説明

分析装置

【課題】簡易かつ迅速に分析処理を開始できるとともにセキュリティ性を向上させた分析装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、操作者の操作にしたがって検体を分析する分析装置1において、個人生体情報である指紋情報を入力する指紋入力部34と、予め取得された各操作者の指紋情報を記憶する記憶部37と、指紋入力部34によって入力された指紋情報と記憶部37に記憶された指紋情報とを照合して指紋入力部34によって入力された指紋情報に対応する操作者を特定する指紋照合部32と、指紋照合部32によって特定された操作者に応じて実施可能である操作を制限する操作制御部33と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作者の操作にしたがって検体を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、多数の検体に対する分析処理を同時に行い、さらに、多成分を迅速に、かつ、高精度で分析できるため、免疫学検査、生化学検査、輸血検査などさまざまな分野での検査に用いられている。このような分析装置は、反応容器内で検体と試薬とを反応させる反応機構、各試薬と検体との反応液を光学的に測定する測定機構を所定のターンテーブル上に配置し、さらに検体、試薬および反応液を各機構に分注または移送する複数の分注移送機構を備え、様々な分析項目の検査を行っている。ここで、分析装置においては、検体提供者に関する個人情報を扱うため、個人情報漏洩防止の観点から、分析装置の操作を行う場合には、操作者に対してIDとパスワードの入力を要求していた。そして、従来においては、円滑な分析処理を実現するために、操作者の能力に対応して操作可能範囲を変える場合があった。このため、分析装置は、IDとパスワードを照合し、IDに対応する操作者を確認できた場合に、各操作者に対応させて分析装置の操作を許可していた(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平1−250758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分析装置の分析対象である検体は、提供者から採取された血液や尿などの生体液である。このような生体液は、経時的に変性しやすいため、提供者から採取されてから分析装置において実際に分析されるまでの待機時間を短縮することが望ましい。
【0005】
しかしながら、従来の分析装置においては、分析処理を開始するためには、まず初めに操作者がマウスやキーボードを操作してIDとパスワードを入力するという煩雑な処理を行う必要があった。さらに、従来の分析装置においては、IDとパスワードによる操作者特定方式を採用していたため、IDの誤入力の発生およびID、パスワードの不正使用による個人情報漏洩のおそれもあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易かつ迅速に分析処理を開始できるとともにセキュリティ性を向上させた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、操作者の操作にしたがって検体を分析する分析装置において、個人生体情報を入力する入力手段と、予め取得された各操作者の個人生体情報を記憶する記憶手段と、前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報に対応する操作者を特定する照合手段と、前記照合手段によって特定された操作者に応じて実施可能である操作を制限する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、操作者の操作にしたがって検体を分析する分析装置において、個人生体情報を入力する入力手段と、予め取得された各操作者の個人生体情報を記憶する記憶手段と、前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報に対応する操作者を特定する照合手段と、操作を受け付ける各操作画面を表示出力する出力手段と、前記照合手段によって特定された操作者に応じて前記出力手段における各操作画面の表示出力を制限する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、操作者の操作にしたがって検体を分析する分析装置において、個人生体情報を入力する入力手段と、予め取得された各操作者の個人生体情報を記憶する記憶手段と、前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報に対応する操作者を特定する照合手段と、前記照合手段によって特定された操作者に対応した操作条件を設定する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、前記記憶手段は、前記操作者の複数の個人生体情報を記憶し、前記照合手段は、前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報がいずれの前記操作者のいずれの前記個人生体情報であるかを特定し、前記制御手段は、前記照合手段によって特定された操作者および該操作者のいずれの前記個人生体情報であるかによって実施可能である操作を制限することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析装置は、前記記憶手段は、前記操作者の複数の個人生体情報を記憶し、前記照合手段は、前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報がいずれの前記操作者のいずれの前記個人生体情報であるかを特定し、前記制御手段は、前記照合手段によって特定された操作者および該操作者のいずれの前記個人生体情報であるかによって前記出力手段における各操作画面の表示出力を制限することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる分析装置は、前記記憶手段は、前記操作者の複数の個人生体情報を記憶し、前記照合手段は、前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報がいずれの前記操作者のいずれの前記個人生体情報であるかを特定し、前記制御手段は、前記照合手段によって特定された操作者および該操作者のいずれの前記個人生体情報であるかによって前記操作条件を設定することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる分析装置は、前記個人生体情報は、指に関する情報であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、入力手段によって入力された個人生体情報と記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して入力手段によって入力された個人生体情報に対応する操作者を特定し、特定された操作者に応じて実施可能である操作を制限するため、簡易かつ迅速に分析処理を開始できるとともにセキュリティ性を向上させた分析装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0016】
図1は、本実施の形態にかかる分析システムの全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる分析装置1は、反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2の駆動制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3とを有する。分析装置1は、測定機構2と制御機構3とが協働することによって、血液や体液等の検体に対する免疫学検査、生化学検査、輸血検査を行う。
【0017】
測定機構2は、搬送される反応容器に、検体等の試料および試薬を順次分注し、攪拌した後、検体と試薬が反応した反応液を光学的に測定する。光学的測定が終了した反応容器は、そのまま廃棄される場合もあり、洗浄後に再度検体の分析に使用される場合もある。
【0018】
制御機構3は、図2の本体部101に示すように、一または複数のコンピュータシステムを用いて実現され、測定機構2に接続する。制御機構3は、分析装置1の各処理にかかわる各種プログラムを用いて、測定機構2の動作処理の制御を行うとともに測定機構2から出力された測定情報の分析を行い保存する。制御機構3は、制御部31、指紋入力部34、入力部35、分析部36、記憶部37、出力部38および送受信部39を備える。
【0019】
制御部31は、制御機能を有するCPU等を用いて構成され、分析装置1の各構成部位の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。制御部31は、記憶部37が記憶するプログラムをメモリから読み出すことにより分析装置1の制御を実行する。制御部31は、指紋照合部32と操作制御部33とを有する。
【0020】
指紋入力部34は、個人生体情報である指紋情報の入力を行い、入力された指紋情報を制御部31に送出する。指紋入力部34は、たとえば、図2に示すように、制御部31を構成する本体部101に接続する指紋押圧装置105であり、操作者によって所定の指紋押圧領域に指の腹が押し付けられることによって、指紋入力部34に指紋情報が入力される。指紋入力部34は、指紋押圧領域に設けられた所定の測定点において圧力値を検出する。そして、指紋処理部32は、指紋押圧領域に操作者が所定の指の腹を押し付けた際に指紋の凹部と凸部とでは圧力値が異なることを利用して、各測定点における圧力値を処理し、指紋の凹凸に応じた圧力分布を形成し、この圧力分布である指紋パターンを指紋情報として制御部31に出力する。
【0021】
入力部35は、図2に示すように種々の情報を入力するためのキーボード103、出力部38の表示画面上における任意の位置を指定するためのマウス104等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部36は、測定機構2から取得した測定結果に基づいて検体の成分分析等を行う。
【0022】
記憶部37は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部37は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。記憶部37は、生体情報である指紋と、この生体情報に対応する操作者を識別する情報とを示す照合テーブルを記憶する。また、記憶部37は、各操作者と各操作者に対応する操作条件とを示す設定テーブルを記憶する。
【0023】
出力部38は、図2に示すディスプレイ102のほか、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。送受信部39は、通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行うインターフェースとしての機能を有する。
【0024】
指紋照合部32は、指紋入力部34によって入力された指紋情報と記憶部37に記憶された指紋情報とを照合し、指紋入力部34によって入力された指紋情報に対応する操作者を特定する。指紋照合部32は、指紋入力部34から入力された指紋パターンを処理し、この指紋パターンに対応する識別情報を取得する。そして、指紋照合部32は、記憶部37に記憶された照合テーブルを参照し、指紋パターンに対応する識別情報がいずれの操作者に該当するかを判断する。
【0025】
操作制御部33は、指紋照合部32によって特定された操作者に応じて、実施可能である操作を制限する。操作制御部33は、指紋照合部32によって特定された操作者に応じて、出力部38における各操作画面の表示出力を制限する。
【0026】
つぎに、図3を参照して、分析装置1における操作画面を表示するまでの処理手順について説明する。図3に示すように、制御部31は、入力部35から入力された分析装置の起動を指示する指示情報の有無をもとに、分析装置1が起動するか否かを判断する(ステップS2)。制御部31は、分析装置1が起動すると判断するまでステップS2の判断処理を繰り返し、分析装置1が起動すると判断した場合(ステップS2:Yes)、指紋入力部34は、分析装置1を操作する操作者の指紋情報を制御部31に入力する(ステップS4)。この場合、出力部38は、図4のメニューM1に示すように、欄C1に「ユーザ認証を行って下さい」と示されたメニューを表示して、指紋押圧装置105に所定の指の腹を押し付けるよう操作者に促す。そして、操作者が指紋押圧装置105に指の腹を押し付けた場合、指紋入力部34は、押し付けられた指の指紋パターンを取得して、指紋パターンを指紋情報として制御部31に入力する。
【0027】
指紋照合部32は、指紋入力部34から入力された指紋パターンを処理し、記憶部37に記憶された照合テーブルを参照して、指紋入力部34によって入力された指紋情報に対応する操作者を特定する指紋照合処理を行う(ステップS6)。この指紋照合処理においては、図5のテーブルTs1に例示する照合テーブルを参照することによって、指紋入力部34によって入力された指紋パターンに対応する操作者を特定している。たとえば、指紋照合部32は、指紋パターンに対応する識別情報が「123456」であると判断した場合、分析装置1の操作者は、この指紋パターンに対応する操作者「A」であると判断する。
【0028】
つぎに、操作制御部33は、記憶部37内の設定テーブルを参照する(ステップS8)、設定テーブルは、図6のテーブルT1に示すように、操作者ごとに操作可能または操作不可能である操作内容を対応させている。そして、操作制御部33は、指紋照合部32によって特定された操作者に応じて実施可能である操作を制限する操作制限設定処理を行う(ステップS10)。
【0029】
たとえば、指紋照合部32が分析装置の操作者が上級操作者である「A」であると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT1の内容にしたがって、図7に示すような分析メニューMA1を出力部38に表示させる。操作者Aについては、テーブルT1に示すように、(R)ルーチン、(P)パラメータ、(A)補助、(M)メンテナンス、(U)ユーザ、(L)ログアウトのすべての操作が可能である分析メニューMA1が表示される。
【0030】
また、指紋照合部32が分析装置の操作者が中級操作者である「B」であると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT1の内容にしたがって、図8に示すような分析メニューMB1を出力部38に表示させる。操作者Bについては、テーブルT1に示すように、(R)ルーチン、(P)パラメータ、(L)ログアウトの操作が可能であり、領域SB1内の(A)補助、(M)メンテナンス、(U)ユーザの操作が不可能である分析メニューMB1が表示される。
【0031】
また、指紋照合部32が分析装置の操作者が初級操作者である「C」であると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT1の内容にしたがって、図9に示すような分析メニューMC1を出力部38に表示させる。操作者Cについては、テーブルT1に示すように、(R)ルーチン、(L)ログアウトの操作が可能であり、領域SC1内の(P)パラメータ、(A)補助、(M)メンテナンス、(U)ユーザの操作が不可能である分析メニューMC1が表示される。
【0032】
また、分析装置1においては、操作者に応じて、(R)ルーチン、(P)パラメータ、(A)補助、(M)メンテナンス、(U)ユーザ、(L)ログアウトにおける各項目の操作を制限してもよい。この場合、操作制御部33は、ステップS8において、図6に示すテーブルT1とともに、図10に例示するテーブルT2を設定テーブルとして参照する。図10に示すテーブルT2は、操作者ごとに(R)ルーチン、(P)パラメータ操作などにおける操作可能である各項目を対応させている。
【0033】
テーブルT2に示すように、指紋照合部32が分析装置の操作者が上級操作者である「A」であると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT2の内容にしたがって、(R)ルーチン、(P)パラメータ操作などのすべての項目が操作可能である分析メニューを出力部38に出力させる。
【0034】
これに対し、指紋照合部32が分析装置の操作者が中級操作者である「B」であると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT2の内容にしたがって、(P)パラメータ操作のうち項目(Q)および項目(B)が操作不可能である分析メニューを出力部38に出力させる。具体的には、図11に示すように、分析メニューMB2が表示される。分析メニューMB2においては、(P)パラメータ操作に対応する領域を選択した場合、項目(Y),(I),(H),(R)に対しては操作可能であるが、領域Sb1内の項目(Q)および(B)に対しては、操作不可能となっている。
【0035】
また、指紋照合部32が分析装置の操作者が初級操作者である「C」であると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT2の内容にしたがって、(R)ルーチン操作のうち項目(Q),(D),(L)、(P)パラメータ操作のうち項目(I),(H),(R),(Q),(B)が操作不可能である分析メニューを出力部38に出力させる。具体的には、図12に示すように、分析メニューMC2が表示される。分析メニューMC2においては、(R)ルーチン操作に対応する領域を選択した場合、項目(S),(T),(R),(C),(P),(L)に対しては操作可能であるが、領域Sc1内の項目(Q)および項目(D)に対しては、操作不可能となっている。
【0036】
このように、分析装置1においては、所定の指を指紋押圧装置105に押し付けるという簡易な処理を行うだけで、分析装置1のログインおよび操作者に対応させた操作可能範囲の制限が可能になる。言い換えると、分析装置1によれば、操作者は、従来必要であったマウスやキーボード操作によるIDおよびパスワード入力、分析項目の設定処理などの煩雑な処理を行う必要がなく、指紋情報を入力さえすれば、各操作者に対応した操作可能範囲が自動的に設定される。このため、分析装置1によれば、IDの誤入力の発生やID、パスワードの不正使用による個人情報漏洩を防止できるとともに、ログイン処理までに要する時間を削除することができる。また、分析装置1によれば、操作者に対応させて操作可能範囲を制限し、操作者によっては個人情報の閲覧を不可能とすることによって、セキュリティ向上を図ることができる。さらに、分析装置1によれば、分析装置1の保守点検者のみに対して保守点検操作を可能とすることによって、または、分析装置1の主担当者のみがパラメータ設定などの所定の分析設定処理を可能とすることによって、分析装置の円滑な運用を図ることが可能になる。したがって、分析装置1によれば、簡易かつ迅速に分析処理を開始できるとともにセキュリティ性を向上させることが可能になる。
【0037】
なお、分析装置1においては、図13のテーブルTs2に示すように、記憶部37は、操作者の複数の指紋情報を記憶してもよい。そして、操作制御部33は、各操作者の各指紋情報に対応させて操作制限を行ってもよい。
【0038】
この場合、分析装置1は、図3のステップS2〜ステップS4を行った後、図3のステップS6において、指紋照合部32は、指紋入力部34によって入力された指紋情報と記憶部37に記憶された指紋情報とを照合し、指紋入力部34によって入力された指紋情報に対応する操作者に加え、この操作者のいずれの部位の指紋情報であるかを特定する。また、記憶部37は、図14のテーブルT22に示すように、各操作者および各操作者の各部位における指紋情報に対応する操作内容を示す設定テーブルを記憶する。操作制御部33は、図3に示すステップS8において、図14のテーブルT22を参照する。そして、操作制御部33は、図3に示すステップS10において、指紋照合部32によって特定された操作者および該操作者のいずれの部位の指紋情報であるかに応じて操作条件を制限する。操作制御部33は、図3に示すステップS8において、図14のテーブルT22を参照する。また、操作制御部33は、指紋照合部32によって特定された操作者および該操作者のいずれの部位の指紋情報であるかによって出力部38における各操作画面の表示出力を制限する。
【0039】
具体的には、テーブルT22における操作者「A」の「人差指」に対応する操作項目が(R)ルーチンの項目(S),(T),(R),(C),(P)である場合、操作者Aが人差指で認証を行うと、図15に示すように、操作者Aの人差指に対応した各項目(S),(T),(R),(C),(P)がプルダウン表示された分析メニューMA2が表示される。言い換えると、(R)ルーチン操作における項目(Q),(D),(L)の操作が制限された分析メニューMA2が表示される。操作者Aが(R)ルーチンの所定の項目しか操作をしない場合には、操作を行う(R)ルーチンの所定項目を表示させた分析メニューMA2をそのまま表示させることによって、各メニューを開き所望の項目を表示させるという煩雑な処理を省くことが可能になる。また、操作者Aが中指で認証を行った場合には、テーブルT22に示すように、(R)ルーチン操作および(P)パラメータ操作における各項目のすべての操作が可能である図7に例示する分析メニューMA1が表示される。このように、各操作者の各部位の指紋情報にそれぞれ対応させて、表示画面をさらに変更させてもよい。
【0040】
つぎに、操作者が実施可能である操作を操作者に対応した操作条件の操作のみに積極的に制限して、指紋照合部33によって特定された操作者に対応した操作条件を自動的に設定する場合について説明する。この場合、操作制御部33は、指紋照合部32によって特定された操作者に対応した操作条件を設定し、指紋照合部32によって特定された操作者に対応した操作条件を設定した状態で、所定の操作画面を出力部38に対して表示出力させている。
【0041】
図16は、分析装置1が各操作者に対応する操作条件を設定するまでの処理手順に示すフローチャートである。図16に示すように、図3におけるステップS2〜ステップS8の処理手順と同様に、制御部31は分析装置起動に対する判断処理(ステップS22)を行い、指紋入力部34は指紋入力処理(ステップS24)を行い、指紋照合部32は、指紋照合処理を(ステップS26)を行い、操作制御部33は設定テーブル参照処理(ステップS28)を行う。ここで、設定テーブルは、図17のテーブルT3に示すように、操作者ごとに表示メニューの種別、設定内容、使用するパラメータファイルを対応させている。そして、操作制御部33は、指紋照合部32によって特定された操作者に対応した操作条件を設定した状態で、所定の操作メニュー画面を出力部38に対して表示出力させる(ステップS30)。
【0042】
たとえば、指紋照合部32が分析装置の操作者が「A」であると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT3の内容にしたがって、図18に示すようなパラメータ設定メニューMA3を出力部38に表示させる。操作者Aは、このパラメータ設定メニューMA3上の領域Cpの各パラメータをキーボードやマウスなどの操作を行うことによって設定することができる。したがって、操作者Aは、指紋入力後にそのままパラメータ設定を行うことができ、マウスを操作して各メニューを順番に開いて目的とするパラメータ設定メニューを呼び出す必要がない。
【0043】
また、指紋照合部32が分析装置の操作者が「B」であると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT3の内容にしたがって、図19に示すような再検査を受け付ける分析メニューMB3を表示させる。この場合、操作制御部33は、テーブルT3に示す「b」のファイルに記憶された各パラメータで分析条件を設定したうえで、分析メニューMB3を出力部38に表示させる。
【0044】
また、指紋照合部32が分析装置の操作者が「C」であると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT3の内容にしたがって、図20に示すような通常分析メニューMC3を出力部38に表示させる。この場合、操作制御部33は、テーブルT3に示す「c」のファイルに記憶された各パラメータで分析条件を設定したうえで、通常分析メニューMC3を出力部38に表示させる。
【0045】
このように、分析装置1によれば、操作者の指紋情報に対応させて各操作条件を設定した操作画面を表示出力することによって、さらに簡易かつ迅速に分析処理を行うことが可能になる。
【0046】
また、記憶部37は、各操作者の複数の部位の指紋情報を記憶し、操作制御部33は、各操作者の各部位の指紋情報に対応させて操作条件を設定してもよい。たとえば、操作制御部33は、図16に示すステップS28において、記憶部37に記憶された図21のテーブルT31を参照する。そして、操作制御部33は、16に示すステップS30において、指紋照合部32によって特定された操作者および該操作者のいずれの部位の指紋情報であるかに応じて操作条件を設定した状態で所定の操作メニューを出力部38に表示出力させる。
【0047】
たとえば、指紋照合部32が指紋入力部34から入力された指紋情報が操作者「A」の人差指に対応すると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT31の内容にしたがって、図18に示すようなパラメータ設定メニューMA3を出力部38に表示させる。これに対し、指紋照合部32が指紋入力部34から入力された指紋情報が操作者Aの中指に対応すると特定した場合、操作制御部33は、テーブルT31の内容にしたがって、図22に示すような精度管理メニューMA4を出力部38に表示させる。
【0048】
また、指紋照合部32が指紋入力部34から入力された指紋情報が操作者「C」の人差指に対応すると特定した場合、操作制御部33は、図23に示すように、テーブルT31の内容にしたがって、パラメータファイルcを使用し「ALB,GOT,G−GPT」の分析項目が欄Cb内にすでに設定された通常分析メニューMC4を出力部38に表示させる。これに対し、指紋照合部32が指紋入力部34から入力された指紋情報が操作者「C」の中指に対応すると特定した場合、操作制御部33は、図24に示すように、テーブルT31の内容にしたがってパラメータファイルcを使用し「ALB,GOT,GPT」の分析項目が欄Cb内にすでに設定された通常分析メニューMC5を出力部38に表示させる。このように、操作者ごとに複数の操作条件を設定し、さらに簡易かつ迅速な分析処理を実現してもよい。
【0049】
また、指紋入力部34は、指紋の凹部と凸部との圧力値の差に基づいて指紋情報を取得する場合について説明したが、これに限らず、指紋の凹部と凸部の伝熱特性の差に基づいて指紋情報を取得してもよく、指紋の凹部と凸部の静電容量の差に基づいて指紋情報を取得してもよい。また、指紋の凹部および/または凸部を撮像して光学的に指紋情報を取得してもよい。
【0050】
また、実施の形態として、個人生体情報として指紋情報を取得することによって操作者を特定する場合について説明したが、これに限らず、手のひらの静脈、声紋、DNAなどの個人生体情報を入力し、この個人生体情報にもとづき操作者を特定してもよい。
【0051】
また、上記実施の形態で説明した分析装置1は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置1の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワークを介して他のコンピュータシステムなどからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置1の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態にかかる分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態にかかる分析装置の概略図である。
【図3】図1に示す分析装置における操作制限設定までの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図5】図1に示す記憶部が記憶する照合テーブルの一例を示す図である。
【図6】図1に示す記憶部が記憶する設定テーブルの一例を示す図である。
【図7】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図8】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図9】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図10】図1に示す記憶部が記憶する設定テーブルの一例を示す図である。
【図11】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図12】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図13】図1に示す記憶部が記憶する照合テーブルの一例を示す図である。
【図14】図1に示す記憶部が記憶する設定テーブルの一例を示す図である。
【図15】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図16】図1に示す分析装置における操作画面を表示するまでの処理手順を示すフローチャートである。
【図17】図1に示す記憶部が記憶する設定テーブルの一例を示す図である。
【図18】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図19】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図20】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図21】図1に示す記憶部が記憶する設定テーブルの一例を示す図である。
【図22】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図23】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【図24】図1に示す出力部が有するディスプレイの表示画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 分析装置
2 測定機構
3 処理機構
31 制御部
32 指紋照合部
33 操作制御部
34 指紋入力部
35 入力部
36 分析部
37 記憶部
38 出力部
39 送受信部
101 本体部
102 ディスプレイ
103 キーボード
104 マウス
105 指紋押圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の操作にしたがって検体を分析する分析装置において、
個人生体情報を入力する入力手段と、
予め取得された各操作者の個人生体情報を記憶する記憶手段と、
前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報に対応する操作者を特定する照合手段と、
前記照合手段によって特定された操作者に応じて実施可能である操作を制限する制御手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
操作者の操作にしたがって検体を分析する分析装置において、
個人生体情報を入力する入力手段と、
予め取得された各操作者の個人生体情報を記憶する記憶手段と、
前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報に対応する操作者を特定する照合手段と、
操作を受け付ける各操作画面を表示出力する出力手段と、
前記照合手段によって特定された操作者に応じて前記出力手段における各操作画面の表示出力を制限する制御手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項3】
操作者の操作にしたがって検体を分析する分析装置において、
個人生体情報を入力する入力手段と、
予め取得された各操作者の個人生体情報を記憶する記憶手段と、
前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報に対応する操作者を特定する照合手段と、
前記照合手段によって特定された操作者に対応した操作条件を設定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記操作者の複数の個人生体情報を記憶し、
前記照合手段は、前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報がいずれの前記操作者のいずれの前記個人生体情報であるかを特定し、
前記制御手段は、前記照合手段によって特定された操作者および該操作者のいずれの前記個人生体情報であるかによって実施可能である操作を制限することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記操作者の複数の個人生体情報を記憶し、
前記照合手段は、前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報がいずれの前記操作者のいずれの前記個人生体情報であるかを特定し、
前記制御手段は、前記照合手段によって特定された操作者および該操作者のいずれの前記個人生体情報であるかによって前記出力手段における各操作画面の表示出力を制限することを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、前記操作者の複数の個人生体情報を記憶し、
前記照合手段は、前記入力手段によって入力された個人生体情報と前記記憶手段に記憶された個人生体情報とを照合して前記入力手段によって入力された個人生体情報がいずれの前記操作者のいずれの前記個人生体情報であるかを特定し、
前記制御手段は、前記照合手段によって特定された操作者および該操作者のいずれの前記個人生体情報であるかによって前記操作条件を設定することを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項7】
前記個人生体情報は、指に関する情報であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−82744(P2008−82744A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260546(P2006−260546)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】