説明

分析装置、分析システム及びコンピュータプログラム

【課題】発生した障害を解決するために、障害が発生した状況を再現させるのに必要十分な情報を確実に収集することができ、容易に出力させることができる分析装置、分析システム及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】ユーザの操作入力を受け付けて対象物を分析する分析装置にて、障害を再現するために必要となる情報を記憶する位置に関する情報を予め記憶しておく。そして、ユーザの操作履歴に関する情報を記憶し、操作の客体である装置自体の障害に関する情報を記憶する。その他、ユーザの操作権限に関する権限情報、及び対象物の計測結果に関する情報も記憶する。障害を再現するために必要となる情報を記憶する位置に関する情報に基づいて、必要な情報を漏れなく取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発生した障害を解決するために、障害が発生した状況を再現させるのに必要十分な情報を確実に収集することができ、容易に出力させることができる分析装置、分析システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液中に浮遊する有形粒子の濃度、粒子径、粒子径分布等を計測して分析する分析装置において、使用中に様々な障害が発生することがある。例えばユーザが誤った操作を行ったことによる動作異常、分析装置のハードウェア自体の障害発生による動作異常等である。
【0003】
障害が発生した場合、早期に正常な状態に戻すことが重要である。そこで、例えば特許文献1では、分析装置に相当するクロマトグラフユニットから固有の情報を収集して、ユーザ名、分析日時、分析条件等を含む障害解析情報ファイルを作成して、障害原因の特定に供している。特許文献1では、障害に関する情報を、手作業ではなく的確かつ迅速に取得することができ、障害に的確に対応することができる。
【0004】
また、特許文献2では、操作ログ、クロマトグラムデータ、分析条件データ、及び解析処理条件データを1つの集合体に格納する機器分析用データ管理装置が開示されている。特許文献2では、分析に関わる全ての操作履歴の時間的な連続性を確保するとともに、分析により得られたクロマトグラムデータ等との時間的な対応関係を明確に把握することができ、高いセキュリティ性を達成することができる。
【特許文献1】特開平9−274028号公報
【特許文献2】特開2005−321200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
障害原因の特定には、生じた障害を別の同等の分析装置で再現させることが解決の近道であることは言うまでもない。しかし、特許文献1では、障害原因の特定に必要な情報を収集しているものの、障害にいたるまでの操作に関する情報が欠落していることから障害発生状態を再現することができないという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2では操作ログを格納していることから、一見すると障害を再現することができるように考えられる。しかし、発生する障害には、ユーザ操作に起因するものだけではなく、例えばハードウェアの経年変化、初期不良等に起因するものも存在する。特許文献2では、ユーザ操作に起因する障害以外の障害が発生した場合には、その原因を特定することができない。したがって、あらゆる障害を確実に再現することができないという問題点があった。特許文献1にて収集される情報を合わせて格納した場合であっても、問題点は解消されない。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、発生した障害を解決するために、障害が発生した状況を再現させるのに必要十分な情報を確実に収集することができ、容易に出力させることができる分析装置、分析システム及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1発明に係る分析装置は、ユーザの操作入力を受け付けて対象物を分析する分析装置において、操作履歴に関する情報を記憶する位置に関する情報及び障害に関する情報を記憶する位置に関する情報を記憶する位置情報記憶手段と、ユーザの操作履歴に関する情報を記憶する操作履歴情報記憶手段と、分析装置自体の障害に関する情報を記憶する障害情報記憶手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、第2発明に係る分析装置は、第1発明において、前記位置情報記憶手段は、操作権限に関する権限情報を記憶する位置に関する情報も記憶し、ユーザの操作権限に関する権限情報を記憶する権限情報記憶手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第3発明に係る分析装置は、第1又は第2発明において、前記位置情報記憶手段は、計測結果に関する情報を記憶する位置に関する情報も記憶し、対象物の計測結果に関する情報を記憶する計測結果情報記憶手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第4発明に係る分析装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記操作履歴に関する情報は、ユーザがログインしてからログアウトするまでの期間に対応する操作履歴に関する情報であることを特徴とする。
【0012】
また、第5発明に係る分析装置は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記操作履歴情報記憶手段は、前記操作履歴に関する情報を、ユーザを識別する情報と対応付けて記憶するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、第6発明に係る分析装置は、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記位置情報記憶手段に記憶されている位置に関する情報で指示される位置に記憶されている複数の情報を複写して一の集合情報として記憶する集合情報記憶手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、第7発明に係る分析装置は、第6発明において、記憶されている前記集合情報を外部へ送信する集合情報送信手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、第8発明に係る分析装置は、第6又は第7発明において、記憶されている前記集合情報を外部へ送信する指示情報を受け付ける送信指示情報受付手段を備えることを特徴とする。
【0016】
次に、上記目的を達成するために第9発明に係る分析システムは、ユーザの操作入力を受け付けて対象物を分析する一又は複数の分析装置と、該一又は複数の分析装置とデータ通信することが可能に接続された中央装置とで構成された分析システムにおいて、前記分析装置は、操作履歴に関する情報を記憶する位置に関する情報及び障害に関する情報を記憶する位置に関する情報を記憶する位置情報記憶手段と、ユーザの操作履歴に関する情報を記憶する操作履歴情報記憶手段と、分析装置自体の障害に関する情報を記憶する障害情報記憶手段と、前記位置情報記憶手段で記憶されている位置に関する情報及び該位置に関する情報が指示する位置に記憶されている前記操作履歴に関する情報及び前記障害に関する情報を前記中央装置へ送信する情報送信手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、第10発明に係る分析システムは、第9発明において、前記分析装置は、前記位置情報記憶手段が、操作権限に関する権限情報を記憶する位置に関する情報も記憶し、ユーザの操作権限に関する権限情報を記憶する権限情報記憶手段を備え、前記情報送信手段は、前記権限情報も前記中央装置へ送信するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
また、第11発明に係る分析システムは、第9又は第10発明において、前記分析装置は、前記位置情報記憶手段が、計測結果に関する情報を記憶する位置に関する情報も記憶し、対象物の計測結果に関する情報を記憶する計測結果情報記憶手段を備え、前記情報送信手段は、前記計測結果に関する情報も前記中央装置へ送信するようにしてあることを特徴とする。
【0019】
次に、上記目的を達成するために第12発明に係るコンピュータプログラムは、ユーザの操作入力を受け付けて対象物を分析する分析装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記分析装置を、操作履歴に関する情報を記憶する位置に関する情報及び障害に関する情報を記憶する位置に関する情報を記憶する位置情報記憶手段、ユーザの操作履歴に関する情報を記憶する操作履歴情報記憶手段、及び分析装置自体の障害に関する情報を記憶する障害情報記憶手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
第1発明、及び第12発明では、操作履歴に関する情報を記憶する位置に関する情報及び障害に関する情報を記憶する位置に関する情報を記憶しておく。そして、当該位置へ、ユーザの操作履歴に関する情報を記憶するとともに、分析装置自体の障害に関する情報を記憶する。これにより、予め記憶されている操作履歴に関する情報が記憶されている位置に関する情報及び障害に関する情報が記憶されている位置に関する情報に基づいて、障害が発生した状況を再現するために最低限必要な情報を確実に取得することができる。また、分析装置搬入先であるユーザ自身が、障害が発生した状況を再現するために最低限必要な情報を収集する場合においても、記憶されている位置に関する情報のみを取得することにより簡単な操作で必要な情報を漏れなく収集することが可能となる。
【0021】
ここで、「操作履歴に関する情報」とは、ユーザによるボタン操作、スイッチ操作等の物理的な操作だけでなく、画面インタフェースを介したマウス等の入力媒体によるクリック、ドラッグ、ダブルクリック等の操作も含む履歴情報を意味する概念である。「分析装置自体の障害に関する情報」とは、ユーザによる誤操作が原因ではなく、ディスク障害、メモリオーバフロー等のハードウェア障害による割込み処理、ソフトウェア障害によるエラー処理等が発生した履歴に関する情報を意味する広い概念である。「情報を記憶する位置に関する情報」とは、情報を記憶する物理的位置又は論理的位置を指示する情報を広く意味しており、ファイルシステムにおけるファイル名、フォルダ名等に限定されるものではなく、ポインタ情報等であっても良い。
【0022】
第2発明では、操作権限に関する権限情報を記憶する位置に関する情報も記憶しておき、当該位置へ、ユーザの操作権限に関する権限情報を記憶するようにすることで、操作権限の相違により発生した障害を再現するために必要な権限情報も確実に取得することができる。また、分析装置搬入先であるユーザ自身が、障害が発生した状況を再現するために必要な情報を収集する場合においても、記憶されている位置に関する情報のみを取得することにより簡単な操作で必要な情報を漏れなく収集することが可能となる。ここで、「権限情報」とは、ユーザのアクセス権限に関する情報を意味しており、ログインするためのユーザID情報、パスワード情報にとどまらず、各ユーザIDに付与されている複数の処理に対するアクセス権限情報も含む広い概念である。したがって、アクセス権限に起因して生じた障害であっても、障害が発生した状況を再現することが可能となる。
【0023】
第3発明では、計測結果に関する情報を記憶する位置に関する情報も記憶しておき、当該位置へ、対象物の計測結果に関する情報も記憶するようにすることで、障害の再現時に計測された結果と対比することが可能な、実際に計測された結果に関する情報も確実に取得することができる。また、分析装置搬入先であるユーザ自身が、障害が発生した状況を再現するために必要な情報を収集する場合においても、記憶されている位置に関する情報のみを取得することにより簡単な操作で必要な情報を漏れなく収集することが可能となる。ここで、「計測結果に関する情報」とは、所定の条件下にて計測装置で対象物について計測された結果そのものを意味しており、計測値だけでなく、計測対象物に関する情報、計測した時点での計測条件に関する情報等も含む広い概念である。したがって、障害発生状況の再現時に比較することで、障害発生状況が正しく再現されているか否かを検証することができる。
【0024】
第4発明では、操作履歴に関する情報として、ユーザがログインしてからログアウトするまでの期間に対応する操作履歴に関する情報を記憶する。障害が発生した時点までの操作履歴があれば、障害が発生するに至ったユーザの操作を再現することが可能となる。
【0025】
第5発明では、操作履歴に関する情報を、ユーザを識別する情報と対応付けて記憶することにより、障害発生の原因となる操作を行ったユーザを容易に特定することができ、権限等を調査する必要があるユーザを容易に特定することが可能となる。
【0026】
第6発明では、記憶されている位置に関する情報が指示する位置に記憶されている複数の情報を複写して一の集合情報として記憶することにより、集合情報のみを可搬型記録媒体で抽出する、ネットワークを介して転送する等を行うことができ、それぞれの情報が記憶されている位置に関する情報を介することなく障害が発生した状況を再現するための情報を漏れなく収集することが可能となる。
【0027】
第7発明では、記憶されている集合情報を外部へ送信することにより、障害を再現するために必要な情報を未然に外部の装置へ移動させることができ、例えばコンピュータウイルス、ハードディスク障害等により収集した情報が破壊される前に安全なコンピュータへ退避させることができる。したがって、障害が発生した状況を他のコンピュータにて確実に再現することが可能となる。
【0028】
第8発明では、記憶されている集合情報を外部へ送信する指示情報を受け付けることにより、障害を再現するために必要な情報を、障害が発生した場合だけではなく、ユーザの任意の時点で収集することができ、例えばコンピュータウイルス、ハードディスク障害等により収集した情報が破壊される前に安全なコンピュータへ退避させることができる。したがって、障害が発生した状況を他のコンピュータにて確実に再現することが可能となる。
【0029】
第9発明では、分析システムは、ユーザの操作入力を受け付けて対象物を分析する一又は複数の分析装置と、該一又は複数の分析装置とデータ通信することが可能に接続された中央装置とで構成されている。分析装置は、操作履歴に関する情報を記憶する位置に関する情報及び障害に関する情報を記憶する位置に関する情報を記憶しておく。そして、当該位置へ、ユーザの操作履歴に関する情報及び分析装置自体の障害に関する情報を、それぞれ記憶し、予め記憶されている、両情報が記憶されている位置に関する情報及び該位置に関する情報が指示する位置に記憶されている操作履歴に関する情報及び障害に関する情報を中央装置へ送信する。これにより、障害が発生した状況を再現するために最低限必要な情報を確実に中央装置にて取得することができる。また、分析装置搬入先であるユーザ自身が、障害が発生した状況を再現するために最低限必要な情報を収集する場合においても、記憶されている位置に関する情報のみを取得することにより簡単な操作で必要な情報を漏れなく収集することが可能となる。
【0030】
第10発明では、分析装置は、操作権限に関する権限情報を記憶する位置に関する情報も記憶しておき、当該位置へ、ユーザの操作権限に関する権限情報を記憶する。権限情報を記憶する位置に関する情報及び該位置に関する情報が指示する位置に記憶されている権限情報も中央装置へ送信する。これにより、操作権限の相違により発生した障害を再現するために必要な権限情報も中央装置にて確実に取得することができる。また、分析装置搬入先であるユーザ自身が、障害が発生した状況を再現するために必要な情報を収集する場合においても、記憶されている位置に関する情報のみを取得することにより簡単な操作で必要な情報を漏れなく収集することが可能となる。
【0031】
第11発明では、分析装置は、計測結果に関する情報を記憶する位置に関する情報も記憶しておき、当該位置へ、対象物の計測結果に関する情報を記憶する。計測結果に関する情報を記憶する位置に関する情報及び該位置に関する情報が指示する位置に記憶されている計測結果に関する情報も中央装置へ送信する。これにより、障害の再現時に計測された結果と対比することが可能な、実際に計測された結果に関する情報も中央装置で確実に取得することができる。また、分析装置搬入先であるユーザ自身が、障害が発生した状況を再現するために必要な情報を収集する場合においても、記憶されている位置に関する情報のみを取得することにより簡単な操作で必要な情報を漏れなく収集することが可能となる。
【0032】
なお、後述する実施の形態では、位置情報記憶手段は、記憶装置12の位置情報記憶部125に相当する。操作履歴情報記憶手段は制御装置11のステップS202、ステップS1002の処理が、障害情報記憶手段は制御装置11のステップS204、ステップS1004の処理が、それぞれ該当する。集合情報記憶手段は制御装置11のステップS802、ステップS1102の処理が、集合情報送信手段は制御装置11のステップS804、ステップS1104の処理が、情報送信手段は制御装置11のステップS1005の処理が、送信指示情報受付手段は、制御装置11のステップS803、ステップS1103の処理が、それぞれ該当する。
【発明の効果】
【0033】
上記構成によれば、障害を再現するために必要な情報が記憶されている位置に関する情報、又はこれらを集約した集合情報に基づいて、必要となる情報を確実に取得することができる。また、分析装置搬入先であるユーザ自身が、障害が発生した状況を再現するために必要な情報を収集する場合においても、記憶されている位置に関する情報のみを通知することにより簡単な操作で必要な情報を漏れなく収集することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1に係る分析装置について図面に基づいて具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る分析装置の構成を示すブロック図である。図1において、本実施の形態1に係る分析装置は、少なくとも、CPU(中央演算装置)、LSI等で構成された制御装置11、記憶装置12、RAM13、入力装置14、出力装置15、補助記憶装置16、通信装置17及び上述したハードウェアを接続する内部バス18で構成されている。制御装置11は、内部バス18を介して分析装置1の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部の動作を制御するとともに、記憶装置12に記憶されているコンピュータプログラム80に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。RAM13は、SRAM、フラッシュメモリ等で構成され、コンピュータプログラム80の実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラム80の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0035】
記憶装置12は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、ROM等で構成されている。記憶装置12に記憶されているコンピュータプログラム80は、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体90から、補助記憶装置16によりダウンロードされ、実行時には記憶装置12からRAM13へ展開して実行される。もちろん、通信装置17を介して外部コンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0036】
また記憶装置12は、操作履歴情報記憶部121、障害情報記憶部122、権限情報記憶部123、計測結果情報記憶部124、及び位置情報記憶部125を備えている。操作履歴情報記憶部121は、ユーザによる分析装置1に対する操作履歴に関する情報を記憶する。具体的には、ユーザによるボタン操作、スイッチ操作等の物理的な操作だけでなく、画面インタフェースを介したマウス等の入力媒体によるクリック、ドラッグ、ダブルクリック等の操作履歴も含む。
【0037】
障害情報記憶部122は、分析装置1のハードウェア自体に障害が発生したか否か、発生した場合にはどの部位のどのような障害であるのか等の、分析装置1自体の障害に関する情報を記憶する。例えば、ユーザによる誤操作が原因ではなく、ディスク障害、メモリオーバフロー等のハードウェア障害により割込み処理が発生した履歴に関する情報、ソフトウェア処理の障害によるエラー処理が発生した履歴に関する情報を記憶する。
【0038】
権限情報記憶部123は、ユーザのアクセス権限に関する情報を記憶する。具体的には、ログインするためのユーザID情報、パスワード情報にとどまらず、各ユーザIDに付与されている複数の処理に対するアクセス権限情報も含む。
【0039】
計測結果情報記憶部124は、所定の条件下にて計測装置4で対象物について計測された結果そのものである計測結果に関する情報を記憶する。計測結果に関する情報としては、計測値だけでなく、計測対象物に関する情報、計測した時点での計測条件に関する情報等も含む。
【0040】
位置情報記憶部125は、障害を再現するために必要となる情報が記憶されている位置に関する情報を記憶する。記憶されている位置に関する情報とは、ハードディスク等の物理アドレスでも良いし、ポインタ情報等の論理アドレスであっても良い。また、ファイルシステムでのファイル名、フォルダ名等であっても良く、通常は一意的に特定されている。もちろん、実行プログラムで特定しておき、実行時に生成して位置情報記憶部125に記憶するものであっても良い。
【0041】
通信装置17は内部バス18に接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワークに接続されることにより、外部のコンピュータ等とデータ送受信を行うことが可能となっている。すなわち、上述した記憶装置12は、分析装置1に内蔵される構成に限定されるものではなく、通信装置17を介して接続されている外部のサーバコンピュータ等に設置されているハードディスク等の外部記録媒体であっても良い。また、通信装置17を介して、分析対象物の計測データを取得する計測装置4をデータ送受信可能に接続しても良い。
【0042】
入力装置14は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体の他、例えば分析対象物からの情報を取得する装置全般を含む広い意味を有する。出力装置15は、CRTモニタ、LCD等の表示装置、あるいはレーザプリンタ、ドットプリンタ等の印刷装置等を意味する。
【0043】
分析装置の種類は特に限定されるものではなく、試料の成分を計測して分析する装置であれば種類を問わない。例えば水溶液中に浮遊する有形粒子の濃度、粒子径、粒子径分布等を計測して分析する分析装置であっても良い。
【0044】
上述した構成の分析装置1の処理の流れについて説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係る分析装置1の制御装置11の処理手順を示すフローチャートである。分析装置1は、位置情報記憶部125に、各種の情報を記憶する位置に関する情報を予め記憶しておき、分析装置1の制御装置11は、入力装置14からユーザのログイン情報を受け付けたか否かを判断する(ステップS201)。制御装置11は、ログイン情報を受け付けたと判断するまで待ち状態となり(ステップS201:NO)、制御装置11が、ログイン情報を受け付けたと判断した場合(ステップS201:YES)、制御装置11は、入力装置14を介してユーザが操作する操作履歴に関する情報の記憶装置12の操作履歴情報記憶部121への記憶を開始する(ステップS202)。
【0045】
図3は、操作履歴情報記憶部121で記憶される操作履歴に関する情報のデータ構成の例示図である。図3に示すように、ユーザがログインしてからログアウトするまでの操作履歴を、操作種類、操作日付、操作時刻、操作の内容として記憶する。もちろん、操作したユーザを識別する情報であるユーザIDと対応付けて記憶しても良い。これにより、ユーザごとに操作履歴に関する情報を取得することができ、誰の操作によって障害が発生したかを知ることができる。
【0046】
また、操作履歴を記憶する期間は、ログインしてからログアウトするまでの期間に限定されるものではなく、分析装置1の電源が入っている状態であればすべての操作履歴を記憶するようにしても良いし、所定の時刻から所定の時刻までの期間を任意に設定することができるようにしても良い。過去の操作が正常に完了しておらず、例えばRAM13が開放されていないことにより発生した障害等も再現することができるからである。
【0047】
図2へ戻って、制御装置11は、分析装置1自体に何らかの障害が発生した旨を示す障害発生情報を検知したか否かを判断する(ステップS203)。ここでは、障害に関する情報として、各種の障害発生情報を取得している。具体的には、分析装置1が備えるハードウェアに障害が発生した場合に処理を開始する割込プログラム、あるいはソフトウェア障害によりエラー処理プログラムの起動を検知したか否かで判断する。制御装置11が、障害発生情報を検知したと判断した場合(ステップS203:YES)、制御装置11は、検知した障害発生情報を記憶装置12の障害情報記憶部122に記憶する(ステップS204)。
【0048】
図4は、分析装置1に固有の障害に関する情報として障害情報記憶部122で記憶される障害発生情報のデータ構成の例示図である。図4に示すように、障害発生情報として、どの処理(シーケンス)の途上でいつ障害が発生したのかを記憶する。障害の種類は、障害を識別する情報である障害IDで分類し、割込プログラムが出力するエラーメッセージと対応付けて記憶する。これにより、ハードウェアに固有の障害、例えばハードウェア障害、ソフトウェア障害等が発生した場合にはその原因を、発生していない場合にはその旨を、それぞれ知ることができる。
【0049】
図5は、位置情報記憶部125に予め記憶されている位置に関する情報のデータ構成の例示図である。図5に示すように、どの分析装置であるのかを識別する情報である端末IDに対応付けて(必須ではない)、障害を再現するために必要なn個(nは自然数)の情報が記憶されているファイル名1、ファイル名2、・・・ファイル名nを、位置に関する情報として記憶している。通常は実行プログラムのソースコード、あるいはデータベースの定義情報として静的に設定されているが、動的に生成されて更新されても良い。
【0050】
記憶されている位置に関する情報を記憶しておくことにより、障害の状況を再現するために最低限必要な操作履歴情報及び障害発生情報を、位置に関する情報を用いて確実に収集することができる。したがって、分析装置の納品先にて障害が発生した場合であっても、障害解決のために障害の状況を再現する場合に必要となる情報の収集に作業熟練性を要求されることが無い。よって、現場のユーザであっても、必要な情報を容易かつ確実に収集することができる。
【0051】
なお、位置に関する情報は、ファイルを識別するファイル名、フォルダを識別するフォルダ名等に限定されるものではなく、アドレスを示すポインタ情報等であっても良い。例えばファイル等の読み出しアプリケーションとリンクされたアイコン等として出力装置(表示装置)15に表示出力しておくことにより、マウス等の入力装置14で該アイコンをダブルクリックすることで、位置に関する情報で指示されている位置に記憶されている情報を外部へ出力、送信等することが可能となる。
【0052】
図2に戻って、制御装置11が、障害発生情報を検知していないと判断した場合(ステップS203:NO)、制御装置11は、ステップS204をスキップして、処理をステップS205へ進める。
【0053】
制御装置11は、入力装置14からユーザのログアウト情報を受け付けたか否かを判断する(ステップS205)。制御装置11が、ログアウト情報を受け付けていないと判断した場合(ステップS205:NO)、制御装置11は、処理をステップS203へ戻し、上述した処理を繰り返す。制御装置11が、ログアウト情報を受け付けたと判断した場合(ステップS205:YES)、処理を終了する。
【0054】
障害が発生した状況を再現するための情報は、操作履歴情報及び障害発生情報に限定されるものではない。例えば、アクセス権限が正当でないユーザがログインして操作したことにより生じた動作不良等の障害を再現するためには、権限情報が必要となる。したがって、権限情報が記憶される位置に関する情報を予め位置情報記憶部125に記憶しておき、権限情報を記憶装置12の権限情報記憶部123に記憶すれば良い。
【0055】
図6は、権限情報記憶部123で記憶される権限情報のデータ構成の例示図である。図6に示すように、権限情報として、ログインするユーザを識別するユーザIDに対応付けて、パスワード、ユーザIDが有効であるか否か、有効期限、更新日付等を記憶する。さらに、処理のアクセス権限を定めてあるユーザグループを対応付けて記憶させることにより、ユーザIDに応じて実行可能な処理の範囲を特定することができ、アクセス権限に基づく障害が発生した場合の原因特定に役立つ。
【0056】
また、障害が発生した状況を再現した場合に、計測条件等が一致しているか否かを確認するために所定の条件下にて計測装置4で対象物について計測された結果そのものである計測結果に関する情報を記憶しても良い。計測結果に関する情報が記憶される位置に関する情報を予め位置情報記憶部125に記憶しておき、計測結果に関する情報は、計測する都度、記憶装置12の計測結果情報記憶部124に記憶すれば良い。
【0057】
図7は、計測結果情報記憶部124で記憶される計測結果に関する情報のデータ構成の例示図である。図7に示すように、計測結果に関する情報として、分析の対象となる試料に関する試料情報及び計測条件に関する計測条件情報に対応付けて、実際の計測値を記憶する。障害が発生した状況を再現した場合に、計測値自体に大きな差異が発生した場合には、正確に状況を再現することができていないと判断することができ、状況の再現性の確認を行うことができる。
【0058】
権限情報及び計測結果に関する情報についても、記憶されている位置に関する情報を記憶しておくことにより、障害の状況を再現するために必要となる権限情報及び計測結果に関する情報を、位置に関する情報を用いて確実に収集することができる。したがって、分析装置の納品先にて障害が発生した場合であっても、障害解決のために障害の状況を再現する場合に必要となる情報の収集に作業熟練性を要求されることが無い。よって、現場のユーザであっても、必要な情報を容易かつ確実に収集することができる。
【0059】
なお、記憶されている位置に関する情報で指示される複数の情報を集約して1つの集合情報として記憶しても良い。図8は、集合情報を生成する場合の、本発明の実施の形態1に係る分析装置1の制御装置11の処理手順を示すフローチャートである。なお、図2と共通の処理については同一の番号を付することで詳細な説明を省略する。
【0060】
図8において、分析装置1の制御装置11は、ステップS204の処理の後、位置情報記憶部125に記憶されている位置に関する情報を読み出し(ステップS801)、指示されている位置に記憶されている各情報を複写して集約し、1つの集合ファイルを生成して記憶装置12に記憶する(ステップS802)。制御装置11は、記憶された集合ファイルを、通信装置17を介して外部のコンピュータ等へ送信し(ステップS803)、処理をステップS205へ戻す。
【0061】
集合ファイルを別個に生成することにより、ミラーリングと同様、ハードウェア障害が発生した場合であっても、該障害を引き起こす原因となった可能性の高い操作等を特定することができる。また、1つの集合ファイルとしておくことにより、補助記憶装置16を介して外部の可搬型記録媒体に複写することにより、障害を再現するために必要な情報のバックアップを取得することができる。
【0062】
さらに、通信装置17を介して、集合ファイルを外部のコンピュータへ送信することにより、ハードディスク障害等で記憶装置12内の障害を再現するために必要な情報を取得することができない場合であっても、過去に取得して外部のコンピュータに保存しておいたバックアップファイルに基づいて、該障害を引き起こす原因となった可能性の高い操作等を特定することができる。
【0063】
なお、集合情報を生成するタイミングは、障害が発生した時点に限定されるものではなく、例えば入力装置14を介したユーザによる指示情報を受け付けた任意の時点で生成しても良い。このようにすることで、分析装置1にハードウェア障害が発生する前にバックアップ的に集合情報を取得しておくことができ、事前に収集していた操作履歴情報、障害に関する情報等を解析することにより、ハードウェア障害を引き起こした原因を推定することも可能となる。
【0064】
また、本実施の形態1の分析装置1は、一体型であっても良いし、分析対象物の計測値を取得する計測装置4と、計測値を分析する分析装置1とで構成され、両者をデータ送受信可能に接続する形態であっても良い。
【0065】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る分析システムの構成を示すブロック図である。図9において、本実施の形態2に係る分析システムは、中央装置2と複数の分析装置1、1、・・・とがネットワーク3を介してデータ送受信可能に接続されている。分析装置1の構成は、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明は省略する。
【0066】
中央装置2は、少なくとも、CPU(中央演算装置)、LSI等で構成された制御装置21、記憶装置22、RAM23、入力装置24、出力装置25、補助記憶装置26、通信装置27及び上述したハードウェアを接続する内部バス28で構成されている。制御装置21は、内部バス28を介して中央装置2の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部の動作を制御するとともに、記憶装置22に記憶されているコンピュータプログラムに従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。RAM23は、SRAM、フラッシュメモリ等で構成され、コンピュータプログラムの実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラムの実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0067】
記憶装置22は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、ROM等で構成されている。記憶装置22に記憶されているコンピュータプログラムは、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体から、補助記憶装置26によりダウンロードされ、実行時には記憶装置22からRAM23へ展開して実行される。もちろん、通信装置27を介して外部コンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0068】
通信装置27は内部バス28に接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワーク3に接続されることにより、複数の分析装置1、1、・・・、外部のコンピュータ等とデータ送受信を行うことが可能となっている。
【0069】
入力装置24は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体を意味する。出力装置25は、CRTモニタ、LCD等の表示装置、あるいはレーザプリンタ、ドットプリンタ等の印刷装置等を意味する。
【0070】
実施の形態1と同様、分析装置1の種類は特に限定されるものではなく、試料の成分を計測して分析する装置であれば種類を問わない。例えば水溶液中に浮遊する有形粒子の濃度、粒子径、粒子径分布等を計測して分析する分析装置であっても良い。
【0071】
上述した構成の分析システムの処理の流れについて説明する。図10は、本発明の実施の形態2に係る分析システムにおける分析装置1の制御装置11の処理手順を示すフローチャートである。分析装置1の制御装置11は、入力装置14からユーザのログイン情報を受け付けたか否かを判断する(ステップS1001)。制御装置11は、ログイン情報を受け付けたと判断するまで待ち状態となり(ステップS1001:NO)、制御装置11が、ログイン情報を受け付けたと判断した場合(ステップS1001:YES)、制御装置11は、入力装置14を介してユーザが操作する操作履歴に関する情報の記憶装置12の操作履歴情報記憶部121への記憶を開始する(ステップS1002)。
【0072】
操作履歴情報記憶部121で記憶される操作履歴に関する情報のデータ構成は、実施の形態1と同様である。すなわち、操作履歴に関する情報として、ユーザがログインしてからログアウトするまでの操作を、操作種類、操作日付、操作時刻、操作の内容等を記憶する。もちろん、操作したユーザを識別する情報であるユーザIDと対応付けて記憶しても良い。これにより、ユーザごとに操作履歴に関する情報を取得することができ、誰の操作によって障害が発生したのかを知ることができる。
【0073】
また、操作履歴を記憶する期間は、ログインしてからログアウトするまでの期間に限定されるものではなく、分析装置1の電源が入っている状態であればすべての操作履歴を記憶するようにしても良いし、所定の時刻から所定の時刻までの期間を任意に設定することができるようにしても良い。過去の操作が正常に完了しておらず、例えばRAM13が開放されていないことにより発生した障害等も再現することができるからである。
【0074】
制御装置11は、分析装置1自体に何らかの障害が発生した旨を示す障害発生情報を検知したか否かを判断する(ステップS1003)。具体的には、分析装置1が備えるハードウェアに障害が発生した場合に処理を開始する割込プログラムの起動を検知したか否かで判断する。制御装置11が、障害発生情報を検知したと判断した場合(ステップS1003:YES)、制御装置11は、検知した障害発生情報を記憶装置12の障害情報記憶部122に記憶する(ステップS1004)。制御装置11は、通信装置17を介して、位置情報記憶部125に記憶されている位置に関する情報、及び該位置に関する情報が指示する位置に記憶されている各種情報を、中央装置2へ送信する(ステップS1005)。
【0075】
障害情報記憶部122で記憶される障害発生情報のデータ構成は、実施の形態1と同様である。すなわち、障害に関する情報として、どの処理(シーケンス)の途上でいつ障害が発生したのか、発生日時を記憶する。障害の種類は、障害を識別する情報である障害IDで分類し、割込プログラムが出力するエラーメッセージと対応付けて記憶する。これにより、ハードウェアに固有の障害が発生した場合にはその原因を、発生していない場合にはその旨を、それぞれ知ることができる。
【0076】
位置情報記憶部125に予め記憶されている位置に関する情報のデータ構成も、実施の形態1と同様である。すなわち、どの分析装置であるのかを識別する情報である端末IDに対応付けて(必須ではない)、障害を再現するために必要なn個(nは自然数)の情報が記憶されているファイル名1、ファイル名2、・・・ファイル名nを、位置に関する情報として記憶している。通常は実行プログラムのソースコード、あるいはデータベースの定義情報として静的に設定されているが、動的に生成されて更新されても良い。
【0077】
記憶されている位置に関する情報を記憶しておくことにより、障害の状況を再現するために最低限必要な操作履歴情報及び障害発生情報を、位置に関する情報を用いて確実に収集することができる。したがって、分析装置の納品先にて障害が発生した場合であっても、障害解決のために障害の状況を再現する場合に必要となる情報の収集に作業熟練性を要求されることが無い。よって、現場のユーザであっても、必要な情報を容易かつ確実に収集することができる。
【0078】
また、記憶されている位置に関する情報、及び該位置に関する情報で指示された位置に記憶されている各種情報を、中央装置2へ送信することにより、分析装置1の記憶装置12に障害が発生する前に、障害が発生した状態を再現するために必要な情報を、中央装置2に退避させることができ、ハードディスク障害等により記憶装置12自体が損傷した場合であっても、ハードディスク障害を引き起こすに至った原因の解析に役立てることが可能となる。
【0079】
なお、位置に関する情報は、ファイルを識別するファイル名、フォルダを識別するフォルダ名等に限定されるものではなく、アドレスを示すポインタ情報等であっても良い。例えばファイル等の読み出しアプリケーションとリンクされたアイコン等として中央装置2の出力装置(表示装置)25に表示出力しておくことにより、マウス等の入力装置24で該アイコンをダブルクリックすることで、位置に関する情報で指示されている位置に記憶されている情報が分析装置1から送信され、中央装置2の記憶装置22に記憶される
【0080】
図10に戻って、制御装置11が、障害発生情報を検知していないと判断した場合(ステップS1003:NO)、制御装置11は、ステップS1004をスキップして、処理をステップS1005へ進める。
【0081】
制御装置11は、入力装置14からユーザのログアウト情報を受け付けたか否かを判断する(ステップS1006)。制御装置11が、ログアウト情報を受け付けていないと判断した場合(ステップS1006:NO)、制御装置11は、処理をステップS1003へ戻し、上述した処理を繰り返す。制御装置11が、ログアウト情報を受け付けたと判断した場合(ステップS1006:YES)、処理を終了する。
【0082】
障害が発生した状況を再現するための情報は、操作履歴情報及び障害発生情報に限定されるものではない。例えば、アクセス権限が正当でないユーザがログインして操作したことにより生じた動作不良等の障害を再現するためには、権限情報が必要となる。したがって、権限情報が記憶される位置に関する情報を予め位置情報記憶部125に記憶しておき、権限情報を記憶装置12の権限情報記憶部123に記憶すれば良い。
【0083】
権限情報記憶部123で記憶される権限情報のデータ構成は、実施の形態1と同様である。すなわち、権限情報として、ログインするユーザを識別するユーザIDに対応付けて、パスワード、ユーザIDが有効であるか否か、有効期限、更新日付等を記憶する。さらに、処理のアクセス権限を定めてあるユーザグループを対応付けて記憶させることにより、ユーザIDに応じて実行可能な処理の範囲を特定することができ、アクセス権限に基づく障害が発生した場合の原因特定に役立つ。
【0084】
また、障害が発生した状況を再現した場合に、計測条件等が一致しているか否かを確認するために所定の条件下にて計測装置で対象物について計測された結果そのものである計測結果に関する情報を記憶しても良い。計測結果に関する情報が記憶される位置に関する情報を予め位置情報記憶部125に記憶しておき、計測結果に関する情報は、計測する都度、記憶装置12の計測結果情報記憶部124に記憶すれば良い。
【0085】
計測結果情報記憶部124で記憶される計測結果に関する情報のデータ構成も、実施の形態1と同様である。すなわち、計測結果に関する情報として、分析の対象となる試料に関する試料情報及び計測条件に関する計測条件情報に対応付けて、実際の計測値を記憶する。障害が発生した状況を再現した場合に、計測値自体に大きな差異が発生した場合には、正確に状況を再現することができていないと判断することができ、状況の再現性の確認を行うことができる。
【0086】
権限情報及び計測結果に関する情報についても、記憶されている位置に関する情報を記憶しておくことにより、障害の状況を再現するために必要となる権限情報及び計測結果に関する情報を、位置に関する情報を用いて確実に収集することができる。したがって、分析装置の納品先にて障害が発生した場合であっても、障害解決のために障害の状況を再現する場合に必要となる情報の収集に作業熟練性を要求されることが無い。よって、現場のユーザであっても、必要な情報を容易かつ確実に収集することができる。
【0087】
以上のように障害が発生した状態を再現するために必要な情報が記憶されている位置に関する情報を用いることで必要な情報を漏れなく収集することが可能となる。また、分析装置1、1、・・・ではなく中央装置2の記憶装置22に集約して記憶させることにより、分析装置1にハードウェア障害が発生した場合であっても、情報を失することがなく、事前に収集していた操作履歴情報、障害に関する情報等を解析することにより、ハードウェア障害を引き起こした原因を推定することも可能となる。
【0088】
なお、記憶されている位置に関する情報で指示される複数の情報を集約して1つの集合情報として記憶しても良い。図11は、集合情報を生成する場合の、本発明の実施の形態2に係る分析装置1の制御装置11の処理手順を示すフローチャートである。なお、図10と共通の処理については同一の番号を付することで詳細な説明を省略する。
【0089】
図11において、分析装置1の制御装置11は、ステップS1004の処理の後、位置情報記憶部125に記憶されている位置に関する情報を読み出し(ステップS1101)、指示されている位置に記憶されている各情報を複写して集約し、1つの集合ファイルを生成して記憶する(ステップS1102)。制御装置11は、生成された集合ファイルを、通信装置17を介して中央装置2へ送信し(ステップS1103)、処理をステップS1006へ戻す。
【0090】
集合ファイルを別個に生成することにより、ミラーリングと同様、ハードウェア障害が発生した場合であっても、該障害を引き起こす原因となった可能性の高い操作等を特定することができる。また、1つの集合ファイルとしておくことにより、補助記憶装置16を介して外部の可搬型記録媒体に複写することにより、障害を再現するために必要な情報のバックアップを取得することができる。
【0091】
さらに、通信装置17を介して、集合ファイルを中央装置2へ送信することにより、ハードディスク障害等で記憶装置12内の障害を再現するために必要な情報を取得することができない場合であっても、過去に取得して中央装置2に記憶しておいたバックアップファイルに基づいて、該障害を引き起こす原因となった可能性の高い操作等を特定することができる。また、集合ファイルを、補助記憶装置26を介して可搬型記録媒体91に複写することにより、障害を再現するために必要な情報のバックアップを取得することができ、ネットワーク3に障害が発生した場合であっても、障害を再現するために必要な情報を届けることが可能となる。
【0092】
なお、集合情報を生成するタイミングは、障害が発生した時点に限定されるものではなく、例えば中央装置2の入力装置24を介したユーザによる指示情報を受け付けた任意の時点で生成しても良い。図12は、本発明の実施の形態2に係る分析システムにおける中央装置2の制御装置21の集合情報の収集処理手順を示すフローチャートである。
【0093】
中央装置2の制御装置21は、集合情報の送信を指示する集合情報送信指示情報を受け付けたか否かを判断する(ステップS1201)。制御装置21が、集合情報送信指示情報を受け付けたと判断した場合(ステップS1201:YES)、制御装置21は、受け付けた集合情報送信指示情報から送信先に関する情報を抽出して(ステップS1202)、抽出した送信先に関する情報を宛先とする分析装置1へ集合情報送信指示情報を送信して(ステップS1203)、処理をステップS1204へ進める。
【0094】
集合情報送信指示情報には、該集合情報送信指示情報の送信先に関する情報、すなわち集合情報が記憶されている分析装置1を識別する情報が含まれている。送信先を特定することなくブロードキャスト通信とする場合には、中央装置2に多数の分析装置1、1、・・・がネットワーク3を介して接続されているとき、通信負荷の増大を招くからである。送信先に関する情報としては、送信先のIPアドレスの他、送信先となる分析装置1のネットワークID、端末ID等の論理アドレス、ネットワーク接続部となる通信装置17、17、・・・のMACアドレス等、送信先を特定することが可能な情報であれば特に限定されるものではない。
【0095】
制御装置21が、集合情報送信指示情報を受け付けていないと判断した場合(ステップS1201:NO)、制御装置21は、集合情報を受信したか否かを判断する(ステップS1204)。制御装置21が受信していないと判断した場合(ステップS1204:NO)、制御装置21は処理をステップS1201へ戻し、上述の処理を繰り返す。
【0096】
制御装置21が、受信したと判断した場合(ステップS1204:YES)、制御装置21は、受信した集合情報を記憶装置22に記憶する(ステップS1205)。
【0097】
このようにすることで、分析装置1にハードウェア障害が発生する前にバックアップ的に集合情報を任意の時点で取得しておくことができ、事前に収集していた操作履歴情報、障害に関する情報等を解析することにより、ハードウェア障害を引き起こした原因を推定することも可能となる。
【0098】
なお、本実施の形態2においても、分析装置1は一体型であっても良いし、分析対象物の計測値を取得する計測装置と、計測値を分析する分析装置1とで構成され、両者をデータ送受信可能に接続する形態であっても良いことは言うまでもない。
【0099】
さらに、上述の実施の形態1及び2は実施例を示したものにすぎず、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で多種の変形、置換等が可能であり、分析装置だけでなく、計測値を測定して測定値を解析することが可能な各種計測機器に容易に適用することができることは言うまでもない。
【0100】
また、上述の実施の形態2では、中央装置2が、分析装置1から送信されてきた集合ファイルを受信する構成となっているが、分析装置1は、ステップ1102において記憶されている位置に関する情報で指定された位置に記憶されている情報を中央装置2に送信し、中央装置2が、受信したこれらの情報を集約して集合ファイルを作成する構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態1に係る分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る分析装置の制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】操作履歴情報記憶部で記憶される操作履歴に関する情報のデータ構成の例示図である。
【図4】分析装置に固有の障害に関する情報として障害情報記憶部で記憶される障害発生情報のデータ構成の例示図である。
【図5】位置情報記憶部に予め記憶されている位置に関する情報のデータ構成の例示図である。
【図6】権限情報記憶部で記憶される権限情報のデータ構成の例示図である。
【図7】計測結果情報記憶部で記憶される計測結果に関する情報のデータ構成の例示図である。
【図8】集合情報を生成する場合の、本発明の実施の形態1に係る分析装置の制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2に係る分析システムの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る分析システムにおける分析装置の制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】集合情報を生成する場合の、本発明の実施の形態2に係る分析装置の制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態2に係る分析システムにおける中央装置の制御装置の集合情報の収集処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 分析装置
2 中央装置
3 ネットワーク
4 計測装置
11、21 制御装置
12、22 記憶装置
13、23 RAM
14、24 入力装置
15、25 出力装置
16、26 補助記憶装置
17、27 通信装置
18、28 内部バス
80 コンピュータプログラム
90、91 可搬型記録媒体
121 操作履歴情報記憶部
122 障害情報記憶部
123 権限情報記憶部
124 計測結果情報記憶部
125 位置情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの操作入力を受け付けて対象物を分析する分析装置において、
操作履歴に関する情報を記憶する位置に関する情報及び障害に関する情報を記憶する位置に関する情報を記憶する位置情報記憶手段と、
ユーザの操作履歴に関する情報を記憶する操作履歴情報記憶手段と、
分析装置自体の障害に関する情報を記憶する障害情報記憶手段と
を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記位置情報記憶手段は、操作権限に関する権限情報を記憶する位置に関する情報も記憶し、
ユーザの操作権限に関する権限情報を記憶する権限情報記憶手段を備えることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記位置情報記憶手段は、計測結果に関する情報を記憶する位置に関する情報も記憶し、
対象物の計測結果に関する情報を記憶する計測結果情報記憶手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の分析装置。
【請求項4】
前記操作履歴に関する情報は、ユーザがログインしてからログアウトするまでの期間に対応する操作履歴に関する情報であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項5】
前記操作履歴情報記憶手段は、前記操作履歴に関する情報を、ユーザを識別する情報と対応付けて記憶するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記位置情報記憶手段に記憶されている位置に関する情報で指示される位置に記憶されている複数の情報を複写して一の集合情報として記憶する集合情報記憶手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項7】
記憶されている前記集合情報を外部へ送信する集合情報送信手段を備えることを特徴とする請求項6記載の分析装置。
【請求項8】
記憶されている前記集合情報を外部へ送信する指示情報を受け付ける送信指示情報受付手段を備えることを特徴とする請求項6又は7記載の分析装置。
【請求項9】
ユーザの操作入力を受け付けて対象物を分析する一又は複数の分析装置と、
該一又は複数の分析装置とデータ通信することが可能に接続された中央装置とで構成された分析システムにおいて、
前記分析装置は、
操作履歴に関する情報を記憶する位置に関する情報及び障害に関する情報を記憶する位置に関する情報を記憶する位置情報記憶手段と、
ユーザの操作履歴に関する情報を記憶する操作履歴情報記憶手段と、
分析装置自体の障害に関する情報を記憶する障害情報記憶手段と、
前記位置情報記憶手段で記憶されている位置に関する情報及び該位置に関する情報が指示する位置に記憶されている前記操作履歴に関する情報及び前記障害に関する情報を前記中央装置へ送信する情報送信手段と
を備えることを特徴とする分析システム。
【請求項10】
前記分析装置は、
前記位置情報記憶手段が、操作権限に関する権限情報を記憶する位置に関する情報も記憶し、
ユーザの操作権限に関する権限情報を記憶する権限情報記憶手段を備え、
前記情報送信手段は、前記権限情報も前記中央装置へ送信するようにしてあることを特徴とする請求項9記載の分析システム。
【請求項11】
前記分析装置は、
前記位置情報記憶手段が、計測結果に関する情報を記憶する位置に関する情報も記憶し、
対象物の計測結果に関する情報を記憶する計測結果情報記憶手段を備え、
前記情報送信手段は、前記計測結果に関する情報も前記中央装置へ送信するようにしてあることを特徴とする請求項9又は10記載の分析システム。
【請求項12】
ユーザの操作入力を受け付けて対象物を分析する分析装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記分析装置を、
操作履歴に関する情報を記憶する位置に関する情報及び障害に関する情報を記憶する位置に関する情報を記憶する位置情報記憶手段、
ユーザの操作履歴に関する情報を記憶する操作履歴情報記憶手段、及び
分析装置自体の障害に関する情報を記憶する障害情報記憶手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−121832(P2009−121832A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293060(P2007−293060)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】