説明

分子の解析と識別のための方法及び装置

分子の解析と識別を遂行するための装置及び方法を提示している。1つの実施形態では、持ち運びできる分子解析器は、サンプルを受け入れるサンプル入力/出力接続と、サンプルの解析を実質的にリアルタイムで遂行するナノ孔ベース配列決定チップと、解析の結果を出力する出力インターフェースを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年5月12日出願の米国仮特許出願第61/177,553号の恩典を主張し、同仮出願をここに参考文献としてそっくりそのまま援用する。
【0002】
本発明は、概括的には、分子を解析し識別することに関し、厳密には、リアルタイム式で持ち運びできるナノ孔ベース分子解析装置を提供することに関する。
【背景技術】
【0003】
核酸、デオキシリボ核酸(DNA)、リボース核酸(RNA)は、あらゆる有機生命体に存在し、固有の配列を有している。固有配列は、生来的にそれ自体が様々な生物剤に関して最も決定的な識別標示として役立つ。従って、ここでは広義にゲノム解析と呼ばれている核酸、DNA、及び/又はRNAの解析は、有機生命体の研究に非常に有用である。しかしながら、マイクロアレイ、ピロシーケンス法、合成による配列決定、連結反応による配列決定の様な、現在商業的に利用できる核酸配列決定技術は、様々な態様において極めて制限されている。例えば、これらの技術の幾つか又は全ては、リアルタイムの解析を遂行することができず、長時間のサンプル核酸増幅処置及びプロトコル(例えばポリメラーゼ連鎖反応など)を要し、一巡時間が長く(サンプル核酸の小断片を解析するのに約数日乃至数週間かかるのが典型的である)、運用面での費用が高く(中には高価な化学試薬を使用するものもある)、偽陽性誤差率が高く、持ち運びできない。
【0004】
現在の核酸配列決定技術の以上の制限のために、この分野で働く人々、例えば医療専門家、保安職員、科学者などは、局限的に現場でゲノム解析を行うことができない。もっと正確にいえば、現場作業員らは、サンプルを収集して専門の研究所に輸送して解析してもらわねばならず、サンプルはその中に存在する核酸を識別するために数日間に亘って解析されるが、これには数週間かかることさえある。その様な長時間の冗漫なプロセスでは、今日のゲノム解析の必要性を満たすこと、特に英国での口蹄疫の流行やアジアでの重症急性呼吸器症候群(SARS)の集団発生、それからメキシコ及び米国で最近あったH1N1インフルエンザ(一般にはブタインフルエンザとしても知られている)の集団発生の様な流行的集団発生時におけるゲノム解析の必要性を満たすことはほぼ望めない。現在の核酸配列決定技術を使用していては、当局が詳細な情報を得たうえでの迅速な決定を画策することが、不可能とはいえないまでも困難であり、安全及び経済的に甚大な影響を社会に及ぼしかねない。
【0005】
上記の核酸配列決定技術の足りないところを解決するべく、科学者らは、様々なナノ孔ベース配列決定技術を開発した。最近では、オックスフォード大学のHagan Bayley教授と彼の協働者らが、生物ナノ孔実験でα‐ヘモリシンを使った99.8%の精度のロングリードを実証した。確立された検出速度に基づくと、256x256のナノ孔アレイは、概して、ヒトゲノム全体を約30分以内で解析するのに十分である。これは、生物ナノ孔アレイを実現するのに成功できたなら、重大な転機をもたらす勝利となることであろう。しかしながら、生物ナノ孔の1つの欠点は、ナノ孔の形成に使用されるタンパク質及び酵素が比較的短命であり、典型的には数時間乃至数日の寿命であるということである。
【0006】
固相ナノ孔は、その作製に生物試薬が関与していないため、より堅牢な生物ナノ孔代替物である。しかしながら、半導体産業で採用されている従来のリソグラフィー技術は、固相ナノ孔ベース配列決定技術が要求する2nm造形サイズを画定する能力がない。よって、全く異なる製作技法、例えば電子/イオンミリングを使用して、一度に1つずつ順次に複数のナノ孔が彫られている。しかしながら、これらの技法を、256x256アレイを手ごろな費用で且つ妥当な生産時間で生産するべくスケール化することは無理である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/177,553号
【発明の概要】
【0008】
分子の解析と識別を遂行するための装置及び方法を提示している。1つの実施形態では、持ち運びできる分子解析器は、サンプルを受け入れるサンプル入力/出力接続と、サンプルの解析を実質的にリアルタイムで遂行するナノ孔ベース配列決定チップと、解析の結果を出力する出力インターフェースを含んでいる。
【0009】
本発明は添付図面の図に限定ではなしに一例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ナノ孔ベース配列決定器及び関連のナノ孔ベース配列決定生物チップの1つの実施形態を示している。
【図2A】ナノ孔ベース核酸配列決定の検出及び解析中の分子の移送プロセスの1つの実施形態を示している。
【図2B】空の孔の背景信号と比較した核酸配列の対応する例示としての電気的読み出しを示している。
【図3】ナノパントグラフィーでエッチングと堆積の両方に使用されるアインツェルレンズの1つの実施形態の側面図と上面図を示している。
【図4A】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための減法的な方法の1つの実施形態の一工程を示している。
【図4B】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための減法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図4C】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための減法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図4D】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための減法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図4E】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための減法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図5A】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的な方法の1つの実施形態の一工程を示している。
【図5B】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図5C】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図5D】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図5E】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図5F】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図5G】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図5H】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図5I】ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的な方法の前記1つの実施形態の一工程を示している。
【図6】ナノリングの1つの実施形態とナノスリットの1つの実施形態を示している。
【図7】測定室の下キャビティを形成するように貼り合わされたナノ孔アレイウェーハと集積回路ウェーハの1つの実施形態を示している。
【図8】測定室の上キャビティを形成するように貼り合わされた上ウェーハと複合ウェーハの1つの実施形態を示している。
【図9】ナノ孔ベース配列決定器と一体に作動可能な電圧バイアススキーム及び電流感知回路の1つの実施形態を示している。
【図10A】ナノ孔ベース配列決定器の1つの実施形態を示している。
【図10B】複式測定室の1つの実施形態を示している。
【図11】ナノ孔ベース配列決定器の1つの実施形態の、サンプル取込口からマイクロ流体チャネル及びナノ流体チャネルに沿って測定室を通ってサンプル排出口に至るまでの選択された経路に沿った断面図を示している。
【図12】埋め込み電極を備えた3層生物チップ構造の1つの実施形態を示している。
【図13A】ナノ孔検出のためのバイアス及び感知スキームの1つの実施形態を示している。
【図13B】平面電極実装の1つの実施形態を示している。
【図13C】平面電極実装における感知電極とナノスリットの1つの実施形態の上面図を示している。
【図14】ナノ孔ベース配列決定器の1つの実施形態の高水準ハードウェアアーキテクチャを示している。
【図15】ナノ孔ベース配列決定器の1つの実施形態におけるオペレーティングシステム及びゲノム解析ソフトウェアのためのソフトウェア及び関係のあるハードウェア構成要素の高水準アーキテクチャを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に続く説明では、本発明の実施形態が完全に理解されるようにするため、特定の構成要素、デバイス、及び方法などの例の様な、数多くの特定の詳細事項を述べている。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細事項は、本発明の実施形態を実践するうえで採用されなくてもよいことが自明であろう。また他に、本発明の実施形態がいたずらに曖昧になってしまうことを回避するために、よく知られている材料又は方法は詳細に説明していない場合もある。
【0012】
核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、及びポリマーの様な分子や、カーボンナノチューブ、シリコンナノロッド、及び被覆/無被覆の金ナノ粒子の様なナノメートルサイズの粒子の解析と識別を遂行する装置及び方法の様々な実施形態を以下に説明する。以下の考察は、概念を説明するために、分子解析、即ちゲノム解析という1つの例に焦点を当てていることに留意されたい。当業者には、ここに開示されている技法は分子全般の解析及び識別に適用できることが容易に認識されるであろう。1つの実施形態では、ナノ孔ベース配列決定器は、持ち運びできるゲノム解析システムである。図1は、持ち運びできるナノ孔ベース配列決定器110及び関連のナノ孔ベース配列決定生物チップ120の1つの実施形態を示している。検出及び解析の間、被試験サンプル中の分子は、図2Aに示されている様に、溶液の中で電気泳動的に操られてナノスケールの孔(ナノ孔とも呼称する)を通過させられる。幾つかの実施形態では、ナノ孔のサイズは約2nmである。ナノ孔のサイズは、異なった実施形態では変えられてもよいことに留意されたい。例えば、幾つかの実施形態では、ナノ孔は固定の同一サイズである。幾つかの代わりの実施形態では、ナノ孔は異なったサイズである。また、ナノ孔の形状についても同様に、同一実施形態内又は異なった実施形態で、円形、楕円形、長形のスリットなどの様に変えられてもよい。ナノ孔内の限定された空間内の分子の相対サイズ及び移動速度によって、図2Bに表されている異なった振幅と持続期間の電流パルスの様な様々な電気特性が観測され、それらを利用して分子を識別することができる。その結果、被試験分子を破壊することなしに核酸配列の直接読み出しを実現することができる。換言すると、核酸配列を無傷に保ちながら核酸に測定を行うことができる。
【0013】
ナノ孔アレイは幾つかの実施形態では約2nm孔のアレイを含んでいるものであって、その様なナノ孔アレイを根本的な制限なしに大量生産するのに多重製作技法が利用されてもよい。概念を説明するために、幾つかの例示となる製作技法の詳細事項を以下に詳しく論じる。当業者には、他の匹敵する製作技法又はそれらの技法の変型がナノ孔アレイを生産するように改造されてもよいことが理解されるであろう。マイクロ/ナノ流体チャネルのネットワークを組み込むことにより、ナノ孔ベース配列決定器は、かつてない速度で、人的介在なしに、正確にゲノムを解読することができる。
【0014】
ゲノム解析の細かな形状因子や速度の他に、ナノ孔ベース配列決定器の幾つかの実施形態は次の様な追加の利点をもたらす。利点の1つは、生物剤中の何らかの突然変異に対する将来的な裏付けの容易作成である。これは、ナノ孔ベース配列決定が直接読み出し技法であり、それらの結果が被試験ゲノムの予備的知識を必要としないために可能になる。また、ナノ孔ベース配列決定器の幾つかの実施形態は、極限状況及び不浄環境で作動させることができ、というのも、ナノ孔はナノ孔ベース配列決定生物チップ内部に常時包囲された状態であり、解析プロセス全行程中に望まれない異物に曝されることがないため、ナノ孔については滅菌と清潔が常に保証されるからである。
【0015】
手持ち式の持ち運びできるデバイスとして、ナノ孔ベース配列決定器の幾つかの実施形態は、多くの異なった産業及び科学における進歩を加速させることができる。例えば、商業並びに研究や開発において、ナノ孔ベース配列決定器の幾つかの実施形態は、基礎研究、薬理ゲノム学、細菌学的診断、病原体検出、農業、食品産業、バイオ燃料などで有用であろう。更なる例として、ナノ孔ベース配列決定器の幾つかの実施形態は、迅速なDNA科学捜査、上陸地生物スクリーニングなどで有用であろう。
【0016】
ナノ孔ベース配列決定器のためのナノ孔アレイ
1970年代、コールター・カウンターの抵抗性パルス技法に基づき、DeBloisと同僚らは、粒子をそれらのサイズと電気泳動移動性によって特徴付ける場合の単一シングルサブミクロン直径孔の使用を実証することに成功した。その後、Deamerが、遺伝子配列決定のためにナノメートルサイズの孔を使用するという考えを提案した。彼と彼の同僚らは、一本鎖DNA(ssDNA)分子及び一本鎖RNA分子を操って孔形成タンパク質を通過させ、このナノ孔を通るイオン電流に及ぼす効果によってそれら分子を検出できることを実証した。最近実証された速い配列決定速度を前提とすると、ナノ孔ベース配列決定の進展は、迅速なゲノム解析のための大型ナノ孔アレイを作り出すための安価な並行書き込み式製作プロセスがないせいで大きく阻まれる。従来のリソグラフィー法の多くや、電子ミリング、イオンミリング、及びシリコンエッチバックは、リアルタイムゲノム解析にとって必要とされるナノ孔アレイを製造するのに実行可能な手段ではない。最近になってようやく、ヒューストン大学のDonnellyと同僚らは、さほどの制限なしに2nmナノ孔アレイを大量生産することのできるナノパントグラフィーの幾つかの実施形態を開発した。彼らのシミュレーション結果によれば、ナノパントグラフィーには、1nm程の小さいサイズのホール又はドットを画定する能力がある。マイクロ/ナノ流体工学の技術を取り入れることにより、ナノパントグラフィーは、リアルタイム又は近リアルタイムゲノム解析システムを実現する可能性を開く。
【0017】
ナノパントグラフィーでは、幅の広い較正された単一エネルギーイオンビームが、導電性基板、例えばドープされたシリコン(Si)ウェーハ上に製作されたサブミクロン直径の静電レンズ(図3に示されている様に、アインツェルレンズとも呼称される)のアレイに向かわされる。レンズ電極に適切な電圧を印加することにより、レンズに入射する「ビームレット」は、レンズの直径より100倍も小さくなるスポットに合焦される。これは、現在の半導体加工で使用されているフォトリソグラフィー技術で取り扱うことのできる100nmのレンズで1nmの造形を画定することができることを意味する。更に、それぞれのレンズは、各々のナノメートル造形を基板に書き込むため、ナノパントグラフィーは、合焦させた電子ビーム又はイオンビームの順次書き込みとはまったく異なる並行書き込みプロセスである。レンズアレイは基板の一部であるため、本方法は振動や熱膨張によって引き起こされる整列不良を実質的に免れる。ナノメートル造形のサイズは、事前に画定されるレンズのサイズによって制御することができ、それらレンズの直径は、同一であっても異なっていてもよく、即ち、同一又は異なったナノメートル造形のアレイを実質的に同時に加工することができるわけである。Ar+ビームをCl2ガスの存在下に用いて、直径10nm、深さ100nmにエッチングされたSiホールが実証されている。エッチングは、イオンビームレットが合焦するように金属層に電圧を印加したホールだけに起こる。残りのホールは、上金属層に電圧が印加されず、ビームレットは合焦できず、電流密度は小さすぎて何らの感知され得るエッチングも生じさせない。
【0018】
ナノパントグラフィーを用いる場合、ゲノム解析のためのナノ孔を製作するのに減法的方法と加法的方法の2つの方法がある。直接エッチング法の1つの実施形態をまず以下に論じ、それに続けて間接エッチング法の1つの実施形態を論じる。
【0019】
A.ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための減法的方法の1つの実施形態
図4A−図4Eは、ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための減法的方法の1つの実施形態を示している。図4Aを参照すると、窒化物420をSi(100)ウェーハ410上に堆積させている。図4Bでは、下側の導電材料422であるドープされたシリコン又は金属を堆積させ、これに続いて誘電体スペーサ424、そして上金属層426を堆積させている。次いで、多数のアインツェルレンズが画定される。図4Cを参照すると、導電材料422にナノパントグラフィーエッチングが施されてナノメートルホール430が画定されており、それらの孔が窒化物層420のナノ孔エッチングのためのハードマスクとして使用される。図4Dでは、アインツェルレンズが除去されている。次いで、ナノ孔430が保護のために酸化物435で被覆される。最終的に、図4Eでは、測定室の下キャビティ440が、化学的機械的研磨(CMP)、リソグラフィー技法、及び水酸化カリウム(KOH)エッチングによって、シリコン基板410の裏面に形成されている。次いで酸化物層435が除去されるとナノ孔430が露わになる。
【0020】
B.ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的方法の1つの実施形態
図5A−図5Iは、ナノ孔及び/又はナノ孔アレイを製作するための加法的方法の1つの実施形態を示している。図5Aを参照すると、窒化物520をSi(100)ウェーハ510上に堆積させている。図5Bでは、下側の導電材料522であるドープされたシリコン又は金属、誘電体スペーサ524、そして上金属層526を堆積させている。次いで、複数のアインツェルレンズが画定される。図5Cでは、ナノロッド又はナノチューブ成長用のナノシード530を堆積させている。図5Dでは、ナノロッド又はナノチューブ535を成長させている。図5Eでは、酸化物層540を堆積させている。図5Fでは、ナノロッド又はナノチューブ535が除去されている。残った酸化物ナノメートルホール550が、導電層及び窒化物層のためのハードマスクとして使用される。図5Gでは、パターンが、酸化物層540から導電性層522に、次いで窒化物層520に転写されている。図5Hでは、アインツェルレンズが除去され、続いて酸化物層540が除去されている。ナノ孔が保護のために酸化物552で被覆される。最終的に、図5Iでは、測定室の下キャビティ560が、CMP、リソグラフィー技法、及びKOHエッチングによって、シリコン基板510の裏面に形成されている。次いで酸化物層552が除去されるとナノ孔565が露わになる。
【0021】
図6は、本発明の幾つかの実施形態で使用できるナノスリットの1つの実施形態とナノリングの1つの実施形態を示している。細長いナノサイズのナノスリット610とナノリング620は、アインツェルレンズを用いた減法的方法の幾つかの実施形態(上述)によって画定することができ、図6に描かれている様に、それぞれに矩形と半円形の形状の開口部が得られる。当業者には、ここになされている開示に基づき、如何なる二次元形状であろうと同様のパターニング技法を使用して画定することができることが自明であろう。幾つかの実施形態では、プロセス全行程中、ウェーハステージは実質的に静止であるため、この非円形パターニング法は、ウェーハステージを傾ける従来式の方法が直面している主要な技術的課題のうち少なくとも3つを解消する。第1に、ウェーハステージを傾ける角度及び速度の精密制御の必要性がない。第2に、同法は、ウェーハを入射イオンビームに対して傾けることによって導入されてしまう線拡がり効果及び線幅不均一を概ね克服している。第3に、同法は、異なったパターン形状及びパターンサイズをほぼ同時に画定させることができる。
【0022】
ナノ孔ベース配列決定生物チップ
減法的方法又は加法的方法の何れかを用いてナノ孔が形成された後、ナノ孔アレイウェーハ750は、図7に示されている様に、事前に製作されている集積回路720及びマイクロ流体チャネル730の上に貼り合わされることになる。これによって、測定室の下キャビティの形成が完了する。核酸サンプルは、所望に応じ、下ウェーハ側のマイクロ流体チャネルを通して生物チップから抽出される。
【0023】
同様に、幾つかの実施形態では、集積回路820及び/又は流体チャネル830と一体の上ウェーハ810を、貼り合わされたナノ孔ウェーハ840及び下ウェーハ850を含んでいる複合ウェーハの上へ貼り合わせることによって、測定室の上キャビティが形成される。この3層ウェーハ構造800が図8に示されている。電圧バイアススキーム910及び関連の電流感知回路920の1つの実施形態が図9に描かれている。デッドボリュームを最小限にした様な適切な流体I/O接続を備えて、次に3層複合ウェーハ800は、ワイヤーボンディング又はベルグリッドワイヤーボンディングのための支持枠に搭載される。典型的なパッケージ化技法、例えばエポキシカプセル封入やセラミックパッケージ化を使用して、アッセンブリ全体を包囲し、ナノ孔ベース配列決定生物チップを形成することができる。代わりに、感知及びバイアスに関連する回路の様な集積回路は、ナノ孔ウェーハ840上に製作され、それが、集積回路を載せた別のウェーハではなくてブランク基板に貼り合わされてもよい。
【0024】
また、幾つかの実施形態では、図10A及び図11に示されている様に、上ウェーハ810側に埋め込まれている造形が更にもう2つあり、即ちマイクロ流体チャネル1010に沿ったサンプル案内電極1015と、測定室1030に通じるナノ流体チャネル1013である。ナノ孔ベース配列決定生物チップを通るサンプルの流れを更に説明するために、以下では1つの例を詳細に論じる。
【0025】
緩衝剤取込口1025と緩衝剤排出口1027は、マイクロ流体チャネル1010とナノ流体チャネル1013と測定室1030のネットワークを、検出用のサンプル取込前に予め湿潤させ予め充填しておくためのものである。検出中、マイクロ流体チャネルの中の流体の流れは、オンチップ又はオフチップのマイクロポンプ及びマイクロ弁を使用して、緩衝剤の取込と排出の流量によって調節することができる。
【0026】
1つの例では、一本鎖核酸分子のリン酸‐デオキシリボース主鎖には、それぞれの塩基セグメント毎に負電荷が帯電し、分子の5’末端には2つの負電荷が存在している。一連のサンプル案内電極1015に沿って、受け入れ溜め1020からサンプル取込口コネクタ1023を通って目的地の測定室1030まで正電圧が脈動することで、核酸分子が受け入れ溜め1020から抽出され、事前に指定されている測定室1030へ送達されることになる。同様に、下ウェーハにも、マイクロ流体チャネル1010に沿って、ナノ孔ベース配列決定生物チップから同様のやり方でサンプルを抽出するためのサンプル案内電極1017が埋め込まれている。
【0027】
流体チャネルのネットワークに沿ったサンプル案内の同様のスキームを使用すれば、測定室1040の個数を2つ以上に拡張することができる。ツリー構造に配列されている測定室の一例が図10Bに示されている。多数の独立した解析を遂行する能力の他に、幾つかの実施形態では、DNA断片のサンプル受け入れ溜め1020から抽出されてくる順番がそれぞれの測定室に事前に割り当てられている。図10Bに示されている様に、測定室1040は2桁の数字で標示されている。1桁目は枝番号を表し、2桁目は枝内での測定室の位置を表している。測定室1040の割り当て順は、単純に、昇順であってもよく、即ち、最も低い数字の室が最小に使用され、次は、その次に高い数字の室が使用されるというようにすることができる。このやり方では、枝内の測定室の全てが使用されてから、次の枝へ移ることになる。代わりにサンプルは、最も低い枝番号を最初に使用して、それぞれの枝の最も低い数字の室に割り当てられてもよく、即ち、現事例では11、21、31、41に割り当てられ、次に12、22、32、42に割り当てられ、以下同様に続く、というように割り当てられてもよい。この割り当て手法によれば、それぞれの枝の、中央マイクロ流体チャネルから最も離れた測定室が最初に割り当てられ、次に、それぞれの枝の次に離れた室が割り当てられることになる。この手法は、中央マイクロ流体チャネルのサンプル案内電極の電気信号の被測定信号に対する干渉を低減することができる。全部の測定が完了したら、DNAサンプル全体の配列が断片の抽出順に従って体系的に組み立てられる。このおかげで、ハイブリダイゼーションプロセスがサンプルの元の配列をランダム化し、正しい配列に繋ぎ合せるのに計算集約的で誤差を生じ易い検出後解析が必須である、マイクロアレイの様な、他の従来型の配列決定技術で必要とされる時間のかかる検出後解析が不要になる。また、断片の抽出順は記録されるので、断片を再度組み合わせて元のDNAサンプルを形成することができる。他の従来の配列決定技術では、典型的に、元のサンプルは破壊され、将来的な使用に備えて回復させることはできない。
【0028】
図10Aに戻って、上ウェーハと複合ウェーハのウェーハ貼り合わせによって形成されたナノ流体チャネル1013は、フィルタとして、サンプル流量制御器として、更には分子引張器としての機能を果たす。幾つかの実施形態では、ナノ流体チャネルは、上ウェーハ上の上電極をオンにしたりオフにしたりすることによってフィルタとしての機能を果たしており、マイクロ流体チャネルからサンプルを選択的に引き入れることを可能にする。幾つかの実施形態では、ナノ流体チャネルは、上電極と下電極の電圧を調節することによってサンプル流量制御器としての機能を果たしており、ナノ流体チャネルを通るサンプルの流量を制御することを可能にする。ナノ流体チャネル1013は、図11に描かれている様に、一本鎖核酸分子1101がナノ流体チャネル1013を通過するときに天然の巻いた状態から引き伸ばされるので、分子引張器としての機能も果たしている。
【0029】
幾つかの実施形態では、ナノ流体チャネルの速度制御性は、分子のより正確な解析が可能になるように活用される。図12に示されている様に、感知電極1205がナノ孔1225に埋め込まれており、ナノ孔1225を通る分子の流れの制御においてはマイクロ/ナノチャネルネットワークの一体部分になっている。ナノ流体チャネルに加え、印加DC電圧は分子がナノ孔1225を通って移送されるときの分子の速度と方向を微調整するように設計されている。統計学的誤差を排除することによって分子識別の精度を高めるために、即ち偽陽性誤差率を低減できるように、上駆動電極1230及び下駆動電極1235それぞれと埋め込み感知電極1205とに印加されるDCバイアス電圧の大きさを交互に入れ替えることにより、被試験分子を引き出してナノ孔1225を通して何度も行来させて解析を繰り返すこともできる。
【0030】
感知電極がナノ孔へ一体化されている幾つかの従来的な手法とは違い、DNA中のそれぞれの塩基がナノ孔を通り抜けるには数ナノ秒しかかからないこともあり得る。その様な通過時間では何らかの意味のある測定をするには短すぎる。この短所の観点から、他の従来的な手法はナノ孔を通る分子の運動を減速させるように発展してきた。1つの従来的な手法は、余分の電極をナノ孔に埋め込むことにより、分子の速度を制御する電圧閉じ込めスキームを提案している。提案されている電圧閉じ込めスキームは、4つ又はそれ以上の導電電極を上下に積重し、それらの間に誘電性材料を挟むことによって導電電極同士を電気的に絶縁することが必要になるため、実装が難儀である。この多層フィルムに要求される2−3nmのナノ孔を形成するとなると、アスペクト比が30:1より大きくなり、これでは、現在の集積回路製作技術を用いて実現するのは不可能ではないにしても難しい。
【0031】
図13Aに示されている様に、印加AC感知電圧1310が、分子がナノ孔1325を通って移送中に当該分子を取り調べるために用いられている。必然的に、分子を識別するのに様々な感知メカニズムを採用することができ、例えば、抵抗の変化、静電容量の変化、位相の変化、及び/又はトンネル電流を採用することができる。埋め込み感知電極1305と被試験分子が密に近接しているために、信号対ノイズ比が改善される。
【0032】
上記の例示となるサンプル送達及びフィルタリングメカニズムは、ナノ孔測定室のアレイをどの様に実装することができるかを説明するための一例として供されている。当業者には、異なった実施形態では上記の送達及びフィルタリングメカニズムの変型が取り入れられてもよいことが認識されるであろう。また、例示されている方法を使用して、異なったサイズの孔のアレイを実現することもできる。α‐ヘモリシンの様なタンパク質の孔及び上述の固相ナノ孔のアレイと一体で、生物ナノ孔のアレイを実現することもできる。幾つかの実施形態では、上述の様に異なった導電層に置かれた積重式の電極の代わりに、両方の感知電極を同じ導電層の上へ設置することもできる。図13Bは、この平面電極実装の1つの実施形態を示している。この平面電極実装では、両方の感知電極1307は、同じ導電層に設置されていて、それら感知電極1307の間にナノスリット1327が画定されている。感知電極1307とナノスリット1327の上面図が図13Cに示されている。上述されている様に、ナノ孔とナノスリットはどちらもナノパントグラフィーを使用して画定することができる。
【0033】
分子検出を実質的にリアルタイムで遂行する能力、単一分子検出を検出前サンプル増幅なしに遂行する能力、多重且つ実質的同時検出を実施する能力、多回通過検出を行う能力、サンプルを計算集約的検出解析なしに識別する能力、及び/又は検出後に将来的な使用に備えてサンプルを維持する能力は、幾つかの実施形態での低費用、高速、且つ正確なゲノム解析を提供する場合、例えば単一ヌクレオチド多形態を認知する場合には、正に不可欠である。
【0034】
ナノ孔ベース配列決定器
ナノ孔ベース配列決定器は、持ち運びできるゲノム検出解析システムを提供している。幾つかの実施形態では、ナノ孔ベース配列決定器は、2大構成要素、即ち、ハードウェアとソフトウェアを含んでいる。高水準アーキテクチャ及びサブユニットの幾つかの実施形態を以下に論じる。
【0035】
A.ハードウェアシステム
幾つかの実施形態では、ナノ孔ベース配列決定器のハードウェアシステムは、2大ユニット、即ち、計算通信制御ユニット及びナノ孔ベース配列決定生物チップインターフェースユニットと、各種モジュールを含んでいる。高水準アーキテクチャの1つの実施形態が図14に示されている。諸部分の詳細事項を以下に更に詳しく説明する。
【0036】
I.計算通信制御ユニット
1つの実施形態では、ハードウェアシステム1400は、ディスプレイデバイスを有する持ち運びできるコンピューティングシステム1410を含んでいる。これは、タブレット、ラップトップ、ネットブック、オールインワン型デスクトップコンピュータ、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、又は何らかの手持ち式コンピューティングデバイスなど、を使用して実装されていてもよい。それは、オペレーティングシステム(OS)を稼働させ、データ解析ソフトウェアを実行し、データを記憶し、ナノ孔ベース配列決定生物チップの作動を制御し、ナノ孔ベース配列決定生物チップからデータを収集するための中枢ユニットである。
【0037】
1つの実施形態では、ハードウェアシステム1400は、更に、ネットワーク通信モジュール1420を含んでいる。ネットワーク通信モジュール1420は、WiFi、WiMAX、イーサネット、ブルートゥース、電話機能、衛星リンク、全地球測位システム(GPS)などのうちの1つ又はそれ以上を含んでいる。ネットワーク通信モジュール1420は、データ共有化、プログラム更新、データ解析などのために中央のコンピューティングステムと通信したり、データを共有することができるように、そしてまたデータ解析を複数のコンピューティングデバイスで並行して実行させることができるように、他のコンピューティングデバイスと通信したり、データ共有化、プログラム更新などのために他のブルートゥース使用可能デバイス(例えばセルラー電話、プリンタなど)と通信したり、GPS信号を送受信したりするための通信ハブとしての機能を果たしている。
【0038】
1つの実施形態では、ハードウェアシステム1400は、更に、入力デバイス1430を含んでいる。入力デバイス1430は、キーボード、タッチスクリーン、マウス、トラックボール、赤外線(IR)ポインティングデバイス、及び音声認識デバイスなどのうちの1つ又はそれ以上を含んでいてもよい。入力デバイス1430は、コマンドエントリとデータエントリのためのヒューマンインターフェースとしての機能を果たしている。
【0039】
1つの実施形態では、ハードウェアシステム1400は、更に、入力/出力(I/O)ポート1440を含んでおり、同ポートには、フラッシュメモリカードインターフェース、IEEE1394インターフェース、及びユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースなどを含めることができる。I/Oポート1440は、他の電子デバイスとのシリアルインターフェース、二次的なデータ記憶インターフェース、及びナノ孔ベース配列決定生物チップのための測定データI/Oとしての機能を果たしている。
【0040】
II.ナノ孔ベース配列決定生物チップインターフェースユニット
幾つかの実施形態では、ナノ孔ベース配列決定(nSeq)生物チップインターフェースユニット1450は、nSeq電子モジュール1460、流体制御モジュール1470、化学薬品貯蔵及び流体I/O接続モジュール1480、及びnSeq流体制御及びサンプルI/O接続モジュール1490に連結している。nSeq電子モジュール1460は、核酸分配モジュールを制御し、ナノ流体チャネルの流量を制御し、測定データを収集し、データを計算通信制御ユニットに出力する。
【0041】
幾つかの実施形態では、流体制御モジュール1470は、化学薬品貯蔵部とnSeq生物チップの間の流体流れを、緩衝剤取込口/排出口コネクタを介し、オンチップ/オフチップのマイクロポンプ及びマイクロ弁を使用して制御する。化学薬品貯蔵及び流体I/O接続モジュール1480は、必要に応じ化学薬品をnSeq生物チップに供給することができ、化学薬品及び/又は生物廃棄物貯蔵部としての機能も果たすことができる。nSeq流体制御及びサンプルI/O接続モジュール1490は、nSeq生物チップ内の流体及びサンプルの流れを制御することの他に、nSeq生物チップのサンプル取込及び排出も制御することができる。例えば、図10Bに戻って、測定室#11で検出を遂行したいと望んだ場合、枝#1の緩衝剤排出口が開かれることになり、その間、他の全ての緩衝剤排出口は閉じられている。結果として、流体は、サンプル取込口から枝#1に向かって流れ、マイクロ流体チャネルに沿ってサンプル案内電極と同期して協働し、サンプルを測定室#11に送達することになる。
【0042】
B.ソフトウェアアーキテクチャ
図15は、ナノ孔ベース配列決定器の1つの実施形態におけるオペレーティングシステム及びゲノム解析ソフトウェアのためのソフトウェア及び関係のあるハードウェア構成要素の高水準アーキテクチャを示している。示されているソフトウェアアーキテクチャ内の各種論理処理モジュールは、コンピュータ可読媒体に具現化されている命令を実行する処理デバイス(例えば図14の持ち運びできるコンピューティングシステム1410など)により実装することができる。コンピュータ可読媒体には、コンピュータ(例えば、サーバ、パソコン、ネットワークデバイス、携帯情報端末、製造工具、1つ又はそれ以上のプロセッサのセットを備えた何らかのデバイスなど)がアクセスできる様式で情報を提供(即ち、記憶及び/又は送信)するあらゆるメカニズムが含まれる。例えば、コンピュータ可読媒体には、追記型/非追記型媒体(例えば、読取専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイスなど)などが含まれる。
【0043】
上述されている様に、計算通信制御ユニットにはオペレーティングシステム1510がインストールされている。オペレーティングシステム1510には、Windows、Linux、或いはコンピューティングデバイスにとって適したあらゆるオペレーティングシステムを含めることができる。計算通信制御ユニットにインストールされているオペレーティングシステム1510とは別に、ゲノム解析ソフトウェアは、更に、5つの処理モジュール、即ち、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)1520、データビューア1530、ゲノムデータ解析部インターフェース1540、ゲノムデータ解析部1550、及びゲノムデータベース1560を含んでいる。オペレーティングシステム1510と上記処理モジュール1520−1560と他のハードウェア構成要素の間の対話の幾つかの実施形態を以下に図15を参照しながら論じる。
【0044】
幾つかの実施形態では、ゲノムデータ解析部インターフェース1540は、ゲノム解析ソフトウェアアーキテクチャ内でデータフロー制御ユニットの役目を務める。入力デバイスからコマンド及び/又は入力データを取得した後、オペレーティングシステム1510は、その情報をゲノムデータ解析部1550へゲノムデータ解析部インターフェース1540を通して送信する。するとゲノムデータ解析部1550はしかるべく活動する。適正なコマンド(例えば、GET、ADDなど)を用いて、ゲノムデータ解析部インターフェース1540はI/Oポート1570とゲノムデータベース1560の間のデータフローを制御して、データベース1560に記憶されているデータが送り出されたり更新されたりするようにする。同様に、解析部ソフトウェアは、I/Oポート1570及び/又は入力デバイス1580を介して定期的に更新されることになる。ゲノムデータ解析部インターフェース1540は、nSeq生物チップを監視するためにnSeq生物チップインターフェース1590にも連結されている。nSeq生物チップの状態が監視され、解析部インターフェース1540を介してディスプレイユニット(例えば図14の持ち運びできるコンピューティングシステム1410のディスプレイデバイスなど)に表示される。ゲノムデータ解析部インターフェース1540は、更に、ゲノムデータ解析部1550から結果を受け取り、それらをディスプレイユニットに表示する。
【0045】
幾つかの実施形態では、ゲノムデータ解析部1550は、ゲノム解析ソフトウェアの主データ解析ユニットである。それは、nSeq生物チップから測定値を取得し、解析を遂行し、次いで結果をデータベース1560に記憶されているデータと比較して生物剤を識別する。解析結果は、ディスプレイユニットに表示され、将来的な参照に備えてデータベース1560に記憶される。
【0046】
ゲノムデータベース1560は、既存の生物剤及び新たに発見された核酸配列を記憶するためのデータ収納庫である。データビューア1530は、その他のユニットのうちの一部又は全部からデータ及び情報を受け取り、それらをディスプレイデバイスに表示する、ソフトウェアルーチンを含んでいる。
【0047】
以上、持ち運びできて且つリアルタイム式の分子解析と識別のための方法及び装置を説明してきた。これまでの説明から、本発明の諸態様は、少なくとも一部はソフトウェアに具現化され得ることが自明であろう。即ち、本技法は、コンピュータシステム内で、或いは他のデータ処理システム内で、それ自身のプロセッサがメモリに格納されている各一連の命令を実行すると、それに応えて実施されるようにしてもよい。様々な実施形態では、ハードワイヤード型回路構成をソフトウェア命令と組み合わせて使用し本発明を実装することができる。よって、本技法は、ハードウェア回路構成とソフトウェアの何らかの特定の組合せに限定されるものでもなければ、データ処理システムに実行させる命令の何らかの特定のソースに限定されるものでもない。加えて、本記述全体を通して、説明を簡潔化するために、様々な機能及び動作はソフトウェアコードによって遂行される或いは引き起こされるものとして記述されているかもしれない。しかしながら、当業者には、その様な表現が意味するものがプロセッサ又は制御器によるコードの実行の結果もたらされる関数であることが認識されるであろう。
【0048】
本明細書全体を通して、「1つの実施形態」又は「或る実施形態」という言い方は、当該実施形態に関連付けて説明されている特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味するものと理解されたい。よって、強調しておくが、本明細書の様々な部分で「幾つかの実施形態」又は「1つの実施形態」或いは「或る代わりの実施形態」という言い方が2回又はそれ以上されていても、必ずしもどれもが同じ実施形態を指しているとは限らないものと理解されたい。また、特定の特徴、構造、又は特性は、本発明の1つ又はそれ以上の実施形態で適宜に組み合わされてもよい。また、本発明は幾つかの実施形態の観点から説明されているが、当業者には、本発明は説明されている実施形態に限定されないことが認識されるであろう。本発明の実施形態は、付随の特許請求の範囲の請求項の範囲内で修正や変更を加えて実践することもできる。従って明細書及び図面は、本発明に制限を課すものではなく説明を目的とするものと見なされるべきである
【符号の説明】
【0049】
110 ナノ孔ベース配列決定器
120 ナノ孔ベース配列決定生物チップ
410 ウェーハ、シリコン基板
420 窒化物
422 導電材料
424 誘電体スペーサ
426 上金属層
430 ナノメートルホール
435 酸化物
440 下キャビティ
510 ウェーハ
520 窒化物
522 導電材料
524 誘電体スペーサ
526 上金属層
530 ナノシード
535 ナノロッド又はナノチューブ
540 酸化物層
550 酸化物ナノメートルホール
560 下キャビティ
565 ナノ孔
610 ナノスリット
620 ナノリング
720 集積回路
730 マイクロ流体チャネル
750 ナノ孔アレイウェーハ
800 3層ウェーハ構造
810 上ウェーハ
820 集積回路
830 流体チャネル
840 ナノ孔ウェーハ
850 下ウェーハ
910 電圧バイアススキーム
920 電流感知回路
1010 マイクロ流体チャネル
1013 ナノ流体チャネル
1015、1017 サンプル案内電極
1020 受け入れ溜め
1023 サンプル取込口コネクタ
1025 緩衝剤取込口
1027 緩衝剤排出口
1030、1040 測定室
1101 一本鎖核酸分子
1205 感知電極
1225 ナノ孔
1230 上駆動電極
1235 下駆動電極
1305、1307 感知電極
1310 印加AC感知電圧
1325 ナノ孔
1327 ナノスリット
1400 ハードウェアシステム
1410 持ち運びできるコンピューティングシステム
1420 ネットワーク通信モジュール
1430 入力デバイス
1440 入力/出力(I/O)ポート
1450 ナノ孔ベース配列決定(nSeq)生物チップインターフェースユニット
1460 nSeq電子モジュール
1470 流体制御モジュール
1480 化学薬品貯蔵及び流体I/O接続モジュール
1490 nSeq流体制御及びサンプルI/O接続モジュール
1510 入力/出力(I/O)ポート
1520 グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)
1530 データビューア
1540 ゲノムデータ解析部インターフェース
1550 ゲノムデータ解析部
1560 ゲノムデータベース
1570 I/Oポート
1580 入力デバイス
1590 nSeq生物チップインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを受け入れるサンプル入力/出力コネクタと、
前記サンプルの1つ又はそれ以上の電気特性を実質的にリアルタイムで測定する、複数のナノ孔を備えたナノ孔ベース配列決定チップと、
前記ナノ孔ベース配列決定チップからの測定データに実質的にリアルタイムで解析を遂行する、持ち運びできるコンピューティングシステムと、を備えている持ち運びできる分子解析器。
【請求項2】
前記ナノ孔ベース配列決定チップは、前記サンプルの1つ又はそれ以上の電気特性を、当該サンプル中の分子を実質的に無傷に保ちながら測定する、請求項1に記載の持ち運びできる分子解析器。
【請求項3】
前記ナノ孔ベース配列決定チップの前記複数のナノ孔を通る前記サンプルの流量を制御し、且つ前記測定データを前記ナノ孔ベース配列決定チップから前記持ち運びできるコンピューティングシステムに送る、ナノ孔ベース配列決定電子制御モジュールを更に備えている、請求項1に記載の持ち運びできる分子解析器。
【請求項4】
前記ナノ孔ベース配列決定電子制御モジュールは、前記ナノ孔ベース配列決定チップ上の複数の駆動電極に印加される電圧を調節して、前記サンプル中の分子が前記複数のナノ孔を通って流れる速度を制御する働きをする、請求項3に記載の持ち運びできる分子解析器。
【請求項5】
前記ナノ孔ベース配列決定電子制御モジュールは、前記ナノ孔ベース配列決定チップ上の複数の駆動電極に調節可能な電圧のセットを印加して、前記サンプル中の一分子に前記複数のナノ孔の1つを多数回通過させる働きをする、請求項3に記載の持ち運びできる分子解析器。
【請求項6】
前記1つ又はそれ以上の電気特性は、抵抗、静電容量、トンネル電流、及び移相のうちの少なくとも1つを備えている、請求項1に記載の持ち運びできる分子解析器。
【請求項7】
複数のナノ孔を画定しているナノ孔アレイウェーハと、
前記ナノ孔アレイウェーハの上面に貼り合わされている上ウェーハと、
前記ナノ孔アレイウェーハの下面に貼り合わされている下ウェーハと、を備え、前記上ウェーハと前記ナノ孔アレイウェーハは一体で1つ又はそれ以上のナノ流体チャネルを画定し、前記下ウェーハと前記ナノ孔アレイウェーハは一体で1つ又はそれ以上のマイクロ流体チャネルを画定している、ナノ孔ベース配列決定チップ。
【請求項8】
前記複数のナノ孔のそれぞれは、固定の同一サイズである、請求項7に記載のナノ孔ベース配列決定チップ。
【請求項9】
前記上ウェーハの下面に連結されている上駆動電極と、
前記上ウェーハ上に製作されていて、前記上駆動電極が電気的に連結されている、感知回路とバイアス回路の第1のセットと、
前記下ウェーハの上面に連結されている下駆動電極と、
前記下ウェーハ上に製作されていて、前記下駆動電極が電気的に連結されている、感知回路とバイアス回路の第2のセットと、を更に備えている、請求項7に記載のナノ孔ベース配列決定チップ。
【請求項10】
前記ナノ孔アレイウェーハ内に埋め込まれている第2の上駆動電極と、
前記ナノ孔アレイウェーハ内に埋め込まれている第2の下駆動電極と、を更に備えている、請求項8に記載のナノ孔ベース配列決定チップ。
【請求項11】
前記ナノ孔アレイウェーハ内に埋め込まれている複数の感知電極であって、それぞれが前記複数のナノ孔の1つに隣接している、複数の感知電極を更に備えている、請求項8に記載のナノ孔ベース配列決定チップ。
【請求項12】
持ち運びできる分子解析器で有用なナノ孔ベース配列決定チップを製造する方法において、
ナノ孔アレイウェーハのシリコン基板上に堆積させた導電性材料の層にナノパントグラフィーによるエッチングを施して、前記ナノ孔アレイウェーハに複数のナノ孔を画定する工程と、
前記ナノ孔アレイウェーハを上ウェーハの下面に貼り合わせて、前記ナノ孔アレイウェーハと前記上ウェーハの間に1つ又はそれ以上のナノ流体チャネルを画定する工程と、
前記ナノ孔アレイウェーハを下ウェーハの上面に貼り合わせて、前記ナノ孔アレイウェーハと前記下ウェーハの間に1つ又はそれ以上のマイクロ流体チャネルを画定する工程と、から成る方法。
【請求項13】
前記上ウェーハを前記ナノ孔アレイウェーハに貼り合わせる工程の前に、前記上ウェーハ上に上駆動電極及び感知回路とバイアス回路のセットを製作する工程を更に含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記下ウェーハを前記ナノ孔アレイウェーハに貼り合わせる工程の前に、前記下ウェーハ上に下駆動電極及び感知回路とバイアス回路のセットを製作する工程を更に含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
較正された単一エネルギーイオンビームを、サブミクロ直径静電レンズのアレイに向かわせて、前記ナノ孔アレイウェーハの前記シリコン基板上の前記導電性層に複数のナノメートル造形を画定する工程を更に含み、
前記ナノパントグラフィーによるエッチングを施す工程は、前記導電性材料の層の前記複数のナノメートル造形が画定されている箇所に電圧を印加して、当該複数のナノメートル造形が画定されている箇所に前記複数のナノ孔を形成させる工程を含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のナノ孔のそれぞれのサイズは、1nmから200nmの範囲内にある、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
命令を具現化しているコンピュータ可読記憶媒体であって、処理デバイスによって実行されると、当該処理デバイスに、
持ち運びできる分子解析器のナノ孔ベース配列決定チップから、当該持ち運びできる分子解析器に入力された分子のサンプルに関連している測定データを受信する段階と、
前記測定データを解析して前記分子のサンプルを実質的にリアルタイムで識別する段階と、から成る方法を遂行させることになる命令、を具現化しているコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記方法が、
前記持ち運びできる分子解析器内に記憶されているデータベースから複数の分子のデータを検索する段階と、
前記解析段階の結果を前記複数の分子のデータと比較して前記分子のサンプルを識別する段階と、を更に含んでいる、請求項17に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記方法が、
前記解析段階の結果を将来的な参照に備えて前記データベースに記憶する段階を更に含んでいる、請求項18に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記方法が、
定期的に、遠隔のソースから情報をダウンロードして前記データベースを更新する段階を更に含んでいる、請求項18に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
前記方法が、
前記解析段階の結果を前記持ち運びできる分子解析器から遠隔のコンピューティングシステムに無線送信する段階を更に含んでいる、請求項19に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項22】
前記方法が、
前記持ち運びできる分子解析器のディスプレイデバイスに表示させるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を生成する段階と、
前記解析段階の結果を前記GUIで表示する段階と、を更に含んでいる、請求項19に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図12】
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【図13A】
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【公表番号】特表2012−526556(P2012−526556A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510988(P2012−510988)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/034602
【国際公開番号】WO2010/132603
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
2.WINDOWS
3.Linux
【出願人】(511274857)
【Fターム(参考)】