説明

分周器

【課題】分周器としての性能を確保しつつ、消費電流を削減できる分周器の提供。
【解決手段】この発明は、分周回路10、30、50を直列接続したものであり、分周器の全体の消費電流を削減するために、分周回路10、30、50を、低電位側の第1グループG1と高電位側の第2グループG2とに分割させている。第1グループG1に属する分周回路10の低電位側の電源端子17は、低電位の電源VSSに接続されている。また、第2グループG2に属する分周回路30、50の高電位側の電源端子36、56は、高電位の電源VDDに接続されている。さらに、分周回路10の高電位側の電源端子16は、分周回路30、50の低電位側の電源端子37、57に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費電流の低減化が求められるアプリケーション、例えば通信機に搭載される分周器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信機などに適用される分周器の一例としては、図6に示すものが知られている(非特許文献1など参照)。
この分周器は、図7に示すように、分周回路1〜3を直列接続(縦続接続)させるとともに、分周回路1の前段側に入力アンプ4を備え、分周回路3の後段側に出力アンプ5を備えている。分周回路1〜3の電源端子は共通接続され、その共通接続部は電源VDD1に接続されている。また、分周回路1〜3のグランド端子は共通接続され、その共通接続部はグランドGNDに接続されている。
【0003】
このような構成の分周器では、入力信号INが入力アンプ4を介して分周回路1に入力されて分周され、分周回路1からは入力信号INよりも低い周波数の信号が出力される。分周回路1の出力信号は分周回路2に入力され、さらに分周回路2で分周された信号は分周回路3に入力され、より低い周波数を持つ出力信号OUTが出力アンプ5を介して出力される。
【0004】
このように、入力信号INは分周回路1〜3により段階的に分周されていくので、後段の分周回路にいくに従い、分周回路で扱う周波数が徐々に低くなっていく。すなわち、分周回路1〜3で扱う信号は、初段の分周回路1が最も周波数が高く、後段の分周回路2、3では順に周波数が低くなる。分周回路1〜3の動作速度は、扱う信号の周波数によって異なるので、高い周波数の信号を扱う分周回路ほど動作速度も速く消費電流が多い。すなわち、最も高い周波数の信号を扱う分周回路1が最も消費電流が多くなる。
【0005】
ところで、図7の分周器において、消費電流を削減しようとすれば、電源電圧を下げる方法が考えられる。
この場合に、分周器の分周動作を十分担保しようとすれば、最も高い周波数の信号を扱う分周回路1の消費電流に合わせて電源電圧を決定することになる。しかし、低い周波数の信号を扱う後段の分周回路2、3の各消費電流は、分周回路1の消費電流に比べて少ないので、分周回路2、3には必要以上の電源電圧が供給されることになる。
【0006】
逆に、低い周波数の信号を扱う後段の分周回路2、3の消費電流に合わせて電源電圧を低くすれば、最も高い周波数を扱う分周回路1には、十分な電源電圧が供給されないことになり、分周器として性能の劣化を招くことになる。これでは、消費電流の削減が分周器の性能の劣化を招くことになるので、低消費電流化は困難である。特に、高周波信号を扱う通信機に適用される分周器において顕著である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】NECのアプリケーションノート「携帯無線機用1GHz入力2,4,8 分周プリスケーラIC mPB1509GVの使い方と応用」(http://www.necel.com/microwave/ja/pdf/aply/P12611JJ2V0AN00.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、分周器としての性能を確保しつつ、消費電流を削減できる分周器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決し本発明の目的を達成するために、各発明は以下のような構成からなる。
第1の発明は、第1の電源端子と第2の電源端子とを有する分周回路をN個直列接続させた分周器であって、前記N個の分周回路を第1のグループと第2のグループとに分割させ、前記第1のグループの分周回路の第1の電源端子が第1の電源に接続され、前記第2のグループの分周回路の第2の電源端子が第2の電源に接続され、前記第1のグループの分周回路の第2の電源端子と前記第2のグループの分周回路の第1の電源端子とが接続されている。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1のグループの分周回路は、初段の分周回路である。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記N個の分周回路の分割は、前記第1のグループの分周回路の合計の消費電流と、前記第2のグループの分周回路の合計の消費電流とが同じになるように行う。
第4の発明は、第1〜第3の発明のうちの何れにおいて、前記N個の分周回路の各々は、マスタ・スレーブ型のフリップフロップを有する。
【0011】
第5の発明は、第1〜第3の発明のうちの何れにおいて、前記N個の分周回路の各々は、差動入力信号が入力される第1及び第2の入力端子と、差動入力信号が分周された差動出力信号が出力される第1及び第2の出力端子と、縦続接続される複数の増幅段と、を備え、前記複数の増幅段の各々は、各バルクが前記第1の入力端子に接続され、各ドレインが抵抗を介して前記第1の電源端子に接続され、各ソースが前記第2の電源端子に接続される第1及び第2のMOSトランジスタと、バルクが前記第2の入力端子に接続され、ゲートが前記第2のMOSトランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第1のMOSトランジスタのドレインに接続され、ソースが前記第2の電源端子に接続される第3のMOSトランジスタと、バルクが前記第2の入力端子に接続され、ゲートが前記第1のMOSトランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第2のMOSトランジスタのドレインに接続され、ソースが前記第2の電源端子に接続される第4のMOSトランジスタと、を有し、前記複数の増幅段の前段と後段とは、前段の第1のMOSトランジスタのドレインが、後段の第2のMOSトランジスタのゲートに接続され、前段の第2のMOSトランジスタのドレインが、後段の第1のMOSトランジスタのゲートに接続され、かつ、前記複数の増幅段の終段と初段とは、終段の第1のMOSトランジスタのドレインが、前記第1の出力端子と初段の第1のMOSトランジスタのゲートとに接続され、終段の第2のMOSトランジスタのドレインが、前記第2の出力端子と初段の第2のMOSトランジスタのゲートとに接続される。
【0012】
第6の発明は、第1〜第5の発明のうちの何れにおいて、前記N個の分周回路は、キャパシタを介して直列接続させた。
第7の発明は、第1〜第6の発明のうちの何れにおいて、前記N個の分周回路の各々は、分周回路の入力端に印加させるバイアスを生成するバイアス回路を含む。
【発明の効果】
【0013】
このような構成の本発明によれば、分周器としての性能を確保しつつ、消費電流を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の分周器の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の具体的な構成例を示す回路図である。
【図3】本発明の分周器の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の分周器の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の分周器の第4実施形態の構成を示すブロック図である。
【図6】分周回路の他の構成例を示す回路図である。
【図7】従来の分周器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(分周器の第1実施形態)
図1は、本発明の分周器の第1実施形態の構成例を示すブロック図である。
この分周器に係る第1実施形態は、図1に示すように、N個(この例では3個)の分周回路10、30、50を直列接続(縦続接続)させ、分周回路10に入力信号INを入力し、分周回路50からは分周された信号を出力信号OUTとして出力する。分周回路10、30、50のそれぞれは、例えば2分周回路で構成し、全体で入力信号INを8分周する機能を有する。
【0016】
分周回路10は、高電位側の電源端子16と低電位側の電源端子17とを有する。同様に、分周回路30は高電位側の電源端子36と低電位側の電源端子37とを有し、分周回路50は高電位側の電源端子56と低電位側の電源端子57とを有する。
また、この第1実施形態では、分周器の全体の消費電流を削減するために、分周回路10、30、50を、低電位側の第1グループG1と高電位側の第2グループG2とに分割させている。この例では、分割回路10に流れる消費電流と分割回路30、50の双方に流れる消費電流とが同じになるように、分周回路10は第1グループG1に、分周回路30、50は第2グループG2に分割させている。
【0017】
そして、第1グループG1に属する分周回路10の低電位側の電源端子17は、低電位の電源VSSに接続されている。この例では、低電位側の電源端子17はグランドに接続されている。
また、第2グループG2に属する分周回路30、50の高電位側の電源端子36、56は、高電位の電源VDDに接続されている。この例では、高電位側の電源端子36、56は共通接続し、その共通接続部は電源VDDに接続されている。
さらに、第1グループG1に属する分周回路10の高電位側の電源端子16は、第2グループG2に属する分周回路30、50の低電位側の電源端子37、57に接続されている。この例では、電源端子16、37、57が共通接続されている。
【0018】
次に、このように構成される第1実施形態の動作例について、図1を参照して説明する。
入力信号INは、分周回路10に入力されて2分周される。この2分周された分周回路10の出力信号は、分周回路30にされて2分周されるので、分周回路30からは4分周された信号が出力される。分周回路30の出力信号は、分周回路50に入力されてさらに2分周されるので、分周回路50からは入力信号INが8分周された信号が出力される。
このとき、分周回路10の入力信号INの周波数が最も高いため、分周回路10の消費電流が最も多くなる。分周回路30、50の入力信号の周波数は、周波数30、50の順に低くなるので、消費電流は周波数30、50の順で少なくなる。
【0019】
ここで、この実施形態では、図1に示すように、分周回路10、30、50を第1のグループG1の分周回路10と第2のグループG2の分周回路30、50に分割し、分周回路10、30、50の電源端子は上記のように接続するようにした。
このため、分周回路10、30、50の各消費電流をId1、Id2、Id3とすると、分周回路10の消費電流Id1は分周回路30、50の消費電流Id2、Id3の和の電流(Id2+Id3)と等しくなり、図1の分周器の全消費電流はId1(=Id2+Id3)となる。このため、従来回路の消費電流(Id1+Id2+Id3)に比べて、大幅に削減できる。
【0020】
(分周器の具体例)
次に、図1の分周器の具体的な構成例について、図2を参照して説明する。
図2に示すように、分周回路10、30、50のそれぞれは、マスタ・スレーブ型のフリップフロップからなり、分周回路10と分周回路30とはキャパシタC1、C2を介して接続され、分周回路30と分周回路50とはキャパシタC3、C4を介して接続されている。
そして、分周回路10は、入力端子14、15と、マスター段のラッチ11と、スレーブ段のラッチ12と、バイアス回路13と、電源端子16、17と、を備えている。ラッチ11の入力端には、差動信号からなる入力信号が入力されるとともに、バイアス回路13が生成する所定のバイアス電圧が供給される。
【0021】
分周回路30は、マスター段のラッチ31と、スレーブ段のラッチ32と、バイアス回路33と、電源端子36、37と、を備えている。ラッチ31の入力端には、分周回路10からの出力信号が入力されるとともに、バイアス回路33が生成する所定のバイアス電圧が供給される。
分周回路50は、マスター段のラッチ51と、スレーブ段のラッチ52と、バイアス回路53と、電源端子56、57と、出力端子58、59と、を備えている。ラッチ51の入力端には、分周回路30からの出力信号が入力されるとともに、バイアス回路53が生成する所定のバイアス電圧が供給される。
【0022】
ここで、分周回路10、30、50の構成は基本的に同じであるので、以下では分周回路10の構成について主に説明する。
次に、分周回路10の各部の構成について、図2を参照して説明する。
マスター段のラッチ11は、差動対を構成するMOSトランジスタQ15、Q16と、差動対を構成するMOSトランジスタQ11、Q12と、差動対を構成するMOSトランジスタQ13、Q14と、負荷抵抗R11、R12と、を備えている。
スレーブ段のラッチ12は、差動対を構成するMOSトランジスタQ25、Q26と、差動対を構成するMOSトランジスタQ21、Q22と、差動対を構成するMOSトランジスタQ23、Q24と、負荷抵抗R21、R22と、を備えている。
バイアス回路13は、MOSトランジスタQ27と、抵抗R23、R24、R25と、を備えている。
【0023】
次に、マスター段のラッチ11の構成について、具体的に説明する。
MOSトランジスタQ15、Q16の各ゲートには、差動信号からなる入力信号INが入力される。MOSトランジスタQ15、Q16の各ソースは共通接続され、その共通接続部が電源端子17に接続されている。MOSトランジスタQ15のドレインは、MOSトランジスタQ11、Q12のソースに接続されている。MOSトランジスタQ16のドレインは、MOSトランジスタQ13、Q14のソースに接続されている。
【0024】
MOSトランジスタQ11、Q13の各ドレインは、負荷抵抗R11を介して電源端子16に接続されている。MOSトランジスタQ12、Q14の各ドレインは、負荷抵抗R12を介して電源端子16に接続されている。
MOSトランジスタQ11、Q12の各ゲートには、ラッチ12の出力信号が入力される。MOSトランジスタQ11のドレインは、MOSトランジスタQ14のゲートと、MOSトランジスタQ22のゲートとに接続されている。MOSトランジスタQ12のドレインは、MOSトランジスタQ13のゲートと、MOSトランジスタQ21のゲートとに接続されている。
【0025】
次に、スレーブ段のラッチ12の構成について、具体的に説明する。
MOSトランジスタQ25、Q26の各ゲートには、差動信号からなる入力信号INが入力される。MOSトランジスタQ25、Q26の各ソースは共通接続され、その共通接続部が電源端子17に接続されている。MOSトランジスタQ25のドレインは、MOSトランジスタQ21、Q22のソースに接続されている。MOSトランジスタQ26のドレインは、MOSトランジスタQ23、Q24のソースに接続されている。
MOSトランジスタQ21、Q23の各ドレインは、負荷抵抗R21を介して電源端子16に接続されている。MOSトランジスタQ22、Q24の各ドレインは、負荷抵抗R22を介して電源端子16に接続されている。
【0026】
MOSトランジスタQ21、Q22の各ゲートには、ラッチ11の出力信号が入力される。MOSトランジスタQ21のドレインは、MOSトランジスタQ24のゲートと、MOSトランジスタQ11のゲートとに接続されている。MOSトランジスタQ22のドレインは、MOSトランジスタQ23のゲートと、MOSトランジスタQ12のゲートとに接続されている。
ラッチ12の出力信号は、キャパシタC1、C2を介して分周回路30のラッチ31のMOSトランジスタQ35、Q36の各ゲートに入力される。
【0027】
次に、バイアス回路13の構成について、具体的に説明する。
MOSトランジスタQ27は、ゲートとドレインが共通接続され、その共通接続部が抵抗R25を介して所定の電源端子に接続されている。また、その共通接続部は、抵抗R24を介してMOSトランジスタQ15、Q26の各ゲートに接続され、かつ、抵抗R23を介してMOSトランジスタQ16、Q25の各ゲートに接続される。さらに、MOSトランジスタQ27のソースは、電源端子17に接続される。
【0028】
なお、図2の例では、分周回路10と分周回路30とはキャパシタC1、C2を介して接続し、分周回路30と分周回路50とはキャパシタC3、C4を介して接続するようにしたが、分周回路10とその前段の回路(図示せず)とをキャパシタを介して接続するようにしても良い。
また、図1および図2の例では、分周回路10、30、50を全て2分周回路の場合について説明したが、各段の分周比は2分周に限定されるものでなく、何分周でも良い。また、図2の例では、分周回路10、30、50は、マスタ・スレーブ型のフリップフロップの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、たとえばDラッチなどであっても良い。
【0029】
(分周器の他の実施形態)
(1)本発明の第2実施形態は、第1実施形態と同様に分周回路10、30、50を、低電位側の第1グループG1と高電位側の第2グループG2に分割させるが、図3に示すように、分周回路10を第2グループG2とし、分周回路30、50を第1グループG1とした。
そして、分周回路10の高電位側の電源端子16は、高電位の電源VDDに接続されている。また、分周回路10の低電位側の電源端子17は、分周回路30、50の高電位側の電源端子36、56と接続されている。さらに、分周回路30、50の低電位側の電源端子37、57は共通接続され、その共通接続部が低電位の電源VSSに接続されている。
【0030】
(2)本発明の第3実施形態は、第1実施形態の構成に分周回路70を追加したものであり、分周回路10、30、50、70を、図4に示すように、低電位側の第1グループG1と高電位側の第2グループG2に分割させた。この例では、分周回路10を第2グループG2とし、分周回路30、50、70を第1グループG1とした。
そして、分周回路10の高電位側の電源端子16は、高電位の電源VDDに接続されている。また、分周回路10の低電位側の電源端子17は、分周回路30、50、70の高電位側の電源端子36、56、76と接続されている。さらに、分周回路30、50、70の低電位側の電源端子37、57、77は共通接続され、その共通接続部が低電位の電源VSSに接続されている。この例では、グランドに接続されている。
【0031】
このような構成の第3実施形態によれば、分周回路10、30、50、70の各消費電流をId1、Id2、Id3、Id4とすると、分周回路10の消費電流Id1は分周回路30、50、70の消費電流Id2、Id3、Id4の和の電流(Id2+Id3+Id4)と等しくなり、全消費電流はId1(=Id2+Id3+Id4)となる。このため、従来回路の消費電流(Id1+Id2+Id3+Id4)に比べて削減できる。
なお、第3実施形態において、分周回路10を第1グループG1とし、分周回路30、50、70を第2グループG2とするようにしても良い。
【0032】
(3)本発明の第4実施形態は、第3実施形態と同様に分周回路10、30、50、70を、低電位側の第1グループG1と高電位側の第2グループG2に分割させるが、図5に示すように、分周回路10、70を第2グループG2とし、分周回路30、50を第1グループG1とした。
そして、分周回路10、70の高電位側の電源端子16、76を共通接続し、その共通接続部が高電位の電源VDDに接続されている。また、分周回路10、70の低電位側の電源端子17、77は共通接続され、その共通接続部が分周回路30、50の高電位側の電源端子36、56に接続されている。さらに、分周回路30、50の低電位側の電源端子37、57とは共通接続され、その共通接続部が低電位の電源VSSに接続されている。
【0033】
このような構成の第4実施形態によれば、分周回路10、30、50、70の各消費電流をId1、Id2、Id3、Id4とすると、分周回路10、70の消費電流は(Id1+Id4)となり、分周回路30、50の消費電流は(Id2+Id3)となり、全消費電流は(Id1+Id4)=(Id2+Id3)となる。このため、従来回路の消費電流(Id1+Id2+Id3+Id4)に比べて、大幅に削減できる。
なお、第4実施形態において、分周回路10、70を第1グループG1とし、分周回路30、50を第2グループG2とするようにしても良い。
【0034】
(分周回路の他の具体例)
次に、本発明の分周器に適用される分周回路の他の具体例について、図6を参照して説明する。
図6に示す分周回路90は、図1などの本発明の分周器に適用される分周回路の他の具体例であって、図2に示す分周回路10、30、50に代わるものである。
この分周回路90は、図2に示す分周回路10、30、50と同様にマスタ・スレーブ型のフリップフロップからなり、マスター段のラッチ91と、スレーブ段のラッチ92とを含んでいる。
【0035】
また、分周回路90は、差動入力信号が入力される入力端子94、95と、差動入力信号が2分周された差動出力信号が出力される出力端子971、981と、差動出力信号が出力される出力端子972、982と、高電位側の電源端子96と、低電位側の電源端子97と、を備えている。
マスター段のラッチ91は、差動対を構成するMOSトランジスタQ91、Q92と、差動対を構成するMOSトランジスタQ93、Q94と、負荷抵抗R91、R92と、MOSトランジスタQ91〜Q94のバルクを電源端子97に接続する高抵抗R95、R96と、を備えている。そして、これらの各要素によって増幅段を形成している。
【0036】
スレーブ段のラッチ92は、差動対を構成するMOSトランジスタQ95、Q96と、差動対を構成するMOSトランジスタQ97、Q98と、負荷抵抗R93、R94と、MOSトランジスタQ95〜Q98のバルクを電源端子97に接続する高抵抗R97、R98と、を備えている。そして、これらの各要素によって増幅段を形成している。
ここで、MOSトランジスタQ91〜Q98は、同一基板上に形成されるとともに、ディープNウェルにより囲まれている。
【0037】
次に、マスター段のラッチ91およびスレーブ段のラッチ92の具体的な構成について、図6を参照して説明する。
MOSトランジスタQ91、Q92、Q97、Q98の各バルクおよびMOSトランジスタQ93、Q94、Q95、Q96の各バルクには、入力端子94、95に供給される差動信号からなる入力信号が入力される。MOSトランジスタQ91〜Q98の各ソースは共通接続され、その共通接続部が電源端子97に接続されている。
MOSトランジスタQ91、Q93の各ドレインは、負荷抵抗R91を介して電源端子96に接続されている。MOSトランジスタQ92、Q94の各ドレインは、負荷抵抗R92を介して電源端子96に接続されている。
【0038】
MOSトランジスタQ95、Q97の各ドレインは、負荷抵抗R93を介して電源端子96に接続されている。MOSトランジスタQ96、Q98の各ドレインは、負荷抵抗R94を介して電源端子96に接続されている。
MOSトランジスタQ91のドレインは、MOSトランジスタQ93のドレイン、MOSトランジスタQ94のゲート、MOSトランジスタQ96のゲート、および出力端子982に接続されている。MOSトランジスタQ92のドレインは、MOSトランジスタQ94のドレイン、MOSトランジスタQ93のゲート、MOSトランジスタQ95のゲート、および出力端子972に接続されている。
【0039】
MOSトランジスタQ95のドレインは、MOSトランジスタQ97のドレイン、MOSトランジスタQ98のゲート、MOSトランジスタQ91のゲート、および出力端子971に接続されている。MOSトランジスタQ96のドレインは、MOSトランジスタQ98のドレイン、MOSトランジスタQ97のゲート、MOSトランジスタQ92のゲート、および出力端子981に接続されている。
【0040】
このような構成の分周回路90によれば、MOSトランジスタQ91、Q92、Q97、Q98の各バルクに同じ信号を入力し、MOSトランジスタQ93、Q94、Q95、Q96の各バルクに先の信号とは180度位相が異なる信号を入力することで、出力端子971、981または出力端子972、982からは2分周された出力信号が取り出すことができる。
【0041】
そして、このようにMOSトランジスタのバルクに入力信号を供給することで、電源端子96と電源端子97との間の電位(VDD−GND間の電位)が低くても分周回路を動作させることができるため、消費電力のさらなる削減が可能となる。
また、上記の分周回路90は、通常2段のMOSトランジスタが必要である分周回路10、30、50に対して、1段のMOSトランジスタで分周回路が実現できるため、全体の消費電力をさらに下げることができる。
【0042】
なお、図6に示す分周回路90では、バイアス回路については省略したが、バイアス回路の構成は、分周器10、30、50の夫々のバイアス回路13、33、53の構成と同じであるので、その説明を省略する。
また、図6示す分周回路90の例では、入力信号を2分周(周波数を1/2)して出力する場合について説明したが、2分周に限定されるものではなく、分周比(分周数)は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の分周器は、消費電流の低減化が要求される各種の通信機器などに適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10、30、50、70、90・・・分周回路
13、33、53・・・バイアス回路
16、36、56、76、96・・・高電位側の電源端子
17、37、57、77、97・・・低電位側の電源端子
C1〜C4・・・キャパシタ
G1・・・第1グループ
G2・・・第2グループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源端子と第2の電源端子とを有する分周回路をN個直列接続させた分周器であって、
前記N個の分周回路を第1のグループと第2のグループとに分割させ、
前記第1のグループの分周回路の第1の電源端子が第1の電源に接続され、
前記第2のグループの分周回路の第2の電源端子が第2の電源に接続され、
前記第1のグループの分周回路の第2の電源端子と前記第2のグループの分周回路の第1の電源端子とが接続されていることを特徴とする分周器。
【請求項2】
前記第1のグループの分周回路は、初段の分周回路であることを特徴とする請求項1に記載の分周器。
【請求項3】
前記N個の分周回路の分割は、前記第1のグループの分周回路の合計の消費電流と、前記第2のグループの分周回路の合計の消費電流とが同じになるように行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分周器。
【請求項4】
前記N個の分周回路の各々は、マスタ・スレーブ型のフリップフロップを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の分周器。
【請求項5】
前記N個の分周回路の各々は、
差動入力信号が入力される第1及び第2の入力端子と、
差動入力信号が分周された差動出力信号が出力される第1及び第2の出力端子と、
縦続接続される複数の増幅段と、
を備え、
前記複数の増幅段の各々は、
各バルクが前記第1の入力端子に接続され、各ドレインが抵抗を介して前記第1の電源端子に接続され、各ソースが前記第2の電源端子に接続される第1及び第2のMOSトランジスタと、
バルクが前記第2の入力端子に接続され、ゲートが前記第2のMOSトランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第1のMOSトランジスタのドレインに接続され、ソースが前記第2の電源端子に接続される第3のMOSトランジスタと、
バルクが前記第2の入力端子に接続され、ゲートが前記第1のMOSトランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第2のMOSトランジスタのドレインに接続され、ソースが前記第2の電源端子に接続される第4のMOSトランジスタと、
を有し、
前記複数の増幅段の前段と後段とは、
前段の第1のMOSトランジスタのドレインが、後段の第2のMOSトランジスタのゲートに接続され、
前段の第2のMOSトランジスタのドレインが、後段の第1のMOSトランジスタのゲートに接続され、
かつ、前記複数の増幅段の終段と初段とは、
終段の第1のMOSトランジスタのドレインが、前記第1の出力端子と初段の第1のMOSトランジスタのゲートとに接続され、
終段の第2のMOSトランジスタのドレインが、前記第2の出力端子と初段の第2のMOSトランジスタのゲートとに接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の分周器。
【請求項6】
前記N個の分周回路は、キャパシタを介して直列接続させたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の分周器。
【請求項7】
前記N個の分周回路の各々は、分周回路の入力端に印加させるバイアスを生成するバイアス回路を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちのいずれかの請求項に記載の分周器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−24199(P2011−24199A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137255(P2010−137255)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)