説明

凹凸状変色性布帛の製造方法

【課題】 布帛の色が変化すると共に、布帛に形成された凹凸によって特異な美感と装飾効果を有し、変色性と凹凸が相まって特異な色彩効果を発現させる凹凸状変色性布帛の製造方法を提供する。
【解決手段】 変色性布帛2の裏面に、前記変色性布帛よりも熱収縮性の大きい布帛又は樹脂製シート3を複数の貼着箇所と、非貼着箇所を有するように貼着し、加熱して布帛又は樹脂製シートを収縮させて変色性布帛に凹凸を形成し、前記布帛又は樹脂製シートを剥離する凹凸状変色性布帛の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凹凸状変色性布帛の製造方法に関する。更に詳細には、表面が凹凸を有する変色性布帛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変色性布帛に関し、幾つかの提案が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
前記変色性布帛は、人形用衣裳、玩具分野等に適用されており、温度変化により多彩な色変化を楽しむことができるとしても、変色性布帛の呈する様相は有色(1)から有色(2)の可逆的な色変化のみであって、変色前後の様相は単調であり、趣向性や装飾性を十分に満たしていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−179371号公報
【特許文献2】特開平6−272178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の変色性布帛の不具合を解消するものであって、布帛の色が変化するのみでなく、特異な美感と装飾効果を満たし、人形用衣裳、玩具、装飾分野等に好適な凹凸状変色性布帛の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、変色性布帛の裏面に、前記変色性布帛よりも熱収縮性の大きい布帛又は樹脂製シートを複数の貼着箇所と、非貼着箇所を有するように貼着し、加熱して布帛又は樹脂製シートを収縮させて変色性布帛に凹凸を形成し、前記布帛又は樹脂製シートを剥離する凹凸状変色性布帛の製造方法を要件とする。
更には、前記変色性布帛は、布帛に可逆熱変色層を設けた可逆熱変色性布帛、又は、布帛にフォトクロミック層を設けた光変色性布帛のいずれかであること、前記布帛と可逆熱変色層又はフォトクロミック層の間に非変色層を設けてなること、前記可逆熱変色層又はフォトクロミック層上に透明性金属光沢層を設けてなること等を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、布帛の色が変化すると共に、布帛に形成された凹凸によって特異な美感と装飾効果を有し、変色性と凹凸が相まって特異な色彩効果を発現させる凹凸状変色性布帛の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の凹凸状変色性布帛の一実施例の加熱する前の状態を示す縦断面拡大説明図である。
【図2】図1の凹凸状変色性布帛の加熱した後の状態を示す縦断面拡大説明図である。
【図3】図2の凹凸状変色性布帛から樹脂製シートを剥離した状態を示す縦断面拡大説明図である。
【図4】本発明の凹凸状変色性布帛の他の実施例の加熱する前の状態を示す縦断面拡大説明図である。
【図5】図4の凹凸状変色性布帛の加熱した後の状態を示す縦断面拡大説明図である。
【図6】図5の凹凸状変色性布帛から熱収縮性の布帛を剥離した状態を示す縦断面拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
変色性布帛に用いられる布帛の材質は特に限定されるものではないが、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、レーヨン、キュプラ、アセテート、綿、羊毛、絹、麻等を例示できる。
前記布帛の形態としては、織物、編物、組物、不織布、レース生地等の形態が挙げられる。
【0009】
前記布帛としては、可逆熱変色性材料をバインダー樹脂を含むビヒクル中に分散させたインキ又は塗料を用いてスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、転写印刷等の印刷手段、スプレー塗装等の印刷乃至塗布手段により、可逆熱変色層を形成して可逆熱変色性布帛、フォトクロミック化合物をバインダー樹脂を含むビヒクル中に分散させたインキ又は塗料を用いてスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、転写印刷等の印刷手段、スプレー塗装等の印刷乃至塗布手段により、光変色層を形成した光変色性布帛が挙げられる。
また、前記布帛を、可逆熱変色性材料やフォトクロミック化合物を含むインキ、塗料に浸漬して変色性布帛を得ることもできる。
更に、可逆熱変色性材料やフォトクロミック化合物を含む変色性糸を用いて編布、織布、不織布等の変色性布帛を得ることもできる。
【0010】
前記可逆熱変色性材料としては、AgHgIやCuHgI等の無機材料、液晶、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、前記両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体との三成分を含む加熱消色型、或いは、加熱発色型の可逆熱変色性材料が用いられる。
そのうち、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、前記両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体を含む可逆熱変色性材料について説明する。
【0011】
前記可逆熱変色性材料は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた有色から無色に変色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が挙げられる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を適用できる(図1参照)。
【0012】
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物も適用できる(図2参照)。
【0013】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記tとt間の温度域であり、着色状態と消色状態のいずれかの状態を呈することができ、色濃度の差の大きい領域であるtとtの間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0014】
以下に可逆熱色性組成物の(イ)、(ロ)、(ハ)成分について化合物を例示する。
本発明の(イ)成分である電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,6−ジフェニルアミノフルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
3′,6′−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3′,6′−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3′,6′−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
4−[2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン等を挙げることができる。
【0015】
前記(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)2−エチルヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0016】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分としては、色濃度−温度曲線に関し、温度Tが20〜35℃、好ましくは25〜35℃の範囲となる化合物が好適に用いられる。
前記化合物を以下に例示する。
アルコール類としては、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール等が挙げられる。
【0017】
エステル類としては、カプリル酸ステアリル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、安息香酸セチル、p−tert−ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ−(n−ノニル)、1,18−オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5−ペンタンジオールジステアレート、1,2,6−ヘキサントリオールトリミリステート、1,4−シクロヘキサンジオールジデシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等が挙げられる。
【0018】
又、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
具体的には、酪酸2−エチルヘキシル、ベヘン酸2−エチルヘキシル、ベヘン酸1−エチルプロピル、ベヘン酸2−メチルブチル、ベヘン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸2−メチルヘキシル、ベヘン酸3,7−ジメチルオクチル等が挙げられる。
【0019】
更には、特公平4−17154号公報に開示したカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が挙げられる。
【0020】
炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデルシ、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等が挙げられる。
【0021】
ケトン類としては、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロン等が挙げられる。
更には、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等が挙げられる。
【0022】
更に、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51−44706号公報、特開2003−253149号公報)加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を適用することもできる(図3参照)。
【0023】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
【0024】
前記可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル化する方法としては、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
ここで、前記マイクロカプセル顔料中に非熱変色性の染料や顔料を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈する構成となすこともできる。
前記マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成でき、平均粒子径0.1〜50μm、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜20μmの範囲が実用性を満たす。
なお、粒子径、粒度分布の測定はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製;LA−300〕を用いて測定し、その数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出する。
【0025】
可逆熱変色性材料は、バインダー樹脂100質量部に対して、20〜400質量部の割合でブレンドされる。20質量部未満では、鮮明な熱変色性を示さない。一方、400質量部を越えると消色時における色残りが発生しがちであり、好適には50〜350質量部の範囲内で適用される。
前記可逆熱変色性材料とバインダー樹脂との配合割合を満たすことにより、可逆熱変色層の耐久性が保持されると共に風合いの硬質化を防ぐ。
【0026】
前記バインダー樹脂は、水溶性或いは油溶性の樹脂のいずれであってもよく、目的に応じて適宜、選択して使用できる。
具体的には、アイオノマー樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸樹脂共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリリックスチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール樹脂変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、天然ゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ポリビニルアルキルエーテル、ロジン、ロジンエステル、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、油溶性フェノール樹脂、石油系炭化水素樹脂、シェラック、環化ゴム、酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、スチレン−ブタジエン系エマルジョン樹脂、アクリル酸エステル系エマルジョン樹脂、水性シリコンゴムエマルジョン樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース等を挙げることができ、水や有機溶剤等の適宜の溶剤に溶解または分散させて、可逆熱変色性材料を分散させるためのビヒクルを得ることができる。
又、前記樹脂は、一種又は二種以上を併用することができる。
【0027】
前記フォトクロミック化合物としては、スピロオキサジン系化合物、スピロピラン系化合物、ジアリールエテン系化合物等が有効である。
なお、前記フォトクロミック化合物はスチレン系オリゴマーに溶解して用いることが好ましく、色濃度を高くしたり、変色感度を調整することができる。
前記スチレン系オリゴマーは重量平均分子量が250乃至4000、好ましくは300乃至4000のものが用いられる。
なお、重量平均分子量は、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフ法)により測定する。
前記スチレン系オリゴマーとしては、低分子量ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、α−メチルスチレン重合体、α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体等があげられる。
前記フォトクロミック化合物は、マイクロカプセルに内包させた光変色性マイクロカプセル顔料として用いることもできる。
前記光変色層の形成に用いられるバインダー樹脂は、前記可逆熱変色層と同様のバインダー樹脂が用いられる。
【0028】
なお、前記布帛と可逆熱変色層又は光変色層の間に非変色層や非変色像を設けたり、可逆熱変色層又は光変色層上に非変色像を設けることもできる。
前記非変色像としては、文字、記号、英数字、点、線、図柄から選ばれる像が挙げられる。
【0029】
前記可逆熱変色層又は光変色層上には、透明性金属光沢層を設けることもできる。
前記透明性金属光沢層は、透明性金属光沢顔料(例えば、天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ等の透明性芯物質の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した顔料)をバインダー樹脂と共に可逆熱変色層上に塗布したり、虹彩シート(フィルム)やホログラムシート(フィルム)を貼着して設けることができる。
前記虹彩シートとしては、基材表面に該基材と屈折率が0.05以上の差がある透明な金属化合物(例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、硫化カドミウム、弗化マグネシウム、弗化セリウム等)の薄膜層を形成し、該薄膜と屈折率が0.05以上の差がある凹凸の透明樹脂層の順に積層したもの、屈折率が異なる透明なプラスチック薄膜を多層に積層したものを例示できる。
前記ホログラムシートとしては、微細な凹凸模様の少なくとも片面にAl、Cr、Ni、Sn、Fe、Co、Cu、Pb、Sb、Mg、Cd、Bi等の金属を蒸着して光反射層を設けたものを例示できる。
【0030】
前記変色性布帛の裏面には、変色性布帛よりも熱収縮性の大きい布帛又は樹脂製シートを複数の貼着箇所と、非貼着箇所を有するように貼着する。そして、加熱して布帛又は樹脂製シートを収縮させて変色性布帛に凹凸を形成した後、前記布帛又は樹脂製シートを剥離する。
前記構成により、表面に凹凸(シボ、ヒダ、チヂミ、シワ)を有する特異な美感と装飾効果を備えた凹凸状変色性布帛が得られる。
【0031】
前記変色性布帛よりも熱収縮性の大きい布帛又は樹脂製シートとしては、延伸加工や薬剤処理、樹脂組成等によって熱収縮性を付与したポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ナイロン繊維等からなる織布、編布、不織布や、熱収縮性のポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等の一軸或いは二軸延伸フィルム等を例示できる。
【0032】
前記変色性布帛は、ぬいぐるみ、人形用衣装、靴や鞄等の人形用付属品、ドレス、水着、レインコート等の被服、履物、ハンカチ、ふろしき等の布製身の回り品、カーテン等の屋内装飾品、敷物、靴、帽子、かばん、クッション、座布団、まくら、マットレス、リボン、造花、どん帳、のぼり、旗等に用いられる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1(図1乃至3参照)
布帛21として目付量60g/mの白色ナイロン繊維からなるタフタ生地表面に、ピンク色から無色に変色する色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料〔平均粒子径8μm、完全発色温度15℃、完全消色温度30℃〕30部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部からなる可逆熱変色性インキを用いて120メッシュのスクリーン版にてベタ印刷を行ない、可逆熱変色層22を形成して変色性布帛(可逆熱変色性布帛)2を得た。
これとは別に厚さ0.01mmの熱収縮性ポリオレフィンフィルムからなる樹脂製シート3上に、イソシアネート系樹脂からなる接着剤を直径2mmの円形状にて1cm間隔にてスクリーン印刷し、前記変色性布帛の裏面と接着剤が印刷された樹脂製シートとを圧着させ、40℃で30分間放置して接着剤を完全に硬化させ、80℃で5分間加熱処理して樹脂製シートを収縮させた。
その後、樹脂製シートを剥離して凹凸状変色性布帛1を得た。
前記凹凸状変色性布帛を30℃以上に加温すると全面が白色になり、この状態は15℃を越える温度域で記憶保持される。
次に、凹凸状変色性布帛に氷水を付着させるとピンク色になり、この状態は30℃未満の温度域で記憶保持された。
再び30℃以上に加温すると白色になり、この様相変化は繰り返し行うことができた。
また、前記凹凸状変色性布帛に形成された凹凸によって布帛が立体化して特異な美感と装飾効果を有しており、熱変色性と凹凸が相まって特異な色彩効果を発現させることができた。
【0034】
実施例2
布帛として目付量100g/mの白色ポリエステル繊維からなるトリコット編み生地表面に、黄色蛍光顔料10部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部からなる蛍光インキを用いて180メッシュのスクリーン版にて水玉柄を印刷して非変色層を形成した。
次いで、黒色から無色に変色する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径8μm、変色温度28℃)30部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部からなる可逆熱変色性インキを用いて100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷を行ない、可逆熱変色層を形成して変色性布帛(可逆熱変色性布帛)を得た。
これとは別に厚さ30μmの熱収縮性ポリスチレン・ポリエステル複合系フィルムからなる樹脂製シート上に、エポキシ系樹脂からなる接着剤を直径2mmの円形状にて1.5cm間隔にてスクリーン印刷し、前記変色性布帛の裏面と接着剤が印刷された樹脂製シートを圧着させ、50℃で30分間放置して接着剤を完全に硬化させ、100℃で5分間加熱処理して変色性布帛の裏面に部分的に貼着された樹脂製シートを収縮させた。
その後、樹脂製シートを剥離して凹凸状変色性布帛を得た。
前記凹凸状変色性布帛は、20℃の室内では黒色を呈していたが、気温が30℃の屋外では白地に黄色の水玉柄に変化した。前記凹凸状変色性布帛は20℃の室内で再び黒色になり、前記様相変化は、温度変化により繰り返し行うことができた。
また、前記凹凸状変色性布帛に形成された凹凸によって布帛が立体化して特異な美感と装飾効果を有しており、熱変色性と凹凸が相まって特異な色彩効果を発現させることができた。
【0035】
実施例3(図4乃至6参照)
布帛21として、目付量50g/mの白色ポリエステル繊維からなるトリコット編み生地表面に、ピンク色から無色に変色する色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径8μm、完全発色温度18℃、完全消色温度30℃)30部、青色着色顔料0.3部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部からなる可逆熱変色性インキを用いて100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷を行なって可逆熱変色層22を形成し、更に、前記可逆熱変色層上にアクリル樹脂エマルジョンを塗布し、光干渉現象により虹彩性を呈する、透明虹彩性多層フィルムIRIDESCENT FILM IF−8181R/G(BASF社製)を貼着して透明性金属光沢層23を設けて変色性布帛(可逆熱変色性布帛)2を得た。
これとは別に目付量60g/mの熱収縮性ポリエステル繊維からなる布帛3上に、イソシアネート系樹脂からなる接着剤を直径2mmの円形状にて1cm間隔にてスクリーン印刷し、前記変色性布帛の裏面と接着剤が印刷された布帛とを圧着させ、40℃で30分間放置して接着剤を完全に硬化させ、80℃で5分間加熱処理して変色性布帛の裏面に部分的に貼着された熱収縮性の布帛を収縮させた。
その後、熱収縮性を有する布帛を剥離して凹凸状変色性布帛1を得た。
前記凹凸状変色性布帛を30℃以上に加温すると、全面が虹彩性を有する青色になり、この状態は18℃を越える温度域で記憶保持された。
次に、凹凸状変色性布帛に氷水を付着させると、可逆熱変色層は紫色になるため、金色と緑色の虹彩色が現出し、この状態は30℃未満の温度域で記憶保持された。
再び30℃以上に加温すると虹彩性を有する青色になり、この様相変化は繰り返し行うことができた。
また、前記凹凸状変色性布帛に形成された凹凸によって布帛が立体化して特異な美感と装飾効果を有しており、熱変色性と凹凸が相まって特異な色彩効果を発現させることができた。
【0036】
実施例4
布帛として、目付量110g/mの白色T/C(65/35)ブロード生地表面に、黒色から無色に変色する色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径8μm、完全発色温度15℃、完全消色温度30℃)30部、アクリル系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部からなる可逆熱変色性インキを用いて100メッシュのスクリーン版にて複数のハート柄を印刷して可逆熱変色層を形成し、更に、前記支持体及び可逆熱変色層上にアクリル樹脂エマルジョンを塗布し、ポリメチルメタクリレート樹脂の薄膜とポリエチレンテレフタレート樹脂との薄膜からなりポリメチルメタクリレート樹脂1質量部に対してポリエチレンテレフタレート樹脂を2質量部の割合で構成される透明光輝性フィルム(Skyrol Fancylite Film、韓国SKG社製、厚さ22μm、薄膜は100層以上)を貼着して透明性金属光沢層を設けて変色性布帛(可逆熱変色性布帛)を得た。
なお、前記透明光輝性フィルムは、透過光が青色であってもその反射光は角度によって異なり、可逆熱変色層が暗色の場合は輝度の高い金色や緑色が視認され、可逆熱変色層が消色して白色乃至淡色の場合は、輝度の高い青色や赤紫色が視認される。
これとは別に目付量80g/mの熱収縮性ポリエステル繊維からなる布帛上に、イソシアネート系樹脂からなる接着剤を直径2mmの円形状にて1cm間隔にてスクリーン印刷し、前記変色性布帛の裏面と接着剤が印刷された布帛とを圧着させ、40℃で30分間放置して接着剤を完全に硬化させ、80℃で5分間加熱処理して変色性布帛の裏面に部分的に貼着された熱収縮性の布帛を収縮させた。
その後、熱収縮性を有する布帛を剥離して凹凸状変色性布帛を得た。
前記凹凸状変色性布帛を30℃以上に加温すると、全面が輝度の高い青色や赤紫色になり、この状態は15℃を越える温度域で記憶保持された。
次に、凹凸状変色性布帛に氷水を付着させると、可逆熱変色層は黒色になるため、輝度の高い金色や緑色のハート柄が現出し、この状態は30℃未満の温度域で記憶保持された。
再び30℃以上に加温すると全面が輝度の高い青色や赤紫色になり、この様相変化は繰り返し行うことができた。
また、前記凹凸状変色性布帛に形成された凹凸によって布帛が立体化して特異な美感と装飾効果を有しており、熱変色性と凹凸によって角度が変わることで、光輝性を有する特異な色彩効果を発現させることができた。
【0037】
実施例5
支持体として、目付量40g/mの白色ポリエステル繊維からなるトリコット編み生地表面に、ピンク色蛍光顔料10部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部からなる蛍光インキを用いて180メッシュのスクリーン版にて複数のハート柄を印刷して非変色層を形成した。
次いで、黒色から無色に変色する色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径8μm、変色温度18℃、30℃)30部、アクリル系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部からなる可逆熱変色性インキを用いて100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷を行なって可逆熱変色層を形成し、更に、前記可逆熱変色層上にアクリル樹脂エマルジョンを塗布し、光干渉現象により虹彩性を呈する透明虹彩性多層フィルム〔IRIDESCENT FILM IF−8181R/G(BASF社製)〕を貼着して変色性布帛(可逆熱変色性布帛)を得た。
これとは別に目付量80g/mの熱収縮性ポリエステル繊維からなる布帛上に、イソシアネート系樹脂からなる接着剤を直径2mmの円形状にて1cm間隔にてスクリーン印刷し、前記変色性布帛の裏面と接着剤が印刷された布帛とを圧着させ、40℃で30分間放置して接着剤を完全に硬化させ、80℃で5分間加熱処理して変色性布帛の裏面に部分的に貼着された熱収縮性の布帛を収縮させた。
その後、熱収縮性を有する布帛を剥離して凹凸状変色性布帛を得た。
前記凹凸状変色性布帛を30℃以上に加温すると、白地に虹彩性を有するピンク色のハート柄が現出し、この状態は18℃を越える温度域で記憶保持された。
次に、凹凸状変色性布帛に氷水を付着させると、可逆熱変色層は黒色になるため、金色と緑色の虹彩色が現出し、この状態は30℃未満の温度域で記憶保持された。
再び30℃以上に加温すると白地に虹彩性を有するピンク色のハート柄が現出し、この様相変化は繰り返し行うことができた。
また、前記凹凸状変色性布帛に形成された凹凸によって布帛が立体化して特異な美感と装飾効果を有しており、熱変色性と凹凸が相まって特異な色彩効果を発現させることができた。
【0038】
実施例6
布帛21として、目付量50g/mの白色ポリエステル繊維からなるタフタ生地表面に、ピンク色から無色に変色する色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径8μm、完全発色温度18℃、完全消色温度30℃)30部、青色着色顔料0.3部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部からなる可逆熱変色性インキを用いて100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷を行なって可逆熱変色層22を形成し、更に、前記可逆熱変色層上にアクリル樹脂エマルジョンを塗布し、光干渉現象により虹彩性を呈する、透明虹彩性多層フィルムIRIDESCENT FILM IF−8181R/G(BASF社製)を貼着して透明性金属光沢層を設けて変色性布帛(可逆熱変色性布帛)2を得た。
これとは別に、厚さ30μmの幅方向(一方向)のみ熱収縮するポリスチレン−ポリエステル複合系フィルムからなる樹脂製シート上に、イソシアネート系樹脂からなる接着剤を直径3mmの円形状にて1.5cm間隔にてスクリーン印刷し、前記変色性布帛の裏面と接着剤が印刷された樹脂製シートを圧着させ、50℃で30分間放置して接着剤を完全に硬化させ、100℃で5分間加熱処理して変色性布帛の裏面に部分的に貼着された樹脂製シートを収縮させた。
その後、熱収縮性を有する樹脂製シートを剥離して凹凸状変色性布帛を得た。
前記凹凸状変色性布帛を30℃以上に加温すると、全面が虹彩性を有する青色になり、この状態は18℃を越える温度域で記憶保持された。
次に、凹凸状変色性布帛に氷水を付着させると、可逆熱変色層は紫色になるため、金色と緑色の虹彩色が現出し、この状態は30℃未満の温度域で記憶保持された。
再び30℃以上に加温すると虹彩性を有する青色になり、この様相変化は繰り返し行うことができた。
また、前記凹凸状変色性布帛に形成された凹凸によって布帛が立体化して特異な美感と装飾効果を有しており、熱変色性と凹凸が相まって特異な色彩効果を発現させることができた。
【0039】
実施例7
布帛として、目付量50g/mの白色ポリエステル繊維からなるトリコット編み生地表面に、フォトクロミック化合物として1,3,3−トリメチル−6−トリフルオロメチル−6′−(1−ピペリジニル)−スピロインドリンナフトオキサジン1部とスチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA5、重量平均分子量317〕50部を内包したマイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部からなる光変色性インキを用いて100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷を行なって光変色層を形成し、更に、前記光変色層上にアクリル樹脂エマルジョンを塗布し、光干渉現象により虹彩性を呈する、透明虹彩性多層フィルムIRIDESCENT FILM IF−8181R/G(BASF社製)を貼着して透明性金属光沢層を設けて変色性布帛(光変色性布帛)を得た。
これとは別に目付量60g/mの熱収縮性ポリエステル繊維からなる布帛上に、イソシアネート系樹脂からなる接着剤を直径3mmの円形状にて1cm間隔にてスクリーン印刷し、前記変色性布帛の裏面と接着剤が印刷された布帛とを圧着させ、40℃で30分間放置して接着剤を完全に硬化させ、80℃で5分間加熱処理して変色性布帛の裏面に部分的に貼着された熱収縮性の布帛を収縮させた。
その後、熱収縮性を有する布帛を剥離して凹凸状変色性布帛を得た。
前記凹凸状変色性布帛にブラックライトで紫外線を照射すると、全面が虹彩性を有する紫色になり、次に、紫外線照射を止めると約3分間は紫色を呈していたが、緩やかに無色に変化して白地に虹彩性を有する状態になり、この様相変化は繰り返し行うことができた。
また、前記凹凸状変色性布帛に形成された凹凸によって布帛が立体化して特異な美感と装飾効果を有しており、光変色性と凹凸が相まって特異な色彩効果を発現させることができた。
【0040】
実施例8
布帛として、目付量50g/mの白色ポリエステル繊維からなるトリコット編み生地表面に、フォトクロミック化合物として1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン4重量部とスチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA75、重量平均分子量917〕40重量部を内包したマイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部からなる光変色性インキを用いて100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷を行なって光変色層を形成し、更に、前記光変色層上にアクリル樹脂エマルジョンを塗布し、光干渉現象により虹彩性を呈する、透明虹彩性多層フィルムIRIDESCENT FILM IF−8181R/G(BASF社製)を貼着して透明性金属光沢層を設けて変色性布帛(光変色性布帛)を得た。
これとは別に、厚さ30μmの幅方向(一方向)のみ熱収縮するポリスチレン−ポリエステル複合系フィルムからなる樹脂製シート上に、イソシアネート系樹脂からなる接着剤を直径3mmの円形状にて1.5cm間隔にてスクリーン印刷し、前記変色性布帛の裏面と接着剤が印刷された樹脂製シートを圧着させ、50℃で30分間放置して接着剤を完全に硬化させ、100℃で5分間加熱処理して変色性布帛の裏面に部分的に貼着された樹脂製シートを収縮させた。
その後、熱収縮性を有する樹脂製シートを剥離して凹凸状変色性布帛を得た。
前記凹凸状変色性布帛にブラックライトで紫外線を照射すると、全面が虹彩性を有する青色になり、次に、紫外線照射を止めると約5分間は青色を呈していたが、緩やかに無色に変化して白地に虹彩性を有する状態になり、この様相変化は繰り返し行うことができた。
また、前記凹凸状変色性布帛に形成された凹凸によって布帛が立体化して特異な美感と装飾効果を有しており、光変色性と凹凸が相まって特異な色彩効果を発現させることができた。
【符号の説明】
【0041】
1 凹凸状変色性布帛
2 変色性布帛
21 布帛
22 可逆熱変色層
23 透明性金属光沢層
3 布帛又は樹脂製シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変色性布帛の裏面に、前記変色性布帛よりも熱収縮性の大きい布帛又は樹脂製シートを複数の貼着箇所と、非貼着箇所を有するように貼着し、加熱して布帛又は樹脂製シートを収縮させて変色性布帛に凹凸を形成し、前記布帛又は樹脂製シートを剥離する凹凸状変色性布帛の製造方法。
【請求項2】
前記変色性布帛は、布帛に可逆熱変色層を設けた可逆熱変色性布帛、又は、布帛にフォトクロミック層を設けた光変色性布帛のいずれかである請求項1記載の凹凸状変色性布帛の製造方法。
【請求項3】
前記布帛と可逆熱変色層又はフォトクロミック層の間に非変色層を設けてなる請求項2記載の凹凸状変色性布帛の製造方法。
【請求項4】
前記可逆熱変色層又はフォトクロミック層上に透明性金属光沢層を設けてなる請求項2又は3記載の凹凸状変色性布帛の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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