説明

分散剤およびそれを用いた分散体

【課題】本発明は、低使用量で分散性、流動性、保存安定性に優れ、また分散媒との相溶性に優れ、結晶性が低くハンドリングが良い分散剤の提供を目的とする。
【解決手段】ポリエステル、ポリエーテル、およびポリ(メタ)アクリルレートから選ばれる少なくとも1種のポリマーユニットと、
酸性基を有するユニットとが結合した分散剤であって、
分散剤の重量平均分子量が500〜50000であり、
2−アセトキシ−1−メトキシプロパンにおける分散剤の極限粘度数が、6.5〜15である分散剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性、流動性、保存安定性に優れた分散体を製造するための分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インキ等を製造する場合、顔料を安定に高濃度で分散することが難しく、製造工程や製品そのものに対して種々の問題を引き起こすことが知られている。
【0003】
例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は往々にして高粘度を示し、製品の分散機からの取り出しや輸送が困難となるばかりでなく、悪い場合は保存中にゲル化を起こし、使用困難となることさえある。さらに展色物の表面に関しては光沢の低下、レベリング不良等の状態不良を生じる。また、異種の顔料を混合して使用する場合、凝集による色別れや、沈降などの現象により展色物に色むらや著しい着色力の低下が現れることがある。
【0004】
そこで一般的には分散状態を良好に保つために分散剤が利用されている。分散剤は顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤や樹脂に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2つの機能の部位のバランスで分散剤の性能は決まる。分散剤は被分散物である顔料の表面状態に合わせ種々のものが使用されているが、塩基性に偏った表面を有する顔料には酸性の分散剤が使用されるのが一般的である。この場合、酸性官能基が顔料の吸着部位となる。酸性の官能基としてカルボン酸を有する分散剤は、例えば特許文献1(特開昭61−61623)、特許文献2(特開平1−141968)、特許文献3(特開平2−219866)、特許文献4(特開平11−349842)などに記載されている。
【0005】
しかし、これらはある程度の分散能力は持ち合わせるが、低粘度で安定な分散体をつくるには使用量を多くする必要があった。しかし、使用量を多くすることは、インキ、塗料等への展開を考える上で、塗膜の耐性が落ちる場合があるなど好ましいものではなかった。
【0006】
また、酸性の官能基としてリン酸エステルを有する分散剤は、例えば特許文献5(特開昭63−248864)などに記載されている。これらは高い分散能力を持ち合わせ、ある程度少ない使用量で低粘度で安定な分散体をつくることができる。
【0007】
しかしながら、これらの分散剤も保存安定性が悪い場合や、リン酸由来の欠点、例えば耐熱性の低さ、耐薬品性の低さ、相溶性の悪さなどで問題を生じる場合があった。これは、スルホン酸を有する分散剤も同様である。このようなリン酸エステルや、スルホン酸を有する分散剤は、応用するインキや塗料などへの展開性に劣る場合があり、一方、カルボン酸を用いた分散剤では、耐熱性、耐薬品性、相溶性の点については問題がないが、粘度が高い、安定性が悪い、顔料微分散化不良など、分散剤としての能力に劣る場合があった。
【特許文献1】特開昭61−61623号公報
【特許文献2】特開平1−141968号公報
【特許文献3】特開平2−219866号公報
【特許文献4】特開平11−349842号公報
【特許文献5】特開昭63−248864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低使用量で分散性、流動性、保存安定性に優れ、また分散媒との相溶性に優れ、結晶性が低くハンドリングが良い分散剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリエステル、ポリエーテル、およびポリ(メタ)アクリルレートから選ばれる少なくとも1種のポリマーユニットと、酸性基を有するユニットとが結合した分散剤であって、分散剤の重量平均分子量が500〜50000であり、2−アセトキシ−1−メトキシプロパンにおける分散剤の極限粘度数が、6.5〜15である分散剤に関する。
【0010】
また、本発明は、酸性基を有し、重量平均分子量が500〜50000である分散剤であって、下記一般式(1)で表される分散剤に関する。
一般式(1)
(AXOC(=O))nB
(式中、Aは、炭素数3〜7のアクリレートをビニルポリマー全体の5重量%以上含むビニルモノマーを重合してなるポリマー成分を表し、
Xは、直接結合または原子数1〜30の連結基を表し、
Bは酸性基を1、2または3個有する芳香環を表し、
nは、1または2を表す。
ただし、nが2の場合は、2つのAXは同じであっても異なっていてもよい。)
また、本発明は、分散剤の極限粘度数が、6.5〜15である上記分散剤に関する。
【0011】
また、本発明は、酸性基が、芳香族酸性基である上記分散剤に関する。
【0012】
また、本発明は、酸価が、1.5〜400である上記分散剤に関する。
【0013】
また、本発明は、上記分散剤、顔料および、分散媒を含んでなる分散体に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の分散剤を使用することにより、低使用量で良好な分散性、良好な流動性等が得られ、同時に展色物の耐熱性、耐薬品性を有する顔料分散体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の分散剤は顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤や樹脂に親和性の高い部位との構造を有する。
【0016】
本発明の分散剤の、分散媒に親和性の高い部位としては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種のポリマーユニットが挙げられ、これらは、分散剤の重量平均分子量が500〜50000となるものであれば、特定の組成に限定されるものではない。
【0017】
例えば、ポリエステルとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリンもしくは、ヘキサントリオール等のアルコール類の1種以上と、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,4−シクロヘキサンヒカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサトリカルボン酸または2,5,7−ナフタレントリカルボン酸等のカルボン酸類の1種類以上との共縮合によって得られるポリエステルポリオール類等が挙げられる。
【0018】
例えば、ポリエーテルとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリンもしくは、ヘキサントリオール等のアルコール類と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き各種の(環状)エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール類等が挙げられる。
【0019】
例えば、ポリ(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類等のホモポリマー及び共重合体が挙げられる。

これらは、1種のみ用いてもよいし、混合して用いてもよいし、ブロックポリマーやグラフトポリマーやランダムポリマーの形態であってもよい。
【0020】
これらのうち、分散性のコントロールや、諸特性の付与する面でポリアクリレートは好ましく用いられ、特に、これらの分散樹脂を用いた顔料分散体の低粘度化の点で、炭素数3〜7のアクリレートをビニルポリマー全体の5重量%以上、含むビニルモノマーを重合してなるポリアクリレートが好ましく、炭素数3〜7のアクリレートをビニルポリマー全体の10重量%以上、含むビニルモノマーを重合してなるポリアクリレートがより好ましく、炭素数3〜7のアクリレートをビニルポリマー全体の20重量%以上、含むビニルモノマーを重合してなるポリアクリレートがさらに好ましく、炭素数3〜7のアクリレートをビニルポリマー全体の40重量%以上、含むビニルモノマーを重合してなるポリアクリレートが非常に好ましい。
【0021】
本発明の分散剤の、顔料に吸着する部位としては、酸性基を有するユニットが挙げられる。
【0022】
例えば、酸性基としては、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基が挙げられる。
【0023】
また、酸性基としては、芳香族酸性基が好ましく、さらには芳香族カルボキシル基が好ましい。また、酸性基を有するユニットは、1分子の分散剤中に1つであることが好ましい。酸性基を有するユニットは、1つの芳香族環に酸性基が2以上有する芳香族環が含まれることが好ましく、一般式(1)で示されるような、トリメリト酸、およびまたは、ピロメリト酸を一部エステル化したものが好ましく使用される。また、場合によって、酸性基が2以上有する芳香族環が、複数、直接結合およびまたは連結基によって一つの酸性基を有するユニットとなっていてもよい。
【0024】
また、分散剤の酸価は、1.5〜400が好ましく、5〜300がより好ましく、10〜200がさらに好ましく、20〜100が非常に好ましい。酸価が1.5未満の場合は、分散体の粘度が高粘度となり、その後インキや顔料組成物としての使用が困難になることがあり、また、400を超える場合も同様に分散体の粘度が高粘度となり、その後インキや顔料組成物としての使用が困難になることがある。
【0025】
本発明の分散剤の好適な例として、一般式(1)で示される分散剤が挙げられる。
【0026】
一般式(1)におけるAとしては、先に書いたメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類等のホモポリマー及び共重合体残基が挙げられ、具体的には炭素数3〜7のアクリレートをビニルポリマー全体の5重量%以上含むビニルモノマーを重合してなるポリマー成分を表し、さらに詳しくは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートのホモポリマーや、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートを10重量%以上含有する共重合体残基が好ましい。
【0027】
一般式(1)におけるXとしては、硫黄原子を含有する化合物等のラジカルの連鎖移動定数が高い化合物、例えばメルカプトエタノールや3−メルカプト−1,2−プロパンジオール由来の結合基などが挙げられる。
【0028】
一般式(1)におけるBとしては、ピロメリト酸二無水物、トリメリト酸無水物等の芳香続酸無水物を1つ以上含有する化合物の酸無水物がハーフエステルした芳香環残基などが挙げられる。芳香族酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3',4,4'−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、M−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4'−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4'−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物などを使用することも出来る。
【0029】
nは、1または2を表す。ただし、nが2の場合は、2つのAXは同じであっても異なっていてもよい。
【0030】
一般式(1)の分散剤は、例えば、複数の酸性基を有する芳香環化合物を メルカプト基と酸性基に反応する基とを有する化合物に反応させ、メルカプト基と酸性基を有する芳香環とを含む化合物とし、これを連鎖移動剤としてビニル重合するか、メルカプト基を開始剤として、ポリエステルやポリエーテルを合成する方法などが挙げられる。
【0031】
具体的に、AXBの組み合わせを例示するならば、Aがメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートのホモポリマーや、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートを10重量%以上含有する共重合体残基等であり、Xがメルカプトエタノールや3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等の硫黄原子を含有する化合物由来の連結基等であり、Bがピロメリト酸、トリメリト酸等の芳香族酸無水物の酸無水物を1つ以上含有する化合物の酸無水物がハーフエステルした芳香環残基もの等の組み合わせが挙げられる
さらに、詳しくは例示するならば、後に示す合成例1〜合成例7に示す工程で合成できる。
【0032】
本発明の分散剤の、重量平均分子量は500〜50000であり、より好ましくは1000〜25000である。また、この重量平均分子量の範囲において、好ましい極限粘度数は、6.5〜15である。
【0033】
極限粘度数を求めるために、例えば、E型粘度計を用いて測定することができる。E型粘度計は、JIS Z 8809:2000に基づき校正された粘度計校正用標準液 JS 2.5(日本グリース株式会社製)で校正されたものを用いることができる。
【0034】
極限粘度数は、2−アセトキシ−1−メトキシプロパンに本発明の分散剤を2〜10重量%溶解した数点の溶液の粘度からそれぞれの還元粘度を求め、それを基に極限粘度数を求めることが出来る。
【0035】
本発明の分散剤は、顔料、分散媒と一緒に用いて分散体とすることができる。
【0036】
本発明で用いられる顔料としては、インク等に使用される種々のものが挙げられる。有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、ジケトピロロピロール顔料等があり、更に具体的な例をカラーインデックスのジェネリックネームで示すと、例えば、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,144,146,149,166,168,177,178,179,185,206,207,209,220,221,238,242,254,255、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185、ピグメントオレンジ13,36,37,38,43,51,55,59,61,64,71,74等が挙げられる。
【0037】
また、本発明の顔料組成物には、二酸化チタン、酸化鉄、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料も使用することができる。
【0038】
顔料は、さらに、顔料誘導体を併用して用いてもよい。
【0039】
本発明で用いられる分散媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ブチルジグリコール等が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの分散媒は、2種類以上混合して用いてもよい。
【0040】
本発明の分散剤は、顔料(顔料誘導体を含む)、分散媒以外に、そのほかの添加剤を添加することができる。添加剤としては、以下に限定されるものではないが、各種樹脂、各種光硬化性オリゴマー、光硬化性モノマー等を添加することが出来る。
【0041】
本発明の分散剤を用いて分散体とする方法としては、必要により各種溶剤、樹脂、添加剤等を混合して、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより、顔料組成物をワニスに分散せしめてなる顔料分散体を調製することができる。顔料、顔料誘導体、分散剤、その他の樹脂、添加剤は、すべての成分を混合してから分散してもよいが、初めに顔料と顔料誘導体とのみ、あるいは、顔料誘導体と分散剤とのみ、あるいは、顔料と顔料誘導体と分散剤とのみを分散し、次いで、他の成分を添加して再度分散を行ってもよい。
【0042】
また、横型サンドミル、 縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、2本ロールミル等による固形分散、または顔料への顔料誘導体および/または分散剤の処理を行ってもよい。また、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、 ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等のあらゆる分散機や混合機が本発明の分散体を製造するために利用できる。本発明の顔料分散体に用いることができる各種溶剤としては、有機溶剤、水等が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化型組成物に用いる場合、活性エネルギー線硬化性の液状モノマーや液状オリゴマーを溶剤代わりの媒体として用いても良い。
【0043】
本発明の分散体は、例えば、オフセットインキ、グラビアインキ、シルクスクリーンインキ、インクジェットインキなどのインキ、各種塗料、プラスチック着色剤、カラーフィルタ用レジストなど、顔料を使用する用途に幅広く用いることができ、安定した顔料の分散を実現できる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。また、重量平均分子量は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8220GPC)で、展開溶媒にTHFを用いたときのポリスチレン換算分子量である。
【0045】
極限粘度は得られた分散剤の樹脂溶液とその溶媒の粘度について、直径60mm、角度0度59分のコーンプレートを用いたコーンプレート型粘度計で、100rad/秒の回転速度で25℃での粘度を測定することにより求めた。さらに詳しく言うと、求めた樹脂溶液の粘度と溶媒の粘度から、溶液の還元粘度を求め、溶質である分散剤の濃度を5〜10点測定し、その値を基にX軸に濃度、Y軸に還元粘度をプロットしたグラフを作成し、各溶質である分散剤の粘度が0となる際の値(溶質の濃度0%における還元粘度)を極限粘度として求めた。
(合成例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル300部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール17.1部とプロピレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート79.35部を仕込み窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器内を90℃に加熱した。90℃に加熱後、別途作成した1.0部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを56.7部のプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートに溶解した溶液を1時間毎に4.81部づつ添加し続け12時間反応した。
【0046】
固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物15.80部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.52部を追加し、130℃で2時間反応後100℃で5時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、重量平均分子量8700のポリエステル分散剤1を得た。
(合成例2)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸エチル300部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール17.1部とプロピレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート79.35部を仕込み窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器内を90℃に加熱した。90℃に加熱後、別途作成した1.0部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを56.7部のプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートに溶解した溶液を1時間毎に4.81部づつ添加し続け12時間反応した。
【0047】
固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物15.80部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.52部を追加し、130℃で2時間反応後100℃で5時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、重量平均分子量9300のポリエステル分散剤2を得た。
(合成例3)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸エチル120部とメタクリル酸メチル120部とメタクリルサンt―ブチル60部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール17.1部とプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート79.35部を仕込み窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器内を90℃に加熱した。90℃に加熱後、別途作成した1.0部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを56.7部のプロピレングリコールモノエチルエーテルモノアセテートに溶解した溶液を1時間毎に4.81部づつ添加し続け12時間反応した。
【0048】
固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物15.80部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.52部を追加し、130℃で2時間反応後100℃で5時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、重量平均分子量9200のポリエステル分散剤を得た。
(合成例4)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メタクリル酸n−ブチル300部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール17.1部とプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート79.35部を仕込み窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器内を90℃に加熱した。90℃に加熱後、別途作成した1.0部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを56.7部のプロピレングリコールモノエチルエーテルモノアセテートに溶解した溶液を1時間毎に4.81部づつ添加し続け12時間反応した。
【0049】
固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物15.80部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.52部を追加し、130℃で2時間反応後100℃で5時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、重量平均分子量9200のポリエステル分散剤4を得た。
(合成例5)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メタクリル酸ベンジル300部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール17.1部とプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート79.35部を仕込み窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器内を90℃に加熱した。90℃に加熱後、別途作成した1.0部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを56.7部のプロピレングリコールモノエチルエーテルモノアセテートに溶解した溶液を1時間毎に4.81部づつ添加し続け12時間反応した。
【0050】
固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物15.80部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.52部を追加し、130℃で2時間反応後100℃で5時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、重量平均分子量9200のポリエステル分散剤5を得た。
(合成例6)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メタクリル酸2エチルヘキシル300部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール17.1部とプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート79.35部を仕込み窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器内を90℃に加熱した。90℃に加熱後、別途作成した1.0部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを56.7部のプロピレングリコールモノエチルエーテルモノアセテートに溶解した溶液を1時間毎に4.81部づつ添加し続け12時間反応した。
【0051】
固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物15.80部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.52部を追加し、130℃で2時間反応後100℃で5時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、重量平均分子量9200のポリエステル分散剤6を得た。
(合成例7)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メタクリル酸エチル300部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール17.1部とプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート79.35部を仕込み窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器内を90℃に加熱した。90℃に加熱後、別途作成した1.0部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを56.7部のプロピレングリコールモノエチルエーテルモノアセテートに溶解した溶液を1時間毎に4.81部づつ添加し続け12時間反応した。
【0052】
固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物15.80部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.52部を追加し、130℃で2時間反応後100℃で5時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、重量平均分子量9200のポリエステル分散剤7を得た。
(合成例8)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、シクロヘキサノン100部を加え、ここに、ブチルメタクリレート10部、ヒドロキシエチルメタクリレート30部、ベンジルメタクリレート25部、メタクリル酸10部、アゾビスイソブチロ二トリル2.5部、シクロヘキサノン125部からなる混合物を95℃で2時間かけて滴下した。反応温度は95℃のまま、滴下終了1時間後、2時間後に、アゾビスイソブチロ二トリルを0.25部とシクロヘキサノン2.5部を加え、5時間で反応を終了させた。固形分測定により95%が反応し、数平均分子量が5000、固形分30%であることを確認した。これをアクリル樹脂A1とする。
(実施例1〜3、比較例4〜9)
合成例1〜7で得られた分散剤又は、以下の括弧内に記す分散剤(Disper byk 110、Disper byk 111(BYK Chemie製)、Newcol 560−SFC、Newcol 707−SFC(日本乳化剤株式会社製)、PHF−33(伊藤製油株式会社製)、のいずれか1つを用い、下記構造式(Y1)の顔料誘導体、顔料(C,I Pigment Blue 15:6)、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、およびガラスビーズ(0.8mm)を140mlのマヨネーズ瓶に仕込み、スキャンデックスに設置して3時間分散した。配合量は、顔料8.41部、顔料誘導体1.67部、分散剤1.92部、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート48.00部、ガラスビーズ60.00gとした。
【0053】
4時間25℃で放置後、下記の試験を行った。結果を表1に示した。
【0054】
顔料誘導体(Y1)
【0055】
【化1】

(粘度測定)
得られた分散体について、直径60mm、角度0度59分のコーンプレートを用いたコーンプレート型粘度計で、10rad/秒の回転速度で25℃での粘度を測定した。
(塗膜のヘイズ測定)
得られた分散体15gに、アクリル樹脂A1を6.4g加え、十分に撹拌した。これをアルミ板にバーコーター#5で塗工して、塗膜のヘイズを測定した。
【0056】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル、ポリエーテル、およびポリ(メタ)アクリルレートから選ばれる少なくとも1種のポリマーユニットと、
酸性基を有するユニットとが結合した分散剤であって、
分散剤の重量平均分子量が500〜50000であり、
2−アセトキシ−1−メトキシプロパンにおける分散剤の極限粘度数が、6.5〜15である分散剤。
【請求項2】
酸性基を有し、重量平均分子量が500〜50000である分散剤であって、
下記一般式(1)で表される分散剤。
一般式(1)
(AXOC(=O))nB
(式中、Aは、炭素数3〜7のアクリレートをビニルポリマー全体の5重量%以上含むビニルモノマーを重合してなるポリマー成分を表し、
Xは、直接結合または原子数1〜30の連結基を表し、
Bは酸性基を1、2または3個有する芳香環を表し、
nは、1または2を表す。
ただし、nが2の場合は、2つのAXは同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
分散剤の極限粘度数が、6.5〜15である請求項2記載の分散剤。
【請求項4】
酸性基が、芳香族酸性基である請求項1〜3いずれか記載の分散剤。
【請求項5】
酸価が、1.5〜400である請求項1〜4いずれか記載の分散剤。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の分散剤、顔料および、分散媒を含んでなる分散体。

【公開番号】特開2009−165909(P2009−165909A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3778(P2008−3778)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】