説明

分光特性取得装置、画像評価装置及び画像形成装置

【課題】安定して精度よく分光特性を取得できる分光特性取得装置を提供する。
【解決手段】被測定物2表面へ光を照射するライン光照射装置3と、被測定物3表面からの拡散反射光のうち、それぞれ異なる領域の光束を通過させる1列に並んだ複数の開口5aを有するピンホールアレイ5と、ピンホールアレイ5の各開口5aを通過した光束を像面に結像させるための第2の結像光学系6と、第2の結像光学系6の像面側に配置され、ピンホールアレイ5の各開口5aを通過した光束を、各開口5aの像の配列方向と非平行に回折させる回折素子7と、第2の結像光学系6の像面に配置され、回折素子7によって回折した各開口5aの回折像の一部を受光して電気信号に変換する複数の画素9が1列に並んだ受光センサ8とを有する分光特性取得装置であって、第2の結像光学系6が正立等倍結像光学系のアレイによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物表面上に形成された画像の分光特性を取得するための分光特性測定装置、該分光特性取得装置を備えた画像評価装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式やインクジェット方式等のフルカラー画像形成装置(プリンタ、複写機など)では、紙などの記録媒体上に印字されるカラー画像に対して高い画像品質が要求されており、色再現性の向上は重要な技術課題の一つである。
【0003】
このため、印字されるカラー画像の色再現性を向上させるために、印字されたカラー画像の全域にわたって分光特性を測定し、この測定情報に基づいて最適な色再現性が得られるように画像形成プロセスを制御する方法が従来より行われている。記録媒体上の印字されたカラー画像の全域(全幅)にわたって分光特性を取得するための装置として、例えば、特許文献1に記載された装置(全幅アレイ分光光度計)が知られている。
【0004】
前記特許文献1には、移動する被測定物表面を発光色の異なる複数の光源で該被測定物表面上の画像の全域(全幅)にわたって連続的に照明して、前記画像からの各反射光を、複数の複数色光検出器を有するラインセンサで受光して画像化し、ラインセンサから出力される複数の画像データに基づいて、被測定面上の画像の各位置での分光特性を取得(推定)する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1のように、異なる複数の光源で被測定物表面上の画像の全域(全幅)にわたって連続的に照明し、被測定面からの拡散反射光をラインセンサの対応する各色光検出器で撮像する構成では、各光源の連続的な照明によって各色光検出器による撮像時に時間的ずれが生じるので、移動する被測定物上の画像に対して異なる位置での測定となる。このため、ラインセンサの対応する各色光検出器で取得した各画像の相対的な位置ずれが発生することによって、この位置ずれに起因した分光特性の取得誤差が生じるため、安定して精度よく分光特性を取得するのが難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、安定して精度よく分光特性を取得することができる分光特性取得装置、画像評価装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために請求項1に記載の分光特性取得装置は、被測定物表面の所定領域へ光を照射する光照射手段と、前記被測定物表面からの拡散反射光のうち、それぞれ異なる領域の光束を通過させる1列に並んだ複数の開口を有するピンホールアレイと、前記ピンホールアレイの前記各開口を通過した光束を像面に結像させるための結像手段と、前記結像手段の前記像面側に配置され、前記ピンホールアレイの前記各開口を通過した光束を、前記各開口の像の配列方向と非平行に回折させる回折手段と、前記結像手段の像面に配置され、前記回折手段によって回折した前記各開口の回折像の一部を受光して電気信号に変換する複数の画素が1列に並んだ受光手段とを有し、前記各画素から出力される画素出力信号に基づいて前記被測定物の複数の位置での分光特性を測定する分光特性取得装置であって、前記結像手段が正立等倍結像光学系のアレイであることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の分光特性取得装置は、前記ピンホールアレイの前記各開口に前記被測定物表面からの拡散反射光を縮小して結像させる縮小集光手段を有し、該縮小集光手段は少なくとも像側テレセントリック特性を有することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の分光特性取得装置は、前記ピンホールアレイの前記各開口に前記被測定物表面の各位置からの拡散反射光の光束をそれぞれ集光させる複数の集光手段よりなる等倍集光手段を有することを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の分光特性取得装置は、前記等倍集光手段と前記ピンホールアレイの前記各開口が、同一の光学部材の入射面と出射面に配置されていることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の分光特性取得装置は、前記等倍集光手段の前記各集光手段の像側開口数が、前記結像手段を構成する前記正立等倍結像光学系単体の物体側開口数の2倍以上であることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の分光特性取得装置は、前記等倍集光手段が、正立等倍結像光学系のアレイであることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の画像評価装置は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の分光特性取得装置と、該分光特性取得装置と被測定物との相対位置を変化させる移動手段と、前記分光特性取得装置からの出力情報に基づいて、被測定物の複数の位置での分光分布又は測色結果を算出する演算手段とを有することを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の画像形成装置は、記録媒体上に画像を形成して出力する画像形成装置において、請求項7に記載の画像評価装置を搭載し、前記画像評価装置により画像形成装置から出力される記録媒体上の画像の評価を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る請求項1に記載の分光特性取得装置によれば、結像手段を正立等倍結像光学系のアレイとしたことにより、ピンホールアレイの複数の開口や受光手段に対する結像手段の光軸直交方向の位置決め精度が大幅に緩和され、かつ比較的コンパクトな光学系が実現可能となるので、より安価に高精度の分光特性取得装置を提供することができる。
【0016】
本発明に係る請求項2に記載の分光特性取得装置によれば、ピンホールアレイの複数の開口に被測定物からの拡散反射光を縮小結像させる縮小集光手段を有し、該縮小集光手段は少なくとも像側テレセントリック特性を有するので、被測定物と分光特性取得装置が一定の距離を持って非接触で測定可能となる。また、ピンホールアレイの複数の開口を通過する全ての光軸が略垂直に回折手段に入射するため、結像手段、回折手段、受光手段における光学系が中央部から周辺部まで殆ど同じ特性となり、周辺部まで安定して高精度の測定を行うことができる。
【0017】
本発明に係る請求項3に記載の分光特性取得装置によれば、被測定物表面の各位置からの拡散反射光の光束が等倍集光手段を介してピンホールアレイの複数の開口を通過するので、複数の開口を通過する光軸を全て平行にすることができる。これにより、従来の分光測色計に用いられる45/0配置が可能となり,より従来の分光測色計に近い分光特性を測定することが可能となる。
【0018】
本発明に係る請求項4に記載の分光特性取得装置によれば、等倍集光手段とピンホールアレイの複数の開口を、同一の光学部材の入射面と出射面に配置することにより,経時変化や振動などによる相対的な位置誤差の変動がなく、長期で安定して高精度に分光特性を測定することが可能となる。
【0019】
本発明に係る請求項5に記載の分光特性取得装置によれば、等倍集光手段の複数の集光手段の像側開口数を、結像手段を構成する正立等倍結像光学系単体の物体側開口数の2倍以上とすることで、ピンホールアレイの複数の開口を通過した光束は全て2本以上の正立等倍結像光学系により1点に結像される。これにより、複数の開口のピッチと正立等倍結像光学系のピッチが異なっていても光学特性は略同じになり、安定して高精度に分光特性を測定することができる。
【0020】
本発明に係る請求項6に記載の分光特性取得装置によれば、等倍集光手段を正立等倍結像光学系のアレイとすることにより、等倍集光手段の像側開口数を大きくすることができ、これを同様の正立等倍結像光学系のアレイである結像手段で結像することにより、ピンホールアレイの開口を通過した光束の殆どを受光手段に結像することが可能となる。これにより、より光利用効率が高くなるので光照射手段が比較的弱くても、安定して高精度に分光特性を測定することができる。
【0021】
本発明に係る請求項7に記載の画像評価装置によれば、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の分光特性取得装置と、該分光特性取得装置と被測定物との相対位置を変化させる移動手段と、分光特性取得装置からの出力情報に基づいて、被測定物の複数の位置での分光分布又は測色結果を算出する演算手段とを有しているので、移動する記録媒体上に形成された画像の複数の位置での分光分布又は色を連続的に高精度に評価することができる。
【0022】
本発明に係る請求項8に記載の画像形成装置によれば、記録媒体上に画像を形成して出力する画像形成装置に請求項7に記載の画像評価装置を搭載し、画像評価装置により画像形成装置から出力される記録媒体上の画像の評価を行うことにより、出力される記録媒体上の画像の分光特性を連続的に高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態1に係る分光特性取得装置の構成を示す概略図。
【図2】複数の開口が形成されたピンホールアレイを示す図。
【図3】回折素子で回折された回折像が、受光センサの長手方向に対して角度を有する傾斜方向に沿って結像された状態を示す図。
【図4】本発明の実施形態2に係る分光特性取得装置の構成を示す概略図。
【図5】本発明の実施形態3に係る分光特性取得装置の構成を示す概略図。
【図6】本発明の実施形態4に係る分光特性取得装置を備えた画像評価装置の構成を示す概略図。
【図7】本発明の実施形態5に係る画像評価装置を備えた画像形成装置の一例としてのプリンタの構成を示す概略図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る分光特性取得装置の構成を示す概略図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る分光特性取得装置1は、一方向(図1では、上から下方向)に移動する表面に画像が形成されたシート状の被測定物2の幅方向(図1の紙面と直交する方向)に沿って光を照射するライン光照射装置3と、ライン光照射装置3から被測定物2へ向けて照射された光の被測定物2に形成された画像表面からの拡散反射光を受光する軸線上に配置された第1の結像光学系4、ピンホールアレイ5に形成された複数の微小な複数の開口5a、第2の結像光学系6、回折素子7及び受光センサ8を備えている。
【0026】
なお、本実施形態における被測定物2は、例えば、電子写真方式のフルカラープリンタ等から出力される表面にカラー画像(トナー像)が印字された紙(用紙)である。
【0027】
ライン光照射装置3は、移動する被測定物2表面の幅方向(図1の紙面と直交する方向)全域を、被測定物2の法線方向に対して45度傾斜した角度方向から光をライン状に照射するように配置されている。ライン光照射装置3から照射される光の波長帯は約400〜700nmの可視光である。ライン光照射装置3としては、例えば、複数の白色LEDを被測定物2表面の幅方向に沿って配置したLEDアレイ照射装置を用いることができる。
【0028】
第1の結像光学系4は、ライン光照射装置3から被測定物2に向けて照射された光の被測定物2上に形成された画像(不図示)からの拡散反射光を縮小させて、拡散反射光の光束をピンホールアレイ5に形成された複数の微小な開口5aに結像させる光学系である。
【0029】
ピンホールアレイ5は、例えば、図2に示すように、黒化処理された金属板に光透過領域である略円形状の複数の開口5aが、被測定物2表面の幅方向全域に対応して一列に配列されている。なお、本実施形態では、ピンホールアレイ5の開口の形状を略円形としたが、これに限らず、楕円形や矩形等でもよい。
【0030】
第2の結像光学系6は、ピンホールアレイ5の各開口5aにそれぞれ結像した拡散反射光の光束を、被測定物2の幅方向全域に沿って設けられた受光センサ8表面に結像させる正立等倍結像光学系のアレイ(例えば、日本板硝子社製のセルフォックレンズアレイ)であり、正立等倍で結像可能な屈折率分散型ロッドレンズが被測定物2の幅方向全域に沿って配列されている。
【0031】
回折素子7は、第2の結像光学系6と受光センサ8の間の光路中に配置された透過型の回折素子であり、ピンホールアレイ5の各開口5aを通過した光束を、ピンホールアレイ5の各開口5aの配列方向に対して非平行に回折させる。即ち、回折素子7の回折軸を被測定物2の幅方向(ピンホールアレイ5の各開口5aの配列方向)に対して、所定の角度(回折軸角度)を有するように傾けて回折素子7が配置されている。これにより、例えば、図3に示すように、回折素子7で回折された回折像a1、a2が、受光センサ8の長手方向に対して角度θ(前記回折軸角度)を有する傾斜方向に沿って結像される。
【0032】
なお、図3において、a0は回折素子7を透過した透過像である0次光、a1、a2は1次光、2次光の回折像であり、図では1次光a2の回折像が、受光センサ8の受光部を構成する複数の画素(受光素子)9のうちの所定数(図では6個)の画素表面に結像している。本実施形態では、図3に示したように、回折素子7で回折された回折像のうち1次光の回折像a1のみが、受光センサ8のライン状に配列された複数の画素9のうちの所定数(図では6個)の画素(斜線で示した画素)上に結像するように、ピンホールアレイ5と受光センサ8の相対位置が調整されている。
【0033】
本実施形態では、1次光の回折像a1を受光センサ8の6個の画素で受光しているが、これに限らず、回折素子7の格子ピッチや受光センサ8との間の間隔等を調整することにより、1次光の回折像a1を受光する画素の数を増やすことができる。1次光の回折像a1を受光する画素の数が増すことによって、各画素からの画素出力信号に基づいて画像の分光特性を測定する際の測定分解能や測定精度を向上させることができる。
【0034】
また、回折像が受光センサ8の受光部を構成する複数の画素9上で重ならないように、ピンホールアレイ5の各開口5aのピッチ等を調整することにより、ライン状に配列された複数の画素9上に複数の1次光の回折像を結像させることができる。これにより、各回折像をそれぞれ受光する複数の画素領域ごとを1ユニットとして、各画素から画素出力信号を前記ユニットごとに分割することで、被測定物2上に形成された画像の複数の位置での分光特性を測定することができる。
【0035】
回折素子7の回折素子として、透過型のブレーズ型回折格子等の所定の次数で回折効率が高くなるものを用いることが好ましい。これにより、光利用効率が向上し、また他の次数の回折光がライン状に配列された複数の画素9に入射することによる測定精度の低下を小さくすることができる。
【0036】
図3に示した、受光センサ8の受光部を構成する複数の正方形状の画素9は、被測定物2の幅方向全域に沿ってライン状に配列されており、各画素は受光した光量に応じた画素出力信号、即ち被測定物2上に形成された画像の分光特性に応じた電気信号を出力する。
【0037】
なお、本実施形態では、受光センサ8の受光部を構成する各画素の形状を正方形としたが、これに限らず、長方形や楕円形等でもよい。
【0038】
次に、前記分光特性取得装置1の動作について説明する。
【0039】
図1に示したように、移動する被測定物(用紙)に対して、ライン光照射装置(LEDアレイ照射装置)3から被測定物2の幅方向全域にわたって45度傾斜した角度方向からライン状の光L1を照射する。そして、被測定物2上に形成された画像(不図示)表面からの拡散反射光L2が第1の結像光学系4に入射される。第1の結像光学系4は、入射された拡散反射光L2を縮小させて、その光束L3をピンホールアレイ5に形成された複数の微小な開口5aに結像させる。
【0040】
そして、ピンホールアレイ5の各開口5aを通過した光束L4は、第2の結像光学系6に入射される。第2の結像光学系6は、入射された光束L4を正立等倍として、その光束L5を受光センサ8の表面に結像させる。
【0041】
この際、図3に示したように、第2の結像光学系6と受光センサ8間の光路上に配置された回折素子7が所定の角度(回折軸角度)に傾けられているので、回折素子7で回折された回折像a1が、受光部を構成する複数の画素(受光素子)9のうちの所定数(図では6個)の画素(斜線で示した画素)上に結像される。
【0042】
そして、回折像a1が結像した各画素から出力される受光した光量に応じた画素出力信号から、被測定物2上に形成された画像の分光特性を取得(測定)することができる。
【0043】
このように、本実施形態に係る分光特性取得装置1は、第2の結像光学系6に正立等倍結像光学系のアレイを用いたことにより、この第2の結像光学系6の光軸に直交する方向での位置誤差に起因する測定精度への影響が大きく緩和される。これにより、製造時の組付け誤差や経時変化等による測定精度の低下が抑えられることで、長期にわたって安定して精度よく分光特性を取得(測定)することが可能となる。
【0044】
また、第2の結像光学系6に正立等倍結像光学系のアレイを用いたことにより、第2の結像光学系6の共役長を数十mmと短くできるので、第2の結像光学系6に一般的な撮像用レンズを用いるのに比べて、ピンホールアレイ5から受光センサ8までの光学系全体がコンパクトになる。これにより、ピンホールアレイ5から受光センサ8までの光学系全体の剛性が高まり、振動等の影響による測定精度の低下を抑えることができる。
【0045】
なお、本実施形態において、第1の結像光学系4は像側テレセントリック特性を有することが望ましい。これにより、被測定物2と分光特性取得装置1が一定の距離を持って非接触で測定可能となる。更に、ピンホールアレイ5の全ての開口5aを通過する光束の出射方向が光軸と略平行になり、ピンホールアレイ5から受光センサ8に至る光学系の中央部と周辺部の光学特性が略同じとなるため、周辺部まで安定して精度よく分光特性を取得(測定)することができる。
【0046】
なお、図1に示した本実施形態では、被測定物2の被測定面法線方向に対して45度方向からライン光照射装置3で照射し、法線方向に測定を行う45/0配置としたが、これに限定されることなく、被測定物2の被測定面法線方向からライン光照射装置3で照射し、45度方向から測定を行う0/45配置としてもよい。
【0047】
〈実施形態2〉
図4は、本発明の実施形態2に係る分光特性取得装置の構成を示す概略図である。なお、実施形態1の分光特性取得装置と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0048】
図4に示すように、本実施形態に係る分光特性取得装置1aは、実施形態1で備えていた第1の結像光学系4の代わりに、ピンホールアレイ5の各開口5aに対応するようにしてレンズアレイ10を配置した構成である。本実施形態では、レンズアレイ10からピンホールアレイ5、結像光学系6a(実施形態1の第2の結像光学系6に相当)、回折素子7、受光センサ8までを、被測定物(用紙)2の被測定面の測定範囲と同じ幅に設定している。他の構成は実施形態1と同様である。
【0049】
本実施形態の分光特性取得装置1aでは、移動する被測定物(用紙)2に対して、ライン光照射装置3から被測定物2の幅方向全域にわたってライン状の光L1を照射すると、被測定物2上に形成された画像(不図示)表面からの法線方向の拡散反射光L2がレンズアレイ10に入射される。レンズアレイ10は、入射された拡散反射光L2を縮小させて、その光束L3をピンホールアレイ5に形成された複数の微小な開口5aに結像させる。
【0050】
そして、ピンホールアレイ5の各開口5aを通過した光束L4は、結像光学系6aに入射される。結像光学系6aは、入射された光束L4を正立等倍として、その光束L5を受光センサ8の表面に結像させる。
【0051】
この際、実施形態1と同様に、図3に示したように、結像光学系6aと受光センサ8間の光路上に配置された回折素子7が所定の角度(回折軸角度)に傾けられているので、回折素子7で回折された回折像a1が、受光部を構成する複数の画素(受光素子)9のうちの所定数(図では6個)の画素(斜線で示した画素)上に結像される。
【0052】
このように、本実施形態では、レンズアレイ10からピンホールアレイ5、結像光学系6a、回折素子7、受光センサ8までを、被測定物(用紙)2の被測定面の測定範囲と同じ幅に設定しているので、被測定物2上に形成された画像(不図示)表面からの法線方向の拡散反射光L2の光束は、その光軸が傾くことなく受光センサ8の画素9に届く。これにより、レンズアレイ10からピンホールアレイ5、結像光学系6a、回折素子7、受光センサ8までの各アレイユニットを、一般的な分光色測計で用いられている45/0配置を取ることが可能となるので、従来の分光色測計に近い測定を行うことができる。
【0053】
なお、図4に示した本実施形態では、被測定物2の被測定面法線方向に対して45度方向からライン光照射装置3で照射し、法線方向に測定を行う45/0配置としたが、これに限定されることなく、被測定物2の被測定面法線方向からライン光照射装置3で照射し、45度方向から測定を行う0/45配置としてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、ピンホールアレイ5に集光する光学系をレンズアレイ10としたことで、被測定物2の被測定面(被測定物2上に形成された画像)からピンホールアレイ5までの距離を数mmから数十mmと短くすることが可能となり、よりコンパクトな分光特性取得装置1aを提供することができる。
【0055】
更に、本実施形態において、レンズアレイ10とピンホールアレイ5を一体的な構成にするようにしてもよい。例えば、1枚のガラス面の入射面側にレンズアレイ10を、出射面側にピンホールアレイ5を構成した素子が好適である。レンズアレイ10の各集光レンズとピンホールアレイ5の各開口の相対位置変動は測定精度に大きな影響を与えるので、レンズアレイ10とピンホールアレイ5を一体的な構成とすることにより、この影響を小さくすることができる。
【0056】
なお、本実施形態において、ピンホールアレイ5の開口ピッチと結像光学系6aのアレイのピッチが違う場合、これらのアレイユニットは厳密には同じ光学特性ではなくなる。そこで、集光レンズとしてのレンズアレイ10の像側開口数を、結像光学系6aの正立等倍像素子単体の物体側開口数の2倍以上とするとよい。
【0057】
これにより、ピンホールアレイ5の各開口を通過した光束は、全て2本以上の結像光学系(正立等倍像素子)6aを介して結像する。よって、レンズアレイ10からピンホールアレイ5、結像光学系6aまでの各アレイユニットの光学特性の差は小さくなり、安定して精度よく分光特性を取得(測定)することができる。
【0058】
〈実施形態3〉
図5は、本発明の実施形態3に係る分光特性取得装置の構成を示す概略図である。なお、実施形態2の分光特性取得装置と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0059】
図5に示すように、本実施形態に係る分光特性取得装置1bは、実施形態2で備えていたレンズアレイ10の代わりに、ピンホールアレイ5の各開口5aへの集光手段として正立等倍像光学系アレイ11を配置した構成である。他の構成は実施形態1と同様である。
【0060】
このように、本実施形態では、ピンホールアレイ5の各開口5aへの集光手段として正立等倍像光学系アレイ11を配置したことで、通常のレンズアレイに比べて集光手段の像側開口数を大きくすることができる。そして、ピンホールアレイ5の各開口5aを通過した光束のほとんどは、結像光学系(正立等倍像素子)6aにより受光センサ8の画素9上に結像することができる。従って、より光利用効率が向上し、比較的弱い光照射でも安定して精度よく分光特性を取得(測定)することができる。
【0061】
〈実施形態4〉
図6は、本発明の実施形態4に係る分光特性取得装置を備えた画像評価装置の構成を示す概略図である。
【0062】
図6に示すように、本実施形態に係る画像評価装置20は、例えば前記実施形態1の分光特性取得装置1と、演算部12を備えている。演算部12は、コンピュータ上のソフトウェアで実現可能である。なお、分光特性取得装置としては、前記実施形態2や3の光特性取得装置1a、1bを用いてもよい。
【0063】
本実施形態に係る画像評価装置20では、先ず分光特性取得装置1で被測定物2上に形成された画像の分光特性を取得(測定)する。
【0064】
即ち、一対の各搬送ローラ21、22の回転駆動によって矢印A方向に一定の速度で移動する被測定物(用紙)2の測定位置を、その法線方向に対して45度傾斜した角度方向から被測定物2の幅方向全域にわたってライン状の光L1を、ライン光照射装置(LEDアレイ照射装置)3から照射する。そして、被測定物2上に形成された画像(不図示)表面からの拡散反射光L2が第1の結像光学系4に入射される。第1の結像光学系4は、入射された拡散反射光L2を縮小させて、その光束L3をピンホールアレイ5に形成された複数の微小な開口5aに結像させる。
【0065】
そして、ピンホールアレイ5の各開口5aを通過した光束L4は、第2の結像光学系6に入射される。第2の結像光学系6は、入射された光束L4を正立等倍として、その光束L5を受光センサ8の表面に結像させる。この際、図3に示したように、第2の結像光学系6と受光センサ8間の光路上に配置された回折素子7が所定の角度に傾けられているので、回折素子7で回折された回折像a1が、受光部を構成する複数の画素(受光素子)9のうちの所定数(図では6個)の画素(斜線で示した画素)上に結像される。
【0066】
そして、回折像a1が結像した各画素から出力される受光した光量に応じた画素出力信号(分光特性取得情報)が、被測定物(用紙)2の移動に伴って複数の測定位置に対応して連続的に演算部12に出力される。
【0067】
そして、演算部12は、入力された複数の測定位置における画素出力信号(分光特性取得情報)に対して、レンズアレイ10からピンホールアレイ5、結像光学系6a、回折素子7、受光センサ8までの各アレイユニットの分光特性情報に切り分け処理した後、それぞれ分光分布又はXYZ表色系の値に変換する。これには一般にマルチバンド画像から分光分布を推定する方法を適用することができる。例えば、「津村徳道、羽石秀昭、三宅洋一、“重回帰分析によるマルチバンド画像からの分光反射率の推定”、光学 第27巻第7号PP.384−391(1998)」に記載されている方法を適用可能である。
【0068】
演算部12は、分光反射率が既知の複数色のサンプルを参照して、入力された複数の測定位置における画素出力信号(分光特性取得情報)から分光反射率分布を推定するための変換行列を、ウィナー推定法などで算出する。そして、算出したこの変換行列を記憶しておくことにより、被測定物(用紙)2の任意の測定位置の分光特性情報から前記変換行列を用いて前記各アレイユニットの分光反射率分布を算出する。
【0069】
その後、物体色の均等色空間、例えばL*a*b*表色系の値などに変換してもよい。また、予め導出しておいた参照データとの色差を評価してもよい。
【0070】
なお、演算部12で得られた評価結果は、例えば表示装置に表示したり、プリンタ等によって用紙に印字出力してユーザに示すことができる。
【0071】
このように、本実施形態に係る画像評価装置20は前記分光特性取得装置1(又は分光特性取得装置1a、1b)を備えているので、長期にわたって安定して精度よく分光特性を取得(測定)することができ、これにより、精度の高い画像評価を行うことができる。
【0072】
〈実施形態5〉
図7は、本発明の実施形態5に係る画像評価装置を備えた画像形成装置の一例としてのプリンタの構成を示す概略図である。
【0073】
図7に示すように、本実施形態に係るプリンタ(画像形成装置)30は、定着装置34の搬送方向下流側に、例えば前記実施形態4の画像評価装置20を備えている。
【0074】
図7に示すように、本実施形態のプリンタ(画像形成装置)30は、4つの画像形成部31a、31b、31c、31d、露光装置32、中間転写ベルト33、定着装置34、給紙カセット35a、35b等を備えている。
【0075】
各画像形成部2a、2b、2c、2dは、感光体ドラム36、帯電器37、現像装置38、1次転写ローラ39、感光体ドラムクリーニング装置40をそれぞれ有している(なお、画像形成部31b、31c、31dにおけるこれらの部材への符号は省略している)。画像形成部31a、31b、31c、31dの各現像装置38は、現像剤としてのY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色のトナーがそれぞれ収容されている。
【0076】
無端ベルト状の中間転写ベルト33は、複数のローラ(駆動ローラ41、2次転写対向ローラ42、第1従動ローラ43、第2従動ローラ44)間に掛け渡されて張架されており、駆動ローラ41の回転駆動により矢印a方向に移動する。各画像形成部31a、31b、31c、31dの1次転写部材としての各1次転写ローラ39は、中間転写ベルト33を間に挟むようにして感光体ドラム36に当接しており、2次転写対向ローラ39は、中間転写ベルト33を間に挟むようにして2次転写ローラ45に当接している。
【0077】
定着装置34は、圧接する定着ローラ46と加圧ローラ47を有している。また、2次転写部(2次転写対向ローラ42と2次転写ローラ45間)と定着装置34の定着ニップ(定着ローラ46と加圧ローラ47間)の間には、2次転写部にてトナー像が転写された転写材を前記定着ニップへ搬送ガイドする無端ベルト状の搬送ベルト50が設置されている。定着装置34の下流側の排出搬送路51近傍には、実施形態4で述べた分光特性取得装置を備えた画像評価装置20が設置されている。
【0078】
このプリンタ(画像形成装置)30のプリント動作(画像形成動作)時においては、画像形成部31a、31b、31c、31dの所定のプロセススピードで回転駆動される各感光体ドラム36表面を各帯電器37によりそれぞれ一様に帯電させる。そして、入力される画像データに応じて露光装置32により露光を行って静電潜像を形成した後に、各現像装置38でそれぞれ現像を行うことにより、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が各感光体ドラム36表面にそれぞれ形成される。
【0079】
そして、画像形成部31a、31b、31c、31dの各感光体ドラム36表面にそれぞれ形成された各色のトナー像は、駆動ローラ41の回転駆動により矢印a方向に移動する中間転写ベルト33表面に、転写バイアスが印加された各1次転写ローラ39により順次重ね合わされるようにして転写(1次転写)される。なお、1次転写後に各感光体ドラム36表面に残留している残トナーは、各感光体ドラムクリーニング装置40により除去される。
【0080】
そして、給紙カセット35a、35bの選択された一方から1枚ずつ給紙される記録媒体としての用紙Pを、搬送路48を通してレジストローラ49まで搬送させて一旦止めておく。そして、所定のタイミングでレジストローラ49を回転させて用紙を2次転写対向ローラ42と2次転写ローラ45間の2次転写部に搬送し、転写バイアスが印加された2次転写ローラ45により中間転写ベルト33表面に担持されているフルカラーのトナー像を用紙の表面に転写(2次転写)する。
【0081】
そして、トナー像が転写された用紙は、移動する搬送ベルト50により定着装置34に搬送され、定着装置34の定着ローラ46と加圧ローラ47間の定着ニップにより加熱・加圧され、用紙表面にフルカラーのトナー画像が定着される。フルカラーのトナー画像が定着された用紙は、複数の排紙ローラ対52a,52b,52cを設けた排出搬送路51を通して排紙トレイ53上に排出される。
【0082】
この際、排出搬送路51近傍に設置した画像評価装置20により、実施形態4で述べたように、排出搬送路51に出力される用紙表面のカラー画像の分光特性を連続的に測定することができる。
【0083】
そして、画像評価装置20で測定された分光特性データと予め導出しておいた参照データとを比較し、この比較結果により測定された分光特性データが所定の基準値を超える場合には、例えば、ユーザに警告音等で報知してプリンタ(画像形成装置)30のプリント動作を停止させる。これにより、所定の品質を満たさない画像が出力されることを最小限に防ぐことができる。
【0084】
また、前記比較結果により測定された分光特性データが所定の基準値を超える場合には、この比較結果をプリンタ(画像形成装置)30の制御部(不図示)に入力することにより、制御部は入力された比較結果に基づいてプリント動作(画像形成動作)を補正制御することで、安定して高品質の画像を出力することが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
1,1a,1b 分光特性取得装置
2 被測定物
3 ライン光照射装置
4 第1の結像光学系
5 ピンホールアレイ
6 第2の結像光学系
6a 結像光学系
7 回折素子
8 受光センサ
9 画素
10 レンズアレイ
11 正立等倍像光学系アレイ
12 演算部
20 画像評価装置
30 プリンタ(画像形成装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2005−315883号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物表面の所定領域へ光を照射する光照射手段と、
前記被測定物表面からの拡散反射光のうち、それぞれ異なる領域の光束を通過させる1列に並んだ複数の開口を有するピンホールアレイと、
前記ピンホールアレイの前記各開口を通過した光束を像面に結像させるための結像手段と、
前記結像手段の前記像面側に配置され、前記ピンホールアレイの前記各開口を通過した光束を、前記各開口の像の配列方向と非平行に回折させる回折手段と、
前記結像手段の像面に配置され、前記回折手段によって回折した前記各開口の回折像の一部を受光して電気信号に変換する複数の画素が1列に並んだ受光手段とを有し、前記各画素から出力される画素出力信号に基づいて前記被測定物の複数の位置での分光特性を測定する分光特性取得装置であって、
前記結像手段が正立等倍結像光学系のアレイであることを特徴とする分光特性取得装置。
【請求項2】
前記ピンホールアレイの前記各開口に前記被測定物表面からの拡散反射光を縮小して結像させる縮小集光手段を有し、該縮小集光手段は少なくとも像側テレセントリック特性を有することを特徴とする請求項1記載の分光特性取得装置。
【請求項3】
前記ピンホールアレイの前記各開口に前記被測定物表面の各位置からの拡散反射光の光束をそれぞれ集光させる複数の集光手段よりなる等倍集光手段を有することを特徴とする請求項1記載の分光特性取得装置。
【請求項4】
前記等倍集光手段と前記ピンホールアレイの前記各開口が、同一の光学部材の入射面と出射面に配置されていることを特徴とする請求項3記載の分光特性取得装置。
【請求項5】
前記等倍集光手段の前記各集光手段の像側開口数が、前記結像手段を構成する前記正立等倍結像光学系単体の物体側開口数の2倍以上であることを特徴とする請求項3又は4記載の分光特性取得装置。
【請求項6】
前記等倍集光手段が、正立等倍結像光学系のアレイであることを特徴とする請求項3記載の分光特性取得装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の分光特性取得装置と、該分光特性取得装置と被測定物との相対位置を変化させる移動手段と、前記分光特性取得装置からの出力情報に基づいて、被測定物の複数の位置での分光分布又は測色結果を算出する演算手段とを有することを特徴とする画像評価装置。
【請求項8】
記録媒体上に画像を形成して出力する画像形成装置において、
請求項7に記載の画像評価装置を搭載し、前記画像評価装置により画像形成装置から出力される記録媒体上の画像の評価を行うことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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