説明

分散サーバ故障応答プログラム,サーバ負荷分散装置および方法

【課題】 サーバ負荷分散処理において,セッション維持中の分散サーバの故障をクライアント側に適切に応答できるようにする。
【解決手段】 分散サーバ故障応答装置10の故障中サーバセッション維持情報管理部14は,分散サーバの故障検出通知により,該当するセッション維持情報をセッション維持情報記憶部11から故障中サーバセッション維持情報記憶部12へ転記する。セッション維持情報検索部15は,セッション維持情報の問い合わせにより,セッション維持情報記憶部11を検索し,該当する情報が抽出できなければ,故障中サーバセッション維持情報記憶部12を検索する。そして,サービスエラー応答処理部16は,故障中サーバセッション維持情報記憶部12から該当する情報が抽出された場合に,所定のサービスエラー応答をクライアント3へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,分散サーバ故障応答プログラムに関し,より詳しくは,サーバ負荷分散処理において,一連の要求で構成される処理であるセッションの分散先の一意性を保証するというセッション維持処理中に,分散サーバの故障を検出した場合のエラー応答処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は,サーバ負荷分散処理を説明するための図である。
【0003】
図7(A)に示すように,分散サーバシステムのサーバ負荷分散装置(SLB)91は,サーバ負荷分散技術を利用して,クライアント93から一連の要求(要求A,要求B,要求C)を受け取ると,分散先となって要求を実行する分散サーバ92a,92bに対して,所定のサーバ負荷分散定義論理に従って要求を振り分ける。
【0004】
しかし,クライアント93から一つのセッションとして送信される一連の要求のすべてが,同じ分散サーバによって処理されなければならない場合がある。あるセッションの一連の要求の割り当て先(分散サーバ)を固定化する,すなわち,クライアントに対して要求の割り当ての一意性を保証する処理をセッション維持処理という。
【0005】
サーバ負荷分散装置91は,セッション維持処理を実行する機能を備え,以下のような処理を行う。
【0006】
図7(B)に示すように,サーバ負荷分散装置91は,クライアント93から一つのセッションで送信される一連の要求のうち最初の要求Aを受信する。要求Aにはセッション維持処理を行うためのなんらかの情報(例えば,セッション識別情報)が追加されていないので,所定のサーバ負荷分散の定義論理に従って要求Aを分散サーバ92aに対して振り分ける。分散サーバ92aは,要求Aの処理応答に,例えばセッション識別情報(SID=1)を追加してサーバ負荷分散装置91へ送信する。
【0007】
サーバ負荷分散装置91は,要求Aの処理応答にセッション識別情報が設定されているので,このセッションがセッション維持処理の対象となると判断し,セッション識別情報(SID=1),分散先のサーバ情報(分散先=Server_a)などの情報からセッション維持情報を生成して保存し,要求Aの処理応答をクライアント93へ送信する。
【0008】
クライアント93は,要求Aの処理応答に設定されたセッション識別情報を検出し,次に送信する要求Bにセッション識別情報(SID=1)を設定し,サーバ負荷分散装置91へ送信する。サーバ負荷分散装置91は,受信した要求Bのセッション識別情報を検出し,サーバ負荷分散装置91で記録しておいたセッション維持情報を参照して,要求Bを分散サーバ92aへ振り分ける。
【0009】
クライアント93の次の要求Cも,同様に処理されて要求Bに設定されたセッション識別情報によって,分散サーバ92aへ振り分けられる。このようにして,サーバ負荷分散装置91は,クライアント93のセッションの一連の要求を同じ分散サーバ92aへ固定的に振り分けることができ,セッション維持(一意性保証)を実現している。
【0010】
このようなセッション維持中に,要求A,要求Bを処理した分散サーバ92aで故障が発生する場合がある。図8に示すように,サーバ負荷分散装置91は,分散サーバ92aの故障を検出すると,故障した分散サーバ92aに対するセッション維持情報を廃棄(メモリ消去)する。そのため,サーバ負荷分散装置91は,クライアント93からセッション維持が必要な要求Cを受信した場合に,保存中のセッション維持情報から要求Cに関するセッション識別情報を検索することができず,要求Cの分散先を決定することができない。そのため,要求Cはセッション維持情報が設定されていないものと判定する。そして,通常の負荷分散の定義論理に従って対象分散サーバの中から稼働中の別の分散サーバ92bを分散先と決定して要求Cを振り分けていた。
【0011】
なお,WWWブラウザとWWWサーバ間でのネットワーク障害に対して電文を保証する技術として,WWWブラウザと分散対象のWWWサーバとの間にWWWゲートウェイを設け,WWWブラウザとWWWサーバとのセッション情報およびWWWサーバが処理したWWWブラウザへ未送信の処理結果を格納した共有ファイルをWWWゲートウェイに保持し,ネットワーク障害が生じた場合に該共有ファイルからセッション接続中かつ未送信の処理結果をWWWブラウザへ送信してネットワーク障害に対して処理結果の送信を保証するシステムが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−90024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし,図8を用いて説明したように,セッション維持中の分散サーバ92aの故障が検出されて,サーバ負荷分散装置91が,負荷分散の定義論理に従って要求Cを別の分散サーバ92bへ振り分けた場合に,分散サーバ92bとクライアント93とにおいて,以下のような不具合が発生していた。
【0013】
分散サーバ92bでは,サーバ負荷分散装置91から受信した要求Cが,予期しない要求であるため,クライアント93にシーケンスエラー(要求異常)を応答する。分散サーバ92bにとって,予期しない要求Cの受信によって不要な応答が発生することになり,データ処理量が増加してしまうという不具合がある。
【0014】
また,クライアント93では,分散サーバ92bから要求Cに対してシーケンスエラーを応答されるが,クライアント側としては正しいシーケンスを実行しているつもりであるため,このシーケンスエラー応答の意味する原因が直ちにはわからず,応答の原因の調査に時間を要してしまうという不具合がある。
【0015】
本発明の目的は,サーバ負荷分散処理において,セッション維持中の分散サーバに故障が発生した場合に,他の分散サーバに不要な処理を負担させないようにし,また,クライアント側に適切な応答通知を送信して不要な原因調査を排除できるようにする分散サーバ故障応答処理手段として,コンピュータを機能させるプログラムを提供することである。
【0016】
また,本発明の別の目的は,前記プログラムの実行により実現される処理を行うサーバ負荷分散装置およびサーバ負荷分散方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の目的を達成するため,本発明は,クライアントの要求を分散対象である分散サーバへ振り分けるサーバ負荷分散処理中に,一つのセッションにおける一連の要求について分散サーバを固定化して割り当てるセッション維持処理を行い,前記セッション維持処理中のセッションに関連する分散サーバの故障に対する応答を行う処理手段として,コンピュータを機能させるためのプログラムであって,1)分散サーバの故障検出通知を受け取った場合に,前記セッション維持処理の対象であるセッションおよび当該セッションが割り当てられた分散サーバを記録したセッション維持情報を記憶するセッション維持情報記憶手段から,前記通知された故障中分散サーバで保持されていたセッションのセッション維持情報を抽出して削除し,前記抽出したセッション維持情報をもとに故障中サーバセッション維持情報を作成して故障中サーバセッション維持情報記憶手段へ保存する故障中サーバセッション維持情報管理手段と,2)セッションがセッション維持処理の対象であるか否かの問い合わせ要求を受け取った場合に,前記セッション維持情報記憶手段から問い合わせ対象セッションのセッション維持情報を検索し,前記問い合わせ対象セッションのセッション維持情報が前記セッション維持情報記憶手段に保存されていない場合に,前記故障中サーバセッション維持情報記憶手段から前記問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報を検索する故障中サーバセッション維持情報検索手段と,3)前記故障中サーバセッション維持情報検索手段の検索結果として,前記問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報が抽出された場合に,前記問い合わせ対象セッションの要求元クライアントに対し,所定のサービスエラー応答処理を行うサービスエラー応答処理手段とを,前記コンピュータに機能させるためのものである。
【0018】
本発明は,サーバ負荷分散装置で一つのセッションにおける一連の要求について分散サーバを固定化して割り当てるセッション維持処理を行っている場合に,以下の処理を行う。
【0019】
セッション維持情報記憶手段には,分散対象の一つの分散サーバから故障検出通知を受け取った場合に,前記セッション維持処理の対象であるセッションおよび当該セッションが割り当てられた分散サーバを設定したセッション維持情報が予め保存されている。
【0020】
そして,故障中サーバセッション維持情報管理手段は,セッション維持情報記憶手段から,通知された故障中分散サーバが保持するセッションのセッション維持情報を抽出する。そして抽出したセッション維持情報をもとに故障中サーバセッション維持情報を作成して故障中サーバセッション維持情報記憶手段へ保存する。
【0021】
その後,セッションがセッション維持処理の対象であるか否かの問い合わせ要求を受け取った場合に,故障中サーバセッション維持情報検索手段は,セッション維持情報記憶手段から問い合わせ対象セッションのセッション維持情報を検索する。そして,問い合わせ対象セッションのセッション維持情報がセッション維持情報記憶手段に保存されていない場合に,故障中サーバセッション維持情報記憶手段から問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報を検索する。
【0022】
そして,故障中サーバセッション維持情報検索手段の検索結果として,問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報が抽出された場合に,サービスエラー応答処理手段は,問い合わせ対象セッションの要求元クライアントに対し,所定のサービスエラーを示すエラー応答を送信する。
【0023】
本発明により,要求元のクライアントは,セッション維持中にサービスエラーが生じたことを知ることができるため,従来のように,実態を反映していないシーケンスエラーを受信することによって生じる無駄なエラー原因の調査処理を行う必要がなくなる。
【0024】
また,本発明は,前記の構成をとる場合に,分散サーバとクライアントとのセッションで実行されるサービスごとに,前記セッションのセッション維持処理中に発生した分散サーバの故障に対するサービスエラー応答処理の内容を定義するサービスエラー応答処理定義情報を記憶するサービスエラー応答処理定義情報記憶手段を備え,前記故障中サーバセッション維持情報管理手段では,前記セッション維持情報が少なくともセッションで実行されるサービスを識別する情報を含むものである場合に,当該セッション維持情報をもとに,前記サービスを識別する情報を含む前記故障中サーバセッション維持情報を生成する処理を行い,前記サービスエラー応答処理手段では,前記問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報が抽出された場合に,前記故障中サーバセッション維持情報によって識別されるサービスに対応するサービスエラー応答処理定義情報に従ってエラー応答処理を行うことができる。
【0025】
これにより,予め記憶していたサービスエラー応答処理定義情報をもとに,故障した分散サーバが維持していたセッションのサービスに応じた適切なエラー応答処理を行うことができる。
【0026】
また,本発明は,前記プログラムの実行によって実現される処理手段を備えるサーバ負荷分散装置,および前記プログラムの実行によって実現される処理を行う処理過程を備えるサーバ負荷分散方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば,セッション維持中の分散サーバに故障が生じた場合に,他の分散サーバに不要な要求が振り分けられることがなくなるため,分散サーバ側で不要な要求を受信することによりデータ処理負担を回避することができる。
【0028】
また,クライアント側では,正常な要求に対してステータス(要求異常)エラー応答が通知されることがなくなり,ステータスエラーに代わる適切なエラー応答が通知されるため,無駄な原因調査を回避することができる。
【0029】
また,本発明によれば,サービスごとに定義したサービスエラー応答処理定義情報に従ってエラー応答処理を行うことができるため,エラーが生じたセッションのサービスに応じた適切なエラー応答処理を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1に,本発明の実施の最良の形態における構成例を示す。
【0031】
本発明にかかる分散サーバ故障応答装置10は,サーバ負荷分散装置(SLB)1に組み込まれたプログラムとして実施される。
【0032】
サーバ負荷分散装置(SLB)1は,所定のサーバ負荷分散定義論理に従って,クライアント3(3a,3b)の要求を分散対象である分散サーバ2(2a,2b)へ振り分ける処理装置であって,クライアント3aからのセッションにおける一連の要求について分散サーバ2aを固定化して割り当てるセッション維持処理を行う装置である。
【0033】
分散サーバ故障応答装置10は,セッション維持情報記憶部11,故障中サーバセッション維持情報記憶部12,サービスエラー応答処理定義情報記憶部13,故障中サーバセッション維持情報管理部14,セッション維持情報検索部15,およびサービスエラー応答処理部16を備える。
【0034】
セッション維持情報記憶部11は,セッション維持処理の対象であるセッションおよび当該セッションが割り当てられた分散サーバ2を設定したセッション維持情報を記憶する記憶手段である。
【0035】
図2に,セッション維持情報の例を示す。図2(A)に示すセッション維持情報は,クライアント3aと分散サーバ2aとのセッション維持処理の対象となるセッションを識別するセッションID(例えば,SID=1),セッション維持中の要求が割り当てられた分散サーバを識別する分散先(例えば,Server_a)などのデータ項目から構成される。セッションIDは,例えば,要求を実行した分散サーバ2aで設定される値が使用され,分散先は,分散サーバ2aのIPアドレスを使用する。
【0036】
また,図2(B)に示すように,セッション維持情報は,さらに,セッションにより実行されるサービスを識別するサービス名(例えば,Service1)のデータ項目を含むように構成されていてもよい。サービス名は,例えば,http通信,ftp通信,SMTP通信などのサービスの種類によって設定される。
【0037】
故障中サーバセッション維持情報記憶部12は,故障した分散サーバ2aで保持していたセッション維持処理中のセッションに関する故障中サーバセッション維持情報を記憶する記憶手段である。
【0038】
図3に,故障中サーバセッション維持情報の例を示す。図3(A)に示すように,故障中サーバセッション維持情報は,セッション維持処理の対象となるセッションを識別するセッションID(例えば,SID=1),セッションが割り当てられた分散サーバを識別する分散先(例えば,Server_a)などのデータ項目から構成される。
【0039】
また,図3(B)に示すように,故障中サーバセッション維持情報は,セッションで実行されていたサービスを識別するサービス名(例えば,Service1)などのデータ項目を含むように構成されていてもよい。
【0040】
サービスエラー応答処理定義情報記憶部13は,セッション維持処理のセッションを保持する分散サーバの故障検出通知に対する応答処理をサービスごとに定義するサービスエラー応答処理定義情報を記憶する記憶手段である。
【0041】
図4に,サービスエラー応答処理定義情報の例を示す。サービスエラー応答処理定義情報は,故障中の分散サーバ2aで実行されていたサービスを識別するサービス名(例えば,Service1),エラー応答処理の内容を定義する応答処理内容(例えば,サービスエラー応答通知)などのデータ項目で構成される。応答処理内容は,応答メッセージの形式,応答方法などの定義情報を含むものでもよい。
【0042】
故障中サーバセッション維持情報管理部14は,分散サーバ2aの故障検出通知を受け取った場合に,セッション維持情報記憶部11から,通知された故障中の分散サーバが保持するセッションのセッション維持情報を抽出し,抽出したセッション維持情報をもとに故障中サーバセッション維持情報を作成して故障中サーバセッション維持情報記憶部12へ保存,セッション維持情報記憶部11から抽出したセッション維持情報を削除する処理手段である。
【0043】
また,故障中サーバセッション維持情報管理部14は,セッション維持情報が少なくともサービス名を特定する情報を含むものである場合に,当該セッション維持情報をもとにサービス名を含む故障中サーバセッション維持情報を生成することができる。
【0044】
セッション維持情報検索部15は,セッションがセッション維持処理の対象であるか否かの問い合わせ要求を受け取った場合に,セッション維持情報記憶部11から問い合わせ対象セッションのセッション維持情報を検索し,問い合わせ対象セッションのセッション維持情報がセッション維持情報記憶部11に格納されていない場合に,故障中サーバセッション維持情報記憶部12から問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報を検索する処理手段である。
【0045】
サービスエラー応答処理部16は,セッション維持情報検索部15の検索結果として,故障中サーバセッション維持情報記憶部12から問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報が抽出された場合に,問い合わせ対象セッションの要求元のクライアント3aに対し所定のサービスエラー応答を作成し,送信する処理手段である。
【0046】
また,サービスエラー応答処理部16は,抽出された故障中サーバセッション維持情報にサービス名が含まれている場合に,サービスエラー応答処理定義情報記憶部13から抽出した故障中サーバセッション維持情報に含まれるサービス名に対応するサービスエラー応答処理定義情報の応答処理内容を抽出し,抽出した応答処理内容に従ったエラー応答処理を行う。
【0047】
サービスエラー応答処理定義情報は,図2(A)および図3(A)に示すように,セッション維持情報および故障中サーバセッション維持情報にサービス名が含まれていない場合には構成要素として必要ない。この場合には,サービスエラー応答処理部16は,所定のサービス応答処理として,所定のサービスエラー応答を生成してクライアント3aへ通知する。
【0048】
図5に,故障検出の通知時の処理の流れを示す。
【0049】
分散サーバ故障応答装置10は,処理開始前に,セッション維持処理の対象となっているセッションのセッション維持情報をセッション維持情報記憶部11に保存しておく。また,サービスエラー応答処理定義情報をサービスエラー応答処理定義情報記憶部13に保存しておく。
【0050】
サーバ負荷分散装置1が分散サーバ2aの故障を検出して,分散サーバ故障応答装置10へ分散サーバ2aの故障検出を通知すると,故障中サーバセッション維持情報管理部14は,分散サーバ2aの故障検出通知を受信する(ステップS1)。そして,故障中サーバセッション維持情報管理部14は,セッション維持情報記憶部11を検索し(ステップS2),該当する分散サーバ2aのセッション維持情報があるかどうかを判定する(ステップS3)。
【0051】
該当するセッション維持情報がある場合には(ステップS3のYES),抽出した分散サーバ2aのセッション維持情報をもとに故障中サーバセッション維持情報を作成し,故障中サーバセッション維持情報記憶部12に保存する(ステップS4)。さらに,セッション維持情報記憶部11から,このセッション維持情報を削除する(ステップS5)。
【0052】
一方,該当するセッション維持情報がない場合には(ステップS3のNO),処理を終了する。
【0053】
図6に,セッション維持情報問い合わせ時の処理の流れを示す。
【0054】
サーバ負荷分散装置1がクライアント3aから要求を受信して,要求がセッション維持中のものであるか否かを知るために,分散サーバ故障応答装置10へセッション維持情報の問い合わせを通知すると,分散サーバ故障応答装置10のセッション維持情報検索部15はこのセッション維持情報問い合わせを受信する(ステップS10)。
【0055】
そして,セッション維持情報検索部15は,セッション維持情報記憶部11のセッション維持情報を検索して(ステップS11),セッション維持情報記憶部11に該当するセッション維持情報があるか否かを判定する(ステップS12)。該当するセッション維持情報がなければ(ステップS12のNO),さらに,故障中サーバセッション維持情報記憶部12を検索し(ステップS13),故障中サーバセッション維持情報記憶部12に該当する故障中サーバセッション維持情報があるか否かを判定する(ステップS14)。
【0056】
該当する故障中サーバセッション維持情報があれば(ステップS14のYES),該当する故障中サーバセッション維持情報のサービスエラー応答処理に設定された識別情報(サービス名)をもとに抽出したサービスエラー応答処理定義情報記憶部13のサービスエラー応答処理定義情報に従って,サービスエラー応答を作成し,クライアント3aへ送信する(ステップS15)。該当する故障中サーバセッション維持情報がなければ(ステップS14のNO),処理を終了する。
【0057】
また,セッション維持情報記憶部11に該当するセッション維持情報があれば(ステップS12のYES),該当するセッション維持情報をもとに,クライアント3aの要求を分散サーバ2aへ送信する(ステップS16)。
【0058】
これにより,分散サーバ2aの故障が検出された場合に,保持されていたセッション維持の要求が他の分散サーバ2bに振り分けられることによるシーケンスエラー応答をなくすことができ,新しく振り分けられた分散サーバ2bおよび要求元のクライアント3aの双方に,余分な処理負担が生ずることを防止することができる。
【0059】
以上,本発明をその実施の形態により説明したが,本発明はその主旨の範囲において種々の変形が可能であることは当然である。
【0060】
また,本発明は,コンピュータにより読み取られ実行される処理プログラムとして実施するものとして説明したが,本発明を実現する処理プログラムは,コンピュータが読み取り可能な,可搬媒体メモリ,半導体メモリ,ハードディスクなどの適当な記録媒体に格納することができ,これらの記録媒体に記録して提供され,または,通信インタフェースを介して種々の通信網を利用した送受信により提供されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の最良の形態における構成例を示す図である。
【図2】セッション維持情報の例を示す図である。
【図3】故障中サーバセッション維持情報の例を示す図である。
【図4】サービスエラー応答処理定義情報の例を示す図である。
【図5】故障検出の通知時の処理の流れを示す図である。
【図6】セッション維持情報問い合わせ時の処理の流れを示す図である。
【図7】サーバ負荷分散処理を説明するための図である。
【図8】セッション維持処理中の分散サーバの故障により生じる問題を説明するための図である。
【符号の説明】
【0062】
1 サーバ負荷分散装置(SLB)
10 分散サーバ故障応答装置
11 セッション維持情報記憶部
12 故障中サーバセッション維持情報記憶部
13 サービスエラー応答処理定義情報記憶部
14 故障中サーバセッション維持情報管理部
15 セッション維持情報検索部
16 サービスエラー応答処理部
2(2a,2b) 分散サーバ
3(3a,3b) クライアント


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアントの要求を分散対象である分散サーバへ振り分けるサーバ負荷分散処理中に,一つのセッションにおける一連の要求について分散サーバを固定化して割り当てるセッション維持処理を行い,前記セッション維持処理中のセッションに関連する分散サーバの故障に対する応答を行う処理手段として,コンピュータを機能させるためのプログラムであって,
分散サーバの故障検出通知を受け取った場合に,前記セッション維持処理の対象であるセッションおよび当該セッションが割り当てられた分散サーバを記録したセッション維持情報を記憶するセッション維持情報記憶手段から,前記通知された故障中分散サーバで保持されていたセッションのセッション維持情報を抽出して削除し,前記抽出したセッション維持情報をもとに故障中サーバセッション維持情報を作成して故障中サーバセッション維持情報記憶手段へ保存する故障中サーバセッション維持情報管理手段と,
セッションがセッション維持処理の対象であるか否かの問い合わせ要求を受け取った場合に,前記セッション維持情報記憶手段から問い合わせ対象セッションのセッション維持情報を検索し,前記問い合わせ対象セッションのセッション維持情報が前記セッション維持情報記憶手段に保存されていない場合に,前記故障中サーバセッション維持情報記憶手段から前記問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報を検索する故障中サーバセッション維持情報検索手段と,
前記故障中サーバセッション維持情報検索手段の検索結果として,前記問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報が抽出された場合に,前記問い合わせ対象セッションの要求元クライアントに対し,所定のサービスエラー応答処理を行うサービスエラー応答処理手段とを,前記コンピュータに機能させるための分散サーバ故障応答プログラム。
【請求項2】
請求項1記載の分散サーバ故障応答プログラムにおいて,
分散サーバとクライアントとのセッションで実行されるサービスごとに,前記セッションのセッション維持処理中に発生した分散サーバの故障に対するサービスエラー応答処理の内容を定義するサービスエラー応答処理定義情報を記憶するサービスエラー応答処理定義情報記憶手段を備え,
前記故障中サーバセッション維持情報管理手段では,前記セッション維持情報が少なくともセッションで実行されるサービスを識別する情報を含むものである場合に,当該セッション維持情報をもとに,前記サービスを識別する情報を含む前記故障中サーバセッション維持情報を生成する処理を行い,
前記サービスエラー応答処理手段では,前記問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報が抽出された場合に,前記故障中サーバセッション維持情報によって識別されるサービスに対応するサービスエラー応答処理定義情報に従ってエラー応答処理を行う
ことを特徴とする分散サーバ故障応答プログラム。
【請求項3】
請求項2記載の分散サーバ故障応答プログラムにおいて,
前記サービスエラー応答処理定義情報は,前記クライアントへの応答メッセージの形式および前記応答方法に関する定義を含む
ことを特徴とする分散サーバ故障応答プログラム。
【請求項4】
クライアントの要求を分散対象である分散サーバへ振り分けるサーバ負荷分散処理中に,一つのセッションにおける一連の要求について分散サーバを固定化して割り当てるセッション維持処理を行うサーバ負荷分散装置において,
前記セッション維持処理の対象であるセッションおよび当該セッションが割り当てられた分散サーバを設定したセッション維持情報を記憶するセッション維持情報記憶手段と,
分散サーバの故障検出通知を受け取った場合に,前記セッション維持情報記憶手段から,前記通知された故障中分散サーバで保持されていたセッションのセッション維持情報を抽出して削除し,前記抽出したセッション維持情報をもとに故障中サーバセッション維持情報を作成して故障中サーバセッション維持情報記憶手段へ保存する故障中サーバセッション維持情報管理手段と,
セッションがセッション維持処理の対象であるか否かの問い合わせ要求を受け取った場合に,前記セッション維持情報記憶手段から前記問い合わせ対象セッションのセッション維持情報を検索し,前記問い合わせ対象セッションのセッション維持情報が前記セッション維持情報記憶手段に保存されていない場合に,前記故障中サーバセッション維持情報記憶手段から前記問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報を検索する故障中サーバセッション維持情報検索手段と,
前記故障中サーバセッション維持情報検索手段の検索結果として,前記問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報が抽出された場合に,前記問い合わせ対象セッションの要求元クライアントに対し,所定のサービスエラー応答処理を行うサービスエラー応答処理手段とを備える
ことを特徴とするサーバ負荷分散装置。
【請求項5】
クライアントの要求を分散対象である分散サーバへ振り分けるサーバ負荷分散処理中に,一つのセッションにおける一連の要求について分散サーバを固定化して割り当てるセッション維持処理を行うサーバ負荷分散方法において,
分散サーバの故障検出通知を受け取った場合に,前記セッション維持処理の対象であるセッションおよび当該セッションが割り当てられた分散サーバを記録したセッション維持情報を記憶するセッション維持情報記憶手段から,前記通知された故障中分散サーバで保持されていたセッションのセッション維持情報を抽出して削除し,前記抽出したセッション維持情報をもとに故障中サーバセッション維持情報を作成して故障中サーバセッション維持情報記憶手段へ保存する処理過程と,
セッションがセッション維持処理の対象であるか否かの問い合わせ要求を受け取った場合に,前記セッション維持情報記憶手段から前記問い合わせ対象セッションのセッション維持情報を検索し,前記問い合わせ対象セッションのセッション維持情報が前記セッション維持情報記憶手段に保存されていない場合に,前記故障中サーバセッション維持情報記憶手段から前記問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報を検索する処理過程と,
前記故障中サーバセッション維持情報を検索する処理過程の検索結果として,前記問い合わせ対象セッションの故障中サーバセッション維持情報が抽出された場合に,前記問い合わせ対象セッションの要求元クライアントに対し,所定のサービスエラー応答処理を行う処理過程とを備える
ことを特徴とするサーバ負荷分散方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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