説明

分析装置用マイクロチップ

【課題】 検出感度を適切に高めることが可能な分析装置用マイクロチップを提供すること。
【解決手段】 分析対象である特定成分がx方向に移動しつつ他の成分から分離される分離流路22と、分離流路22に対してx方向下流側に繋がっており、y方向寸法およびx方向およびy方向のいずれに対しても直角である方向における寸法のいずれもが分離流路22よりも大である拡大断面部を有し、かつ分析のための光が透過する光透過部24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば電気泳動法を用いた分析装置用マイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる特定成分の濃度もしくは量を分析する分析方法として、たとえば、キャピラリー電気泳動法を用いた分析方法が広く実施されている。キャピラリー電気泳動法は、断面積が比較的小である分離流路に泳動液を充填し、さらに上記分離流路の一端寄りに上記試料を導入する。上記分離流路の両端に電圧を加えると、電気泳動により上記泳動液が正極側から負極側へと移動する電気浸透流が生じる。また、上記電圧が印加されることにより、上記特定成分は、それぞれの電気泳動移動度に応じて移動しようとする。したがって、上記特定成分は、上記電気浸透流の速度ベクトルと上記電気泳動による移動の速度ベクトルとを合成した速度ベクトルにしたがって移動する。この移動によって、上記特定成分が他の成分から分離される。この分離された特定成分をたとえば光学的手法によって検出することにより、上記特定成分の量や濃度を分析することができる。
【0003】
図10は、従来の分析装置の一例を示している(たとえば、特許文献1参照)。同図に示された分析装置Xは、マイクロチップ91および電圧印加手段92を備えている。マイクロチップ91には、導入槽911、排出槽913、およびこれらを繋ぐ分離流路912が形成されている。導入槽911および分離流路912には、分析に先立ってたとえば導入ノズル93によって泳動液Lqが充填される。試料容器Bには、たとえば血液などの分析対象である試料Sが貯蔵されている。試料Sは、導入ノズル93を介して導入槽911に導入される。電圧印加手段92は、電源921および2つの電極922,923を備えている。分析に際しては、電極922が導入槽911に浸漬され、電極923が排出槽913に浸漬される。2つの電極922,923間に所定の電圧を印加すると、電気泳動による特定成分の分離が開始する。分離流路912の途中にある光透過部914を挟むように、発光部941および受光部942が配置されている。発光部941には、光源部943からの光が供給される。受光部942は、検出部944に接続されている。検出部944によってたとえば試料Sの吸光度を測定することにより、試料Sの特定成分の濃度を測定することができる。
【0004】
検出部944の検出感度を高めることを目的として、発光部941からの光が照射される光透過部914を長くすることが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の構成は、分離流路912の流れ方向に沿って延びる線状の発光部941と、複数の受光センサが配列された受光部942とを備えている。この線状の発光部941から光透過部914に向けて光を照射し、透過した光を受光部942によって受光する。これにより、より長い部分を検出区間とすることが可能であり、検出感度を高めることができる。
【0005】
しかしながら、線状の発光部941は、たとえばシリンドリカルレンズなどの光学部品を備える必要がある。また、受光部942には、相応の個数の受光センサを設ける必要がある。さらに、発光部941および受光部942を光透過部914に対して正確に位置決めすることは容易ではない。このように、分析装置の大型化、高コスト化、および分析作業の複雑化が招来されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−145245号公報
【特許文献2】特開平10−132783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、検出感度を適切に高めることが可能な分析装置用マイクロチップを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供される分析装置用マイクロチップは、分析対象である特定成分が第1の方向に移動しつつ他の成分から分離される分離流路と、上記分離流路に対して上記第1の方向下流側に繋がっており、かつ上記第1の方向に対して直角である第2の方向における寸法および上記第1および第2の方向のいずれに対しても直角である第3の方向における寸法のいずれもが上記分離流路よりも大である拡大断面部を有し、かつ分析のための光が透過する光透過部と、を備える。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記光透過部は、上記拡大断面部と上記分離流路との間に介在し、かつ上記第1の方向において上流側から下流側に向かうほど上記第2および第3の方向における寸法が大となる徐変部をさらに有する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記分離流路と上記拡大断面部とは、上記第2方向における寸法と上記第3方向における寸法との比が同一である。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記分離流路および上記拡大断面部の上記第2方向における寸法と上記第3方向における寸法との比は、いずれも0.8以上1.2以下である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、互いに貼り合わされた2つの基板を備えており、上記分離流路および上記光透過部は、上記2つの基板に形成された溝によって構成されている。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記分離流路と上記拡大断面部とは、上記第2および第3方向中心位置が一致している。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、互いに貼り合わされた2つの基板を備えており、上記光透過部は、上記2つの基板のいずれか一方のみに形成された溝によって構成されている。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記溝が形成された上記基板には、厚さ方向において上記光透過部と重なり、かつ上記光透過部を透過した光が入射する底面を有する受光側凹部が形成されている。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記分離流路および上記光透過部の断面形状は、矩形状である。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記分離流路および上記光透過部の断面形状は、円形状である。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、キャピラリー電気泳動法を用いた分析を行う分析装置に装てんされる。
【0019】
このような構成によれば、上記拡大断面部を透過する光の透過長さは、上記分離流路の同方向寸法よりも大である。たとえば、吸光度測定を行う場合、特定成分が通過しうる部分を透過する光の透過長さが長いほど、検出精度を高くなる。したがって、上記マイクロチップを用いた分析の検出精度を高めることができる。また、上記拡大断面部の上記第2および第3の方向における寸法のいずれもが、上記分離流路よりも大であることにより、上記分離流路から上記拡大断面部へと向かう流れが乱れることを抑制することができる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に基づく分析装置用マイクロチップおよびこれが装てんされた分析装置を示すシステム概要図である。
【図2】図1の分析装置用マイクロチップを示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1の分析装置用マイクロチップの光透過部を示す要部平面図である。
【図5】図1の分析装置用マイクロチップを示す要部拡大断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う要部断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に基づく分析装置用マイクロチップを示す要部断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に基づく分析装置用マイクロチップを示す要部断面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う要部断面図である。
【図10】従来の分析装置用マイクロチップおよびこれが装てんされた分析装置の一例を示すシステム概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1〜図6は、本発明の第1実施形態に基づく分析装置用マイクロチップを示している。本実施形態のマイクロチップ11は、基板1a,1bが貼り合わされた構造とされており、導入槽21、分離流路22、光透過部24、排出流路25、および排出槽23を有する。マイクロチップ11は、たとえばキャピラリー電気泳動法を用いた分析を行う分析装置Aに装てんされるものである。本分析の分析対象となる特定成分としては、たとえば試料として血液を用いた場合、A1cに代表されるヘモグロビンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
基板1a,1bは、透明な樹脂からなる長矩形状の板状部材であり、マイクロチップ11の本体となるものである。透明な樹脂としては、PDMS(シリコーン樹脂)、PMMA(アクリル樹脂)、PS(ポリスチレン樹脂)、PC(ポリカーボネート樹脂)が挙げられる。基板1a,1bのサイズは、たとえばその長さが58mm程度、幅が9mm程度、厚さが1.5mm程度とされる。
【0025】
導入槽21は、キャピラリー電気泳動法に用いられるバッファと呼ばれる泳動液や分析対象の試料Sが導入される槽であり、分離流路22に繋がっている。上記泳動液の一例としては、たとえば100mMりんご酸−アルギニンバッファ(pH5.0)+1.5%コンドロイチン硫酸Cナトリウムが挙げられる。試料Sは、たとえば血液である。本実施形態においては、導入槽21は、基板1aに形成された貫通孔によって構成されており、その断面形状は、長手方向寸法が5.6mm、幅寸法が1.2mmの略楕円形状とされている。
【0026】
分離流路22は、マイクロチップ11の長手方向であるx方向に長く延びており、キャピラリー電気泳動法において分析対象となる特定成分を分離するために用いられる。分離流路22は、たとえば断面形状が40μm角の正方形状とされており、その長さが20mm程度とされている。図5および図6に示すように、分離流路22は、基板1aに形成された溝22aおよび基板1bに形成された溝22bによって構成されている。なお、分離流路22の断面形状としては、y方向寸法とz方向寸法との比(以下、断面アスペクト比)が0.8〜1.2であることが好ましい。
【0027】
光透過部24は、吸光度測定のための光が透過する部分であり、分離流路22に繋がっている。図4〜図6に示すように、光透過部24は、拡大断面部240および徐変部241,242を有している。なお、図4は、基板1bを示す平面図である。
【0028】
拡大断面部240は、光透過部24のx方向中央に配置されており、吸光度測定のための光を透過させる機能のほとんどを果たす部分である。本実施形態においては、拡大断面部240は、断面形状が45μm角の正方形状とされており、そのx方向長さが2.5mm程度とされている。なお、拡大断面部240の断面形状としては、断面アスペクト比が0.8〜1.2であることが好ましい。
【0029】
徐変部241は、分離流路22と拡大断面部240とを連結する部分であり、x方向において分離流路22から拡大断面部240へと向かうほど断面寸法が大となっている。本実施形態の徐変部241は、その断面形状が分離流路22および拡大断面部240と同様に矩形状(正方形状)とされている。
【0030】
徐変部242は、拡大断面部240と排出流路25とを連結する部分であり、x方向において拡大断面部240から排出流路25へと向かうほど断面寸法が小となっている。本実施形態の徐変部242は、その断面形状が拡大断面部240および排出流路25と同様に正方形状とされている。
【0031】
分離流路22の内面および拡大断面部240の内面と徐変部241の内面とがなす角度は、たとえば30度程度とされている。また、拡大断面部240の内面および排出流路25の内面と徐変部242の内面とがなす角度も、たとえば30度程度とされている。
【0032】
図5および図6に示すように、光透過部24は、基板1aに形成された溝24aと基板1bに形成された溝24bとによって構成されている。溝24aは、溝240a,241a,242aからなり、溝24bは、溝240b,241b,242bからなる。溝240a,240bによって拡大断面部240が構成されており、溝241a,241bによって徐変部241が構成されており、溝242a,242bによって徐変部242が構成されている。
【0033】
排出流路25は、x方向に長く延びており、光透過部24と排出槽23とを連結している。排出流路25は、たとえば断面形状が40μm角の正方形状とされており、その長さが10mm程度とされている。図5および図6に示すように、排出流路25は、基板1aに形成された溝25aおよび基板1bに形成された溝25bによって構成されている。なお、排出流路25の断面形状としては、断面アスペクト比が0.8〜1.2であることが好ましい。
【0034】
排出槽23は、キャピラリー電気泳動法に用いられるバッファと呼ばれる泳動液や分析対象の試料Sが排出される槽であり、排出流路25に繋がっている。本実施形態においては、排出槽23は、基板1aに形成された貫通孔によって構成されており、その断面形状は、長手方向寸法が5.6mm、幅寸法が1.2mmの略楕円形状とされている。
【0035】
発光側凹部27は、基板1aの表面からz方向に凹んだ形状とされており、キャピラリー電気泳動法を用いた分析を行うための光が入射する部位である。図5および図6に示すように、発光側凹部27は、外側凹部271および内側凹部272からなる。
【0036】
外側凹部271は、基板1aの表面から凹んだ部分であり、たとえば断面形状が直径3mm程度の円形、深さが0.8mm程度とされている。内側凹部272は、外側凹部271の底面から凹んだ部分であり、断面形状が直径0.6mm程度の円形、深さが0.2mm程度とされている。z方向視において、内側凹部272は、光透過部24の拡大断面部240と重なっている。内側凹部272の底面は、透過面273とされている。
【0037】
受光側凹部28は、基板1bの表面から厚さ方向に凹んだ形状とされており、キャピラリー電気泳動法を用いた分析を行うための光が出射する部位である。本実施形態においては、受光側凹部28は、略円錐台とされており、開口部が直径2mm程度の円形、深さが0.13mm程度とされている。
【0038】
図4および図5に示すように、受光側凹部28は、透過面281および反射面282を有している。透過面281は、受光側凹部28の底面であり、直径33μm程度の円形である。反射面282は、円錐台の側面に当たる面である。受光側凹部28は、光透過部24の拡大断面部240を挟んで発光側凹部27とは反対側に形成されている。z方向視において、透過面281の中心と拡大断面部240の中心線とは一致するように正対している。
【0039】
図1に示すように、マイクロチップ11が装てんされる分析装置Aは、電圧印加手段3、分析手段4、試料容器B、および導入ノズルNzを備えている。
【0040】
電圧印加手段3は、分離流路22を挟んで導入槽21および排出槽23からキャピラリー電気泳動法に必要な電圧を印加するためのものであり、電源部31、導入側電極32、および排出側電極33を備えている。
【0041】
電源部31は、キャピラリー電気泳動法に必要な電圧を発生するためのものであり、たとえば1.5kV程度の電圧を発生する。導入側電極32および排出側電極33は、電源部31の端子に接続されており、たとえば断面直径0.8〜1.0mmのたとえばCuからなる棒状である。導入側電極32は、導入槽21に浸漬され、排出側電極33は、排出槽23に浸漬される。
【0042】
分析手段4は、たとえば吸光度の測定を実行するものであり、発光部41、受光部42、光源部43、および検出部44によって構成されている。光源部43は、吸光度測定に用いられる光を発生するためのものであり、たとえばレーザー素子またはLED素子(図示略)を備える。たとえばA1cなどのヘモグロビンの濃度を分析する場合、光源部43は、波長が415nmの光を発生するが、これに限定されるものではない。発光部41は、たとえば光ファイバーを介して光源部43と接続されており、光源部43からの光を光透過部24に向けて照射する。本実施形態においては、図3に示すように、発光部41の先端が発光側凹部27に挿入される。図1に示すように、受光部42は、光透過部24からの光を受光する部位であり、たとえば光ファイバーを介して検出部44と接続されている。検出部44は、受光部42が受けた光を検出する。
【0043】
分析装置Aを用いた分析に際しては、たとえば導入ノズルNzから導入槽21へと泳動液Lqが導入される。この泳動液Lqは、導入槽21、分離流路22、光透過部24、排出流路25、および排出槽23を満たす。ついで、試料容器Bに蓄えられた血液などの試料Sが導入ノズルNzに所定量だけ導入される。分析のために、試料Sを希釈することが必要な場合、図示しない希釈手段によって希釈された試料Sが用いられる。電源部31から導入側電極32および排出側電極33に電圧が印加されると、試料Sの分離が始まる。電圧印加の時間が経過するにつれ、特定成分(たとえばA1c)が他の成分から分離される。この分離された特定成分が分離流路22を排出槽23に向かって移動する。光透過部24(拡大断面部240)を特定成分が通過すると、図3に示すように、発光部41から光透過部24(拡大断面部240)を透過して受光部42へと向かう光の一部が特定成分によって吸光される。このときの光量の変化を検出する、いわゆる吸光度測定の原理によって特定成分(A1c)の濃度(通過量)が検出される。
【0044】
次に、マイクロチップ11の作用について説明する。
【0045】
本実施形態によれば、発光部41からの光が透過する拡大断面部240のz方向寸法は、分離流路22のz方向寸法よりも大であり、本実施形態においては拡大断面部240の方が10%強大きい。吸光度測定を行う場合、特定成分が通過しうる部分を透過する光の透過長さが長いほど、検出精度を高くなる。したがって、拡大断面部240を通過する特定成分(A1c)の検出精度を高めることができる。
【0046】
拡大断面部240は、徐変部241を介して分離流路22と繋がっている。このため、分離流路22から拡大断面部240に至る経路においては、断面寸法が比較的緩やかに拡大しており、断面寸法が急激に拡大する部分がない。これは、分離流路22において他の成分から分離された特定成分が流れの乱れによって再び他の成分と混合されてしまうことを防止するのに適している。
【0047】
拡大断面部240は、断面アスペクト比が分離流路22と同じである。分離流路22と拡大断面部240とをつなぐ徐変部241も同様である。このため、分離流路22から拡大断面部240へと特定成分が流れるときに、yz平面における流速分布が過度に乱されることを抑制することができる。また、分離流路22、拡大断面部240、およびこれらを繋ぐ徐変部241の断面アスペクト比が1.0(正方形状)であることは、流れの乱れを抑制するのに好適である。
【0048】
図7〜図9は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0049】
図7は、本発明の第2実施形態に基づく分析装置用マイクロチップを示している。本実施形態のマイクロチップ12は、分離流路22および光透過部24の断面形状が上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、分離流路22および光透過部24の断面形状は円形とされている。分離流路22の断面直径は、たとえば40μm程度であり、光透過部24の拡大断面部240の断面直径は、たとえば45μm程度である。分離流路22および光透過部24の断面形状としては、円形状のほかに楕円形状であってもよい。この場合、断面アスペクト比が0.8〜1.2であることが好ましい。
【0050】
このような実施形態によっても、拡大断面部240を通過する特定成分(A1c)の検出精度を高めることができる。
【0051】
図8および図9は、本発明の第3実施形態に基づく分析装置用マイクロチップを示している。本実施形態のマイクロチップ13は、分離流路22と光透過部24との位置関係が、上述した実施形態と異なっている。
【0052】
本実施形態においては、分離流路22は、基板1bに形成された溝22bのみによって構成されている。また、光透過部24は、基板1bに形成された溝24bのみによって形成されている。分離流路22のz方向中心位置に対して、拡大断面部240のz方向中心は、z方向下方に若干ずれている。
【0053】
このような実施形態によっても、拡大断面部240を通過する特定成分(A1c)の検出精度を高めることができる。また、基板1aには、分離流路22および光透過部24を構成するための溝を設ける必要がない。これにより、基板1aの製作を簡略化することができる。
【0054】
本発明に係る分析装置用マイクロチップは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る分析装置用マイクロチップの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0055】
A 電気泳動分析装置
B 試料容器
Lq 泳動液
S 試料
Nz 導入ノズル
11〜13 (電気泳動分析用)マイクロチップ
1a,1b 基板
21 導入槽
22 分離流路
22a,22b 溝
23 排出槽
24 光透過部
24a,24b 溝
240 拡大断面部
241,242 徐変部
240a,240b,241a,241b,242a,242b 溝
25 排出流路
25a,25b 溝
27 発光側凹部
271 外側凹部
272 内側凹部
273 透過面
28 受光側凹部
281 透過面
282 反射面
3 電圧印加手段
31 電源部
32 導入側電極
33 排出側電極
4 分析手段
41 発光部
42 受光部
43 光源部
44 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象である特定成分が第1の方向に移動しつつ他の成分から分離される分離流路と、
上記分離流路に対して上記第1の方向下流側に繋がっており、かつ上記第1の方向に対して直角である第2の方向における寸法および上記第1および第2の方向のいずれに対しても直角である第3の方向における寸法のいずれもが上記分離流路よりも大である拡大断面部を有し、かつ分析のための光が透過する光透過部と、
を備える、分析装置用マイクロチップ。
【請求項2】
上記光透過部は、上記拡大断面部と上記分離流路との間に介在し、かつ上記第1の方向において上流側から下流側に向かうほど上記第2および第3の方向における寸法が大となる徐変部をさらに有する、請求項1に記載の分析装置用マイクロチップ。
【請求項3】
上記分離流路と上記拡大断面部とは、上記第2方向における寸法と上記第3方向における寸法との比が同一である、請求項1または2に記載の分析装置用マイクロチップ。
【請求項4】
上記分離流路および上記拡大断面部の上記第2方向における寸法と上記第3方向における寸法との比は、いずれも0.8以上1.2以下である、請求項1ないし3のいずれかに記載の分析装置用マイクロチップ。
【請求項5】
互いに貼り合わされた2つの基板を備えており、
上記分離流路および上記光透過部は、上記2つの基板に形成された溝によって構成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の分析装置用マイクロチップ。
【請求項6】
上記分離流路と上記拡大断面部とは、上記第2および第3方向中心位置が一致している、請求項1ないし5のいずれかに記載の分析装置用マイクロチップ。
【請求項7】
互いに貼り合わされた2つの基板を備えており、
上記光透過部は、上記2つの基板のいずれか一方のみに形成された溝によって構成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の分析装置用マイクロチップ。
【請求項8】
上記溝が形成された上記基板には、厚さ方向において上記光透過部と重なり、かつ上記光透過部を透過した光が入射する底面を有する受光側凹部が形成されている、請求項7に記載の分析装置用マイクロチップ。
【請求項9】
上記分離流路および上記光透過部の断面形状は、矩形状である、請求項1ないし8のいずれかに記載の分析装置用マイクロチップ。
【請求項10】
上記分離流路および上記光透過部の断面形状は、円形状である、請求項1ないし6のいずれかに記載の分析装置用マイクロチップ。
【請求項11】
キャピラリー電気泳動法を用いた分析を行う分析装置に装てんされる、請求項1ないし10のいずれかに記載の分析装置用マイクロチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−68214(P2012−68214A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215604(P2010−215604)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)