説明

刃物研磨装置

【課題】簡単な構成にて、初心者であっても刃物の刃先全体が均一に容易に研磨される刃物研磨装置を提供することにある。
【解決手段】刃物研磨装置は、互いの距離が可変な駆動プーリ(38)及び従動プーリ(40)と、駆動プーリ(38)を回転駆動するためのモータと、駆動プーリ(38)と従動プーリ(40)との間に架け渡され、研磨面を有する無端の研磨ベルト(46)と、駆動及び従動プーリ(38,40)を相互に離間する方向に付勢する弾性部材(52)と、駆動プーリ(38)と従動プーリ(40)との間を延びる研磨ベルト(46)の部分の近傍に配置され、研磨ベルト(46)の走行方向に対する刃物48の傾斜角度を規定するガイド部材(50)とを備える。弾性部材(52)は、刃物(48)の刃先が研磨ベルト(46)に押し付けられたとき、研磨ベルト(46)の撓みを許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は刃物研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
刃物の刃先を研磨する刃物研磨装置は、刃物の製造工程(刃付け工程)や家庭等で使用される。
例えば特許文献1が開示する電動式の刃物研磨装置は、回転自在に支持された1対のプーリ(ベルト車)を備える。プーリ間には研磨面を有する無端の研磨ベルト(エンドレス・サンド・ペーパベルト)が架け渡され、一方のプーリは、スプリングによって他方のプーリから離れる方向に付勢されている。研磨ベルトの上方には、刃物受け台が配置されるとともに、刃物を研磨ベルトに押し付ける刃物押さえが配置される。
【0003】
一方、特許文献2が開示する電動式の刃物研磨装置では、研磨ベルトの内面に当接したローラがスプリングによって付勢され、プーリ及び研磨ベルトがカバーによって覆われている。カバーの上板には、所定角度の挿入スリットが形成されている。
これらの刃物研磨装置では、スプリングによってプーリ間を延びる研磨ベルトが撓まないように引っ張られ、そして、刃物受け台や挿入スリットによって、研磨ベルトの走行方向に対する刃物の傾斜角度が規定される。
【特許文献1】実開昭49-115795号公報
【特許文献2】実開昭48-55492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の特許文献1及び2の刃物研磨装置では、研磨ベルトが撓まないように引っ張られ、更には、研磨ベルトの裏面に近接して配置されたペーパーベルト用ガイド等によっても研磨ベルトの撓みが防止される。
このような刃物研磨装置を使用する作業者には、切っ先からあごまで刃先全体を均一に研磨すべく、刃先を刃渡り方向に移動させる間、常に刃先を一定の力で研磨ベルトに押し付けることが要求される。このため、特に、刃物の長手方向に対し、切っ先からあごまで延びる刃先のラインが傾斜しているような刃物については、当該装置の使用に習熟した作業者でなければ、刃先全体を均一に研磨することができない。
【0005】
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的は、簡単な構成にて、初心者であっても、刃物の刃先全体が均一に容易に研磨される刃物研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明によれば、互いの距離が可変な駆動プーリ及び従動プーリと、前記駆動プーリを回転駆動するためのモータと、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に架け渡され、研磨面を有する無端の研磨ベルトと、前記駆動及び従動プーリを相互に離間する方向に付勢する弾性部材と、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間を延びる前記研磨ベルトの部分の近傍に配置され、前記研磨ベルトの走行方向に対する刃物の傾斜角度を規定するガイド部材とを備える刃物研磨装置において、前記弾性部材は、前記刃物の刃先が前記研磨ベルトに押し付けられたとき、前記研磨ベルトの撓みを許容することを特徴とする刃物研磨装置が提供される(請求項1)。
【0007】
好ましくは、前記研磨ベルトは革製である(請求項2)。
好ましくは、前記駆動プーリと前記モータとは脱着可能に連結される(請求項3)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1の刃物研磨装置では、刃物の刃先が研磨ベルトに押し付けられたときに、弾性部材が研磨ベルトの撓みを許容する。研磨ベルトが撓むことにより、研磨ベルトの走行方向でみて、刃先が研磨ベルトに押し付けられる位置が若干ずれたとしても、研磨ベルトに対する刃先の接触圧力は一定に保たれる。すなわち、刃先を刃渡り方向に対して移動させる間、研磨ベルトに対し、刃先が一定の力で押し付けられる。この結果として、この刃物研磨装置に不慣れな者であっても、刃先全体を容易に均一に研磨することができる。
【0009】
また、研磨ベルトが撓むことにより、刃先の曲率が小さくても、研磨ベルトから刃先に対して突発的な大きな力が作用することがないので、刃物研磨装置の使用者の安全が確保される。
請求項2の刃物研磨装置によれば、研磨ベルトが革製であることにより、刃先の仕上げ研磨が簡単に実施される。
【0010】
請求項3の刃物研磨装置では、駆動プーリとモータとが脱着可能に連結されることで、駆動プーリ、従動プーリ、研磨ベルトをまとめて交換することができる。この結果として、この刃物研磨装置によれば、研磨面の粗さが異なる複数の研磨ベルトによって、刃物を容易に研磨することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1及び図2は、一実施例の刃物研磨装置を示している。
刃物研磨装置は箱体10を備え、箱体10の背面には電動モータ12が取り付けられている。箱体10の上面には、電動モータ12側にギアボックス14が固定され、ギアボックス14の上部にはシャフトカバー16が一体に形成されている。シャフトカバー16内には、出力軸18が配置され、出力軸18には、電動モータ12のトルクが、ギアボックス14内のギア(図示せず)を介して伝達される。
【0012】
また、箱体10の上面にはガイドレール20が配置され、ガイドレール20は箱体10の前後方向に延びている。また、ガイドレール20は出力軸18と平行に延び、箱体10の正面からギアボックス14の下部近傍まで延びている。
箱体10の上には、ベルトユニット22が脱着可能に配置される。箱体10に対するベルトユニット22の位置決めは、ガイドレール20によって行われ、ベルトユニット22は、ねじ24によって箱体10に固定され、ねじ24は、ベルトユニット22に設けられた固定金具26の貫通孔を通じて、箱体10の上面に形成されたねじ孔28にねじ込まれる。
【0013】
図3に示したように、ユニット22は、駆動プーリケース30及び従動プーリケース32を有し、これら駆動プーリケース30及び従動プーリケース32は、連結ロッド34を介して相互に間隔をあけて連結されている。
駆動プーリケース30の底部には、前述のガイドレール20と係合するガイド溝36が形成され、ガイド溝36は、連結ロッド34と直交する方向に延びている。従って、研磨ユニット22が箱体10上に固定されている状態では、連結ロッド34は箱体10の幅方向に延び、このため、駆動プーリケース30及び従動プーリケース32は、箱体10の幅方向に並んで配置される。
【0014】
駆動及び従動プーリケース30,32の内部には、駆動プーリ38及び従動プーリ40がそれぞれ回転自在に配置され、駆動プーリ38及び従動プーリ40の回転軸42,44は、連結ロッド34と直交する水平方向に延びている。駆動プーリ38の回転軸42は、出力軸18と連結可能であり、従って、駆動プーリ38は電動モータ12によって回転駆動可能である。
駆動プーリ38及び従動プーリ40には、例えば革製の1つの無端ベルト(研磨ベルト)46が架け渡されており、研磨ベルト46の外面は刃物の研磨面として適当に形成されている。駆動プーリ38が回転すると、研磨ベルト46が無限軌道を走行し、従動プーリ40も研磨ベルト46に引きずられて回転する。
【0015】
研磨ベルト46は、連結ロッド34の軸線と平行な水平方向に延びる2つの水平部分と、駆動プーリ38及び従動プーリ40の外周面にそれぞれ沿った2つの半円弧部分とからなる。研磨ベルト46の上側の水平部分は、駆動プーリ38と従動プーリ40との間を水平方向に走行する。研磨ベルト46の上側の水平部分は、殆ど露出させられ、この露出した領域にて、研磨ベルト46の外面に刃物48の刃先が押し付けられる。
【0016】
なお、研磨ベルト46の幅は、駆動プーリ38及び従動プーリ40の幅よりも狭く、一般的な刃物の長さよりも短い。
この刃物研磨装置は、研磨された刃物48の刃先の角度を一定にすべく、研磨ベルト46の上側の水平部分に対して、研磨される刃物48の傾斜角度を規定する手段として、ガイド部材50を有する。ガイド部材50は、従動プーリケース32と一体に形成されており、刃物48の側面が押し付けられるガイド面50aを有する。ガイド面50aは、研磨ベルト46の上側の水平部分の両側に設けられ、この水平部分に対し、所定の傾斜角度にて傾斜している。
【0017】
また、この刃物研磨装置は、研磨ベルト46の上側の水平部分に適当なテンションを付与する手段を有する。
具体的には、連結ロッド34の一端は、駆動プーリケース30に一体に固定され、連結ロッド34の他端側は、従動プーリケース32に形成された挿入孔51を貫通している。このため従動プーリケース32は、連結ロッド34の軸線方向にスライド可能である。
【0018】
そして、連結ロッド34には、弾性部材として圧縮コイルばね52が装着され、圧縮コイルバネ52の両端は、駆動及び従動プーリケース30,32にそれぞれ当接している。圧縮コイルばね52は、駆動プーリケース30から離間する方向に従動プーリケース32を付勢し、この圧縮コイルばね52の付勢力によって、研磨ベルト46の水平部分には適当なテンションが付与される。
【0019】
以下、上述した刃物研磨装置の使用方法について説明する。
まず、電動モータ12の電源を入れて駆動プーリ38を回転させ、研磨ベルト46の上側部分を水平方向に走行させる。それから、図3に示したように、刃物研磨装置の上方から、ガイド部材50のガイド面50aに当接するように、刃物48を研磨ベルト46の上側の水平部分に押し付ける。そして、刃物48の刃先を研磨ベルト46に押し付けながら、図4に示したように、刃物48を長手方向に往復動させて、刃物の一方の面側から刃先全体を研磨する。
【0020】
そして、刃物の一方の面側から研磨した後、刃物を裏返し、同様に研磨する。かくして、刃物の刃先全体が両面側から研磨される。
上述した刃物研磨装置によれば、刃物48の刃先が研磨ベルト46に押し付けられたときに、弾性部材としての圧縮コイルばね52が研磨ベルト46の撓みを許容する。研磨ベルト46が撓むことにより、研磨ベルト46の走行方向でみて、刃先が研磨ベルト46に押し付けられる位置が若干ずれたとしても、研磨ベルト46に対する刃先の接触圧力は一定に保たれる。
【0021】
より詳しくは、刃物48の刃先のラインが、切っ先からあごにわたって弧を描いている場合、刃物を長手方向に往復動させると、図5及び図6に示したように刃物の長手方向位置に対応して、刃先が押し付けられる研磨ベルト46の位置が変化する。このように位置が変化しても、研磨ベルト46が、研磨ベルト46自身の可撓性及び圧縮コイルばね52の弾性に基づいて撓むことにより、研磨ベルト46に対する刃先の接触圧力は一定に保たれる。
【0022】
すなわち、刃先を刃渡り方向に対して移動させる間、研磨ベルト46に対し、刃先が一定の力で押し付けられる。この結果として、この刃物研磨装置に不慣れな初心者であっても、刃先全体を容易に均一に研磨することができる。
また、研磨ベルト46が撓むことにより、刃先の曲率が小さくても、研磨ベルト46から刃先に対して突発的な大きな力が作用することがないので、刃物研磨装置の使用者の安全が確保される。
【0023】
本発明は上記した一実施例に限定されることはなく、種々変形が可能であり、例えば、箱体10の上にベルトユニット22を分離不能に固定してもよい。ただし、一実施形態の刃物研磨装置のように、駆動プーリ38と電動モータ12とが脱着可能に連結されることで、駆動プーリ38、従動プーリ40、研磨ベルト46をまとめて交換することができる。すなわち、ベルトユニット22をまとめて交換することができる。この結果として、この刃物研磨装置によれば、研磨面の粗さが異なる複数の研磨ベルト46によって、刃物を容易に研磨することができる。
【0024】
また、一実施形態の刃物研磨装置では、研磨ベルト46が革製であったけれども、研磨ベルト46の材質は革に限定されない。ただし、革製の研磨ベルト46によれば、刃先の仕上げ研磨が簡単に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施例の刃物研磨装置の斜視図である。
【図2】図1の刃物研磨装置を分解して示す斜視図である。
【図3】図1の刃物研磨装置の断面図である。
【図4】図1の刃物研磨装置の使用方法を説明するための概略図である。
【図5】図1の刃物研磨装置により、刃物の刃先側を研磨しているときの状態を示す部分断面図である。
【図6】図1の刃物研磨装置により、刃物のあご側を研磨しているときの状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0026】
38 駆動プーリ
40 従動プーリ
46 研磨ベルト
48 刃物
50 ガイド部材
52 圧縮コイルばね(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの距離が可変な駆動プーリ及び従動プーリと、前記駆動プーリを回転駆動するためのモータと、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に架け渡され、研磨面を有する無端の研磨ベルトと、前記駆動及び従動プーリを相互に離間する方向に付勢する弾性部材と、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間を延びる前記研磨ベルトの部分の近傍に配置され、前記研磨ベルトの走行方向に対する刃物の傾斜角度を規定するガイド部材とを備える刃物研磨装置において、
前記弾性部材は、前記刃物の刃先が前記研磨ベルトに押し付けられたとき、前記研磨ベルトの撓みを許容する
ことを特徴とする刃物研磨装置。
【請求項2】
前記研磨ベルトは革製であることを特徴とする請求項1に記載の刃物研磨装置。
【請求項3】
前記駆動プーリと前記モータとは脱着可能に連結されることを特徴とする請求項1又は2に記載の刃物研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−194765(P2008−194765A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30572(P2007−30572)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000160201)吉田金属工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】