説明

分光蛍光光度計

【課題】反射鏡を用いて試料に照射される励起光の強度増加及び蛍光の収集効率向上を図った蛍光分光光度計において、高感度を維持しつつ真の蛍光スペクトルを取得する。
【解決手段】試料セル3と凹面鏡4、平面鏡5との間にそれぞれ遮光用のシャッタ21、22を挿脱可能とし、シャッタ21、22を挿入して遮光がされた状態での標準試料の蛍光スペクトルFcloseと、シャッタ21、22を取り除いて遮光がされない状態での標準試料の蛍光スペクトルFopenとをそれぞれ取得する。補正関数演算部91では両スペクトルの比Fopen/Fcloseを求め、これを規格化して補正関数Qを算出し補正関数記憶部92に格納する。目的試料の測定時にはシャッタ21、22を用いずに高感度の蛍光スペクトルFunkを取得し、これを補正関数Qで除すことで凹面鏡4、平面鏡5の反射波長特性の影響を除いた真の蛍光スペクトルを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に励起光を照射し該試料から放出される蛍光を高感度で検出する分光蛍光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な分光蛍光光度計は、励起側分光器で取り出した特定波長の励起光を測定対象の試料溶液が収容された試料セルに照射し、試料溶液から放出された蛍光を蛍光側分光器を通して波長分散させて検出器に導入して検出する、という構成を有する。試料セルとしては、通常、石英ガラスなどから成る角型セルが用いられるが、液体クロマトグラフの検出器として用いられる場合にはフローセルが用いられる。
【0003】
こうした分光蛍光光度計において測定感度を向上させるためには、試料セル内の試料溶液に対してできるだけ多くの励起光を効率的に入射させる必要があり、また発生した蛍光をできるだけ効率的に収集して検出器へ導入する必要がある。こうした目的のため、励起光照射軸上及び蛍光検出軸上にそれぞれ反射ミラーを備えた高感度セルホルダが従来知られている(特許文献1参照)。
【0004】
蛍光は角型セル内の励起光焦点位置付近を中心としてその周囲360°のあらゆる方向に放出されるが、高感度セルホルダを使用しない場合には、そのうちの蛍光分光器の入射スリットへ入射する蛍光成分のみが検出値に反映される。それに対し、高感度セルホルダを用いた場合には、一旦試料に照射された励起光が反射ミラーで反射されて再度試料を励起する。また、試料から蛍光分光器と正反対方向に放出された蛍光は反射ミラーで折り返されて蛍光分光器の入射スリットに入射される。これによって、通常のセルホルダよりも2〜3倍の強度の蛍光を検出することができる。
【0005】
高感度セルホルダを用いることで上述したように検出される蛍光の強度は増加するが、反射ミラーを用いているためにその反射波長特性が蛍光スペクトルに含まれることになる。そのため、得られた蛍光スペクトルは必ずしも真の蛍光スペクトルとは言えない。一般的に使用されている反射ミラーは、紫外・可視の波長領域では比較的平坦な反射波長特性を示す。そのため、紫外・可視波長領域の測定を行う場合には反射ミラーの反射波長特性は問題とならないことが多い。
【0006】
これに対し、例えば特許文献2に開示されているように、カーボンナノチューブの分散評価などのために分光蛍光光度計でフォトルミネッセンスを測定する場合、測定対象のフォトルミネッセンスの波長領域は800〜1600[nm]程度の赤外〜近赤外波長領域に及ぶ。こうした波長領域では反射ミラーの反射波長特性の変動が大きくなる傾向にあるため、試料に対して得られた蛍光スペクトルは真の蛍光スペクトルから大きく乖離することがあり得る。また、高感度セルホルダに使用される反射ミラーとして、耐久性を増すために酸化防止膜のコーティングがなされているミラーを使用する場合には、そうしたコーティングの影響で紫外波長領域でも反射波長特性の変動が大きくなり、真の蛍光スペクトルからの乖離が大きくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平7−23242号公報
【特許文献2】特開2009−31114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高感度で且つ試料の真の波長特性に近い蛍光スペクトルを得ることができる分光蛍光光度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明は、試料に励起光を照射する励起光照射手段と、励起光を受けて試料から放出される蛍光を分光・検出する検出手段と、前記励起光照射手段により試料へ照射され該試料を透過した励起光を試料側へ折り返す第1反射鏡と、試料から蛍光の取り出し方向と逆方向に放出された蛍光を試料側へ折り返す第2反射鏡と、を具備する分光蛍光光度計において、
a)前記第1及び第2反射鏡で反射されて試料に戻される励起光及び蛍光の戻りを阻止する遮光手段と、
b)前記検出手段で得られる検出信号に基づいて、同一試料に対し、前記遮光手段により遮光がなされた状態における所定波長範囲の蛍光スペクトルと、前記遮光手段により遮光がなされない状態における所定波長範囲の蛍光スペクトルとをそれぞれ取得する測定実行手段と、
c)前記測定実行手段により得られる遮光の有無に対応した2つの蛍光スペクトルから、前記第1及び第2反射鏡の影響を反映した補正情報を算出して記憶しておく補正情報取得手段と、
d)目的試料に対し前記遮光手段により遮光がなされない状態における所定波長範囲の蛍光スペクトルを取得したときに、前記補正情報を用いてスペクトルを補正する補正処理手段と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
上記遮光手段は、例えば、試料と第1及び第2反射鏡との間のそれぞれの光路中に退避可能に挿入されるシャッタ(遮光板)などとすることができる。また、第1及び第2反射鏡の位置を移動させたりその姿勢を変更したりすることにより、試料から到来する励起光や蛍光がそれら反射鏡に当たらないようにする、或いは、それら反射鏡に当たった励起光や蛍光が試料に戻らないようにする、駆動機構であってもよい。
【0011】
遮光手段により遮光がなされた状態における所定波長範囲の蛍光スペクトルには、第1及び第2反射鏡の影響、つまりそれら反射鏡自体の波長特性は含まれない。一方、遮光手段により遮光がなされない状態における所定波長範囲の蛍光スペクトルには、第1及び第2反射鏡自体の波長特性が含まれる。そこで補正情報取得手段は、遮光の有無に対応した2つの蛍光スペクトルから、第1及び第2反射鏡の波長特性を反映した補正情報を算出し、これを不揮発性メモリなどに記憶しておく。
【0012】
なお、反射鏡自体が交換されたような場合には補正情報を更新する(即ち、測定実行手段による所定試料の測定を実行し、その結果に基づいて新たな補正情報を算出する)必要があるが、そのほかに、反射鏡が汚れてきた場合、反射鏡が劣化してきた場合、又は反射鏡を洗浄した場合などのように、反射鏡の反射波長特性が変化する可能性がある場合にも補正情報の更新を行うことが好ましい。
【0013】
上述したように補正情報には第1及び第2反射鏡の波長特性が反映されているから、目的試料に対し遮光手段により遮光がなされない状態における所定波長範囲の蛍光スペクトルが得られたときに、補正処理手段が補正情報を用いてスペクトルを補正することにより、第1及び第2反射鏡の波長特性の影響を除去したスペクトルを得ることができる。当然、遮光手段による遮光の有無により検出手段で検出される蛍光強度は相違するが、波長特性の差異のみを反映した情報を補正情報としておくことで、反射鏡を用いたときの感度の高さを活かしつつ、反射鏡の波長特性の影響を除去することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る分光蛍光光度計によれば、検出感度を上げるために配設された反射鏡自体の反射波長特性の影響を除去し、試料の真の、又はそれに近い蛍光スペクトルを得ることができる。それにより、高い感度で正確な蛍光スペクトルを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例による分光蛍光光度計の概略構成図。
【図2】本実施例による分光蛍光光度計における測定状態を示す概略図。
【図3】本実施例による分光蛍光光度計における測定手順を示すフローチャート。
【図4】本実施例による分光蛍光光度計で得られる蛍光スペクトルの実測例。
【図5】本実施例による分光蛍光光度計で得られる補正関数の実例。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例である分光蛍光光度計について、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例による分光蛍光光度計の概略構成図、図2はこの実施例による分光蛍光光度計における測定状態を示す概略図である。
【0017】
図1において、光源部1から出射された光は励起側分光器2に導入され、分析制御部10により設定された特定波長の単色光が取り出され、励起光として試料溶液Sが収容された試料セル3に照射される。励起光により励起されて放出された蛍光は蛍光側分光器6に導入され、分析制御部10により設定された特定波長の蛍光が取り出されて検出器7に導入される。検出器7は入射した蛍光の強度に応じた検出信号を出力し、この検出信号がA/D変換器8でデジタル値に変換され、データ処理部9に送られて所定のデータ処理が行われることで蛍光スペクトルが作成される。
【0018】
データ処理部9は本発明に特徴的な機能ブロックとして、補正関数演算部91、補正関数記憶部92、を備える。これらの具体的な機能については後述する。分析制御部10は上述したように、励起光の波長、検出対象の蛍光の波長などを設定する等、測定を実行するために各部の動作を制御する。中央制御部11には操作部12及び表示部13が接続され、操作部12による測定条件の入力設定などの受け付けや、表示部13への測定結果の表示制御などを実行する。なお、中央制御部11、分析制御部10、データ処理部9の全て又は一部の機能は、パーソナルコンピュータにインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを実行することにより達成されるようにすることができる。
【0019】
試料セル3は例えば10mm角の角型セルであり、励起光照射口と反対側には凹面鏡(本発明の第1反射鏡に相当)4が配置され、蛍光側分光器6への蛍光の出射口と反対側には平面鏡(本発明の第2反射鏡に相当)5が配置されている。図2(a)に示すように通常の測定状態では、試料セル3に照射されて該試料セル3を透過した励起光は凹面鏡4に当たって折り返され(且つ集光され)、再び試料セル3に入射する。したがって、凹面鏡4がない場合に比べて試料溶液Sにはより多くの励起光が当たり、それだけ発生する蛍光量が増加する。一方、試料溶液Sから放出された蛍光のうち、蛍光出射口と反対方向に放出された蛍光は平面鏡5に当たって折り返され、もともと蛍光出射口方向へと放出された蛍光とともに出射する。したがって、平面鏡5がない場合に比べて、より多くの蛍光が蛍光側分光器6に導入される。
【0020】
試料セル3と凹面鏡4との間の光路上、及び、試料セル3と平面鏡5との間の光路上には、それぞれシャッタ21、22が挿入自在となっている。シャッタ21、22が挿入された状態(図2(b)参照)では、シャッタは21、22はそれぞれ励起光、蛍光を完全に遮断する。シャッタ21、22自体による反射はないか、或いは無視できる程度に抑えられている。なお、各シャッタ21、22はそれぞれ測定者が設置及び取り外しするものでもよいし、シャッタ開閉機構により測定者の操作に応じて又は後述する測定実行に伴って自動的に開閉するものでもよい。
【0021】
図3に示すフローチャートに従って、本実施例の分光蛍光光度計に特徴的な測定動作について説明する。
【0022】
測定者は測定したい試料(目的試料)と同じ波長領域に蛍光を持つ標準試料を用意し、その標準試料を収容した試料セル3を所定位置にセットする(ステップS1)。そのあと測定者が操作部12から補正関数取得処理開始の指示を行うと(ステップS2)、中央制御部11を介してこの指示を受けた分析制御部10は、まず両シャッタ21、22を閉じた、つまり遮光がなされた状態での測定を実行するように各部を制御する(ステップS3)。なお、前述のようにシャッタ21、22の開閉を測定者が手動で行う構成の場合には、シャッタを閉じる操作を行うことを促す表示を表示部13に行い、それがなされたことが例えば測定者によるキー操作で確認されると、実際に測定を開始するようにすればよい。
【0023】
シャッタ21、22による遮光がなされた状態において、励起側分光器2により励起光の波長が所定波長範囲λEX1〜λEX2で順次設定されるとともに、蛍光側分光器6で1つの励起光波長λEXa,λEXb,…毎に蛍光の波長が所定波長範囲λEM1〜λEM2で走査され、検出器7で得られた検出信号に基づくデータがデータ処理部9に入力される。したがって、データ処理部9では、所定波長範囲に亘る蛍光スペクトルが異なる励起光波長λEXa,λEXb,…毎に得られる。但し、測定に使用する励起光波長、蛍光波長のペアが予め決まっている場合には、その波長ペアのみについて蛍光強度を求めれば十分である。こうして、シャッタ21、22による遮光がなされた状態で、必要な蛍光スペクトルデータFopen(λEX,λEM)が取得される(ステップS4)。
【0024】
次に分析制御部10は、両シャッタ21、22を開いた、つまり遮光がなされていない状態での測定を実行するように各部を制御する(ステップS5)。シャッタ21、22の開閉を測定者が手動で行う構成の場合に シャッタを開ける操作を行うことを促す表示を表示部13に行い、それがなされたことが例えば測定者によるキー操作で確認されると、実際に測定を開始するようにすればよい。シャッタ21、22による遮光がなされない状態で、必要な蛍光スペクトルデータFclose(λEX,λEM)が取得される(ステップS6)。
【0025】
蛍光スペクトルデータFclose(λEX,λEM)取得時には励起光及び蛍光の光路上に凹面鏡4及び平面鏡5が存在しないから、それら鏡4、5の反射波長特性を含まない。一方、蛍光スペクトルデータFopen(λEX,λEM)取得時には励起光及び蛍光の光路上に凹面鏡4及び平面鏡5が存在するから、それら鏡4、5の反射波長特性を含む。補正関数演算部91は蛍光スペクトルデータFclose(λEX,λEM)及び蛍光スペクトルデータFopen(λEX,λEM)から凹面鏡4及び平面鏡5の反射波長特性を反映した補正関数を算出する(ステップS7)。具体的には、Fopen(λEX,λEM)/Fclose(λEX,λEM)を計算し、その関数内の最大値が1になるように規格化して補正関数Q(λEX,λEM)を求める。なお、Fopen(λEX,λEM)/Fclose(λEX,λEM)は同一の励起光波長、蛍光波長における比を求める演算である。上記のように規格化した補正関数を求めることで感度の差異に依存する強度差の影響がなくなり、補正関数Q(λEX,λEM)は基本的に凹面鏡4及び平面鏡5の反射波長特性のみを反映したものとなる。こうして求めた補正関数Q(λEX,λEM)が補正関数記憶部92に保存される。
【0026】
上記のように補正関数Q(λEX,λEM)が補正関数記憶部92に保存されている状態の下で、目的試料の蛍光スペクトルを測定する場合にはステップS8以降のようにする。即ち、目的試料を収容した試料セル3を所定位置にセットし、シャッタ21、22を開放した状態、つまりシャッタ21、22による遮光をしない状態での測定を実行する(ステップS8)。この測定により、蛍光スペクトルデータFunk(λEX,λEM)が取得される(ステップS9)。その後、データ処理部9では補正関数記憶部92から読み出された補正関数を用いて、Funk(λEX,λEM)/Q(λEX,λEM)の演算が実行され、それにより凹面鏡4及び平面鏡5の反射波長特性の影響を除いた、真の蛍光スペクトルが得られる(ステップS10)。
【0027】
例えば凹面鏡4及び平面鏡5の波長毎の反射率、つまりは理論的な(或いは設計上の)反射波長特性が既知であれば、それから理論的な補正関数を求めることは可能である。しかしながら、実際の装置では、使用する鏡の鏡面形状が理想的な状態からズレていたり(歪み等)、鏡を設置する際の位置ズレがあったりするため、多くの場合、上記のような理論的に求まる状態の通りにはならない。その結果、こうした補正関数を用いて、測定された蛍光スペクトルの補正処理を実行しても、真の蛍光スペクトルが求まらない。それに対し、本実施例による蛍光分光光度計では、実際の装置で測定された結果に基づいて凹面鏡4及び平面鏡5の反射波長特性の影響を除去するための補正関数を算出している。このため、この補正関数を用いて、測定された蛍光スペクトルの補正処理を実行することにより、真の蛍光スペクトル又はそれにきわめて近い蛍光スペクトルを得ることができる。
【0028】
図4は本実施例による分光蛍光光度計で得られる蛍光スペクトルの実測例であり、(a)はシャッタ21、22を開放した状態における蛍光スペクトル、(b)はシャッタ21、22を閉鎖した状態における蛍光スペクトルである。これは、界面活性剤を用いて単層カーボンナノチューブ(以下、SWNTと称す)を孤立分散させた水溶液を試料とし、励起光を可視光(波長:644nm)として赤外〜近赤外の波長領域の蛍光スペクトルを測定した結果である。図中、蛍光スペクトル上のそれぞれのピークトップはSWNTの直径分布(カイラリティ)を示している。
【0029】
溶液中に分散している異なる直径のSWNTの分散比率は、ピークトップの高さの比較で評価することができる。図4(a)と(b)とを比較すると、SWNTのカイラリティ(7,5)、(7,6)のピークトップの高さが逆転していることが分かる。これは、図4(a)では鏡4、5の反射波長特性が測定値に含まれてしまっているためであり、この状態ではSWNTの直径分布を定量的に正確に考察することはできない。これに対し、本実施例のように実測結果に基づいて求めた補正関数を適用して蛍光スペクトルを補正することで、図4(b)に示すような形状で、且つ図4(a)に示す程度の強度を有する、高感度な真の蛍光スペクトルを求めることができる。
【0030】
図5(a)は、使用した鏡の反射率(公称値)と蛍光出射側光路中に挿入した励起波長を通過させない可視光カットフィルタ(励起波長の2次光が近赤外波長領域のスペクトルに重ならないようにするためのフィルタ)の透過率とを併せた理論的な補正関数を示す図であり、図5(b)は実測例である図4(a)及び(b)に示す蛍光スペクトルを用いて算出した補正関数と測定に使用した可視光カットフィルタの透過率とを併せた補正関数を示す図である。両者の形状にはかなりの相違があることが分かる。即ち、本実施例の分光蛍光光度計では、図5(b)に示したような実測値に基づいて作成される、実体に即した補正関数を用いることで、蛍光スペクトルを真に補正することができる。
【0031】
上記実施例では、シャッタ21、22を試料セル3と凹面鏡4、平面鏡5との間の光路上に挿入することで、折り返される励起光及び蛍光の遮光を行うようにしていたが、試料セル3を透過した励起光が試料セル3側に戻らず、試料溶液Sから平面鏡5の方向に放出された蛍光が試料セル3側に戻らないような構成であれば、シャッタ21、22に代えて様々な構成を採用し得る。例えば、凹面鏡4及び平面鏡5を起立・倒伏自在の構成としておき、凹面鏡4及び平面鏡5が倒伏状態であるときに励起光及び蛍光がそれら鏡4、5に当たらずに例えばその後方に設置された吸光体に当たって吸収されてしまうようにすればよい。
【0032】
また、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【符号の説明】
【0033】
1…光源部
2…励起側分光器
3…試料セル
4…凹面鏡
5…平面鏡
6…蛍光側分光器
7…検出器
8…A/D変換器
9…データ処理部
91…補正関数演算部
92…補正関数記憶部
10…分析制御部
S…試料溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に励起光を照射する励起光照射手段と、励起光を受けて試料から放出される蛍光を分光・検出する検出手段と、前記励起光照射手段により試料へ照射され該試料を透過した励起光を試料側へ折り返す第1反射鏡と、試料から蛍光の取り出し方向と逆方向に放出された蛍光を試料側へ折り返す第2反射鏡と、を具備する分光蛍光光度計において、
a)前記第1及び第2反射鏡で反射されて試料に戻される励起光及び蛍光の戻りを阻止する遮光手段と、
b)前記検出手段で得られる検出信号に基づいて、同一試料に対し、前記遮光手段により遮光がなされた状態における所定波長範囲の蛍光スペクトルと、前記遮光手段により遮光がなされない状態における所定波長範囲の蛍光スペクトルとをそれぞれ取得する測定実行手段と、
c)前記測定実行手段により得られる遮光の有無に対応した2つの蛍光スペクトルから、前記第1及び第2反射鏡の影響を反映した補正情報を算出して記憶しておく補正情報取得手段と、
d)目的試料に対し前記遮光手段により遮光がなされない状態における所定波長範囲の蛍光スペクトルを取得したときに、前記補正情報を用いてスペクトルを補正する補正処理手段と、
を備えることを特徴とする分光蛍光光度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−249575(P2010−249575A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97180(P2009−97180)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】