説明

分布増幅器及び分布ミキサ

【課題】異なる周波数帯の分波を可能とする分布増幅器を提供する。
【解決手段】本発明の分布増幅器は、第1,第2,第3伝送線路の一端を第1接続点で接続し、第1伝送線路の他端を第1入力端、第2伝送線路の他端を第2入力端とする入力疑似線路と、第4,第5,第6伝送線路の一端を第2接続点で接続し、第4伝送線路の他端を第1出力端、第5伝送線路の他端を第2出力端とする出力疑似線路と、入力端子が第1接続点、出力端子が第2接続点に接続された増幅部からなる単位増幅器と、第1帯域で左手系、第1帯域より高い第2帯域で右手系特性となるCRLH線路から構成され、信号入力端子を初段の第1入力端に接続し、第2入力端を次段の第1入力端に接続し、最終段の第2入力端を終端回路に接続し、第1信号出力端子が初段の第1出力端に、第2出力端がCRLH線路の第1入出力端子に、CRLH線路の第2入出力端子が次段の第1出力端に、最終段の第2出力端が第2信号出力端子にそれぞれ接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる周波数の信号を分離する分波機能を有する分布増幅器及び分布ミキサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非特許文献1に、広帯域で入力信号を増幅、周波数変換する能動回路として、分布回路が報告されている。
この分布回路の機能を分布増幅器を例とし、図10を用いて分布増幅器の動作を説明する。図10は、従来の分布増幅器の回路の構成を示す図である。
この図10において、符号51は入力端子、符号52及び53は出力端子、符号54は終端回路、符号55、56、57、58、59及び60は伝送線路、符号61は増幅器部、符号62は単位増幅器を示している。
【0003】
次に、図11は図10に示す各単位増幅器における擬似伝送線路(擬似的に50Ωを実現する伝送線路であり、伝送線路55、56及び増幅器部61を構成するトランジスタの入力−接地間の容量(例えば、増幅器部61がエミッタ/ソース接地増幅器の場合、ベース−エミッタ/ゲート−ソース間容量)から構成される入力疑似伝送線路、また伝送線路58、59及び増幅器部61を構成するトランジスタの出力−接地間の容量(例えば、増幅器部61がエミッタ/ソース接地増幅器の場合、コレクタ−エミッタ/ドレイン−ソース間容量)から構成される出力擬似伝送線路)の回路構成を示す図である。
この図11において、符号71及び72の各々は入出力端子、符号73及び74の各々は伝送線路、符号75は容量素子である。
図10の分布増幅器の入力側(入力端子51側)において、図10における伝送線路55及び56は、図11の伝送線路73及び74に対応し、また図10の増幅器部61を構成するトランジスタの入力−接地間の容量が図11の容量素子75に対応している。
一方、図10の分布増幅器の出力側(出力端子53側)においては、図10の伝送線路58及び59は、図11の伝送線路73及び74に対応し、また図10の増幅器部61を構成するトランジスタの出力−接地間の容量が容量素子75に対応している。
この図11においては、説明を簡略化するため、図10の伝送線路57及び60を省略している。
【0004】
ここで、伝送線路73及び74のインダクタンスをL、容量素子の容量値をCとすると、擬似伝送線路の特性インピーダンスZが50Ωとなるように、伝送線路を決定することにより、カットオフ周波数fc以下において、50Ωの伝送線路として用いることができる。
ここで、特性インピーダンスZとカットオフ周波数fとは、それぞれ以下の式により算出する。
=(L/C1/2
=1/{π(L/C1/2
上述した擬似伝送線路を入出力における伝送線路に用いることにより、特性インピーダンスを広帯域に渡り50Ωの整合を図った増幅器(回路)を実現することが可能となる。
【0005】
次に、図12は、図10おける入力端子51を端子1とし、出力端子52を端子2とし、単位増幅器62を4段接続した構成にて計算したSパラメータの計算結果(順方向伝達係数S21及び出力側の反射係数S22)を示す図である。
この図12における順方向伝達係数S21により、各単位増幅器において出力信号が進行方向(順方向)で合成されることにより、出力端子52からの信号に対し、広帯域に渡り、約8dBの利得が得られていることが分かる。
【0006】
また、図13は、図10おける入力端子51を端子1とし、出力端子53を端子3とし、単位増幅器を4段接続した構成にて計算したSパラメータの計算結果(順方向伝達係数S31及び出力側の反射係数S33)を示す図である。
この図13における順方向伝達係数S31により、各単位増幅器において出力信号が進行方向と逆の方向にて合成されないことにより、出力端子53からの信号に対し、広帯域に渡り、約8dBの利得が得られていないことが分かる。
【0007】
次に、分布回路の機能を分布ミキサを例とし、図14を用いて分布ミキサの動作を説明する。図14は従来の分布ミキサの回路の構成を示す図である。
図14において、符号81はIF(Intermediate Frequency;中間周波数)信号が入力されるIF入力端子、符号82はLO(Local Oscillation;局部発振)信号が入力されるLO入力端子、符号83及び84はRF(Radio Frequency;高周波)信号が出力されるRF出力端子、符号85及び86は終端回路、符号87、88、89、90、91、92及び93は伝送線路、符号95はミキサ部、符号96は単位ミキサを示している。この伝送線路87、88、90、91、92、93及び94の各々は、すでに説明した分布増幅器の入出力擬似伝送線路と同様に、それぞれ線路定数を設定することにより、広帯域な特性を実現することができる。
【0008】
図15は、図14おける単位ミキサを6段接続した場合の、分布ミキサの出力端子83から出力されるUSB(Upper Side Band;上側波帯)側のRF出力信号と、LSB(Lower Side Band;下側波帯)側のRF出力信号と、LO漏洩出力とのIF信号の入力電力に対する依存性の計算結果を示す図である。
図16は、図14おける単位ミキサを6段接続した場合の、分布ミキサの出力端子84から出力されるUSB(Upper Side Band;上側波帯)側のRF出力信号と、LSB(Lower Side Band;下側波帯)側のRF出力信号と、LO信号入力端子からの漏洩出力とのIF信号の入力電力に対する依存性の計算結果を示す図である。
図15及び図16ともに、LO信号の周波数は25GHzであり、IF信号の周波数は5GHzである。また、図15及び図16ともに、RF出力端子(83または84)からIF信号がLO信号によりミキシングされたRF出力信号(USB側及びLSB側の双方)が出力されていることが判る。
【0009】
一方、非特許文献2には、誘電率と透磁率とが共に正である右手系媒質と、誘電率と透磁率とが共に負である左手系媒質との双方の特性を有する右手/左手系複合(CRLH:Composite Right/Left-Handed)線路が報告されている。
図2は、CRLH線路の単位セルの構成例を示す図である。この図2において、符号15及び16は入出力端子、符号17、18及び19は容量素子、符号20、21及び22は伝送線路を示している。
このCRLH線路の単位セルは、伝送線路20及び21、容量素子18を入出力端子15及び16の間で直列接続し、伝送線路20及び21の接続点Aを、伝送線路22及び容量素子19の各々にて並列に接地して構成されている。
すなわち、容量素子17は、一端が入出力端子15に接続されている。伝送線路20は、一端が容量素子17の他端に接続されている。伝送線路21は、一端が伝送線路20の他端と接続点Aにおいて接続されている。容量素子18は、一端が伝送線路21の他端と接続され、他端が入出力端子16と接続されている。容量素子19は、一端が接続点Aと接続され、他端が接地されている。伝送線路22は、一端が接続点Aと接続され、他端が接地されている。
【0010】
上述したCRLH線路の単位セルにおいて、容量素子17及び18の容量値をCとし、容量素子19をCとし、伝送線路20及び21のインダクタンスをLとし、伝送線路22のインダクタンスをLとする。そして、角周波数ωを示す以下の(1)式を満足させるように、容量値C及びCとインダクタンスL及びLとを設定する。
ω=1/(C・L1/2=1/(C・L1/2 …(1)
上記式の条件を満足する各周波数ωにより、入出力インピーダンスZが以下の(2)式で表され、右手系/左手系複合線路において、右手系伝送帯域と左手系伝送帯域との間のバンドギャップが消失するバランス条件となり、入出力インピーダンスが一定値となる。
Z=(L/C1/2=一定 …(2)
【0011】
次に、図3は図2に示すCRLH線路の単位セルを3段接続した場合の通過及び反射特性の計算結果の一例を示す図である。
この図3は、GaAs基板(誘電率12.8、基板厚さ100μm)上に、上述した右手系伝送帯域と左手系伝送帯域との間のバンドギャップが消失するバランス条件となるように、容量値C及びCとインダクタンスL及びLとの各々を設定し、CRLH線路の単位セルを3段接続したSパラメータの計算結果を示している。ここで、図2におけるCRLH線路の単位セルにおいて、容量素子17、18及び19は0.1pFであり、伝送線路20及び21は線路長370μm、線路幅5μmで構成された、伝送線路と接地(グランド)線との間隔が37.5μmのコプレーナ線路であり、伝送線路22は線路長235μm、線路幅5μmで構成された、伝送線路と接地線との間隔が37.5μmのコプレーナ線路である。このCRLH線路は入出力のインピーダンスが50Ωである。
【0012】
図3における順方向伝達係数S21の計算結果から判るように、18GHzから50GHzの広帯域な周波数に渡り、50Ω整合が図られていることが分かる。
また、容量素子の容量値及び伝送線路のインダクタンスとから決まる共振周波数25GHzにおいても、入力側の反射係数S11が−7.5dB以下となり、共振周波数においても50Ω整合が図られ、右手系/左手系複合線路における右手系伝送帯域と左手系伝送帯域との間のバンドギャップが生じていないことが分かる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】I. D. Robertson and S. Lucyszyn,“RFIC and MMIC design and technology”, pp. 213−225, The Institution of Electrical Engineers
【非特許文献2】真田篤志、「右手/左手系複合メタマテリアルの基礎と回路設計」、MWE2007ダイジェストpp.471−478、平成20年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
すでに述べたように、図13は図10における入力端子51を端子1、出力端子53を端子3とし、単位増幅器を4段接続した場合の出力端子53に対するSパラメータの計算結果である。
しかしながら、出力端子53の端子位置が右手系伝送経路の進行方向に対して反対の位置にあり、図13から判るように、各単位増幅器62の出力信号が合成されない。このため、出力端子53から出力される信号の出力レベルが、図10の右手系伝送経路の進行方向の位置にある出力端子51から出力される信号の出力レベルに比較して低下している。
このため、図10に示す構成の分布増幅器においては、出力端子53が出力信号を出力させる端子として、有効に活用できないという問題点があった。
【0015】
また、分布ミキサにおいては、図15及び図16に示す計算結果から判るように、図14における出力端子83及び84から出力される、ミキシング結果のUSB側及びLSB側のRF出力信号の出力レベルが等しい。
このため、送信機で使用する場合、RF出力信号におけるUSB側及びLSB側のいずれかの出力レベルを低く落とす設定を行うことができないという問題点があった。
さらに、図15及び図16に示す計算結果から明らかなように、LO漏洩出力レベルがRF出力信号より高いレベルにあるという問題点があった。
【0016】
また、CRLH線路は受動素子を多段に接続するため、出力信号の通過損失が大きくなるという問題点があった。
また、2端子で使用する場合、左手系領域の周波数帯域においても、図2における入出力端子15に入力された信号は、図2における入出力端子16に出力され、右手系領域の周波数帯域の信号と区分して回路を用いる事が出来ないという問題点があった。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、異なる周波数帯の分波を可能とする増幅器及びLO漏洩出力レベルを低減し、かつLSB、USBの信号の分波を可能とするミキサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の分布増幅器は、第1の伝送線路の一端、第2の伝送線路の一端及び第3の伝送線路の一端を第1の接続点で接続してなり、前記第1の伝送線路の他端を第1の入力端とし、前記第2の伝送線路の他端を第2の入力端とする入力疑似伝送線路と、第4の伝送線路の一端、第5の伝送線路の一端及び第6の伝送線路の一端を第2の接続点で接続してなり、前記第4の伝送線路の他端を第1の出力端とし、前記第5の伝送線路の他端を第2の出力端とする出力疑似伝送線路と、入力端子が前記第3の伝送線路の他端と接続され、出力端子が前記第6の伝送線路の他端と接続された増幅部とからなる単位増幅器と、第1の周波数帯域において左手系の伝搬特性となり、前記第1の周波数帯域より高い周波数の第2の周波数帯域において右手系の伝搬特性となる左手/右手系複合線路と、を複数接続して構成される分布増幅器であり、信号入力端子を初段の前記単位増幅器の前記第1の入力端に接続し、前記第2の入力端を次段の前記単位増幅器の前記第1の入力端に接続し、最終段の前記単位増幅器の第2の入力端を終端回路に接続し、第1の信号出力端子が前記初段の前記単位増幅器の前記第1の出力端に接続され、前記第2の出力端と前記左手/右手系複合線路の第1の入出力端子が接続され、前記左手/右手系複合線路の第2の入出力端子が次段の前記単位増幅器の前記第1の出力端に接続され、前記最終段の前記単位増幅器の前記第2出力端が第2の信号出力端子に接続されていることを特徴とする
【0019】
本発明の分布増幅器は、前記信号入力端子に前記第1の周波数帯域の入力信号が入力された場合、前記第1の信号出力端子から出力信号が出力され、前記第2の周波数帯域の入力信号が入力された場合、前記第2の信号出力端子から出力信号が出力されることを特徴とする。
【0020】
本発明の分布増幅器は、前記左手/右手系複合線路は、第1の容量素子の一端に第7の伝送線路の一端が接続され、前記第7の伝送線路の他端と第8の伝送線路の一端が第3の接続点において接続され、第2の容量素子の一端が前記第8の伝送線路の他端と接続され、第9の伝送線路の一端が前記第3の接続点と接続され、前記第9の伝送線路の他端が接地され、第3の容量素子の一端が前記第3の接続点と接続され、前記第3の容量素子の他端が接地され、前記第1の容量素子の他端が前記第1の入出力端子であり、前記第2の容量素子の他端が前記第2の入出力端子であることを特徴とする。
【0021】
本発明の分布ミキサは、第1の伝送線路の一端、第2の伝送線路の一端及び第3の伝送線路の一端を第1の接続点で接続してなり、前記第1の伝送線路の他端を第1のRF出力端とし、前記第2の伝送線路の他端を第2のRF出力端とするRF疑似伝送線路と、第4の伝送線路の一端及び第5の伝送線路の一端を第2の接続点で接続してなり、前記第4の伝送線路の他端を第1のLO入力端とし、前記第5の伝送線路の他端を第2のLO入力端とするLO疑似伝送線路と、第6の伝送線路の一端、第7の伝送線路の一端及び第8の伝送線路の一端を第3の接続点で接続してなり、前記第6の伝送線路の他端を第1のIF入力端とし、前記第7の伝送線路の他端を第2のIF入力端とするIF疑似伝送線路と、RF端子が前記第3の伝送線路の他端に接続され、LO端子が前記第2の接続点と接続され、IF端子が前記第8の伝送線路の他端に接続された単位ミキサと、第1の周波数帯域において左手系の伝搬特性となり、前記第1の周波数帯域より高い周波数の第2の周波数帯域において右手系の伝搬特性となる左手/右手系複合線路と、を複数接続して構成される分布ミキサであり、LO信号入力端子を初段の単位ミキサの前記第1のLO入力端に接続し、前記第2のLO入力端を次段の前記単位ミキサの前記第1のLO入力端に接続し、最終段の前記単位ミキサの第2のLO入力端を第1の終端回路に接続し、IF信号入力端子を前記初段の単位ミキサの前記第1のIF入力端に接続し、前記第2のIF入力端を前記次段の前記単位ミキサの前記第1のIF入力端に接続し、前記最終段の前記単位ミキサの第2のIF入力端を第2の終端回路に接続し、第1のRF信号出力端子を前記初段の単位ミキサの前記第1のRF出力端とし、第2のRF出力端と前記左手/右手系複合線路の第1の入出力端子が接続され、前記左手/右手系複合線路の第2の入出力端子が前記次段の前記単位ミキサの前記第1のRF力端に接続され、前記最終段の前記単位ミキサの前記第2のRF出力端が第2のRF信号出力端子に接続されていることを特徴とする
特徴とする。
【0022】
本発明の分布ミキサは、前記第1のRF信号出力端子から前記第1の周波数帯域のRF出力信号が出力され、前記第2のRF信号出力端子から前記第2の周波数帯域のRF出力信号が出力されることを特徴とする。
【0023】
本発明の分布ミキサは、前記左手/右手系複合線路は、第1の容量素子の一端に第9の伝送線路の一端が接続され、前記第9の伝送線路の他端と第10の伝送線路の一端が第4の接続点において接続され、第2の容量素子の一端が前記第10の伝送線路の他端と接続され、第11の伝送線路の一端が前記第4の接続点と接続され、前記第11の伝送線路の他端が接地され、第3の容量素子の一端が前記第4の接続点と接続され、前記第3の容量素子の他端が接地され、前記第1の容量素子の他端が前記第1の入出力端子であり、前記第2の容量素子の他端が第2の入出力端子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、単位増幅器を多段に接続して構成される分布増幅器において、単位増幅器の出力端子の接続間にCRLH線路を介挿することにより、右手系領域の周波数帯域と左手系領域の周波数帯域との信号の伝送方向を制御することが可能となり、異なる周波数帯の信号を分波させ、分布増幅器の異なる出力端子からそれぞれ出力することができる。
【0025】
また、この発明によれば、単位ミキサを多段に接続して構成される分布ミキサにおいて、単位ミキサのRF出力端子の接続間にCRLH線路を介挿することにより、右手系領域の周波数帯域と左手系領域の周波数帯域との信号の伝送方向を制御することが可能となり、LSB及びUSBの周波数帯の信号を分波させ、分布増幅器の異なる出力端子からそれぞれ出力することができ、かつLO信号漏洩レベルを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態による分布増幅器の構成例を示す概略ブロック図である。
【図2】図1におけるCRLH線路の構成例を示す図である。
【図3】図2のCRLH線路を3個直列に多段接続した場合のSパラメータの計算結果を示す図である。
【図4】図1の分布増幅器において単位増幅器を4個直列に多段接続した場合のSパラメータの計算結果を示す図である。
【図5】図1の分布増幅器において単位増幅器を4個直列に多段接続した場合のSパラメータの計算結果を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による分布ミキサの構成例を示す概略ブロック図である。
【図7】図2のCRLH線路を3個直列に多段接続した場合のSパラメータの計算結果を示す図である。
【図8】図6の分布ミキサにおいて単位ミキサを6個直列に多段接続した場合のSパラメータの計算結果を示す図である。
【図9】図6の分布ミキサにおいて単位ミキサを6個直列に多段接続した場合のSパラメータの計算結果を示す図である。
【図10】従来の分布増幅器の構成を示す図である。
【図11】図10における各伝送線路を構成する疑似伝送線路の回路構成を示す図である。
【図12】図10の分布増幅器において単位増幅器を4個直列に多段接続した場合のSパラメータの計算結果を示す図である。
【図13】図10の分布増幅器において単位増幅器を4個直列に多段接続した場合のSパラメータの計算結果を示す図である。
【図14】従来の分布ミキサの構成を示す図である。
【図15】図14の分布ミキサにおいて単位ミキサを6個直列に多段接続した場合のSパラメータの計算結果を示す図である。
【図16】図14の分布ミキサにおいて単位ミキサを6個直列に多段接続した場合のSパラメータの計算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態による分布増幅器の構成例を示す概略ブロック図である。
同図において、分布増幅器は、符号12の単位増幅器が多段に直列に接続されて構成されており、各単位増幅器12の出力端子の接続間に、符号13のCRLH線路が介挿されている。
また、符号1は分布増幅器の入力端子であり、符号2及び3の各々は分布増幅器の出力端子である。符号4は終端回路である。ここで、終端回路4はインピーダンスが50Ωに設定されている。
このため、分布増幅器は、入力端子1から入力された入力信号が各単位増幅器において増幅され、増幅結果の出力信号(増幅信号)が出力端子2または3から出力される。
【0028】
単位増幅器12は、符号5、6、7、8、9及び10の伝送線路と、入力信号を増幅し出力信号として出力する符号11の増幅器部とを有している。
この単位増幅器12において、伝送線路5の一端(単位増幅器12の第1の入力端)が入力端子1に接続され、伝送線路5の他端と伝送線路6の一端とが接続されている。また、伝送線路6の他端が単位増幅器の第2の入力端となっている。また、伝送線路7は、一端が伝送線路5及び伝送線路6の接続点Bに接続され、他端が増幅器部11の入力端に接続されている。
【0029】
図1の分布増幅器の入力側(入力端子1側)において、図1の単位増幅器12における伝送線路5及び6は、図11に示す疑似伝送線路を構成する伝送線路73及び74に対応し、また図1の増幅器部11の入力側の寄生容量が図11の容量素子75に対応している。
一方、図1の分布増幅器の出力側(出力端子3側)においては、図1の単位増幅器12における伝送線路8及び9は、図11に示す疑似伝送線路を構成する伝送線路73及び74に対応し、また図1の増幅器部11の出力側の寄生容量が容量素子75に対応している。
この図11においては、説明を簡略化するため、図1の伝送線路7及び10を省略している。
【0030】
単位増幅器12において、伝送線路5の一端と、伝送線路6の一端とが接続点Bで接続され、伝送線路7の一端が接続点Bに接続されている。ここで、伝送線路5の他端が単位増幅器12の第1入力端であり、伝送線路6の他端が単位増幅器12の第2入力端である。
また、単位増幅器12において、伝送線路8の一端と、伝送線路9の一端とが接続点Cで接続され、伝送線路10の一端が接続点Cに接続されている。ここで、伝送線路8の他端が単位増幅器12の第1出力端であり、伝送線路9の他端が単位増幅器12の第2出力端である。
増幅器部11は、入力端子が伝送線路7の他端と接続され、出力端子が伝送線路10の他端と接続されている。
【0031】
図1に示すように、分布増幅器は、単位増幅器12を直列に複数個、すなわち多段接続して構成されている。
この分布増幅器における単位増幅器12の多段接続において、初段の単位増幅器12は、第1入力端が入力端子1に接続され、第1出力端が出力端子3に接続され、第2入力端が次段の単位増幅器12の第1入力端に接続され、第2出力端がCRLH線路13を介して次段の単位増幅器12の第1出力端に接続されている。
また、単位増幅器12の多段接続において、最終段の単位増幅器12は、第1入力端が前段の単位増幅器12の第2入力端に接続され、第1出力端がCRLH線路13を介して前段の単位増幅器12の第2の出力端と接続され、第2入力端が終端回路4にて終端処理され、第2出力端が出力端子2と接続されている。
【0032】
また、単位増幅器12の多段接続において、初段と最終段との間の単位増幅器12は、第1入力端が前段の単位増幅器12の第2入力端に接続され、第1出力端がCRLH線路13を介して前段の単位増幅器12の第2の出力端と接続され、第2入力端が次段の単位増幅器12の第1入力端と接続され、第2出力端がCRLH線路13を介して次段の単位増幅器12の第1出力端と接続されている。
したがって、分布増幅器は、入力端子1及び出力端子3と、出力端子2及び終端回路4との間において、複数の単位増幅器12が、接続される前段の単位増幅器の第2出力端と後段の第1出力端との間にCRLH線路13を介挿し、直列に複数段接続して構成されている。
【0033】
次に、図2は、すでに述べたように、CRLH線路の単位セルの構成を示す図である。図3は図2に示すCRLH線路の単位セルを3段接続した場合の通過特性及び反射特性の計算結果の一例を示す図である。図2における入出力端子15及び入出力端子16における入出力のインピーダンスは、上述した単位増幅器12の特性インピーダンスと同様に50Ωに設定されている。図3において、横軸は入力信号の周波数を示し、縦軸はSパラメータの計算結果(dB値)を示す。
図2において、容量素子17、18及び19の各々は0.1pFであり、伝送線路20及び21の各々は線路長37μm×線路幅5μmの、各線路と接地点との間隔が37.5μmのコプレーナ線路であり、伝送線路23は線路長235μm×線路幅5μmの、線路と接地点との間隔が37.5μmのコプレーナ線路であり、入出力のインピーダンスはすでに述べたように50Ωである。
【0034】
すなわち、上記(1)式を満足させるように、容量素子17及び18の各々の容量値CとCと、伝送線路20及び21の各々のインダクタンスL及びLとを設定している。このため、(1)式の条件を満足する各周波数ωにより、入出力インピーダンスZが(2)式で表され、右手系/左手系複合線路において、右手系伝送帯域と左手系伝送帯域との間のバンドギャップが消失するバランス条件となり、入出力インピーダンスが一定値となる。
【0035】
図3に示すように、図2の共振周波数25GHzの周波数領域において、Sパラメータにおける入力側の反射係数S11が−7.5dB以下と小さい。
したがって、図2のCRLH線路において、(1)式を満足させる容量値及びインダクタンスの設定とすることで、このCRLH線路を3段接続(3個を直列に接続)した場合、共振周波数においても、入力に対して、反射係数S11の小さな反射特性を得ることができ、共振周波数においても50Ωでのインピーダンス整合が図られ、周波数帯域のバンドギャップを生じさせないことが判る。
【0036】
図1に示すように、単位増幅器12を多段に直列に接続し、疑似伝送線路における前段及び後段の単位増幅器12各々の第2出力端子と第1出力端子との間に、図2に示すCRLH線路13を介挿(挿入)した場合、図3に示すように、このCRLH線路13が22GHzから50GHzまでの周波数帯域においては50Ωにインピーダンス整合されている。このため、CRLH線路13を付加した図1の疑似伝送線路も、CRLH線路13の整合条件が保持され、22GHzから50GHzまでの周波数帯域においては50Ωにインピーダンス整合されている。
ここで、22GHzから25GHzまでの周波数帯域においては、CRLH線路13は左手系の伝搬特性を示し、出力信号(増幅信号)が出力端子3に出力される。
また、25GHzから50GHzまでの周波数帯域においては、CRLH線路13は右手系の伝搬特性を示し、出力信号が出力端子2に出力される。
すなわち、出力端子3から出力される周波数帯域の増幅された出力信号に比較し、より高い周波数帯域の出力信号が出力端子2から出力される。
【0037】
次に、図4は、図1に示す本実施形態による分布増幅器において、単位増幅器12を4段接続し、図2で説明したCRLH線路13を疑似伝送線路に介挿した際のSパラメータのシミュレーションによる計算結果を示す図である。この図4において、図1おける入力端子1を端子1とし、出力端子2を端子2とし、単位増幅器を接続した構成にて計算したSパラメータの計算結果(順方向伝達係数S12及び出力側の反射係数S22)を示している。図4において、横軸は入力信号の周波数を示し、縦軸はSパラメータの計算結果(dB値)を示す。
Sパラメータにおいて、S21が順方向伝達係数であり、出力端子2へ伝搬される伝送波の伝搬特性示し、S22が出力側の反射係数である。
【0038】
次に、図5は、図1に示す本実施形態による分布増幅器において、単位増幅器12を4段接続し、図2で説明したCRLH線路13を疑似伝送線路に介挿した際のSパラメータのシミュレーションによる計算結果を示す図である。この図5において、図1おける入力端子1を端子1とし、出力端子3を端子3とし、単位増幅器を接続した構成にて計算したSパラメータの計算結果(順方向伝達係数S13及び出力側の反射係数S33)を示している。図5において、横軸は入力信号の周波数を示し、縦軸はSパラメータの計算結果(dB値)を示す。
Sパラメータにおいて、S31が順方向伝達係数であり、出力端子3へ伝搬される伝送波の伝搬特性示し、S33出力側の反射係数である。
【0039】
上述した図4のS21の特性から判るように、入力端子1から供給された信号は、25GHzから50GHzの周波数帯域において、CRLH線路13が右手系の伝搬特性を示すため、増幅器部11により増幅された信号が出力端子2から出力される。
また、図5のS31の特性から判るように、入力端子1から供給された信号は、22GHzから25GHzの周波数帯域において、CRLH線路13が左手系の伝搬特性を示すため、増幅器部11により増幅された信号が出力端子3から出力される。
【0040】
すなわち、端子1から入力した信号は単位増幅器で増幅され、出力側の擬似伝送線路に接続されたCRLH線路13により、右手系の特性を示す周波数帯では、通常の分布増幅器と同様に出力端子2に出力され(図4)、左手系の特性を示す周波数帯では、通常の分布増幅器では出力されない出力端子3に出力される(図5)。
このように、本実施形態の分布増幅器は、単位増幅器を多段に接続して構成された構成において、単位増幅器の疑似伝送線路における出力端子の接続間にCRLH線路13を介挿することにより、右手系領域の周波数帯域と左手系領域の周波数帯域との信号の伝送方向を制御することが可能となり、異なる周波数帯域の信号を分波させ、分布増幅器の異なる出力端子2及び3からそれぞれ出力することができる。
【0041】
<第2の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図6は、この発明の一実施形態による分布ミキサの構成例を示す概略ブロック図である。
同図において、分布ミキサは、符号46の単位ミキサが多段に直列に接続されて構成されており、各単位ミキサ46の出力端子の接続間に、符号47のCRLH線路が介挿されている。
また、符号31は分布ミキサのIF入力端子であり、符号32はLO入力端子であり、符号33及び34はRF出力端子である。符号35及び36は終端回路である。ここで、終端回路35及び36はインピーダンスが50Ωに設定されている。
分布ミキサは、LO入力端子32から入力されるLO信号と、IF入力端子31から入力されるIF信号とを、各単位ミキサ46においてミキシングし、ミキシング結果としてRF出力端子33または34から、RF出力信号を出力する。
【0042】
単位ミキサ46は、符号37、38、39、40、41、42、43及び44の伝送線路と、IF信号とLO信号とをミキシングしてRF信号として出力する符号45のミキサ部とを有している。
この単位ミキサ46において、伝送線路37の一端がIF入力端子31に接続され、伝送線路37の他端と伝送線路38との一端が接続されている。また、伝送線路39は、一端が伝送線路37及び伝送線路38の接続点Dに接続され、他端がミキサ部45のIF入力端に接続されている。
【0043】
図6の分布ミキサのIF信号の入力側(IF入力端子31側)において、単位ミキサ46の伝送線路37及び38は、図11に示す疑似伝送線路を構成する伝送線路73及び74に対応し、また図6のミキサ部45のIF入力端の寄生容量が図11の容量素子75に対応している。
一方、図6の分布ミキサのLO信号の入力側(LO入力端子32側)においては、図6における単位ミキサ46の伝送線路40及び41は、図11に示す疑似伝送線路を構成する伝送線路73及び74に対応し、またミキサ部45のLO入力端の寄生容量が容量素子75に対応している。
また、図6の分布ミキサのRF出力信号の出力側(RF出力端子34側)においては、図6における単位ミキサ46の伝送線路42及び43は、図11に示す疑似伝送線路を構成する伝送線路73及び74に対応し、またミキサ部45のRF出力端の寄生容量が容量素子75に対応している。
この図11においては、説明を簡略化するため、図6の伝送線路39及び44を省略している。
【0044】
単位ミキサ46において、伝送線路37の一端と、伝送線路38の一端とが接続点Dで接続され、伝送線路39の一端が接続点Dに接続されている。ここで、伝送線路37の他端が単位ミキサ46の第1LF入力端であり、伝送線路38の他端が単位ミキサ46の第2LF入力端である。
また、単位ミキサ46において、伝送線路40の一端と、伝送線路41の一端とが接続点Eで接続されている。ここで、伝送線路40の他端が単位ミキサ46の第1LO入力端であり、伝送線路41の他端が単位ミキサ46の第2LO入力端である。
単位ミキサ46において、伝送線路42の一端と、伝送線路43の一端とが接続点Fで接続され、伝送線路44の一端が接続点Fに接続されている。ここで、伝送線路42の他端が単位ミキサ46の第1RF出力端であり、伝送線路43の他端が単位ミキサ46の第2RF出力端である。
ミキサ部45は、IF端子が伝送線路39の他端と接続され、LO端子が接続点Eと接続され、RF端子が伝送線路44の他端と接続されている。
【0045】
図6に示すように、分布ミキサは、単位ミキサ46を直列に複数個、すなわち多段接続して構成されている。
この分布ミキサにおける単位ミキサ46の多段接続において、初段の単位ミキサ46は、第1IF入力端がIF入力端子31に接続され、第1LO入力端がLO入力端子32に接続され、第1RF出力端がRF出力端子34に接続され、第2LO入力端が次段の単位ミキサ46の第1LO入力端に接続され、第2RF出力端がCRLH線路47を介して次段の単位ミキサ46の第1RF出力端に接続されている。
また、単位ミキサ46の多段接続において、最終段の単位ミキサ46は、第1IF入力端が前段の単位ミキサ46の第2IF入力端に接続され、第1LO入力端が前段の単位ミキサ46の第2LO入力端に接続され、第1RF出力端がCRLH線路47を介して前段の単位ミキサ46の第2RF出力端と接続され、第2IF入力端が終端回路35により終端処理され、第2LO入力端が終端回路36により終端処理し、第2RF出力端がRF出力端子33と接続されている。
【0046】
また、単位ミキサ46の多段接続において、初段と最終段との間の単位ミキサ46は、第1IF入力端が前段の単位ミキサ46の第2IF入力端に接続され、第1LO入力端が前段の単位ミキサ46の第2LO入力端に接続され、第1RF出力端がCRLH線路47を介して前段の単位ミキサ46の第2RF出力端と接続され、第2IF入力端が次段の単位ミキサ46の第1IF入力端と接続され、第2LO入力端が次段の単位ミキサ46の第1LO入力端と接続され、第2RF出力端がCRLH線路47を介して次段の単位ミキサ46の第1RF出力端と接続されている。
したがって、分布ミキサは、IF入力端子31、LO入力端子32及びRF出力端子34と、終端回路35、終端回路36及びRF出力端子33との間において、複数の単位ミキサ46が、接続される前段の単位ミキサの伝送線路43の他端と後段の単位ミキサの伝送線路42の一端との間にCRLH線路47を介挿し、直列に複数段を接続して構成されている。
また、図6におけるCRLH線路47は、図1におけるCRLH線路13と同様に、図2に示す構成をしており、入出力端子15及び16、容量素子17、18及び19、伝送線路20、21及び22から構成されている。
【0047】
次に、図7は、図2に示すCRLH線路の単位セルを3段接続した場合の通過及び反射特性の計算結果の一例を示す図である。このとき、CRLH線路の入出力のインピーダンスは50Ωに設定されている。図7において、横軸は入力信号の周波数を示し、縦軸はSパラメータの計算結果(dB値)を示す。この計算において、図2の容量素子17、18及び19の各々は0.1pFであり、伝送線路20及び21の各々は線路長360μm×線路幅5μmの、各線路と接地点との間隔が37.5μmのコプレーナ線路であり、伝送線路22は線路長240μm×線路幅5μmの、線路と接地点との間隔が37.5μmのコプレーナ線路である。CRLH線路47は、入出力のインピーダンスがすでに述べたように50Ωに設定されている。
【0048】
上述したCRLH線路47の容量素子及びインダクタンスの各パラメータは、図3におけるシミュレーションを行った際に比較し、右手系特性の周波数帯域と左手系特性の周波数帯域との周波数ギャップが広がるように設定されている。
図7の計算結果から、共振周波数25GHz帯(24GHzから26GHzの間の帯域)においても、Sパラメータにおける反射係数S11が−6.5dBとなり、共振周波数において反射特性が低下するとともに、通過損失も−3.5dBと低下し、バンドギャップが生じていることが判る。
【0049】
図6に示すように、単位ミキサ46を多段に、例えば6段直列に接続し、疑似伝送線路における前段の単位ミキサ47各々の伝送線路43の他端と、後段の単位ミキサ46各々の伝送線路42の一端との間に、図2に示すCRLH線路47を介挿(挿入)した場合、図6に示すように、このCRLH線路47が22GHzから24GHz、26GHzから50GHzまでの周波数帯域においてはそれぞれ50Ωにインピーダンス整合されている。このため、CRLH線路47を付加した図6の疑似伝送線路も、CRLH線路47の整合条件が保持され、22GHzから24GHzと26GHzから50GHzまでの周波数帯域においては50Ωにインピーダンス整合されている。すなわち、25GHzにおいては、インピーダンスが50Ωとはなっていない。
【0050】
ここで、22GHzから24GHzまでの周波数帯域(低周波数帯域側のLSB)においては、CRLH線路47は左手系の伝搬特性を示し、RF出力信号がRF出力端子34に出力される。
また、26GHzから50GHzまでの周波数帯域(高周波数帯域側のUSB)においては、CRLH線路47は右手系の伝搬特性を示し、RF出力信号がRF出力端子33に出力される。
25GHzの周波数を挟む2つの周波数帯域において、RF出力端子34から出力される周波数に比較し、より高い周波数のRF出力信号がRF出力端子33から出力される
【0051】
次に、図8は、図6に示す本実施形態による分布ミキサにおいて、単位ミキサ46を6段接続し、図2で説明したCRLH線路47を疑似伝送線路に介挿した際のRF出力信号及びLO漏洩出力のIF入力の依存性のミュレーションによる計算結果を示す図である。図8において、横軸は入力されるIF信号のレベル(dB値)を示し、縦軸は出力されるRF信号の計算結果(dB値)を示す。
この図8においては、図6おけるRF出力端子33から出力されるRF出力(USB及びLSB)とLO漏洩出力LO_leakのIF入力信号に対する依存性を示している。このシミュレーションにおいて、LO信号の周波数は反射特性及び通過損失が低下する25GHzであり、IF信号の周波数は5GHzである。
この図8により、LO信号の周波数をCRLH線路47のバンドギャップである25GHzに設定することにより、図15の従来例に比較し、LO_leakの信号のレベルが約10dB低下していることが分かる。
また、図8により、LSBの信号レベルが所望信号である、LSBより高い周波数帯域であるUSBに比較して、10dB低下していることが分かる。
【0052】
次に、図9は、図6に示す本実施形態による分布ミキサにおいて、単位ミキサ46を6段接続し、図2で説明したCRLH線路47を疑似伝送線路に介挿した際のRF出力信号及びLO漏洩出力のIF入力の依存性のミュレーションによる計算結果を示す図である。図9において、横軸は入力されるIF信号のレベル(dB値)を示し、縦軸は出力されるRF信号の計算結果(dB値)を示す。
この図9においては、図6おけるRF出力端子34から出力されるRF出力(USB及びLSB)とLO漏洩出力LO_leakのIF入力信号に対する依存性を示している。このシミュレーションにおいて、LO信号の周波数は反射特性及び通過損失が低下する25GHzであり、IF信号の周波数は5GHzである。
この図9により、LO信号の周波数をCRLH線路47のバンドギャップである25GHzに設定することにより、図16の従来例に比較し、LO_leakの信号のレベルが低下していることが分かる。
また、図9により、USBの信号レベルが所望信号であるLSBに比較して、15dB以上抑圧されていることが分かる。
【0053】
このように、本実施形態の分布ミキサは、単位ミキサ46を多段に接続して構成された構成において、単位ミキサ46の疑似伝送線路におけるRF出力端子の接続間にCRLH線路47を介挿することにより、右手系領域の周波数帯域に設定したUSB信号と、左手系領域の周波数帯域に設定したLSB信号との伝送方向を制御することが可能となり、異なる周波数帯域の信号を分波させ、かつLO漏洩出力レベルを低下させ、分布ミキサの異なるRF出力端子33及び34からそれぞれ出力することができる。
また、本実施形態の分布ミキサにおいて、左手系領域の周波数帯域にLO信号の周波数を、右手系領域の周波数帯域にUSB信号の周波数を設定することにより、右手系領域の周波数帯域に設定したUSB信号と左手系領域の周波数帯域に設定したLO信号の伝送方向を制御することが可能となり、LO漏洩出力レベルを低下させ、USB信号をRF出力端子33から出力することができる。
また、同様に、本実施形態の分布ミキサにおいて、右手系領域の周波数帯域にLO信号の周波数を、左手系領域の周波数帯域にLSB信号の周波数を設定することにより、左手系領域の周波数帯域に設定したLSB信号と右手系領域に設定したLO信号の伝送方向を制御することが可能となり、LO漏洩出力レベルを低下させ、LSB信号をRF出力端子34から出力することができる。
【0054】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
すなわち、上述した各実施形態は全て本発明の実施形態を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は種々の変形態様で実施することができる。
したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0055】
1…入力端子
2,3,33,34…出力端子
4,35,36…終端回路
5,6,7,8,9,10,20,21,22…伝送線路
11…増幅器部
12…単位増幅器
13,47…CRLH線路
15,16…入出力端子
17,18,19…容量素子
31…IF入力端子
32…LO入力端子
37,38,39,40,41,42,43,44…伝送線路
45…ミキサ部
46…単位ミキサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の伝送線路の一端、第2の伝送線路の一端及び第3の伝送線路の一端を第1の接続点で接続してなり、前記第1の伝送線路の他端を第1の入力端とし、前記第2の伝送線路の他端を第2の入力端とする入力疑似伝送線路と、第4の伝送線路の一端、第5の伝送線路の一端及び第6の伝送線路の一端を第2の接続点で接続してなり、前記第4の伝送線路の他端を第1の出力端とし、前記第5の伝送線路の他端を第2の出力端とする出力疑似伝送線路と、入力端子が前記第3の伝送線路の他端と接続され、出力端子が前記第6の伝送線路の他端と接続された増幅部とからなる単位増幅器と、
第1の周波数帯域において左手系の伝搬特性となり、前記第1の周波数帯域より高い周波数の第2の周波数帯域において右手系の伝搬特性となる左手/右手系複合線路と、
を複数接続して構成される分布増幅器であり、
信号入力端子を初段の前記単位増幅器の前記第1の入力端に接続し、前記第2の入力端を次段の前記単位増幅器の前記第1の入力端に接続し、最終段の前記単位増幅器の第2の入力端を終端回路に接続し、
第1の信号出力端子が前記初段の前記単位増幅器の前記第1の出力端に接続され、前記第2の出力端と前記左手/右手系複合線路の第1の入出力端子が接続され、前記左手/右手系複合線路の第2の入出力端子が次段の前記単位増幅器の前記第1の出力端に接続され、前記最終段の前記単位増幅器の前記第2出力端が第2の信号出力端子に接続されている
ことを特徴とする分布増幅器。
【請求項2】
前記信号入力端子に前記第1の周波数帯域の入力信号が入力された場合、前記第1の信号出力端子から出力信号が出力され、前記第2の周波数帯域の入力信号が入力された場合、前記第2の信号出力端子から出力信号が出力されることを特徴とする請求項1に記載の分布増幅器。
【請求項3】
前記左手/右手系複合線路は、
第1の容量素子の一端に第7の伝送線路の一端が接続され、前記第7の伝送線路の他端と第8の伝送線路の一端が第3の接続点において接続され、第2の容量素子の一端が前記第8の伝送線路の他端と接続され、第9の伝送線路の一端が前記第3の接続点と接続され、前記第9の伝送線路の他端が接地され、第3の容量素子の一端が前記第3の接続点と接続され、前記第3の容量素子の他端が接地され、前記第1の容量素子の他端が前記第1の入出力端子であり、前記第2の容量素子の他端が前記第2の入出力端子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分布増幅器。
【請求項4】
第1の伝送線路の一端、第2の伝送線路の一端及び第3の伝送線路の一端を第1の接続点で接続してなり、前記第1の伝送線路の他端を第1のRF出力端とし、前記第2の伝送線路の他端を第2のRF出力端とするRF疑似伝送線路と、第4の伝送線路の一端及び第5の伝送線路の一端を第2の接続点で接続してなり、前記第4の伝送線路の他端を第1のLO入力端とし、前記第5の伝送線路の他端を第2のLO入力端とするLO疑似伝送線路と、第6の伝送線路の一端、第7の伝送線路の一端及び第8の伝送線路の一端を第3の接続点で接続してなり、前記第6の伝送線路の他端を第1のIF入力端とし、前記第7の伝送線路の他端を第2のIF入力端とするIF疑似伝送線路と、RF端子が前記第3の伝送線路の他端に接続され、LO端子が前記第2の接続点と接続され、IF端子が前記第8の伝送線路の他端に接続された単位ミキサと、
第1の周波数帯域において左手系の伝搬特性となり、前記第1の周波数帯域より高い周波数の第2の周波数帯域において右手系の伝搬特性となる左手/右手系複合線路と、
を複数接続して構成される分布ミキサであり、
LO信号入力端子を初段の単位ミキサの前記第1のLO入力端に接続し、前記第2のLO入力端を次段の前記単位ミキサの前記第1のLO入力端に接続し、最終段の前記単位ミキサの第2のLO入力端を第1の終端回路に接続し、
IF信号入力端子を前記初段の単位ミキサの前記第1のIF入力端に接続し、前記第2のIF入力端を前記次段の前記単位ミキサの前記第1のIF入力端に接続し、前記最終段の前記単位ミキサの第2のIF入力端を第2の終端回路に接続し、
第1のRF信号出力端子を前記初段の単位ミキサの前記第1のRF出力端とし、第2のRF出力端と前記左手/右手系複合線路の第1の入出力端子が接続され、前記左手/右手系複合線路の第2の入出力端子が前記次段の前記単位ミキサの前記第1のRF力端に接続され、前記最終段の前記単位ミキサの前記第2のRF出力端が第2のRF信号出力端子に接続されている
ことを特徴とする分布ミキサ。
【請求項5】
前記第1のRF信号出力端子から前記第1の周波数帯域のRF出力信号が出力され、前記第2のRF信号出力端子から前記第2の周波数帯域のRF出力信号が出力されることを特徴とする請求項4に記載の分布ミキサ。
【請求項6】
前記左手/右手系複合線路は、
第1の容量素子の一端に第9の伝送線路の一端が接続され、前記第9の伝送線路の他端と第10の伝送線路の一端が第4の接続点において接続され、第2の容量素子の一端が前記第10の伝送線路の他端と接続され、第11の伝送線路の一端が前記第4の接続点と接続され、前記第11の伝送線路の他端が接地され、第3の容量素子の一端が前記第4の接続点と接続され、前記第3の容量素子の他端が接地され、前記第1の容量素子の他端が前記第1の入出力端子であり、前記第2の容量素子の他端が第2の入出力端子であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の分布ミキサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−34291(P2012−34291A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173918(P2010−173918)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】