説明

分散染料組成物およびそれを用いる疎水性繊維材料の染色法

【課題】高温多湿で太陽光に露光される自動車内の合成繊維材料に要求される耐光堅牢度が強く、かつ、青色、赤色および黄色の染色性がよい分散染料組成物とそれを用いた染色法が求められている。
【解決手段】5種の特定分散染料を特定の組成比で含有する青色系分散染料組成物、さらに、他の特定の黄色系および/または赤色系分散染料を含有する混合分散染料組成物により、各色の堅牢度が強いだけでなく三原色のバランスのよい耐光堅牢度を持ち、かつ、染色時の特性が揃った分散染料組成物およびそれを用いた染色法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散染料組成物およびそれを用いる染色法に関する。さらに詳しくは、特定の染料を含有した分散染料組成物およびそれを用いる疎水性繊維材料の染色法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装材料に用いられる合成繊維材料は、自動車内が高温多湿になることや太陽光に露光される時間が他の一般衣料繊維材料に較べ格段に長いため、強い耐温度性や耐光性を要求される。これを解決するために耐光性の強い染料を用いて繊維を染色する方法がとられている。しかしながら、黄色染料、赤色染料、青色染料の各々の耐光性のバランスが違っていると長時間の露光により一部の色だけが退色を起こす結果、当初の色と異なってきて染色当初より色変色が大きく見えることが起きやすい。このため使用される黄色染料、赤色染料、青色染料には同じように退色してゆくバランスの取れた耐光性が要求されるが、そのような染料は得られていない。
【0003】
また、これらの合成繊維材料の糸の太さや糸の形状の違い、使われるポリエステル繊維に他の材料を混紡した混紡繊維等の違いにより同じ染色法においても染色濃度、染色色調等が異なってくる。このように形状、性質の異なる合成繊維材料を毎回、同じように染色加工するために、各種染色条件でも染色再現性にすぐれた染料が要求されている。
特に自動車内装材料を染色するときには出来るだけ環境条件に対する堅牢度の強い分散染料を使用して染色を行うが、同時に黄色染料、赤色染料、青色染料の染色特性が揃っていないとその違いにより染色された合成繊維材料の染色再現性に違いが出てきてしまう。
特許文献1〜3等には各種の分散染料組成物が開示されているが、前記のような性能を有する染料組成物は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−23254号公報
【特許文献2】特開2004−168950号公報
【特許文献3】国際公開第2007/058209号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの問題点を解決するために、黄色染料、赤色染料、青色染料の各色の耐光堅牢度が強くかつ揃っており、さらに,各色の染色時の再現性がよい分散染料組成物と染色法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、5種の分散染料から目的に合った青色系分散染料組成物を得て、さらに、他の特定の各種分散染料の成分を組みあわせる事により三原色のバランスのよい環境に対する堅牢度を持ち、かつ、染色時の染色特性が揃った混合分散染料組成物を見出し、また、それを用いた染色法をも見出して本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は以下の1)から8)に関する。
【0008】
1)下記式(1)で示される分散染料を0.5〜5.0重量%、下記式(2)で示される分散染料を25.0〜60.0重量%、下記式(3)で示される分散染料を3.0〜15.0重量%、下記式(4)で示される分散染料を15.0〜40.0重量%および下記式(5)で示される分散染料を10.0〜30.0重量%の割合で含有する青色系分散染料組成物。
【化1】

【化2】

[式中、Rがニトロ基でRが水酸基、または、Rが水酸基でRがニトロ基を示す。]
【化3】

[式中、nは1〜4の整数である。]
【化4】

【化5】

[Rはメチル基若しくはエチル基、またはそれらの混合物である。]
【0009】
2)前記1)記載の青色系分散染料組成物と、下記式(6)で示される分散染料を8.0〜20.0重量%、下記式(7)で示される分散染料を55.0〜80.0重量%および下記式(8)で示される分散染料を5.0〜15.0重量%の割合で含有する黄色系分散染料組成物との混合分散染料組成物。
【化6】

【化7】

【化8】

【0010】
3)前記1)記載の青色系分散染料組成物と、下記式(9)で示される分散染料から選ばれる一種または二種以上の染料である赤色系分散染料組成物との混合分散染料組成物。
【化9】

[式中、Rは置換されていてもよい炭素数1から6のアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。]
4)前記3)における式(9)の赤色系分散染料組成物が、下記式(9−1)、下記式(9−2)および下記式(9−3)から選ばれる一種または二種以上の染料からなる赤色系分散染料組成物である前記3)記載の混合分散染料組成物。
【化10】

【化11】

【化12】

【0011】
5)前記2)記載の混合分散染料組成物と、下記式(9−1)、下記式(9−2)および下記式(9−3)から選ばれる一種または二種以上の染料からなる赤色系分散染料組成物との混合分散染料組成物。
【化13】

【化14】

【化15】

【0012】
6)前記1)〜5)のいずれか一項に記載の分散染料組成物を用いることを特徴とする疎水性繊維材料の染色法。
7)前記6)記載の染色法で染色された疎水性繊維材料。
8)前記7)記載の疎水性繊維材料を用いた物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の5種の特定分散染料を特定の組成比で含有する青色系分散染料組成物、さらに、他の特定の黄色系および/または赤色系分散染料を含有する混合分散染料組成物を用いて染色した合成繊維材料は、環境に対する優れた堅牢度を持ち、かつ、三原色の堅牢度のバランスもよいという性能を有し、加えて、本発明の混合分散染料組成物は染色時の染色特性が揃っているというものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の青色系分散染料組成物は前記式(1)で示される分散染料を0.5〜5.0重量%、前記式(2)[式中、Rがニトロ基でRが水酸基、または、Rが水酸基でRがニトロ基を示す。]で示される分散染料を25.0〜60.0重量%、前記式(3)[式中、nは1〜4の整数である。]で示される分散染料を3.0〜15.0重量%、前記式(4)で示される分散染料を15.0〜40.0重量%および前記式(5)[Rはメチル基若しくはエチル基、またはそれらの混合物である。]で示される分散染料を10.0〜30.0重量%の割合で含有する。
【0015】
式(1)で示される分散染料はC.I.Disperse バイオレット 26であり、公知文献に基づいて製造することも出来るが市販の染料を使用することも出来る。
式(2)で示される分散染料は、Rがニトロ基でRが水酸基、または、Rが水酸基でRがニトロ基を示す化合物、あるいはそれらの混合物であってもよく、例えば、C.I.Disperse ブルー 77として公知である染料が挙げられ、また、公知文献に基づいて製造することも出来るが市販の染料を使用することも出来る。
式(3)で示される分散染料は臭素原子の置換数、置換位置は置換可能であれば特に限定されず、それらの混合物であってもよく、例えば、C.I.Disperse ブルー 56として公知である染料が挙げられ、また、公知文献に基づいて製造することも出来るが市販の染料を使用することも出来る。
式(4)で示される分散染料はC.I.Disperse ブルー 60であり、公知文献に基づいて製造することも出来るが市販の染料を使用することも出来る。
式(5)で示される分散染料は公知の製造方法または該製造方法を応用した製造方法で製造することが出来るが、Rがメトキシ基とエトキシ基の混合物は特開平4−164968号公報等に記載の染料であり、また、市販されている該染料を使用してもよい。
【0016】
本発明の混合分散染料組成物は、前記の青色系分散染料組成物と、前記式(6)で示される分散染料を8.0〜20.0重量%、前記式(7)で示される分散染料を55.0〜80.0重量%および前記式(8)で示される分散染料を5.0〜15.0重量%の割合で含有する黄色系分散染料組成物とを含有する。
【0017】
式(6)で示される分散染料はC.I.Disperse イエロー 71であり、公知文献に基づいて製造することも出来るが市販の染料を使用することも出来る。ベンゾイミダゾール構造のフェニル基に置換するメトキシ基の置換位置は特に限定されず、混合物であってもよい。
式(7)で示される分散染料はC.I.Disperse イエロー 163であり、公知文献に基づいて製造することも出来るが市販の染料を使用することも出来る。
式(8)で示される分散染料はC.I.Disperse オレンジ 155であり、公知文献に基づいて製造することも出来るが市販の染料を使用することも出来る。
【0018】
本発明の混合分散染料組成物は、前記の青色系分散染料組成物と、前記式(9)[式中、Rは置換されていてもよい炭素数1から6のアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。]で示される分散染料から選ばれる一種または二種以上の染料である赤色系分散染料組成物とを含有する。
置換されていてもよい炭素数1から6のアルキル基としては、例えば、メチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシブチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、ヒドロキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基等が挙げられる。
置換されていてもよいフェニル基における置換基としては、例えば、N−メトキシプロピルスルホアミド基、チオメチル基、ヒドロキシ基、メトキシエトキシ基、ハロゲン原子等が挙げられ、該置換基数は1、置換基の置換位置は置換可能であれば特に限定されない。
【0019】
前記式(9)で示される分散染料の内、前記式(9−1)、前記式(9−2)および前記式(9−3)から選ばれる一種または二種以上の染料からなる赤色系分散染料組成物が好ましい。
式(9−1)で示される分散染料はC.I.Disperse レッド 60であり、公知文献に基づいて製造することも出来るが市販の染料を使用することも出来る。
式(9−2)で示される分散染料はC.I.Disperse レッド 91であり、公知文献に基づいて製造することも出来るが市販の染料を使用することも出来る。
式(9−3)で示される分散染料はC.I.Disperse レッド 92であり、公知文献に基づいて製造することも出来るが市販の染料を使用することも出来る。
【0020】
さらに本発明には、前記の青色系分散染料組成物と、前記式(6)で示される分散染料を8.0〜20.0重量%、前記式(7)で示される分散染料を55.0〜80.0重量%および前記式(8)で示される分散染料を5.0〜15.0重量%の割合で含有する黄色系分散染料組成物と、前記式(9−1)、前記式(9−2)および前記式(9−3)から選ばれる一種または二種以上の染料からなる赤色系分散染料組成物を含有する混合分散染料組成物も含まれる。
【0021】
本発明の分散染料組成物には色合いを調整するため、若しくは、堅牢度、染色特性等を調整するために他の分散染料を混合して使用することが出来る。また、他の分散染料を染色時に加えて使用してもよい。
同様にして分散染料以外の染料、例えば、直接染料、反応性染料、塩基性染料等を混合して使用することも出来る。また、他の染料や染色薬剤は染色時に加えて使用してもよい。
その他、本発明の分散染料組成物には水等の溶剤、後記のキャリヤーや後記の分散剤を含んでいてもよい。
【0022】
本発明の分散染料組成物は、分散染料の各原末を必要量混合した後、微粒子化(分散化)処理を施して分散染料組成物としてもよいし、また、これらの各染料原末について各々別々に微粒子化(分散化)処理を施した後、混合してもよい。後者にあっては染浴中で個々に微粒子化(分散化)処理を施された分散染料を添加して染浴中にて形成させてもよい。
また、微粒子化された分散染料組成物に後記の分散剤を後から加えてもよい。
【0023】
一般的に微粒子化処理としては、分散染料原末をナフタレンスルホン酸とアルキルベンゼンスルホン酸のホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸のホルマリン縮合物、クレゾールと2−ナフトール−6−スルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物;リグニンスルホン酸等のアニオン性分散剤;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、ポリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド付加物等の非イオン性分散剤;前記のアニオン性分散剤と前記の非イオン性分散剤との混合物等の分散剤と、少量の水の存在下でボールミルあるいはサンドミル等の粉砕機を用いて、通常0.2〜2μ程度になるまで十分に湿式粉砕する方法が挙げられる。
本発明の分散染料組成物は、微粒子化されたままの液状乃至ペースト状で、あるいは、スプレ−乾燥法等により乾燥してから染色に供される。
【0024】
次に、本発明の分散染料組成物を用いる疎水性繊維材料の染色法について説明する。該染色法も本発明に含まれる。該疎水性繊維材料としては、合成繊維であるポリエステル(PET)繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維またはこれら同士の混紡品が挙げられ、さらに、これらとレーヨン等の再生繊維あるいは木綿、絹、羊毛等の天然繊維との混紡品であってもよい。また、前記疎水性繊維材料の太さとしては、平均の太さが0.1〜10d(デニ−ル)程度が好ましい。
【0025】
該染色法としては、該繊維材料を浸漬した本発明の分散染料組成物を溶解した水性媒体中で加圧下105℃以上、好ましくは110℃〜140℃で30分〜1時間染色するのが好ましい。また、o−フェニルフェノールやトリクロロベンゼン等のキャリヤーの存在下、例えば、水の沸騰状態で染色することも出来る。あるいは、本発明の分散染料組成物の染料分散液を布にパディングし、150〜230℃で30秒〜1分間の乾熱処理を施す、所謂サーモゾル方式での染色も可能である。
一方、本発明の分散染料組成物を用いて天然糊剤(例えば、ローカストビーンガム、グアーガム等)、加工糊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、加工ローカストビーンガム等)、合成糊剤(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸等)等とともに捺染糊を調製し、布に印捺した後にスチーミングまたはサーモゾル処理を施す捺染法による染色を行なってもよい。
また、本発明の分散染料組成物にグリセリンあるいはジエチレングリコール等の不乾性剤を添加して得たインクを調製し、パディング等によって予め糊剤等が付与された布にインクジェット方式のプリンターを用いてプリントした後、スチーミングまたはサーモゾル処理するインクジェット捺染法による染色を行ってもよい。
【0026】
染色する際に本発明の分散染料組成物の使用量は任意であるが、好ましくは、例えば、3デニ−ルの繊維の場合は0.05〜20%o.w.f.(対繊維重量)、特に好ましくは0.2〜10%o.w.f.である。さらに、本発明には該染色法により染色された疎水性繊維材料及びそれを用いた物品も含まれる。
【実施例】
【0027】
以下の実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。実施例において部は重量部を、%は重量%をそれぞれ意味する。
以下の表1−1に実施例1〜6、表1−2に参考例1〜6の分散染料成分組成を示した。各染料成分を配合した後に該染料と同量の分散剤を加えて微粒子化処理を行い、分散染料組成物を製造した。
【0028】
表1−1

【0029】
表1−2

【0030】
純水に各々の分散染料組成物1.0%o.w.f.(対繊維重量)を加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LPX−80(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、135℃で30分間染色した後、染色物を45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で80℃、10分間の還元洗浄を施し、水洗、乾燥して染色物を得た。得られた染色物の耐光堅牢度を後記の方法により測定し同表に記載した。
【0031】
[比較例1]
実施例1の青色系分散染料組成物の替わりに市販のダイスター社の青色系分散染料組成物Dianix Blue KIS−Mを1.0%o.w.f.使用し、実施例1と同様に染色し、得られた染色物の耐光堅牢度を後記の方法により測定したところ、3であった。
【0032】
[比較例2]
実施例1の青色系分散染料組成物の替わりに市販のチバスペシャリテイケミカルズ社の青色系分散染料組成物Teratop Blue HL−Bを1.0%o.w.f.使用し、実施例1と同様に染色し、得られた染色物の耐光堅牢度を後記の方法により測定したところ、3であった。
【0033】
[実施例7]
純水に参考例1の黄色系分散染料組成物0.42%o.w.f.と参考例4の赤色系分散染料組成物0.19%o.w.f.と実施例2の青色系分散染料組成物0.41%o.w.f.を加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LPX−80(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、135℃で30分間染色した後、染色物を45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で80℃、10分間の還元洗浄を施し、水洗、乾燥してベージュ色の染色物を得た。得られた染色物の耐光堅牢度と表裏の色相差を後記の方法により測定し表2に記載した。
【0034】
[実施例8]
参考例1の黄色系分散染料組成物0.26%o.w.f.と参考例4の赤色系分散染料組成物0.16%o.w.f.と実施例2の青色系分散染料組成物0.60%o.w.f.を使用して実施例7と同様に染色および後処理してグレー色の染色物を得た。得られた染色物の耐光堅牢度と表裏の色相差を後記の方法により測定し表2に記載した。
【0035】
[比較例3]
実施例7の各色系分散染料組成物の替わりに市販のダイスター社の黄色系分散染料組成物Dianix Yellow AM−2Rを0.830%o.w.f.と赤色系分散染料組成物Dianix Red AM−SLRを0.140%o.w.f.と青色系分散染料組成物Dianix Blue AM−2Gを0.324%o.w.f.使用して実施例7と同様に染色および後処理してベージュ色の染色物を得た。得られた染色物の耐光堅牢度と表裏の色相差を後記の方法により測定し表2に記載した。
【0036】
[比較例4]
実施例7の各色系分散染料組成物の替わりに市販のクラリアント社の黄色系分散染料組成物Foron Yellow AS−3Lを0.476%o.w.f.と赤色系分散染料組成物Foron Red AS−3Lを0.345%o.w.f.と青色系分散染料組成物Foron Blue AS−3Lを0.446%o.w.f.使用して実施例7と同様に染色および後処理してベージュ色の染色物を得た。得られた染色物の耐光堅牢度と表裏の色相差を後記の方法により測定し表2に記載した。
【0037】
[比較例5]
実施例8の各色系分散染料組成物の替わりに市販のダイスター社の黄色系分散染料組成物Dianix Yellow AM−2Rを0.510%o.w.f.と赤色系分散染料組成物Dianix Red AM−SLRを0.125%o.w.f.と青色系分散染料組成物Dianix Blue AM−2Gを0.488%o.w.f.使用して実施例8と同様に染色および後処理してグレー色の染色物を得た。得られた染色物の耐光堅牢度と表裏の色相差を後記の方法により測定し表2に記載した。
【0038】
[比較例6]
実施例8の各色系分散染料組成物の替わりに市販のクラリアント社の黄色系分散染料Foron Yellow AS−3Lを0.279%o.w.f.と赤色系分散染料組成物Foron Red AS−3Lを0.279%o.w.f.と青色系分散染料組成物Foron Blue AS−3Lを0.615%o.w.f.使用して実施例8と同様に染色および後処理してグレー色の染色物を得た。得られた染色物の耐光堅牢度と表裏の色相差を後記の方法により測定し表2に記載した。
【0039】
[耐光堅牢度試験方法]
染色物にフェードメーター(ブラックパネル温度89℃±3℃、84メガジュール)キセノンランプを用いて照射し、照射部分の変褪色をJIS L−0804の変褪色用グレースケールにて判定した。その結果を表1および表2に示した。
【0040】
[表裏差]
染色されたポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)の表側と裏側との色相差を視感で判定した。その結果を表2に示した。
【0041】
表2

【0042】
以上の結果から明らかなように、本発明の青色系分散染料組成物または該青色系分散染料組成物と他の分散染料組成物との混合分散染料組成物は、市販の青色系分散染料組成物と比べ疎水性繊維材料を染色した際に優れた耐光堅牢度を示す。さらに、本発明の青色系分散染料組成物と他の特定分散染料組成物との混合分散染料組成物により太さの異なる疎水性繊維材料を表裏とする繊維材料をベージュ色またはグレイ色に染色しても,表裏ほぼ同様に染色され、染色時の染色特性が揃っている。一方、比較例3〜6は太さの違う繊維材料の染色特性が揃わない。これは本願発明の分散染料組成物の実用性の高さを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される分散染料を0.5〜5.0重量%、下記式(2)で示される分散染料を25.0〜60.0重量%、下記式(3)で示される分散染料を3.0〜15.0重量%、下記式(4)で示される分散染料を15.0〜40.0重量%および下記式(5)で示される分散染料を10.0〜30.0重量%の割合で含有する青色系分散染料組成物。
【化1】

【化2】

[式中、Rがニトロ基でRが水酸基、または、Rが水酸基でRがニトロ基を示す。]
【化3】

[式中、nは1〜4の整数である。]
【化4】

【化5】

[Rはメチル基若しくはエチル基、またはそれらの混合物である。]
【請求項2】
請求項1記載の青色系分散染料組成物と、下記式(6)で示される分散染料を8.0〜20.0重量%、下記式(7)で示される分散染料を55.0〜80.0重量%および下記式(8)で示される分散染料を5.0〜15.0重量%の割合で含有する黄色系分散染料組成物との混合分散染料組成物。
【化6】

【化7】

【化8】

【請求項3】
請求項1記載の青色系分散染料組成物と、下記式(9)で示される分散染料から選ばれる一種または二種以上の染料である赤色系分散染料組成物との混合分散染料組成物。
【化9】

[式中、Rは置換されていてもよい炭素数1から6のアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。]
【請求項4】
請求項3における式(9)の赤色系分散染料組成物が、下記式(9−1)、下記式(9−2)および下記式(9−3)から選ばれる一種または二種以上の染料からなる赤色系分散染料組成物である請求項3記載の混合分散染料組成物。
【化10】

【化11】

【化12】

【請求項5】
請求項2記載の混合分散染料組成物と、下記式(9−1)、下記式(9−2)および下記式(9−3)から選ばれる一種または二種以上の染料からなる赤色系分散染料組成物との混合分散染料組成物。
【化13】

【化14】

【化15】

【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の分散染料組成物を用いることを特徴とする疎水性繊維材料の染色法。
【請求項7】
請求項6記載の染色法で染色された疎水性繊維材料。
【請求項8】
請求項7記載の疎水性繊維材料を用いた物品。

【公開番号】特開2012−255118(P2012−255118A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130014(P2011−130014)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】