアニロックスロール101の回転方向に前後して配置されている。
本実施の形態に係る洗浄液回収機構130は、インク回収ユニットであり、セパレートユニット131と溶剤回収ユニット132を冷却管134で繋いでおり、吸引機器133で、液を吸引する機構となっている。吸引機器133の方式としてはエジェクタータンク等を利用し、吸気量としては0.1L/分以上であることが望ましい。
【0039】
次に、洗浄液回収ユニット117は、図1および図4に示すように、洗浄液回収用受け皿119と、吸引部118とでなる。吸引部118は、受け皿119の底部に連通する吸引口118aを有し、この吸引部118は吸引ホース118aに接続され、洗浄液が回収されるように構成されている。
洗浄液回収ユニット117は洗浄機構カバー120内に収容され、この洗浄機構カバー120の版シリンダの外周曲面と対応する箇所はアニロックスロール101の外周曲面と対応した曲面形状に形成され、洗浄機構カバー120は曲面形状部分のみが開口している。
【0040】
前記洗浄液は揮発性の有機溶媒であり、セパレートユニット131内により洗浄液を揮発させ洗浄液を濃縮し揮発性物質とインクとを分離しインクのみを回収する構成とする。回収した洗浄液の揮発を高めるためセパレートユニット131の底の面積が液体積と同数値であることが望ましい、セパレートユニット131は、ストレーナ、ミストセパレータなどを用いても良い。また温度調整、表面処理を加え塗れ性向上させることで揮発性を高めることでセパレートユニット131内には、インクの成分のみが回収されこの成分を再利用可能となる。
【0041】
セパレートユニット131を通過した揮発性の有機溶媒は、冷却管134で液化させ溶剤回収ユニット132でセパレートユニット131により分離された揮発性の有機溶媒を回収する。溶剤回収ユニット132の形状は、液体の表面が吸引外気と接触する面積が小さいほど回収率が良い。
セパレートユニット131により分離された揮発性の有機溶媒を回収するため溶剤ミストが冷却管134で液化しやセパレートユニット131で使用したストレーナやミストセパレータより目の細かいものを設置してもよい。
【0042】
本実施の形態によれば、高品質な印刷が可能な印刷毎にアニロックス洗浄を行う凸版印刷装置及び印刷物の製造方法において使用材料の回収し再利用することで材料利用効率を向上可能である。
上述のように、本実施の形態に係る凸版印刷装置では、高品質な印刷が可能となり印刷毎にアニロックス洗浄を行い、使用材料を回収し再利用することで材料利用効率を向上する。
【0043】
(印刷物の製造方法)
次に本発明の実施の形態に係る印刷物の製造方法について、図1を参照しながら説明する。まず、アニロックスロール101へのインク供給工程として、アニロックスロール表面にインク塗膜を形成する。前述のように、アニロックスロール101の回転速度と、インク供給装置からのインク吐出量を同期させることで、アニロックスロール101の表面101Aに膜厚を制御してインク塗膜を形成することが可能である。
【0044】
次に、アニロックスロール101から凸版104へインクを転移させる転写工程では、凸版104を備え付けた版胴105と回転速度を同期させて、凸版104に形成されたレリーフパターン領域に応じた範囲で回転とインク転移(一次転写)がなされる。さらに、同時に版胴105と被印刷基板107を設置した基板定盤106が同期し、被印刷基板107に凸版104を接触させて回転移動させることにより、被印刷基板107へレリーフパターンに応じたインクパターンが転写(二次転写)されて一回の印刷が完了する。前述のように、凸版104へ転移させる前にインク塗膜の状態を調整する乾燥工程を設けても良い。
【0045】
次に、アニロックスロール101をさらに回転させて、アニロックスロール101の表面101Aのインクが残留した領域を洗浄機構に114に移動させる。このときアニロックスロール101と版胴105を同期させた状態で連続的に印刷を行なってもよく、あるいは非同期としてアニロックスロール101のみを回転させて洗浄を行なってもよい。
次に、アニロックスロール101をさらに回転させて、新たにインク供給装置からアニロックスロール101の表面101Aにインク塗膜を形成する地点までにアニロックスロール101の洗浄は完了し、アニロックスロール101の表面101Aから完全にインク及び洗浄液が取り除かれた状態で新たなインクを塗布することができ、洗浄液は回収することができる。
【0046】
以上の工程により、一回の印刷工程が完了する。1回ごとにアニロックスロール101からインクが取り除かれ、またドクターブレードなしで膜厚が保たれることから、繰り返しの印刷でも印刷特性が保持された、高品質な印刷物の製造が可能となる。
セパレートユニット131から得られたインクは、再結晶法・再沈殿法・化学吸着法・物理吸着法等の精製により再利用することで利用効率を上げることができる。
上述のように、本実施の形態に係る印刷物の製造方法では、これまで廃棄していた洗浄液を回収しインクを再利用することで材料使用効率を向上させることができ、しかも印刷品質の高い印刷物を製造することが可能となる。
【0047】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、この実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
例えば、上記の実施の形態では、洗浄液噴射ノズル116aを、アニロックスロール101の幅方向(回転軸に平行な方向)に等間隔で並列した形態や、洗浄液噴射ノズル116aがアニロックスロール101の幅方向に移動する形態としたが、アニロックスロール101の周方向に沿って、2対の洗浄液噴射ノズル116aを配置する構成としても勿論よい。
【符号の説明】
【0048】
101 アニロックスロール
101A 表面
103 版下クッション
104 凸版
105 版胴
106 基板定盤
107 被印刷基板
108 定量ポンプ
109 インクタンク
110 インク供給装置
114 洗浄機構
115 送風ユニット
115a 気体噴射ノズル
115b 加圧気体供給ホース
116 洗浄液供給ユニット
116a 洗浄液供給ノズル
116b 洗浄液供給ホース
117 洗浄液回収ユニット
118 吸引ユニット
118a 吸引口
118b 吸引ホース
119 受け皿
120 洗浄機構カバー
121 共通ノズル
130 洗浄液回収機構
131 セパレートユニット
132 溶剤回収ユニット
133 吸引機器
134 冷却管
320A インク塗膜(インク供給装置による塗工の直後)
320B インク塗膜(凸版への転写直前)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸版が印刷版として周面に配置される回転式の版胴と、
被印刷基板を載置する基板定盤と、
前記凸版にインクを供給するアニロックスロールと、
前記アニロックスロールに非接触でインク供給するインク供給装置と、
前記アニロックスロールの表面を洗浄するアニロックスロール洗浄装置と、
前記アニロックスロール洗浄後の洗浄液回収する回収ユニットと、
前記回収ユニットで回収した洗浄液からインクと溶剤を分けるセパレートユニットと揮発溶剤を回収する溶剤回収ユニットと、
を備えることを特徴とする凸版印刷装置。
【請求項2】
前記アニロックスロール洗浄装置が、アニロックスロール表面に洗浄液を噴射するノズルを備えたことを特徴とする請求項1記載の凸版印刷装置。
【請求項3】
前記洗浄液が揮発性の有機溶媒であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の凸版印刷装置。
【請求項4】
前記回収ユニットと、前記セパレートユニットと、前記溶剤回収ユニットと、は配管で連結されおり、それぞれのユニットを洗浄液が通過することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の凸版印刷装置。
【請求項5】
前記洗浄液回収ユニットは洗浄機構カバー内に収容され、前記洗浄機構カバーの版シリンダの外周曲面と対応する箇所は前記アニロックスロールの外周曲面と対応した曲面形状に形成され、当該洗浄機構カバーは前記曲面形状部分のみが開口していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の凸版印刷装置。
【請求項6】
前記セパレートユニット内により洗浄液を揮発させ、洗浄液を濃縮し揮発性物質とインクとを分離しインクのみを回収することを特徴とする請求項3項〜5のいずれか一つに記載の凸版印刷装置。
【請求項7】
前記溶剤回収ユニットは、前記セパレートユニットにより分離された揮発性の有機溶媒を回収すること特徴とする請求項6に記載の凸版印刷装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の凸版印刷装置を用いて、被印刷基板にインクを転写する工程と、前記アニロックスロールに残留しているインクを除去する工程とを備え、前記インクを除去する工程は、前記アニロックスロールに洗浄液を供給する工程と、前記アニロックスロールから洗浄液を除去する工程と、を有することを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項9】
前記洗浄液は揮発性の有機溶媒であり、前記アニロックスロールから洗浄液を除去する工程が、加圧された気体の噴射による洗浄液の除去であることを特徴とする請求項8に記載の印刷物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−201087(P2012−201087A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70367(P2011−70367)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】