説明

分割地図画像を組み合わせた地図データを送信するプロキシサーバ及びプログラム

【課題】端末が無線リンクを用いる携帯端末であっても、複数の分割地図画像を組み合わせた地図データを容易に受信し且つ表示することができるプロキシサーバ等を提供する。
【解決手段】閲覧範囲の閲覧範囲地理座標を含むリクエストを、端末から受信するリクエスト受信部と、閲覧範囲地理座標から、閲覧範囲を表示するために必要な分割地図画像識別子を選定する分割地図画像選定部と、分割地図画像の画像座標及び地理座標から座標系参照情報を算出する座標系参照情報算出部と、座標系参照情報に基づいて、閲覧範囲地理座標から閲覧範囲画像座標を導出する閲覧範囲画像座標導出部と、閲覧範囲画像座標及び座標系参照情報と、分割地図画像識別子とを含むインデックス情報を生成するインデックス情報生成部と、インデックス情報を含むレスポンスを端末へ返信するレスポンス送信部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データを送信するプロキシサーバ及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット等の広域ネットワークには、地図サーバが接続されており、地図サーバは、背景地図や対象物位置等の地図データを蓄積している。端末は、地図サーバから地図データを受信し、ディスプレイに表示することができる。
【0003】
地図サーバは、一定の規則に基づいて地図画像を分割して蓄積している。通常、分割地図画像は、一定の大きさの矩形に分割したものであって、タイル状のメッシュデータである。分割地図画像毎に、識別子(ID)が付与されている。国土交通省は、分割地図画像のメッシュデータにおける識別子(国土数値情報)を開示している(例えば非特許文献1参照)。ここでは、例えば、50mメッシュ、250mメッシュ、250mメッシュ、1kmメッシュ等が規定されている(例えば非特許文献2参照)。
【0004】
端末は、地図サーバから所望の地図画像を受信するために、分割地図画像の識別子を認識しておく必要がある。これに対し、端末が、分割地図画像の識別子を認識することなく、所望の地図画像及びその周辺画像を簡易に地図サーバから取得することができる技術もある(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、XMLに基づく2Dベクタ画像記述言語として、2001年9月W3C勧告として公開されたSVG(Scalable Vector Graphics)がある(例えば非特許文献3参照)。SVGは、画像を、点(ドット)の集合ではなく、線や多角形などの図形(オブジェクト)の集合として扱う。そのために、利用者が見る端末の機種又は性能に応じて、最適な表示が可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−092321号公報
【非特許文献1】国土数値情報、「メッシュデータについて」、[online]、[平成18年3月25日検索]、インターネット<URL:http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/mesh.html>
【非特許文献2】UPLIFT、[online]、[平成18年3月25日検索]、インターネット<URL:http://www.studio-pon.com/jp/products/uplift/mapdata.html>
【非特許文献3】「Scalable Vector Graphics(SVG) 1.1 Specification」、[online]、平成18年3月25日検索、インターネット<URL:http://www.w3.org/TR/SVG11>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術によれば、端末は、所望の位置情報(例えば緯度経度情報)を地図サーバへ送信し、その位置に相当する1枚の分割地図画像を受信する。次に、受信した分割地図画像の大きさに基づいて、利用者が所望する範囲の地図を全て表示するのに必要となる分割地図画像の位置及び枚数を推定する。端末は、推定した位置及び枚数を、改めて地図サーバへ送信し、地図サーバから複数の分割地図画像を受信する。従って、端末は、地図サーバとの間で、何回かやりとりをする必要があった。
【0008】
端末が、無線リンクの通信環境を用いる場合、遅延が大きく、セッションの確立にも時間を要する。このような環境で、複数の分割地図画像をサーバから受信すると、所望する全ての分割地図画像を取得するまでに、かなりの時間を要することとなる。また、端末が、携帯電話機のような端末である場合、画像の処理能力が低い。この場合、分割地図画像の識別子の算出や、分割地図画像の組み立て及び表示をすることは、端末の処理にとって大きい負荷となる。
【0009】
そこで、本発明は、端末が、無線リンクを用いる携帯端末であっても、複数の分割地図画像を組み合わせた地図データを容易に受信し且つ表示することができるプロキシサーバ及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、地図サーバから分割地図画像を受信し、1つの地図データを端末へ送信するプロキシサーバであって、
利用者によって操作された閲覧範囲の閲覧範囲地理座標を含むリクエストを、端末から受信するリクエスト受信手段と、
閲覧範囲地理座標から、閲覧範囲を表示するために必要な1つ以上の分割地図画像の分割地図画像識別子を選定する分割地図画像選定手段と、
分割地図画像の画像座標及び地理座標から座標系参照情報を算出する座標系参照情報算出手段と、
座標系参照情報に基づいて、閲覧範囲地理座標から閲覧範囲画像座標を導出する閲覧範囲画像座標導出手段と、
閲覧範囲画像座標及び座標系参照情報と、分割地図画像識別子とを含むインデックス情報を生成するインデックス情報生成手段と、
インデックス情報を含むレスポンスを端末へ返信するレスポンス送信手段と
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のプロキシサーバにおける他の実施形態によれば、
選定された分割地図画像を取得するために、地図サーバへリクエストを送信するリクエスト送信手段と、
地図サーバから、分割地図画像を受信するレスポンス受信手段と、
生成したインデックス情報と、受信した分割地図画像とを含む1つの地図データを生成する地図データ生成手段と
を更に有し、
レスポンス送信手段は、地図データを含むレスポンスを端末へ返信する
ことも好ましい。
【0012】
本発明のプロキシサーバにおける他の実施形態によれば、
リクエスト受信手段によって受信されるリクエストは、先に送信したレスポンスに基づく先の閲覧範囲地理座標を更に含んでおり、
地図データ生成手段は、先に送信したレスポンスに含められた地図データの分割地図画像を、現に送信しようとしている当該レスポンスに含まないように地図データを生成することも好ましい。
【0013】
本発明のプロキシサーバにおける他の実施形態によれば、
地図データは、SVGによって記述されており、
閲覧範囲地理座標及び地理座標は、緯度経度座標であり、
閲覧範囲画像座標及び画像座標は、SVG画像座標であり、
座標系参照情報は、座標系参照の変換パラメータであり、
閲覧範囲画像座標は、地図データのsvg要素に記述されており、
変換パラメータは、地図データのメタデータに記述されている
ことも好ましい。
【0014】
本発明のプロキシサーバにおける他の実施形態によれば、
変換パラメータは、
【数1】

の一次変換式によって表されることも好ましい。
【0015】
本発明によれば、地図サーバから分割地図画像を受信し、1つの地図データを端末へ送信するプロキシサーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
利用者によって操作された閲覧範囲の閲覧範囲地理座標を含むリクエストを、端末から受信するリクエスト受信手段と、
閲覧範囲地理座標から、閲覧範囲を表示するために必要な1つ以上の分割地図画像の分割地図画像識別子を選定する分割地図画像選定手段と、
分割地図画像の画像座標及び地理座標から座標系参照情報を算出する座標系参照情報算出手段と、
座標系参照情報に基づいて、閲覧範囲地理座標から閲覧範囲画像座標を導出する閲覧範囲画像座標導出手段と、
閲覧範囲画像座標及び座標系参照情報と、分割地図画像識別子とを含むインデックス情報を生成するインデックス情報生成手段と、
インデックス情報を含むレスポンスを端末へ返信するレスポンス送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0016】
本発明のプロキシサーバ用のプログラムにおける他の実施形態によれば、
分割地図画像を取得するために、地図サーバへリクエストを送信するリクエスト送信手段と、
地図サーバから、分割地図画像を受信するレスポンス受信手段と、
生成したインデックス情報と、受信した分割地図画像とを含む1つの地図データを生成する地図データ生成手段と
してコンピュータを更に機能させ、
レスポンス送信手段は、地図データを含むレスポンスを端末へ返信する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0017】
本発明のプロキシサーバ用のプログラムにおける他の実施形態によれば、
リクエスト受信手段によって受信されるリクエストは、先に送信したレスポンスに基づく先の閲覧範囲地理座標を更に含んでおり、
地図データ生成手段は、先に送信したレスポンスに含められた地図データの分割地図画像を、現に送信しようとしている当該レスポンスに含まないように地図データを生成することも好ましい。
【0018】
本発明のプロキシサーバ用のプログラムにおける他の実施形態によれば、
地図データは、SVGによって記述されており、
閲覧範囲地理座標及び地理座標は、緯度経度座標であり、
閲覧範囲画像座標及び画像座標は、SVG画像座標であり、
座標系参照情報は、座標系参照の変換パラメータであり、
閲覧範囲画像座標は、地図データのsvg要素に記述されており、
変換パラメータは、地図データのメタデータに記述されている
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0019】
本発明のプロキシサーバ用のプログラムにおける他の実施形態によれば、
変換パラメータは、
【数2】

の一次変換式によって表されるようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明におけるプロキシサーバ及びプログラムによれば、端末が、無線リンクを用いる携帯端末であっても、複数の分割地図画像を組み合わせた地図データを容易に受信し且つ表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0023】
図1によれば、インターネットのようなネットワーク4に、プロキシサーバ1と、複数の地図サーバ2と、端末3とが接続されている。地図サーバ2は、一定の規則に基づいて分割された地図データの分割地図画像を蓄積する。地図データは、SVGによって記述されているとする。
【0024】
端末3は、地図データのリクエストをプロキシサーバ1へ送信する。プロキシサーバ1は、そのリクエストに応じて、複数の分割地図画像に関するインデックス情報を含むレスポンスを、端末3へ返信する。端末3は、インデックス情報に基づいて、地図サーバから複数の分割地図画像を取得することができる。ここで、レスポンスに、1つ以上の地図サーバ2から受信した複数の分割地図画像を含めることもできる。端末3は、改めて地図サーバにアクセスすることなく、受信した分割地図画像を組み合わせた1つの地図データをディスプレイに表示することができる。
【0025】
図1によれば、プロキシサーバ1は、リクエスト受信部101と、分割地図画像選定部102と、座標系参照情報算出部103と、閲覧範囲画像座標導出部104と、インデックス情報生成部105と、レスポンス送信部106と、リクエスト送信部107と、レスポンス受信部108と、地図データ生成部109とを有する。これら機能部は、プロキシサーバ1に搭載されたコンピュータによって実行されるプログラムによっても実現できる。
【0026】
リクエスト受信部101は、閲覧範囲地理座標を含むリクエストを、端末3から受信する。閲覧範囲地理座標は、利用者によって操作された閲覧範囲を表し、中心点となる緯度経度座標と、その半径距離とによって表される。
【0027】
分割地図画像選定部102は、閲覧範囲地理座標から、閲覧範囲を表示するために必要な1つ以上の分割地図画像の分割地図画像識別子を選定する。選定された複数の分割地図画像を組み合わせた地図データは、閲覧範囲地理座標に基づく地理範囲を内包するようになる。即ち、地図データは、閲覧範囲地理座標に基づく地理範囲と同じ範囲か、又は閲覧範囲地理座標に基づく地理範囲よりもわずかに広い範囲を表す。
【0028】
座標系参照情報算出部103は、分割地図画像の画像座標(SVG画像座標)及び地理座標(緯度経度座標)から座標系参照情報を算出する。座標系参照情報は、CRS(Coordinate Reference System)として定義され、緯度経度座標とSVG画像座標とを対応付ける変換パラメータである。CRSパラメータは、地図データのメタデータに記述される。CRSパラメータa、b、c、d、e及びfは、以下のような一次変換式によって表される。
【数3】

【0029】
SVG画像座標は、x軸(右向きが正)及びy軸(下向きが正)で表され、緯度経度座標は、東経及び北緯で表される。
【0030】
閲覧範囲画像座標導出部104は、CRSパラメータに基づいて、閲覧範囲地理座標から閲覧範囲画像座標を導出する。閲覧範囲画像座標(SVG画像座標)は、左上端(x、y)座標と、縦幅横幅とによって表される。
【0031】
インデックス情報生成部105は、閲覧範囲画像座標及びCRSパラメータと、選定された分割地図画像識別子とを含むインデックス情報を生成する。インデックス情報は、SVGによって記述されており、SVG1.1 Specificationによれば、閲覧範囲画像座標は、svg要素の中のviewBoxとして定義される。CRSパラメータは、crs要素の中のtransformに記述される。分割地図画像識別子は、地図サーバのURL(Uniform Resource Locator)として記述される。
【0032】
レスポンス送信部106は、インデックス情報を含むレスポンスを端末3へ返信する。これにより、端末3は、そのインデックス情報に記述された地図サーバへ、分割地図画像を取得するためのリクエストを送信し、分割地図画像を取得することができる。
【0033】
また、レスポンス送信部106は、地図データ生成部109から通知された複数の分割地図画像自体を、インデックス情報と共に端末3へ送信することも好ましい。これにより、端末3は、分割地図画像を地図サーバから取得する必要がなくなる。
【0034】
リクエスト送信部107は、分割地図画像選定部102によって選定された分割地図画像を取得するためのリクエストを、地図サーバへ送信する。
【0035】
レスポンス受信部108は、地図サーバから分割地図画像を受信し、これら分割地図画像を地図データ生成部109へ通知する。
【0036】
地図データ生成部109は、生成したインデックス情報と、受信した分割地図画像とを含む地図データを生成する。生成された地図データは、レスポンス送信部106へ通知され、端末3へ送信される。
【0037】
図2は、利用者が端末に表示させたい地図データの閲覧範囲画面である。
【0038】
プロキシサーバ1のリクエスト受信部101は、閲覧範囲の閲覧範囲地理座標を含むリクエストを、端末3から受信する。図2によれば、利用者は、「北緯35.69度及び東経139.69度を中心として、半径30km圏内」の地図を表示させたいとする。
【0039】
この地図データは、例えば以下のURLのように表すことができる。
http://host0.domain0/map0.svg?position=+35.69+139.69/&r=30000
"host0.domain0"は、地図サーバのホストを表し、"map0.svg"は、地図データのパスを表す。"position=+35.69+139.69/"は、中心緯度経度情報(ISO6709形式)を表し、"r=30000"は、領域の半径(単位m)を表す。
【0040】
日本付近では、緯度1度あたり120km、経度1度あたり80kmとする。そうすると、図2の表示画面の緯度経度は、以下のようになる。
南端:35.69度−30km/120km=35.44度
西端:139.69度−30km/80km=139.315度
北端:35.69度+30km/120km=35.94度
東端:139.69度+30km/80km=140.065度
左下緯度経度座標(北緯35.44度、東経139.315度)
右上緯度経度座標(北緯35.94度、東経140.065度)
【0041】
図3は、地図サーバが蓄積する地図データの分割地図画像である。
【0042】
図3によれば、非特許文献1によって規定された分割地図画像のメッシュコードが表されている。メッシュコードは、1次メッシュコードと2次メッシュコードとに分けられている。1次メッシュコードは、80km×80kmの正方形であって、6400kmの分割地図画像に対して付与される。また、2次メッシュコードは、1次メッシュコードの分割地図画像を更に8×8に分割したものであって、10km×10kmの正方形の100kmの分割地図画像に対して付与される。図3によれば、10km四方の分割地図画像毎に、1次メッシュコード+2次メッシュコードからなる分割地図画像識別子(svgファイル名)が付与されている。
【0043】
図3によれば、地図データの分割地図画像におけるsvgファイル名は、"aaaabb.svg"の形式で表されている。"aaaa"は、区画の1次メッシュコードを表し、"bb"は、区画の2次メッシュコードを表す。図3の「533964.svg」は、1次メッシュコード「5339」における2次メッシュコード「64」の分割地図画像を表す。
【0044】
図4は、図2の閲覧範囲を、図3の分割地図画像に重畳した状態を表す説明図である。
【0045】
図4によれば、図2の閲覧範囲を、533912.svg、533922.svg、533932.svg、533942.svg、533952.svg、533962.svg、533972.svg、533913.svg、〜、534070.svgの49枚の分割地図画像の組み合わせによって表示することができる。
【0046】
緯度経度座標(「度」「分」「秒」表記)と、メッシュコードが付与された分割地図画像識別子との変換関係の規則の一例について、説明する。
【0047】
1次メッシュコードは、緯度を1.5倍し、「度」の部分を取り出す(2桁)。次に、経度から「度」の部分を取り出して100を引く(2桁)。2次メッシュコードは、1.5倍した緯度の「分」以下の部分を取り出し、秒単位に変換した後、450で割った商を取り出す(1桁)。次に、緯度から「分」以下の部分を取り出し、秒単位に変換した後、450で割った商を取り出す(1桁)。
【0048】
具体的に、図2の左下緯度経度座標(北緯35.44度、東経139.315度)を表示する分割地図画像識別子の選定を説明する。
【0049】
北緯35.44度=度分秒表記:北緯35度26分24秒
東経139.315度=度分秒表記:東経139度18分54秒
【0050】
1次メッシュコードは、緯度(35度26分24秒)を1.5倍し(53度09分36秒)、「度」の部分(53)を取り出す。次に、経度(139度18分54秒)から「度」の部分(139)を取り出して100を引く(39)。これら桁を合わせると、1次メッシュコードは「5339」となる。
【0051】
2次メッシュコードは、1.5倍した緯度(53度09分36秒)の「分」以下の部分(09分36秒)を取り出し、秒単位に変換(576秒)した後、450で割った商(1)を取り出す。次に、緯度(139度18分54秒)から「分」以下の部分(18分54秒)を取り出し、秒単位(1134秒)に変換した後、450で割った商(2)を取り出す。これら桁を合わせると、2次メッシュコードは「12」となる。
【0052】
1次メッシュコード「5339」+2次メッシュコード「12」より、左下分割地図画像ファイル名は「533912.svg」となる。
【0053】
図2によれば、利用者が端末に表示させたい地図データの閲覧範囲画面の半径は30kである。その閲覧範囲画面の四方の一辺は60kmであり、60km×60km=3600kmの地図が表示される必要がある。この地図を確実に表示するためには、一辺に1枚の分割地図画像を追加することによってカバーされる。即ち、図4によれば、70km(7枚)×70km(7枚)=4900km(49枚)の地図を必要とする。
【0054】
左下端:1次メッシュコード「5339」、2次メッシュコード「12」:533912.svg
右下端:1次メッシュコード「5340」、2次メッシュコード「10」:534010.svg
左上端:1次メッシュコード「5339」、2次メッシュコード「72」:533972.svg
右上端:1次メッシュコード「5340」、2次メッシュコード「70」:534070.svg
【0055】
前述では、非特許文献1のメッシュコードによって説明したが、勿論、ファイルの命名規則をメッシュコードとは関係なしに、例えば、その区画の中心の緯度経度の値を組み合わせたものや、辞書を用いて一意に定まるものであってもよい。例えば、中心が、北緯35.69及び東経139.69であるとき、それぞれ100倍した3569と13969を組み合わせて、3569-1369.svgとするものであってもよい。また、例えば、予め全ての区画に通し番号を振っておき、各区画に含まれる緯度経度との間の辞書を作成するものであってもよい。
【0056】
図5は、選定された分割地図画像に基づいて閲覧範囲画像座標を算出する説明図である。
【0057】
選定された分割地図画像を組み合わせた地図データから、次のような画像座標と地理座標と対応関係が導出される。
(0,0)=(北緯:36.0000度、東経139.2500度)
(700,700)=(北緯:35.416667度、東経140.1250度)
【0058】
SVG画像座標と緯度経度座標との対応関係を表す変換パラメータは、以下のような行列式で表される。
【数4】

【0059】
前述の行列式に、SVG画像座標及び緯度経度座標を代入すると、以下のように表される。
0=a・139.2500+c・36.0000+e
0=b・139.2500+d・36.0000+f
700=a・140.1250+c・36.0000+e
0=b・140.1250+d・36.0000+f
0=a・139.2500+c・35.416667+e
700=b・139.2500+d・35.416667+f
700=a・139.697318+c・35.416667+e
700=b・139.697318+d・35.416667+f
【0060】
前述の式を解くと、各変換パラメータは、以下のように表される。
a=800.00
b=0
c=0
d=-1200.00
e=-111400.00
f=43200.00
【0061】
前述の行列式は、変換パラメータを代入すると、以下のように表される。
=800.00・x+0・y+(-111400.00)
=0・x+(-1200.00)・y+43200.00
【0062】
前述の式に、端末から要求された閲覧範囲の左上端の地理座標(緯度経度座標)を代入すると、以下のように表される。
(北緯35.94度、東経139.315度)
=800.00・139.315+0・35.94+(-111400.00)
=0・139.315+(-1200.00)・35.94+43200.00
【0063】
前述の式を解くと、SVG画像座標は、以下のように表される。
(北緯35.94度、東経139.315度)
=52
=72
【0064】
図5によれば、緯度経度座標(北緯35.94度、東経139.315度)は、SVG画像座標(52、72)に対応する。閲覧範囲地理座標に対応する閲覧範囲画像座標は、左上端(52、72)及び縦幅横幅(600、600)になる。
【0065】
図6は、本発明によって生成されたインデックス情報のソースコードである。
【0066】
index.svgにおけるsvg要素の中のviewBox="52 72 600 600"は、閲覧範囲画像座標を表し、SVG画像座標について左上端(52、72)と縦幅横幅(600、600)を意味する。crs要素の中のtransformは、座標系参照の変換パラメータを表す。viewBox="52 72 600 600"によって、「北緯35.69度東経139.69度を中心として,半径30km圏内」に該当する表示領域を指定する。これにより、利用者によって閲覧位置が調整された後の閲覧範囲に従って、分割地図画像を組み合わせた地図データを表示することができる。
【0067】
座標系参照情報CRSは、地図データを記述する最上位の"svg"要素の"metadata"の中に付加される。具体的には、"crs:CoordinateReferenceSystem"を定義するRDFによって記述される。
【0068】
CRSの定義は、OpenGIS勧告(the OpenGIS Recommendation on the Definition of Coordinate Reference System)[OpenGIS Coordinate Systems] に述べられているXML文法に従う。2次元データの変換には、アフィン変換パラメータを用いており、そのパラメータは、"svg:transform"属性として記述される。"svg:transform"属性は、"crs:CoordinateReferenceSystem"要素の中に付加される。
【0069】
"rdf:resource="は、参照される座標系を表している。"svg:tranform="は、SVGに符号化される際に、参照される座標系からどのような変換が適用されたかを表す。matrix()内の6個の数値は、3×3の変換行列a、b、c、d、e、fに対応する。
【数5】

【0070】
crs要素の"transform"には、以下のCRSパラメータが記述される。
svg:transform="matrix(800.00,0,0,-1200.00,-111400.00,43200.00)"
【0071】
更に、分割地図画像を取得するためのアドレスが列挙される。
<image x="0" y="600" width="100" height="100"
xlihk:href="http://server1.domain1/533912.svg"/>
・・・・・・
<image x="600" y="600" width="100" height="100"
xlihk:href="http://server1.domain1/534070.svg"/>
【0072】
図7は、本発明ついてプロキシサーバが端末へ送信する地図データの構成図である。
【0073】
図7によれば、地図データに関する複数のコンテンツが含められている。第1のコンテンツは、端末からのリクエストに含まれる閲覧範囲地理座標に対応するインデックス情報を表す。コード"0x0000"は、閲覧範囲地理座標に対応するインデックス情報であることを意味する。第2〜第50のコンテンツは、インデックス情報によって参照される地図データのファイル名を表す。コード"0xffff"は、分割地図画像であることを意味する。端末は、自ら送信したリクエストに対する応答となる第1のコンテンツと、そのリクエストに関連する第2〜第50のコンテンツとを受信する。
【0074】
図7によれば、分割地図画像を含ませることもできる。分割地図画像自体は、斜線で表されている。これにより、端末は、改めて分割地図画像を地図サーバから取得する必要がなくなる。
【0075】
図8は、2回目のリクエストに対する閲覧範囲を、図4の分割地図画像に重畳した状態を表す説明図である。
【0076】
端末が、最初に「北緯35.69度及び東経139.69度を中心として、半径30km圏内」の地図データをプロキシサーバへ要求したとする。その後、端末が、「北緯35.65度及び東経139.80度を中心として,半径30km圏内」の地図データをプロキシサーバへ要求したとする。2回目のリクエストは、以下のURLによって表される。
http://host0.domain0/map0.svg?position=+35.65+139.80/&r=30000
【0077】
ここで、端末は、533912.svg、533922.svg、533932.svg、533942.svg、533952.svg、533962.svg、533972.svg、533913.svg、〜、534070.svgの49枚の分割地図画像を既に受信している。従って、図8において斜線で表された部分の分割地図画像のみを、端末へ送信すればよい。図8によれば、533903.svg、533904.svg、533905.svg、533906.svg、533907.svg、534000.svg、534001.svg、534011.svg、534021.svg、534031.svg、534041.svg、534051.svg、534061.svgの13枚の分割地図画像のみを端末へ送信すればよい。
【0078】
本発明によれば、プロキシサーバによってリクエストに、先に送信したレスポンスに基づく先の閲覧範囲地理座標を更に含む。これにより、プロキシサーバは、先のレスポンスで送信した分割地図画像と、今回のレスポンスで送信すべき分割地図画像との差分となる分割地図画像のみを送信する。これにより、端末によって既に受信された分割地図画像は、プロキシサーバが送信されない。
【0079】
以上、詳細に説明したように、本発明におけるプロキシサーバ及びプログラムによれば、端末が、無線リンクを用いる携帯端末であっても、複数の分割地図画像を組み合わせた地図データを容易に受信し且つ表示することができる。
【0080】
前述した本発明における種々の実施形態によれば、当業者は、本発明の技術思想及び見地の範囲における種々の変更、修正及び省略を容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明におけるシステム構成図である。
【図2】利用者が端末に表示させたい地図データの閲覧範囲画面である。
【図3】地図サーバが蓄積する地図データの分割地図画像である。
【図4】図2の閲覧範囲を、図3の分割地図画像に重畳した状態を表す説明図である。
【図5】選定された分割地図画像に基づいて閲覧範囲画像座標を算出する説明図である。
【図6】本発明によって生成されたインデックス情報のソースコードである。
【図7】本発明ついてプロキシサーバが端末へ送信する地図データの構成図である。
【図8】2回目のリクエストに対する閲覧範囲を、図4の分割地図画像に重畳した状態を表す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 プロキシサーバ
101 リクエスト受信部
102 分割地図画像選定部
103 座標系参照情報算出部
104 閲覧範囲画像座標導出部
105 インデックス情報生成部
106 レスポンス送信部
107 リクエスト送信部
108 レスポンス受信部
109 地図データ生成部
2 地図サーバ
3 端末
4 ネットワーク、インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図サーバから分割地図画像を受信し、1つの地図データを端末へ送信するプロキシサーバであって、
利用者によって操作された閲覧範囲の閲覧範囲地理座標を含むリクエストを、前記端末から受信するリクエスト受信手段と、
前記閲覧範囲地理座標から、前記閲覧範囲を表示するために必要な1つ以上の前記分割地図画像の分割地図画像識別子を選定する分割地図画像選定手段と、
前記分割地図画像の画像座標及び地理座標から座標系参照情報を算出する座標系参照情報算出手段と、
前記座標系参照情報に基づいて、前記閲覧範囲地理座標から閲覧範囲画像座標を導出する閲覧範囲画像座標導出手段と、
前記閲覧範囲画像座標及び前記座標系参照情報と、前記分割地図画像識別子とを含むインデックス情報を生成するインデックス情報生成手段と、
前記インデックス情報を含むレスポンスを前記端末へ返信するレスポンス送信手段と
を有することを特徴とするプロキシサーバ。
【請求項2】
選定された前記分割地図画像を取得するために、前記地図サーバへリクエストを送信するリクエスト送信手段と、
前記地図サーバから、前記分割地図画像を受信するレスポンス受信手段と、
生成した前記インデックス情報と、受信した前記分割地図画像とを含む1つの地図データを生成する地図データ生成手段と
を更に有し、
前記レスポンス送信手段は、前記地図データを含むレスポンスを前記端末へ返信する
ことを特徴とする請求項1に記載のプロキシサーバ。
【請求項3】
前記リクエスト受信手段によって受信される前記リクエストは、先に送信したレスポンスに基づく先の前記閲覧範囲地理座標を更に含んでおり、
前記地図データ生成手段は、先に送信したレスポンスに含められた地図データの分割地図画像を、現に送信しようとしている当該レスポンスに含まないように前記地図データを生成することを特徴とする請求項2に記載のプロキシサーバ。
【請求項4】
前記地図データは、SVG(Scalable Vector Graphics)によって記述されており、
前記閲覧範囲地理座標及び地理座標は、緯度経度座標であり、
前記閲覧範囲画像座標及び画像座標は、SVG画像座標であり、
前記座標系参照情報は、座標系参照の変換パラメータであり、
前記閲覧範囲画像座標は、前記地図データのsvg要素に記述されており、
前記変換パラメータは、前記地図データのメタデータに記述されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプロキシサーバ。
【請求項5】
前記変換パラメータは、
【数1】

の一次変換式によって表されることを特徴とする請求項4に記載のプロキシサーバ。
【請求項6】
地図サーバから分割地図画像を受信し、1つの地図データを端末へ送信するプロキシサーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
利用者によって操作された閲覧範囲の閲覧範囲地理座標を含むリクエストを、前記端末から受信するリクエスト受信手段と、
前記閲覧範囲地理座標から、前記閲覧範囲を表示するために必要な1つ以上の前記分割地図画像の分割地図画像識別子を選定する分割地図画像選定手段と、
前記分割地図画像の画像座標及び地理座標から座標系参照情報を算出する座標系参照情報算出手段と、
前記座標系参照情報に基づいて、前記閲覧範囲地理座標から閲覧範囲画像座標を導出する閲覧範囲画像座標導出手段と、
前記閲覧範囲画像座標及び前記座標系参照情報と、前記分割地図画像識別子とを含むインデックス情報を生成するインデックス情報生成手段と、
前記インデックス情報を含むレスポンスを前記端末へ返信するレスポンス送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプロキシサーバ用のプログラム。
【請求項7】
前記分割地図画像を取得するために、前記地図サーバへリクエストを送信するリクエスト送信手段と、
前記地図サーバから、前記分割地図画像を受信するレスポンス受信手段と、
生成した前記インデックス情報と、受信した前記分割地図画像とを含む1つの地図データを生成する地図データ生成手段と
してコンピュータを更に機能させ、
前記レスポンス送信手段は、前記地図データを含むレスポンスを前記端末へ返信する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項6に記載のプロキシサーバ用のプログラム。
【請求項8】
前記リクエスト受信手段によって受信される前記リクエストは、先に送信したレスポンスに基づく先の前記閲覧範囲地理座標を更に含んでおり、
前記地図データ生成手段は、先に送信したレスポンスに含められた地図データの分割地図画像を、現に送信しようとしている当該レスポンスに含まないように前記地図データを生成する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項7に記載のプロキシサーバ用のプログラム。
【請求項9】
前記地図データは、SVG(Scalable Vector Graphics)によって記述されており、
前記閲覧範囲地理座標及び地理座標は、緯度経度座標であり、
前記閲覧範囲画像座標及び画像座標は、SVG画像座標であり、
前記座標系参照情報は、座標系参照の変換パラメータであり、
前記閲覧範囲画像座標は、前記地図データのsvg要素に記述されており、
前記変換パラメータは、前記地図データのメタデータに記述されている
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載のプロキシサーバ用のプログラム。
【請求項10】
前記変換パラメータは、
【数2】

の一次変換式によって表されるようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項9に記載のプロキシサーバ用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−264387(P2007−264387A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90642(P2006−90642)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】