説明

分析装置、分析方法、及びコンピュータプログラム

【課題】検体ID運用とラックID運用の両方を行いたいという要望に対応する。
【解決手段】 分析装置では、複数の検体容器3を保持可能なラック4を識別するためのラックIDと検体容器の当該ラック4における位置と前記検体容器3の検体に対する測定項目とを対応付けた第1情報、及び、検体を識別するための検体IDとその検体に対する測定項目とを対応付けた第2情報が設定可能である。分析装置は、ラックIDと検体IDを読み取るバーコードリーダを備え、更に、前記検体容器の前記ラックにおける位置を認識することができる。分析装置は、読み取ったラックID、検体ID、及び位置の認識結果に応じて、前記第1情報又は前記第2情報を参照し、検体の測定項目を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置、分析方法、及びコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院や検査センターなどの検査室では、複数の測定項目を選択的に測定可能な分析装置が広く用いられている。
このような検査室においては、検体とその測定項目を特定するための運用方法として、検体ID運用と、ラックID運用とが存在する。
検体ID運用は、検体容器に貼付され、検体を識別するための検体バーコード(検体ID)と、その検体に対する測定項目と、を対応づけて測定オーダを確定する運用方法である。
【0003】
一方、ラックID運用は、検体容器を保持するラックに貼付され、ラックを識別するためのラックバーコード(ID)およびラック内の検体の位置と、その検体に対する測定項目とを対応づけて測定オーダを確定する運用方法である。
検体ID運用は、例えば、血球計数装置などの検体を遠心分離せずに使用する分析装置に対して広く用いられている。これに対し、ラックID運用は、例えば、免疫分析装置、血液凝固測定装置、生化学分析装置などの検体を遠心分離してから使用する分析装置に対して広く用いられている。
【0004】
複数の測定項目を選択的に測定可能な分析装置としては、検体バーコードおよびラックバーコードを読み取り、読み取った情報に基づいて、当該検体の測定項目を決定する分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献1に記載の分析装置は、検体IDの範囲およびラックIDの範囲のいずれか一方を指定可能であり、指定された範囲内の検体IDを持つ検体または指定された範囲内のラックIDを持つラックに収容された検体に対して、共通の測定項目を指定することも開示されている。
【特許文献1】特開2008−39471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、免疫分析装置、血液凝固測定装置、生化学分析装置などの検体を遠心分離してから使用する分析装置に対して、検体ID運用とラックID運用の両方を行いたいという要望がある。
しかしながら、従来の分析装置では、この要望に対応することができなかった。なお、特許文献1記載の分析装置は、複数の検体に共通の測定項目を指定するものであり、検体ごとに測定項目が異なる通常の検査業務に対応することはできない。
【0006】
そこで、本発明は、検体ID運用とラックID運用の両方を行いたいという要望に対応することが可能な分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一の観点から、ラックID運用に対応した情報を設定する第1設定手段と、検体ID運用に対応した情報を設定する第2設定手段と、前記第1設定手段によって設定された情報に基づいて検体を測定するラックIDモード、又は、前記第2設定手段によって設定された情報に基づいて検体を測定する検体IDモードを、自動的に選択するモード選択手段と、前記モード選択手段によって選択されたモードに従って、検体を測定する測定部と、前記測定部の測定結果を分析する分析部と、を備える分析装置を提供する。
【0008】
上記本発明の分析装置によれば、設定された情報に基づいて、ラックIDモードまたは検体IDモードが自動的に選択され、選択されたモードで検体が測定される。
よって、本発明の分析装置では、検体ID運用とラックID運用のいずれでも対応できる。
【0009】
本発明は、他の観点から、複数の検体容器を保持可能なラックを識別するためのラック識別情報と、ラックに保持された検体容器の当該ラックにおける位置と、前記検体容器の検体に対する測定項目と、を含む第1情報を設定する第1設定手段と、検体を識別するための検体識別情報と、その検体に対する測定項目と、を含む第2情報を設定する第2設定手段と、分析対象となる検体の検体識別情報、及び前記検体を収容した検体容器を保持するラックのラック識別情報を読み取り可能に構成された識別情報読取部と、前記検体容器の前記ラックにおける位置を認識するための位置認識手段と、前記識別情報読取部による識別情報の読取結果及び前記位置認識手段による位置の認識結果に応じて、設定された前記第1情報又は前記第2情報を参照し、検体の測定項目を決定する測定項目決定手段と、前記検体に対して、前記測定項目決定手段によって決定された測定項目についての測定を行う測定部と、前記測定部の測定結果を分析する分析部と、を備える分析装置を提供する。
【0010】
上記本発明の分析装置によれば、ラック識別情報、ラックにおける検体容器の位置、検体識別情報を読み取ることができる。そして、検体ID(検体識別情報)運用の場合には、第2情報に基づいて測定項目が決定され、ラックID(ラック識別情報)運用の場合には、第1情報に基づいて測定項目が決定される。
よって、本発明の分析装置では、検体ID運用とラックID運用のいずれでも対応できる。
【0011】
前記測定項目決定手段は、前記識別情報読部で読み取った前記ラック識別情報及び前記位置認識手段で認識した前記位置と一致する情報が、前記第1情報として設定されている場合には、前記ラック識別情報及び前記位置に対応する前記測定項目を、前記測定部が行う測定の測定項目として決定するのが好ましい。
【0012】
前記第1設定手段は、前記第1情報をラック単位で設定するための設定画面を表示可能とし、所定のラックについての設定画面が編集不可状態となると、当該所定のラックについて前記第1情報を設定するための編集可能な新たな設定画面を生成するのが好ましい。
【0013】
前記第1設定手段は、前記ラック識別情報と前記位置と前記測定項目とを前記第1情報として設定するための第1画面を表示し、前記第2設定手段は、前記検体識別情報と前記測定項目とを設定するための第2画面を表示し、前記第1画面は、前記第2画面を起動するための起動表示を含むのが好ましい。
【0014】
前記第1設定手段は、検体を識別するための検体識別情報を、前記ラック識別情報と前記位置と前記測定項目とに関連付けて設定し、前記識別情報読取部によって読み取られたラック識別情報及び前記位置認識手段によって認識された位置が、前記第1設定手段によって設定されたラック識別情報及び位置と一致し、前記識別情報読取部によって読み取られた検体識別情報が、前記第1設定手段によって当該ラック識別情報及び位置に対応付けて設定された検体識別情報と一致しない場合に、前記測定部による測定を禁止する測定禁止手段を更に備えるのが好ましい。
【0015】
前記測定項目決定手段は、設定された前記第1情報又は前記第2情報を参照しても、検体の測定項目を決定できない場合、外部のコンピュータへ測定項目の問い合わせを行うのが好ましい。
【0016】
前記第2設定手段は、複数の前記検体識別情報と、各検体識別情報によって特定される検体それぞれに対する測定項目とを対応付けて設定するための画面を表示するのが好ましい。
【0017】
前記測定項目決定手段は、前記識別情報読取部によって読み取られたラック識別情報及び前記位置認識手段によって認識された位置が、前記第1設定手段によって設定されたラック識別情報及び位置と一致しないが、前記識別情報読取部によって読み取られた検体識別情報が、前記第2設定手段によって設定された検体識別情報と一致する場合には、当該一致した検体識別情報に対応する測定項目を、前記識別情報読取部によって読み取られたラック識別情報及び前記位置認識手段によって認識された位置における前記第1情報として設定する、のが好ましい。
【0018】
前記分析装置は、免疫分析装置、血液凝固測定装置、又は生化学分析装置として構成されているのが好ましい。
【0019】
他の観点からみた本発明は、複数の検体容器を保持可能なラックを識別するためのラック識別情報と、ラックに保持された検体容器の当該ラックにおける位置と、前記検体容器の検体に対する測定項目と、を対応付けた第1情報を設定する第1設定手段と、分析対象となる検体の検体識別情報、及び前記検体を収容した検体容器を保持するラックのラック識別情報を読み取る識別情報読取部と、前記検体容器の前記ラックにおける位置を認識するための位置認識手段と、前記識別情報読取部によって読み取られたラック識別情報及び前記位置認識手段によって認識された位置が、前記第1設定手段によって設定されたラック識別情報及び位置と一致しない場合には、前記識別情報読取部によって読み取られた検体識別情報に基づいて、外部のコンピュータへ測定項目の問い合わせを行って、測定項目を決定する測定項目決定手段と、前記検体に対して、前記測定項目決定手段によって決定された測定項目についての測定を行う測定部と、前記測定部の測定結果を分析する分析部と、を備える分析装置である。
【0020】
上記本発明に係る分析装置によれば、ラック識別情報、ラックにおける検体容器の位置、検体識別情報を読み取ることができる。そして、検体ID(検体識別情報)運用の場合には、外部のコンピュータへの測定項目の問い合わせによって測定項目が決定され、ラックID(ラック識別情報)運用の場合には、第1情報に基づいて測定項目が決定される。
よって、検体ID運用とラックID運用のいずれでも対応できる。
【0021】
さらに他の観点からみた本発明は、検体の分析方法であって、複数の検体容器を保持可能なラックを識別するためのラック識別情報と、ラックに保持された検体容器の当該ラックにおける位置と、前記検体容器の検体に対する測定項目と、を対応付けた第1情報の第1設定ステップと、検体を識別するための検体識別情報と、その検体に対する測定項目と、を対応付けた第2情報を設定する第2設定ステップと、分析対象となる検体の検体識別情報、及び前記検体を収容した検体容器を保持するラックのラック識別情報を読み取る識別情報読取ステップと、前記検体容器の前記ラックにおける位置を認識するための位置認識ステップと、前記識別情報読取ステップにおける識別情報の読取結果及び前記位置認識ステップにおける位置の認識結果に応じて、設定された前記第1情報又は前記第2情報を参照し、検体の測定項目を決定する測定項目決定ステップと、前記検体に対して、前記測定項目決定ステップにおいて決定された測定項目についての測定を行う測定ステップと、前記測定ステップにおける測定結果を分析する分析ステップと、を含む分析方法である。
【0022】
さらに他の観点からみた本発明は、コンピュータを、複数の検体容器を保持可能なラックを識別するためのラック識別情報と、ラックに保持された検体容器の当該ラックにおける位置と、前記検体容器の検体に対する測定項目と、を対応付けた第1情報を設定する第1設定手段、
検体を識別するための検体識別情報と、その検体に対する測定項目と、を対応付けた第2情報を設定する第2設定手段、
分析対象となる検体の検体識別情報、及び前記検体を収容した検体容器を保持するラックのラック識別情報を読み取る識別情報読取部から、読み取った識別情報を取得する取得手段、
前記検体容器の前記ラックにおける位置を認識するための位置認識手段、
前記識別情報読取部による識別情報の読取結果及び前記位置認識手段による位置の認識結果に応じて、設定された前記第1情報又は前記第2情報を参照し、検体の測定項目を決定する測定項目決定手段、
として機能させるための分析装置用コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、検体ID運用とラックID運用のいずれでも対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の分析装置の実施の形態を詳細に説明する。
[装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る分析装置の全体構成を示す平面説明図である。
本発明の一実施の形態に係る分析装置1は、免疫分析装置、血液凝固測定装置、又は生化学分析装置として用いられるものである。
【0025】
この分析装置1は、図1に模式的に示されるように、複数の機構(コンポーネント)からなる測定ユニット(測定部)2と、この測定ユニット2に電気的に接続された、データ処理ユニットである制御装置400(図3参照)とから主に構成されている。
【0026】
測定ユニット2は、図2にも示すように、検体搬送部(サンプラ)10と、緊急検体・チップ搬送部20と、ピペットチップ供給装置30と、チップ脱離部40と、検体分注アーム50と、試薬設置部60a及び60bと、1次反応部80a及び2次反応部80bと、試薬分注アーム90a、90b及び90cと、1次B/F分離部100a及び2次B/F分離部100bと、検出部120と、前記検体搬送部(サンプラ)10や検体分注アーム50等の測定ユニット2に含まれる各機構の動作制御を行う測定制御部140とを備えている。なお、本実施の形態に係る免疫分析装置1では、検体分注アーム50により吸引及び吐出された血液等の検体が他の検体と混ざり合うのを抑制するために、検体の吸引及び吐出を行う度に、使い捨てのピペットチップの交換を行っている。
【0027】
[分析装置の各機構の構成]
分析装置1の各機構の構成としては、公知の構成を適宜採用することができるが、以下、それらについて簡単に説明をする。
検体搬送部10は、検体を収容した複数の試験管(検体容器)3が載置されたラック4を検体分注アーム50の吸引位置に対応する位置まで搬送するように構成されている。
【0028】
この検体搬送部10は、未処理の検体を収容した試験管3が載置されたラック4をセットするためのラックセット部10aと、分注処理済みの検体を収容した試験管3が載置されたラック4を貯留するためのラック貯留部10bとを有している。そして、未処理の検体を収容した試験管3を検体分注アーム50の吸引位置に対応する位置まで搬送することにより、検体分注アーム50により試験管3内の血液等の検体の吸引が行われて、その試験管3を載置したラック4がラック貯留部10bに貯留される。
【0029】
ここで、本実施形態の分析装置1では、5〜30個程度のラックが常用ラックとして使用される。これらのラック4には、それぞれラック番号(ラック識別情報;ラックID)が付与されている。分析装置1がラック番号を読み取ることができるように、各ラック4には、バーコード(バーコードラベル)4aが貼付されている(図4参照)。
また、各試験管3には、検体を識別するためのバーコード(バーコードラベル)3aが貼付されている(図4参照)。
【0030】
分析装置1には、バーコードラベルに印刷された前記バーコード4a,3aを読み取るため、バーコードリーダ(識別情報読取部)150が設けられている。
バーコードリーダ150は、ラックセット部10aにセットされたラック4のバーコード4aと、当該ラック4に保持された複数の試験管3の各バーコード3a(検体識別情報;検体ID)とを読み取ることができる。
【0031】
バーコードリーダ150は、センサ筐体6に収容されている。このセンサ筐体6には、ラック4における試験管3の有無を検出する光センサ(検体容器検出部)160も設けられている。光センサ160は、試験管(検体容器)3に向かって光を照射し、その反射光の有無で、試験管(検体容器)3の有無を検出する。
【0032】
前記検体搬送部10は、ラック4に保持されている検体容器3が順次、バーコードリーダ150及び光センサ160に対向するように、ラック4を搬送することができる。バーコードリーダ150及び光センサ160は、ラック4の各保持位置における試験管(検体容器)3の有無を確認するとともに、その試験管3にバーコード3aが貼付されていれば、当該バーコード3aを読み取って検体識別情報(試験管に収容された検体の識別情報;検体番号))を取得することができる。
なお、ラック4のバーコード4aやラック4に保持されている検体容器3のバーコード3aを順次読み取るには、ラック4ではなく、センサ筐体6を図示しない駆動手段によって、ラック4に沿ってスライドさせるようにしてもよい。
【0033】
ここで、ラック4に保持される検体容器としては、被験者から得た通常の検体を収容した試験管3(図4参照)の他、検量線を作成するためのキャリブレータ(検量線用検体)を収容したサンプルカップ3b(図5参照)が含まれる。このサンプルカップ3bは、バーコード3aを貼付するのに適した形状でないため、バーコード3aは貼付されない。
【0034】
したがって、バーコードリーダ150及び光センサ160で、検体容器3,3bの有無の検出とバーコード4a,3aの読み取りを行うと、ラック番号(ラック識別情報)と、ラックの各保持位置における検体容器3,3bの有無を示す情報とはいずれも取得できるが、検体番号(検体識別情報)は取得できる場合と取得できない場合がある。
このため、バーコードが貼付されない検体容器の検体を測定対象とすることがある場合、ラックID運用が必要となる。そこで、本実施形態では、ラックID運用を基本としつつ、検体ID運用の利便性を損なわないように、検体ID運用を補完的に用いる。
【0035】
さて、測定制御部140は、ラック4において検体容器3,3bが存在する位置(検体容器の位置)を、光センサ160の検出結果に基づいて認識する。そして、測定制御部140は、取得されたラック番号とともに、ラックにおいて検体容器3,3bが存在する位置(検体容器の位置)を、制御装置400へ送信する。また、検体番号が取得できた場合には、当該検体番号も制御装置400へ送信する。
【0036】
さて、前記緊急検体・チップ搬送部20は、検体搬送部10により搬送される検体に割り込んで検査する必要がある緊急検体を収容した試験管3を検体分注アーム50の装着位置まで搬送するように構成されている。
ピペットチップ供給装置30は、投入したピペットチップを1つずつ緊急検体・チップ搬送部20の搬送ラック23のチップ設置部23aに載置する機能を有している。
チップ脱離部40は、後述する検体分注アーム50に装着されたピペットチップを脱離するために設けられている。
【0037】
検体分注アーム50は、検体搬送部10により吸引位置に搬送された試験管3内の検体を、後述する1次反応部80aの回転テーブル部81の保持部81aに保持されるキュベット8内に分注する機能を有している。検体分注アーム50は、同一の検体を抗体測定用の第1のアリコートとして第1のキュベット8に分注するとともに、前記検体の抗原測定用の第2のアリコートとして第2のキュベット8に分注する。
【0038】
この検体分注アーム50は、アーム部51を、軸52を中心に回動させるとともに、上下方向(Z方向)に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部51の先端部には、検体の吸引及び吐出を行うノズル部が設けられており、このノズル部の先端には、緊急検体・チップ搬送部20の搬送ラック(図示せず)により搬送されるピペットチップが装着される。
【0039】
試薬設置部60aには、R1試薬が収容される試薬容器及びR3試薬が収容される試薬容器が設置されている。
一方、試薬設置部60bには、R2試薬が収容される試薬容器が設置されている。
なお、試薬設置部60a,60bには、抗体測定用のR1〜R3試薬が収容された試薬容器と、抗原測定用のR1〜R3試薬が収容された試薬容器とが、それぞれ設定されている。
【0040】
1次反応部80aは、回転テーブル部81の保持部81aに保持されるキュベット8を所定の期間毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット8内の検体、R1試薬及びR2試薬を攪拌するために設けられている。
この1次反応部80aは、検体とR1試薬及びR2試薬とが収容されるキュベットを回転方向に搬送するための回転テーブル部81と、キュベット8内の検体、R1試薬及びR2試薬を攪拌するとともに、攪拌された検体、R1試薬及びR2試薬が収容されたキュベット8を後述する1次B/F分離部100aに搬送する容器搬送部82とから構成されている。
【0041】
前記容器搬送部82は、回転テーブル部81の中心部分に回転可能に設置されている。この容器搬送部82は、回転テーブル部81の保持部81aに保持されるキュベットを把持するとともにキュベット8内の試料を攪拌する機能を有している。さらに、容器搬送部82は、検体、R1試薬及びR2試薬を攪拌してインキュベーションした試料を収容したキュベット8を1次B/F分離部100aに搬送する機能も有している。
【0042】
試薬分注アーム90aは、試薬設置部60aに設置される試薬容器内のR1試薬を吸引するとともに、その吸引したR1試薬を1次反応部80aのキュベット内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム90aは、アーム部91bを、軸91cを中心に回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部91bの先端部には、試薬容器内のR1試薬の吸引及び吐出を行うためのノズルが取り付けられている。
【0043】
試薬分注アーム90bは、試薬設置部60bに設置される試薬容器内のR2試薬を1次反応部80aの検体及びR1試薬が分注されたキュベット8内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム90bは、アーム部92bを、軸92cを中心に回動させるとともに、上下方向(Z方向)に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部92bの先端部には、試薬容器内のR2試薬の吸引及び吐出を行うためのノズルが取り付けられている。
【0044】
本実施の形態では、1次B/F分離部100aは、1次反応部80aの容器搬送部82によって搬送されたキュベット8内の試料のB/F分離(洗浄)を行うために設けられている。
1次B/F分離部100aのキュベット8は、搬送機構96により2次反応部80bの回転テーブル部83の保持部83aに搬送される。搬送機構96は、先端にキュベット把持部(図示せず)を有するアーム部96aを、軸96bを中心に回動させるとともに、上下方向(Z方向)に移動させることが可能なように構成されている。
【0045】
2次反応部80bは、1次反応部80aと同様の構成を有しており、回転テーブル部83の保持部83aに保持されるキュベットを所定の期間毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット8内の検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬、R4試薬、及びR5試薬を攪拌するために設けられている。
この2次反応部80bは、検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬、R4試薬及びR5試薬が収容されるキュベット8を回転方向に搬送するための回転テーブル部83と、キュベット8内の検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬、R4試薬及びR5試薬を攪拌するとともに、攪拌された検体等が収容されたキュベット8を後述する2次B/F分離部100bに搬送する容器搬送部84とから構成されている。さらに、容器搬送部84は、2次B/F分離部100bにより処理されたキュベット8を再び回転テーブル部83の保持部83aに搬送する機能を有している。
【0046】
試薬分注アーム90cは、試薬設置部60aに設置される試薬容器内のR3試薬を吸引するとともに、その吸引されたR3試薬を2次反応部80bの検体、R1試薬及びR2試薬が分注されたキュベット8内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム90cは、アーム部93bを、軸93cを中心に回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部93bの先端部には、試薬容器内のR3試薬の吸引及び吐出を行うためのノズルが取り付けられている。
【0047】
2次B/F分離部100bは、1次B/F分離部100aと同様の構成を有しており、2次反応部80bの容器搬送部84によって搬送されたキュベット8内の試料から未反応のR3試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離するために設けられている。
R4試薬供給部94及びR5試薬供給部95は、それぞれR4試薬及びR5試薬を2次反応部80bの回転テーブル部83の保持部83aに保持されたキュベット8内に供給するために設けられている。
【0048】
検出部120は、所定の処理が行なわれた検体(試料)からの化学発光量を光電子増倍管(Photo Multiplier Tube)で取得することにより、その検体に対する測定を行うために設けられている。この検出部120は、2次反応部80bの回転テーブル部83の保持部83aに保持されるキュベット8を当該検出部120に搬送するための搬送機構部121を備えている。
測定済の試料が吸引された、使用済みキュベットは廃棄用孔130を介して分析装置1の下部に配置される図示しないダストボックスに廃棄される。
【0049】
以上の構成を用いて、検出部120からは、前記化学発光量が測定結果として出力され、制御装置400に与えられる。
【0050】
[制御装置の構成]
制御装置400は、パーソナルコンピュータ401(PC)等からなり、図1に示されるように、制御部400aと、表示部400bと、キーボードやマウス等の入力部400cとを含んでいる。制御部400aは、測定ユニット2における各機構の動作制御を行うとともに、測定ユニット2で得られた検体の光学的な情報を分析するための機能を有している。この制御部400aは、CPU、ROM、RAM等からなる。また、表示部400bは、制御部400aで得られた分析結果等の情報を表示するために用いられる。
【0051】
次に、制御装置400の構成について説明する。制御部400aは、図3に示されるように、CPU401aと、ROM401b,RAM401c及びハードディスク401d等からなる記憶部と、読出装置401eと、入出力インタフェース401fと、通信インタフェース401gと、画像出力インタフェース401hとから主として構成されている。
CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、読出装置401e、入出力インタフェース401f、通信インタフェース401g、及び画像出力インタフェース401hは、バス401iによって接続されている。
【0052】
CPU401aは、ROM401bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM401cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム404aをCPU401aが実行することにより、コンピュータ401が制御装置400として機能する。
ROM401bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU401aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0053】
RAM401cは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM401cは、ROM401b及びハードディスク401dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401aの作業領域として利用される。
【0054】
ハードディスク401dには、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU401aに実行させるための種々のコンピュータプログラム404a及びそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。例えば、測定オーダを登録するためのアプリケーションプログラム(詳細は後述)や、測定回数の集計を行ったり、集計結果を表示したりするためのアプリケーションプログラムがこのハードディスク401dにインストールされている。
【0055】
読出装置401eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体404に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体404には、本実施の形態におけるアプリケーションプログラム404aが格納されており、コンピュータ401が、その可搬型記録媒体404からアプリケーションプログラム404aを読み出し、そのアプリケーションプログラム404aをハードディスク401dにインストールすることが可能である。
【0056】
なお、前記アプリケーションプログラム404aは、可搬型記録媒体404によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ401と通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム404aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ401がアクセスして、そのアプリケーションプログラム404aをダウンロードし、これをハードディスク401dにインストールすることも可能である。
【0057】
ハードディスク401dには、例えば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態におけるアプリケーションプログラム404aは前記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0058】
入出力インタフェース401fは、例えば、USB、IEEE1394、RS−232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース401fには、キーボード400cが接続されており、ユーザがそのキーボード400cを使用することにより、コンピュータ401にデータを入力することが可能である。
【0059】
通信インタフェース401gは、例えば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータ401は、その通信インタフェース401gにより、所定の通信プロトコルを使用して測定ユニット2との間でデータの送受信が可能である。
画像出力インタフェース401hは、LCD又はCRT等で構成された表示部400bに接続されており、CPU401aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部400bに出力するようになっている。表示部400bは、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0060】
[分析処理]
以下、分析装置1による分析処理について説明する。なお、以下の処理は、測定ユニット2及び制御装置400がそれぞれ有するコンピュータプログラム(アプリケーションプログラム404a)によって実行される。
図6に示すように、分析装置1が起動すると、測定ユニット2と制御装置400がそれぞれ、初期化される(ステップS1−1,S2−1)。
【0061】
[オーダ登録]
そして、制御装置400では、測定オーダの登録が行われる(ステップS2−2)。
測定オーダの登録は、図7に示すオーダ登録画面(第1画面)500によって行うことができる。
オーダ登録画面500は、ラック単位で測定オーダ(第1情報)を登録するためのものであり、登録対象となるラック番号を選択する選択ボタン501を有している。選択ボタン501への操作によって選択されたラック番号は、ラック番号表示部502に表示される。
【0062】
また、オーダ登録画面500は、選択されたラック番号のラックに保持される各検体の測定項目等を設定(入力)するための設定領域(設定画面)503を有している。
この設定領域503は、「登録」、「位置」、「検体番号」、「setA」、「Routine」、「HBsAg」、「HBsAb」、「HBeAg」、「HBeAb」などの設定項目を有している。
前記「位置」は、ラックにおける検体容器の保持位置を数値(1〜10)で示したものであり、それぞれの「位置」について、検体番号や測定項目等を設定することができる。前記「検体番号」は、検体の識別情報である。なお、図7において、「位置」が5〜10に登録されている検体は、検量線作成用のキャリブレータである。
【0063】
「setA」、「Routine」、「HBsAg」、「HBsAb」、「HBeAg」、「HBeAb」は、各検体について設定可能な測定項目であり、チェックがなされた項目が測定項目として設定される。なお、測定項目としては、図7に示すものに限らず、より多くの測定項目が設定可能である。
なお、前記「登録」は、設定された内容で登録されたか否かをチェックの有無により確認するための項目である。
また、「setA」および「Routine」は、所定の複数の測定項目をセットとして設定するための項目であり、「setA」にチェックを入れると「HBsAg」および「HBsAb」が自動的に測定項目として設定され、「Routine」にチェックを入れると、「HBsAg」、「HBsAb」、「HBeAg」および「HBeAb」が自動的に測定項目として設定される。
【0064】
前記オーダ登録画面500を用いると、ラックID運用に基づいて、オーダを登録することができる。すなわち、オーダ登録画面500では、ラック番号と、ラックにおける検体の位置と、検体番号と、測定項目とを対応付けた第1情報(第1のオーダ情報)を登録することができる。
【0065】
図8に示すように、オーダ登録画面500の設定領域(設定画面)503は、ラック(常用ラック)の数をNとすると、N個用意されている。なお、ラック(常用ラック)の数Nは、ユーザによって予め設定されている。
前記選択ボタン501によってラック番号を切り替えると、設定領域503には、ラック番号に対応するラックのオーダ登録のための設定画面が切替表示される。
【0066】
したがって、ユーザは、選択ボタン501によってラック番号を切り替え、所望のラックについてのオーダ登録を行うことができる。
なお、設定領域503の各項目への入力は、手入力であってもよいし、制御装置400又はその他のコンピュータ(ホストコンピュータ)に登録された情報を呼び出して、オーダ登録として登録するようにしてもよい。
【0067】
[ワークリスト]
また、ユーザは、オーダ登録画面500による登録とは別に、ワークリストによる登録が可能である。ワークリストによる登録は、図9に示すワークリスト画面(第2画面)600によって行われる。ワークリスト画面600は、オーダ登録画面500の「オプション」ボタン505を選択することで、オーダ登録画面500中に表示される「ワークリスト」ボタン(起動表示)505aを選択することによって表示される。
【0068】
つまり、図10に示すように、オーダ登録画面500からワークリスト画面の起動指示を行うと、ワークリスト画面600が表示される。このワークリスト画面600は、ダイアログとして表示される。そして、ワークリスト画面600において「閉じる」ボタン601を選択して、ワークリスト画面の完了指示が行われると、ワークリスト画面600が消去され、オーダ登録画面500に戻る。
【0069】
ワークリスト600は、オーダ登録画面500とは異なり、検体番号を主としたオーダリストであり、ラック番号やラックにおける検体保持位置(検体セット位置)を考慮せずに、測定オーダを保持するためのものである。
【0070】
ワークリスト画面600は、ワークリストの設定領域602を有している。この設定領域602は、「登録」、「検体番号」、「SetA」、「Routine」、「HBsAg」、「HCVAb」、「追加日時」などの項目を有している。
【0071】
ワークリストに新規にオーダを追加するには、新規オーダ追加部603の検体番号入力部603aに検体番号を入力する。そして、追加ボタン603bを選択することで、当該検体番号が設定領域602に追加される。そして、追加された検体番号について測定すべき測定項目(「SetA」、「Routine」、「HBsAg」、「HCVAb」など)を選択すればよい。なお、検体番号は、ハンディバーコードリーダにより、検体番号を示すバーコードを読み取ることによっても、自動的に設定領域602に追加される。
このように、ワークリスト画面600を用いると、検体ID運用に基づくオーダ登録が行える。つまり、ワークリスト画面600では、検体番号と測定項目とを対応付けた第2情報を登録することができる。
【0072】
なお、ワークリスト画面600では、図11に示すように、ワークリストへのオーダの2重登録を防止する機能が働く。つまり、ワークリストにオーダが新規入力されると(ステップS100)、入力されたオーダの検体番号が、ワーク登録画面500又はワークリスト画面600で既に登録された検体番号と同一であるか否かの判定が行われる(ステップS101)。
【0073】
新規入力された検体番号が、既に登録されている場合、その検体番号のワークリストへの登録は拒否される(ステップS102)。以上により、ワークリストへのオーダの2重登録が防止される。
【0074】
図6のフローチャートに戻り、測定オーダ登録(ステップS2−2)が終了した後、制御装置400が測定開始指示を受け付けると(ステップS2−3)、制御装置400は、測定開始信号を、測定ユニット2の測定制御部140に送信する(ステップS2−4)。
測定ユニット2の測定制御部140は、測定開始信号を受信すると、ラック4をバーコードリーダ150の位置まで移動させる(ステップS1−3)。
【0075】
バーコードリーダ150は、まず、ラック4のバーコード(ラック番号)4aを読み取る(ステップS1−4)。読み取ったラック番号(ラック識別情報)は、測定ユニット2の測定制御部140から制御装置400へ送信される(ステップS1−5)。
【0076】
制御装置400は、ラック番号を受信すると(ステップS2−5)、図12に示すように、そのラック番号に対応する設定画面503を、編集可能状態から、ユーザによる編集が不可能な状態に変更する。
また、編集不可とされたラック番号の設定画面503については、新たな設定画面503が生成される。新たに生成される設定画面503のラック番号としては、ステップS2−5で受信したラック番号の設定に用いられた設定画面503に適用されていた常用ラックのラック番号が自動的に設定される。なお、ステップS2−5で受信したラック番号の設定に用いられた設定画面503においてラック番号が変更されていた場合であっても、変更後のラック番号ではなく、変更前の常用ラックのラック番号が自動的に設定される。したがって、制御装置400がラック番号を受信した後は、選択ボタン501によって当該ラック番号を選択すると、設定領域503には、新たに生成された設定画面が表示される。新たに生成された設定画面503では、前記ラック番号に対応するラック(すなわち、直近のステップS1−4でラックバーコードを読み取られたラック)について次の測定オーダ(後の測定用の第1情報)を先に登録しておくことができる。
【0077】
なお、図12に示すように、編集不可状態の設定画面503(オーダ登録)は、対応するラックの全検体が吸引されると、終了状態に変更される。
【0078】
測定ユニット2は、ラック番号を読み取った後、さらに、ラック4において検体容器3のある位置を検出するとともに、検体容器3に貼付されたバーコード3aの読み取りを行う(ステップS1−6)。
続いて、測定ユニット2の測定制御部140は、制御装置400に対して、検体の測定オーダの問い合わせを行う(ステップS1−7)。測定オーダ問い合わせは、ラック4中の各検体についてどのような測定項目についての測定・分析を行うかの問い合わせである。
【0079】
測定オーダ問い合わせの際には、読み取ったラック番号(ラック識別情報)、ラック4における検体容器3,3bの位置、存在する場合には検体番号(検体識別情報)が制御装置400に送信される。
制御装置400は、測定オーダの問い合わせを受信すると(ステップS2−7)、前記オーダ登録画面500によって設定されたオーダやワークリスト画面600によって設定されたオーダに基づいて、オーダを決定し(ステップS2−8)、決定されたオーダに基づくオーダ指示を測定ユニット2へ送信する(ステップS2−9)。
なお、オーダ決定の詳細については、後述する。
【0080】
測定ユニット2の測定制御部140は、オーダ指示を受信すると(ステップS1−8)、検体を吸引し、オーダ指示に含まれるオーダに基づいて、指定された測定項目の測定を行う(ステップS1−9)。
【0081】
測定が終了すると、測定制御部140は、測定結果を制御装置400へ送信する(ステップS1−10)。なお、本フローチャートにおいて、測定結果の送信はステップS1−11の前に実行されているが、これは説明の便宜のためであり、測定結果が生成され次第送信される。従って、測定結果の送信は、ステップS1−11やS1−12の後であってもよいし、ステップS1−13の後であってもよい。
制御装置400は、測定結果を受信すると(ステップS2−10)、その測定結果の解析(分析)処理を行う(ステップS2−11)。
【0082】
測定ユニット2及び制御装置400では、測定結果の送信又は受信が行われると、ラック中の全検体を吸引したか否かの判定が行われる(ステップS1−11,ステップS2−12)。
ラック4中の全検体の吸引が終了していなければ、次の検体容器3,3bがバーコードリーダ150及び光センサ160に対向するように、ラック4の搬送を行う(ステップ1−12)。そして、ステップS1−12,S1−6〜S1−11及びステップS2−7〜S2−12の処理が、ラック中の全検体の吸引が完了するまで繰り返される。
【0083】
ラック中の全検体の吸引が完了すると(ステップS1−11,ステップS1−13)、吸引を完了したラック4がラック貯留部10bに搬送されるとともに、次のラック4がバーコードリーダ150の位置へ搬送される(ステップS1−3)。そして、ステップS1−4以降の処理が再度行われる。
【0084】
セットされたラック4全ての測定が終了し(ステップS1−13,ステップS2−13)、制御装置400へ装置のシャットダウンの指示がなされると(ステップS2−14)、制御装置400は、シャットダウン信号を測定ユニット2へ送信するとともに(ステップS2−15)、シャットダウン処理を行う(ステップS2−16)。また、測定ユニット2の測定制御部140も、シャットダウン信号を受信すると(ステップS1−14)、シャットダウン処理を行う(ステップS1−15)。
【0085】
[オーダ決定処理]
以下、図13に基づき、図6におけるオーダ決定処理(ステップS2−8)について詳述する。
オーダ決定処理では、制御装置400は、まず、測定ユニット2から受信したラック番号と検体容器位置とをキーにして、オーダ登録情報が記憶されているオーダ登録領域510を検索する(ステップS201)。なお、ここでの検索では、検体番号は用いられない。
【0086】
図14に示すように、オーダ登録情報は、制御装置400の記憶領域に確保されたオーダ登録領域510に記憶されている。オーダ登録領域510は、オーダ登録画面500によって設定されたオーダを記憶するための領域である。オーダ登録領域510のオーダ登録情報は、ラック単位で形成されており、ラック毎のオーダを有している。オーダ登録画面生成部520が、ラック毎のオーダ登録情報に基づいて、設定画面503を生成することで、図8に示すように、ラック数Nに応じた数の設定画面503が形成される。
【0087】
オーダ登録情報中に、該当する検体(ラック番号と位置が共通する検体)があった場合(ステップS202)、ステップS203へ移行する。該当する検体が無かった場合は、ステップS207へ移行する。
ステップS203では、オーダ登録情報において該当する検体の検体番号と、バーコードリーダ150によって読み取った検体番号と、が一致するかどうかを判定する「一致判定」を行うべきか否かの判定を行う。「一致判定」を行うか否かは、ユーザによって予め設定されており、当該設定に基づいて一致判定の要否が決定される。
【0088】
一致判定が必要な場合(ステップS203)、オーダ登録情報において該当する検体の検体番号と、バーコードリーダ150によって読み取った検体番号と、が一致するかどうかを判定する(ステップS204)。
読み取った検体番号がオーダ登録情報の検体番号と一致しない場合、オーダ登録情報の信頼性が低いため、当該検体については「オーダなし」と決定する(ステップ205)。したがって、当該検体についての測定が禁止される。
【0089】
読み取った検体番号がオーダ登録情報として登録されている場合、又は一致判定不要と判定された場合、オーダ登録領域510に登録されている測定項目を測定オーダとして決定する(ステップS206)。つまり、ラックID運用に対応した情報であるオーダ登録領域510に登録されている測定項目が、測定オーダとして決定される(ラックIDモード)。
【0090】
ステップS202において、オーダ登録領域510に該当する検体が見つからなかった場合、ステップS207では、オーダ決定のためにワークリスト領域610の情報を利用するか否かの「ワークリスト利用判定」を行う(ステップS207)。「ワークリスト利用判定」を行うか否かは、ユーザによって予め設定されており、当該設定に基づいてワークリスト利用の要否が決定される。
【0091】
ワークリストを利用する場合、読み取った検体番号をキーにして、ワークリスト領域610を検索する(ステップS208)。なお、ワークリスト領域610は、ワークリスト画面600によって設定されたオーダを記憶するための領域である。このワークリスト領域610に記憶されているオーダに基づいて、ワークリスト画面生成部620が、ワークリスト画面600を生成する(図14参照)。
【0092】
該当する検体番号が、ワークリスト領域610にあった場合(ステップS209)、その検体番号の測定項目(オーダ)を、オーダ登録領域510に追加し、その検体番号についてのオーダ情報(検体番号及び測定項目を含む)を、ワークリスト領域610から削除する(ステップS210)。
【0093】
上述のオーダ登録領域510への追加は、ワークリスト領域610のオーダを、読み取ったラック番号及び検体容器位置についての測定オーダとしてオーダ登録領域510に追加することで行われる。
したがって、オーダ登録画面500にて、オーダ登録が行われていない検体であっても、ワークリスト画面600にて登録が行われていれば、検体容器3のバーコード3a(検体番号;検体識別情報)が読み取られると、ワークリスト領域610のオーダ情報は、オーダ登録領域510へ自動的に移行する。
これにより、オーダ登録領域510には、読み取ったラック番号及び検体容器位置に対応する検体番号及び測定項目が生成される。制御装置400は、生成された検体番号及び測定項目に基づいて、オーダを決定する(ステップS206)。
つまり、検体ID運用に対応した情報であるラークリスト領域610に登録されている測定項目が、測定オーダとして決定される(検体IDモード)。
【0094】
ここで、オーダ登録画面500では、ラックID運用に基づくため、ラック番号と検体容器位置で検体を特定でき、バーコード3aを貼付できない検体(キャリブレータなど)であっても、オーダ登録が可能である。ただし、オーダ登録画面500では、検体番号がありバーコードを貼付できる検体については、検体番号があるのにもかかわらず、ラック番号と検体容器位置とを特定する必要があり、設定が煩雑である。
そこで、バーコードが貼られる検体容器3の検体については、オーダ登録画面500での設定ではなく、ワークリスト画面600にて、検体番号と測定項目を設定すればよい。ワークリスト画面600では、検体番号と測定項目を設定するだけでよいので、オーダ登録画面500での設定よりも容易に行える。
そして、本実施形態では、オーダ登録領域510に該当する検体が登録されていなくても、ワークリストから該当する検体を抽出して、オーダ登録領域510に追加されるため、当初はオーダ登録領域510にオーダが設定されていなくても、オーダを決定することができる。
【0095】
また、オーダ登録領域510に該当する検体がなく、かつ、ワークリストを利用しないと判定された場合(ステップS207)や、ワークリストを利用したがワークリストにも該当する検体が無かった場合(ステップS209)、オーダ決定のためにホストコンピュータのオーダ記憶領域800の情報を利用するか否かの「ホスト利用判定」を行う(ステップS211)。
「ホスト利用判定」を行うか否かは、ユーザによって予め設定されており、当該設定に基づいて、ホスト利用判定の要否が決定される。
【0096】
ホストコンピュータの利用が必要な場合、制御装置400からネットワークを介して、又はシリアル通信により、ホストコンピュータへのオーダの問い合わせが行われる(ステップS212)。オーダの問い合わせの際には、読み取られた検体番号が送信される。ホストコンピュータのオーダ記憶領域800に該当する検体があった場合(ステップS213)、その検体のオーダを、オーダ登録リストに追加する(ステップS214)。この追加は、ワークリストからオーダ登録リストへの追加と同様に行われる。
そして、制御装置400は、追加されたオーダの情報に基づいて、オーダを決定する(S206)。
つまり、制御装置400のオーダ指示部700は、ラック番号と位置に基づいて、オーダ登録領域510を参照してオーダを決定し、オーダの指示を行う。
【0097】
ホストコンピュータに問い合わせても該当する検体がなかった場合(ステップS213)や、ホストコンピュータを利用しないと判定された場合(ステップS211)には、当該ラック番号及び検体容器位置に対応する検体については、「オーダなし」と決定する(ステップS215)。
【0098】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、ワークリスト画面600では、複数の検体の検体識別情報を設定するための画面となっているが、一つの検体について一つの画面を表示するようにしてもよい。
また、ワークリスト画面600に検体識別情報が入力されていれば、その検体識別情報が、オーダ登録画面500から入力された検体識別情報と一致している場合に、ワークリスト画面600に入力された検体識別情報のオーダを優先し、この検体識別情報に対応する測定項目を測定オーダとして決定してもよい。
また、検体識別情報とラック識別情報とは共通のバーコードリーダで読み取る必要はなく、検体識別情報とラック識別情報とのそれぞれにバーコードリーダを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】分析装置の全体図である。
【図2】測定部の詳細図である。
【図3】制御装置の構成図である。
【図4】検体容器を保持したラックの斜視図である。
【図5】サンプルカップの斜視図である。
【図6】測定ユニット2と制御装置400の処理を示すフローチャートである。
【図7】オーダ登録画面を示す図である。
【図8】オーダ登録画面の設定画面が複数あることの説明図である。
【図9】ワークリスト画面を示す図である。
【図10】オーダ登録画面とワークリスト画面との間の切り替わりを示す状態遷移図である。
【図11】ワークリストの入力処理を示すフローチャートである。
【図12】オーダ登録画面の設定画面の状態遷移図である。
【図13】オーダ決定処理のフローチャートである。
【図14】制御装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0100】
1 免疫分析装置
2 測定部
140 測定制御部
150 バーコードリーダ(識別情報読取部)
160 光センサ
400 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックID運用に対応した情報を設定する第1設定手段と、
検体ID運用に対応した情報を設定する第2設定手段と、
前記第1設定手段によって設定された情報に基づいて検体を測定するラックIDモード、又は、前記第2設定手段によって設定された情報に基づいて検体を測定する検体IDモードを、自動的に選択するモード選択手段と、
前記モード選択手段によって選択されたモードに従って、検体を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果を分析する分析部と、
を備える分析装置。
【請求項2】
複数の検体容器を保持可能なラックを識別するためのラック識別情報と、ラックに保持された検体容器の当該ラックにおける位置と、前記検体容器の検体に対する測定項目と、を含む第1情報を設定する第1設定手段と、
検体を識別するための検体識別情報と、その検体に対する測定項目と、を含む第2情報を設定する第2設定手段と、
分析対象となる検体の検体識別情報、及び前記検体を収容した検体容器を保持するラックのラック識別情報を読み取り可能に構成された識別情報読取部と、
前記検体容器の前記ラックにおける位置を認識するための位置認識手段と、
前記識別情報読取部による識別情報の読取結果及び前記位置認識手段による位置の認識結果に応じて、設定された前記第1情報又は前記第2情報を参照し、検体の測定項目を決定する測定項目決定手段と、
前記検体に対して、前記測定項目決定手段によって決定された測定項目についての測定を行う測定部と、
前記測定部の測定結果を分析する分析部と、
を備える分析装置。
【請求項3】
前記測定項目決定手段は、前記識別情報読取部で読み取った前記ラック識別情報及び前記位置認識手段で認識した前記位置と一致する情報が、前記第1情報として設定されている場合には、前記ラック識別情報及び前記位置に対応する前記測定項目を、前記測定部が行う測定の測定項目として決定する、請求項2記載の分析装置。
【請求項4】
前記第1設定手段は、前記第1情報をラック単位で設定するための設定画面を表示し、
所定のラックについての設定画面が編集不可状態となると、当該所定のラックについて前記第1情報を設定するための編集可能な新たな設定画面を生成する請求項2又は3記載の分析装置。
【請求項5】
前記第1設定手段は、前記ラック識別情報と前記位置と前記測定項目とを前記第1情報として設定するための第1画面を表示し、
前記第2設定手段は、前記検体識別情報と前記測定項目とを設定するための第2画面を表示し、
前記第1画面は、前記第2画面を起動するための起動表示を含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記第1設定手段は、検体を識別するための検体識別情報を、前記ラック識別情報と前記位置と前記測定項目とに関連付けて設定し、
前記識別情報読取部によって読み取られたラック識別情報及び前記位置認識手段によって認識された位置が、前記第1設定手段によって設定されたラック識別情報及び位置と一致し、前記識別情報読取部によって読み取られた検体識別情報が、前記第1設定手段によって当該ラック識別情報及び位置に対応付けて設定された検体識別情報と一致しない場合に、前記測定部による測定を禁止する測定禁止手段を更に備える、請求項2〜5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記測定項目決定手段は、設定された前記第1情報又は前記第2情報を参照しても、検体の測定項目を決定できない場合、外部のコンピュータへ測定項目の問い合わせを行う、請求項2〜6のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記第2設定手段は、複数の前記検体識別情報と、各検体識別情報によって特定される検体それぞれに対する測定項目とを対応付けて設定するための画面を表示する、請求項2〜7のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項9】
前記測定項目決定手段は、前記識別情報読取部によって読み取られたラック識別情報及び前記位置認識手段によって認識された位置が、前記第1設定手段によって設定されたラック識別情報及び位置と一致しないが、前記識別情報読取部によって読み取られた検体識別情報が、前記第2設定手段によって設定された検体識別情報と一致する場合には、当該一致した検体識別情報に対応する測定項目を、前記識別情報読取部によって読み取られたラック識別情報及び前記位置認識手段によって認識された位置における前記第1情報として設定する、請求項2〜8のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項10】
免疫分析装置、血液凝固測定装置、又は生化学分析装置として構成されている請求項2〜9のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項11】
複数の検体容器を保持可能なラックを識別するためのラック識別情報と、ラックに保持された検体容器の当該ラックにおける位置と、前記検体容器の検体に対する測定項目と、を含む第1情報を設定する第1設定手段と、
分析対象となる検体の検体識別情報、及び前記検体を収容した検体容器を保持するラックのラック識別情報を読み取り可能に構成された識別情報読取部と、
前記検体容器の前記ラックにおける位置を認識するための位置認識手段と、
前記識別情報読取部によって読み取られたラック識別情報及び前記位置認識手段によって認識された位置が、前記第1設定手段によって設定されたラック識別情報及び位置と一致しない場合には、前記識別情報読取部によって読み取られた検体識別情報に基づいて、外部のコンピュータへ測定項目の問い合わせを行って、測定項目を決定する測定項目決定手段と、
前記検体に対して、前記測定項目決定手段によって決定された測定項目についての測定を行う測定部と、
前記測定部の測定結果を分析する分析部と、
を備える分析装置。
【請求項12】
検体の分析方法であって、
複数の検体容器を保持可能なラックを識別するためのラック識別情報と、ラックに保持された検体容器の当該ラックにおける位置と、前記検体容器の検体に対する測定項目と、を含む第1情報の第1設定ステップと、
検体を識別するための検体識別情報と、その検体に対する測定項目と、を含む第2情報を設定する第2設定ステップと、
分析対象となる検体の検体識別情報、及び前記検体を収容した検体容器を保持するラックのラック識別情報を読み取る識別情報読取ステップと、
前記検体容器の前記ラックにおける位置を認識するための位置認識ステップと、
前記識別情報読取ステップにおける識別情報の読取結果及び前記位置認識ステップにおける位置の認識結果に応じて、設定された前記第1情報又は前記第2情報を参照し、検体の測定項目を決定する測定項目決定ステップと、
前記検体に対して、前記測定項目決定ステップにおいて決定された測定項目についての測定を行う測定ステップと、
前記測定ステップにおける測定結果を分析する分析ステップと、
を含む分析方法。
【請求項13】
コンピュータを、
複数の検体容器を保持可能なラックを識別するためのラック識別情報と、ラックに保持された検体容器の当該ラックにおける位置と、前記検体容器の検体に対する測定項目と、を含む第1情報を設定する第1設定手段、
検体を識別するための検体識別情報と、その検体に対する測定項目と、を含む第2情報を設定する第2設定手段、
分析対象となる検体の検体識別情報、及び前記検体を収容した検体容器を保持するラックのラック識別情報を読み取る識別情報読取部から、読み取った識別情報を取得する取得手段、
前記検体容器の前記ラックにおける位置を認識するための位置認識手段、及び
前記識別情報読取部による識別情報の読取結果及び前記位置認識手段による位置の認識結果に応じて、設定された前記第1情報又は前記第2情報を参照し、検体の測定項目を決定する測定項目決定手段、
として機能させるための分析装置用コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−244177(P2009−244177A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92683(P2008−92683)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】