説明

分散体

【課題】 光触媒能を有する無機微粒子が高濃度で、かつ経時的に安定した分散体の提供。
【解決手段】分散体は、表面が分岐構造を有するポリシロキサンで被覆され、かつ光触媒能を有する無機微粒子が媒体中に分散されたものである。無機微粒子は、TiO,TiO,SrTiO、FeTiO、WO、SnO、Bi、In、ZnO、Fe、RuO、CdO、CdS、CdSe、GaP、GaAs、CdFeO、MoS、LaRhOから選ばれることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒能を有する無機微粒子が媒体中に分散してなる分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒能を有する無機微粒子は、その有機物の分解能や、物の表面を超親水化できる能力を生かして種々の用途に用いられている。
【0003】
光触媒能を有する無機微粒子を使用する際の形態として、分散媒体に分散したものが用いられるが、このような無機微粒子を高濃度で安定的に分散させるために、通常分散剤が使用されている。
【0004】
しかしながら、従来の分散剤では無機微粒子の分散能には限界があり、高濃度の無機微粒子を分散でき、かつ経時的に安定な分散体を得ることが困難であった。
【特許文献1】特表平8−510761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、光触媒能を有する無機微粒子が高濃度で、かつ経時的に安定した分散体を得ることを目的とする。
【0006】
本発明の目的は、新規なポリマー被覆無機微粒子の分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる分散体は、表面が分岐構造を有するポリシロキサンで被覆され、かつ光触媒能を有する無機微粒子が媒体中に分散されたものである。
【0008】
本発明にかかる分散体において、前記無機微粒子は、TiO2 、TiO3 、SrTiO3 、FeTiO3 、WO3 、SnO2 、Bi23 、In23 、ZnO、Fe23 、RuO2 、CdO、CdS、CdSe、GaP、GaAs、CdFeO3 、MoS2 、LaRhO3から選ばれることができる。
【0009】
本発明にかかる分散体において、分岐構造を有さないポリオルガノシロキサン、およびビニル系重合体の、少なくとも一方をさらに含有することができる。
【0010】
本発明にかかる分散体において、前記分岐構造を有するポリシロキサンは、デンドリックポリマーであることができる。
【0011】
本発明にかかる分散体において、前記分岐構造を有するポリシロキサンは、ビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、ビス(ジメチルアリルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルアリルシロキシ)シランから選ばれる、少なくとも1種を重合したものであることができる。
【0012】
本発明にかかる分散体において、前記分岐構造を有するポリシロキサンは、ビス(ジメチルシロキシ)メチルビニルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)ビニルシラン、ビス(ジメチルシロキシ)メチルアリルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)アリルシランから選ばれる、少なくとも1種を重合したものであることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、分散体にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0014】
1.分散体
1.1.分岐構造を有するポリシロキサン
分岐構造を有するポリシロキサン(以下、(A)成分という。)とは、分岐構造を有し、かつポリシロキサン骨格を有するポリマーであれば、特に限定されない。(A)成分は、デンドリマーであることが好ましい。さらに(A)成分は、ビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、ビス(ジメチルアリルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルアリルシロキシ)シランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したもの、または、ビス(ジメチルシロキシ)メチルビニルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)ビニルシラン、ビス(ジメチルシロキシ)メチルアリルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)アリルシランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したものであることが好ましい。化学式を以下に示す。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
【化8】

【0023】
(A)成分の分子量は特に限定されるものではないが、1000〜80000の範囲内であることが良く、好ましくは1000〜60000、さらに好ましくは1000〜45000のものが良い。分子量が1000未満であると、分子量が低すぎ無機微粒子に被覆させても十分な被覆量を得ることができず、また、分子量が80000を越えると、今度は(A)成分の分子量が高すぎるため、分子がかさ高くなり被覆量も減少してしまうこととなる。
【0024】
1.2.無機微粒子
本発明における無機微粒子(以下、(B)成分という。)は、光触媒能を有する。(B)成分は、半導体の粒子であることが好ましく、例えば、TiO2 、TiO3 、SrTiO3 、FeTiO3 、WO3 、SnO2 、Bi23 、In23 、ZnO、Fe23 、RuO2 、CdO、CdS、CdSe、GaP、GaAs、CdFeO3 、MoS2 、LaRhO3が挙げられ、TiO2 、またはZnOがより好ましい。また、これらの無機微粒子は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
本発明においては、無機微粒子の光触媒能により、微弱な光によっても短時間で塗膜表面が親水性化され、その結果他の塗膜性能を実質的に損なうことなく、塗膜の耐汚染性を著しく改善できる。しかも、本発明の分散体から得られる塗膜中では、該半導体が前記(A)成分等と共縮合しており、塗膜の親水性、耐汚染性が長期にわたり持続される。(B)成分を水系媒体中に分散させる前の存在形態には、粒子状の粉体の他、微粒子が水中に分散した水系ゾル、微粒子がメタノールやイソプロピルアルコ−ル等の極性溶媒やトルエン等の非極性溶媒中に分散した溶媒系ゾルであってもよい。溶媒系ゾルの場合、半導体微粒子の分散性によってはさらに水や溶媒で希釈して用いてもよい。これらの存在形態における半導体微粒子の平均粒子径は、光触媒能の観点では小さいほど好ましく、通常、1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。また、水系ゾルおよび溶媒系ゾルの場合、微粒子の安定性や分散性を向上させるために、予め界面活性剤、分散剤、有機金属化合物で表面処理を行なっておいてもよい。(B)成分が水系ゾルあるいは溶媒系ゾルである場合の固形分濃度は、50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは40重量%以下である。
【0026】
1.3.媒体
媒体は、(A)成分を分散させるものであれば特に限定されず、たとえば、アセトン、ヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、水の単独、もしくは2種以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0027】
1.4.分岐構造を有さないポリオルガノシロキサンおよびビニル系重合体
本発明にかかる分散体は、分岐構造を有さないポリオルガノシロキサン、およびビニル系重合体のうち、少なくとも一方をさらに含有してもよい。分散体が分岐構造を有さないポリオルガノシロキサンおよびビニル系重合体の双方を含有する場合には、両成分が相互に分離して存在してもよいし、当該両成分が化学的に結合していてもよい。この場合、ポリオルガノシロキサン(a)成分とビニル系重合体(b)成分とを含有する重合体(以下、(C)成分または重合体(C)という。)であってもよい。以下に、分岐構造を有さないポリオルガノシロキサン、およびビニル系重合体について説明する。
【0028】
1.4.1.分岐構造を有さないポリオルガノシロキサン
分岐構造を有さないポリオルガノシロキサン(a)としては、下記一般式(1)で表されるオルガノシラン(以下、「オルガノシラン(a1)」という。)が重縮合した構造を有する成分が好ましい。
(R1)n Si(OR2)4-n ・・・(1)
(式中、R1 は炭素数1〜8の有機基、R2 は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示し、nは0〜2の整数である。)
【0029】
一般式(1)において、R1 の炭素数1〜8の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等のアルキル基のほか、γ−クロロプロピル基、γ−ブロモプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−(メタ)アクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、γ−アミノプロピル基、γ−ジメチルアミノプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。また、R2 の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
【0030】
このようなオルガノシラン(a1)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のアルコキシシラン類;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジエチルジアセトキシシラン等のアシルオキシシラン類等が挙げられ、好ましくはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランである。これらのオルガノシラン(a1)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
本発明において、オルガノシラン(a1)は、そのままあるいは加水分解物および/またはその部分縮合物として使用される。この場合、重合体(C)を製造する際に、オルガノシラン(a1)の重縮合反応によりポリオルガノシロキサン鎖を形成しつつ、オルガノシラン(a1)の加水分解により生成したヒドロキシシリル基と後述するビニル系重合体中のヒドロキシシリル基とが、ミクロ的に分散して混在するか、あるいは相互に縮合反応を生起することができる。オルガノシラン(a1)の前記部分縮合物のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは800〜100,000、さらに好ましくは1,000〜50,000である。
【0032】
1.4.2.ビニル系重合体
ビニル系重合体(b)としては、主鎖がビニル系重合体からなり、その重合体分子鎖の末端および/または側鎖に、加水分解性シリル基および/またはヒドロキシシリル基(以下、これらの基をまとめて「加水分解性シリル基等」という。)を1個以上、好ましくは2〜20個有する重合体(以下、「ビニル系重合体(b1)」という。)が好ましい。ビニル系重合体(b1)における加水分解性シリル基等は、一般に、下記一般式(2)で表される。
【0033】
【化9】

(式中、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基、アミノ基等の加水分解性基または水酸基を示し、R3 は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアラルキル基を示し、mは1〜3の整数である。)
【0034】
加水分解性シリル基等は、ビニル系重合体(b1)中に1種以上存在することができる。ビニル系重合体(b1)は、例えば、(イ)炭素・炭素二重結合を有するビニル系(共)重合体(以下、「不飽和重合体」という。)の該炭素−炭素二重結合に、加水分解性シリル基等を有するヒドロシラン化合物を付加反応させる方法、(ロ)加水分解性シリル基等を有するビニル系単量体を、場合により他のビニル系単量体と共に、(共)重合する方法等により製造することができる。前記(イ)の方法に使用される不飽和重合体は、例えば、下記のようにして製造することができる。即ち、(イ−1)ビニル系単量体の(共)重合体中の適当な官能基(以下、「相補的官能基(α)」という。)に、相補的官能基(a)との反応性を有する官能基(以下、「相補的官能基(β)」という。)と炭素・炭素二重結合とを有する不飽和化合物を反応させることにより、重合体分子鎖の側鎖に炭素−炭素二重結合を有する官能性不飽和重合体を製造することができる。また、(イ−2)相補的官能基(α)を有するラジカル重合開始剤(例えば4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸等)を使用し、あるいはラジカル重合開始剤と連鎖移動剤の双方に相補的官能基(α)を有する化合物(例えば4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸とジチオグリコール酸等)を使用して、ビニル系単量体を(共)重合して、重合体分子鎖の片末端あるいは両末端にラジカル重合開始剤や連鎖移動剤に由来する相補的官能基(α)を有する前駆(共)重合体を合成したのち、該前駆(共)重合体中の相補的官能基(α)に、相補的官能基(β)と、炭素・炭素二重結合とを有する不飽和化合物を反応させることにより、重合体分子鎖の片末端あるいは両末端に炭素−炭素二重結合を有する官能性不飽和重合体を製造することができる。さらに、(イ−3)前記(イ−1)と(イ−2)の組み合わせによっても、不飽和重合体を製造することができる。(イ−1)および(イ−2)の方法における相補的官能基(α)と相補的官能基(β)との反応の例としては、カルボキシル基と水酸基とのエステル化反応、カルボン酸無水物基と水酸基との開環エステル化反応、カルボキシル基とエポキシ基とのエステル化反応、カルボキシル基とアミノ基とのアミド化反応、カルボン酸無水物基とアミノ基との開環アミド化反応、エポキシ基とアミノ基との開環付加反応、水酸基とイソシアネート基とのウレタン化反応等が挙げられる。(イ−1)の方法に使用される相補的不飽基(β)と炭素・炭素二重結合とを有する不飽和化合物としては、例えば、前記親水性ビニル系単量体のうちの不飽和カルボン酸類、不飽和カルボン酸無水物類、水酸基含有ビニル系単量体あるいはアミノ基含有ビニル系単量体のほか、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物、前記水酸基含有ビニル系単量体とジイソシアネート化合物とを等モルで反応させることにより得られるイソシアネート基含有不飽和化合物等が挙げられる。
【0035】
また、(イ)の方法に使用される加水分解性基等を有するヒドロシラン化合物としては、例えば、メチルジクロルシラン、フェニルジクロルシラン、トリクロルシラン等のハロゲン化シラン類;メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等のアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシラン等のアシロキシシラン類;ジメチル・アミノキシシラン、メチルジアミノキシシラン、トリアミノキシシラン等のアミノキシシラン類;メチルジフェノキシシラン、トリフェノキシシラン等のフェノキシシラン類;メチルジ(チオメトキシ)シラン、トリ(チオメトキシ)シラン等のチオアルコキシシラン類;メチル・ジアミノシラン、トリアミノシラン等のアミノシラン類等が挙げられる。これらのヒドロシラン化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
次に、前記(ロ)の方法に使用される加水分解性シリル基等を有するビニル系単量体は、一般に、下記一般式(3)で表される。
【0037】
【化10】

(式中、X、R3 およびmはそれぞれ一般式(2)と同義であり、R4 は重合性炭素・炭素二重結合を有する有機基を示す。)
【0038】
このような加水分解性シリル基等を有するビニル系単量体の具体例としては、
CH2 =CHSi(CH3)(OCH3)2 、CH2 =CHSi(OCH3)3
CH2 =CHSi(CH3)Cl2 、CH2 =CHSiCl3
CH2 =CHCOO(CH2)2 Si(CH3)(OCH3)2
CH2 =CHCOO(CH2)2 Si(OCH3)3
CH2 =CHCOO(CH2)3 Si(CH3)(OCH3)2
CH2 =CHCOO(CH2)3 Si(OCH3)3
CH2 =CHCOO(CH2)2 Si(CH3)Cl2
CH2 =CHCOO(CH2)2 SiCl3
CH2 =CHCOO(CH2)3 Si(CH3)Cl2
CH2 =CHCOO(CH2)3 SiCl3
CH2 =C(CH3)COO(CH2)2 Si(CH3)(OCH3)2
CH2 =C(CH3)COO(CH2)2 Si(OCH3)3
CH2 =C(CH3)COO(CH2)3 Si(CH3)(OCH3)2
CH2 =C(CH3)COO(CH2)3 Si(OCH3)3
CH2 =C(CH3)COO(CH2)2 Si(CH3)Cl2
CH2 =C(CH3)COO(CH2)2 SiCl3
CH2 =C(CH3)COO(CH2)3 Si(CH3)Cl2
CH2 =C(CH3)COO(CH2)3 SiCl3
【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

が挙げられる。これらの加水分解性シリル基等を有するビニル系単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
(イ)の方法に使用される不飽和重合体を構成するビニル系単量体、および(ロ)の方法において使用される他のビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸i−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸i−ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸i−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸i−ノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸i−デシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位数は例えば2〜20)、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロピレングリコール単位数は例えば2〜20)等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位数は例えば2〜20)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレングリコール単位数は例えば2〜20)等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;コハク酸ジ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、アジピン酸ジ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸ジ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等の非重合性多塩基酸と(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとのエステル類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−トリフルオロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等のシアノ基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、α−エチルアクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエトキシ(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、イタコン酸ジアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニル系単量体や、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのほか、下記する親水性ビニル系単量体、カルボニル基含有ビニル系単量体等が挙げられる。
【0044】
前記親水性ビニル系単量体は、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基、アミンイミド基等の親水性官能基を有するビニル系単量体からなる。このような親水性官能基は、ビニル系単量体中に1種以上存在することができるが、例えば、カルボキシル基、水酸基あるいはアミンイミド基の何れか2種以上が共存することが好ましい。親水性ビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、α−クロロアクリル酸、α−クロロメチルアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、α−メトキシアクリル酸、α−エトキシアクリル酸、コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、アジピン酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有ビニル系単量体;2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−アミノエチルビニルエーテル、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノ(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有ビニル系単量体;1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1−メチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−ヒドロキシ−2’−フェノキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド等のアミンイミド基含有ビニル系単量体等が挙げられる。これらの親水性ビニル系単量体のうち、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物の群では、特に(メタ)アクリル酸が好ましく、水酸基含有ビニル系単量体としては、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、アミノ基含有ビニル系単量体およびアミンイミド基含有ビニル系単量体の群では、特に1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−ヒドロキシ−2’−フェノキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アミドイミドが好ましい。
【0045】
また、前記カルボニル基含有ビニル系単量体は、ホルミル基あるいはケト基からなるカルボニル基を1種以上有するビニル系単量体からなる。カルボニル基含有ビニル系単量体のうち、ホルミル基を有するビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド、ホルミルスチレン、ホルミル−α−メチルスチレン、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、3−(メタ)アクリルアミドメチル−アニスアルデヒドや、下記一般式(4)で表されるβ−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジアルキルプロパナール類等が挙げられる。
【0046】
【化15】

(式中、R5 は水素原子またはメチル基を示し、R6 は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R7 は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R8 は炭素数1〜4のアルキル基を示す。〕
【0047】
一般式(4)で表されるβ−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジアルキルプロパナール類の具体例としては、β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジメチルプロパナール(即ち、β−(メタ)アクリロキシピバリンアルデヒド)、β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジエチルプロパナール、β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジプロピルプロパナール、β−(メタ)アクリロキシ−α−メチル−α−ブチルプロパナール、β−(メタ)アクリロキシ−α,α,β−トリメチルプロパナール等が挙げられる。また、ケト基を有するビニル系単量体としては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン類(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル−n−プロピルケトン、ビニル−i−プロピルケトン、ビニル−n−ブチルケトン、ビニル−i−ブチルケトン、ビニル−t−ブチルケトン等)、ビニルフェニルケトン、ビニルベンジルケトン、ジビニルケトン、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニトリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−(メタ)アクリレート−アセチルアセテート等が挙げられる。これらのカルボニル基含有ビニル系単量体のうち、特にアクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン等が好ましい。本発明において、前記ビニル系単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
ビニル系重合体(b1)が親水性ビニル系単量体の(共)重合体である場合、ビニル系重合体(b1)中の該ビニル系単量体の含有量は、好ましくは0.05〜50重量%、さらに好ましくは0.05〜40重量%である。また、本発明においては、ビニル系重合体(b1)中の親水性ビニル系単量体の特に好ましい含有量は、該ビニル系単量体の種類によって変わる。即ち、(I)不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物の合計含有量は、特に0.5〜10重量%が好ましく、(II)水酸基含有ビニル系単量体の含有量は、特に5〜30重量%が好ましく、(III)アミノ基含有ビニル系単量体および/またはアミンイミド基含有ビニル系単量体の合計含有量は、特に0.05〜3重量%が好ましい。親水性ビニル系単量体の含有量を前記範囲内とすることにより、親水性ビニル系単量体の(共)重合体からなるビニル系重合体(b1)を用いて得られる分散体の保存安定性が特に優れたものとなる。また、親水性ビニル系単量体の(共)重合体からなるビニル系重合体(b1)においては、前記(I)、(II)および(III)に示したビニル系単量体のいずれか2種以上を併用することが好ましく、特に前記(I)、(II)および(III)に示したビニル系単量体のそれぞれ1種以上を組み合せて使用することが好ましい。
【0049】
また、ビニル系重合体(b1)がカルボニル基含有ビニル系単量体の(共)重合体である場合、ビニル系重合体(b1)中の含有量は、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%である。この場合、カルボニル基含有ビニル系単量体の含有量が0.5重量%未満では、塗膜の耐溶剤性、耐損傷性等が低下する傾向があり、一方30重量%を超えると、塗膜の耐水性等が低下する傾向がある。
【0050】
本発明におけるビニル系重合体(b)のポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」という。)は、好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは4,000〜50,000である。本発明において、ビニル系重合体(b)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
本発明におけるビニル系重合体(b)の使用量は、オルガノシラン(a1)100重量部に対して、通常、2〜900重量部、好ましくは10〜400重量部、さらに好ましくは20〜200重量部である。この場合、ビニル系重合体(b)の使用量が2重量部未満では、分散体から形成される塗膜の耐アルカリ性が低下する傾向があり、一方900重量部を超えると、塗膜の耐候性が低下する傾向がある。
【0052】
2.製造方法
2.1.分散体の製造方法
分散体は(A)成分を含む溶液に、(B)成分を接触させることにより作ることができる。(B)成分を媒体中に分散させる方法としては、(A)成分を含有する溶液の調整後に(B)成分を添加してもよいし、当該溶液の調整時に(B)成分を添加してもよい。また、溶液中には、(A)成分の他、(C)〜(K)成分、(a)、および(b)成分のうち少なくとも1種をさらに添加してもよい。
【0053】
反応温度は(A)成分と被覆させる(B)成分との間で何らかの反応が起これば限定されるものではないが、溶液中で加熱する場合には、通常3〜200℃の範囲で行われ、好ましくは5〜180℃、さらに好ましくは10〜150℃の範囲内で行われる。
【0054】
また、シロキサン骨格を有する(A)成分を溶液中で、(B)成分と接触させた後に、空気中または窒素ガス雰囲気下で加熱して強固に結合させることもできる。この場合の加熱温度は20〜250℃の範囲で行われ、好ましくは30〜200℃、さらに好ましくは50〜150℃の範囲内で行われる。
【0055】
本発明では、反応液中の(A)成分の濃度についても特に制約されるものではないが好ましくは0.01〜10質量%で行われ、好ましくは0.05〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%で行われる。
【0056】
分散体の製造方法は、(B)成分を(A)成分を含有する溶液に浸すことに限定されない。このほか、(A)成分を含有する溶液を塗布する方法や、電界中で電着させる方法等を採用することができる。
【0057】
(A)成分は無機微粒子に強固に被覆する。(A)成分と無機微粒子との結合様式は、特に限定されず、共有結合であっても、あるいはイオン結合、水素結合、疎水結合などによるものであっても、さらにはそれらが組み合わさったものでも良い。
【0058】
(A)成分の被覆量は無機微粒子1g当たり0.005〜0.2gの範囲内が良く、好ましくは0.007〜0.19gが良く、さらに好ましくは0.008〜0.19gが良い。被覆量が0.005g未満であると被覆した効果が小さく、また0.2gを越えると被覆されたものの機能を消失させることとなり好ましくない。
【0059】
(A)成分で被覆された(B)成分について説明する。(A)成分と(B)成分の結合状態は、つぎのようであると考えられる。(A)成分中のシロキサン結合と(B)成分中のM−OH(Mは金属)との間で組みかえ反応が起こり、M−O−Si結合が生成することによるものと推定される。
【0060】
以上のことから、本実施の形態によれば、シロキサン骨格を有する(A)成分で被覆する(B)成分とすることにより、または、シロキサン骨格を有する(A)成分の溶液に(B)成分を接触させることにより、(A)成分を(B)成分の表面に結合させることができる。この結果、新規な化合物を提供することができる。
【0061】
分岐構造の(A)成分は、直鎖状ポリマーと異なり、多くの末端基を有しており、ここに種々な官能基を導入できる。よって、(B)成分表面を種々な官能基で修飾することができる。
【0062】
本発明の分散体の全固形分濃度は、通常、5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。例えばコーティング材として、薄膜形成および/または基材への含浸を主目的とする場合は、全固形分濃度が、通常、5〜20重量%であり、また厚膜形成や充填剤を配合する場合は、全固形分濃度が、通常、20〜45重量%、好ましくは25〜40重量%である。
【0063】
2.2.(C)成分の製造方法
重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(a)とビニル系重合体(b)とが水系媒体中に分散できる限り、如何なる方法によっても製造することができるが、好ましくは(ハ)オルガノシラン(a1)とビニル系重合体(b1)とを、後述する有機金属化合物および触媒量の水の存在下、有機溶媒中で加水分解および/または部分縮合させたのち、反応溶液を水系媒体中に分散させ、次いで有機溶媒を除去する方法により製造することができる。前記(ハ)の方法において、加水分解および/または部分縮合時に存在する水の量は、オルガノシラン(a1)1モルに対して、通常、0.5〜3.0モル、好ましくは0.7〜2.0モル程度である。また、前記(ハ)の方法において、水系媒体は、本質的に水からなるが、場合によりアルコール等の有機溶媒を数重量%程度まで含まれていてもよく、反応生成物を該水系媒体中に分散させる際には、乳化剤、pH調整剤等を使用することができる。
【0064】
前記乳化剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルりん酸エステル塩、脂肪酸塩等のアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキル四級アミン塩等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ブロック型ポリエーテル等のノニオン系界面活性剤;カルボン酸型(例えばアミノ酸型、ベタイン型等)、スルホン酸型等の両性界面活性剤等の何れでも使用可能である。これらの乳化剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
前記(ハ)の方法に使用される有機溶媒としては、例えば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等が好適である。これらの有機溶媒の一部は、反応溶液を水系媒体中に分散させる前に除去しておくこともできる。前記(ハ)の方法における加水分解および/または部分縮合時の反応条件は、温度が、通常、40〜70℃であり、反応時間は、通常、1〜8時間である。
【0066】
前記(ハ)の方法において、ビニル系重合体(b1)がカルボキシル基やカルボン酸無水物基等の酸性基を有する場合は、加水分解および/または部分縮合後に少なくとも1種の塩基性化合物を添加してpHを調節することが好ましく、またビニル系重合体(b1)がアミノ基やアミンイミド基等の塩基性基を有する場合は、加水分解および/または部分縮合後に少なくとも1種の酸性化合物を添加してpHを調節することが好ましく、さらにビニル系重合体(b1)が該酸性基と該塩基性基とを有する場合は、加水分解および/または部分縮合後に、これらの基の割合に応じて少なくとも1種の塩基性化合物あるいは酸性化合物を添加して、pHを調節することにより、得られた特定重合体の親水性を高めて、該特定重合体の乳化分散性を向上させることができる。
【0067】
前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン類:カセイカリ、カセイソーダ等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられ、また前記酸性化合物としては、例えば、塩酸、りん酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;ぎ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、しゅう酸、くえん酸、アジピン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の有機酸類が挙げられる。前記pH調節時のpH値は、通常、6〜10、好ましくは7〜8である。
【0068】
本発明の分散体において、重合体(C)は媒体中に、例えば、粒子状あるいは水性ゾル状に、分散している。この場合、粒子状の重合体(C)の平均粒子径は、通常、0.01〜100μmである。
【0069】
2.3.さらに、本発明の分散体には、下記する(D)〜(K)成分を配合することができる。
【0070】
2.3.1.(D)成分
(D)成分は、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムの群から選ばれる有機金属化合物からなる。前記有機金属化合物は、前記オルガノシラン(a1)およびビニル系重合体(b1)の加水分解および/または部分縮合反応を促進する作用をなすものと考えられる。このような有機金属化合物の例としては、一般式
Zr(OR9)p (R10COCHCOR11)4-p(但し、p=0〜4)、
Ti(OR9)q (R10COCHCOR11)4-q(但し、q=0〜4)または
Al(OR9)r (R10COCHCOR11)3-r(但し、r=0〜3)
で表される化合物、あるいはこれらの化合物の部分加水分解物が挙げられる。前記一般式において、R9 およびR10は、それぞれ独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基、具体的には、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等を示し、またR11は、R9 およびR10と同様の炭素数1〜6の1価の炭化水素基のほか、炭素数1〜16のアルコキシ基、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基等を示す。
【0071】
前記有機金属化合物の具体例としては、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウム化合物;テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン等のチタン化合物;トリエトキシアルミニウム、トリ−i−プロポキシアルミニウム、モノ−2−ブトキシ・ジ−i−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウム化合物等が挙げられる。これらの化合物のうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムが好ましい。これらの有機金属化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。前記有機金属化合物は、好ましくは有機溶媒に溶解して使用される。この場合の有機溶媒としては、例えば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等が好適である。
【0072】
本発明における(D)成分の使用量は、オルガノシラン(a1)100重量部に対して、好ましくは0.01〜50重量部、さらに好ましくは0.1〜50重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部である。この場合、(C)成分の使用量が0.01重量部未満では、オルガノシラン(a1)とビニル系重合体(b1)との共縮合物の形成が不充分となり、分散体から得られる塗膜の耐候性が低下する傾向があり、一方50重量部を超えると、分散体の保存安定性が低下したり、塗膜にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0073】
2.3.2.(E)成分
(E)成分は、下記一般式
10COCH2 COR11
(式中、R10およびR11はそれぞれ、(D)成分の有機金属化合物を表す前記一般式におけるR10およびR11と同義である。)で表されるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類、カルボン酸化合物、ジヒドロキシ化合物、アミン化合物およびオキシアルデヒド化合物の群から選ばれる少なくとも1種からなる。本発明の分散体が前記(D)成分を含有するときは、(E)成分をさらに配合することが好ましい。(E)成分の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸i−プロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、マロン酸、しゅう酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、アミノ酢酸、イミノ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコール、カテコール、エチレンジアミン、2,2−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、ジエチレントリアミン、2−エタノールアミン、ジメチルグリオキシム、ジチゾン、メチオニン、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらのうち、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。本発明における(E)成分の使用量は、(D)成分1モルに対して、通常、2モル以上、好ましくは3〜20モルである。この場合、(E)成分の使用量が2モル未満では、得られる分散体の保存安定性の向上効果が低下する傾向がある。
【0074】
2.3.3.(F)成分
(F)成分は、前記(B)成分以外の無機化合物の粒子および/またはゾルもしくはコロイドからなり、塗膜の硬度をより高める等の塗膜の所望の特性に応じて配合される。(F)成分をなす無機化合物の具体例としては、SiO2 、Al23 、Al(OH)3 、Sb25 、Si34 、Sn−In23 、Sb−In23 、MgF、CeF3 、CeO2 、Al23 、3Al23 ・2SiO2 、BeO、SiC、AlN、Al23 、Fe、Fe23 、Co、Co−FeOX 、CrO2 、Fe4 N、Baフェライト、SmCO5 、YCO5 、CeCO5 、PrCO5 、Sm2 CO17、Nd2 Fe14B、ZrO2 、Al43 、AlN、SiC、BeO等を挙げることができる。これらの無機化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0075】
(F)成分を分散体に配合する前の存在形態には、粒子状の粉体、微粒子が水中に分散した水系のゾルもしくはコロイド、微粒子がイソプロピルアルコ−ル等の極性溶媒やトルエン等の非極性溶媒中に分散した溶媒系のゾルもしくはコロイドがある。溶媒系のゾルもしくはコロイドの場合、半導体微粒子の分散性によってはさらに水や溶媒にて希釈して用いてもよい。(F)成分が水系のゾルもしくはコロイドおよび溶媒系のゾルもしくはコロイドである場合の固形分濃度は、40重量%以下が好ましい。(F)成分のうち、コロイド状シリカは、例えば、スノーテックス、メタノールシリカゾル、イソプロパノールシリカゾル(以上、日産化学工業(株)製);カタロイドSN、オスカル(以上、触媒化成工業(株)製);Ludex(米国デュポン社製);Syton(米国モンサント社製);Nalcoag(米国ナルコケミカル社製)等の商品名で、また前記コロイド状アルミナは、例えば、アルミナゾル−100、アルミナゾル−200、アルミナゾル−520(以上、日産化学工業(株)製)、アルミナクリヤーゾル、アルミナゾル10、アルミナゾル132(以上、川研ファインケミカル(株)製)等の商品名で、市販されている。(F)成分を本発明の分散体中に配合する方法としては、前記(A)〜(E)成分、後述する(G)〜(K)成分等を含有する分散体の調製後に添加してもよく、あるいは該分散体の調製時に添加し、(F)成分の存在下でオルガノシラン(a1)、ビニル系重合体(b1)等を加水分解・部分縮合させることもできる。本発明における(E)成分の使用量は、オルガノシラン(a1)100重量部に対して、固形分で、通常、0〜500重量部、好ましくは0.1〜400重量部である。
【0076】
2.3.4.(G)成分
(G)成分は、塗膜の着色、意匠性あるいは厚膜化を発現させ、また防蝕性、耐候性等をより高めるための他の充填材からなる。このような他の充填材としては、例えば、金属や合金;金属の酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物等の化合物;有機顔料、無機顔料等の非水溶性顔料等を挙げることができる。これらの成分は、粒子状、繊維状、ウイスカー状もしくは鱗片状の形態で使用される。他の充填材の具体例としては、鉄、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、銅、銀、カーボンブラック、黒鉛、ステンレス鋼、酸化第二鉄、フェライト、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロム、顔料用酸化ジルコニウム、顔料用酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化珪素、亜酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、亜酸化銅、水酸化第二鉄、水酸化アルミニウム、消石灰、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸バリウム、石膏、二硫化モリブデン、硫化鉛、硫化銅、珪酸鉛、鉛酸カルシウム、ほう酸銅、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、フタル酸鉛、合成ムライト、クレー、珪藻土、タルク、ベントナイト、雲母、緑土、コバルト緑、マンガン緑、ビリジャン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シューレ緑、緑土、クロム緑、亜鉛緑、ピグメントグリーン、群青、岩群青、紺青、コバルト青、セルリアンブルー、モリブデン青、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、ジンクエロー、クロム黄、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、黄土、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、鉛亜鉛華、バンチソン白、マンガン白、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒等を挙げることができる。これらの他の充填材は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。本発明における(G)成分の使用量は、(A)〜(F)成分の固形分合計100重量部に対して、通常、300重量部以下である。この場合、(G)成分の使用量が300重量部を超えると、塗膜の密着性が低下する傾向がある。さらに、必要に応じて、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシラン等の脱水剤や、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、顔料、分散剤、増粘剤、粘着剤、レベリング剤、防かび剤、防腐剤、老化防止剤、酸化防止剤、防曇剤、難燃剤等を配合することもできる。
【0077】
2.3.5.(H)成分
(H)成分は、前記(D)成分以外の硬化促進剤からなる。このような(H)成分を使用することにより、本発明の分散体から形成された塗膜の硬化速度を高めることができ、比較的低い温度で硬化させるためには、(H)成分をさらに添加する方が効果的である。(H)成分としては、例えば、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸等のアルカリ金属塩;エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペリジン、ピペラジン、メタフェニレンジアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシランや、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン等のアミン系化合物;(C49)2 Sn(OCOC1123)2、(C49)2 Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2 、(C49)2 Sn(OCOCH=CHCOO(C49)2 、(C817)2Sn(OCOC1123)2、(C817)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2 、(C817)2Sn(OCOCH=CHCOO(C49)2 、(C817)2Sn(OCOCH=CHCOOC817)2、Sn(OCOCC817)2等のカルボン酸型有機錫化合物;(C49)2 Sn(SCH2 COOC817)2、(C49)2 Sn(SCH2 CH2 COOC817)2、(C817)2Sn(SCH2 COOC817)2、(C817)2Sn(SCH2 CH2 COOC817)2、(C817)2Sn(SCH2 COOC1225)2、(C817)2Sn(SCH2 CH2 COOC122 5)2
【0078】
【化16】

等のメルカプチド型有機錫化合物;
(C49)2 Sn=S、(C817)2Sn=S、
【0079】
【化17】

等のスルフィド型有機錫化合物;(C49)2 SnO、(C817)2SnO等の有機錫オキサイドや、これらの有機錫オキサイドとエチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチル等のエステル化合物との反応生成物等を挙げることができる。これらの硬化促進剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0080】
本発明における(H)成分の使用量は、オルガノシラン(a1)100重量部に対して、通常、0〜100重量部、好ましくは0.1〜80重量部、さらに好ましくは0.5〜50重量部である。
【0081】
2.3.6.(I)成分
(I)成分は、分子中に2個以上のヒドラジノ基を有する多官能性ヒドラジン誘導体からなり、重合体(C)を構成するビニル系重合体(b)がカルボニル基を含有する場合に配合することが好ましい。該多官能性ヒドラジン誘導体は、本発明の分散体の施工後の乾燥過程で、そのヒドラジノ基が重合体(C)中に含有されるカルボニル基と反応して網目構造を生成し、塗膜を架橋させる作用を有するものである。前記多官能性ヒドラジン誘導体としては、例えば、しゅう酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の合計炭素数2〜10、特に合計炭素数4〜6のジカルボン酸ジヒドラジド類;クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド等の3官能以上のヒドラジド類;エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,2−ジヒドラジン、ブチレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、ブチレン−2,3−ジヒドラジン等の合計炭素数2〜4の脂肪族ジヒドラジン類等の水溶性ジヒドラジンが好ましい。さらに、これらの水溶性ジヒドラジンの少なくとも一部のヒドラジノ基を、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、ジアセトンアルコール等のカルボニル化合物と反応させることによりブロックした化合物(以下、「ブロック化多官能性ヒドラジン誘導体」という。)、例えば、アジピン酸ジヒドラジドモノアセトンヒドラゾン、アジピン酸ジヒドラジドジアセトンヒドラゾン等も使用することができる。このようなブロック化多官能性ヒドラジン誘導体を使用することにより、分散体の架橋反応の進行を適度に抑えることができるため、特に印刷インキとして重要な再分散性をさらに改良することができる。これらの多官能性ヒドラジン誘導体のうち、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドジアセトンヒドラゾン等が好ましい。前記多官能性ヒドラジン誘導体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0082】
本発明における(I)成分の使用量は、重合体(C)中のカルボニル基と(I)成分中のヒドラジノ基との当量比が、通常、1:0.1〜5、好ましくは1:0.5〜1.5、さらに好ましくは1:0.7〜1.2の範囲となる量である。この場合、ヒドラジノ基がカルボニル基1当量に対して、0.1当量未満であると、塗膜の耐溶剤性、耐損傷性等が低下する傾向があり、一方5当量を超えると、塗膜の耐水性、透明性等が低下する傾向がある。但し、多官能性ヒドラジン誘導体として、ブロック化多官能性ヒドラジン誘導体を使用する場合の前記当量比は、カルボニル基とブロックする前の多官能性ヒドラジン誘導体中のヒドラジノ基との当量比によるものとする。(I)成分は、本発明の分散体を調製する適宜の工程で配合することができるが、重合体(C)の製造時における凝固物の発生を抑え、重合安定性を維持するためには、(I)成分の全量を、重合体(C)の製造後に配合することが望ましい。
【0083】
2.3.7.(J)成分
(J)成分は、樹脂状添加剤からなる。前記樹脂状添加剤としては、例えば、水性塗料に通常使用されている水溶性ポリエステル樹脂、水溶性あるいは水分散性エポキシ樹脂、水溶性あるいは水分散性アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体等のカルボキシル基含有芳香族ビニル系樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂状添加剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0084】
本発明における(J)成分の使用量は、分散体の全固形分100重量部に対して、通常、50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
【0085】
2.3.8.(K)成分
(K)成分は、成膜性や濡れ性を向上させる有機溶剤からなる。前記有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール等のアルコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリブトキシメチルフォスフェート等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0086】
本発明における(K)成分の使用量は、全分散体の、通常、50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。さらに、本発明の分体には、所望により、増粘剤、分散剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、レベリング剤、染料、防かび剤、防腐剤、老化防止剤、酸化防止剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤等の他の添加剤を配合することもできる。
【0087】
本発明の分散体は、特にコーティング材として有用であり、着色成分を含まないクリヤーおよび着色成分を含むエナメルの双方に使用することができる。本発明の分散体からなるコーティング材を基材に塗布する際には、刷毛、ロールコータ−、フローコータ−、遠心コーター、超音波コ−タ−等を用いるか、またはディップコート、流し塗り、スプレ−、スクリ−ンプロセス、電着、蒸着等の塗布方法により、1回塗りで厚さ0.05〜40μm程度、2〜3回塗りでは厚さ0.1〜80μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは30〜200℃程度の温度で加熱して乾燥することにより、各種の基材に塗膜を形成することができる。本発明の分散体からなるコーティング材を適用しうる基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属;セメント、コンクリ−ト、ALC、フレキシブルボ−ド、モルタル、スレ−ト、石膏、セラミックス、レンガ等の無機窯業系材料;フェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂(アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂)等のプラスチック成型品;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコ−ル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリウレタン、ポリイミド等のプラスチックフィルムや、木材、紙、ガラス等を挙げることができる。
【0088】
また、本発明の分散体からなるコーティング材は、劣化塗膜の再塗装にも有用である。これらの基材には、下地調整、密着性向上、多孔質基材の目止め、平滑化、模様付け等を目的として、予め表面処理を施すこともできる。例えば、金属系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、脱脂、メッキ処理、クロメ−ト処理、火炎処理、カップリング処理等を挙げることができ、プラスチック系基材に対する表面処理としては、例えば、ブラスト処理、薬品処理、脱脂、火炎処理、酸化処理、蒸気処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオン処理等を挙げることができ、無機窯業系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、模様付け等を挙げることができ、木質基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、防虫処理等を挙げることができ、紙質基材に対する表面処理としては、例えば、目止め、防虫処理等を挙げることができ、さらに劣化塗膜に対する表面処理としては、例えば、ケレン等を挙げることができる。
【0089】
本発明の分散体からなるコーティング材による塗布操作は、基材の種類や状態、塗布方法によって異なる。例えば、金属系基材の場合、防錆の必要があればプライマーを用い、無機窯業系基材の場合、基材の特性(表面荒さ、含浸性、アルカリ性等)により塗膜の隠蔽性が異なるため、通常はプライマーを用い、有機樹脂系基材の場合も、通常プライマーを用いる。また劣化塗膜の再塗装の場合、旧塗膜の劣化が著しいときはプライマーを用いる。それ以外の基材、例えば、防錆を必要としない金属、タイルやガラス等の場合は、用途に応じてプライマーを用いても用いなくてもよい。プライマーの種類は特に限定されず、基材とコ−ティング材との密着性を向上させる作用を有するものであればよく、基材の種類、使用目的に応じて選択する。プライマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また顔料等の着色成分を含むエナメルでも、該着色成分を含まないクリヤーでもよく、また専用の硬化促進剤を添加してもよい。プライマーの種類としては、コーティング材がエナメルである場合は、プライマーと光触媒成分((B)成分)を含有する塗膜との界面における有機物分解が起こりにくいため、通常プライマーとして用いられている密着性のよい有機樹脂を使用してもよく、例えば、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルエマルジョン、エポキシエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、シリコンアクリルエマルジョン、ポリシロキサン等を挙げることができる。また、コーティング材がクリヤーである場合は、プライマーと光触媒成分((B)成分)を含有する塗膜との界面における有機物分解が起こりやすいため、プライマーとしては、耐酸化性の高い有機樹脂、例えば、シリコンアクリルエマルジョン、アクリルシリコン樹脂、ポリシロキサン、ふっ素樹脂、アルコキシシリル変性ポリエステル、アクリルウレタン樹脂、前記(A)成分と(B)成分とからなる組成物等が好ましい。また、これらのプライマーには、厳しい条件での基材と塗膜との密着性が必要な場合、各種の官能基を付与することもできる。このような官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミン基、グリシジル基、アルコキシシリル基、アルキルシリル基、エ−テル結合、エステル結合等を挙げることができる。
【0090】
本発明の分散体からなるコーティング材を基材に適用した形態には、次のようなものがある。
【0091】
(1)基材/コーティング材(クリア−、エナメル)
(2)基材/コーティング材(エナメル)/コーティング材(クリア−)
(3)基材/光触媒成分を含まないコーティング材(クリア−、エナメル)/コーティング材(クリア−)
なお、前記(1)〜(3)の場合、必要に応じて、基材に予め前処理および/またはプライマー処理を施すことができるのは前述したとおりである。本発明の分散体からなるコーティング材から形成した塗膜の表面には、塗膜の耐摩耗性や光沢をさらに高めることを目的として、例えば、米国特許第3,986,997号明細書、米国特許第4,027,073号明細書等に記載されたコロイダルシリカとシロキサン樹脂との安定な分散液のようなシロキサン樹脂系塗料等からなるクリア層を形成することもできる。本発明の分散体からなるコーティング材は、幅広い用途に有用であるが、特に、包装材料、磁気テープ、写真フィルム、オーバーヘッドプロジェクター用フィルム、情報記録カード、被印刷材等の表面や、コンクリート構造物、木質建材、合成建材、プレキャスト材、建築物の内外装、自動車の内外装、缶等の塗装に極めて好適に使用することができる。さらに、本発明の分散体からなるコーティング材は、抗菌性、防カビ性、防藻性、脱臭性、帯電防止性等を有する機能性コーティング材としても使用することができる。
【0092】
本発明は、クロマトグラフィー担体、防汚処理ガラス、表面処理コンポジットフィラー、表面処理コンデンサー、化粧品用基材、毛髪洗浄剤、毛髪処理剤、衣類用洗浄剤、衣類用処理剤などに適用することができる。
【0093】
3.実施例、参考例、および比較例
以下、実施例、参考例、および比較例をあげて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明中、「部」および「%」は特に断らない限り重量基準である。
【0094】
3.1.参考例1〈ジメチルビニルシラノールの合成〉
還流管をつけた1Lの三口フラスコを窒素置換した後、氷浴中でエチルエ−テル700mlを入れ、アニリン8.38g(0.09mol)、水1.48g(0.087mol)を加え攪拌した。50mlの エチルエ−テルにあらかじめ溶解しておいたビニルジメチルクロロシラン10g(0.082mol)をゆっくりと滴下し、室温で15分攪拌した。反応は化18に示すとおりである。生成する塩を濾過により除去後、無水硫酸マグネシウムで脱水を行い、溶媒を減圧留去し、目的物を得た。収率は63%であった。
【0095】
【化18】

【0096】
3.2.参考例2〈ビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシランの合成〉
還流管をつけた1Lの三口フラスコを窒素置換した後、氷浴中でエチルエ−テル500ml、トリエチルアミン8.21g(0.081mol)を入れ、7.54g(0.074mol)のジメチルビニルシラノールを加え攪拌した。これへ、50mlのエチルエ−テルに溶解したジクロロメチルシラン4.24g(0.037mol)をゆっくりと滴下し、室温で20分間攪拌した。反応は化19に示すとおりである。生成する塩を濾過により除去後、エバポレーターで低沸点溶媒等を除去した。蒸留により、無色透明のビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシランを得た。収率は62%であった。沸点(bp)は46〜48℃/10mmHgであった。
【0097】
【化19】

【0098】
3.3.参考例3〈分岐(ハイパーブランチ)ポリマーの合成〉
還流管をつけた100mlの三口フラスコを窒素置換した後、このフラスコ中でビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン2.49g(0.01mol)を50mlのTHFに溶解した。Karstedt触媒(platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane complex 0.1M in xylene)を数滴加え、IRスペクトルで完全にSi−H基が消失するまで加熱還流し、室温まで冷却した。エバポレーターで低沸点溶媒等を除去後、アセトニトリルに生成物を滴下して無色粘性液状のポリマーを得た。収率は92%であった。
【0099】
ポリスチレンを標準とし、THFを展開溶媒とするGPC分量測定の結果、重量平均分子量は4700であった。ポリマーの分子構造は化20のようであると考えられる。
【0100】
【化20】

【0101】
3.4.参考例4
酸化チタン粒子(平均粒径1μm)1.0g、ヘキサン50ml、参考例3のポリマー0.1gを混合し、一晩攪拌した。酸化チタン粒子を吸引ろ過後、ヘキサンで洗浄し、100℃のオーブンで真空乾燥して処理済み酸化チタン粒子を得た。
【0102】
3.5.参考例5〈ビニル系重合体(b1)の製造〉
還流冷却器、撹拌機を備えた反応器に、メチルメタクリレート70部、n−ブチルアクリレート40部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20部、アクリル酸5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13部、1,1,1−トリメチルアミンメタクリルイミド2部およびi−プロピルアルコール130部を加えて混合したのち、攪拌しながら80℃に加温し、この混合物にアゾビスイソバレロニトリル4部をキシレン10部に溶解した溶液を30分間かけて滴下したのち、80℃で5時間反応させて、固形分濃度50%のビニル系重合体(b1)の溶液を得た。このビニル系重合体(b1)は、Mnが12,000であり、重合体1分子当たり平均6個のシリル基を有していた。
【0103】
3.6.実施例1
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、メチルトリメトキシシラン100部、参考例2で得たビニル系重合体(b1-1)50部、および参考例4で得られた処理済み酸化チタンの40部と、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム20部(0.07モル当量)をi−プロピルアルコール40部に溶解した溶液とを混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させた。次いで、反応液を室温まで冷却したのち、アセチルアセトン20部(0.2モル当量)を添加して、酸化チタンの分散体を得た。
【0104】
得られた分散体中の酸化チタンの分散状態は良好で、経時的にも安定であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が分岐構造を有するポリシロキサンで被覆され、かつ光触媒能を有する無機微粒子が媒体中に分散された分散体。
【請求項2】
請求項1において、
前記無機微粒子は、TiO2 、TiO3 、SrTiO3 、FeTiO3 、WO3 、SnO2 、Bi23 、In23 、ZnO、Fe23 、RuO2 、CdO、CdS、CdSe、GaP、GaAs、CdFeO3 、MoS2 、LaRhO3から選ばれる、少なくとも1種からなる、分散体。
【請求項3】
請求項1または2において、
分岐構造を有さないポリオルガノシロキサン、およびビニル系重合体の、少なくとも一方をさらに含有する、分散体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記分岐構造を有するポリシロキサンは、デンドリックポリマーである、分散体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記分岐構造を有するポリシロキサンは、ビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、ビス(ジメチルアリルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルアリルシロキシ)シランから選ばれる、少なくとも1種を重合したものである、分散体。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記分岐構造を有するポリシロキサンは、ビス(ジメチルシロキシ)メチルビニルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)ビニルシラン、ビス(ジメチルシロキシ)メチルアリルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)アリルシランから選ばれる、少なくとも1種を重合したものである、分散体。

【公開番号】特開2006−55697(P2006−55697A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237445(P2004−237445)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】