説明

分析装置及び分析方法

【課題】反応容器に保持された液体を音波によって非接触で攪拌する分析装置において、分析に要する時間を短縮することが可能な分析装置及び分析方法を提供すること。
【解決手段】容器に保持された液体試料を音波によって攪拌して反応させる攪拌機構を備え、反応液の光学的特性を測定して前記液体試料を分析する分析装置1及び分析方法。分析装置1は、光学的特性の測定値をもとに液体試料の攪拌状態をモニタリングするための出力部24と、攪拌機構による攪拌動作及び光学的特性の測定動作を制御する装置制御部22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に保持された液体試料を音波によって攪拌する分析装置及び分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、いわゆるキャリーオーバーを回避するため、反応容器に保持された液体を音波発生素子が発生する音波によって非接触で攪拌するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−33813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された分析装置は、複数の反応容器を保持した反応ディスクの回転に伴って検体、試薬が順次分注され、検体と試薬の反応液を測光機構によって測光することによって検体の所定の成分の濃度を測定している。このため、特許文献1の分析装置は、検体分注、試薬分注及び測光を行う位置が決まっており、これらの順に分析プロセスが進行するようになっていることから、分析に要する時間を短縮することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、反応容器に保持された液体を音波によって非接触で攪拌する分析装置において、分析に要する時間を短縮することが可能な分析装置及び分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分析装置は、容器に保持された液体試料を音波によって攪拌して反応させる攪拌手段を備え、反応液の光学的特性を測定して前記液体試料を分析する分析装置であって、前記光学的特性の測定値をもとに前記液体試料の攪拌状態をモニタリングするための出力手段と、前記攪拌手段による攪拌動作及び前記光学的特性の測定動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記液体試料の撹拌中に測定した前記光学的特性の測定値をもとに前記液体試料の攪拌の良否を判定する判定手段をさらに備え、前記判定手段の判定結果を前記出力手段に出力することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記判定手段による判定が攪拌良の場合には前記容器に保持された前記液体試料の分析を継続し、攪拌不良、かつ、前記光学的特性の測定値が許容範囲内の場合には前記攪拌手段による追加攪拌を実行し、攪拌不良、かつ、前記光学的特性の測定値が許容範囲外の場合には当該容器に保持された前記液体試料の分析を中止することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記判定手段は、測定した少なくとも2つの前記光学的特性の測定値に基づいて前記液体試料の攪拌の良否を判定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記測定値は、前記攪拌手段による攪拌中の測定値及び攪拌終了時の測定値を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記追加攪拌は、前記制御手段が前記攪拌手段に攪拌強度を保持して実行させる攪拌時間の延長又は攪拌強度を増加して実行させる攪拌時間の延長であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記攪拌手段による前記液体試料の攪拌終了タイミングを制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記容器を複数保持して回転する容器保持部を備え、前記容器保持部の回転による前記容器の移動中に前記液体試料の攪拌及び光学的特性の測定を行うことを特徴とする。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分析方法は、容器に保持された液体試料を音波によって攪拌して反応させ、反応した反応液の光学的特性を測定することで前記液体試料を分析する分析方法であって、前記液体試料の攪拌中に測定した光学的特性の測定値をもとに前記液体試料の攪拌状態をモニタリングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の分析装置は、光学的特性の測定値をもとに液体試料の攪拌状態をモニタリングするための出力手段と、攪拌手段による攪拌動作及び光学的特性の測定動作を制御する制御手段とを備え、液体試料の攪拌中に測定した光学的特性の測定値をもとに液体試料の攪拌状態をモニタリングすると共に、さらには撹拌の良否を判定し、本発明の分析方法は、液体試料の攪拌中に測定した光学的特性の測定値をもとに液体試料の攪拌状態をモニタリングするので、音波による撹拌の進行状態をリアルタイムに把握でき、ひいては光学的特性の測定に要する時間を攪拌時間に組み込むことができ、分析に要する時間を短縮することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、本発明の分析装置及び分析方法にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の自動分析装置の要部構成を模式的に示す図である。自動分析装置1は、図1に示すように、分析対象の試料である検体及び試薬を反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定機構11と、測定機構11を含む自動分析装置1の制御を行うと共に測定機構11における測定結果の分析を行う制御分析機構21とを有し、これら二つの機構が連携することによって複数の検体の成分の生化学的、免疫学的、または遺伝学的な分析を自動的かつ連続的に行う。
【0017】
測定機構11は、図1に示すように、血液や体液等の検体を収容する検体容器31が搭載された複数のラック32を収納して順次移送する検体移送部12、試薬容器34を保持する二つの試薬容器保持部13a,13b並びに検体と試薬とを収容して反応させる反応容器36を保持する反応容器保持部14を備えている。ここで、試薬容器保持部13aの試薬容器34には第1試薬が収容され、試薬容器保持部13bの試薬容器34には第2試薬が収容されている。また、測定機構11は、検体移送部12上の検体容器31に収容されている検体を反応容器36に分注する検体分注部15、試薬容器保持部13a,13b上の試薬容器34に収容されている試薬を反応容器36にそれぞれ分注する試薬分注部16a,16b、反応容器36に保持された検体,試薬或いはこれらの反応液を含む液体試料の光学的特性を測定する測光部17及び反応容器36の洗浄を行う洗浄部18を備えている。測光部17は、測定光の光源Lsと、遮光部材Sを介して液体試料を透過した測定光を測定する受光器Orとを有しており(図6参照)、測定光の光量から液体試料の光学的特性を測定する。
【0018】
図1に示すように、検体分注部15による検体分注位置P1、試薬分注部16aによる試薬分注位置P2及び試薬分注部16bによる試薬分注位置P3は、検体分注部15及び試薬分注部16a,16bの配置に応じて予め決まっており、図示した検体分注位置P1または試薬分注位置P2,P3以外の位置で反応容器36に検体や試薬を分注することはできない。なお、以後の説明においては、検体の分注、試薬の分注、分注後の攪拌、測光及び洗浄等のタイミングは、全ての分析項目で共通であるとする。これにより、自動分析装置1を用いた検査において、多様な検査項目を検査する際にも一定のスループットを得ることができる。
【0019】
測定機構11は、反応容器36に収容される液体試料を攪拌する攪拌機構19をさらに備えている。攪拌機構19は、制御分析機構21の説明を行った後に説明する。
【0020】
制御分析機構21は、自動分析装置1内の各機能または各手段の制御を行うとともに測定機構11における測定結果を分析する演算を行うためにCPU(Central Processing Unit)等によって実現される装置制御部22、検体の分析に必要な情報や自動分析装置1の動作指示信号の入力を受ける入力部23、分析結果を含む情報を出力する、例えば、表示用ディスプレイからなる出力部24、自動分析装置1の制御プログラムや自動分析装置1における分析結果を含む情報を記憶する記憶部25、自動分析装置1の各部に対して駆動するための電源を供給する電源部26及び判定部27を備えている。
【0021】
ここで、装置制御部22は、入力部23を介して自動分析装置1の外部(ユーザまたはホストコンピュータ)から分析要求が入力されると、その入力された分析要求に応じて、検査を行う検体や分析項目の順序等の情報を記憶部25が記憶するテーブルに割り付ける。このテーブルには、分析に必要な試薬の種類や分注量、測光する波長や攪拌条件などに関する分析パラメータが予め分析項目ごとに記録されている。装置制御部22はそのテーブルを参照し、攪拌条件に関する分析パラメータを記憶部25から読み出し、この読み出した分析パラメータを制御信号として攪拌機構19に送出する。また、装置制御部22は、測光部17が測定した液体試料及びブランク(対照)の光学的特性をもとに測定値としての吸光度と検体の所定の成分の濃度等を演算する。
【0022】
特に、装置制御部22は、攪拌機構19による液体試料の攪拌の良否を判定する際、液体試料の攪拌中に光学的特性を測定するように攪拌機構19及び測光部17の動作を制御し、その測光データを時系列に出力部24(例えば、表示用ディスプレイ)に表示することにより撹拌状態のモニタリングを可能にすると共に、判定部27の判定結果をもとに、攪拌機構19の攪拌動作を制御する。また、出力部24は、液体試料の攪拌状態をモニタリングするための出力手段である。一方、判定部27は、反応容器36に保持された液体試料の光学的特性の測定値に基づいてこの液体試料の攪拌の良否を判定する。判定部27は、判定結果を出力部24へ出力する。
【0023】
続いて、攪拌機構19について説明する。図2は、攪拌機構19の物理的な構成を模式的に示す図である。また、図3は、攪拌機構19の機能構成を示すブロック図である。攪拌機構19は、電源部26から送出される直流の電源信号及び装置制御部22から送出される交流の制御信号を伝送する信号伝送部191と、信号伝送部191から送出される制御信号に基づいて攪拌動作や反応容器保持部14の移送動作の駆動制御を行う駆動制御部192と、駆動制御部192から送出される制御信号に応じて反応容器36に保持された液体試料を攪拌する駆動信号を各々送出する複数の攪拌駆動部193とを有している。
【0024】
各攪拌駆動部193には、電気的な接続状態の切替を行う切替手段である切替部194が接続されている。切替部194には、反応容器36に収容される液体を攪拌する攪拌手段であって、音波または超音波を発生する複数の音波発生部195が並列に接続されている。なお、各切替部194に接続される音波発生部195の数は全て同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
攪拌機構19は、上記以外の構成として、信号伝送部191から送出される電源信号を受信し、攪拌機構19内の各部に適した電圧値に変換して各々出力する電源部196と、装置制御部22からの制御信号に基づいて反応容器保持部14を回転し、反応容器36を所望の位置に移送する移送手段として、ステッピングモータ等を用いて実現される移送部197とを備えている。
【0026】
なお、図2では、切替部194が音波発生部195と1対1に設けられるスイッチ194Sによって構成されている場合を図示している。以後の説明においては、スイッチ194Sによって切替部194が構成されている場合を主に説明するが、切替部194の構成がそのような場合に限定されるわけではない。
【0027】
信号伝送部191はスリップリングを用いて実現され、固定部191a及び回転部191bを有している。回転部191bの回転軸は、反応容器保持部14の鉛直方向の中心軸と一致し、移送部197の動作によって攪拌機構19の連動部19C(反応容器保持部14、駆動制御部192、攪拌駆動部193、切替部194及び音波発生部195を含む)と連動して回転するように配設される。図3では、この連動部19Cを1点鎖線で包囲して表示している。このような信号伝送部191を用いることにより、自動分析装置1は、攪拌機構19に対して電源信号及び制御信号を常時伝送することができ、特に、反応容器保持部14の回転中であっても所望位置の反応容器36を攪拌することができる。
【0028】
ところで、図2に示す場合には、電源部26に接続される2本のリード線を電源供給用とし、装置制御部22に接続される2本のリード線をシリアル通信による制御信号伝送用としている(それぞれ1本はグランド線用)。したがって、この図2に示す場合には、スリップリングの極数が少なくとも4であればよい。
【0029】
攪拌駆動部193は、発振回路及び増幅回路を備え、駆動制御部192から送られてきた制御信号に基づいて、閉成状態のスイッチ194Sを介して接続される音波発生部195に対して駆動信号を印加する。この駆動信号は、周波数が数十MHz(メガヘルツ)〜数百MHz程度の比較的高い周波数を有する交流信号である。このように比較的高い周波数を有する交流信号が伝送される高周波回路では、回路を構成する部位ごとの特性インピーダンスの差に応じて信号の伝送効率が低下する。かかる不具合を回避するため、攪拌駆動部193から音波発生部195に至る伝送線路の特性インピーダンスと音波発生部195内の負荷のインピーダンスとを予め整合しておく(例えば一定値50Ωに整合)。
【0030】
音波発生部195は、図4に示すように、圧電体から成る基板195aの表面に一対の櫛形電極(IDT:Inter Digital Transducers)から成る振動子195bと、反応容器保持部14に設けられる電極であってスイッチ194Sに接続される電極(図示せず)と接触可能であり、振動子195bに印加する駆動信号を攪拌駆動部193から受信する端子195cと、振動子195bと端子195cとを電気的に接続する導線195dとを有し、反応容器36の測光用の窓部36bが設けられている側壁36aに一体に取り付けられている。音波発生部195は、側壁36aの下方に設けられた測光用の窓部36bを避けるようにして窓部36bの上方に配置される。基板195aは、反応容器36の側壁36aとの間に両者の音響インピーダンスの整合を図る音響整合層が介在されている。
【0031】
以上のように構成される自動分析装置1は、装置制御部22の制御の下に作動し、回転する反応容器保持部14の回転によって周方向に沿って搬送されてくる各反応容器36に試薬分注部16aによって試薬容器保持部13a上の試薬容器34から第1試薬が分注された後、検体分注部15によってラック32に搭載された検体容器31から検体が分注される。検体の分注後、再度反応容器保持部14が回転し、回転している間に、試薬容器34は、分注された第1試薬と検体が攪拌機構19によって攪拌され、第1試薬と検体が反応する。
【0032】
次いで、試薬容器34は、試薬分注部16bによって試薬容器保持部13b上の試薬容器34から第2試薬が分注される。第2試薬の分注後、再度反応容器保持部14が回転し、回転している間に、試薬容器34は、第1試薬と検体の反応液が攪拌機構19によって攪拌され、反応液が第2試薬と反応する。
【0033】
このようにして、反応容器36は、攪拌機構19によって順次攪拌されて試薬と検体とが反応し、反応容器保持部14の回転中に測光部17を通過する。このとき、反応容器36内の試薬と検体とが反応した反応液は、測光部17において測光され、測光部17から入力される光信号をもとに装置制御部22が成分濃度等を分析する。そして、反応液の測光が終了した反応容器36は、洗浄部18に移送されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0034】
このとき、自動分析装置1は、図5に示すタイミングの下に、例えば、第1試薬の分注,攪拌、検体の分注、第1試薬と検体の攪拌及び液体試料の測光が実行される。即ち、図5に示すように、反応容器保持部14の回転が停止しているタイミングTR1において第1試薬が分注された後、反応容器保持部14が回転する。そして、反応容器保持部14が停止すると、タイミングTMIX0において第1試薬が攪拌される。
【0035】
次に、第1試薬の攪拌後、反応容器保持部14が回転しているタイミングT0において測光部17による測光が実行される。次いで、反応容器保持部14の回転が停止したタイミングTSPにおいて検体が分注される。その後、反応容器保持部14が回転を開始し、回転しているタイミングTMIX1において第1試薬と検体が攪拌されると共に、攪拌中のタイミングT1において測光部17による測光が実行される。
【0036】
この後、反応容器保持部14の停止と回転を経て、反応容器保持部14が回転し、攪拌中のタイミングT2,T3,T4………T27において測光部17による測光が順次実行されると共に途中で第2試薬が分注され、反応容器36に分注された検体の分析動作が進行してゆく。なお、上述した第1試薬の分注から第1試薬と検体の攪拌及び測光に至る各工程の間においては、図5に示したように、反応容器保持部14が回転する。
【0037】
そして、自動分析装置1は、測定した液体試料の光学的特性の測定値をもとに判定部27が液体試料の攪拌の良否を判定する。この判定は、液体試料が理想状態で攪拌された場合の光学的特性の測定値である吸光度をもとに予め設定された測定基準値と、混合された液体試料の実際の測定値である吸光度との差分を所定の閾値と比較し、この比較をもとに判定部27が液体試料の攪拌の良否を判定する。
【0038】
このとき、測定基準値及び判定基準となる閾値は、測定項目ごとに予め設定され、図6に示すように、予め判定部27に入力される。この入力作業は、入力部23を通して行われる。また、図6に示すように、測光部17の光源Lsから出射され、反応容器36に保持された液体試料を透過した測定光は、遮光部材Sの開口Hを通って受光器Orで測定され、受光量に対応した光信号が装置制御部22へ出力され、吸光度が演算される。このようにして装置制御部22が演算した吸光度は、出力部24(例えば、表示用ディスプレイ)に時系列に図又は数値により画面表示される一方、判定部27へ入力される。
【0039】
この判定に際し、例えば、第1試薬と検体を攪拌する場合の吸光度の時間変化をモデル的に説明すると、第1試薬と検体が理想状態で攪拌された場合、図7に示すように、吸光度は、攪拌開始Stの際の吸光度ODsartから直線的に上昇して飽和値ODmixedとなる実線のように変化したとする。このとき、攪拌中の測光部17による測光は、吸光度が飽和値ODmixedのときに実行されるように予めタイミングT1が設定されている。また、攪拌機構19は、飽和値ODmixedに確実に達してから攪拌終了Edとなるようにタイミングが設定されている。
【0040】
これに対して、実際の攪拌状態においては、攪拌状態にばらつきがあるため、図7に点線や1点鎖線で示すように、飽和値ODmixedとなる時間に遅れが生じ、同じタイミングT1で測光した際の吸光度ODA,ODBに違いが生じてくる。そこで、例えば、タイミングT1において測光した際の吸光度ODAと測定基準値である飽和値ODmixedとの差分の絶対値が所定の閾値Tsより小さい場合(Ts>|ODA−ODmixed|≧0)には攪拌が良好であり、前記差分の絶対値が閾値Ts以上の場合(Ts≦|ODA−ODmixed|)には攪拌不良と判定することができる。
【0041】
従って、自動分析装置1は、前記差分の絶対値をもとに判定部27が閾値Tsと比較することによって、液体試料の攪拌の良否を判定する。このとき、検体が理想状態で攪拌された場合における理想的な光学的特性の変化は、試薬毎に異なる。このため、閾値Tsは、検体が理想状態で攪拌された場合に測定した理想攪拌状態における吸光度及び経験値等を考慮して測定項目ごとに決定する。
【0042】
ここで、図4で説明した反応容器36に分注された試薬と検体を攪拌する場合を例にして攪拌の良否の判定を、図8に示すフローチャートを参照して以下に説明する。先ず、装置制御部22は、試薬分注部16aに反応容器36へ第1試薬を分注するように指示する(ステップS100)。次に、装置制御部22は、攪拌機構19に反応容器36へ分注された第1試薬の攪拌を指示する(ステップS102)。このタイミングが図5において説明したタイミングTMIX0である。
【0043】
次いで、装置制御部22は、測光部17に攪拌された第1試薬の測光を指示する(ステップS104)。このタイミングが図5において説明したタイミングT0である。その後、装置制御部22は、検体分注部15に反応容器36へ検体を分注するように指示する(ステップS106)。
【0044】
検体の分注後、装置制御部22は、攪拌機構19に反応容器36へ分注された第1試薬と検体の攪拌を指示すると共に、攪拌中における液体試料、即ち、第1試薬と検体の測光を測光部17に指示する(ステップS108)。このタイミングが図5において説明したタイミングTMIX1,T1である。この結果、判定部27には、第1試薬と検体の攪拌中のタイミングT1における吸光度が入力される。この吸光度をODAとする。
【0045】
次に、判定部27は、吸光度ODAと測定基準値である飽和値ODmixedとの差分の絶対値が閾値Ts以下か否かを判定する(ステップS110)。差分の絶対値が閾値Tsよりも小さい場合(ステップS110,Yes)、攪拌は良好である。この場合、判定部27は、装置制御部22を介して表示部24に攪拌が良好である旨の信号を出力し、表示部24に攪拌良好と表示する。そして、判定部27は、その反応容器36に分注された第1試薬と検体の分析を続行する(ステップS112)。具体的には、装置制御部22の制御の下に、タイミングT2,T3,T4………T27における測光と、その間における第2試薬の分注が実行され、反応容器36に分注された検体の分析動作が進行してゆく。
【0046】
次いで、装置制御部22は、全分析工程が終了したか否かを判定し(ステップS114)、全分析工程が終了している場合(ステップS114,Yes)には、その反応容器36に係る攪拌の良否の判定作業を終了する。このとき、装置制御部22は、次の反応容器36に係る攪拌の良否の判定作業に移行する。一方、全分析工程が終了していない場合(ステップS114,No)、装置制御部22は、ステップS112に戻って反応容器36に分注された第1試薬と検体の分析を続行する。
【0047】
これに対して、差分の絶対値が閾値Ts以上の場合(ステップS110,No)、攪拌不良である。この場合、判定部27は、装置制御部22を介して表示部24に攪拌不良である旨の警告信号を出力し、表示部24に攪拌不良と表示する。そして、判定部27は、差分の絶対値が許容範囲内か否かを判定する(ステップS116)。ここで、許容範囲は、前記差分の絶対値に関する閾値Tsと同様に、測定項目ごとに決定する。差分の絶対値が許容範囲内でない場合(ステップS116,No)、装置制御部22は、その反応容器36の分析を中止し(ステップS118)、その反応容器36に係る攪拌の良否の判定作業を終了する。
【0048】
一方、差分の絶対値が許容範囲内の場合(ステップS116,Yes)、装置制御部22は、ステップS116における判定回数が1回目か否かを判定する(ステップS120)。判定回数が1回目でない場合(ステップS120,NO)、反応容器36内の第1試薬と検体は攪拌不良であるうえ、補足攪拌を実行しても差分の絶対値が許容範囲内となることが期待できない。このため、装置制御部22は、その反応容器36の分析を中止し(ステップS118)、その反応容器36に係る攪拌の良否の判定作業を終了する。
【0049】
これに対して、判定回数が1回目の場合(ステップS120,Yes)、反応容器36内の第1試薬と検体は攪拌不良ではあるが、補足攪拌を実行すれば差分の絶対値が許容範囲内となることが期待できる。このため、装置制御部22は、攪拌機構19に追加攪拌と測光を実行させる(ステップS122)。この追加攪拌は、例えば、図7において、攪拌機構19の攪拌強度を保持して攪拌終了Edから更に時間Ltだけ攪拌時間を延長する態様がある。また、追加攪拌は、攪拌機構19の攪拌強度を増加して攪拌終了Edから更に時間Ltだけ攪拌時間を延長する態様もある。ステップS122の終了後、装置制御部22は、ステップS110に戻る。このとき、ステップS110の判定の結果、差分の絶対値が閾値Tsよりも小さい場合(ステップS110,Yes)、攪拌が良好のため分析が継続されるが、分析結果には所定のリマークを付して注意を喚起するようにする。
【0050】
自動分析装置1は、以上のようにして分注された試薬と検体の攪拌中に光学的特性を測定することで、攪拌の良否の判定を反応容器36ごとに行っており、これにより分析に要する時間を短縮することができる。
【0051】
(変形例1)
ここで、吸光度ODAと測定基準値である飽和値ODmixedとの差分の絶対値に係る閾値を閾値Ts1とし、更に吸光度ODAの飽和値ODmixedから攪拌開始Stの吸光度ODsartを引いた値に対する比{ODA/(ODmixed−ODsart)}に係る閾値を閾値Ts2とする。そして、例えば、タイミングT1において測光した際の吸光度ODAをもとにこの2つの閾値Ts1,Ts2と比較すると、判定部27は、攪拌状態をより正確に判定することができる。
【0052】
(変形例2)
また、攪拌の良否を判定する際、タイミングT1において測光した際の吸光度ODAと測定基準値である飽和値ODmixedとの差分の絶対値に代え、タイミングT1において測光した際の吸光度ODAと測定基準値である飽和値ODmixedとの比(=ODA/ODmixed)を所定の閾値Tsと比較することで攪拌の良否を判定してもよい。即ち、吸光度ODAと測定基準値である飽和値ODmixedとの比が所定の閾値Tsより大きい場合(Ts<ODA/ODmixed≦1)には攪拌が良好であり、前記比が所定の閾値Ts以下の場合(Ts≧ODA/ODmixed)には攪拌不良と判定することができる。
【0053】
従って、Ts≧ODA/ODmixedとなる攪拌不良の場合に、測定項目ごとに許容範囲を設定すれば、上述の手順に従って攪拌の良否を判定することができる。
【0054】
(変形例3)
更に、測定基準値である飽和値ODmixedとして、検体に代えて精度管理用試料が試薬と理想状態で攪拌された際の吸光度を飽和値ODmixedとして使用し、100検体毎に測定する精度管理用試料の吸光度と比較して攪拌の良否を判定してもよい。
【0055】
この場合、所定数の検体、例えば、100検体を挟んで測定した2回の精度管理用試料の吸光度が所定の閾値に対して上述の条件を満たしていれば、100検体の攪拌は良好と判定することができる。但し、1回目の精度管理用試料の吸光度が所定の閾値に対して上述の条件を満たしていたにも拘わらず、100検体後に測定した2回目の精度管理用試料の吸光度が所定の閾値に対して上述の条件を満たしていない場合があったとする。この場合には、その間の100検体のいずれかの検体の攪拌中に攪拌機構19に異常が発生したものと判断される。このため、このような場合、自動分析装置1は、分析を中止するか、分析を続行する場合には、「要再検」のリマークを付して分析結果を出力する。
【0056】
変形例3は、検体以外によって攪拌の良否を判定することで、攪拌機構19の異常の有無を発見することができるうえ、自動分析装置1の定期点検時における装置の較正にも利用することができる。
【0057】
なお、上述の実施の形態1及び変形例1は、第1試薬と検体とを攪拌する場合について説明した。しかし、本発明の自動分析装置1は、第1試薬と検体とを攪拌して反応した反応液と第2試薬とを攪拌する場合にも、上述の手順に従って攪拌状態をモニタリングしたり、更には撹拌の良否を判定することができる。
【0058】
(実施の形態2)
次に、本発明の分析装置及び分析方法にかかる実施の形態2について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1の自動分析装置は、反応容器としてキュベットを使用していたのに対し、実施の形態2の自動分析装置はいわゆるラボオンナチップ(Lab-on-a-chip)タイプの透明な容器を使用している。図9は、本発明の分析方法を実行する自動分析装置の構成を反応テーブルを断面にして示すブロック図である。図10は、図9の自動分析装置で用いる反応容器の概略構成を攪拌部と共に示す斜視図である。
【0059】
自動分析装置40は、図9に示すように、検体分注部41、試薬分注部42、反応テーブル43、測光部48、制御部49及び攪拌部50を備えている。
【0060】
検体分注部41は、図9に示すように、検体格納部41aに収容された検体を検体ノズル41bから反応容器45に分注する。試薬分注部42は、試薬格納部42aに収容された試薬を試薬ノズル42bから反応容器45に分注する。検体分注部41及び試薬分注部42は、駆動手段によってそれぞれ個別に駆動され、反応容器45の上方を反応容器45の表面に沿って2次元方向に移動する。
【0061】
反応テーブル43は、図9に示すように、駆動モータ44によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って配置される凹状に成形したホルダ43aが複数設けられている。各ホルダ43aは、底壁の中央に測光窓43bが形成され、反応容器45が着脱自在に収容される。
【0062】
反応容器45は、図10に示すように、表面弾性波素子46と保持部材47とによって液体試料を保持して攪拌、かつ、測光する液体保持部Ppを形成している。液体保持部Ppは、保持部材47の両側部分が互いに対向する開口Op(図11,図12参照)となり、容量が数nL〜数十μLの微量な液体試料を保持する。ここで、反応容器45は、液体保持部Ppへの液体試料の導入が容易になるように、液体保持部Ppを形成する表面弾性波素子46の上面及び保持部材47の内面に液体に対する親和性を付与する処理が施されている。
【0063】
表面弾性波素子46は、音波(表面弾性波)によって液体試料を搬送して液体保持部Ppへ導入すると共に、液体試料を攪拌する攪拌手段であり、図10に示すように、圧電基板46a上に櫛型電極(IDT)からなる振動子46b,46cが保持部材47を挟んで対向配置され、接触電極及びスイッチ52を介して接続される駆動部51によって駆動される。このため、自動分析装置40は、スイッチ52を切り替えるだけで、表面弾性波素子46に対して電源信号及び制御信号を常時伝送することができ、特に、反応テーブル43の回転中であっても所望位置の反応容器45、即ち、表面弾性波素子46を駆動することができる。
【0064】
ここで、図10において、保持部材47の左側に配置される振動子46bが試薬の搬送と攪拌を行い、保持部材47の右側に配置される振動子46cが検体Spの搬送と試薬と検体の攪拌を行う。圧電基板46aは、表面に検体や試薬等の液体試料に対する非親和性処理が施され、水晶,ニオブ酸リチウム(LiNbO3),タンタル酸リチウム(LiTaO3)等の透明な素材を使用することにより、保持部材47の点線で示す部分を測光領域Apとして使用する。
【0065】
保持部材47は、透明素材によってチャンネル状に成形され、図10に示すように、圧電基板46a表面の振動子46b,46cの中間に配置される。このため、液体保持部Ppは、液体試料の測光時に、保持した液体試料の光の透過方向における厚み、即ち、光路長を一定に規定する。
【0066】
測光部48は、図9に示すように、ホルダ43aを挟んで上下方向に対向する位置に設けられる測光手段であり、反応容器45の液体保持部Ppに保持された液体試料を分析する光束BLを出射する光源48aと、液体保持部Ppの液体試料を透過してくる光束BLを分光して受光する受光器48bを有している。測光部48は、液体保持部Ppに保持された液体試料を透過した光束BLの光量から液体試料の光学的特性を測定する。ここで、測光部48における測光が終了した反応容器45は、洗浄装置に移送されて洗浄された後、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0067】
制御部49は、図9に示すように、検体分注部41、試薬分注部42、駆動モータ44、測光部48及び駆動部51と接続され、例えば、メモリとタイマを内蔵し、分析結果を記憶するマイクロコンピュータ等が使用される。制御部49は、自動分析装置40の各部の作動を制御し、受光器48bから出力される透過光の情報に基づいて液体保持部Ppに保持された液体試料の吸光度を演算し、検体の成分濃度等を分析する。制御部49は、前記吸光度をもとに液体保持部Ppに保持された液体試料の攪拌の良否を判定する判定部49aを有している。また、制御部49は、検査項目等を入力する操作を行うキーボードやマウス等の入力部や、実施の形態1で述べたような撹拌状態を示す情報、分析内容、警報等を表示する出力部としてのディスプレイパネル等を備えている。
【0068】
ここで、制御部49は、駆動部51を制御する場合には、例えば、表面弾性波素子46が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、制御部49は、内蔵したタイマに従って発振器12aが発振する発振信号の周波数を切り替えることができる。更に、制御部49は、スイッチ52による振動子46b,46cのオン,オフを切り替える際は、例えば、予め一連の動作に基づいて液体を液滴合体部Puから液体保持部Ppに搬送して送り込み、或いは液体を液体保持部Ppから排出して液滴合体部Puへ搬送するのに要する時間を計測しておき、この時間に基づいてスイッチ52のオン,オフを切り替えるようにする。
【0069】
攪拌部50は、制御部49による制御の下に表面弾性波素子46を駆動して反応容器45に保持される液体を攪拌する部分であり、図9に示すように、駆動部51とスイッチ52を有している。
【0070】
駆動部51は、図10に示すように、制御回路51aと発振器51bとを備えている。制御回路51aは、制御部49から入力される制御信号に従って発振器51bを発振させる。発振器51bは、制御回路51aから入力される制御信号に基づいて発振周波数をプログラマブルに変更可能な発振回路を有しており、数十MHz〜数百MHz程度の高周波の発振信号を振動子46b,46cへ出力する。
【0071】
スイッチ52は、複数の反応容器45と接続されており、駆動部51を介して制御部49によって駆動信号の出力タイミングを切り替えることにより、反応テーブル43の複数のホルダ43aのそれぞれに収容された複数の反応容器45の特定の反応容器45に駆動信号を出力すると共に、表面弾性波素子46の振動子46b,46cのオン,オフを切り替える。このとき、駆動信号の出力先は、制御部49から駆動部51を介して出力される制御信号中に含まれている。
【0072】
以上のように構成される自動分析装置40は、先ず、図10に示すように、試薬ノズル42bから圧電基板46a上の振動子46b近傍の液体保持部Pp寄りに第1試薬R1を分注する。このとき、圧電基板46aは、表面に検体や試薬等の液体に対する非親和性処理が施されているので、第1試薬R1は表面に拡がることなく液滴となる。
【0073】
次に、表面弾性波素子46の振動子46bを駆動して表面弾性波を発生させ、この表面弾性波によって第1試薬R1を保持部材47に向かって液滴の状態で圧電基板46aの表面に沿って搬送する。これにより、第1試薬R1は、表面弾性波素子46と保持部材47とによって形成される液体保持部Ppに送り込まれ、保持される。
【0074】
その後、自動分析装置40は、制御部49の制御の下、スイッチ52を切り替えて振動子46bをオフにし、駆動モータ44を駆動して反応テーブル43を回転させ、第1試薬R1が分注された反応容器45を測光部48へ移動させる。これにより、反応容器45は、光源48aから出射された分析光がホルダ43a下部の測光窓43bから照射され、図9に示すように、第1試薬R1を透過した光束BLが保持部材47から下方へ出射する。
【0075】
すると、受光器48bが、液体保持部Ppを透過してくる光束を受光し、光情報を制御部49へ出力する。この光情報に基づき、制御部49は、第1試薬R1の吸光度を算出し、記憶する。このとき、光路長は、液体保持部Ppによって一定に規定される。
【0076】
このようにして第1試薬R1に関するブランク測光が終了した後、自動分析装置40は、制御部49の制御の下、駆動モータ44を駆動して反応テーブル43を回転させ、第1試薬R1が分注された反応容器45を検体分注部41へ移動させる。
【0077】
次に、自動分析装置40は、制御部49の制御の下、図10に示すように、検体ノズル41bから検体Spを圧電基板46a上の振動子46cと近液体保持部Ppとの間に分注する。そして、自動分析装置40は、制御部49の制御の下、スイッチ52を切り替えて振動子46cをオンにし、分注された検体Spを圧電基板46aの表面に沿って液体保持部Ppへ搬送する。
【0078】
これにより、図11に示すように、液体保持部Ppにおいて検体Spを第1試薬R1と合体させる。ここで、図11は、振動子46b,46c及び保持部材47の中央を通って切断した反応容器45の断面図である。
【0079】
検体Spを第1試薬R1と合体させた後、自動分析装置40は、制御部49の制御の下、駆動モータ44を駆動して反応テーブル43を回転させ、反応容器45を測光部48へ移動させる。そして、自動分析装置40は、振動子46cを更に駆動し、検体Spと第1試薬R1とを攪拌して反応させ、図12に示すように、攪拌中に測光部48によって検体Spと第1試薬R1との反応液Lrを測光する。このとき、測光部48は、液体保持部Ppを透過してくる光束を受光器48bが受光し、反応液Lrの光情報を制御部49へ出力する。
【0080】
次いで、自動分析装置40は、制御部49の制御の下、駆動モータ44を駆動して反応テーブル43を回転させ、反応容器45を試薬分注部42へ移動させ、試薬格納部42aに収容された第2試薬を試薬ノズル42bから反応容器45に分注する。このとき、第2試薬は、振動子46b近傍の液体保持部Pp寄りに分注する。そして、自動分析装置40は、制御部49の制御の下、振動子46bを駆動して第2試薬を液体保持部Ppへ搬送し、反応液Lrと合体させる。
【0081】
その後、自動分析装置40は、制御部49の制御の下、駆動モータ44を駆動して反応テーブル43を回転させ、反応容器45を測光部48へ移動させる。そして、自動分析装置40は、振動子46bを更に駆動して第2試薬と反応液Lrとを攪拌する。そして、第2試薬と反応液Lrとの反応液を測光する。このとき、測光部48は、液体保持部Ppを透過してくる光束を受光器48bが受光し、反応液の光情報を制御部49へ出力する。
【0082】
制御部49は、以上のようにして測光部48から入力される反応液Lrや反応液の光情報をもとに液体保持部Ppに保持された液体試料の吸光度を演算し、検体の成分濃度等を分析する。
【0083】
このとき、判定部49aは、測定した液体試料の光学的特性の測定値をもとに液体試料の攪拌の良否を判定する。この判定は、実施の形態1において説明したように、液体試料が理想状態で攪拌された場合の光学的特性の測定値である吸光度をもとに予め設定された測定基準値と、混合された液体試料の実際の測定値である吸光度との差分を所定の閾値と比較し、この比較をもとに判定部27が液体試料の攪拌の良否を判定する。
【0084】
判定の結果、攪拌不良ではあるが、更なる攪拌を実行すれば差分が所定の許容範囲内となることが期待できる場合がある。このような場合、制御部49は、検体Spと第1試薬R1とを攪拌して反応させる振動子46cの攪拌強度を保持した状態で攪拌時間を延長するか、或いは振動子46cの攪拌強度を増加しつつ攪拌時間を延長する追加攪拌を自動分析装置40に実行させる。
【0085】
上述の攪拌の良否判定においては、吸光度の差分に代えて、吸光度の比を使用してもよいし、実施の形態1で説明した他の変形例を適用してもよい。
【0086】
(変形例)
ここで、反応容器45は、保持部材47を使用するのに代えて、図13に示す反応容器50を使用してもよい。反応容器50は、表面弾性波素子を使用したものであり、図13に示すように、圧電基板50a上に導波路50bを介して金薄膜50c及び振動子50dが形成され、金薄膜50cの部分がプラズモン共鳴を利用した測光領域として使用される。ここで、反応容器50は、導波路50b表面の試薬ノズル42bが試薬Rを分注する部分が、他の部分よりも試薬Rに対する親和性が高くなるように親和性処理が施されて液体保持部Pp1が形成されている。また、金薄膜50cの表面は、検体ノズル41bが検体Spを分注する部分が、他の部分よりも検体Spから反応容器45に分注するに対する親和性が高くなるように親和性処理が施されて液体保持部Pp2が形成されている。
【0087】
このような構成とすることにより、反応容器50は、液体保持部Pp1に試薬ノズル42bによって試薬Rが分注され、金薄膜50c表面の液体保持部Pp2に検体ノズル41bによって検体Spが分注される。そして、反応容器50は、図14に示すように、振動子50dが発生する表面弾性波Wa1によって試薬Rを導波路50b表面に沿って液体保持部Pp2に保持された検体Sp側へと移動させる。
【0088】
そして、反応容器50は、導波路50b表面に沿って移動する試薬Rが検体Spと合体した後、振動子50dに印加する電力を調整し、図15に示すように、合体した試薬Rと検体Spとを液体保持部Pp2に保持した状態で振動子50dが発生する表面弾性波Wa2によって攪拌し、試薬Rと検体Spとが反応した反応液Lrとする。この攪拌中に、反応容器50は、導波路50bに振動子50d側から所定の測定光を入射させ、プラズモン共鳴を利用して測光を行うことにより検体Spの成分濃度を求めても良い。
【0089】
なお、実施の形態1,2の自動分析装置は、共に第1試薬と第2試薬の2つの試薬を使用する分析装置について説明したが、本発明の分析装置は、単一の試薬を使用する装置であってもよい。また、本発明において、撹拌状態としてモニタリングする内容には、判定部27,49aにおける判定結果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の自動分析装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図2】攪拌機構の物理的な構成を模式的に示す図である。
【図3】攪拌機構の機能構成を示すブロック図である。
【図4】反応容器および音波発生部の構成を示す図である。
【図5】自動分析装置における第1試薬の分注,攪拌、検体の分注、第1試薬と検体の攪拌及び液体試料の測光に関するタイミングを示す図である。
【図6】測光部の構成と、装置制御部、出力部、判定部及び音波発生部の攪拌駆動部を示すブロック図である。
【図7】第1試薬と検体を攪拌した場合の吸光度の時間変化をモデル的に説明する図である。
【図8】試薬と検体を攪拌する場合における攪拌の良否判定と、判定結果に基づく処理を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の分析方法を実行する自動分析装置の構成を反応テーブルを断面にして示すブロック図である。
【図10】図9の自動分析装置で用いる反応容器の概略構成を攪拌部と共に示す斜視図である。
【図11】振動子及び保持部材の中央を通って切断した反応容器の断面図である。
【図12】図11に示す反応容器において、検体と第1試薬とを攪拌して反応した反応液の測光を説明する断面図である。
【図13】実施の形態2の自動分析装置で使用する反応容器の変形例を示す断面図である。
【図14】図13に示す反応容器において、分注された試薬を検体側へと移動させる様子を示す断面図である。
【図15】図14に示す反応容器において、合体した試薬と検体とを振動子が発生する表面弾性波によって攪拌する様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 自動分析装置
11 測定機構
12 検体移送部
13a,13b 試薬容器保持部
14 反応容器保持部
15 検体分注部
16a,16b 試薬分注部
17 測光部
18 洗浄部
19 攪拌機構
21 制御分析機構
22 装置制御部
23 入力部
24 出力部
25 記憶部
26 電源部
27 判定部
31 検体容器
32 ラック
34 試薬容器
36 反応容器
40 自動分析装置
41 検体分注部
42 試薬分注部
43 反応テーブル
44 駆動モータ
45 反応容器
46 表面弾性波素子
47 保持部材
48 測光部
49 制御部
49a 判定部
50 攪拌部
51 駆動部
52 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に保持された液体試料を音波によって攪拌して反応させる攪拌手段を備え、反応液の光学的特性を測定して前記液体試料を分析する分析装置であって、
前記光学的特性の測定値をもとに前記液体試料の攪拌状態をモニタリングするための出力手段と、
前記攪拌手段による攪拌動作及び前記光学的特性の測定動作を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記液体試料の撹拌中に測定した前記光学的特性の測定値をもとに前記液体試料の攪拌の良否を判定する判定手段をさらに備え、前記判定手段の判定結果を前記出力手段に出力することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記判定手段による判定が攪拌良の場合には前記容器に保持された前記液体試料の分析を継続し、攪拌不良、かつ、前記光学的特性の測定値が許容範囲内の場合には前記攪拌手段による追加攪拌を実行し、攪拌不良、かつ、前記光学的特性の測定値が許容範囲外の場合には当該容器に保持された前記液体試料の分析を中止することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記判定手段は、測定した少なくとも2つの前記光学的特性の測定値に基づいて前記液体試料の攪拌の良否を判定することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
前記測定値は、前記攪拌手段による攪拌中の測定値及び攪拌終了時の測定値を含むことを特徴とする請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記追加攪拌は、前記制御手段が前記攪拌手段に攪拌強度を保持して実行させる攪拌時間の延長又は攪拌強度を増加して実行させる攪拌時間の延長であることを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記攪拌手段による前記液体試料の攪拌終了タイミングを制御することを特徴とする請求項6に記載の分析装置。
【請求項8】
前記容器を複数保持して回転する容器保持部を備え、
前記容器保持部の回転による前記容器の移動中に前記液体試料の攪拌及び光学的特性の測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項9】
容器に保持された液体試料を音波によって攪拌して反応させ、反応した反応液の光学的特性を測定することで前記液体試料を分析する分析方法であって、
前記液体試料の攪拌中に測定した光学的特性の測定値をもとに前記液体試料の攪拌状態をモニタリングすることを特徴とする分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−162585(P2009−162585A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341072(P2007−341072)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】