説明

刃先交換式ドリル用インサート

【課題】 切りくずの排出性が改善された刃先交換式ドリル用インサートを提供することを目的とする。
【解決手段】すくい面3と逃げ面4との交差稜線部に切れ刃が形成された刃先交換式ドリル用インサートであって、切れ刃の各々は、切れ刃を逃げ面4側から見たときに、すくい面3側に向かって凸な曲線と、下面11側に向かって凸な曲線と、が2つ以上交互につながってなる波形曲線を描くように形成された波形部分5c、6cを有し、この波形部分5c、6cに対応してすくい面3に形成される凹溝81、82を、下面11に垂直且つ逃げ面4と下面11との交差稜線を近似した直線ELに平行な任意の複数の断面で見たときに、各断面における前記凹溝81、82の最深部を結んで作られる仮想線が、前記逃げ面4と前記下面11との交差稜線を近似した直線に対して、直角以外の角度で交差する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穴あけ加工に使用される刃先交換式ドリルに装着される刃先交換式ドリル用インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
穴あけ加工を行う工具として、ソリッドドリルや刃先交換式ドリルが用いられており、近年経済性の高さから刃先交換式ドリルの使用頻度が増加している。刃先交換式ドリルの工具本体の先端部には、刃先交換式ドリル用のインサートの切れ刃のうちの1つを、底刃の外周側となる外周刃として機能させるためのインサート取付座と、インサートの切れ刃のうちの別の1つを底刃の内周側となる中心刃として機能させるためのインサート取付座と、の2種類のインサート取付座が形成されるタイプがある。
【0003】
ところで、一般に延性の高い材料(または鋼材)をドリルで穴あけ加工すると、材料の延性が原因で切りくずがなかなか分断されずに長く延びた状態で生成される傾向がある。長く延びた切りくずが生成されると、切りくずが加工穴とドリルとの間で詰まったり、加工穴の内壁を傷付けたりすることが頻発する。
刃先交換式ドリル用のインサートの中には、切りくずの排出性向上を目的として、切れ刃に凹部が形成されているものがある(特許文献1参照)。切れ刃に凹部が形成されることで切りくずが凹部の形状に沿って屈曲させられ、折れ易くなる。そのため細分化された切りくずが生成され、切りくずが加工穴から排出されやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−217019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の刃先交換式ドリルは確かにそれ以前のドリルと比較すると、切りくずの排出性能が高まったが、外周刃の切れ刃の長さが長くなり、外周刃に生じる切削抵抗が増大する。そして凹部は外周刃にのみ形成されているため、中心刃に生じる切削抵抗との間で大きさの不均衡が生じ、工具の回転軌道が安定し難くなるという問題が生じている。
【0006】
本発明は上記課題を解決することを目的に開発された。すなわち、細分化された切りくずの生成が可能で且つ工具の回転軌道が安定する刃先交換式ドリル用インサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の刃先交換式ドリル用インサートは、刃先交換式ドリルに取り付けられたときに、外周刃および中心刃として機能する2種類の切れ刃を有する刃先交換式ドリル用インサートであって、両切れ刃は上面側に凸な曲線と下面側に凸な曲線とが交互に連続してつながって形成された波形部分を備え、それら波形部分に対応して各すくい面に形成された凹溝の形成方向がインサートの側面とインサートの下面との交差稜線を近似した直線に対して、直角以外の角度で交差する、刃先交換式ドリル用インサートである。
【0008】
より具体的には、本発明の刃先交換式ドリル用インサートの基本構成は(1)上面と、この上面に対向する下面と、前記上面と前記下面とをつなぐ側面と、からなる略多角形の板状の立体である。(2)前記上面に、すくい面が上面の周りを囲む少なくとも2つの辺に隣接して形成される。(3)前記すくい面と側面との交差稜線部に切れ刃が形成される。(4)前記側面は、前記下面に向かい、前記上面から離間するにしたがい、インサートの内側に傾斜する傾斜部分を有する。(5)前記切れ刃の各々は、切れ刃を側面側から見たときに、上面側に向かって凸な曲線と、下面側に向かって凸な曲線と、が2つ以上交互につながってなる波形曲線を描くように形成された波形部分を有する。(6)切れ刃の前記波形部分に対応して前記すくい面に形成される凹溝を、前記下面に垂直且つ前記側面と前記下面との交差稜線に外接する直線に平行な任意の複数の断面で見たときに、各断面における前記凹溝の最深部を結んで作られる仮想線が、前記側面と前記下面との交差稜線を近似した直線に対して、直角以外の角度で交差する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の刃先交換式ドリル用インサートは、外周刃として用いられる切れ刃と、中心刃として用いられる切れ刃と、の両方に切れ刃を波形にする波形部分を備えているため、どちらの側からも細分化された切りくずを生成することができる。
さらに、波形部分に対応してすくい面に形成される凹溝が進む向きに工夫が施されることで、このインサートが工具本体に取り付けられたときには、外周刃に加わるトルクの大きさと中心刃に加わるトルクの大きさとの不均衡が縮小する。すなわち、回転中心に近い中心刃に加わる切削抵抗を、回転中心から遠い外周刃に加わる切削抵抗と比較して、中心からの距離に反比例するように大きくできれば、トルクの大きさがつりあうので、本発明のように凹部の形状に工夫を施すことで、中心刃に加わる切削抵抗の大きさは適当なものとなり、外周刃と中心刃とに加わるトルクの不均衡を縮小できる。そのことにより、工具本体の回転軌道は安定したものとなる。
【0010】
また、外周刃側のすくい面に形成される凹溝の形状と、中心刃側のすくい面に形成される凹溝の形状と、を互いに異なる形状にすることで、切削抵抗のバランスを保持したまま切りくずの細分化能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1本発明の刃先交換式ドリル用インサートの一実施形態の平面図である。
【図2】図2は図1の刃先交換式ドリル用インサートの外周刃側から見た正面図である。
【図3】図3は図1の刃先交換式ドリル用インサートの中心刃側から見た正面図である。
【図4】図4は図1の刃先交換式ドリル用インサートの外周刃を正面に見た斜視図である。
【図5】図5は図1の刃先交換式ドリル用インサートの中心刃を正面に見た斜視図である。
【図6】図6は図1の刃先交換式ドリル用インサートの外周刃の拡大図である。
【図7】図7は図1の刃先交換式ドリル用インサートの中心刃の拡大図である。
【図8】図8は切りくずの流出方向を示す模式図である。
【図9】図9は凹溝の仮想線が曲線の場合における、形成禁止例(本発明の実施形態から除外される形状)を示す模式図である。
【図10】図10は凹溝の仮想線が曲線と直線とが複合した場合における、形成禁止例(本発明の実施形態から除外される形状)を示す模式図である。
【図11】図11は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
【図12】図12は本発明の第3の実施形態を示す説明図である。
【図13】図13は図1で示された刃先交換式ドリル用インサートが取り付けられたドリルの外周刃側の先端部拡大図である。
【図14】図14は図1で示された刃先交換式ドリル用インサートが取り付けられたドリルの中心刃側の先端部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の刃先交換式ドリル用インサートの一実施形態について図面を用いながら説明する。
図1〜図5に示すように、本実施形態の刃先交換式ドリル用インサート1(以下「インサート1」と表記する)は略平行四辺形の板状の立体である。インサート1の上面12の中央には、下面11の中央に向かって垂直に開けられた取付け穴2が形成されている。取付け穴2にはネジ等の締結具が挿通され、その締結具によってインサート1は工具本体に固定される。
【0013】
インサート1の上面12の周縁部、すなわち上面12の周りを囲む辺に隣接した場所には、インサート1の中央に向かって傾斜する傾斜面が形成されており、この傾斜面は、生成された切りくずが擦過するすくい面3として機能する。
この傾斜したすくい面3は上面の全周囲にわたって形成されているため、図4、図5の斜視図が示すように、上面12の周囲はすり鉢状の形状となっている。上面12のうち、取付け穴2の周囲にはネジの頭を守るためのボス面12aが形成されており、このボス面12aは平坦、すなわち下面に平行且つ上面12の中で最も高い位置に形成されている。
【0014】
インサート1の側面は下面11に向かい、上面12から離間するにしたがい、インサート1の内側に傾斜する傾斜部分を有する。本実施形態においては、側面全体が傾斜部分となっており、この部分がインサート1と加工穴との接触を避けるための逃げ面4として機能する。
図2に示すように、逃げ面4には逃げ角αが付与されており、インサート1はいわゆるポジティブ形となっている。すなわち、逃げ面4はインサート1の下面11に対して90°に交差する任意の平面F1と鋭角に交差して形成されている。
【0015】
上面12の中央部には、すくい面3を擦過した切りくずの流れる向きを強制的に変えたり、切りくずを小さく丸めたりするためのチップブレーカ壁面7が形成されている。このチップブレーカ壁面7は公知のものを適用することが可能で、その種類も特に限定されない。
【0016】
すくい面3と逃げ面4との交差稜線部には切れ刃が形成される。そして、本実施形態のインサート1においては、大きく分けると2種類の切れ刃が形成されている。一つはインサート1が工具本体に取り付けられたときに加工穴の内壁付近の領域を切削する外周刃5である。もう一つは加工穴の中心部付近の領域を切削する中心刃6である。
外周刃5は平行四辺形のインサート1の短辺の稜線部分に形成され、中心刃6は長辺の稜線部分に形成される。
【0017】
外周刃5は主に2つの辺で構成されており、この2つの辺はインサート1を平面視したときに鈍角に交差するように形成されている。外周刃5が2つの辺で構成されることで辺と辺との交差部が形成され、交差部が形成されることで被削材への食い付き性が向上する。また、交差部が鈍角であることで、その部分は欠け難くなる。
【0018】
同様に、中心刃6は主に2つの辺で構成されており、この2つの辺はインサート1を平面視したときに鈍角に交差するように形成されている。中心刃6が2つの辺で構成されることで辺と辺との交差部が形成され、交差部が形成されることで被削材への食い付き性が向上する。また、交差部が鈍角であることで、その部分は欠け難くなる。
【0019】
図2に示すように、外周刃5はインサート1の下面11に平行に、側面側から観察したときに、上面12側に向かって凸な曲線P1と下面側に向かって凸な曲線Q1とが交互に連続して2つ以上つながってなる波形部分5cを含んで形成されている。本実施形態では波形部分5cは3つの曲線P1と、2つの曲線Q1とが、交互に配置されて形成されている。さらに、外周刃5は波形部分5cに隣接して直線状の切れ刃5fが形成され、その隣に凹部83が形成され、その隣に直線状の切れ刃5gが形成されている。なお、凹部83は湾曲した折れやすい切りくずを生成する機能を有している。
同様に、中心刃6も図3に示すように、インサート1の下面11に平行に、側面側から観察したときに、上面12側に向かって凸な曲線P2と下面側に向かって凸な曲線Q2とが交互に連続して2つ以上つながってなる波形部分6cを含んで形成されている。そして、本実施形態では波形部分6cは、曲線P2が3つ、曲線Q2が2つ、交互に形成されている。波形部分6cの両端部には直線状の切れ刃6d、6fが形成されている。
【0020】
外周刃5および中心刃6のそれぞれに波形部分5c、6cが形成されることにより、各切れ刃は波形部分の形状が厚さ方向に転写された切りくずを生成する。波形部分の形状が転写された切りくずは、平らな切りくずを折断する際に要する力よりも小さな力で折断されるので、細分化されやすい。
【0021】
本実施形態においては、外周刃5が有する波形部分5cの凸曲線P1の頂点の下面11からの高さは、外周刃5に形成された直線状の切れ刃5dの高さに等しい。
同様に、中心刃6が有する波形部分6cの凸曲線P2の頂点の高さは、中心刃6に形成された直線状の切れ刃6dの高さに等しい。
【0022】
外周刃5が波形部分5cを含むような形状をなしているがために、外周刃5に隣接するすくい面31には、波形部分5cの下面11側に向かって凸な曲線に対応した位置にインサート1の中心方向に向かって延びる凹溝81が形成されており、この凹溝81はすくい面31の一部として機能する。また、すくい面31には波形部分5cの上面に向かって凸な曲線に対応した位置にインサート1の中心方向に向かって延びる凸部91が形成されている。
同様に、中心刃6に隣接するすくい面32にも、波形部分6cの下面11側に向かって凸な曲線に対応した位置にインサート1の中心方向に向かって延びる凹溝82が形成されており、この凹溝82はすくい面32の一部として機能する。また、すくい面32には波形部分6cの上面に向かって凸な曲線に対応した位置にインサート1の中心方向に向かって延びる凸部92が形成されている。
【0023】
さらに、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な任意の複数の断面で凹溝81および凹溝82を見たとき、図6、図7に示すように、各断面における凹溝81、82の最深部を結んで作られる仮想線X1、仮想線X2が、上面側からみて、逃げ面(側面)4と下面11との交差稜線を近似した直線EL1、直線EL2(以下、この線を「基準直線」と表記する)に対して、直角以外の角度で交差する。
そして同様に、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な任意の複数の断面で凸部91および凸部92を見たとき、図6、図7に示すように、各断面における凸部91、92の最頂部を結んで作られる仮想線Y1、仮想線Y2が、基準直線EL1、直線EL2に対して直角以外の角度で交差する。
【0024】
すなわち、図6に示されている仮想線X1は、凹溝81をA1−A1線断面、A2−A2線断面、およびA3−A3線断面で代表される、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な断面で見たときの凹溝81の最深部を結んで描かれる線である。この仮想線X1は基準直線EL1に対して直角以外の角度で交差する。従って、別の言い方をすれば、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な断面で凹溝81を見ると、仮想線X1に対応する位置に凹溝81の最深部がある。
また同様に、仮想線Y1は凸部91をA1−A1線断面、A2−A2線断面、およびA3−A3線断面で代表される、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な断面で見たときの凸部91の最頂部を結んで描かれる線であって、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な断面で凸部91を見ると、仮想線Y1に対応する位置に凸部91の最頂部がある。
なお、以下の説明では凹溝の仮想線と基準直線との交差角度を「凹溝の形成角度」と表記し、凸部の仮想線と基準直線との交差角度のことを「凸部の形成角度」と表記し、これらの角度を基準直線から仮想線まで反時計回りに測ったときの角度で定義する。
【0025】
なお、すくい面31に凹溝81が複数形成されたときは、それぞれが基準直線EL1に対して直角以外の角度で交差していればよく、傾斜の方向や傾斜角度については自由な設定が可能である。
同様に、すくい面31に凸部91が複数形成されたときは、それぞれが基準直線EL1に対して直角以外の角度で交差していればよく、傾斜の方向や傾斜角度については自由な設定が可能である。
【0026】
凹溝81の仮想線X1と凸部91の仮想線Y1が基準直線EL1に対して直角以外の角度で交差するように形成されると、図8の模式図が示すように、凹溝81の内周面および凸部91の周面が基準直線EL1に対して略直角に流出する切りくずに力を加えて強制的に折り曲げるため、波形部分5cの形状が転写された切りくずは容易に切断され、細分化される。
【0027】
これと同様に、図7に示された直線X2は、B1−B1線断面、B2−B2線断面、およびB3−B3線断面で代表される、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な断面で凹溝82を見たときにおける最も深い地点を結んで描かれる仮想線であり、この仮想線X2は側面(逃げ面4)の基準直線EL2に対して直角以外の角度で交差する。
そして、直線Y2はB1−B1線断面、B2−B2線断面、およびB3−B3線断面で代表される、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な断面で凸部92を見たときにおける最頂部を結んで描かれる仮想線であり、この仮想線Y2は側面(逃げ面4)の基準直線EL2に対して直角以外の角度で交差する。
なお、B1−B1断面、B2−B2断面、およびB3−B3断面も、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な断面である。
【0028】
凹溝82および凸部92についても、凹溝81や凸部91と同様に傾斜の方向や傾斜角度については自由な設定が可能である。
【0029】
凹溝82の仮想線X2が基準直線EL2に対して直角以外の角度で交差するように形成され、凸部92の仮想線Y2が基準直線EL2に対して直角以外の角度で交差するように形成されると、凹溝82の内周面および凸部92の周面が、基準直線EL2に対して略直角に流出する切りくずに力を加えて強制的に折り曲げるため、波形部分6cの形状が転写された切りくずは容易に切断され、細分化される。
【0030】
なお、図6、図7からわかるように、上面側からみて、基準直線EL1とEL2とは直接見ることができず、隠れているので、角度の測定は、測定治具などを用いて測定する。測定治具は、例えば平行な線または面があり、一方を基準直線EL1、EL2に合わせると、他方がインサート1に隠れずに、上面側から見えるようなものとする。
そして、これら基準直線EL1、EL2は下面11と逃げ面4との交差稜線が直線の場合はその直線に一致し、曲線の場合は最も外側に膨らんだ2点を結ぶ接線、すなわち最も外側に膨らんだ点に外接する直線とする。
【0031】
本実施形態のインサート1には、外周刃5および中心刃6の両方の切れ刃に波形部分が形成され、尚且つ各波形部分によってすくい面31、32に形成される凹溝81、凸溝91、凹溝82、凸溝92が、切りくずの流出方向である、基準直線EL1、EL2に対して直角な方向以外の角度で延びているため、インサート1が工具本体に取り付けられた際に、中心刃6に加わる切削抵抗が外周刃5に加わる切削抵抗よりも大きくなり、その結果、外周刃5に加わるトルクの大きさと、中心刃6に加わるトルクの大きさとの不均衡が縮小できる。
【0032】
これら二つのトルクの大きさの不均衡が縮小することで、本実施形態のインサート1が取り付けられた刃先交換式ドリルは、切削に要する動力の大きさは多少増えるものの、切削中のブレが小さい安定した回転軌道で切削することができる。
【0033】
なお、凹溝81、82が作る仮想線X1、X2は曲線でもよい。この場合凹溝81、82は、図9に示すような、仮想線X1、X2の接線が基準直線EL1、EL2と直交するように形成してはいけない。
また、仮想線X1、X2が直線と曲線との組み合わせからなる場合には、図10に示すような、直線部分の仮想線lが基準直線EL1、EL2と直交した状態にならないようにすることが必要となる。
同様に、凸部91、92が作る仮想線Y1、Y2は曲線でもよい。この場合、凹溝81、82と同様に、仮想線Y1、Y2の接線が基準直線EL1、EL2と直交するように形成してはいけない。さらに、仮想線Y1、Y2が直線と曲線との組み合わせからなる場合にも、凹溝81、凹溝82と同様に、直線部分の仮想線が基準直線EL1、EL2と直交した状態にならないようにすることが必要となる。
【0034】
本実施形態においては、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な断面で、凹溝81が形成されたすくい面31をみたときに、任意に選択した1つの凹溝81の両隣にある凸部の頂点間の長さが、外周刃5から離れた位置の断面ほど短くなっている。そのため、凹溝81を上面視すると、全て「ハの字」状に見える(図1参照)。凹溝81がこのように「ハの字」状に形成されると、生成した切りくずを拘束する力が強くなり、切りくずが折断されやすくなる。
【0035】
そして、本実施形態においては、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行な断面で、凹溝82が形成されたすくい面32をみたときに、1つの凹溝82の両隣にある凸部の頂点間の長さも、中心刃6から離れた断面ほど短くなっている。そのため、凹溝82を上面視すると、全て「ハの字」状に見える(図1参照)。凹溝82がこのように「ハの字」状に形成されると、同様に、生成した切りくずを拘束する力が強くなり、切りくずが折断されやすくなる。
【0036】
外周刃5のすくい面31に形成される凹溝81および中心刃6のすくい面32に形成される凹溝82の終端部の位置は、それぞれの切れ刃の長さの5%以上30%以下に相当する距離だけ、上面から内側に入った場所にあることが好ましい。なお、凹溝の終端とは凹溝と基準直線EL1、EL2との交差部とは反対側の端部とする。凹溝は上記の範囲以上に長く形成されても、範囲を超えて長くなった部分は切りくずの処理に殆ど関与せず、逆にインサート1の強度低下をもたらす。
【0037】
外周刃5の波形部分5cの、外周刃5の全長に対する比率は、50%以上(切れ刃全体が波形部分である場合を含む)であることが好ましく、より好ましくは80%以上であることが好ましい。なお、外周刃5の全長とは、切れ刃として作用する部分全ての長さの合計である。すなわち、インサート1を側面視したときの、すくい面31と逃げ面4との交差稜線部全体の長さである
波形部分5cがこのような比率で設定されると、切りくずに波形部分5cの形状が適切な幅で転写され、切りくずの折断が確実に行われる。すなわち、外周刃5全体における波形部分5cの比率が小さいと、切りくずに波形部分5cの形状が部分的に転写されるものの、切りくずの拘束力が足りず、切りくずが折れにくくなる。
【0038】
中心刃6の波形部分6cの中心刃6全体に対する比率は、50%以上(切れ刃全体が波形部分である場合を含む)であることが好ましく、より好ましくは80%以上であることが好ましい。波形部分6cの比率がこのような大きさで設定されると、波形部分5cと同様の理由により、切りくずに波形部分5cの形状が適切な幅で転写されるようになる。なお、波形部分6cの比率の大きさがこの範囲外である場合の弊害も、波形部分5cと同様である。ただし、中心刃6の波形部分6cの比率は、外周刃5側の切削抵抗とのバランスを考慮して調整される。
【0039】
本実施形態においては、図2および図3に示したように、外周刃5および中心刃6は波形部分の他に直線状の切れ刃も含む形状であったが、この直線状の切れ刃は本発明において必須な構成ではなく、その形成箇所も特に限定は無い。例えば、2つの波形部分の間をつなぐように直線状切れ刃は形成されてもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、凹溝の形成角度および凸部の形成角度が共に90°以外であったが、どちらか一方の形成角度のみを90°以外にすることも可能である。すなわち、凹溝の形成角度が90°以外で且つ凸部の形成角度が90°となるような波形部分や、凹溝の形成角度が90°で且つ凸部の形成角度が90°以外となるような波形部分も採用可能である。ただしその場合、部分的にしか切りくずの流出方向を強制できないので、従来のものよりは工具の回転軌道は安定するが、本実施形態よりは安定しなくなる。
【0041】
本実施形態においては、側面全体が傾斜部分であったが、逃げ角が付与された傾斜部分が側面の一部に形成されたような形状でも構わない。側面の一部に傾斜部分が形成されているような側面形状の場合、傾斜部分が形成される位置は逃げ角が0°の面の上側でも下側でも構わない。
【0042】
次に、第2の実施形態を図11に示す。この実施形態においては、外周刃5の波形部分5cがすくい面31に作る複数の凹溝81の形成角度は、凹溝81が形成された位置によってそれぞれ異なり、尚且つ中心刃6の波形部分6cがすくい面32に作る複数の凹溝82の形成角度も、凹溝82が形成された位置によってそれぞれ異なっている。なおかつ、中心刃の凹溝82の形成角度の方が、外周刃の凹溝81の形成角度よりも大きくなっている。
【0043】
具体的に説明すると、例えば図11に示すように、外周刃5のすくい面31に形成される凹溝81の仮想線X1は、波形部分5cを挟む一方のコーナC1からもう一方のコーナC2へ向かってその形成箇所が移動するにつれて、上述した基準直線との交差角度が段階的に大きくなる。この結果、凹溝81の形成角度もその形成箇所がコーナC1からコーナC2に向かって移動するにつれて段階的に大きくなる。このとき、各凹溝81の傾斜の向きについては限定が無く、左右どちらに傾いていても良い。
凹溝81がこのように形成されることで、切りくずの折断が難しい切りくずの外側の部分に対してより強い拘束力を与えることができ、切りくずの折断が確実に行われる。
本実施形態においては、コーナC3とコーナC4とに挟まれた波形部分5c(図面上側の波形部分)についても同様の形状となっている。
【0044】
中心刃6のすくい面32に形成される凹溝82の仮想線X2は、波形部分6cを挟む一方のコーナC4からもう一方のコーナC1へ向かってその形成箇所が移動するにつれて、上述した基準直線との交差角度が段階的に大きくなる。この結果、凹溝82の形成角度もその形成箇所がコーナC4からコーナC1に向かって移動するにつれて段階的に大きくなる。このとき、各凹溝82の傾斜の向きについては限定が無く、左右どちらに傾いていても良い。
凹溝82がこのように形成されることで、切りくずの折断が難しい切りくずの外側の部分に対してより強い拘束力を与えることができ、切りくずの折断が確実に行われる。なお、本実施形態においてはコーナC2とコーナC3とに挟まれた波形部分6c(図面右側の波形部分)についても、同様の形状をしている。
そして、凹溝82の中で最も小さい形成角度は、凹溝81の中で最も大きい形成角度よりも大きいことが好ましい。すなわち、全ての凹溝82はどの凹溝81よりも大きい形成角度を有していることが好ましい。このような形状により、工具の回転軌道がより安定する。
【0045】
なお、図示はしないが、外周刃5の波形部分5cがすくい面31に作る複数の凸部91の形成角度が、凸部91が形成された位置によってそれぞれ異なり、尚且つ中心刃6の波形部分6cがすくい面32に作る複数の凸部92の形成角度も、凸部92が形成された位置によってそれぞれ異なっている、そのような形状を有するインサート1も、上記実施形態と同様の効果を発揮する。
そしてそのような形状の場合、凸部92の中で最も小さい形成角度は、凸部91の中で最も大きい形成角度よりも大きいことが好ましい。すなわち、全ての凸部92はどの凸部91よりも大きい形成角度を有していることが好ましい。このような形状により、工具の回転軌道がより安定する。
【0046】
次に、第3の実施形態を図12に示す。図12は外周刃5もしくは中心刃6の波形部分を側面視した模式図である。この実施形態においては、一の波形部分の始端と終端とを結ぶ仮想線Sから、その波形部分を構成する下面11側に凸な曲線Qの最深部までの距離dqが、曲線Qの形成箇所が一方のコーナから他方のコーナに移動するにつれて、段階的に長くなっている。
【0047】
波形部分5cおよび波形部分6cが両方ともこのような構造になることで、それぞれの波形部分を構成する隣接した上面側に凸な曲線Pと下面側に凸な曲線Q、これら2つの曲線の高低差が大きくなるので、切りくずが大きく変形させられ、より折れやすい状態の切りくずが生成される。
【0048】
さらに、中心刃の波形部分6cにおいて、複数ある距離dqのうち最長のものは、外周刃の波形部分5cにおける複数ある距離dqのうち最小のものよりも短いことが好ましい。
すなわち、中心刃の波形部分6cにおける、波形部分6cの始端と終端とを結んだ仮想線Sから、波形部分6cを構成する下面11側に凸な曲線Q2の最深部までの距離dq2の中で最も大きな値が、外周刃の波形部分5cにおける、波形部分5cの始端と終端とを結んだ仮想線Sから、波形部分5cを構成する下面11側に凸な曲線Q1の最深部までの距離dq1の中で最も小さな値よりも小さくなることが好ましい。
このことを不等式で表現すると以下のようになる。なおdq1(max)とは波形部分5cに複数ある距離dq1のうち最大の値を示し、dq2(max)とは波形部分6cに複数ある距離dq2のうち最大の値を示す。
(1)dq1(max)>dq2(max)
このような構造により、中心刃6に加わる切削抵抗と、外周刃5に加わる切削抵抗と、がバランスし工具の回転軌道が安定する。
【0049】
なお図示はしないが、仮想線Sから、その波形部分を構成する上面12側に凸な曲線Pの最頂部までの距離が、曲線Pの形成箇所が一方のコーナから他方のコーナに移動するにつれて、段階的に長くなっているような形状を有するインサート1でも、上記の形状を有するインサート1と同様の効果を発揮する。
【0050】
(第4実施形態)
本実施形態においては、中心刃6の波形部分6cによってすくい面32に形成される凹溝82の曲率が、外周刃5の波形部分5cによってすくい面31に形成される凹溝81の曲率に比べて、小さくなっている。なお、ここでいう凹溝81、82の曲率とは、下面11に垂直且つ側面(逃げ面4)と下面11との交差稜線に平行であって、なおかつ各切れ刃を通る断面で凹溝を見たときの曲率を指す。
凹溝81と凹溝82とがこのような大きさの関係となることで、各凹溝が切りくずを拘束する力が強くなり、切りくずを確実に変形させることができるようになる。さらに、外周刃5と中心刃6とに加わる切削抵抗の大きさの差がより小さくなり、工具の回転安定性が向上する。
【0051】
次に、本実施形態の刃先交換式ドリル用インサートを備えた刃先交換式ドリルについて説明する。
図13は本実施形態の刃先交換式ドリルの先端部拡大図(外周刃側)であり、図14は本実実施形態の刃先交換式ドリルの先端部拡大図(中心刃側)である。図13および図14に示すように、本実施形態の刃先交換式ドリルDは、工具本体100と、工具本体100の先端に取り付けられた二個のインサート1とからなる。
工具本体の100の周面には捻じれた2条の切りくず排出溝101が形成されており、外周刃および中心刃で生成された切りくずはこの切りくず排出溝101を通って加工穴外へと排出される。
【0052】
工具本体100の先端にはチップ座が、工具本体100の2箇所にその一部を切り欠いて形成されている。一つは外周刃5を使用するインサート1が取り付くためのチップ座103(以下、「外周チップ座」と表記する)であり、もう一つは中心刃を使用するインサート1が取り付くためのチップ座104(以下、「中心チップ座」と表記する)である。
外周チップ座103および中心チップ座104は、インサート1が各チップ座に取り付けられたときに、切れ刃の交差部が最も先端に位置するように形成される。
【0053】
外周チップ座103および中心チップ座104の底面にはネジ穴が形成されており、ここにインサート1に挿通されたネジ等の締結具が嵌め込まれ、インサート1は各チップ座に固定される。
【0054】
以上、本発明の刃先交換式ドリル用インサートを説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上で示した実施形態の形状的な特徴を2つ以上組み合わせた態様も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の刃先交換式ドリル用インサートおよび刃先交換式ドリルによれば、安定した回転軌道で回転し、且つ非常に細分化された切りくずを生成するので、切りくずの工具への絡みなどが発生せず加工能率が向上する。
【符号の説明】
【0056】
1…刃先交換式ドリル用インサート
11…下面
12…上面
12a…ボス面
2…取付け穴
3…すくい面
31…すくい面
32…すくい面
4…逃げ面
5…外周刃
5c…波形部分
5d、5f、5g…直線状の切れ刃
6…中心刃
6c…波形部分
6d、6f…直線状の切れ刃
7…チップブレーカ壁面
81…凹溝
82…凹溝
91…凸部
92…凸部
100…工具本体
101…切りくず排出溝
103…外周チップ座
104…中心チップ座
P1、P2…上面側に凸な曲線
Q1、Q2…下面側に凸な曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成要件を備える刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)上面と、この上面に対向する下面と、前記上面と前記下面とをつなぐ側面と、からなる略多角形の板状の立体である。
(2)前記上面に、すくい面が上面の周りを囲む少なくとも2つの辺に隣接して形成される。
(3)前記すくい面と側面との交差稜線部に切れ刃が形成される。
(4)前記側面は、前記下面に向かい、前記上面から離間するにしたがい、インサートの内側に傾斜する傾斜部分を有する。
(5)前記切れ刃の各々は、切れ刃を側面側から見たときに、上面側に向かって凸な曲線と、下面側に向かって凸な曲線と、が2つ以上交互につながってなる波形曲線を描くように形成された波形部分を有する。
(6)切れ刃が有する前記波形部分に対応して前記すくい面に形成される凹溝を、前記下面に垂直且つ前記側面と前記下面との交差稜線に外接する直線に平行な任意の複数の断面で見たときに、各断面における前記凹溝の最深部を結んで作られる仮想線が、前記側面と前記下面との交差稜線を近似した直線に対して、直角以外の角度で交差する、および/または切れ刃が有する前記波形部分に対応して前記すくい面に形成される凸部を、前記下面に垂直且つ前記側面と前記下面との交差稜線に外接する直線に平行な任意の複数の断面で見たときに、各断面における前記凸部の最頂部を結んで作られる仮想線が、前記側面と前記下面との交差稜線を近似した直線に対して、直角以外の角度で交差する。
【請求項2】
以下の構成要件をさらに備える請求項1に記載の刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)第1の波形部分に対応してすくい面に形成される前記凹溝または前記凸部は、第1の波形部分を挟む第1のコーナからもう一つの第2のコーナに向かってその形成位置が移動するにつれて、前記仮想線と前記側面と前記下面との交差稜線を近似した直線との交差角度が大きくなっていく。
(2)第2の波形部分に対応してすくい面に形成される前記凹溝または前記凸部は、第2の波形部分を挟む第3のコーナからもう1つの第4のコーナに向かってその形成位置が移動するにつれて、前記仮想線と前記側面と前記下面との交差稜線を近似した直線との交差角度が大きくなっていく。
【請求項3】
以下の構成要件をさらに備える請求項2に記載の刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)前記第1の波形部分は外周刃として用いられる切れ刃に含まれる。
(2)前記第2の波形部分は中心刃として用いられる切れ刃に含まれる。
(3)前記第2の波形部分の仮想線と前記側面と前記下面との交差稜線を近似した直線との交差角度は全て、前記第1の波形部分の仮想線と前記側面と前記下面との交差稜線を近似した直線との交差角度よりも大きい。
【請求項4】
以下の構成要件をさらに備える請求項1から3のいずれかに記載の刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)第1の波形部分を側面視したときにおいて、該第1の波形部分の始端と終端とを結ぶ直線から、この第1の波形部分を構成する下面側に向かって凸な曲線の最深部までの距離は、下面側に向かって凸な曲線の形成箇所が第1の波形部分を挟む第1のコーナからもう一つの第2のコーナに向かって位置が移動するにつれて大きくなっていく。
(2)第2の波形部分を側面視したときにおいて、該第2の波形部分の始端と終端とを結ぶ直線から、この第2の波形部分を構成する下面側に向かって凸な曲線の最深部までの距離は、下面側に向かって凸な曲線の形成箇所が第2の波形部分を挟む第3のコーナからもう一つの第4のコーナに向かって移動するにつれて大きくなっていく。
【請求項5】
以下の構成要件をさらに備える請求項4に記載の刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)前記第1の波形部分は外周刃として用いられる切れ刃に含まれる。
(2)前記第2の波形部分は中心刃として用いられる切れ刃に含まれる。
(3)前記第2の波形部分を側面視したときにおいて、該第2の波形部分の始端と終端とを結ぶ直線から、この第2の波形部分を構成する下面側に向かって凸な曲線の最深部までの距離のうち最大のものは、前記第1の波形部分を側面視したときにおいて、該第1の波形部分の始端と終端とを結ぶ直線から、この第1の波形部分を構成する下面側に向かって凸な曲線の最深部までの距離のうち最小のものよりも小さい。
【請求項6】
以下の構成要件をさらに備える請求項1から3のいずれかに記載の刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)第1の波形部分を側面視したときにおいて、該第1の波形部分の始端と終端とを結ぶ直線から、この第1の波形部分を構成する上面側に向かって凸な曲線の最頂部までの距離は、上面側に向かって凸な曲線の形成箇所が第1の波形部分を挟む第1のコーナからもう一つの第2のコーナに向かって位置が移動するにつれて大きくなっていく。
(2)第2の波形部分を側面視したときにおいて、該第2の波形部分の始端と終端とを結ぶ直線から、この第2の波形部分を構成する上面側に向かって凸な曲線の最頂部までの距離は、上面側に向かって凸な曲線の形成箇所が第2の波形部分を挟む第3のコーナからもう一つの第4のコーナに向かって移動するにつれて大きくなっていく。
【請求項7】
以下の構成要件をさらに備える請求項11に記載の刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)前記第1の波形部分は外周刃として用いられる切れ刃に含まれる。
(2)前記第2の波形部分は中心刃として用いられる切れ刃に含まれる。
(3)前記第2の波形部分を側面視したときにおいて、該第2の波形部分の始端と終端とを結ぶ直線から、この第2の波形部分を構成する上面側に向かって凸な曲線の最頂部までの距離のうち最大のものは、前記第1の波形部分を側面視したときにおいて、該第1の波形部分の始端と終端とを結ぶ直線から、この第1の波形部分を構成する上面側に向かって凸な曲線の最頂部までの距離のうち最小のものよりも小さい。
【請求項8】
以下の構成要件をさらに備える請求項1から5のいずれかに記載の刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)第2の波形部分に対応してすくい面に形成される凹溝の曲率は、第1の波形部分に対応してすくい面に形成される凹溝の曲率よりも小さい。
(2)前記第1の波形部分は外周刃として用いられる切れ刃に含まれ、前記第2の波形部分は中心刃として用いられる切れ刃に含まれる。
【請求項9】
以下の構成要件をさらに備える請求項1から5または請求項8のいずれかに記載の刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)前記下面に垂直且つ側面と下面との交差稜線を近似した直線に平行な断面で、前記凹溝が形成されたすくい面をみたときに、一の凹溝の両隣にある凸部の頂点間の距離が、切れ刃から離れた位置の断面ほど短くなっている。
【請求項10】
以下の構成要件をさらに備える請求項1から9のいずれかに記載の刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)前記凹溝の終端部の位置は、その凹溝に対応する波形部分を含む切れ刃から、その切れ刃の全長の5%以上30%以下に相当する距離だけ、前記上面から内側に入った場所にある。
【請求項11】
以下の構成要件をさらに備える請求項1から10のいずれかに記載の刃先交換式ドリル用インサートである。
(1)前記波形部分の長さは、その波形部分を含む切れ刃の全長に対して50%以上である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−51075(P2012−51075A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195958(P2010−195958)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000221144)株式会社タンガロイ (185)
【Fターム(参考)】