分析装置及び分析方法
【課題】試料液の添加に伴って溶出した試薬の可視標識の重なり度合いあるいは可視標識とは独立した可視的信号の重なり度合いによって分析対象物の濃度を検知することによりサンドイッチ法と同等の判定を行う。
【解決手段】試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬A及び試薬Bが前記試薬区域に分離状態で溶出流動可能に保持され、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Aに対する試料液中の分析対象物と試薬Bと間での競合反応により競合反応物が生成可能となっており、この競合反応物を捕捉する試薬Cが前記判定区域に固定化されており、試薬Cに捕捉された競合反応物からの可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっている。
【解決手段】試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬A及び試薬Bが前記試薬区域に分離状態で溶出流動可能に保持され、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Aに対する試料液中の分析対象物と試薬Bと間での競合反応により競合反応物が生成可能となっており、この競合反応物を捕捉する試薬Cが前記判定区域に固定化されており、試薬Cに捕捉された競合反応物からの可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマト法を用いるための分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿等の生体試料中に含まれる微量物質の定性または定量(半定量)方法として、その感度の高さから免疫学的測定方法が汎用されている。その手法のうち、クロマトグラフィーを用いたいわゆるイムノクロマト法は、操作が簡単であり、検査に要する時間も短いため、現在多くの場合、例えば病院における臨床検査及び研究室における検定試験等に広く使われている。
【0003】
このイムノクロマト法を用いた装置としては、メンブラン等の多孔質膜を利用し、試料や試薬をその膜の面に対して垂直に濾過形式で流動させるフロースルー方式や、膜の面に沿って一端から他端へ流動させるラテラルフロー方式がある。これらは操作が簡便であり、分析に要する時間も短いことから一般的な検査として普及している。
【0004】
最も一般的なイムノクロマト法における分析対象物(例えば抗原など)の検出法としては、分析対象物に対し種々の標識を付した特異結合物質(例えば抗体など)をクロマト材上で反応させて分析対象物と標識化特異結合物質との複合体(例えば、抗体−抗原複合体)を形成させ、これを種々の手段により確認(検出)することが行われる。この場合、用いられる標識物質としては、放射性同位体元素、酵素、金属ゾル、非金属ゾル、着色ラテックス、染料、顔料、化学発光物質、蛍光物質等がある。
【0005】
現在、イムノクロマト法において主に普及している検出原理は、サンドイッチ法である。このサンドイッチ法は、分析対象物に対する特異結合物質をクロマト材上に固定化し、試料液中の分析対象物と標識化特異結合物質を接触させる方法である。その際、固定化特異結合物質とそれに結合した分析対象物を挟んで標識化結合物質が結合するため、試料液中の分析対象物の量が多ければ多いほど標識化特異結合物質が多く結合する。従って、標識化特異結合物質の結合量が分析対象物量の直接的な尺度となっている。例えば、着色標識物質を用いた場合においては、分析対象物の量が多ければ多いほど着色が濃くなるものである。
【0006】
しかしながら、分析対象物成分のうち、炎症マーカーであるC反応性蛋白質(CRP)、血清アミロイドA、アレルギー症状の指標となるIgE、腎障害の指標となる尿中のアルブミン等の通常低濃度であるが異常時には非常に高濃度まで広く濃度範囲が変動するダイナミックレンジの広い成分の測定においては、試料液中の分析対象物の濃度が試薬の測定濃度範囲を大きく上回っている場合、分析対象物過剰により前記サンドイッチ複合体形成が抑制されるため、見かけ上の測定値が低くなり、その濃度が正常値の範囲内であるような誤った測定値を示唆することがある。この現象はフック現象又はプロゾーン現象と称されるものであり、サンドイッチ法の原理を用いた測定系においては大きな問題となっている。
【0007】
特開昭59−23251号公報には、液層中に存在する抗原と結合性のある第1結合物質、標識された第3結合物質及び第1結合物質と結合性のある第2結合物質を固相化抗体として用いた測定試薬キットが記載されている。これにより、あらゆる測定項目に対応した固相化抗体とするものである。
【0008】
しかしながら、上記特開昭59−23251号公報は、サンドイッチ法に限定された方法であり、検査室において免疫化学的に測定される全ての項目に適用することはできないものであり、例えばT3、T4等の甲状腺ホルモン、コルチゾール、エストラジオール、ジギトキシンなどのハプテンの測定には適していない。
【0009】
このようにサンドイッチ法は、2つの異なる抗体などの特異結合物質に対する2つの異なる結合部位を有している分析対象物の測定に適している。しかしながら、反面、その2種の抗体の準備及び作製等において多大な労力を要するという欠点を持ち合わせるものである。
【0010】
一方、検出原理のうち競合法として知られる測定方法は、分析対象物に対する特異結合物質をクロマト材上に固定化し、試料液中の分析対象物と標識化した分析対象物もしくはその変性体を接触させるものである。その結果、試料液中に存在する遊離状態の分析対象物と標識化分析対象物もしくはその変性体が競合し、標識化分析対象物もしくはその変性体と固定化特異結合物質との複合体形成反応(例えば抗原−抗体反応など)を阻害することにより試料液中の分析対象物を測定するようになっている。このことから、競合法では、固定化物質に対する標識物質の結合量が測定物質量の間接的な尺度となる。競合法はその測定原理から、仮に試料液中に含まれる測定対象抗原の濃度が測定の上限濃度を大きく超過した場合でも複合体形成阻害が減弱されないため、高い抗原濃度が低値であるかのような誤った測定値を与えることがないという特徴を有している。
【0011】
競合法を用いたイムノアッセイ法では、分析対象物の定性もしくは定量(半定量)を着色標識による着色の有無により判定を行っている点はサンドイッチ法と同様である。しかし、結果として着色した場合は分析対象物が検出感度以下であり、着色しない場合は検出感度以上の濃度を有しているという判定を行う点でサンドイッチ法とは異なっている。つまり、競合法においては、着色標識化物質を用いた場合、分析対象物の量が多ければ多いほど着色は薄くなるものである。そのため、医療、特に臨床検査等の現場においてサンドイッチ法が主である現在において、競合法を用いたイムノアッセイ法での判定を採用することは混乱を招くおそれがある。
【0012】
競合法を用いたイムノアッセイ法としては、特開2001−281250号公報及び特開平7−325085号公報におけるフロースルータイプ及びストリップタイプ(ラテラルフロータイプ)が開示されている。
【0013】
特開2002−189027号公報には、複数の異なる結合親和性を有する標識抗体の組み合わせを用いた競合法による抗原検出法が開示されている。この方法は、試料中に存在する抗原の濃度が低い場合においては、親和性の高い抗体のみが抗原に結合し、抗原濃度が高くなるにつれて親和性が低い抗体の結合にも抗原が結合するというものであり、これによって従来の競合法に比べ、検出可能な抗原濃度範囲(測定範囲)が広がるとしている。
【0014】
特許第3424831号公報には、従来技術の競合的または非競合的な方法を兼ね備えた分析対象物の濃度を測定する方法が開示されている。この方法は、低濃度の試料を検出する際に最高の感度が達成される競合法と高濃度のものを検出する際に感度が適しているサンドイッチ法を組み合わせるものであり、これにより分析対象物を広範囲の濃度で測定できるものとしている。
【0015】
特開平8−54393号公報には、標識酵素の活性由来の信号による測定結果が分析対象物の量に正比例する競合法が記載されている。従来の競合法は標識化分析対象物の量が分析対象物の量に反比例するのに対し、この方法は競合反応において未反応であった標識化分析対象物の量を測定することにより、競合法でありながら標識物質の量が測定物質量の尺度として結果が得られる間接的方法となっている。しかしながら、反応し得なかった標識化分析対象物の量を測定した結果は、分析対象物の量を測定することを目的とした場合、直接的ではない。また、測定を行う上で、装置を複数使用する必要があり、簡便さに欠けるものとなっている。
【特許文献1】特開2002−189085号公報
【特許文献2】特許第3424831号公報
【特許文献3】特開平8−54393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のように、プロゾーン現象が問題となっているにも拘わらず、サンドイッチ法がイムノアッセイ法として依然主流であるのは、分析対象物の量が判定時に着色の強さと比例するためである。そこで、本発明の課題は、試料溶液の希釈が不要であり、かつプロゾーン現象の問題が生じないという競合法の特徴を生かしながら、サンドイッチ法と同等の判定を実施することが可能な分析装置及び分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載の発明の分析装置は、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬A及び試薬Bが前記試薬区域に分離状態で溶出流動可能に保持され、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Aに対する試料液中の分析対象物と試薬Bと間での競合反応により競合反応物が生成可能となっており、この競合反応物を捕捉する試薬Cが前記判定区域に固定化されており、試薬Cに捕捉された競合反応物からの可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬C;標識a化第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第1特異結合物質に特異的に結合可能な第2特異結合物質
【0018】
請求項2記載の発明の分析装置は、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬B及び試薬Dが前記試薬区域に分離状態で溶出流動可能に保持され、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Dに対する試料液中の分析対象物と試薬Bと間での競合反応により競合反応物が生成可能となっており、この競合反応物を捕捉する試薬Eが前記判定区域に固定化されており、試薬Eに捕捉された競合反応物からの可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする。
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬D;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質及び分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質
試薬E;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質
【0019】
請求項3記載の発明の分析装置は、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、可視標識を有する試薬Bが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、試薬Bと異なった可視標識を有する試薬Aが前記判定区域に直接的または間接的に固定されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬B及び試料液中の分析対象物の間での試薬Aへの競合的捕捉による可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の分析装置であって、前記判定区域に試薬Cが固定されており、前記試薬Aは試薬Cに結合されることにより判定区域に固定化されていることを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明の分析装置は、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、可視標識を有する試薬Bが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、前記判定区域に試薬Eが固定化されると共にこの試薬Eに試薬Dが固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬B及び試料液中の分析対象物の間での試薬Dへの競合的捕捉による可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする。
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬D;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質及び分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質
試薬E;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質
【0022】
請求項6記載の発明の分析装置は、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、試料液中の分析対象物と特異的に結合し、かつ可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質が試薬区域に溶出流動可能に保持され、この標識a化第1特異結合物質と特異的に結合可能な分析対象物もしくはその変性体が判定区域に固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴って試料液中の分析対象物及び判定区域中の分析対象物もしくはその変性体との間での前記標識a化第1特異結合物質に対する競合的捕捉と、この競合的捕捉と独立した可視的信号とが同時に判定区域に生成され、この独立した可視的信号と前記可視標識aとの重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の分析装置であって、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬A及び試薬Fが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、前記判定区域に分析対象物もしくはその変性体と、試薬Fと結合可能な試薬Gが固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Fと試薬Gとの結合によって前記独立した可視的信号が生成可能となっていることを特徴する。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬F;第5特異結合物質が可視標識cによって標識された標識c化第5特異結合物質
試薬G;第5結合物質と相互に結合可能な第6結合物質
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の分析装置であって、前記独立した可視的信号が試料液の添加以前から判定区域に生じていることを特徴とする。
【0025】
請求項9記載の発明は、請求項6または8記載の分析装置であって、前記独立した可視的信号が判定区域に固定化された試薬Gと試薬Gに結合した試薬Fとによって生じていることを特徴とする。
【0026】
請求項10記載の発明は、請求項6または8記載の分析装置であって、前記独立した可視的信号が判定区域に固定化されたpH指示薬、色素、着色粒子または着色した小胞であることを特徴とする。
【0027】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置であって、前記試料液が、尿、血液、溶血血液、血漿、血清、唾液、汗及び涙液等の体液、池、河川及び工業用水等の水、その他食品、食物などからの分析対象物の抽出液であることを特徴とする。
【0028】
請求項12記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置であって、前記分析対象物が、ホルモン、生化学的メッセンジャー、ステロイド、薬物、薬物代謝産物、ポリペプチド、蛋白質、ビタミン、アルカロイド、単糖、二糖または多糖、ハプテンよりなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0029】
請求項13記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置であって、前記分析対象物が、甲状腺ホルモン、コルチゾール、エストロゲン、プロゲステロンまたはテストステロンからなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0030】
請求項14記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置であって、前記可視標識が、粒状標識、色素標識、酵素標識からなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0031】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の分析装置であって、前記粒状標識が、金コロイド、セレニウムコロイド等の金属コロイド、着色した脂質小胞(リボソーム)や小胞、着色ラテックスなどからなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0032】
請求項16記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載の分析装置であって、前記第1特異結合物質及び第2特異結合物質が抗原、抗体、受容体のいずれかであることを特徴とする。
【0033】
請求項17記載の発明は、請求項6,7のいずれか1項記載の分析装置であって、相互に結合可能な第5特異結合物質及び第6特異結合物質が、抗原、抗体、もしくはそれらの結合物の組み合わせからなることを特徴とする。
【0034】
請求項18記載の発明は、請求項6,7のいずれか1項記載の分析装置であって、前記第1特異結合物質がマウス由来抗体であって、相互に結合可能な第5特異結合物質及び第6特異結合物質がヤギ由来抗体及び抗ヤギウサギ由来抗体の組み合わせからなることを特徴とする。
【0035】
請求項19記載の発明の分析方法は、試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質からなる試薬A、及び標識a化第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が前記可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体からなる試薬Bを溶出流動可能に分離状態で保持する試薬区域と、前記標識a化第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第1特異結合物質に特異的に結合可能な第2特異結合物質からなる試薬Cを固定化した判定区域とを試料液が湿潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により試薬区域の標識a化第1特異結合物質と標識b化分析対象物もしくはその変性体が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、その間に試料液中の分析対象物の存在によって標識a化第1特異結合物質に対し、分析対象物と標識b化分析対象物もしくはその変性体とが競合反応し、その競合反応物が判定区域の第2特異結合物質に捕捉され、捕捉された競合反応物中の可視標識a及び可視標識bの重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって試料液中の分析対象物の濃度を検知することを特徴とする。
【0036】
請求項20記載の発明の分析方法は、試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質や分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質からなる試薬D、及び第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が前記可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された可動性の標識b化分析対象物もしくはその変性体からなる試薬Bを溶出流動可能に分離状態で保持する試薬区域と、前記第1特異結合物質の特異性を損なうことなく前記第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質からなる試薬Eを固定化した判定区域とを試料液が湿潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により、試薬区域の標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質と標識b化分析対象物もしくはその変性体が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、その間に試料液中の分析対象物の存在によって標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質に対し、分析対象物と、標識b化分析対象物もしくはその変性体とが競合反応し、その競合反応物が第3特異結合物質を介して判定区域の第4特異結合物質に捕捉され、捕捉された競合反応物中の可視標識a及び可視標識bの重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって試料液中の分析対象物の濃度を検知することを特徴とする。
【0037】
請求項21記載の発明の分析方法は、試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質を溶出流動可能に保持する試薬区域と、前記標識a化第1特異結合物質と特異的に結合しうる分析対象物もしくはその変性体を固定化した判定区域とを試料液が浸潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により試薬区域の標識a化第1特異結合物質が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、試料液中の分析対象物の存在によってその分析対象物と判定区域に固定化された前記分析対象物もしくはその変性体とが標識a化第1特異結合物質に対し競合捕捉される際に、競合捕捉とは独立した可視的信号が同時に判定区域に生じ、その区域での可視標識aと前記独立した可視的信号の重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって分析対象物の濃度を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、試料液の添加に伴って溶出して判定区域に流動した試薬の可視標識の重なり度合いあるいは可視標識とは独立した可視的信号の重なり度合いによって分析対象物の濃度を検知するため、プロゾーン現象の問題が生じないという競合法の特徴を生かし、かつサンドイッチ法と同等の判定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は特異結合アッセイにおいて、互いに異なる可視的信号を発する標識を用意し、一方を分析対象物もしくはその変性体と特異的に結合する第1特異結合物質に標識した標識a化第1特異結合物質と、他方の可視標識を前記分析対象物もしくはその変性物に標識した標識b化分析対象物もしくはその変性体を用い、何れの標識化物も試薬区域に分離して配置され、試料液による湿潤状態の際には可動性となるものであって、前記標識b化分析対象物もしくはその変性体(以下、標識b化分析対象物と称する)と試料液中の分析対象物とが競合して標識a化第1特異結合物質に反応し、その結果生じた競合反応物を判定区域で捕捉することを1つの特徴とする。更に前記判定区域に捕捉された競合反応物中の可視標識a及び可視標識bの存在度合いによって、試料液中の分析対象物がいかなる濃度範囲にあっても、判定区域に可視的信号が得られ、それが分析対象物の濃度に依存することも本発明の1つの特徴である。
【0040】
本発明をイムノアッセイを例に具体的に説明する。イムノアッセイにおいて互いに異なる可視的信号を有する標識によってそれぞれ標識化された標識a化第1抗体及び標識b化抗原がそれぞれ混合することなく分離して試薬区域に配置されている。この試薬区域へ試料液を添加すると、標識a化第1抗体及び標識b化抗原が可動性となり、試料液中の抗原の存在によって競合的に抗原抗体反応が起こり、2つの複合体(標識a化第1抗体−抗原、あるいは標識a化第1抗体−標識b化抗原)が形成される。
【0041】
そしてラテラルフロー方式の場合にあっては、これら複合体が展開下流の判定区域に固定化された前記第1抗体に特異的に結合する捕捉抗体により捕捉される。ここで捕捉抗体は上記の競合反応を妨害しない特異性を有するものである。その際、試料液中の抗原濃度が低い場合には、標識a化第1抗体−標識b化抗原複合体が優位に形成され、これが捕捉抗体に捕捉される。一方、試料液中の抗原濃度が高い場合には、標識a化第1抗体−抗原複合体が優位に形成され、これが捕捉抗体に捕捉される。
【0042】
ここで各々の標識a及び標識bが互いに異なる可視的信号を有するので、その結果、試料液中の抗原濃度が低い場合には判定区域の可視的信号が標識aと標識bの重なった可視的信号となり、抗原濃度が高い場合には判定区域の可視的信号が標識aの可視的信号となって現れる。
【0043】
具体的には例えば前記標識aが青色の可視的信号を有し、前記標識bが黄色の可視的信号を有する場合、試料液中の抗原濃度が低い場合には判定区域の可視的信号が標識aの青色と標識bの黄色の重なった可視的信号となり、緑色の可視的信号となって判定区域に現れる。逆に、抗原濃度が高い場合には判定区域の可視的信号が標識aの青色だけの可視的信号となって判定区域に現れる。その結果、試料液中の抗原濃度が低い側から高い側に相関して、判定区域が緑色から青色へと色調が変化する。このようにして試料液中の分析対象物の濃度を前記色調の変化で容易に半定量あるいは定量することが可能となる。
【0044】
このように本発明は、抗原濃度が高くなるにつれて信号そのものが小さくなり、色で言えば減色する負の相関(色が薄ければ抗原濃度が高い)という従来の競合法の問題を2種の信号の混合度合い(2色の混合度合い)によって、簡便で、容易に判別できることを1つの特徴としている。
【0045】
本発明にはいくつかの改変が可能である。以下に、前述のイムノアッセイの例に基づいて説明する。
【0046】
上記の例は、判定区域に固定化された捕捉抗体が第1抗体に特異的に結合するものであるが、1つの改変例は、第1抗体には結合しないでかつ相互に特異的に結合する二つの特異結合物質を用いることである。即ち、これら二つの特異結合物質の一方を判定区域に固定化し、他方を第1抗体とともに標識aに結合させて標識a化第1抗体・特異結合物質とする方法である。これによって反応の本質的部分である第1抗体と試料液中の抗原、及び標識b化抗原の三者の競合反応に関わらないようにしたものであり、判定区域に対しては、競合反応で形成された前記複合体を捕捉するための専用の捕捉手段を設けている。その結果、上記発明と同様の結果が得られる。
【0047】
また以上の方法は何れも試験者が試料液を試薬区域側から添加することによって、判定区域までの間で競合反応及び前記複合体の捕捉反応が起こり、可視的信号のない判定区域に可視的信号が現れるものであるが、前記二つの相異なる可視的信号のうちの一方の可視的信号を試験者が試料液を添加する前から、即ち未使用状態で判定区域に存在させておき、試験を実施することによって反応を開始し、他方の可視的信号がすでに存在させてある可視的信号に重なるという方法もある。
【0048】
例えばその1つは、標識a化第1抗体と標識b化抗原、そして判定区域に捕捉抗体を用いる例では、標識a化第1抗体とその捕捉抗体をすでに結合させたものを判定区域に固定化し、同区域に可視標識aを存在させる方法である。これはまた前記捕捉抗体を用いず直接標識a化第1抗体を判定区域に固定化することによっても更に単純化することができる。
【0049】
またさらには、前記第1抗体には結合しないでかつ相互に特異的に結合する二つの特異結合物質を用いる例においては、標識a化第1抗体・特異結合物質と判定区域の特異結合物質をあらかじめ結合させたものを判定区域に固定化し、同区域に可視標識aを存在させる方法がある。
【0050】
以上、当初から可視標識aを存在させる方法は何れも、試薬区域に標識b化抗原を配置し、試料液を添加することにより、分析対象物である抗原の存在によって標識b化抗原と共に判定区域に浸潤展開し、判定区域で競合反応を行うものである。これらによっても、前記の可視的信号のない判定区域に可視的信号が現れるものと同様の結果が得られる。
【0051】
以上の発明は、競合反応に関わる第1特異結合物質及び競合反応用の分析対象物もしくはその変性物の双方に可視標識を結合させ、試料液中の分析対象物の存在によって競合反応を行わせ、その結果、標識a化第1抗体−抗原、あるいは標識a化第1抗体−標識b化抗原複合体を判定区域に形成させるものである。
【0052】
本発明は、前記競合反応に影響しないかつ相互に特異的に結合しうる2種の特異結合物質の組み合わせを用いることをもう一つの特徴とする。即ち、具体的には、特異結合アッセイにおいて、互いに異なる可視的信号を発する標識である可視標識a及び可視標識cを用意し、一方の可視標識aを試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質に標識化した標識a化第1特異結合物質とし、他方の可視標識cを前記分析対象物及び標識a化第1特異結合物質と結合しない「独立」した第5特異結合物質に標識化した標識c化第5特異結合物質とする。
【0053】
そして、これらの標識a化第1特異結合物質と標識c化第5特異結合物質とが試薬区域に配置されており、試料液の添加によって湿潤状態になった際には、標識a化第1特異結合物質及び標識c化第5特異結合物質が可動性となって判定区域に向かって湿潤展開する。一方、判定区域には前記第1特異結合物質と特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体と、前記第5特異結合物質とのみ特異的に結合する第6特異結合物質とが固定化されている。
【0054】
ここで試料液を試薬区域側に添加すると、可動性の標識a化第1特異結合物質に対し試料液中の分析対象物及び判定区域に固定化された分析対象物もしくはその変性体(以下、固定化分析対象物と称する)が競合反応し、その結果、試料液中の分析対象物の濃度に応じて標識a化第1特異結合物質−固定化分析対象物が判定区域に形成される。具体的には判定区域に試料液中の分析対象物の濃度が高くなるに従い可視標識aの量が少なく現れる。
【0055】
一方、試料液の添加によって、同時に可動性の標識c化第5特異結合物質も浸潤展開して判定区域に向かい、試料液中の抗原濃度に拘わらず「独立」して、判定区域に固定化されている第6特異結合物質と結合し、標識c化第5特異結合物質−固定化第6特異結合物質が形成される。これは試料液中の分析対象物濃度に関係なく前記複合体が形成され、一定量の可視信号cが判定区域に現れる。その結果、一定量の可視標識cに対して前記可視標識aが重なる。このとき、判定区域に結合された可視標識cに対しての可視標識aの存在度合いが分析対象物の濃度に依存し、試料液中の分析対象物がいかなる濃度範囲にあっても、判定区域に可視的信号が得られる。
【0056】
この発明をイムノアッセイを例に具体的に説明する。イムノアッセイにおいて互いに異なる可視的信号を有する可視標識a及び可視標識cによってそれぞれ標識化された標識a化マウス由来抗体と標識c化ヤギ由来抗体が試薬区域に配置されており、また判定区域には前記ヤギ由来抗体と反応する抗ヤギIgG抗体、及び抗原または変性抗原が固定化されている。そこで試薬区域側へ試料液を添加すると、標識a化マウス由来抗体及び標識c化ヤギ由来抗体が可動性となり、判定区域へ浸潤展開する。標識a化マウス由来抗体は試料液中の抗原及び判定区域に固定化された抗原または変性抗原とで競合反応する。その結果、試料液中の抗原濃度に応じて標識a化マウス由来抗体−固定化抗原(または変性抗原)が判定区域に形成される。
【0057】
一方、同時に可動性となった標識c化ヤギ由来抗体は試料液中の抗原の存在の有無に拘わらず、判定区域に固定化された抗ヤギIgG抗体と抗原抗体反応が起こり、複合体(標識c化ヤギ由来抗体−固定化抗ヤギIgG抗体)が判定区域に形成される。その際、試料液中の抗原濃度が低い場合には、判定区域に標識a化マウス由来抗体−固定化抗原が優位に形成される。これに対し、試料液中の抗原濃度が高い場合には、標識a化マウス由来抗体−固定化抗原がほとんど形成されない。その結果、抗原濃度が高くなるにつれ判定区域の可視標識a量が少なくなる。
【0058】
このときには、同時に試料液中の抗原濃度に拘わらず、標識c化ヤギ由来抗体−固定化抗ヤギIgG抗体が形成される。ここで各々の可視標識a及び可視標識cが互いに異なる可視的信号を有するので、その結果、試料液中の抗原濃度が低い場合には判定区域の可視的信号が可視標識aと可視標識cの重なった可視的信号となり、抗原濃度が高い場合には判定区域の可視的信号が可視標識cの可視的信号となって現れる。より具体的には可視標識aを黄色の可視信号、可視標識cを青色の可視信号とした場合、判定区域では、抗原濃度が低い側で黄色と青色の混合により緑色となり、抗原濃度が高くなるにつれて青色が現れる。その結果、色の判別によって抗原濃度を知ることが容易となる。
【0059】
以上の例では、可視標識cをヤギ由来抗体と抗ヤギIgG抗体の組み合わせを用いて「独立」して判定区域に生じさせる方法であるが、これもまたいくつかの改変が可能である。
【0060】
その改変の一つは、例えば抗体−抗原複合体とその抗原に特異的な抗体を組み合わせて用いる方法であり、これによっても同様の結果が得られる。またこのような組み合わせの方法を用いなくても、試料液の添加によって判定区域が湿潤された際に前記可視標識bと同様の可視的信号を発するような物質を判定区域にあらかじめ固定化することによっても同様の結果が得られる。この例としては、試料液が判定区域に浸潤した際に無色から有色に変化するpH指示薬などがある。これらは反応の本質的部分である前記第1抗体と試料液中の抗原、そして固定化変性抗原の三者の競合反応に関わらないようにしたものであり、判定区域に競合反応物の捕捉及び試料液によるpH指示薬の呈色を同時に示す手段を設けたものである。その結果、上記発明と同様の結果が得られる。
【0061】
また上記の例では、試験者が試料液を試薬区域側から添加することによって、判定区域までの間で競合反応、及び前記反応とは独立した可視的信号を発する前記複合体の捕捉、あるいはpH指示薬のような呈色物質によって可視的信号のない判定区域に可視的信号が現れるものであるが、更なる改変例として、前記二つの相異なる可視的信号のうちの一方の可視的信号を試験者が試料液を添加する前から、即ち未使用状態で最初から存在させておき、試験を実施することによって反応を開始し、他方の可視的信号がすでに存在させてある可視的信号に重なるという方法もある。
【0062】
例えばその1つは、以上に記載された例において、例えば標識c化ヤギ由来抗体−抗ヤギIgG抗体複合体をあらかじめ判定区域に固定化する方法、あるいは前記標識c化ヤギ由来抗体を判定区域にあらかじめ固定化する方法、さらには可視標識cを直接、同様に固定化する方法などがある。これらによっても、可視的信号のない判定区域に可視的信号が現れるものと同様の結果が得られる。
【0063】
本発明における分析対象物としては、例えばタンパク質、糖タンパク質、抗体、酵素、糖類、細胞、細菌及びウイルス、薬物、化学物質などが挙げられる。
【0064】
上記分析対象物のなかでも、ホルモン、生化学的メッセンジャー、ステロイド、薬物、薬物代謝産物、ポリペプチド、ビタミン、アルカロイドなどが含まれ、特に甲状腺ホルモン、コルチゾール、エストロゲン、プロゲステロンまたはテストステロンなどのハプテンが挙げられる。
【0065】
本発明における特異結合物質は、ある特定の構造を有する物質に特異的に結合する物質であって、抗原、抗体、核酸配列断片、エフェクター分子、レセプター分子、酵素とそのインヒビター、アビジン、ビオチン、糖鎖化合物、レクチンなどが挙げられる。
【0066】
本発明における信号とは、可視域において目視により確認される色である。また、本発明における結合とは、物理的吸着及び化学結合におけるイオン結合、共有結合、配位結合などをいう。
【0067】
本発明における粒状標識物質としては、それ自身が信号を有するものとして金コロイド、セレニウムコロイド等の金属コロイド、着色した脂質小胞(リボソーム)や小胞などが挙げられる。またそれ自身信号を持たないものとして白色金属コロイド、シリカ粒子、白色ラテックス、脂質小胞(リボソーム)や小胞などがあり、これらは信号物質(各種染料、顔料、色素、蛍光色素など)を結合ないし封入することによって信号を有するものとなる。
【0068】
イムノアッセイ法に用いる分析装置は、ラテラルフロー方式で例示する場合、以下のような構造を含むものである。すなわち、試料液を一定量添加するための「試料液添加区域」、前記試料液により試薬が溶出する「試薬区域」、「展開区域」及び「判定区域」、そして試料液を吸収するための「吸収区域」を備える。そして、試料液添加区域に添加された試料液が展開区域を経て判定区域に浸潤するように試料液添加区域、試薬区域、展開区域、判定区域及び吸収区域が順に配設されている。
【0069】
判定区域には標識化特異結合物質に対して特異的に結合する特異結合物質が固定化されており、試薬区域には試料液によって溶出流動可能な状態で標識化特異結合物質及び標識化分析対象物もしくはその変性体が分離状態で保持される。
【0070】
試料液添加区域に試料液が添加されると試料液の浸潤が始まり、試料液が試薬区域に担持されている標識化分析対象物もしくはその変性体及び標識化特異結合物質と混合することによって、試料液中の分析対象物濃度に依存して「標識化特異結合物質−分析対象物」複合体あるいは「標識化特異結合物質−標識化分析対象物もしくはその変性体」複合体が形成される。形成された複合体は試料液とともに展開区域を流れ、判定区域に達し、そこで固定化特異結合物質に捕捉される。その結果、「標識化特異結合物質−分析対象物−固定化特異結合物質」複合体あるいは「標識化特異結合物質−標識化分析対象物もしくはその変性体−固定化特異結合物質」複合体が判定区域に形成される。従ってこの捕捉された「標識化特異結合物質−分析対象物−固定化特異結合物質」複合体及び「標識化特異結合物質−標識化分析対象物もしくはその変性体−固定化特異結合物質」複合体中の標識物量を測定することにより試料液中の分析対象物の濃度を測定することができる。
【0071】
本発明の別の装置としては、以下のような構造を含むものである。すなわち、「試料液添加区域」、「試薬区域」、「展開区域」、「判定区域」及び「吸収区域」を上記と同様に備え、試料液添加区域に添加された試料液が展開区域を経て判定区域に浸潤するように試料液添加区域、試薬区域、展開区域、判定区域及び吸収区域が順に配設されるものである。
【0072】
試薬区域には標識化特異結合物質Aと標識化特異結合物質Bが含まれており、判定区域には前記特異結合物質Aと結合する分析対象物もしくはその変性体及び前記特異結合物質Bと結合する特異結合物質Cが固定化されている。ここで、標識化特異結合物質Bと特異結合物質Cは、標識化特異結合物質Aと分析対象物もしくはその変性体の競合反応系には関与せず独立して信号を発する。この場合は上述した分析装置とは異なり、試薬区域内における2種の標識試薬を分離する必要がない。
【0073】
試料液添加区域に試料液が添加されると試料液の浸潤が始まり、試料液が試薬区域に担持されている標識化特異結合物質A及び標識化特異結合物質Bと混合することによって、一方では、試料液中に分析対象物の存在によって試料液とともに展開区域を流れ、判定区域で競合反応物が得られる。他方では、前記競合反応とは独立しており、なおかつ試料液中の分析対象物の有無に拘わらず、「標識化特異結合物質B−固定化特異結合物質C」複合体が形成され、可視的信号を発する。その結果、試料液の分析対象物の濃度に応じて競合反応物からの可視的信号と前記独立した可視的信号との重なり度合いが変化し分析対象物の濃度を測定することができる。
【0074】
展開区域及び判定区域に用いられる材料は親水性材料であり、この親水性材料としては試料液などの水溶液を容易に吸収する材料であればよく、分析対象物あるいは標識化分析対象物もしくはその変性体と標識化特異結合物質や固定化された特異結合物質とが充分な反応を行うための時間を確保、調整できる材料であればよい。具体的にはニトロセルロース、ナイロン、セルロースアセテートなどの多孔質メンブランや架橋デキストラン、セルロース濾紙、ガラス繊維紙等が挙げられる。そのなかでも、ニトロセルロースはタンパク質などを吸着し、固定化が容易である。また、セルロース濾紙などでは、事前に架橋剤などによって活性化することによって容易に固定できる。
【0075】
試料液添加区域、試薬区域及び吸収区域にも親水性材料が用いられ、この親水性材料としては上記と同様の材料が挙げられるが、試料液中の分析対象物や本発明に使用できうる試薬類を吸着したりするような材料は好ましくない。しかしながら、これらの吸着等に対しては、ポリビニルアルコールや他のマスキング剤で事前に処理することによって防止できるものである。
【0076】
図1及び図2は、本発明に用いるラテラルフロー方式の装置の試験片を示している。
【0077】
図1に示すように、試験片11は各部材が粘着面を片面に有する台紙1上に固定されている。判定紙3の下端(上流端)には全体にわたって液体が毛管的に浸潤連絡するようにわずかの重なりを持って試薬紙5が配設され、さらに試薬紙5に部分的に被さるように別の試薬紙6が配設されている。さらに、試薬紙6に部分的に被さるように試料液添加部材7が配設されている。
【0078】
一方、判定紙3の頂部(下流端)には同じく液体が毛管的に浸潤連絡するようにわずかの重なりを持って吸収体2が配設されている。吸収体2は試料液添加部材7から毛細管現象により試薬紙6、試薬紙5ついで判定紙3を経て流れてくる試料液の吸収ポンプとして作用する。試薬紙5には標識a化第1特異結合物質が含まれており、試薬紙6には標識b化分析対象物もしくはその変性体が含まれている。これらの試薬は試料液を添加することにより、判定紙3を通って吸収体2へ自由に移動することができる。判定紙3内の判定ライン部4では前記第1特異結合物質に特異的に結合する第2特異結合物質10が固定化されている。
【0079】
図2は試験片11を分析に使用した結果を示している。また、図3,4,5は判定ライン部4における結果を模式的に示している。
【0080】
図1において試験片11の試料液添加部材7の一端を分析対象物を含有する可能性のある試料液(不図示)と接触させる。試料液添加部材7に吸収された試料液は瞬時に試薬紙6ついで試薬紙5に浸潤し、これに伴いそれぞれに担持された標識b化分析対象物もしくはその変性体8及び標識a化第1特異結合物質9は試料液中に溶解または分散して試料液とともに判定紙3へ向かって移動する。
【0081】
試料液の中に分析対象物が存在する場合、判定紙3へ向かって移動する間に標識a化第1特異結合物質9に対して分析対象物と標識b化分析対象物もしくはその変性体8とが競合し、競合反応物が形成される。上記競合反応物は、判定ライン部4に到達すると、そこに固定化されている第2特異結合物質10に捕捉され、標識a及び標識bの存在度合いで、判定ライン部4にライン状の着色が確認される。
【0082】
ここで、上記競合反応物としては標識a化第1特異結合物質−分析対象物あるいは標識a化第1特異結合物質−標識b化分析対象物もしくはその変性体が形成されている。例えば、標識aとして青色ラテックス粒子を、標識bとして赤色ラテックス粒子を用いると、試料液中の分析対象物濃度が低い場合、判定ライン部4には「標識a化第1特異結合物質(青色)−標識b化分析対象物もしくはその変性体(赤色)」の複合体に由来する紫色のラインが現れ、模式的に示す図3のようになる。
【0083】
逆に試料液中の分析対象物濃度が高い場合には、判定ライン部4には「標識a化第1特異結合物質(青色)−分析対象物」の複合体に由来する青色のラインが現れ、模式的に示す図5のようになる。
【0084】
試料液中の分析対象物が中程度の量で存在する場合には、判定ライン部4には「標識a化第1特異結合物質(青色)−標識b化分析対象物もしくはその変性体(赤色)」の複合体と「標識a化第1特異結合物質(青色)−分析対象物」の複合体が混在し、それらの混合色で青色から紫色のラインとなり、模式的に示す図4のようになる。
【0085】
図6〜図8は、第2特異結合物質10に代えて第3特異結合物質25と第4特異結合物質26を用いた場合の模式図である。図9〜図11は、標識a化第1特異結合物質9をあらかじめ判定区域4に固定化した場合の模式図である。
【0086】
図12及び図13は、もう一つの本発明による分析に使用する典型的なラテラルフロー方式の装置の試験片であり、その動作原理を示している。
【0087】
図12に示すように、試験片23は各部材が粘着面を片面に有する台紙13上に固定されている。判定紙15の下端には全体にわたって液体が毛管的に浸潤連絡するようにわずかの重なりを持って試薬紙17が配設され、さらに試薬紙17に部分的に被さるように試料液添加部材18が配設されている。
【0088】
一方、判定紙15の頂部には同じく液体が毛管的に浸潤連絡するようにわずかの重なりを持って吸収体14が配設されている。吸収体14は試料液添加部材18から毛細管現象により試薬紙17ついで判定紙15を経て流れてくる試料液の吸収材として作用する。試薬紙17には標識a化第1特異結合物質及び標識c化第5抗体−抗原複合体が含まれている。
【0089】
これらの試薬は試料液を添加することにより判定紙15を通って吸収体14へ自由に移動することができる。判定紙15内の判定ライン部16では前記標識a化第1特異結合物質に対して特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が固定化されており、また標識c化第5抗体−抗原複合体の抗原とのみ結合する第6抗体も固定化されている。
【0090】
図13は試験片23を分析に使用した場合を示している。図14〜図16はその結果を模式的に示している。
【0091】
図12において試験片23の試料液添加部材18の一端を分析対象物を含有する可能性のある試料液(不図示)と接触させる。試料液添加部材18に吸収された試料液は瞬時に試薬紙17に浸潤し、そこに混合して担持された標識a化第1特異結合物質19及び標識c化第5抗体−抗原複合体20は試料液中に溶解または分散して試料液とともに判定紙15へ向かって移動する。
【0092】
試料液の中に分析対象物が存在する場合、判定紙15へ向かって移動する間に標識a化第1特異結合物質19と結合することができる。判定ライン部16に到達すると、その結合した複合体(標識a化第1特異結合物質−分析対象物)は判定ライン部16に固定された分析対象物もしくはその変性体21と結合せず、標識aに由来する着色ラインは確認されない。
【0093】
逆に試料液中に分析対象物が存在しない場合には、標識a化第1特異結合物質は判定ライン部16の固定化分析対象物もしくはその変性体と結合するため、判定ライン部16には標識aに由来する着色ラインが確認される。一方、同時に移動してきた標識c化第5抗体−抗原複合体20は判定ライン部16に固定化された第6抗体22と結合して複合体(標識c化第5抗体−抗原−固定化第6抗体複合体)を形成し、その結果、試料液中の分析対象物の有無に拘わらず、標識cに由来する着色ラインが確認される。
【0094】
例えば、標識aに赤色ラテックス粒子を、標識cに青色ラテックス粒子を用いると、試料中に分析対象物が存在しない場合、判定ライン部16には「標識a化第1特異結合物質(赤色)」及び「標識c化第5抗体(青色)−抗原」複合体に由来する紫色のラインが現れ、模式的に示す図14のようになる。逆に試料液中の分析対象物濃度が高い場合には、判定ライン部16には「標識c化第5抗体(青色)−抗原」複合体に由来する青色のラインのみが現れ、模式的に示す図16のようになる。試料液中の分析対象物が中程度の量で存在する場合には、判定ライン部16に「標識a化第1特異結合物質(赤色)」と「標識c化第1抗体(青色)−抗原」複合体が混在し、それらの混合色で青色から紫色のラインとなり、模式的に示す図15のようになる。
【0095】
図17〜図19は、あらかじめ独立してpHインジケーター28などを固定化させた場合の模式図である。
【0096】
図20は、請求項1〜請求項5に対応した総括を図示するものであり、「No1」は請求項1に、「No2」は請求項2に、「No3」は請求項3及び4に、「No4」は請求項3に、「No5」は請求項5にそれぞれ対応している。
【0097】
図21は、請求項6〜請求項10に対応した総括を図示するものであり、「No6」は請求項6及び7に、「No7」は請求項8及び9に、「No8」は請求項8及び10に、「No9」は請求項6及び10に対応している。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0099】
[実施例1]
この実施例1では、エストロゲンの半定量測定を行うものであり、以下の工程を有している。
【0100】
(1−a)エストロン−17−O(カルボキシメチル)オキシムの製造
刊行物「生体の科学 38(5)376−378(田中健志著)」記載の方法に従って合成した。
【0101】
(1−b)エストロン−BSA結合物の製造
刊行物「生体の科学 38(5)376−378(田中健志著)」記載の方法に従って合成した。
【0102】
(1−c)赤色ラテックス標識化エストロン−BSAの製造
約0.1μmの粒径を有する赤色ラテックス懸濁液(固形分重量10%)0.1mlをマイクロチューブにとり、25mM MES(pH6.1)緩衝液0.9mlを加えて希釈する。マイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離を行い、沈下した粒子をチューブに残して上澄み液をデカントにより廃棄する。再び25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて粒子を分散させる。この洗浄操作をさらに3回繰り返す。最終的に得られた沈下粒子は、25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて分散させ約1%重量固形分を有するラテックス粒子懸濁液を得る。
【0103】
この懸濁液を上記(1−b)で得られたエストロン−BSA700μgと混合し、混合した懸濁液を室温で4時間ロータリーミキサーにより攪拌する。この懸濁液をマイクロ遠心分離機にて6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより捨てる。得られた沈下ラテックス粒子を0.5%重量で牛血清アルブミン(BSA)を含む25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlに分散し、室温下で1時間ロータリーミキサーで攪拌する。その懸濁液をマイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより廃棄し、沈下した粒子を上記の洗浄方法で25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを用いて3回の洗浄操作を行う。最後に0.5%重量のBSAを含む25mM MES(pH6.1)緩衝液中に分散させ、使用するまで4℃で保存する。
【0104】
(1−d)青色ラテックス標識化抗エストラジオール抗体の製造
約0.4μmの粒径を有する青色ラテックス懸濁液(固形分重量10%)0.1mlをマイクロチューブにとり、25mM MES(pH6.1)緩衝液0.9mlを加えて希釈する。マイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離を行い、沈下した粒子をチューブに残して上澄み液をデカントにより廃棄する。再び25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて粒子を分散させる。この洗浄操作をさらに3回繰り返す。最終的に得られた沈下粒子は、25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて分散させ約1%重量固形分を有するラテックス粒子懸濁液を得る。この懸濁液を抗エストラジオール抗体300μgと混合し、混合した懸濁液を室温で4時間ロータリーミキサーにより攪拌する。この懸濁液をマイクロ遠心分離機にて6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより廃棄する。
【0105】
得られた沈下ラテックス粒子を0.5%重量で牛血清アルブミンを含む25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlに分散し、室温下で1時間ロータリーミキサーで攪拌する。その懸濁液をマイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより廃棄し、沈下した粒子を上記の洗浄方法で25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを用いて3回の洗浄操作を行う。最後に0.5%重量のBSAを含む25mM MES(pH6.1)緩衝液中に分散させ、使用するまで4℃で保存する。
【0106】
(1−e)試薬紙5、試薬紙6の作成
上記(1−c)及び(1−d)で得られた赤色ラテックス標識化エストロン−BSA及び青色ラテックス標識化抗エストラジオール抗体をそれぞれ1重量%のBSAと2重量%のショ糖とを含む100mM トリス緩衝液を用いて希釈する。このとき、赤色ラテックス標識化エストロン−BSA及び青色ラテックス標識化抗エストラジオール抗体がともに10容量%となるように希釈する。得られた溶液1mlを10×200mmの試薬紙用シート(Whatman社製、F075−17)に塗布し、80℃の熱風乾燥器中で5分間乾燥させ、使用するまで室温で乾燥剤入りのバッグに保存する。
【0107】
(1−f)判定紙3の作成
25×200mmのWhatman社製ニトロセルロースメンブラン(PuraBind、A−RP、孔径8μm)を机上に固定し、その一端から10mmの位置に抗マウスIgG抗体(1mg/ml)溶液をディスペンサーを用いて塗布幅が約1.0mmのライン状となるように塗布する。塗布後、80℃の熱風乾燥器中で5分間乾燥させ、室温で乾燥剤入りのバッグに使用するまで保存する。これにより図1における判定ライン部4が形成された判定紙3が得られる。
【0108】
(1−g)試験片及び分析装置の作製
片面が粘着加工された台紙1(厚み250μm、縦125mm、横180mm、リンテック社製)を粘着面を上にして机上に固定し、その一端から30mmの位置に、その一端と平行に判定紙3を貼り合わせる。続いて、その一端から22mmの位置に、その一端と平行に試薬紙5を貼り合わせる。この貼り合わせにより、判定紙3と試薬紙5とが約2mmの重なりを有して連設する。次に、その一端から14mmの位置に、その一端と平行に試薬紙6を貼り合わせる。この貼り合わせにより、試薬紙5と試薬紙6とが約2mmの重なりを有して連設する。
【0109】
さらに一端を合わせて、ベンリーゼ(旭化成社製)からなる縦30mm、横200mmの試料液添加部材7を試薬紙6を一部覆うように貼り合わせる。また台紙1の他端から32mmの位置に、その他端と平行に、GF−F(Whatman社製)からなる縦40mm、横200mmのガラス繊維濾紙を貼り合わせて吸収体2とする。ここでも判定紙3と吸収体2とが約2mmの重なりをもって連設する。さらにその他端を合わせて、縦110mm、横200mmの透明エステルフィルム(リンテック社製)からなる保護カバー12を粘着面側を下にして貼り合わせる。この貼り合わせた積層シートを各部材を直角に横断するように、幅6mmの間隔でロータリーカッターによりストリップ状に順次切断する。このことによって約28本の分析装置が完成し、分析試験で使用するまで室温で乾燥剤入りのバッグに保存する。
【0110】
(1−h)分析試験方法
試料液として生理食塩水溶液にて所定の濃度(0〜5000ng/ml)に希釈したエストラジオール−17−グルクロナイド(シグマ社製、以下E217Gとする)溶液を準備した。上述によって作製した分析装置を水平な机上に置き、試料液添加部材7の一端から各濃度のE217G溶液をマイクロピペットで100μlずつ添加後、判定ライン部4での発色の色調を観察した。結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示すように、0ng/mlで判定ライン部は赤紫色を示し、100ng/ml、500ng/ml、2500ng/mlの順にE217G濃度が高くなるにつれて、判定ライン部の赤の色調が薄くなり、結果として全体的に赤紫色から青色へと色調の変化が観察された。
【0113】
[実施例2]
この実施例では、エストロゲンの半定量測定を行うものである。
【0114】
(2−a)エストロン−17−O(カルボキシメチル)オキシムの製造
実施例1で製造したものを使用した。
【0115】
(2−b)エストロン−BSA結合物の製造
実施例1で製造したものを使用した。
【0116】
(2−c)金コロイド標識化抗エストラジオール抗体の製造
イムノアッセイに用いる金コロイド粒子は様々な粒子径のものが市販されており、また当業者においても容易に製造することができる。
【0117】
40nmの金コロイドを100mMの炭酸カリウム水溶液でpHを6.0に調節し、その100mlへ抗エストラジオール抗体2mlを攪拌しながら添加する。その混合物をさらに5分間ゆっくり攪拌する。続いてカゼイン5mlをその混合物に添加して同様に5分間ゆっくり攪拌する。得られた混合物は4℃で45分間、5500Gの遠心分離を行って精製する。沈下した金コロイド標識化抗エストラジオール抗体のペレットを蒸留水で再懸濁し5mlとし、使用するまで4℃で保存する。
【0118】
(2−d)青色ラテックス標識化抗β−hCGマウスモノクローナル抗体の製造
約0.3μmの粒径を有する青色ラテックス懸濁液(固形分重量10%)0.1mlをマイクロチューブにとり、25mM MES(pH6.1)緩衝液0.9mlを加えて希釈する。マイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離を行い、沈下した粒子をチューブに残して上澄み液をデカントにより廃棄する。再び25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて粒子を分散させる。この洗浄操作をさらに3回繰り返す。最終的に得られた沈下粒子は、25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて分散させ約1%重量固形分を有するラテックス粒子懸濁液を得る。この懸濁液を抗β−hCGマウスモノクローナル抗体700μgと混合し、混合した懸濁液を室温で4時間ロータリーミキサーにより攪拌する。この懸濁液をマイクロ遠心分離機にて6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより捨てる。
【0119】
得られた沈下ラテックス粒子を0.5%重量で牛血清アルブミンを含む25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlに分散し、室温下で1時間ロータリーミキサーで攪拌する。その懸濁液をマイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより廃棄し、沈下した粒子を上記の洗浄方法で25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを用いて3回の洗浄操作を行う。最後に0.5%重量のBSAを含む25mM MES(pH6.1)緩衝液中に分散させ、使用するまで4℃で保存する。
【0120】
(2−e)「青色ラテックス標識化β−hCGマウスモノクローナル抗体−hCG」複合体の製造
500IU hCG溶液を1.5mlをマイクロチューブにとり、上記(2−d)で得られた青色ラテックス標識化β−hCGマウスモノクローナル抗体を100μl加え、懸濁する。この懸濁液を室温で30分間ロータリーミキサーにより攪拌する。この懸濁液をマイクロ遠心分離機にて12000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより捨てる。得られた沈下粒子を上記の洗浄方法で20mM PB(pH7.4)緩衝液1.0mlを用いて3回の洗浄操作を行う。最後に0.5%重量のBSAを含む25mM HEPES(pH7.0)緩衝液中に分散させ、使用するまで4℃で保存する。
【0121】
(2−f)試薬紙17の作成
上記(2−c)及び(2−e)で得られた金コロイド標識化抗エストラジオール抗体及び青色ラテックス標識化β−hCGマウスモノクローナル抗体−hCG複合体を1重量%のBSAと2重量%のショ糖とを含む100mM トリス緩衝液を用いて希釈する。このとき、金コロイド標識化抗エストラジオール抗体及び「青色ラテックス標識化β−hCGマウスモノクローナル抗体−hCG」複合体がともに10容量%となるように希釈する。得られた溶液1mlを10×200mmの試薬紙用シート(Whatman社製、F075−17)に塗布し、80℃の熱風乾燥器中で5分間乾燥させ、使用するまで室温で乾燥剤入りのバッグに保存する。
【0122】
(2−g)判定紙15の作成
25×200mmのWhatman社製ニトロセルロースメンブラン(PuraBind、A−RP、孔径8μm)を机上に固定し、その一端から10mmの位置にβ−hCGマウスモノクローナル抗体溶液とエストロン−BSA溶液の混合溶液(0.5mg/ml)をディスペンサーを用いて塗布幅が約1.0mmのライン状となるように塗布する。塗布後、80℃の熱風乾燥器中で5分間乾燥させ、室温で乾燥剤入りのバッグに使用するまで保存する。これにより図12における判定ライン部16が形成された判定紙15が得られる。
【0123】
(2−h)試験片及び分析装置の作成
片面が粘着加工された台紙13(厚み250μm、縦125mm、横180mm、リンテック社製)を粘着面を上にして机上に固定し、その一端から30mmの位置に、その一端と平行に判定紙15を貼り合わせる。続いて、その一端から22mmの位置に、その一端と平行に試薬紙17を貼り合わせる。この貼り合わせにより、判定紙15と試薬紙17とが約2mmの重なりを有して連設する。さらに一端を合わせて、ベンリーゼ(旭化成社製)からなる縦30mm、横200mmの試料液添加部材18を試薬紙17を一部覆うように貼り合わせる。また台紙13の他端から32mmの位置に、その他端と平行に、GF−F(Whatman社製)からなる縦40mm、横200mmのガラス繊維濾紙を貼り合わせて吸収体14とする。ここでも判定紙15と吸収体14とが約2mmの重なりをもって連設する。さらにその他端を合わせて、縦110mm、横200mmの透明エステルフィルム(リンテック社製)からなる保護カバー24を粘着面側を下にして貼り合わせる。この貼り合わせた積層シートを各部材を直角に横断するように、幅6mmの間隔でロータリーカッターによりストリップ状に順次切断する。このことによって約28本の分析装置が完成し、分析試験で使用するまで室温で乾燥剤入りのバッグに保存する。
【0124】
(2−i)分析試験方法
試料液として生理食塩水溶液にて所定の濃度(0〜5000ng/ml)に希釈したE217G溶液を準備した。上述によって作製した分析装置を水平な机上に置き、試料液添加部材18の一端から各濃度のE217G溶液をマイクロピペットで100μlずつ添加後、判定ライン部16での発色の色調を観察した。結果を表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
表2に示すように、0ng/mlで判定ライン部は赤紫色を示し、10ng/ml、50ng/ml、250ng/ml、500ng/ml、1000ng/mlの順にE217G濃度が高くなるにつれて、判定ライン部の赤の色調が薄くなり、結果として全体的に赤紫色から青色へと色調の変化が観察された。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の一実施形態の分析装置の斜視図である。
【図2】図1の分析装置を分析に使用した結果を示す斜視図である。
【図3】図1の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図4】図1の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図5】図1の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図6】第3特異結合物質及び第4特異結合物質を用いた場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図7】第3特異結合物質及び第4特異結合物質を用いた場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図8】第3特異結合物質及び第4特異結合物質を用いた場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図9】標識a化第1特異結合物質を判定区域に固定化した場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図10】標識a化第1特異結合物質を判定区域に固定化した場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図11】標識a化第1特異結合物質を判定区域に固定化した場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図12】本発明の別の実施の形態の分析装置の斜視図である。
【図13】図12の分析装置を分析に使用した結果を示す斜視図である。
【図14】図12の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図15】図12の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図16】図12の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図17】判定区域にpHインジケータを固定化させた場合の模式図である。
【図18】判定区域にpHインジケータを固定化させた場合の模式図である。
【図19】判定区域にpHインジケータを固定化させた場合の模式図である。
【図20】本発明の総括を示す模式図である。
【図21】本発明の別の総括を示す模式図である。
【符号の説明】
【0128】
1,13 台紙
2,14 吸収体
3,15 判定紙
4,16 判定ライン部
5,17 試薬紙
6 試薬紙
7,18 試料液添加部材
8 標識b化分析対象物もしくはその変性体
9,19 標識a化第1特異結合物質
10 第2特異結合物質
11,23 試験片
12,24 保護カバー
20 標識c化第5抗体−抗原複合体
21 分析対象物もしくは変性体
22 第6抗体
25 第3特異結合物質
26 第4特異結合物質
27 標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質
28 pHインジケーター
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマト法を用いるための分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿等の生体試料中に含まれる微量物質の定性または定量(半定量)方法として、その感度の高さから免疫学的測定方法が汎用されている。その手法のうち、クロマトグラフィーを用いたいわゆるイムノクロマト法は、操作が簡単であり、検査に要する時間も短いため、現在多くの場合、例えば病院における臨床検査及び研究室における検定試験等に広く使われている。
【0003】
このイムノクロマト法を用いた装置としては、メンブラン等の多孔質膜を利用し、試料や試薬をその膜の面に対して垂直に濾過形式で流動させるフロースルー方式や、膜の面に沿って一端から他端へ流動させるラテラルフロー方式がある。これらは操作が簡便であり、分析に要する時間も短いことから一般的な検査として普及している。
【0004】
最も一般的なイムノクロマト法における分析対象物(例えば抗原など)の検出法としては、分析対象物に対し種々の標識を付した特異結合物質(例えば抗体など)をクロマト材上で反応させて分析対象物と標識化特異結合物質との複合体(例えば、抗体−抗原複合体)を形成させ、これを種々の手段により確認(検出)することが行われる。この場合、用いられる標識物質としては、放射性同位体元素、酵素、金属ゾル、非金属ゾル、着色ラテックス、染料、顔料、化学発光物質、蛍光物質等がある。
【0005】
現在、イムノクロマト法において主に普及している検出原理は、サンドイッチ法である。このサンドイッチ法は、分析対象物に対する特異結合物質をクロマト材上に固定化し、試料液中の分析対象物と標識化特異結合物質を接触させる方法である。その際、固定化特異結合物質とそれに結合した分析対象物を挟んで標識化結合物質が結合するため、試料液中の分析対象物の量が多ければ多いほど標識化特異結合物質が多く結合する。従って、標識化特異結合物質の結合量が分析対象物量の直接的な尺度となっている。例えば、着色標識物質を用いた場合においては、分析対象物の量が多ければ多いほど着色が濃くなるものである。
【0006】
しかしながら、分析対象物成分のうち、炎症マーカーであるC反応性蛋白質(CRP)、血清アミロイドA、アレルギー症状の指標となるIgE、腎障害の指標となる尿中のアルブミン等の通常低濃度であるが異常時には非常に高濃度まで広く濃度範囲が変動するダイナミックレンジの広い成分の測定においては、試料液中の分析対象物の濃度が試薬の測定濃度範囲を大きく上回っている場合、分析対象物過剰により前記サンドイッチ複合体形成が抑制されるため、見かけ上の測定値が低くなり、その濃度が正常値の範囲内であるような誤った測定値を示唆することがある。この現象はフック現象又はプロゾーン現象と称されるものであり、サンドイッチ法の原理を用いた測定系においては大きな問題となっている。
【0007】
特開昭59−23251号公報には、液層中に存在する抗原と結合性のある第1結合物質、標識された第3結合物質及び第1結合物質と結合性のある第2結合物質を固相化抗体として用いた測定試薬キットが記載されている。これにより、あらゆる測定項目に対応した固相化抗体とするものである。
【0008】
しかしながら、上記特開昭59−23251号公報は、サンドイッチ法に限定された方法であり、検査室において免疫化学的に測定される全ての項目に適用することはできないものであり、例えばT3、T4等の甲状腺ホルモン、コルチゾール、エストラジオール、ジギトキシンなどのハプテンの測定には適していない。
【0009】
このようにサンドイッチ法は、2つの異なる抗体などの特異結合物質に対する2つの異なる結合部位を有している分析対象物の測定に適している。しかしながら、反面、その2種の抗体の準備及び作製等において多大な労力を要するという欠点を持ち合わせるものである。
【0010】
一方、検出原理のうち競合法として知られる測定方法は、分析対象物に対する特異結合物質をクロマト材上に固定化し、試料液中の分析対象物と標識化した分析対象物もしくはその変性体を接触させるものである。その結果、試料液中に存在する遊離状態の分析対象物と標識化分析対象物もしくはその変性体が競合し、標識化分析対象物もしくはその変性体と固定化特異結合物質との複合体形成反応(例えば抗原−抗体反応など)を阻害することにより試料液中の分析対象物を測定するようになっている。このことから、競合法では、固定化物質に対する標識物質の結合量が測定物質量の間接的な尺度となる。競合法はその測定原理から、仮に試料液中に含まれる測定対象抗原の濃度が測定の上限濃度を大きく超過した場合でも複合体形成阻害が減弱されないため、高い抗原濃度が低値であるかのような誤った測定値を与えることがないという特徴を有している。
【0011】
競合法を用いたイムノアッセイ法では、分析対象物の定性もしくは定量(半定量)を着色標識による着色の有無により判定を行っている点はサンドイッチ法と同様である。しかし、結果として着色した場合は分析対象物が検出感度以下であり、着色しない場合は検出感度以上の濃度を有しているという判定を行う点でサンドイッチ法とは異なっている。つまり、競合法においては、着色標識化物質を用いた場合、分析対象物の量が多ければ多いほど着色は薄くなるものである。そのため、医療、特に臨床検査等の現場においてサンドイッチ法が主である現在において、競合法を用いたイムノアッセイ法での判定を採用することは混乱を招くおそれがある。
【0012】
競合法を用いたイムノアッセイ法としては、特開2001−281250号公報及び特開平7−325085号公報におけるフロースルータイプ及びストリップタイプ(ラテラルフロータイプ)が開示されている。
【0013】
特開2002−189027号公報には、複数の異なる結合親和性を有する標識抗体の組み合わせを用いた競合法による抗原検出法が開示されている。この方法は、試料中に存在する抗原の濃度が低い場合においては、親和性の高い抗体のみが抗原に結合し、抗原濃度が高くなるにつれて親和性が低い抗体の結合にも抗原が結合するというものであり、これによって従来の競合法に比べ、検出可能な抗原濃度範囲(測定範囲)が広がるとしている。
【0014】
特許第3424831号公報には、従来技術の競合的または非競合的な方法を兼ね備えた分析対象物の濃度を測定する方法が開示されている。この方法は、低濃度の試料を検出する際に最高の感度が達成される競合法と高濃度のものを検出する際に感度が適しているサンドイッチ法を組み合わせるものであり、これにより分析対象物を広範囲の濃度で測定できるものとしている。
【0015】
特開平8−54393号公報には、標識酵素の活性由来の信号による測定結果が分析対象物の量に正比例する競合法が記載されている。従来の競合法は標識化分析対象物の量が分析対象物の量に反比例するのに対し、この方法は競合反応において未反応であった標識化分析対象物の量を測定することにより、競合法でありながら標識物質の量が測定物質量の尺度として結果が得られる間接的方法となっている。しかしながら、反応し得なかった標識化分析対象物の量を測定した結果は、分析対象物の量を測定することを目的とした場合、直接的ではない。また、測定を行う上で、装置を複数使用する必要があり、簡便さに欠けるものとなっている。
【特許文献1】特開2002−189085号公報
【特許文献2】特許第3424831号公報
【特許文献3】特開平8−54393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のように、プロゾーン現象が問題となっているにも拘わらず、サンドイッチ法がイムノアッセイ法として依然主流であるのは、分析対象物の量が判定時に着色の強さと比例するためである。そこで、本発明の課題は、試料溶液の希釈が不要であり、かつプロゾーン現象の問題が生じないという競合法の特徴を生かしながら、サンドイッチ法と同等の判定を実施することが可能な分析装置及び分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載の発明の分析装置は、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬A及び試薬Bが前記試薬区域に分離状態で溶出流動可能に保持され、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Aに対する試料液中の分析対象物と試薬Bと間での競合反応により競合反応物が生成可能となっており、この競合反応物を捕捉する試薬Cが前記判定区域に固定化されており、試薬Cに捕捉された競合反応物からの可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬C;標識a化第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第1特異結合物質に特異的に結合可能な第2特異結合物質
【0018】
請求項2記載の発明の分析装置は、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬B及び試薬Dが前記試薬区域に分離状態で溶出流動可能に保持され、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Dに対する試料液中の分析対象物と試薬Bと間での競合反応により競合反応物が生成可能となっており、この競合反応物を捕捉する試薬Eが前記判定区域に固定化されており、試薬Eに捕捉された競合反応物からの可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする。
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬D;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質及び分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質
試薬E;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質
【0019】
請求項3記載の発明の分析装置は、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、可視標識を有する試薬Bが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、試薬Bと異なった可視標識を有する試薬Aが前記判定区域に直接的または間接的に固定されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬B及び試料液中の分析対象物の間での試薬Aへの競合的捕捉による可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の分析装置であって、前記判定区域に試薬Cが固定されており、前記試薬Aは試薬Cに結合されることにより判定区域に固定化されていることを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明の分析装置は、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、可視標識を有する試薬Bが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、前記判定区域に試薬Eが固定化されると共にこの試薬Eに試薬Dが固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬B及び試料液中の分析対象物の間での試薬Dへの競合的捕捉による可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする。
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬D;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質及び分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質
試薬E;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質
【0022】
請求項6記載の発明の分析装置は、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、試料液中の分析対象物と特異的に結合し、かつ可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質が試薬区域に溶出流動可能に保持され、この標識a化第1特異結合物質と特異的に結合可能な分析対象物もしくはその変性体が判定区域に固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴って試料液中の分析対象物及び判定区域中の分析対象物もしくはその変性体との間での前記標識a化第1特異結合物質に対する競合的捕捉と、この競合的捕捉と独立した可視的信号とが同時に判定区域に生成され、この独立した可視的信号と前記可視標識aとの重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の分析装置であって、試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬A及び試薬Fが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、前記判定区域に分析対象物もしくはその変性体と、試薬Fと結合可能な試薬Gが固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Fと試薬Gとの結合によって前記独立した可視的信号が生成可能となっていることを特徴する。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬F;第5特異結合物質が可視標識cによって標識された標識c化第5特異結合物質
試薬G;第5結合物質と相互に結合可能な第6結合物質
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の分析装置であって、前記独立した可視的信号が試料液の添加以前から判定区域に生じていることを特徴とする。
【0025】
請求項9記載の発明は、請求項6または8記載の分析装置であって、前記独立した可視的信号が判定区域に固定化された試薬Gと試薬Gに結合した試薬Fとによって生じていることを特徴とする。
【0026】
請求項10記載の発明は、請求項6または8記載の分析装置であって、前記独立した可視的信号が判定区域に固定化されたpH指示薬、色素、着色粒子または着色した小胞であることを特徴とする。
【0027】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置であって、前記試料液が、尿、血液、溶血血液、血漿、血清、唾液、汗及び涙液等の体液、池、河川及び工業用水等の水、その他食品、食物などからの分析対象物の抽出液であることを特徴とする。
【0028】
請求項12記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置であって、前記分析対象物が、ホルモン、生化学的メッセンジャー、ステロイド、薬物、薬物代謝産物、ポリペプチド、蛋白質、ビタミン、アルカロイド、単糖、二糖または多糖、ハプテンよりなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0029】
請求項13記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置であって、前記分析対象物が、甲状腺ホルモン、コルチゾール、エストロゲン、プロゲステロンまたはテストステロンからなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0030】
請求項14記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置であって、前記可視標識が、粒状標識、色素標識、酵素標識からなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0031】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の分析装置であって、前記粒状標識が、金コロイド、セレニウムコロイド等の金属コロイド、着色した脂質小胞(リボソーム)や小胞、着色ラテックスなどからなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0032】
請求項16記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載の分析装置であって、前記第1特異結合物質及び第2特異結合物質が抗原、抗体、受容体のいずれかであることを特徴とする。
【0033】
請求項17記載の発明は、請求項6,7のいずれか1項記載の分析装置であって、相互に結合可能な第5特異結合物質及び第6特異結合物質が、抗原、抗体、もしくはそれらの結合物の組み合わせからなることを特徴とする。
【0034】
請求項18記載の発明は、請求項6,7のいずれか1項記載の分析装置であって、前記第1特異結合物質がマウス由来抗体であって、相互に結合可能な第5特異結合物質及び第6特異結合物質がヤギ由来抗体及び抗ヤギウサギ由来抗体の組み合わせからなることを特徴とする。
【0035】
請求項19記載の発明の分析方法は、試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質からなる試薬A、及び標識a化第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が前記可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体からなる試薬Bを溶出流動可能に分離状態で保持する試薬区域と、前記標識a化第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第1特異結合物質に特異的に結合可能な第2特異結合物質からなる試薬Cを固定化した判定区域とを試料液が湿潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により試薬区域の標識a化第1特異結合物質と標識b化分析対象物もしくはその変性体が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、その間に試料液中の分析対象物の存在によって標識a化第1特異結合物質に対し、分析対象物と標識b化分析対象物もしくはその変性体とが競合反応し、その競合反応物が判定区域の第2特異結合物質に捕捉され、捕捉された競合反応物中の可視標識a及び可視標識bの重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって試料液中の分析対象物の濃度を検知することを特徴とする。
【0036】
請求項20記載の発明の分析方法は、試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質や分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質からなる試薬D、及び第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が前記可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された可動性の標識b化分析対象物もしくはその変性体からなる試薬Bを溶出流動可能に分離状態で保持する試薬区域と、前記第1特異結合物質の特異性を損なうことなく前記第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質からなる試薬Eを固定化した判定区域とを試料液が湿潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により、試薬区域の標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質と標識b化分析対象物もしくはその変性体が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、その間に試料液中の分析対象物の存在によって標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質に対し、分析対象物と、標識b化分析対象物もしくはその変性体とが競合反応し、その競合反応物が第3特異結合物質を介して判定区域の第4特異結合物質に捕捉され、捕捉された競合反応物中の可視標識a及び可視標識bの重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって試料液中の分析対象物の濃度を検知することを特徴とする。
【0037】
請求項21記載の発明の分析方法は、試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質を溶出流動可能に保持する試薬区域と、前記標識a化第1特異結合物質と特異的に結合しうる分析対象物もしくはその変性体を固定化した判定区域とを試料液が浸潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により試薬区域の標識a化第1特異結合物質が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、試料液中の分析対象物の存在によってその分析対象物と判定区域に固定化された前記分析対象物もしくはその変性体とが標識a化第1特異結合物質に対し競合捕捉される際に、競合捕捉とは独立した可視的信号が同時に判定区域に生じ、その区域での可視標識aと前記独立した可視的信号の重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって分析対象物の濃度を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、試料液の添加に伴って溶出して判定区域に流動した試薬の可視標識の重なり度合いあるいは可視標識とは独立した可視的信号の重なり度合いによって分析対象物の濃度を検知するため、プロゾーン現象の問題が生じないという競合法の特徴を生かし、かつサンドイッチ法と同等の判定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は特異結合アッセイにおいて、互いに異なる可視的信号を発する標識を用意し、一方を分析対象物もしくはその変性体と特異的に結合する第1特異結合物質に標識した標識a化第1特異結合物質と、他方の可視標識を前記分析対象物もしくはその変性物に標識した標識b化分析対象物もしくはその変性体を用い、何れの標識化物も試薬区域に分離して配置され、試料液による湿潤状態の際には可動性となるものであって、前記標識b化分析対象物もしくはその変性体(以下、標識b化分析対象物と称する)と試料液中の分析対象物とが競合して標識a化第1特異結合物質に反応し、その結果生じた競合反応物を判定区域で捕捉することを1つの特徴とする。更に前記判定区域に捕捉された競合反応物中の可視標識a及び可視標識bの存在度合いによって、試料液中の分析対象物がいかなる濃度範囲にあっても、判定区域に可視的信号が得られ、それが分析対象物の濃度に依存することも本発明の1つの特徴である。
【0040】
本発明をイムノアッセイを例に具体的に説明する。イムノアッセイにおいて互いに異なる可視的信号を有する標識によってそれぞれ標識化された標識a化第1抗体及び標識b化抗原がそれぞれ混合することなく分離して試薬区域に配置されている。この試薬区域へ試料液を添加すると、標識a化第1抗体及び標識b化抗原が可動性となり、試料液中の抗原の存在によって競合的に抗原抗体反応が起こり、2つの複合体(標識a化第1抗体−抗原、あるいは標識a化第1抗体−標識b化抗原)が形成される。
【0041】
そしてラテラルフロー方式の場合にあっては、これら複合体が展開下流の判定区域に固定化された前記第1抗体に特異的に結合する捕捉抗体により捕捉される。ここで捕捉抗体は上記の競合反応を妨害しない特異性を有するものである。その際、試料液中の抗原濃度が低い場合には、標識a化第1抗体−標識b化抗原複合体が優位に形成され、これが捕捉抗体に捕捉される。一方、試料液中の抗原濃度が高い場合には、標識a化第1抗体−抗原複合体が優位に形成され、これが捕捉抗体に捕捉される。
【0042】
ここで各々の標識a及び標識bが互いに異なる可視的信号を有するので、その結果、試料液中の抗原濃度が低い場合には判定区域の可視的信号が標識aと標識bの重なった可視的信号となり、抗原濃度が高い場合には判定区域の可視的信号が標識aの可視的信号となって現れる。
【0043】
具体的には例えば前記標識aが青色の可視的信号を有し、前記標識bが黄色の可視的信号を有する場合、試料液中の抗原濃度が低い場合には判定区域の可視的信号が標識aの青色と標識bの黄色の重なった可視的信号となり、緑色の可視的信号となって判定区域に現れる。逆に、抗原濃度が高い場合には判定区域の可視的信号が標識aの青色だけの可視的信号となって判定区域に現れる。その結果、試料液中の抗原濃度が低い側から高い側に相関して、判定区域が緑色から青色へと色調が変化する。このようにして試料液中の分析対象物の濃度を前記色調の変化で容易に半定量あるいは定量することが可能となる。
【0044】
このように本発明は、抗原濃度が高くなるにつれて信号そのものが小さくなり、色で言えば減色する負の相関(色が薄ければ抗原濃度が高い)という従来の競合法の問題を2種の信号の混合度合い(2色の混合度合い)によって、簡便で、容易に判別できることを1つの特徴としている。
【0045】
本発明にはいくつかの改変が可能である。以下に、前述のイムノアッセイの例に基づいて説明する。
【0046】
上記の例は、判定区域に固定化された捕捉抗体が第1抗体に特異的に結合するものであるが、1つの改変例は、第1抗体には結合しないでかつ相互に特異的に結合する二つの特異結合物質を用いることである。即ち、これら二つの特異結合物質の一方を判定区域に固定化し、他方を第1抗体とともに標識aに結合させて標識a化第1抗体・特異結合物質とする方法である。これによって反応の本質的部分である第1抗体と試料液中の抗原、及び標識b化抗原の三者の競合反応に関わらないようにしたものであり、判定区域に対しては、競合反応で形成された前記複合体を捕捉するための専用の捕捉手段を設けている。その結果、上記発明と同様の結果が得られる。
【0047】
また以上の方法は何れも試験者が試料液を試薬区域側から添加することによって、判定区域までの間で競合反応及び前記複合体の捕捉反応が起こり、可視的信号のない判定区域に可視的信号が現れるものであるが、前記二つの相異なる可視的信号のうちの一方の可視的信号を試験者が試料液を添加する前から、即ち未使用状態で判定区域に存在させておき、試験を実施することによって反応を開始し、他方の可視的信号がすでに存在させてある可視的信号に重なるという方法もある。
【0048】
例えばその1つは、標識a化第1抗体と標識b化抗原、そして判定区域に捕捉抗体を用いる例では、標識a化第1抗体とその捕捉抗体をすでに結合させたものを判定区域に固定化し、同区域に可視標識aを存在させる方法である。これはまた前記捕捉抗体を用いず直接標識a化第1抗体を判定区域に固定化することによっても更に単純化することができる。
【0049】
またさらには、前記第1抗体には結合しないでかつ相互に特異的に結合する二つの特異結合物質を用いる例においては、標識a化第1抗体・特異結合物質と判定区域の特異結合物質をあらかじめ結合させたものを判定区域に固定化し、同区域に可視標識aを存在させる方法がある。
【0050】
以上、当初から可視標識aを存在させる方法は何れも、試薬区域に標識b化抗原を配置し、試料液を添加することにより、分析対象物である抗原の存在によって標識b化抗原と共に判定区域に浸潤展開し、判定区域で競合反応を行うものである。これらによっても、前記の可視的信号のない判定区域に可視的信号が現れるものと同様の結果が得られる。
【0051】
以上の発明は、競合反応に関わる第1特異結合物質及び競合反応用の分析対象物もしくはその変性物の双方に可視標識を結合させ、試料液中の分析対象物の存在によって競合反応を行わせ、その結果、標識a化第1抗体−抗原、あるいは標識a化第1抗体−標識b化抗原複合体を判定区域に形成させるものである。
【0052】
本発明は、前記競合反応に影響しないかつ相互に特異的に結合しうる2種の特異結合物質の組み合わせを用いることをもう一つの特徴とする。即ち、具体的には、特異結合アッセイにおいて、互いに異なる可視的信号を発する標識である可視標識a及び可視標識cを用意し、一方の可視標識aを試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質に標識化した標識a化第1特異結合物質とし、他方の可視標識cを前記分析対象物及び標識a化第1特異結合物質と結合しない「独立」した第5特異結合物質に標識化した標識c化第5特異結合物質とする。
【0053】
そして、これらの標識a化第1特異結合物質と標識c化第5特異結合物質とが試薬区域に配置されており、試料液の添加によって湿潤状態になった際には、標識a化第1特異結合物質及び標識c化第5特異結合物質が可動性となって判定区域に向かって湿潤展開する。一方、判定区域には前記第1特異結合物質と特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体と、前記第5特異結合物質とのみ特異的に結合する第6特異結合物質とが固定化されている。
【0054】
ここで試料液を試薬区域側に添加すると、可動性の標識a化第1特異結合物質に対し試料液中の分析対象物及び判定区域に固定化された分析対象物もしくはその変性体(以下、固定化分析対象物と称する)が競合反応し、その結果、試料液中の分析対象物の濃度に応じて標識a化第1特異結合物質−固定化分析対象物が判定区域に形成される。具体的には判定区域に試料液中の分析対象物の濃度が高くなるに従い可視標識aの量が少なく現れる。
【0055】
一方、試料液の添加によって、同時に可動性の標識c化第5特異結合物質も浸潤展開して判定区域に向かい、試料液中の抗原濃度に拘わらず「独立」して、判定区域に固定化されている第6特異結合物質と結合し、標識c化第5特異結合物質−固定化第6特異結合物質が形成される。これは試料液中の分析対象物濃度に関係なく前記複合体が形成され、一定量の可視信号cが判定区域に現れる。その結果、一定量の可視標識cに対して前記可視標識aが重なる。このとき、判定区域に結合された可視標識cに対しての可視標識aの存在度合いが分析対象物の濃度に依存し、試料液中の分析対象物がいかなる濃度範囲にあっても、判定区域に可視的信号が得られる。
【0056】
この発明をイムノアッセイを例に具体的に説明する。イムノアッセイにおいて互いに異なる可視的信号を有する可視標識a及び可視標識cによってそれぞれ標識化された標識a化マウス由来抗体と標識c化ヤギ由来抗体が試薬区域に配置されており、また判定区域には前記ヤギ由来抗体と反応する抗ヤギIgG抗体、及び抗原または変性抗原が固定化されている。そこで試薬区域側へ試料液を添加すると、標識a化マウス由来抗体及び標識c化ヤギ由来抗体が可動性となり、判定区域へ浸潤展開する。標識a化マウス由来抗体は試料液中の抗原及び判定区域に固定化された抗原または変性抗原とで競合反応する。その結果、試料液中の抗原濃度に応じて標識a化マウス由来抗体−固定化抗原(または変性抗原)が判定区域に形成される。
【0057】
一方、同時に可動性となった標識c化ヤギ由来抗体は試料液中の抗原の存在の有無に拘わらず、判定区域に固定化された抗ヤギIgG抗体と抗原抗体反応が起こり、複合体(標識c化ヤギ由来抗体−固定化抗ヤギIgG抗体)が判定区域に形成される。その際、試料液中の抗原濃度が低い場合には、判定区域に標識a化マウス由来抗体−固定化抗原が優位に形成される。これに対し、試料液中の抗原濃度が高い場合には、標識a化マウス由来抗体−固定化抗原がほとんど形成されない。その結果、抗原濃度が高くなるにつれ判定区域の可視標識a量が少なくなる。
【0058】
このときには、同時に試料液中の抗原濃度に拘わらず、標識c化ヤギ由来抗体−固定化抗ヤギIgG抗体が形成される。ここで各々の可視標識a及び可視標識cが互いに異なる可視的信号を有するので、その結果、試料液中の抗原濃度が低い場合には判定区域の可視的信号が可視標識aと可視標識cの重なった可視的信号となり、抗原濃度が高い場合には判定区域の可視的信号が可視標識cの可視的信号となって現れる。より具体的には可視標識aを黄色の可視信号、可視標識cを青色の可視信号とした場合、判定区域では、抗原濃度が低い側で黄色と青色の混合により緑色となり、抗原濃度が高くなるにつれて青色が現れる。その結果、色の判別によって抗原濃度を知ることが容易となる。
【0059】
以上の例では、可視標識cをヤギ由来抗体と抗ヤギIgG抗体の組み合わせを用いて「独立」して判定区域に生じさせる方法であるが、これもまたいくつかの改変が可能である。
【0060】
その改変の一つは、例えば抗体−抗原複合体とその抗原に特異的な抗体を組み合わせて用いる方法であり、これによっても同様の結果が得られる。またこのような組み合わせの方法を用いなくても、試料液の添加によって判定区域が湿潤された際に前記可視標識bと同様の可視的信号を発するような物質を判定区域にあらかじめ固定化することによっても同様の結果が得られる。この例としては、試料液が判定区域に浸潤した際に無色から有色に変化するpH指示薬などがある。これらは反応の本質的部分である前記第1抗体と試料液中の抗原、そして固定化変性抗原の三者の競合反応に関わらないようにしたものであり、判定区域に競合反応物の捕捉及び試料液によるpH指示薬の呈色を同時に示す手段を設けたものである。その結果、上記発明と同様の結果が得られる。
【0061】
また上記の例では、試験者が試料液を試薬区域側から添加することによって、判定区域までの間で競合反応、及び前記反応とは独立した可視的信号を発する前記複合体の捕捉、あるいはpH指示薬のような呈色物質によって可視的信号のない判定区域に可視的信号が現れるものであるが、更なる改変例として、前記二つの相異なる可視的信号のうちの一方の可視的信号を試験者が試料液を添加する前から、即ち未使用状態で最初から存在させておき、試験を実施することによって反応を開始し、他方の可視的信号がすでに存在させてある可視的信号に重なるという方法もある。
【0062】
例えばその1つは、以上に記載された例において、例えば標識c化ヤギ由来抗体−抗ヤギIgG抗体複合体をあらかじめ判定区域に固定化する方法、あるいは前記標識c化ヤギ由来抗体を判定区域にあらかじめ固定化する方法、さらには可視標識cを直接、同様に固定化する方法などがある。これらによっても、可視的信号のない判定区域に可視的信号が現れるものと同様の結果が得られる。
【0063】
本発明における分析対象物としては、例えばタンパク質、糖タンパク質、抗体、酵素、糖類、細胞、細菌及びウイルス、薬物、化学物質などが挙げられる。
【0064】
上記分析対象物のなかでも、ホルモン、生化学的メッセンジャー、ステロイド、薬物、薬物代謝産物、ポリペプチド、ビタミン、アルカロイドなどが含まれ、特に甲状腺ホルモン、コルチゾール、エストロゲン、プロゲステロンまたはテストステロンなどのハプテンが挙げられる。
【0065】
本発明における特異結合物質は、ある特定の構造を有する物質に特異的に結合する物質であって、抗原、抗体、核酸配列断片、エフェクター分子、レセプター分子、酵素とそのインヒビター、アビジン、ビオチン、糖鎖化合物、レクチンなどが挙げられる。
【0066】
本発明における信号とは、可視域において目視により確認される色である。また、本発明における結合とは、物理的吸着及び化学結合におけるイオン結合、共有結合、配位結合などをいう。
【0067】
本発明における粒状標識物質としては、それ自身が信号を有するものとして金コロイド、セレニウムコロイド等の金属コロイド、着色した脂質小胞(リボソーム)や小胞などが挙げられる。またそれ自身信号を持たないものとして白色金属コロイド、シリカ粒子、白色ラテックス、脂質小胞(リボソーム)や小胞などがあり、これらは信号物質(各種染料、顔料、色素、蛍光色素など)を結合ないし封入することによって信号を有するものとなる。
【0068】
イムノアッセイ法に用いる分析装置は、ラテラルフロー方式で例示する場合、以下のような構造を含むものである。すなわち、試料液を一定量添加するための「試料液添加区域」、前記試料液により試薬が溶出する「試薬区域」、「展開区域」及び「判定区域」、そして試料液を吸収するための「吸収区域」を備える。そして、試料液添加区域に添加された試料液が展開区域を経て判定区域に浸潤するように試料液添加区域、試薬区域、展開区域、判定区域及び吸収区域が順に配設されている。
【0069】
判定区域には標識化特異結合物質に対して特異的に結合する特異結合物質が固定化されており、試薬区域には試料液によって溶出流動可能な状態で標識化特異結合物質及び標識化分析対象物もしくはその変性体が分離状態で保持される。
【0070】
試料液添加区域に試料液が添加されると試料液の浸潤が始まり、試料液が試薬区域に担持されている標識化分析対象物もしくはその変性体及び標識化特異結合物質と混合することによって、試料液中の分析対象物濃度に依存して「標識化特異結合物質−分析対象物」複合体あるいは「標識化特異結合物質−標識化分析対象物もしくはその変性体」複合体が形成される。形成された複合体は試料液とともに展開区域を流れ、判定区域に達し、そこで固定化特異結合物質に捕捉される。その結果、「標識化特異結合物質−分析対象物−固定化特異結合物質」複合体あるいは「標識化特異結合物質−標識化分析対象物もしくはその変性体−固定化特異結合物質」複合体が判定区域に形成される。従ってこの捕捉された「標識化特異結合物質−分析対象物−固定化特異結合物質」複合体及び「標識化特異結合物質−標識化分析対象物もしくはその変性体−固定化特異結合物質」複合体中の標識物量を測定することにより試料液中の分析対象物の濃度を測定することができる。
【0071】
本発明の別の装置としては、以下のような構造を含むものである。すなわち、「試料液添加区域」、「試薬区域」、「展開区域」、「判定区域」及び「吸収区域」を上記と同様に備え、試料液添加区域に添加された試料液が展開区域を経て判定区域に浸潤するように試料液添加区域、試薬区域、展開区域、判定区域及び吸収区域が順に配設されるものである。
【0072】
試薬区域には標識化特異結合物質Aと標識化特異結合物質Bが含まれており、判定区域には前記特異結合物質Aと結合する分析対象物もしくはその変性体及び前記特異結合物質Bと結合する特異結合物質Cが固定化されている。ここで、標識化特異結合物質Bと特異結合物質Cは、標識化特異結合物質Aと分析対象物もしくはその変性体の競合反応系には関与せず独立して信号を発する。この場合は上述した分析装置とは異なり、試薬区域内における2種の標識試薬を分離する必要がない。
【0073】
試料液添加区域に試料液が添加されると試料液の浸潤が始まり、試料液が試薬区域に担持されている標識化特異結合物質A及び標識化特異結合物質Bと混合することによって、一方では、試料液中に分析対象物の存在によって試料液とともに展開区域を流れ、判定区域で競合反応物が得られる。他方では、前記競合反応とは独立しており、なおかつ試料液中の分析対象物の有無に拘わらず、「標識化特異結合物質B−固定化特異結合物質C」複合体が形成され、可視的信号を発する。その結果、試料液の分析対象物の濃度に応じて競合反応物からの可視的信号と前記独立した可視的信号との重なり度合いが変化し分析対象物の濃度を測定することができる。
【0074】
展開区域及び判定区域に用いられる材料は親水性材料であり、この親水性材料としては試料液などの水溶液を容易に吸収する材料であればよく、分析対象物あるいは標識化分析対象物もしくはその変性体と標識化特異結合物質や固定化された特異結合物質とが充分な反応を行うための時間を確保、調整できる材料であればよい。具体的にはニトロセルロース、ナイロン、セルロースアセテートなどの多孔質メンブランや架橋デキストラン、セルロース濾紙、ガラス繊維紙等が挙げられる。そのなかでも、ニトロセルロースはタンパク質などを吸着し、固定化が容易である。また、セルロース濾紙などでは、事前に架橋剤などによって活性化することによって容易に固定できる。
【0075】
試料液添加区域、試薬区域及び吸収区域にも親水性材料が用いられ、この親水性材料としては上記と同様の材料が挙げられるが、試料液中の分析対象物や本発明に使用できうる試薬類を吸着したりするような材料は好ましくない。しかしながら、これらの吸着等に対しては、ポリビニルアルコールや他のマスキング剤で事前に処理することによって防止できるものである。
【0076】
図1及び図2は、本発明に用いるラテラルフロー方式の装置の試験片を示している。
【0077】
図1に示すように、試験片11は各部材が粘着面を片面に有する台紙1上に固定されている。判定紙3の下端(上流端)には全体にわたって液体が毛管的に浸潤連絡するようにわずかの重なりを持って試薬紙5が配設され、さらに試薬紙5に部分的に被さるように別の試薬紙6が配設されている。さらに、試薬紙6に部分的に被さるように試料液添加部材7が配設されている。
【0078】
一方、判定紙3の頂部(下流端)には同じく液体が毛管的に浸潤連絡するようにわずかの重なりを持って吸収体2が配設されている。吸収体2は試料液添加部材7から毛細管現象により試薬紙6、試薬紙5ついで判定紙3を経て流れてくる試料液の吸収ポンプとして作用する。試薬紙5には標識a化第1特異結合物質が含まれており、試薬紙6には標識b化分析対象物もしくはその変性体が含まれている。これらの試薬は試料液を添加することにより、判定紙3を通って吸収体2へ自由に移動することができる。判定紙3内の判定ライン部4では前記第1特異結合物質に特異的に結合する第2特異結合物質10が固定化されている。
【0079】
図2は試験片11を分析に使用した結果を示している。また、図3,4,5は判定ライン部4における結果を模式的に示している。
【0080】
図1において試験片11の試料液添加部材7の一端を分析対象物を含有する可能性のある試料液(不図示)と接触させる。試料液添加部材7に吸収された試料液は瞬時に試薬紙6ついで試薬紙5に浸潤し、これに伴いそれぞれに担持された標識b化分析対象物もしくはその変性体8及び標識a化第1特異結合物質9は試料液中に溶解または分散して試料液とともに判定紙3へ向かって移動する。
【0081】
試料液の中に分析対象物が存在する場合、判定紙3へ向かって移動する間に標識a化第1特異結合物質9に対して分析対象物と標識b化分析対象物もしくはその変性体8とが競合し、競合反応物が形成される。上記競合反応物は、判定ライン部4に到達すると、そこに固定化されている第2特異結合物質10に捕捉され、標識a及び標識bの存在度合いで、判定ライン部4にライン状の着色が確認される。
【0082】
ここで、上記競合反応物としては標識a化第1特異結合物質−分析対象物あるいは標識a化第1特異結合物質−標識b化分析対象物もしくはその変性体が形成されている。例えば、標識aとして青色ラテックス粒子を、標識bとして赤色ラテックス粒子を用いると、試料液中の分析対象物濃度が低い場合、判定ライン部4には「標識a化第1特異結合物質(青色)−標識b化分析対象物もしくはその変性体(赤色)」の複合体に由来する紫色のラインが現れ、模式的に示す図3のようになる。
【0083】
逆に試料液中の分析対象物濃度が高い場合には、判定ライン部4には「標識a化第1特異結合物質(青色)−分析対象物」の複合体に由来する青色のラインが現れ、模式的に示す図5のようになる。
【0084】
試料液中の分析対象物が中程度の量で存在する場合には、判定ライン部4には「標識a化第1特異結合物質(青色)−標識b化分析対象物もしくはその変性体(赤色)」の複合体と「標識a化第1特異結合物質(青色)−分析対象物」の複合体が混在し、それらの混合色で青色から紫色のラインとなり、模式的に示す図4のようになる。
【0085】
図6〜図8は、第2特異結合物質10に代えて第3特異結合物質25と第4特異結合物質26を用いた場合の模式図である。図9〜図11は、標識a化第1特異結合物質9をあらかじめ判定区域4に固定化した場合の模式図である。
【0086】
図12及び図13は、もう一つの本発明による分析に使用する典型的なラテラルフロー方式の装置の試験片であり、その動作原理を示している。
【0087】
図12に示すように、試験片23は各部材が粘着面を片面に有する台紙13上に固定されている。判定紙15の下端には全体にわたって液体が毛管的に浸潤連絡するようにわずかの重なりを持って試薬紙17が配設され、さらに試薬紙17に部分的に被さるように試料液添加部材18が配設されている。
【0088】
一方、判定紙15の頂部には同じく液体が毛管的に浸潤連絡するようにわずかの重なりを持って吸収体14が配設されている。吸収体14は試料液添加部材18から毛細管現象により試薬紙17ついで判定紙15を経て流れてくる試料液の吸収材として作用する。試薬紙17には標識a化第1特異結合物質及び標識c化第5抗体−抗原複合体が含まれている。
【0089】
これらの試薬は試料液を添加することにより判定紙15を通って吸収体14へ自由に移動することができる。判定紙15内の判定ライン部16では前記標識a化第1特異結合物質に対して特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が固定化されており、また標識c化第5抗体−抗原複合体の抗原とのみ結合する第6抗体も固定化されている。
【0090】
図13は試験片23を分析に使用した場合を示している。図14〜図16はその結果を模式的に示している。
【0091】
図12において試験片23の試料液添加部材18の一端を分析対象物を含有する可能性のある試料液(不図示)と接触させる。試料液添加部材18に吸収された試料液は瞬時に試薬紙17に浸潤し、そこに混合して担持された標識a化第1特異結合物質19及び標識c化第5抗体−抗原複合体20は試料液中に溶解または分散して試料液とともに判定紙15へ向かって移動する。
【0092】
試料液の中に分析対象物が存在する場合、判定紙15へ向かって移動する間に標識a化第1特異結合物質19と結合することができる。判定ライン部16に到達すると、その結合した複合体(標識a化第1特異結合物質−分析対象物)は判定ライン部16に固定された分析対象物もしくはその変性体21と結合せず、標識aに由来する着色ラインは確認されない。
【0093】
逆に試料液中に分析対象物が存在しない場合には、標識a化第1特異結合物質は判定ライン部16の固定化分析対象物もしくはその変性体と結合するため、判定ライン部16には標識aに由来する着色ラインが確認される。一方、同時に移動してきた標識c化第5抗体−抗原複合体20は判定ライン部16に固定化された第6抗体22と結合して複合体(標識c化第5抗体−抗原−固定化第6抗体複合体)を形成し、その結果、試料液中の分析対象物の有無に拘わらず、標識cに由来する着色ラインが確認される。
【0094】
例えば、標識aに赤色ラテックス粒子を、標識cに青色ラテックス粒子を用いると、試料中に分析対象物が存在しない場合、判定ライン部16には「標識a化第1特異結合物質(赤色)」及び「標識c化第5抗体(青色)−抗原」複合体に由来する紫色のラインが現れ、模式的に示す図14のようになる。逆に試料液中の分析対象物濃度が高い場合には、判定ライン部16には「標識c化第5抗体(青色)−抗原」複合体に由来する青色のラインのみが現れ、模式的に示す図16のようになる。試料液中の分析対象物が中程度の量で存在する場合には、判定ライン部16に「標識a化第1特異結合物質(赤色)」と「標識c化第1抗体(青色)−抗原」複合体が混在し、それらの混合色で青色から紫色のラインとなり、模式的に示す図15のようになる。
【0095】
図17〜図19は、あらかじめ独立してpHインジケーター28などを固定化させた場合の模式図である。
【0096】
図20は、請求項1〜請求項5に対応した総括を図示するものであり、「No1」は請求項1に、「No2」は請求項2に、「No3」は請求項3及び4に、「No4」は請求項3に、「No5」は請求項5にそれぞれ対応している。
【0097】
図21は、請求項6〜請求項10に対応した総括を図示するものであり、「No6」は請求項6及び7に、「No7」は請求項8及び9に、「No8」は請求項8及び10に、「No9」は請求項6及び10に対応している。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0099】
[実施例1]
この実施例1では、エストロゲンの半定量測定を行うものであり、以下の工程を有している。
【0100】
(1−a)エストロン−17−O(カルボキシメチル)オキシムの製造
刊行物「生体の科学 38(5)376−378(田中健志著)」記載の方法に従って合成した。
【0101】
(1−b)エストロン−BSA結合物の製造
刊行物「生体の科学 38(5)376−378(田中健志著)」記載の方法に従って合成した。
【0102】
(1−c)赤色ラテックス標識化エストロン−BSAの製造
約0.1μmの粒径を有する赤色ラテックス懸濁液(固形分重量10%)0.1mlをマイクロチューブにとり、25mM MES(pH6.1)緩衝液0.9mlを加えて希釈する。マイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離を行い、沈下した粒子をチューブに残して上澄み液をデカントにより廃棄する。再び25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて粒子を分散させる。この洗浄操作をさらに3回繰り返す。最終的に得られた沈下粒子は、25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて分散させ約1%重量固形分を有するラテックス粒子懸濁液を得る。
【0103】
この懸濁液を上記(1−b)で得られたエストロン−BSA700μgと混合し、混合した懸濁液を室温で4時間ロータリーミキサーにより攪拌する。この懸濁液をマイクロ遠心分離機にて6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより捨てる。得られた沈下ラテックス粒子を0.5%重量で牛血清アルブミン(BSA)を含む25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlに分散し、室温下で1時間ロータリーミキサーで攪拌する。その懸濁液をマイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより廃棄し、沈下した粒子を上記の洗浄方法で25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを用いて3回の洗浄操作を行う。最後に0.5%重量のBSAを含む25mM MES(pH6.1)緩衝液中に分散させ、使用するまで4℃で保存する。
【0104】
(1−d)青色ラテックス標識化抗エストラジオール抗体の製造
約0.4μmの粒径を有する青色ラテックス懸濁液(固形分重量10%)0.1mlをマイクロチューブにとり、25mM MES(pH6.1)緩衝液0.9mlを加えて希釈する。マイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離を行い、沈下した粒子をチューブに残して上澄み液をデカントにより廃棄する。再び25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて粒子を分散させる。この洗浄操作をさらに3回繰り返す。最終的に得られた沈下粒子は、25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて分散させ約1%重量固形分を有するラテックス粒子懸濁液を得る。この懸濁液を抗エストラジオール抗体300μgと混合し、混合した懸濁液を室温で4時間ロータリーミキサーにより攪拌する。この懸濁液をマイクロ遠心分離機にて6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより廃棄する。
【0105】
得られた沈下ラテックス粒子を0.5%重量で牛血清アルブミンを含む25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlに分散し、室温下で1時間ロータリーミキサーで攪拌する。その懸濁液をマイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより廃棄し、沈下した粒子を上記の洗浄方法で25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを用いて3回の洗浄操作を行う。最後に0.5%重量のBSAを含む25mM MES(pH6.1)緩衝液中に分散させ、使用するまで4℃で保存する。
【0106】
(1−e)試薬紙5、試薬紙6の作成
上記(1−c)及び(1−d)で得られた赤色ラテックス標識化エストロン−BSA及び青色ラテックス標識化抗エストラジオール抗体をそれぞれ1重量%のBSAと2重量%のショ糖とを含む100mM トリス緩衝液を用いて希釈する。このとき、赤色ラテックス標識化エストロン−BSA及び青色ラテックス標識化抗エストラジオール抗体がともに10容量%となるように希釈する。得られた溶液1mlを10×200mmの試薬紙用シート(Whatman社製、F075−17)に塗布し、80℃の熱風乾燥器中で5分間乾燥させ、使用するまで室温で乾燥剤入りのバッグに保存する。
【0107】
(1−f)判定紙3の作成
25×200mmのWhatman社製ニトロセルロースメンブラン(PuraBind、A−RP、孔径8μm)を机上に固定し、その一端から10mmの位置に抗マウスIgG抗体(1mg/ml)溶液をディスペンサーを用いて塗布幅が約1.0mmのライン状となるように塗布する。塗布後、80℃の熱風乾燥器中で5分間乾燥させ、室温で乾燥剤入りのバッグに使用するまで保存する。これにより図1における判定ライン部4が形成された判定紙3が得られる。
【0108】
(1−g)試験片及び分析装置の作製
片面が粘着加工された台紙1(厚み250μm、縦125mm、横180mm、リンテック社製)を粘着面を上にして机上に固定し、その一端から30mmの位置に、その一端と平行に判定紙3を貼り合わせる。続いて、その一端から22mmの位置に、その一端と平行に試薬紙5を貼り合わせる。この貼り合わせにより、判定紙3と試薬紙5とが約2mmの重なりを有して連設する。次に、その一端から14mmの位置に、その一端と平行に試薬紙6を貼り合わせる。この貼り合わせにより、試薬紙5と試薬紙6とが約2mmの重なりを有して連設する。
【0109】
さらに一端を合わせて、ベンリーゼ(旭化成社製)からなる縦30mm、横200mmの試料液添加部材7を試薬紙6を一部覆うように貼り合わせる。また台紙1の他端から32mmの位置に、その他端と平行に、GF−F(Whatman社製)からなる縦40mm、横200mmのガラス繊維濾紙を貼り合わせて吸収体2とする。ここでも判定紙3と吸収体2とが約2mmの重なりをもって連設する。さらにその他端を合わせて、縦110mm、横200mmの透明エステルフィルム(リンテック社製)からなる保護カバー12を粘着面側を下にして貼り合わせる。この貼り合わせた積層シートを各部材を直角に横断するように、幅6mmの間隔でロータリーカッターによりストリップ状に順次切断する。このことによって約28本の分析装置が完成し、分析試験で使用するまで室温で乾燥剤入りのバッグに保存する。
【0110】
(1−h)分析試験方法
試料液として生理食塩水溶液にて所定の濃度(0〜5000ng/ml)に希釈したエストラジオール−17−グルクロナイド(シグマ社製、以下E217Gとする)溶液を準備した。上述によって作製した分析装置を水平な机上に置き、試料液添加部材7の一端から各濃度のE217G溶液をマイクロピペットで100μlずつ添加後、判定ライン部4での発色の色調を観察した。結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示すように、0ng/mlで判定ライン部は赤紫色を示し、100ng/ml、500ng/ml、2500ng/mlの順にE217G濃度が高くなるにつれて、判定ライン部の赤の色調が薄くなり、結果として全体的に赤紫色から青色へと色調の変化が観察された。
【0113】
[実施例2]
この実施例では、エストロゲンの半定量測定を行うものである。
【0114】
(2−a)エストロン−17−O(カルボキシメチル)オキシムの製造
実施例1で製造したものを使用した。
【0115】
(2−b)エストロン−BSA結合物の製造
実施例1で製造したものを使用した。
【0116】
(2−c)金コロイド標識化抗エストラジオール抗体の製造
イムノアッセイに用いる金コロイド粒子は様々な粒子径のものが市販されており、また当業者においても容易に製造することができる。
【0117】
40nmの金コロイドを100mMの炭酸カリウム水溶液でpHを6.0に調節し、その100mlへ抗エストラジオール抗体2mlを攪拌しながら添加する。その混合物をさらに5分間ゆっくり攪拌する。続いてカゼイン5mlをその混合物に添加して同様に5分間ゆっくり攪拌する。得られた混合物は4℃で45分間、5500Gの遠心分離を行って精製する。沈下した金コロイド標識化抗エストラジオール抗体のペレットを蒸留水で再懸濁し5mlとし、使用するまで4℃で保存する。
【0118】
(2−d)青色ラテックス標識化抗β−hCGマウスモノクローナル抗体の製造
約0.3μmの粒径を有する青色ラテックス懸濁液(固形分重量10%)0.1mlをマイクロチューブにとり、25mM MES(pH6.1)緩衝液0.9mlを加えて希釈する。マイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離を行い、沈下した粒子をチューブに残して上澄み液をデカントにより廃棄する。再び25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて粒子を分散させる。この洗浄操作をさらに3回繰り返す。最終的に得られた沈下粒子は、25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを加えて分散させ約1%重量固形分を有するラテックス粒子懸濁液を得る。この懸濁液を抗β−hCGマウスモノクローナル抗体700μgと混合し、混合した懸濁液を室温で4時間ロータリーミキサーにより攪拌する。この懸濁液をマイクロ遠心分離機にて6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより捨てる。
【0119】
得られた沈下ラテックス粒子を0.5%重量で牛血清アルブミンを含む25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlに分散し、室温下で1時間ロータリーミキサーで攪拌する。その懸濁液をマイクロ遠心分離機により6000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより廃棄し、沈下した粒子を上記の洗浄方法で25mM MES(pH6.1)緩衝液1.0mlを用いて3回の洗浄操作を行う。最後に0.5%重量のBSAを含む25mM MES(pH6.1)緩衝液中に分散させ、使用するまで4℃で保存する。
【0120】
(2−e)「青色ラテックス標識化β−hCGマウスモノクローナル抗体−hCG」複合体の製造
500IU hCG溶液を1.5mlをマイクロチューブにとり、上記(2−d)で得られた青色ラテックス標識化β−hCGマウスモノクローナル抗体を100μl加え、懸濁する。この懸濁液を室温で30分間ロータリーミキサーにより攪拌する。この懸濁液をマイクロ遠心分離機にて12000rpmで30分間遠心分離にかけ、上澄み液をデカントにより捨てる。得られた沈下粒子を上記の洗浄方法で20mM PB(pH7.4)緩衝液1.0mlを用いて3回の洗浄操作を行う。最後に0.5%重量のBSAを含む25mM HEPES(pH7.0)緩衝液中に分散させ、使用するまで4℃で保存する。
【0121】
(2−f)試薬紙17の作成
上記(2−c)及び(2−e)で得られた金コロイド標識化抗エストラジオール抗体及び青色ラテックス標識化β−hCGマウスモノクローナル抗体−hCG複合体を1重量%のBSAと2重量%のショ糖とを含む100mM トリス緩衝液を用いて希釈する。このとき、金コロイド標識化抗エストラジオール抗体及び「青色ラテックス標識化β−hCGマウスモノクローナル抗体−hCG」複合体がともに10容量%となるように希釈する。得られた溶液1mlを10×200mmの試薬紙用シート(Whatman社製、F075−17)に塗布し、80℃の熱風乾燥器中で5分間乾燥させ、使用するまで室温で乾燥剤入りのバッグに保存する。
【0122】
(2−g)判定紙15の作成
25×200mmのWhatman社製ニトロセルロースメンブラン(PuraBind、A−RP、孔径8μm)を机上に固定し、その一端から10mmの位置にβ−hCGマウスモノクローナル抗体溶液とエストロン−BSA溶液の混合溶液(0.5mg/ml)をディスペンサーを用いて塗布幅が約1.0mmのライン状となるように塗布する。塗布後、80℃の熱風乾燥器中で5分間乾燥させ、室温で乾燥剤入りのバッグに使用するまで保存する。これにより図12における判定ライン部16が形成された判定紙15が得られる。
【0123】
(2−h)試験片及び分析装置の作成
片面が粘着加工された台紙13(厚み250μm、縦125mm、横180mm、リンテック社製)を粘着面を上にして机上に固定し、その一端から30mmの位置に、その一端と平行に判定紙15を貼り合わせる。続いて、その一端から22mmの位置に、その一端と平行に試薬紙17を貼り合わせる。この貼り合わせにより、判定紙15と試薬紙17とが約2mmの重なりを有して連設する。さらに一端を合わせて、ベンリーゼ(旭化成社製)からなる縦30mm、横200mmの試料液添加部材18を試薬紙17を一部覆うように貼り合わせる。また台紙13の他端から32mmの位置に、その他端と平行に、GF−F(Whatman社製)からなる縦40mm、横200mmのガラス繊維濾紙を貼り合わせて吸収体14とする。ここでも判定紙15と吸収体14とが約2mmの重なりをもって連設する。さらにその他端を合わせて、縦110mm、横200mmの透明エステルフィルム(リンテック社製)からなる保護カバー24を粘着面側を下にして貼り合わせる。この貼り合わせた積層シートを各部材を直角に横断するように、幅6mmの間隔でロータリーカッターによりストリップ状に順次切断する。このことによって約28本の分析装置が完成し、分析試験で使用するまで室温で乾燥剤入りのバッグに保存する。
【0124】
(2−i)分析試験方法
試料液として生理食塩水溶液にて所定の濃度(0〜5000ng/ml)に希釈したE217G溶液を準備した。上述によって作製した分析装置を水平な机上に置き、試料液添加部材18の一端から各濃度のE217G溶液をマイクロピペットで100μlずつ添加後、判定ライン部16での発色の色調を観察した。結果を表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
表2に示すように、0ng/mlで判定ライン部は赤紫色を示し、10ng/ml、50ng/ml、250ng/ml、500ng/ml、1000ng/mlの順にE217G濃度が高くなるにつれて、判定ライン部の赤の色調が薄くなり、結果として全体的に赤紫色から青色へと色調の変化が観察された。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の一実施形態の分析装置の斜視図である。
【図2】図1の分析装置を分析に使用した結果を示す斜視図である。
【図3】図1の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図4】図1の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図5】図1の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図6】第3特異結合物質及び第4特異結合物質を用いた場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図7】第3特異結合物質及び第4特異結合物質を用いた場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図8】第3特異結合物質及び第4特異結合物質を用いた場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図9】標識a化第1特異結合物質を判定区域に固定化した場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図10】標識a化第1特異結合物質を判定区域に固定化した場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図11】標識a化第1特異結合物質を判定区域に固定化した場合の判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図12】本発明の別の実施の形態の分析装置の斜視図である。
【図13】図12の分析装置を分析に使用した結果を示す斜視図である。
【図14】図12の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図15】図12の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図16】図12の分析装置における判定ライン部での結合状態を示す模式図である。
【図17】判定区域にpHインジケータを固定化させた場合の模式図である。
【図18】判定区域にpHインジケータを固定化させた場合の模式図である。
【図19】判定区域にpHインジケータを固定化させた場合の模式図である。
【図20】本発明の総括を示す模式図である。
【図21】本発明の別の総括を示す模式図である。
【符号の説明】
【0128】
1,13 台紙
2,14 吸収体
3,15 判定紙
4,16 判定ライン部
5,17 試薬紙
6 試薬紙
7,18 試料液添加部材
8 標識b化分析対象物もしくはその変性体
9,19 標識a化第1特異結合物質
10 第2特異結合物質
11,23 試験片
12,24 保護カバー
20 標識c化第5抗体−抗原複合体
21 分析対象物もしくは変性体
22 第6抗体
25 第3特異結合物質
26 第4特異結合物質
27 標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質
28 pHインジケーター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬A及び試薬Bが前記試薬区域に分離状態で溶出流動可能に保持され、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Aに対する試料液中の分析対象物と試薬Bと間での競合反応により競合反応物が生成可能となっており、この競合反応物を捕捉する試薬Cが前記判定区域に固定化されており、試薬Cに捕捉された競合反応物からの可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする分析装置。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬C;標識a化第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第1特異結合物質に特異的に結合可能な第2特異結合物質
【請求項2】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬B及び試薬Dが前記試薬区域に分離状態で溶出流動可能に保持され、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Dに対する試料液中の分析対象物と試薬Bと間での競合反応により競合反応物が生成可能となっており、この競合反応物を捕捉する試薬Eが前記判定区域に固定化されており、試薬Eに捕捉された競合反応物からの可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする分析装置。
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬D;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質及び分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質
試薬E;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質
【請求項3】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、可視標識を有する試薬Bが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、試薬Bと異なった可視標識を有する試薬Aが前記判定区域に直接的または間接的に固定されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬B及び試料液中の分析対象物の間での試薬Aへの競合的捕捉による可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする分析装置。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
【請求項4】
前記判定区域に試薬Cが固定されており、前記試薬Aは試薬Cに結合されることにより判定区域に固定化されていることを特徴とする請求項3記載の分析装置。
【請求項5】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、可視標識を有する試薬Bが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、前記判定区域に試薬Eが固定化されると共にこの試薬Eに試薬Dが固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬B及び試料液中の分析対象物の間での試薬Dへの競合的捕捉による可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする分析装置。
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬D;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質及び分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質
試薬E;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質
【請求項6】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、試料液中の分析対象物と特異的に結合し、かつ可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質が試薬区域に溶出流動可能に保持され、この標識a化第1特異結合物質と特異的に結合可能な分析対象物もしくはその変性体が判定区域に固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴って試料液中の分析対象物及び判定区域中の分析対象物もしくはその変性体との間での前記標識a化第1特異結合物質に対する競合的捕捉と、この競合的捕捉と独立した可視的信号とが同時に判定区域に生成され、この独立した可視的信号と前記可視標識aとの重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする分析装置。
【請求項7】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬A及び試薬Fが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、前記判定区域に分析対象物もしくはその変性体と、試薬Fと結合可能な試薬Gが固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Fと試薬Gとの結合によって前記独立した可視的信号が生成可能となっていることを特徴する請求項6記載の分析装置。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬F;第5特異結合物質が可視標識cによって標識された標識c化第5特異結合物質
試薬G;第5結合物質と相互に結合可能な第6結合物質
【請求項8】
前記独立した可視的信号が試料液の添加以前から判定区域に生じていることを特徴とする請求項6記載の分析装置。
【請求項9】
前記独立した可視的信号が判定区域に固定化された試薬Gと試薬Gに結合した試薬Fとによって生じていることを特徴とする請求項6または8記載の分析装置。
【請求項10】
前記独立した可視的信号が判定区域に固定化されたpH指示薬、色素、着色粒子または着色した小胞であることを特徴とする請求項6または8記載の分析装置。
【請求項11】
前記試料液が、尿、血液、溶血血液、血漿、血清、唾液、汗及び涙液等の体液、池、河川及び工業用水等の水、その他食品、食物などからの分析対象物の抽出液であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項12】
前記分析対象物が、ホルモン、生化学的メッセンジャー、ステロイド、薬物、薬物代謝産物、ポリペプチド、蛋白質、ビタミン、アルカロイド、単糖、二糖または多糖、ハプテンよりなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項13】
前記分析対象物が、甲状腺ホルモン、コルチゾール、エストロゲン、プロゲステロンまたはテストステロンからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項14】
前記可視標識が、粒状標識、色素標識、酵素標識からなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項15】
前記粒状標識が、金コロイド、セレニウムコロイド等の金属コロイド、着色した脂質小胞(リボソーム)や小胞、着色ラテックスなどからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項14記載の分析装置。
【請求項16】
前記第1特異結合物質及び第2特異結合物質が抗原、抗体、受容体のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項17】
相互に結合可能な第5特異結合物質及び第6特異結合物質が、抗原、抗体、もしくはそれらの結合物の組み合わせからなることを特徴とする請求項6,7のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項18】
前記第1特異結合物質がマウス由来抗体であって、相互に結合可能な第5特異結合物質及び第6特異結合物質がヤギ由来抗体及び抗ヤギウサギ由来抗体の組み合わせからなることを特徴とする請求項6,7のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項19】
試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質からなる試薬A、及び標識a化第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が前記可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体からなる試薬Bを溶出流動可能に分離状態で保持する試薬区域と、前記標識a化第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第1特異結合物質に特異的に結合可能な第2特異結合物質からなる試薬Cを固定化した判定区域とを試料液が湿潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により試薬区域の標識a化第1特異結合物質と標識b化分析対象物もしくはその変性体が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、その間に試料液中の分析対象物の存在によって標識a化第1特異結合物質に対し、分析対象物と標識b化分析対象物もしくはその変性体とが競合反応し、その競合反応物が判定区域の第2特異結合物質に捕捉され、捕捉された競合反応物中の可視標識a及び可視標識bの重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって試料液中の分析対象物の濃度を検知することを特徴とする分析方法。
【請求項20】
試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質や分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質からなる試薬D、及び第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が前記可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された可動性の標識b化分析対象物もしくはその変性体からなる試薬Bを溶出流動可能に分離状態で保持する試薬区域と、前記第1特異結合物質の特異性を損なうことなく前記第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質からなる試薬Eを固定化した判定区域とを試料液が湿潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により、試薬区域の標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質と標識b化分析対象物もしくはその変性体が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、その間に試料液中の分析対象物の存在によって標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質に対し、分析対象物と、標識b化分析対象物もしくはその変性体とが競合反応し、その競合反応物が第3特異結合物質を介して判定区域の第4特異結合物質に捕捉され、捕捉された競合反応物中の可視標識a及び可視標識bの重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって試料液中の分析対象物の濃度を検知することを特徴とする分析方法。
【請求項21】
試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質を溶出流動可能に保持する試薬区域と、前記標識a化第1特異結合物質と特異的に結合しうる分析対象物もしくはその変性体を固定化した判定区域とを試料液が浸潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により試薬区域の標識a化第1特異結合物質が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、試料液中の分析対象物の存在によってその分析対象物と判定区域に固定化された前記分析対象物もしくはその変性体とが標識a化第1特異結合物質に対し競合捕捉される際に、競合捕捉とは独立した可視的信号が同時に判定区域に生じ、その区域での可視標識aと前記独立した可視的信号の重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって分析対象物の濃度を検知することを特徴とする分析方法。
【請求項1】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬A及び試薬Bが前記試薬区域に分離状態で溶出流動可能に保持され、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Aに対する試料液中の分析対象物と試薬Bと間での競合反応により競合反応物が生成可能となっており、この競合反応物を捕捉する試薬Cが前記判定区域に固定化されており、試薬Cに捕捉された競合反応物からの可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする分析装置。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬C;標識a化第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第1特異結合物質に特異的に結合可能な第2特異結合物質
【請求項2】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬B及び試薬Dが前記試薬区域に分離状態で溶出流動可能に保持され、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Dに対する試料液中の分析対象物と試薬Bと間での競合反応により競合反応物が生成可能となっており、この競合反応物を捕捉する試薬Eが前記判定区域に固定化されており、試薬Eに捕捉された競合反応物からの可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする分析装置。
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬D;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質及び分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質
試薬E;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質
【請求項3】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、可視標識を有する試薬Bが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、試薬Bと異なった可視標識を有する試薬Aが前記判定区域に直接的または間接的に固定されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬B及び試料液中の分析対象物の間での試薬Aへの競合的捕捉による可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする分析装置。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
【請求項4】
前記判定区域に試薬Cが固定されており、前記試薬Aは試薬Cに結合されることにより判定区域に固定化されていることを特徴とする請求項3記載の分析装置。
【請求項5】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、可視標識を有する試薬Bが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、前記判定区域に試薬Eが固定化されると共にこの試薬Eに試薬Dが固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬B及び試料液中の分析対象物の間での試薬Dへの競合的捕捉による可視的信号の重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする分析装置。
試薬B;第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体
試薬D;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質及び分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質
試薬E;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質
【請求項6】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、試料液中の分析対象物と特異的に結合し、かつ可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質が試薬区域に溶出流動可能に保持され、この標識a化第1特異結合物質と特異的に結合可能な分析対象物もしくはその変性体が判定区域に固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴って試料液中の分析対象物及び判定区域中の分析対象物もしくはその変性体との間での前記標識a化第1特異結合物質に対する競合的捕捉と、この競合的捕捉と独立した可視的信号とが同時に判定区域に生成され、この独立した可視的信号と前記可視標識aとの重なり度合いに基づいて試料液中の分析対象物の濃度の検知が可能となっていることを特徴とする分析装置。
【請求項7】
試料液の湿潤展開方向に沿って試薬区域と判定区域とが配置され、異なった可視標識をそれぞれ有する試薬A及び試薬Fが前記試薬区域に溶出流動可能に保持され、前記判定区域に分析対象物もしくはその変性体と、試薬Fと結合可能な試薬Gが固定化されており、試薬区域から判定区域への試料液の湿潤展開に伴う試薬Fと試薬Gとの結合によって前記独立した可視的信号が生成可能となっていることを特徴する請求項6記載の分析装置。
試薬A;試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質
試薬F;第5特異結合物質が可視標識cによって標識された標識c化第5特異結合物質
試薬G;第5結合物質と相互に結合可能な第6結合物質
【請求項8】
前記独立した可視的信号が試料液の添加以前から判定区域に生じていることを特徴とする請求項6記載の分析装置。
【請求項9】
前記独立した可視的信号が判定区域に固定化された試薬Gと試薬Gに結合した試薬Fとによって生じていることを特徴とする請求項6または8記載の分析装置。
【請求項10】
前記独立した可視的信号が判定区域に固定化されたpH指示薬、色素、着色粒子または着色した小胞であることを特徴とする請求項6または8記載の分析装置。
【請求項11】
前記試料液が、尿、血液、溶血血液、血漿、血清、唾液、汗及び涙液等の体液、池、河川及び工業用水等の水、その他食品、食物などからの分析対象物の抽出液であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項12】
前記分析対象物が、ホルモン、生化学的メッセンジャー、ステロイド、薬物、薬物代謝産物、ポリペプチド、蛋白質、ビタミン、アルカロイド、単糖、二糖または多糖、ハプテンよりなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項13】
前記分析対象物が、甲状腺ホルモン、コルチゾール、エストロゲン、プロゲステロンまたはテストステロンからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項14】
前記可視標識が、粒状標識、色素標識、酵素標識からなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項15】
前記粒状標識が、金コロイド、セレニウムコロイド等の金属コロイド、着色した脂質小胞(リボソーム)や小胞、着色ラテックスなどからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項14記載の分析装置。
【請求項16】
前記第1特異結合物質及び第2特異結合物質が抗原、抗体、受容体のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項17】
相互に結合可能な第5特異結合物質及び第6特異結合物質が、抗原、抗体、もしくはそれらの結合物の組み合わせからなることを特徴とする請求項6,7のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項18】
前記第1特異結合物質がマウス由来抗体であって、相互に結合可能な第5特異結合物質及び第6特異結合物質がヤギ由来抗体及び抗ヤギウサギ由来抗体の組み合わせからなることを特徴とする請求項6,7のいずれか1項記載の分析装置。
【請求項19】
試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質からなる試薬A、及び標識a化第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が前記可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された標識b化分析対象物もしくはその変性体からなる試薬Bを溶出流動可能に分離状態で保持する試薬区域と、前記標識a化第1特異結合物質の特異性を損なうことなく第1特異結合物質に特異的に結合可能な第2特異結合物質からなる試薬Cを固定化した判定区域とを試料液が湿潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により試薬区域の標識a化第1特異結合物質と標識b化分析対象物もしくはその変性体が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、その間に試料液中の分析対象物の存在によって標識a化第1特異結合物質に対し、分析対象物と標識b化分析対象物もしくはその変性体とが競合反応し、その競合反応物が判定区域の第2特異結合物質に捕捉され、捕捉された競合反応物中の可視標識a及び可視標識bの重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって試料液中の分析対象物の濃度を検知することを特徴とする分析方法。
【請求項20】
試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質と、第1特異結合物質や分析対象物と結合しない第3特異結合物質とが可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質からなる試薬D、及び第1特異結合物質に特異的に結合する分析対象物もしくはその変性体が前記可視標識aとは可視的信号が異なる可視標識bによって標識された可動性の標識b化分析対象物もしくはその変性体からなる試薬Bを溶出流動可能に分離状態で保持する試薬区域と、前記第1特異結合物質の特異性を損なうことなく前記第3特異結合物質に特異的に結合可能な第4特異結合物質からなる試薬Eを固定化した判定区域とを試料液が湿潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により、試薬区域の標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質と標識b化分析対象物もしくはその変性体が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、その間に試料液中の分析対象物の存在によって標識a化第1特異結合物質/第3特異結合物質に対し、分析対象物と、標識b化分析対象物もしくはその変性体とが競合反応し、その競合反応物が第3特異結合物質を介して判定区域の第4特異結合物質に捕捉され、捕捉された競合反応物中の可視標識a及び可視標識bの重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって試料液中の分析対象物の濃度を検知することを特徴とする分析方法。
【請求項21】
試料液中の分析対象物と特異的に結合する第1特異結合物質が可視標識aによって標識された標識a化第1特異結合物質を溶出流動可能に保持する試薬区域と、前記標識a化第1特異結合物質と特異的に結合しうる分析対象物もしくはその変性体を固定化した判定区域とを試料液が浸潤展開可能なように配置し、試薬区域側より添加された試料液により試薬区域の標識a化第1特異結合物質が溶出されて判定区域へ浸潤展開し、試料液中の分析対象物の存在によってその分析対象物と判定区域に固定化された前記分析対象物もしくはその変性体とが標識a化第1特異結合物質に対し競合捕捉される際に、競合捕捉とは独立した可視的信号が同時に判定区域に生じ、その区域での可視標識aと前記独立した可視的信号の重なり度合いによって生ずる可視的信号の変化によって分析対象物の濃度を検知することを特徴とする分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−170658(P2006−170658A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360068(P2004−360068)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000135162)株式会社ニッポンジーン (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000135162)株式会社ニッポンジーン (7)
【Fターム(参考)】
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