説明

分析装置及び分析方法

【課題】総Hb濃度の測定及びHbA1c濃度の測定において、そのコストを下げ、かつ、処理速度を上げることが可能な分析装置及び分析方法を提供する。
【解決手段】ヘモグロビンA1cの濃度を測定するための試薬を試料に分注することにより、反応液を生成する分注手段と、前記反応液に含まれる酸素化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの各吸光度を測定する測光ユニットと、前記各吸光度に基づいてヘモグロビンの濃度を算出する演算手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、試料に試薬を混合することにより反応液を生成し、当該反応液に含まれる成分の濃度を測定する分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘモグロビン(Hb)は赤血球中に含まれ、酸素を運搬する呼吸色素である。ヘモグロビンの中で、グルコースが結合したヘモグロビンA1c(HbA1c)は糖化ヘモグロビンとも呼ばれる。HbA1cの生体内での寿命は、100〜120日といわれ、過去1から2か月の平均血糖を反映している。
【0003】
HbA1cの測定においては、総ヘモグロビン濃度に対するHbA1c濃度の比率であるHbA1c含有比(%)を求める。なお、以下の説明で、総ヘモグロビン濃度を、総Hb濃度または単にHb濃度という場合がある。HbA1cの含有比は、血中グルコースの平均濃度に依存し、血糖値のように食前・食後糖の日内変動がなく被検者の血糖状態を長期的に知る重要なマーカーであり、糖尿病診断には欠かせない測定項目といえる。HbA1cの含有比が高値であって、高血糖である場合は糖尿病の疑いがあるといわれている。
【0004】
わが国において、糖尿病患者数が年々増加しており、糖尿病を含む生活習慣病関連の疾患は、国民医療負担のうちの多くを占めるに至り、特定健診においては、HbA1c測定が必須項目として追加された。そのため、HbA1c測定にかかるコストを下げて、医療負担をできるだけ少なくし、かつ、処理速度を上げて、できるだけ多数の検体を処理したいという要請がある。
【0005】
HbA1cの測定には自動分析装置が用いられる。自動分析装置は、各測定項目(HbA1cの測定項目の他、例えば、肝機能や腎機能などの血液生化学検査項目を含む)を測定する。自動分析装置は、各測定項目に対して何本かの反応容器を割り当てて、各反応容器に対し、試料及び試薬の分注工程、攪拌工程、測定工程、洗浄・乾燥工程の各処理を行う。自動分析装置は、その規模(所有する反応容器など)にもよるが、数人から十数人程度の数検体を一度に処理する。
【0006】
分注工程では各反応容器に試料及び試薬を分注することにより反応液を生成する。攪拌工程では、生成された反応液を攪拌する。測定工程では、反応液に対する特定波長の吸光度を測定し、予め作成しておいた検量線を用いて、測定項目に対する成分濃度を測定する。洗浄・乾燥工程は反応容器を洗浄し、乾燥する。この洗浄・乾燥工程がその回の処理の最終段階であり、その洗浄・乾燥工程後に、測定すべき検体が残っていれば、それらの検体を次回の処理で測定する。
【0007】
従来の自動分析では、総Hb濃度の測定とHbA1c濃度の測定とを別々に行うのが一般的であった。すなわち、総Hb濃度及びHbA1c濃度の両方の測定項目に対して所定本数の反応容器をそれぞれ割り当てる。
【0008】
これに対し、総Hb濃度の測定とHbA1c濃度の測定とを同時に行う技術がある(特許文献1)。
【0009】
すなわち、光透過性支持体の上に試薬層、基質層が積層された乾式分析要素が用いられる。試薬層は、水浸透性層で構成されている。基質層は、水浸透性層で構成され、酵素標識抗体を含む。
【0010】
総Hbの測定は、基質層に溜められた総Hbをヘモグロビン吸収波長で比色測定することにより行われる。HbA1cは、基質層内に含まれる酵素標識抗体と反応するため、HbA1cの濃度と反比例する拡散性生成物が試薬層に拡散・移行する。基質層から拡散・移行していく拡散性生成物は検出試薬組成物によって発色・変色が生じる。この発色・変色を測光し、予め作成しておいた検量線を用いて、拡散性生成物の濃度を求め、その拡散性生成物の濃度とは反比例するHbA1cの濃度を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−266811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、総Hb濃度の測定とHbA1c濃度の測定とを別々に行う従来の自動分析装置では、総Hb濃度及びHbA1c濃度の両方の測定項目に対して数本の反応容器をそれぞれ割り当てるため、その分だけ、他の測定項目に対して割り当てられる反応容器の数が少なくなり、その結果、一度に処理すべき検体数が少なくなるので、処理速度を向上させる際の支障となる。また、総Hb濃度を測定するための試薬とHbA1c濃度を測定するための試薬とをそれぞれ使用するため、コストが嵩むという問題点があった。
【0013】
また、総Hb濃度の測定とHbA1c濃度の測定とを同時に行う前述の公報に記載された技術では、自動分析装置とは別に例えば前処理装置が必要になるという新たな課題がある。
【0014】
この実施形態は、前述の問題を解決するものであり、総Hb濃度の測定及びHbA1c濃度の測定において、そのコストを下げ、かつ、処理速度を上げることが可能な分析装置及び分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、一の実施形態の分析装置は、ヘモグロビンA1cの濃度を測定するための試薬を試料に分注することにより、反応液を生成する分注手段と、前記反応液に含まれる酸素化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの各吸光度を測定する測光ユニットと、前記各吸光度に基づいてヘモグロビンの濃度を算出する演算手段と、を有することを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、一の実施形態の分析方法は、ヘモグロビンA1cの濃度を測定するための試薬を試料に分注することにより、反応液を生成し、前記反応液に含まれる酸素化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの各吸光度を測定し、前記各吸光度に基づいてヘモグロビンの濃度を算出することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この実施形態に係る自動分析装置の内部を示す斜視図。
【図2】自動分析装置において、HbA1cの測定を開始してからその測定を終了するまでの処理を示すフローチャート。
【図3】総Hbの測定を開始してからその測定を終了するまでの処理を示すフローチャート。
【図4】酸素化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、及び、濁度の各吸収スペクトルを示す典型的なグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この自動分析装置の実施形態について各図を参照して説明する。
【0018】
先ず、自動分析装置100の基本構成について図1を参照して説明する。図1は、自動分析装置100の内部を示す斜視図である。
【0019】
この自動分析装置100は、試料及び試薬をそれぞれ分注して攪拌することにより反応液を生成し、反応液中の成分を測定するものである。試料の一例としては、溶血検体が用いられる。また、HbA1c濃度の測定には、第1試薬の一例として、HbA1c血清液が用いられ、第2試薬の一例として、ポリハプテン溶液が用いられる。
【0020】
図1に示す自動分析装置100は、試薬ラック1、第1試薬庫2、第2試薬庫3、試薬容器4、反応庫5、ディスクサンプラ6、試料分注プローブ7、第1試薬分注プローブ8、第2試薬分注プローブ9の各アーム10、攪拌ユニット11、測光ユニット12、洗浄ユニット13、分析部14、データ処理部15、駆動部16、制御部17、反応容器51、及び、試料容器61を有する。試料分注プローブ7、第1試薬分注プローブ8、第2試薬分注プローブ9、及びこれらの各アーム10がこの実施形態の分注手段の一例である。
【0021】
試料は、試料容器61に収納されている。試料容器61は、回転可能な円形状のディスクサンプラ6に載置される。
【0022】
HbA1c濃度を測定するための第1試薬が収容された試薬容器4は、第1試薬庫2に載置されている。また、HbA1c濃度を測定するための第2試薬が収納された試薬容器4は、第2試薬庫3に載置される。第1試薬庫2及び第2試薬庫3には、回動可能な円形状の試薬ラック1が収納されている。各試薬容器4は、この試薬ラック1に環状に並んで収納されている。
【0023】
分析部14は、測光ユニット12を含み、試料と試薬との反応液を分析して、測定結果データを出力する。データ処理部15は、分析部14から出力された測定結果データを演算処理し、演算した結果を備え付けのモニタやプリンタに出力する。駆動部16は、モータやギア等を含み構成され、駆動力を発生して分析部14の各ユニットに伝達させることで、分析部14の各ユニットを駆動させる。制御部17は、駆動部16に指示することで、分析部14が有する各ユニットの駆動を制御する。各ユニットとしては、第1試薬庫2、第2試薬庫3、アーム10を含む。
【0024】
次に、自動分析装置の処理について図2を参照して説明する。図2は、自動分析装置において、HbA1cの測定を開始してからその測定を終了するまでの処理を示すフローチャートである。各回ごとに、一度に各処理(試料及び試薬の分注工程、攪拌工程、測定工程、洗浄・乾燥工程)を行う。
【0025】
(S101:HbA1c測定開始)
各回の処理を開始するにあたり、予め、HbA1c濃度を測定するための反応容器51として、所定本数が割り当てられる。この実施形態における自動分析の特徴は、同じ反応容器51を用いて、HbA1c濃度の測定及び総Hb濃度の側定を行うことにある。
【0026】
(S102:試料分注)
各回の処理では、先ず、試料(溶血検体)の分注を行う。試料分注プローブ7は、ディスクサンプラ6の回動によって規定の吸引位置に搬送された試料容器61から試料を吸引し、吐出位置に搬送された反応容器51に試料を吐出する。
【0027】
(S103:第1試薬分注)
次に、試薬の分注を行う。第1試薬分注プローブ8は、第1試薬庫2の試薬ラック1の回動によって規定の吸引位置に搬送された試薬容器4から第1試薬(HbA1c血清液)を吸引し、規定の吐出位置に搬送された反応容器51に第1試薬を吐出する。
【0028】
(攪拌)
試料及び第1試薬が分注された反応容器51は、攪拌位置に搬送される。攪拌ユニット11は、1サイクル毎に、攪拌位置に停止した反応容器51内における試料及び第1試薬を攪拌する。攪拌することにより反応液を生成する。ここで、サイクルとは、反応容器51が分注位置、攪拌位置、測定位置、洗浄・乾燥位置の各位置を通って元の分注位置に戻るまでの1周分をいう。
【0029】
(S104:総Hb濃度測定)
第1試薬分注から所定時間を経過したとき(ステップS201:Yes)、総Hb濃度測定が行われる。所定時間を経過していないとき(ステップS201:No)、次のサイクルで、攪拌位置に停止した反応容器51内における試料及び第1試薬を攪拌する。例えば、第1試薬分注から約5分後に第2試薬分注が行われる。例えば、総Hb濃度測定は、第1試薬分注から約3分経過後であって、第2試薬分注(第1試薬分注から約5分経過後に行われる)前に行われる。
【0030】
次に、総Hb濃度の測定について図3及び図4を参照して説明する。図3は総Hbの測定を開始してからその測定を終了するまでの処理を示すフローチャート、図4は、酸素化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、及び、濁度の各吸収スペクトルを示す典型的なグラフである。
【0031】
(S202:指定波長を用いた吸光度算出)
試料及び第1試薬分注を攪拌することにより生成され、第1試薬分注から所定時間を経過した反応液が入った反応容器51が測定位置に搬送されると、測光ユニット12は、指定波長により、酸素と結合したヘモグロビンである酸素化ヘモグロビン(酸素化Hb)、酸素を放出した後のヘモグロビンである還元ヘモグロビン(還元Hb)、反応液の濁りの度合いである濁度の各吸光度を測定する。
【0032】
ここで、反応液とは、HbA1c濃度の測定に用いられる第1試薬(HbA1c血清液)及び試料を攪拌することにより生成されたものである。すなわち、HbA1c濃度測定に用いられる第1試薬を、総Hb濃度測定をするための試薬としても用いる。
【0033】
吸光度を測定するとき用いられる指定波長について図4を参照して説明する。図4から、指定波長には、例えば、酸素化Hb、還元Hbの場合、それぞれの吸光スペクトルで吸収が顕著に現れる(吸光度が高い)波長を用いる。吸収が顕著に現れる箇所が2箇所ある場合はその前後の吸光度差が少ない方の波長を用いる。濁度の場合は、酸素化Hb、還元Hbの吸収がほとんどない(吸光度が低い)箇所で、濁度のみ吸収がみられる(吸光度が高い)波長が用いられる。
【0034】
すなわち、酸素化Hbの吸光度が高く、前後の吸光度差が少ない波長の一つは540nmであることがわかるので、指定波長540nm(λ1)を用いて、反応液の酸素化Hb測定用吸光度A1を求める。また、還元Hbの吸光度が、高い波長の一つは560nmであることがわかるので、指定波長560nm(λ2)を用いて、反応液の還元Hb測定用吸光度A2を求める。さらに、酸素化Hb、還元Hbの吸光度がほとんどない箇所で、濁度の吸光度が高い波長の一つは630nmであることがわかるので、指定波長630nm(λ3)を用いて、反応液の濁度測定用吸光度A3を求める。
【0035】
酸素化Hb測定用吸光度A1、還元Hb測定用吸光度A2、濁度測定用吸光度A3を測定した後、その測定結果データをデータ処理部15に出力する。ここで、データ処理部15がこの実施形態の演算手段である。
演算に使用される係数x1、x2、x3および係数y1、y2、y3は以下の関係式に基づいて算出される。
成分x(酸素化Hb)の濃度をCx、成分xのλ1、λ2での特有係数をex1、ex2とした場合、および、成分y(還元Hb)の濃度をCy、成分yのλ1、λ2での特有係数をey1、ey2とした場合、また成分z(濁度)の濃度をCz、成分zのλ1、λ2、λ3での特有係数をez1、ez2、ez3とした場合、指定波長λ1で測定された酸素化Hb測定用吸光度A1は、下記のように表される。
A1=酸素化Hbの吸光度(ex1*Cx)+還元Hbの吸光度(ey1*Cy)+濁度の吸光度(ez1*Cz)
また、指定波長λ2で測定された還元Hb測定用吸光度A2は、下記のように表される。
A2=酸素化Hbの吸光度(ex2*Cx)+還元Hbの吸光度(ey2*Cy)+濁度の吸光度(ez2*Cz)
さらに、指定波長λ3で測定された濁度測定用吸光度A3は、下記のように表される。
A3=濁度の吸光度(ez3*Cz)
上記測定吸光度A1、A2、A3と各成文Cx、Cy、Czの関係式から係数x1、x2、x3および係数y1、y2、y3が算出される。
【0036】
(S203:総Hb濃度演算)
データ処理部15は、Hb濃度を計算するためのプログラムと、それを実行するCPUで構成される。
【0037】
データ処理部15は、上記プログラムに従って以下の式(1)及び吸光度A1、A2、A3、係数x1、x2、x3に基づいて、酸素化Hb濃度Cxを算出し、また、上記プログラムに従って以下の式(2)及び吸光度A1、A2、A3、係数y1、y2、y3に基づいて、還元Hb濃度Cyを算出し、上記プログラムに従って以下の式(3)、先に算出された酸素化Hb濃度Cx、還元Hb濃度Cyに基づいて、総Hb濃度を算出する。
【0038】
酸素化Hb濃度Cxは次の式により求めることができる。
Cx=x1*A1+x2*A2+x3*A3 (1)
ここで、x1、x2、x3、は、酸素化Hbの濃度を算出するための係数として、指定波長に対応してそれぞれ定められる。各係数x1、x2、x3、は、指定波長を用いて測定された吸光度と濃度との関係を表す検量線に基づいて、経験則により求められる。
【0039】
また、還元Hb濃度Cyは、次の式により求めることができる。
Cy=y1*A1+y2*A2+y3*A3 (2)
ここで、y1、y2、y3、は、還元Hbの濃度を算出するための係数として、指定波長に対応してそれぞれ予め定められる。各係数y1、y2、y3、は、指定波長を用いて測定された吸光度と濃度との関係を表す検量線に基づいて、経験則により求められる。
【0040】
さらに、Hb濃度は、次の式により求めることができる。
Hb濃度=Cx+Cy (3)
【0041】
データ処理部15には、式(1)、(2)、(3)及び、係数x1、x2、x3、y1、y2、y3が記憶されている。ここで、データ処理部15が、本実施形態の第1記憶手段及び第2記憶手段である。
【0042】
以上説明したように、HbA1c濃度を測定する処理の中で、総Hb濃度を求めることができる。また、HbA1c濃度を測定するための第1試薬及び上記式(1)〜(3)に基づいて、Hb濃度を求めることが可能となる。
【0043】
(S105:第2試薬分注)
第2試薬分注プローブ9は、第2試薬庫3の試薬ラック1の回動によって規定の吸引位置に搬送された試薬容器4から第2試薬(ポリハプテン溶液)を吸引し、規定の吐出位置に搬送された反応容器51(試料及び第1試薬を攪拌することにより生成された反応液が入っている)に第2試薬を吐出する。
【0044】
(攪拌)
第2試薬がさらに分注された反応容器51は、攪拌位置に搬送される。攪拌ユニット11は、1サイクル毎に、攪拌位置に停止した反応容器51内における反応液、及び、第2試薬(ポリハプテン溶液)を攪拌する。それにより、新たな反応液を生成する。
【0045】
(S106:HbA1c濃度の測定)
次に、反応容器51は、測定位置に搬送される。測光ユニット12は、生成された新たな反応液を測定する。測光ユニット12は、新たな反応液の吸光度を測定した後、その測定結果データをデータ処理部15に出力する。データ処理部15は、吸光度に基づいて、予め作成された検量線に基づいて、HbA1c濃度を求める。さらに、次の式からHbA1cの含有比(%)を求める。
HbA1c含有比(%)=HbA1c濃度/総Hb濃度 (4)
データ処理部15は、プログラムを読み出し、先に算出されたHbA1c濃度、総Hb濃度を元に、HbA1c含有比を算出する。なお、HbA1c含有比を計算するためのプログラムは、例えば、データ処理部15に記憶されている。
【0046】
(S106:測定結果出力)
データ処理部15は、求めたHbA1c含有比(%)を制御部17に出力する。制御部17は、図示省略した表示部にHbA1c含有比(%)を表示させる。
【0047】
(洗浄)
さらに、反応容器51は、洗浄・乾燥位置に搬送される。洗浄ユニット13は、洗浄・乾燥位置に停止した反応容器51内の測定を終えた反応液を吸引すると共に、反応容器51内を洗浄・乾燥する。洗浄・乾燥によりこの回の処理が終了し、次の回の処理に備える。
【0048】
以上説明した実施形態によれば、総Hb濃度を測定するとき、HbA1c濃度の測定に用いる試薬を用い、総Hb濃度を測定するための試薬をわざわざ用いる必要がないので、コストを下げることができる。また、HbA1c濃度及び総Hb濃度の各測定を同じ反応容器51を用いて行うようにしたので、処理速度を上げることが可能となる。
【0049】
なお、前記実施形態では、酸素化Hb濃度Cx及び還元Hb濃度Cyを求める式に、濁度の吸光度を含ませたが、例えば、反応液の濁りの度合いが少ないとき、濁度の吸光度を含ませずに、酸素化Hb濃度Cx及び還元Hb濃度Cyをそれぞれ求めても良い。
【0050】
また、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 試薬ラック 2 第1試薬庫 3 第2試薬庫 4 試薬容器 5 反応庫
6 ディスクサンプラ 7 試料分注プローブ 8 第1試薬分注プローブ
9 第2試薬分注プローブ 10 アーム 11 攪拌ユニット
12 測光ユニット 13 洗浄ユニット 14 分析部 15 データ処理部
16 駆動部 17 制御部 51 反応容器 61 試料容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘモグロビンA1cの濃度を測定するための試薬を試料に分注することにより、反応液を生成する分注手段と、
前記反応液に含まれる酸素化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの各吸光度を測定する測光ユニットと、
前記各吸光度に基づいてヘモグロビンの濃度を算出する演算手段と、
を有する
ことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記分注手段は、ヘモグロビンA1cの濃度を測定するための種類が異なる第1試薬及び第2試薬を時間の間隔をあけて、試料に分注することにより、前記反応液を生成し、
前記測光ユニットは、前記第1試薬の分注後、前記第2試薬の分注前の反応液に含まれる酸素化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの各吸光度を測定し、
前記演算手段は、前記各吸光度を基にヘモグロビンの濃度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記各吸光度には、前記反応液の濁りの度合いである濁度の吸光度を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
酸素化ヘモグロビンの濃度を算出するための係数として、特定波長に対応して予め定められ、酸素化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、濁度にそれぞれ関係する係数x1、x2、x3を記憶する第1記憶手段と、
還元ヘモグロビンの濃度を算出するための係数として、特定波長に対応して予め定められ、酸素化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、濁度にそれぞれ関係する係数y1、y2、y3を記憶する第2記憶手段と、
をさらに備え、
前記分注手段は、ヘモグロビンA1cの濃度を測定するための試薬を試料に分注することにより反応液を生成し、
前記測光ユニットは、前記特定波長により、酸素化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、前記反応液の濁りの度合いである濁度の各吸光度A1、A2、A3をそれぞれ測定し、
前記演算手段は、前記第1記憶手段から読み出された前記x1、x2、x3、前記第1記憶手段から読み出された前記y1、y2、y3、及び前記吸光度A1、A2、A3を、
次の式に代入することにより、
ヘモグロビンの濃度=(x1+y1)*A1+(x2+y2)*A2+(x3+y3)*A3
ヘモグロビンの濃度を計算する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項5】
前記係数は、前記試薬に対応して定められることを特徴とする請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
ヘモグロビンA1cの濃度を測定するための試薬を試料に分注することにより、反応液を生成し、
前記反応液に含まれる酸素化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの各吸光度を測定し、
前記各吸光度に基づいてヘモグロビンの濃度を算出する
ことを特徴とする分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−149977(P2012−149977A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8486(P2011−8486)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】