説明

分散アゾ染料

式(1)の新規分散アゾ染料と、その製造方法を提供する。これらの染料は、優れた洗濯堅牢度と、昇華堅牢度と光堅牢度を有している。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な分散染料およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分散染料は、合成繊維や、該合成繊維と他の繊維、例えばセルロース、ポリウレタン、ナイロン、ウールとの混合繊維を、通常の吸尽染色、連続染色、および印刷技術を用いて染色するために使用されている。
【0003】
近年、流行、ファッションおよび市場の要求の変化とともに、混合織物の消費が大きく増加している。これらの新しい織物は、細いデニールのポリエステル繊維を用いた、またはポリウレタン、ナイロン、およびウールとの混合繊維を用いた微細繊維から製造されている。これらの新しい彩色織物の堅牢度の中で、光堅牢度、昇華堅牢度、特に従来の分散染料を用いて染色または印刷した時の洗濯堅牢度が低下する。細いデニールのポリエステル繊維、またはポリウレタン、ナイロン、およびウールとの混合繊維を用いて染色繊維を細線化すると堅牢特性が低下する。
【0004】
IN190551とその分割特許IN197577およびIN196765は、フルオロスルホニル基を含むモノアゾ染料を開示している。前述のインド特許は、合成織物材料または混合繊維の彩色方法を開示している。
【0005】
WO2008/074719として発行されている特許出願2162/KOLNP/2009は、(a)式(1)で表される2種以上の分散染料を含む分散染料混合物を開示している。
【0006】
このように従来の技術は、アゾ染料化合物とその製造方法を開示しているが、堅牢特性が十分ではなく、特に光堅牢度、洗濯堅牢度が十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、黄色、赤色および青色の分散アゾ染料を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、合成織物材料の彩色方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、ポリエステル繊維に対して優れた光堅牢度と洗濯堅牢度を与える分散アゾ染料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様として、式(1)の分散染料が提供される。
【0011】
【化1】

【0012】
ここで、Rは、水素、メチル、ヒドロキシルまたはNHRであり、Rは水素、クロロまたはメトキシである。
Dは式(2a)の基である。
【0013】
【化2】

【0014】
ここで、X、YおよびZは、独立に、水素、メチル、ハロゲン、シアノまたはニトロである。
【0015】
あるいはDは式(2b)の基である。
【0016】
【化3】

【0017】
は、独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、−SOCHまたは−SCNであり、Tは水素またはハロゲンである。
【0018】
あるいはDは式(2c)の基である。
【0019】
【化4】

【0020】
あるいはDは式(2d)の基である。
【0021】
【化5】

【0022】
ここで、TとTは、独立に、ニトロ、アセチル、COORまたはシアノであり、
は、−COCH、−COC、−SOCHまたはSOであり、
はC〜Cの非置換アルキルであり、
nとmは、独立に0、1または2である。
【0023】
本発明のさらに別の態様として、式(1)の分散アゾ染料の製造方法が提供され、該分散アゾ染料はポリエステル繊維に対して優れた洗濯堅牢度と光堅牢度を与える。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、優れた洗濯堅牢度と光堅牢度を有する式(1)の新規な分散染料を提供する。
【0025】
【化6】

ここで、Rは、水素、メチル、ヒドロキシルまたはNHRであり、Rは水素、クロロまたはメトキシである。
Dは式(2a)の基である。
【0026】
【化7】

ここで、X、YおよびZは、独立に、水素、メチル、ハロゲン、シアノまたはニトロである。
【0027】
あるいはDは式(2b)の基である。
【0028】
【化8】

は、独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、−SOCHまたは−SCNであり、Tは水素またはハロゲンである。
【0029】
あるいはDは式(2c)の基である。
【0030】
【化9】

【0031】
あるいはDは式(2d)の基である。
【0032】
【化10】

【0033】
ここで、TとTは、独立に、ニトロ、アセチル、COORまたはシアノであり、
は、−COCH、−COC、−SOCHまたはSOであり、
はC〜Cの非置換アルキルであり、
nとmは、独立に0、1または2である。
【0034】
本発明は、さらに、新規な分散染料の合成方法、染料組成物の製造方法およびこれらの染料の繊維への適用方法についても記載している。
【0035】
分散アゾ染料は、第1芳香族アミンのジアゾ化、およびそれに続く適切なカップリング成分との結合により通常製造されている。
【0036】
適切な条件下で、第1芳香族アミンまたは第1ヘテロ芳香族アミンはうまくジアゾ化され、特別に開発されたカップリング成分と結合して式(1)のそれぞれの新規な分散染料を与える。これらの新規な分散染料は優れた洗濯堅牢度と光堅牢度を有している。
【0037】
本発明は、さらに、本発明の分散染料と、彩色用途に一般的に使用されている分散剤等の成分をさらに少なくとも1種と、必要に応じて界面活性剤または湿潤剤を含む組成物を提供する。
【0038】
その染料組成物は、通常、全染料の10重量%〜65重量%、好ましくは20重量%〜50重量%を、単一化合物または混合物として固体状態で含む。
【0039】
分散剤の代表例は、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物およびフェノール/クレゾール/スルファニル酸/ホルムアルデヒド縮合物である。代表的な湿潤剤の例は、スルホン化されていてもよくあるいはリン酸塩でもよいアルキルアリールエトキシレートであり、および含まれてもよい他の成分の代表的な例は、無機塩、鉱油またはノナノール等の脱泡剤、有機液体および緩衝剤である。分散剤は、染料混合物の80重量%〜400重量%存在してもよい。湿潤剤は、染料混合物の0.1重量%〜20重量%存在してもよい。
【0040】
本発明の分散染料または分散染料混合物は、適切な分散剤とともに、水系媒体中でガラスビーズまたは砂を用いて粉砕される。本発明の組成物は、分散剤、フィラーおよび他の界面活性剤をさらに含んでもよく、および噴霧乾燥等の技術により乾燥してもよく、それにより15重量%〜65重量%の染料を含む固体組成物が得られる。
【0041】
繊維材料を染色する場合、一般的な方法で染料は分散剤とともに水中で粉砕され、得られた染料は、液体状態で、あるいは液体を噴霧乾燥して得られる粉末の状態で染色または印刷のために使用される。得られた各染料は、本発明の染料の1種を含む、または2種以上の混合物を含む状態で、染色または印刷に使用される。
【0042】
吸尽染色では、ポリエステル繊維、複合繊維および混合繊維は、高温染色、キャリア染色および連続染色により染色され、優れた堅牢度を有する。式(1)の染料は、別々に、あるいは式(1)の誘導体の混合物として、染色および印刷のために用いることができる。
【0043】
印刷の場合、ポリエステル繊維、織物材料は、直接印刷または抜染により処理され、優れた堅牢度を有する。
【0044】
本発明の態様は、以下の実施例を用いてより詳細に記載され、部は特に断らない限り重量部を意味する。以下のように本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
式1の染料の製造方法は、以下の工程を含む:
a)カップリング成分の合成;
b)芳香族アミンのジアゾ化;
c)ジアゾニウム塩と適切なカップリング成分とのカップリング;
d)適切な分散剤、フィラー、および必要に応じて湿潤剤または界面活性剤を用いた粉砕;
e)液体として使用する、あるいは最終粉末サンプルを得るために噴霧乾燥する。
【実施例】
【0046】
実施例1.
構造式(3)
【0047】
【化11】

【0048】
構造式(3)の実施例1は、以下の方法で合成される。
【0049】
DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)40.0gと3−アミノアセトアニリド15gの混合物の中にアクリル酸20.0gを添加し、80℃に加熱し、その状態で2時間攪拌した。反応終了後、反応物へクロロアセトニトリル(シアノメチルクロライド)19.4gを添加し、80℃に加熱し、その状態で2時間攪拌した。反応終了後、カプラー35gを含むこの反応物を次のカップリング反応に用いた。
【0050】
0〜5℃に保った、2,4−ジニトロアニリン19.4gと硫酸50mlの混合物に、40%ニトロシル硫酸30mlを添加し、5℃未満で2時間攪拌した。2時間後、このジアゾニウム塩を、0〜5℃に保った、事前装入された氷、水および35gのカプラー N,N−ジシアノメトキシカルボニルエチル−3−アセトアミドアニリンを含む混合物に添加した。反応物を5℃未満で1時間攪拌し、濾別した。次いで結晶固体を冷やした水で洗浄し、式(3)の染料を収率90%で得た。式(3)の染料のλmax(アセトン中)は536nmであった。
【0051】
得られたウエットプレスケーキ2.0gを、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物2.0gと水50gとガラスビーズ(平均サイズは直径0.8mm)500gとともに24時間粉砕し、その後で濾過して、ガラスビーズを分離した。
【0052】
得られた最終液体20gを水100mlの中に加え、酢酸でpH4に調製し、吸尽染色のために、染浴の中にポリエステル10g分を加えた。
【0053】
染浴を135℃に加熱しその温度を40分間維持した。適切に濯ぎ、洗浄、乾燥を行うと、染められた材料は、深いルビーの色合いを与え、優れた洗濯堅牢度、光堅牢度、および昇華堅牢度を有していた。
【0054】
染色された織物の堅牢特性は、以下の試験方法により評価された。
【0055】
洗濯堅牢度は、AATCC 61 2A試験法、光堅牢度はISO 105 B02試験法、昇華試験は、180度で30秒および210度で30秒である。
【0056】
実施例2.
式(4)の染料を、実施例1に記載された方法と同じ方法を用いて合成し、表に記載された以下の染料を得た。
【0057】
【化12】

【0058】
【表1】

【0059】
これらの染料は、優れた洗濯堅牢度、光堅牢度および昇華堅牢度を示した。
【0060】
実施例3.
式(2)の染料を、実施例1に記載された方法と同じ方法を用いて合成し、表に記載された以下の染料を得た。
【0061】
【化13】

【0062】
【表2】

【0063】
これらの染料は、優れた洗濯堅牢度、光堅牢度および昇華堅牢度を示した。
【0064】
実施例4.
式(1)の染料を、実施例1に記載された方法と同じ方法を用いて合成し、表に記載された以下の染料を得た。
【0065】
【化14】

【0066】
【表3】

【0067】
これらの染料は、優れた洗濯堅牢度、光堅牢度および昇華堅牢度を示した。
【0068】
比較例1.
WO2008/074719の表1にそれぞれ染料1−5と染料1−38と記載された以下の染料を、本特許の実施例2−1の染料と、以下のように洗濯堅牢度と昇華堅牢度を比較した。
【0069】
【化15】

【0070】
【表4】

【0071】
本特許の実施例2−1の染料と、比較染料1−5は、非常に類似した化学物質であり、アミノ基の置換基がエチル基とCCOOCHCNである点、実施例2−1ではメトキシ基がない点だけが相違している。しかし、その特性の違いは、特に洗濯堅牢度で非常に大きく、また昇華堅牢度と光堅牢度でも大きい。この比較例は、WO2008/074719の場合の1つのみの置換基に代えて、2つのCCOOCHCN置換基を導入すると、洗濯堅牢度を向上させることができるという論理手法に対する確信を与える。2つのCCOOCHCN置換基を導入すると、より優れた洗濯堅牢度が得られ、および昇華堅牢度と光堅牢度も向上する。
【0072】
比較例2.
【0073】
【化16】

【0074】
【表5】

【0075】
本特許の実施例2−4の染料と、比較染料1−38は、非常に類似した化学物質であり、アミノ基の置換基がエチル基とCCOOCHCNである点だけが相違している。しかし、その特性の違いは、特に洗濯堅牢度で非常に大きく、また昇華堅牢度と光堅牢度でも大きい。この比較例は、WO2008/074719の場合の1つのみの置換基に代えて、2つのCCOOCHCN置換基を導入すると、洗濯堅牢度を向上させることができるという論理手法に対する確信を与える。2つのCCOOCHCN置換基を導入すると、より優れた洗濯堅牢度が得られ、および昇華堅牢度と光堅牢度も向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の新規分散アゾ染料:
【化1】

ここで、Rは、水素、メチル、ヒドロキシルまたはNHRであり;
は水素、クロロまたはメトキシであり;
Dは、式(2a)の基であり、
【化2】

ここで、X、YおよびZは、独立に、水素、メチル、ハロゲン、シアノまたはニトロであり;
あるいはDは式(2b)の基であり、
【化3】

ここで、Tは、独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、−SOCHまたは−SCNであり;
は水素またはハロゲンであり;
あるいはDは式(2c)の基であり、
【化4】

あるいはDは式(2d)の基であり、
【化5】

ここで、TとTは、独立に、ニトロ、アセチル、COORまたはシアノであり;
は、−COCH、−COC、−SOCHまたはSOであり;
はC〜Cの非置換アルキルであり;
nとmは、独立に0、1または2である。
【請求項2】
式(1)の化合物が式(2)の化合物である請求項1記載の新規分散アゾ染料:
【化6】

【表1】

【請求項3】
式(1)の化合物が式(4)の化合物である請求項1記載の新規分散アゾ染料:
【化7】


【表2】

【請求項4】
式(1)の化合物が以下の化合物である請求項1記載の新規分散アゾ染料:
【化8】

【表3】

【請求項5】
式(3)で表される新規分散アゾ染料:
【化9】

【請求項6】
式(5)で表される新規分散アゾ染料:
【化10】

【請求項7】
式(6)で表される新規分散アゾ染料:
【化11】

【請求項8】
本発明の1種の成分または2種以上の染料の組み合わせとして、式(1)の分散アゾ染料を染料組成物の10〜65重量%と、
少なくとも1種の分散剤を染料組成物の20〜200重量%と、および
必要に応じて、界面活性剤または湿潤剤等の成分を0.1%〜20%と、脱泡剤および/または防塵剤を含む分散染料組成物。
【請求項9】
以下の工程を含む式1の分散アゾ染料の製造方法:
a)カップリング成分の合成;
b)芳香族アミンのジアゾ化;
c)ジアゾニウム塩と適切なカップリング成分とのカップリング;
d)適切な分散剤、フィラーおよび必要に応じて湿潤剤または界面活性剤とともに行う粉砕。
【請求項10】
請求項1から7に1種の成分または2種以上の染料を組み合わせたものとして記載された新規染料のいずれかを用いて染色された材料。

【公表番号】特表2013−515810(P2013−515810A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545525(P2012−545525)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000850
【国際公開番号】WO2011/077461
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512165064)カラーテックス・インダストリーズ・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】COLOURTEX INDUSTRIES LIMITED
【Fターム(参考)】