説明

分割方立

【課題】一対の方立部材を互いに接続させる際の操作力を低減し、より大きな寸法を有した建具であってもその施工効率を向上させること。
【解決手段】室外側に配置される一対の方立部材20R,20Lの接合部20iには、対応する接合面25,27を互いに近接移動させる間においては方立部材20Rに摺接することで弾性変形し、かつ接合面25,27が互いに当接した場合に弾性復帰して方立部材20Rに係合する弾性係合片32と、方立部材20Lに配設し、弾性係合片32が弾性復帰した場合の変位により方立部材20Rとの間に押圧されて変形することにより一対の方立部材20R,20Lの接合部20oに所望の水密性を呈するタイト材40とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対応する接合面を当接させた状態で一対の方立部材を相互に接続することにより構成される分割方立に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットやホームセンター等の店舗には、人の出入口となる部分にショップフロントやストアフロントと称される建具を設けるようにしたものがある。これらの建具は、外部の歩行者や車内から店舗の内部がよく見えるようにガラス窓を大型化したものである。
【0003】
この種の建具では、施工性の向上を図るため、窓枠の中央部に配置される方立として左右一対の方立部材からなるものを適用するのが一般的である。すなわち、工場において2枚のガラス板の側縁部にそれぞれ方立部材を装着しておけば、施工現場においては方立部材を互いに接続することで2枚のガラス板を組み立てることができ、施工作業を容易化することができるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−138852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の分割方立では、室外側に配置される一対の方立部材の接合部にタイト材を介在させ、雨水が内部に浸入するのを防止するようにしている。例えば、特許文献1に記載のものでは、一方の方立部材にタイト材が取り付けられており、一対の方立部材を互いに接続させた場合に、タイト材に設けられた一対の舌片がそれぞれ他方の方立部材の内表面に圧接され、一対の方立部材の接合部に所望の水密性が確保される。
【0006】
ここで、特許文献1では、タイト材が取り付けられた一方の方立部材の係合片を、他方の方立部材の内表面とL字状を成す係合片との間の空間に挿入し、その後、連窓ネジによって両者を固定するようにしている。一方の方立部材の係合片は、2つの接合部にそれぞれ設けられ、他方の方立部材のL字状を成す係合片も、2つの接合部にそれぞれ設けられている。従って、特許文献1のものにあっては、対応する接合面を近接移動させる際の当初から他方の方立部材の内表面にタイト材の舌片が水密状態で圧接されることになる。
【0007】
分割方立に設けられるタイト材は、その機能上、方立部材の全長に亘る部位に配設せざるを得ない。この結果、一対の方立部材を互いに接続させる際に大きな抵抗力が発生することになり、施工効率を低減させる要因となり得る。特に、分割方立をショップフロントやストアフロントとして適用する場合には、上下方向の寸法が大きくなる傾向にあり、上述の問題が一層顕著となる。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、一対の方立部材を互いに接続させる際の操作力を低減し、より大きな寸法を有した建具であってもその施工効率を向上させることのできる分割方立を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る分割方立は、それぞれが上下方向に沿った2つの接合面を有する左右一対の方立部材を備え、互いに対応する接合面同士を当接させた状態で一対の方立部材を相互に接続することにより構成される分割方立であって、少なくとも室外側に配置される一対の方立部材の接合部には、対応する接合面を互いに近接移動させる間においては他方の方立部材に摺接することで弾性変形し、かつ接合面が互いに当接した場合に弾性復帰して他方の方立部材に係合する弾性係合片と、いずれか一方の方立部材に配設し、弾性係合片が弾性復帰した場合の変位により他方の方立部材との間に押圧されて変形することにより前記一対の方立部材の接合部に所望の水密性を呈するタイト材とを設けたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、弾性係合片が弾性復帰する以前においてはタイト材が他方の方立部材に水密状態で接触することはない。従って、一対の方立部材を互いに接続させる際の操作力を低減することができるようになる。
【0011】
また、本発明に係る分割方立は、一対の方立部材において少なくとも室内側に配置される接合面は、左右いずれかの側面に接合位置を設けたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、接合面が左右いずれかの側面に現れるため、室内側の見付け面に接合面が現れるものに比べて外観上の品質を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る分割方立は、上述した分割方立において、一対の方立部材の接合部において少なくとも一方には、一方の方立部材の内表面から突出し、かつ内表面に対向する部位の端部に係合部を有する弾性舌片と、対応する接合面を当接させた場合に前記弾性舌片の係合部に係合し、接合面が互いに離反する方向への移動を阻止する係止片とを設け、かつ一方の方立部材において弾性舌片に対向する部位には外部から弾性舌片を操作するための操作孔を形成したことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、操作孔から弾性舌片を操作することにより、弾性舌片と係止片との係合状態を解除することができる。従って、例えば接続させるべき方立部材の種類を間違えた場合にも、両者を容易に分解することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る分割方立は、上述した分割方立において、前記弾性舌片及び前記係止片は、前記弾性舌片が一方の方立部材の内表面から離隔する方向に向けて変形した場合に互いの係合状態を解除するものであり、前記操作孔は、内周面にネジ溝を形成したネジ孔であることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、操作孔にネジを螺合させることにより、その先端を弾性舌片に当接させることでこれを弾性変形させ、弾性舌片と係止片とを相互の係合状態が解除した状態に維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弾性係合片が弾性復帰する以前においてはタイト材が他方の方立部材に水密状態で接触することがないため、一対の方立部材を互いに接続する際の操作力を低減することができ、より大きな寸法を有した建具であってもその施工効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である分割方立を適用した建具の横断面図である。
【図2】図2は、図1に示した建具の縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示した建具を概念的に示す正面図である。
【図4】図4は、図1に示した建具に適用する分割方立を示す分解横断面図である。
【図5】図5は、一対の方立部材を互いに接続させる過程を順に示した横断面図である。
【図6】図6は、図1に示した建具の要部を示す斜視図である。
【図7】図7は、図1に示した建具に適用する分割方立を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る分割方立の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1及び図2は、本発明の実施の形態である分割方立を適用した建具を示したものである。ここで例示する建具1は、スーパーマーケットやホームセンター等の店舗において人の出入口となる部分に設けられたショップフロントやストアフロントと称されるものである。以下においては、図3の概念図に示すように、枠体10の内部に4枚の固定ガラス板11を備えた建具1を代表して説明する。
【0021】
枠体10は、左右一対の縦枠部材12の間に分割方立20を配置し、かつ分割方立20とそれぞれの縦枠部材12との間に上枠部材13、無目14及び下枠部材15を架け渡すことによって構成したものである。分割方立20は、一対の縦枠部材12に対してそれぞれ平行となるように配設してあり、一対の無目14は、上枠部材13及び下枠部材15に対してそれぞれ平行となるように配設してある。図1及び図2に示すように、一対の上枠部材13、一対の下枠部材15、一対の縦枠部材12、分割方立20及び一対の無目14には、それぞれの内縁側に位置する部位に面材収容凹部13a,15a,12a,20a,14aが構成してある。面材収容凹部13a,15a,12a,20a,14aは、それぞれバックアップ材とシール材Cを介してガラス板11の四周辺部をそれぞれ固定支持するためのものである。
【0022】
図4及び図5は、上述した建具1に適用する分割方立20を示した横断面図である。分割方立20は、左右一対の方立部材20R,20Lを互いに接続することによって中空の角柱状に構成したものである。分割方立20の左右両側壁には、上述した面材収容凹部20aが形成してある。それぞれの方立部材20R,20Lは、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の押出形材として成形したもので、全長に亘って同一の横断面形状を有するように構成してある。
【0023】
図4中の右側に位置する方立部材(以下、「右方立部材20R」という)は、右側壁部21、外側壁部22及び内側壁部23を有し、図4中の左側に位置する方立部材(以下、「左方立部材20L」という)は、左側壁部24を有している。
【0024】
右方立部材20Rの右側壁部21は、分割方立20の右側壁を構成する平板状部分であり、内外方向の中間部に面材収容凹部20aを有している。外側壁部22及び内側壁部23は、分割方立20の外側壁及び内側壁を構成する平板状部分であり、右側壁部21の前後両端部から互いに平行となるように直角に屈曲して延在している。外側壁部22及び内側壁部23の右側壁部21からの屈曲長さは互いにほぼ同一である。
【0025】
外側壁部22の左側縁部及び内側壁部23の左側縁部には、それぞれ接合面25,26が設けてある。外側壁部22に形成した接合面(以下、区別する場合に「右外側接合面25」という)は、外側壁部22の外表面から内表面に向かうに従って漸次右側壁部21に近接する方向に傾斜した斜面状部分である。内側壁部23に形成した接合面(以下、区別する場合に「右内側接合面26」という)は、内側壁部23において板厚の中間部分から右側壁部21に向けて内表面と平行となるように延在した後、内側壁部23の内表面に向かうに従って漸次右側壁部21に近接する方向に傾斜した段状部分である。
【0026】
左方立部材20Lの左側壁部24は、分割方立20の左側壁を構成する平板状部分であり、右側壁部21の面材収容凹部20aに対応する部位に面材収容凹部20aを有している。左側壁部24の長さは、右側壁部21とほぼ同じである。
【0027】
この左側壁部24には、室外側縁部及び室内側縁部にそれぞれ接合面27,28が設けてある。室外側縁部に形成した接合面(以下、区別する場合に「左外側接合面27」という)は、左側壁部24の外表面から内表面に向かうに従って漸次室内側に近接する方向に傾斜した斜面状部分である。左側壁部24の外表面に対する左外側接合面27の傾斜角度は、右方立部材20Rにおいて外側壁部22の外表面に対する右外側接合面25の傾斜角度との和が90°となるように設定してある。室内側縁部に形成した接合面(以下、区別する場合に「左内側接合面28」という)は、左側壁部24の外表面から内表面に向けて略直角となるように延在した後、内表面側に向かうに従って漸次室外側に傾斜した段状部分である。左内側接合面28の左側壁部24の外表面に対する傾斜角度は、右方立部材20Rにおいて内側壁部23の外表面に対する右内側接合面26の傾斜角度との和が90°となるように設定してある。
【0028】
さらに、分割方立20には、右方立部材20Rに弾性押え片30及び弾性舌片31が形成してある一方、左方立部材20Lに弾性係合片32及び係止片33が形成してある。
【0029】
弾性押え片30は、右方立部材20Rの外側壁部22において右外側接合面25よりも右側壁部21側となる内表面に設けた弾性変形可能な突条体であり、押え基部30a及び押え作用部30bを有している。押え基部30aは、外側壁部22の内表面からほぼ直角となるように突出した部分である。押え作用部30bは、押え基部30aの突出端から内側壁部23に向かうに従って漸次右側壁部21から離隔する方向に傾斜した部分であり、突出端部に押え突起30cを有している。押え突起30cは、押え作用部30bにおいて外側壁部22の内表面に対向する部位に形成した突出部である。
【0030】
右外側接合面25と弾性押え片30との間には、傾斜案内面30d及び係合凹部30eが設けてある。傾斜案内面30dは、右外側接合面25に連続した平面であり、外表面から内表面に向かうに従って漸次右側壁部21に近接する方向に傾斜している。右方立部材20Rにおいて外側壁部22の外表面に対する傾斜案内面30dの傾斜角度は、右外側接合面25の傾斜角度よりも僅かに小さくなるように設定してある。係合凹部30eは、傾斜案内面30dと弾性押え片30の押え基部30aとの間を連続させるように設けた凹状部分である。
【0031】
弾性舌片31は、右方立部材20Rの内側壁部23において右内側接合面26よりも右側壁部21側となる内表面に設けた弾性変形可能な突条体であり、直角突出部31a及び平行延在部31bを有している。直角突出部31aは、内側壁部23の内表面からほぼ直角となるように突出した部分である。平行延在部31bは、直角突出部31aの突出端からほぼ直角となるように屈曲し、右側壁部21から離隔する方向に向けて内側壁部23の内表面とほぼ平行となるように延在した部分である。平行延在部31bは、突出端が内側壁部23の左側縁部よりも右側壁部21に位置するように形成してある。
【0032】
弾性舌片31の平行延在部31bには、突出端部に係合部31cが設けてある。係合部31cは、平行延在部31bから内側壁部23の内表面に向けて略直角に屈曲した部分である。
【0033】
弾性係合片32は、左方立部材20Lにおいて左外側接合面27よりも室内側縁部側となる内表面に設けた弾性変形可能な突条体であり、係合基部32a及び係合作用部32bを有している。係合基部32aは、左側壁部24の内表面から突出した部分である。係合作用部32bは、係合基部32aの突出端から突出するに従って漸次室外側に向けて傾斜した後に屈曲し、左側壁部24とほぼ平行となるように延在している。
【0034】
この弾性係合片32には、左外側接合面27と係合作用部32bとの間にタイト材収容部32cが設けてある。タイト材収容部32cは、横断面が円形のタイト材40を収容するための凹所であり、半円柱状に形成してある。
【0035】
図5の(a)からも明らかなように、係合作用部32bは、先端部が左外側接合面27よりも突出しており、右方立部材20Rの傾斜案内面30dに当接させた場合に左外側接合面27と右外側接合面25とが互いに離隔した状態に維持するように機能する。一方、図5の(e)に示すように、係合作用部32bの先端部を係合凹部30eに配置した場合には、左外側接合面27と右外側接合面25とが互いに当接するのを許容し、かつ傾斜案内面30dの一部をタイト材収容部32cに配置させるように機能する。
【0036】
図4に示すように、係止片33は、左側壁部24における室内側縁部の内表面に設けた弾性変形可能な突条体であり、左側壁部24の内表面から突出するに従って漸次室外側に傾斜した後、左側壁部24とほぼ直角となるように延在している。この係止片33には、突出端部に係止突起33aが設けてある。係止突起33aは、係止片33の突出端部から室外側に向けてほぼ直角に突出して係止面33bを構成した後、右側に向かうに従って漸次室内側に傾斜した突出部である。この係止突起33aは、図5の(e)に示すように、左内側接合面28を右内側接合面26に当接させた場合に係止面33bが弾性舌片31の係合部31cに係合可能となる寸法に形成してある。また、左内側接合面28と右内側接合面26とが互いに当接した状態においては、係止突起33aの先端位置が弾性舌片31における係合部31cの先端位置よりも室内側に位置するようにそれぞれの寸法が設定してある。右方立部材20Rの弾性舌片31は、平行延在部31bの左右方向に沿った寸法が係止片33における係止突起33aよりも十分に大きくなるように形成してある。
【0037】
さらに、分割方立20の右方立部材20Rには、図6及び図7に示すように、内側壁部23に操作孔23aが形成してある。操作孔23aは、弾性舌片31の平行延在部31bにおいて係止突起33aよりも右側に位置する面に対向する位置に設けたネジ孔であり、内側壁部23の上端部及び下端部に形成してある。
【0038】
上記のように構成した分割方立20は、右方立部材20R及び左方立部材20Lが互いに分離した状態で用意してある。この分割方立20を適用して図3に示す建具1を構成する場合には、予め、工場において右方立部材20R、縦枠部材12、上枠部材13、無目14、下枠部材15によって上下2枚のガラス板11を保持した右側パネルを構成するとともに、左方立部材20L、縦枠部材12、上枠部材13、無目14、下枠部材15によって上下2枚のガラス板11を保持した左側パネルを構成する。
【0039】
構成した2枚のパネルを施工現場に搬入し、右方立部材20Rと左方立部材20Lとを互いの接合させた後に面材収容凹部20aを構成する部分を連窓ネジBCによって相互に接続すれば、4枚のガラス板11を備えた建具1を構成することができる。
【0040】
以下、図5を参照しながら、本発明の特徴部分についてさらに詳述する。尚、左方立部材20Lのタイト材収容部32cには、予めその全長に亘る部位にタイト材40が収容させてあるものとする。
【0041】
まず、図5の(a)に示すように、右方立部材20R及び左方立部材20Lの接合当初において、互いに対応する接合面25,26,27,28を近接移動させると、つまり右外側接合面25と左外側接合面27とを互いに近接移動させるとともに、右内側接合面26と左内側接合面28とを互いに近接移動させると、右外側接合面25及び左外側接合面27が当接する以前に弾性係合片32の係合作用部32bが傾斜案内面30dに当接する一方、右内側接合面26及び左内側接合面28が当接する以前に係止片33の係止突起33aに弾性舌片31の係合部31cが当接した状態となる。
【0042】
さらに、この状態から右方立部材20R及び左方立部材20Lを相互に近接する方向に力を加えると、傾斜案内面30dの傾斜作用によって弾性係合片32及び外側壁部22が適宜弾性的に変形するとともに、係止突起33aの傾斜作用によって係止片33及び弾性舌片31が適宜弾性的に変形することにより、図5の(b)→図5の(c)→図5の(d)に示すように、両者20R,20Lが近接移動し、最終的に図5の(e)に示す状態となる。
【0043】
すなわち、分割方立20の室内側に位置する接合部20iでは、右内側接合面26と左内側接合面28とが互いに当接した状態となるとともに、左方立部材20Lに設けた係止片33の係止面33bに弾性舌片31の係合部31cが係合される。これにより、室内側に位置する接合部20iにおいては、右方立部材20R及び左方立部材20Lが相互に離隔する方向への移動が規制され、右内側接合面26と左内側接合面28との当接状態が維持される。しかも、室内側の接合部20iにおいては、右内側接合面26と左内側接合面28とが分割方立20の左側壁部24において稜線に近接した部位で当接することになるため、室内側の見付け面となる内側壁部23に接合面26,28の会合部が現れるものに比べて外観上の品質を向上させることができる。
【0044】
一方、分割方立20の室外側に位置する接合部20oでは、右外側接合面25と左外側接合面27とが互いに当接した状態となるとともに、傾斜案内面30dを通過した弾性係合片32の係合作用部32bが弾性復帰して右方立部材20Rの係合凹部30eに係合され、さらに弾性押え片30の押え作用部30bが弾性係合片32に圧接されることになる。これにより、室外側に位置する接合部20oにおいては、右方立部材20R及び左方立部材20Lが相互に離隔する方向への移動が規制され、右外側接合面25と左外側接合面27との当接状態が維持される。
【0045】
しかも、互いに当接した右外側接合面25及び左外側接合面27よりも分割方立20の内方側に位置する部位においては、タイト材収容部32cに収容させたタイト材40が傾斜案内面30dによって押圧され、これらタイト材収容部32c及び傾斜案内面30dに対してそれぞれ水密状態で圧接されることになる。従って、分割方立20の外表面が室外において雨水に晒されたとしても、分割方立20の内方側に雨水が浸入する虞れはない。
【0046】
ここで、上記のように構成した分割方立20によれば、右外側接合面25と左外側接合面27とが当接する以前においては、弾性係合片32の係合作用部32bが傾斜案内面30dに当接した状態を維持したまま右方立部材20Rと左方立部材20Lとの近接移動が進行する。その後、弾性係合片32の係合作用部32bが弾性復帰して右方立部材20Rの係合凹部30eに係合された際に、その変位によって傾斜案内面30dの一部がタイト材収容部32cに配置され、タイト材40が変形することによってタイト材収容部32c及び傾斜案内面30dとの間に初めて所望の水密性が確保される。従って、右方立部材20Rと左方立部材20Lとを近接移動させる際にタイト材40が大きな抵抗力となることはなく、従前の分割方立に比べて操作力を著しく低減することができるようになる。
【0047】
さらに、上記分割方立20によれば、右方立部材20Rの内側壁部23に操作孔23aが設けてあるため、例えば右方立部材20Rと左方立部材20Lとを間違えて接続してしまった場合にも、両者の接続状態を容易に解除することができる。すなわち、図6及び図7に示すように、操作孔23aにネジBAを螺合させると、その先端が弾性舌片31に当接し、やがて弾性舌片31の平行延在部31bが内側壁部23の内表面から離隔する方向に向けて弾性的に変形するようになる。従って、連窓ネジBCを弛緩させた後に室内側の接合部20iを互いに離反させれば、弾性舌片31と係止片33との係合状態を解除することができ、さらに室外側の接合部20oを互いに離反させることで弾性係合片32と弾性押え片30との係合状態を解除させることができ、右方立部材20Rと左方立部材20Lとが互いに分離した状態となる。
【0048】
尚、上述した実施の形態では、枠体10の内部に4枚の固定ガラス板11を備えた建具1を例示しているが、分割方立を備えた建具であれば、ガラス板が4枚である必要はなく、またその他の枠部材を備えたものであっても適用することが可能である。
【0049】
また、上述した実施の形態では、右方立部材20Rとして右側壁部21、外側壁部22及び内側壁部23を有し、かつ左方立部材20Lとして左側壁部24を有したものを例示しているが、必ずしもこれらの組み合せに限らない。例えば右方立部材が右側壁部及び外側壁部を有し、かつ左方立部材が内側壁部及び左側壁部を有するようにそれぞれを構成しても構わない。
【符号の説明】
【0050】
20 分割方立
20R,20L 方立部材
20i,20o 接合部
21 右側壁部
22 外側壁部
23 内側壁部
23a 操作孔
24 左側壁部
25,26,27,28 接合面
31 弾性舌片
32 弾性係合片
33 係止片
40 タイト材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが上下方向に沿った2つの接合面を有する左右一対の方立部材を備え、互いに対応する接合面同士を当接させた状態で一対の方立部材を相互に接続することにより構成される分割方立であって、
少なくとも室外側に配置される一対の方立部材の接合部には、
対応する接合面を互いに近接移動させる間においては他方の方立部材に摺接することで弾性変形し、かつ接合面が互いに当接した場合に弾性復帰して他方の方立部材に係合する弾性係合片と、
いずれか一方の方立部材に配設し、弾性係合片が弾性復帰した場合の変位により他方の方立部材との間に押圧されて変形することにより前記一対の方立部材の接合部に所望の水密性を呈するタイト材と
を設けたことを特徴とする分割方立。
【請求項2】
一対の方立部材において少なくとも室内側に配置される接合面は、左右いずれかの側面に接合位置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の分割方立。
【請求項3】
一対の方立部材の接合部において少なくとも一方には、
一方の方立部材の内表面から突出し、かつ内表面に対向する部位の端部に係合部を有する弾性舌片と、
対応する接合面を当接させた場合に前記弾性舌片の係合部に係合し、接合面が互いに離反する方向への移動を阻止する係止片と
を設け、かつ一方の方立部材において弾性舌片に対向する部位には外部から弾性舌片を操作するための操作孔を形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の分割方立。
【請求項4】
前記弾性舌片及び前記係止片は、前記弾性舌片が一方の方立部材の内表面から離隔する方向に向けて変形した場合に互いの係合状態を解除するものであり、
前記操作孔は、内周面にネジ溝を形成したネジ孔である
ことを特徴とする請求項3に記載の分割方立。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−265636(P2010−265636A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116636(P2009−116636)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】