説明

分水栓の施工方法

【課題】複合管を用いた更生管であっても、分岐部分の十分な水密性を確保することができ、しかも、比較的容易に施工することのできる分水栓の施工方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る分水栓の施工方法では、スリーブを終端に取付けたロープ体の先端を連結したヘッドを、繰り出し自在及び巻取り自在とした索体の先端に取り付けたドラム装置を用意し、前記ドラム装置から前記索体を繰り出し、当該索体を分水栓取付孔が穿孔された既設管の一端から送りこむ第1の工程と、前記分水栓取付孔から前記ロープ体を引き出す第2の工程と、引き出した前記ロープ体を切断して、終端に前記スリーブを取付けたスリーブ側ロープ体をさらに引きつけて前記スリーブの先端を前記分水栓取付孔に臨ませる第3の工程と、前記スリーブを前記分水栓取付孔に嵌合させる第4の工程と、前記既設管の外方に露出した前記スリーブに分水栓を取付ける第5の工程と、を有することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分水栓の施工方法及び分岐部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
水道管などのように、道路などの地中に配管された既設管が老朽化すると、その手当が必要となる。従来、老朽化した既設管は、新しい管に取り換える工事を行っているが、通行をストップして地面を掘り下げる開削工事を行って管を取り換えなければならないなど、時間とコストがかかる大がかりな工事となっていた。
【0003】
そこで、老朽管の中に新しい更生管を入れて、新しく管路を更生するという非開削工事による既設管の更生方法が提案されて実施されている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照。)。老朽化した既設管に対し、この既設管の内部に入れる新しい更生管には、流路の内径が著しく小さくならないように管厚を薄くすること、及び所定の耐水圧強度を有することが求められている。また、工事においては、既設管と更生管との間に生じる間隙を可及的に小さくすることも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−037012号公報
【特許文献2】特開2011−042164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や2に記載の更生管は、その後に分岐するにあたり、その分岐部分の十分な水密性を確保するのが困難であった。特に、更生管が、管の内側から既設管内壁に向かってポリエチレン層、樹脂含浸ポリエステル不織布層、及び樹脂含浸ガラス長繊維層の三層のライニング材からなる複合管の場合は難しいとされている。
【0006】
すなわち、分岐部分は、穿孔などによって既設管と更生管(複合管)との間に隙間ができやすく、その間隙を縫って漏水が懸念されるためである。
【0007】
本発明は、上記課題を解決して、複合管を用いた更生管であっても、分岐部分の十分な水密性を確保することができ、しかも、比較的容易に施工することのできる分水栓の施工方法を提供することを目的としている。また、本発明は、分水栓の分岐部構造についても提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に記載の分水栓の施工方法では、スリーブを終端に取付けたロープ体の先端を連結したヘッドを、繰り出し自在及び巻取り自在とした索体の先端に取り付けたドラム装置を用意し、前記ドラム装置から前記索体を繰り出し、当該索体を分水栓取付孔が穿孔された既設管の一端から送りこむ第1の工程と、前記分水栓取付孔から前記ロープ体を引き出す第2の工程と、引き出した前記ロープ体を切断して、終端に前記スリーブを取付けたスリーブ側ロープ体をさらに引きつけて前記スリーブの先端を前記分水栓取付孔に臨ませる第3の工程と、前記スリーブを前記分水栓取付孔に嵌合させる第4の工程と、前記既設管の外方に露出した前記スリーブに分水栓を取付ける第5の工程と、を有することとした。
【0009】
また、請求項2に記載の分水栓の施工方法では、請求項1記載の分水栓の施工方法において、前記ヘッドには、分水栓の数に対応させたスリーブがそれぞれ終端に取付けられた所定数のロープ体の各先端が連結されており、前記既設管の基端側に近接した分水栓取付孔から順次、前記ロープ体を個別に引き上げ、その後前記第3の工程を実行することに特徴を有する。
【0010】
また、請求項3に記載の分水栓の施工方法では、請求項1又は2に記載の分水栓の施工方法において、前記既設管の内側面には、ポリエチレン層、樹脂含浸ポリエステル不織布層、及び樹脂含浸ガラス長繊維層の三層からなる更生管が備えられていることに特徴を有する。
【0011】
また、請求項4に記載の分水栓の分岐部構造では、既設管内を流れる水を分水する分水栓の分岐部構造において、内周面にシールリングが配設された分水栓の流入口に、前記既設管の内外を連通するスリーブを嵌入させて前記既設管内の水を前記分水栓に流入可能とするとともに、前記スリーブの外周面と前記流入口の内周面との間を止水可能とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る分水栓の施工方法によれば、複合管を用いた更生管であっても、分岐部分の十分な水密性を確保することができ、しかも、比較的容易に分水栓の施工を行うことができる。また、本発明に係る分水栓の分岐部構造によれば、複合管を用いた更生管であっても、分岐部分の十分な水密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】地中に埋設されている修繕管の状態を示す説明図である。
【図2】修繕管の構成を示した説明図である。
【図3】修繕管に装着されたサドルの構成を示した説明図である。
【図4】分水栓の施工状態、内壁取付部材の構成及びフックの構成を示す説明図である。
【図5】内壁取付部材の構成を示した説明図である。
【図6】引上ボルトの構成を示した説明図である。
【図7】ゴム輪、埋込ボルト、スリーブ、引止治具本体の構成を示した説明図である。
【図8】内壁取付部材の取付過程を示す説明図である。
【図9】ベース、スリーブ用ナット、締付治具の構成を示した説明図である。
【図10】分水栓の構成を示した説明図である。
【図11】変形例に係るバルブの取付状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態に係る分水栓の施工方法及び分岐部構造について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
図1は、地中に埋設され老朽化していた水道管が補修を受けて修繕された修繕管1を示している。
【0016】
図1に示すように、修繕管1は、補修の際に水道管の一部が除去されることにより端部開口2,2が形成されている。また、ここでは修繕管1の中途部に水道を分岐する分水栓を着取すべく、分水用作業坑3が形成されている。
【0017】
修繕管1は、図2に示すように、長年に亘って使用され老朽化したダグタイル管(以下、既設管4という。)の内部に、内側からポリエチレン層、樹脂含浸ポリエステル不織布層、及び樹脂含浸ガラス長繊維層の三層のライニング材からなるノーディパイプ(以下、更生管5という。)を嵌装することで修繕されたものである。
【0018】
分水栓の施工にあたっては、まず、修繕管1の外周に、分水栓100を取り付けるためのサドル10の取付を行い、分水栓100を取り付けるための分水栓取付孔68を穿孔する(図3参照)。
【0019】
サドル10は、図3(a)に示す正面視において略Ω型の上部分割体10aと、同じく略Ω型の下部分割体10bとで構成されており、両分割体10a,10bには、それぞれボルト11を挿通するためボルト挿通孔を備えたフランジ部10cが形成されている。また、上部分割体10aの頂部には、図3(b)に示すように、後に取り付けられる分水栓100に連通させるための孔部12が形成されている。また、孔部12の周縁に沿って壁部12aが形成されており、同壁部12aの内周面には雌ネジ部12bが形成されている。
【0020】
サドル10の修繕管1への取付は、図3(a)に示すように、上部分割体10aの凹状周面と、下部分割体10bの凹状周面とで修繕管1の外周を囲繞し、両分割体10a,10bのフランジ部10cにそれぞれボルト11を挿通してナットを螺合させることにより行う。そして、孔部12に図示しない穿孔機を取り付けて修繕管1の表面に穿孔し、分水栓取付孔68を形成する。
【0021】
次に、サドル10が取り付けられた修繕管1に分水栓100の施工を行う訳であるが、本実施形態では、修繕管1の内壁側に取り付ける部材を修繕管1の端部開口2より送り込み、当該部材を前述の分水栓取付孔68から引き上げつつ取り付けを行う点に特徴を有している。特に、本方法は、管路内に直接人が入って分水栓の施工を行うことができない場合に適している。
【0022】
具体的には、図4(a)に示すように、施工現場にはドラム装置70が設置されており、このドラム装置70を構成する巻回ドラム73に巻回された索体71によって修繕管1内での内壁取付部材72の送り込みを行う、送り込み工程(第1の工程)が行われる。
【0023】
すなわち、ドラム装置70は、図4(a)及び図4(b)に示すように、索体71の繰り出し及び巻取を行う巻回ドラム73と、巻回ドラム73より繰り出され、先端にヘッド74が取り付けられた索体71と、ヘッド74に取り付けられたロープ体75と、ロープ体75の終端に取り付けられた内壁取付部材72と、内壁取付部材72の終端と索体71の中途部とを連結するワイヤー20で構成している。
【0024】
なお、本実施形態では、掘削された分水用作業坑3a及び3bの2箇所において分水栓の取付作業を行うこととしており、索体71には2つの内壁取付部材72が連結されているが、より多くの内壁取付部材72を連結させて更なる箇所の分水栓の取付作業を同時に行うことも勿論可能である。
【0025】
巻回ドラム73は、少なくとも端部開口2から分水栓取付孔68直下位置までの長さの索体71を繰り出し可能及び巻取可能に構成しており、手動または電動で索体71を修繕管1内で進退させる。
【0026】
索体71は、可撓性を有しつつも、巻回ドラム73側から繰り出す方向への力を付与することにより、修繕管1内でヘッド74を前進可能な程度に修繕管1の底面との間の摩擦力に抗して直線性を保つことのできる弾性を備えている。例えば、このような索体71は、軽量かつ直進性に優れた、直径5mm〜20mm程度で長さが50m〜150m程度のグラスファイバー製のものを使用することができる。
【0027】
ヘッド74は、図4(b)に示すように、索体71の先端部に取り付けられた部材であり、内壁取付部材72に取り付けられたロープ体75を係止可能に構成している。
【0028】
ロープ体75は、ヘッド74に内壁取付部材72を連結し追従させるためのものであり、修繕管1の底面と内壁取付部材72との間に働く摩擦力によってロープ体75に掛かる張力では切断されない程度の強度を有している。また、このロープ体75は、後に説明する切断具95を用いることによって切断できる素材にて形成している。
【0029】
また、内壁取付部材72の終端にはワイヤー20の一端側が接続されており、同ワイヤー20の他端は、ワイヤー連結体21により索体71の中途に連結されている。
【0030】
内壁取付部材72は、ロープ体75の終端に取り付けられており、ヘッド74に追従して修繕管1の内部を移動する。
【0031】
この内壁取付部材72について具体的に説明すると、図5に示すように、内壁取付部材72は、引上ボルト30と、ゴム輪31と、ナット32と、ワッシャ33と、スリーブ34と、埋込ボルト35と、Oリング36と、引止治具本体37とで構成している。
【0032】
引上ボルト30は、図6(a)に示すように、外面に雄ネジ部30aが形成されたロッド状の部材であり、その上端部には、ロープ体75を挿通可能なロープ体挿通孔30bが穿設されている。ロープ体75は、このロープ体挿通孔30bに挿通し、止め具30cにてループ状に固定することで、内壁取付部材72に連結される。この引上ボルト30は、引止治具本体37を分水栓取付孔68より引き上げる役割を有する。
【0033】
ゴム輪31は、ゴムなどの弾性素材にて形成されており、分水栓取付孔68の止水と、同分水栓取付孔68周縁近傍の更生管5の不安定となった組織(穿孔により不安定となった組織)を保護する役割を担う部材である。
【0034】
すなわち、図7(a)に示すように、ゴム輪31は、図5に示したスリーブ34が挿通されるスリーブ挿通孔31aを備えた周壁部31bと、同周壁部31bの下端において半径方向外方へ延出させたフランジ31cとで構成している。
【0035】
周壁部31bの外径は、分水栓取付孔68よりも僅かに(例えば、1mm程度)小径としており、分水栓取付孔68にゴム輪31が簡単に挿し込めるようにしている。また、同周壁部31bの厚みは、ゴム輪31を上下方向から圧縮して周壁部89を肉厚状に変形させた際、スリーブ34と分水栓取付孔68との間隙を水密状に充填できる程度の厚みとしている。
【0036】
また、ゴム輪31は、周壁部31bの下端縁部とフランジ31c下面とにより連続した円弧状の湾曲部31dが形成されており、この湾曲部31dの曲率は、修繕管1の内周面の曲率と略同じ曲率としている。
【0037】
これは、湾曲部31dを設けず、直線状の底面とした場合に比して、分水栓取付の際にスリーブ34と修繕管1との間に挟まれるフランジ90の圧縮負荷を、その周回りにおいて略均一とするための構造である。
【0038】
また、周壁部31bの上下方向への長さは、修繕管1の管厚よりも長く形成しており、周壁部31bの上部には、半径方向内方へ向けて膨出状とした環状凸部31eが備えられている。また、この環状凸部31eの上端縁は、スリーブ34が挿通された際に修繕管1の外面に沿うように、上方へ湾曲させた湾曲部31fとしている。
【0039】
また、スリーブ挿通孔31aの下部(フランジ31cの内方)には、上方に向けて縮径するテーパー部31gが設けられている。このテーパー部31gは、スリーブ34をスリーブ挿通孔31aに挿入する際に、ガイドする役割を果たす。なお、テーパー部31gよりも上方のスリーブ挿通孔31aの内径は、後に詳述するスリーブ34の筒壁体34bの雄ネジ部34hよりも下方位置の外径よりも僅かに小さく形成している。
【0040】
これは、スリーブ34の圧入によってゴム輪31の内径を押し広げることにより、分水栓取付孔68とゴム輪31の外周面との間に形成される隙間を埋め、なおもゴム輪31を押し広げてスリーブ34外周と分水栓取付孔68の内周面との間でゴム輪31は強く圧縮される。この圧縮によっても、分水栓取付孔68は止水すると共に安定した穿孔壁面になる。すなわち、分水栓取付孔68やゴム輪31、スリーブ34により構成される分岐部の止水は、分水栓取付孔68にゴム輪31を入れ、さらに、スリーブ34をゴム輪31内に圧入することによって行われる。
【0041】
ナット32は、図5及び図6に示すように、引止治具本体37と引上ボルト30を固定するためのナットであり、引上ボルト30の外周面に形成された雄ネジ部30aと螺合する雌ネジ部32aが形成されている。
【0042】
ワッシャ33は、引止治具本体37の上端と、ナット32との摩擦抵抗を緩和するためのものであり、引上ボルト30を挿通可能な孔部33aが形成されている。
【0043】
スリーブ34は、図7(c)に示すように、筒状で下部をラッパ状に拡開させた形状を有する金属製(例えば、SUS316)の部材であり、修繕管1より分水された水が通水する通水孔34aを備えた外観視略円筒状の筒壁体34bと、筒壁体34bの下端開口縁部より半径方向外方へ向けて形成されたフランジ34cとを備えている。
【0044】
筒壁体34bの上下方向中途部外面には、後述のスリーブ用ナット43と螺合する雄ネジ部34hが形成されている。なお、スリーブ34はゴム輪31内に圧入される部材であることから、この雄ネジ部34hには、ゴム輪31の内面に傷を付けないようなネジ加工が施されている。
【0045】
また筒壁体34bの外周面の上部には、筒壁体34bの肉厚をやや薄目とした縮径部34dが形成されている。この縮径部34dは、後述の分水栓100に嵌着されたシールリング102dと当接する部位である。
【0046】
フランジ34cは、その縁部を上方に立ち上げてなる立上部34eが形成されており、筒壁体34bと立上部34eとの間(フランジ34cの上面)に環状溝部34fが形成されている。この環状溝部34fは、分水栓取付の際に、フランジ34cと修繕管1の内壁面との間でゴム輪31のフランジ31cをしっかりと噛み込んで水密状に圧着固定するための部位である。
【0047】
また、スリーブ34には、筒壁体34bの下端縁部とフランジ34c下面とを連続させてなる円弧状の湾曲部34gが形成されており、この湾曲部34gの曲率は修繕管1の内周面の曲率と略同じ曲率としている。これは、分水栓取付の際にスリーブ34をゴム輪31のフランジ31cの下面にフィットさせて、スリーブ34のゴム輪31への圧力を分水栓取付孔68の周縁部近傍において均等とするための構造である。
【0048】
埋込ボルト35は、ワイヤー20を引止治具本体37内に固定するためのボルトであり、その外周面には、雄ネジ部35aが形成されている。この埋込ボルト35は、次に説明する引止治具本体37に形成されたボルト孔37cに螺入されるものであり、上面略中央部には、締結工具と嵌合する孔部35bが形成されており、同孔部35bに締結工具(例えば、六角レンチ)を挿入して、ボルト孔37cに螺入する。
【0049】
引止治具本体37は、図7(d)に示すように、下端部に半径方向外方へ突出させたフランジ37aを備える筒状の部材であり、前述の引上ボルト30や埋込ボルト35が螺合する雌ネジ部37bが形成されたボルト孔37cが、上部から中途部にかけて軸線に沿って穿設されている。
【0050】
また、ボルト孔37cの底部から引止治具本体37の下端面にかけて、ワイヤー20を挿通するためのワイヤー挿通孔37dが形成されている。図5(a)に示すように、ワイヤー20の端部には、係止片20aが備えられており、ボルト孔37c側からワイヤー挿通孔37dへ向けてワイヤー20を挿通して、ボルト孔37cの底部に係止片20aを係止させ、さらにボルト孔37cに埋込ボルト35を螺入することにより、図5(b)に示すように、ワイヤー20が内壁取付部材72に連結固定される構造としている。
【0051】
また、フランジ37aの上面は、スリーブ34の湾曲部34gの形状(フランジ34cの湾曲形状)に沿った曲面部37eとしており、後述のスリーブ引き付け工程においてフランジ37aによりスリーブ34のフランジ34cを均等に押圧可能としている。
【0052】
また、引止治具本体37の上部はその下部に比してやや小径としており、外周面に雄ネジ部37fを設けている。この雄ネジ部37fは、後に説明するナット45が取り付けられる。
【0053】
また、フランジ34cのやや上方には、外周に周溝37gが刻設されている。この周溝37gは、Oリング36が装着される部位であり、周溝37gに装着されたOリング36は、図5(b)に示すように、引止治具本体37に挿通されるスリーブ34の内周面に当接して、スリーブ34が軸回り方向へ回動するのを抑制する。
【0054】
上述のような構成を有する内壁取付部材72を備えたドラム装置70によって、図4(a)に示すように端部開口2から修繕管1の内部伸延方向へ向けて内壁取付部材72の送り込み(送り込み工程)が行われる訳であるが、分水栓取付孔68の近傍まで内壁取付部材72が到達すると、図4(b)に示すように、フック92を用いて分水栓取付孔68からロープ体75を引き出す、ロープ引出工程を行う(第2の工程)。
【0055】
フック92は、図4(c)に示すように、棒状把持部92aの下端に、L字状に屈曲させてなる鉤部92bが形成されており、本ロープ引出工程では、この鉤部92bにて修繕管1内のロープ体75を引っかけて掬い上げることにより、図4(d)に示すように分水栓取付孔68よりロープ体75を引き出す。
【0056】
次に、分水栓取付孔68より引き出したロープ体75を切断具95により切断し、スリーブ34(内壁取付部材72)を分水栓取付孔68に引きつけるスリーブ引き付け工程を行う(第3の工程)。
【0057】
具体的には、図4(d)及び図8(a)に示すように、切断具95によって切断されたロープ体75のうち、スリーブ34(内壁取付部材72)が取り付けられているスリーブ側ロープ体75aを引き付けて、ゴム輪31が装着されているスリーブ34の先端(上端)を、分水栓取付孔68に臨ませる。なお、切断具95によって切断されたロープ体75のうち、ヘッド74に取り付けられている方のヘッド側ロープ体75bは、分水栓取付孔68を介して修繕管1の管内へ落下させ、後の索体71の巻取と同時に修繕管1外へ回収される。
【0058】
次に、スリーブ34をゴム輪31と共に(すなわち、内壁取付部材72を)、分水栓取付孔68に嵌合させる、スリーブ嵌合工程を行う(第4の工程)。
【0059】
具体的には、図8(b)に示すように、まず、サドル10の壁部12a上に、ベース40を載置する。
【0060】
ベース40は、図9(a)に示すように、ブロック状に形成した断面視略矩形状の部材である。また、下部に段差部40aが設けられており、サドル10の孔部12に嵌め合い状態で載置可能に構成している。
【0061】
また、ベース40の略中央部には、上下方向に貫通する引上ボルト貫通孔40bが穿設されている。
【0062】
引上ボルト貫通孔40bは、上部が縮径されており、この上部の開口径は、引上ボルト30に螺着するナット41(図8(b)参照)の外径よりも小さい径としている。
【0063】
そして、図8(b)に示す状態において、引上ボルト30の回動を規制しつつ、ナット41を所定方向へ回転させることにより、内壁取付部材72を上方へ徐々に引き上げて、図8(c)に示すように、スリーブ34及びゴム輪31を分水栓取付孔68に嵌合させる。なお、図8(c)では、既にベース40及びナット41を取り外した状態を示している。また、ゴム輪31やスリーブ34には、適宜滑剤を塗布しておいても良い。
【0064】
次いで、図8(d)に示すように、スリーブ34にワッシャ42を挿通させ、同スリーブ34の外面に形成した雄ネジ部34hに、スリーブ用ナット43を螺着する。なお、ワッシャ42は、スリーブ用ナット43を回動させた際の、ゴム輪31との摩擦抵抗を緩和するために挿通させている。
【0065】
スリーブ用ナット43は、図9(c)の上図に示すように所定厚みを有する上面視環状に形成されたナットであり、内周面にはスリーブ34の雄ネジ部34hに螺合する雌ネジが形成されている。
【0066】
また、スリーブ用ナット43には、上面視において2箇所にピン挿入孔43aが形成されている。このピン挿入孔43aは、図9(d)に示す締付治具44の下面に突設された嵌合ピン44aを嵌合させるための孔である。
【0067】
すなわち、分水栓取付孔68より突出させたスリーブ34の雄ネジ部34hにスリーブ用ナット43を軽く螺合させ(図8(d)参照)、スリーブ用ナット43のピン挿入孔43aに締付治具44の嵌合ピン44aを嵌合させ、さらにナット45を引止治具本体37の雄ネジ部37fに螺合させ(図8(e)参照)、締付治具44の締付ハンドル44bを把持して回動させつつナット45を回動させることにより、スリーブ用ナット43を雄ネジ部84bに深くねじ込む(図8(f)参照)。この動作によって、スリーブ34は分水栓取付孔68から十分に引き上げが行われるとともに、ゴム輪31が圧着して水密性が向上する。
【0068】
すなわち、締付治具44の上部の引止治具本体37に取り付けているナット45を締め付けることで、ゴム輪31は修繕管1の内外から強く締め付けられることとなる。このとき、ゴム輪31の反発力を受けながら締付治具44でスリーブ用ナット43を締めると、スリーブ34の雄ネジ部34hに焼き付きが発生するおそれがあるが、本実施形態では、引止治具本体37の上部に取り付けたナット45で追い締めを行いつつスリーブ用ナット43を締め付けることとしており、ゴム輪31の反発力を和らげて、焼き付きの発生を防止している。
【0069】
この作業を終えると、締付治具44及びナット45を取り外し、引止治具本体37から引上ボルト30及びナット32を取り外して、スリーブ34内に配置された引止治具本体37を修繕管1の内部に落下させてスリーブ34内から引止治具本体37を抜去する。
【0070】
これにより、図8(g)に示すように、ゴム輪31及びスリーブ34は、分水栓取付孔68に水密状に嵌合される。すなわち、ゴム輪31をスリーブ34で圧入しているため、分水栓取付孔68近傍が確実に止水され、しかも、ゴム輪31の圧力で、修繕管1内面の分水栓取付孔68近傍における更生管5の不安定な組織を保護することとなる。
【0071】
分水栓取付孔68とゴム輪31及びスリーブ34との間に隙間がある状態でそれぞれ装着し、ゴム輪31を修繕管1の内外から圧縮して止水し、圧縮力によってゴムを流動させて分水栓取付孔68におけるスリーブ34の不安定な動きを押さえることができる。換言すれば、不安定な修繕管1内周面の分水栓取付孔68近傍を安定させて、固定ためにゴム輪31内にスリーブ34を圧入しているとも言える。
【0072】
また、スリーブ34等の部品と引止治具本体37とを修繕管1の管内から入れて、管外でスリーブ用ナット43で固定する本方法によれば、修繕管1の管内に大きく広げたゴム輪31をスリーブ34で強く確実に取り付けることができる。
【0073】
次に、サドル10の孔部12に分水栓100を取り付ける、分水栓取付工程を行う(第5の工程)。
【0074】
分水栓100は、図10に示すように、サドル10の孔部12に取り付けて水を流入させる流入口としての取付口部102と、流入させた水を吐出する出水口部103と、流入させた水の出水口部103からの出水、止水を切り替えるステム104とを備えている。
【0075】
また、取付口部102にはフランジ部102aが設けられており、同フランジ部102aよりも開口端側の外周側面には、サドル10に形成されている孔部12の雌ネジ部12bに螺合する雄ネジ部102bが形成されている。
【0076】
また、取付口部102の内周面にはシールリング溝102cが刻設されており、同シールリング溝102cには、スリーブ34に形成されている縮径部34dの外径よりも僅かに小さい内径を有するシールリング102dが配設されている。
【0077】
そして、本分水栓取付工程では、取付口部102の雄ネジ部102bを、孔部12の雌ネジ部12bに螺合させ、壁部12aの上端とフランジ部102aとが当接するまで螺入することにより、図8(h)に示すように、スリーブ34の先端が分水栓100の取付口部102に嵌入された状態で分水栓100が取り付けられる。
【0078】
このとき、スリーブ34の縮径部34dには、シールリング102dが水密状に嵌め合わされているため、分水栓100からの水漏れが極めて容易に防止されることとなる。
【0079】
このようにして分水栓100の取付を終えると、分水栓100の設置箇所が複数の場合には、他の分水栓取付孔68の近傍までヘッド74を進めて、上述したように施工を再び行うこととなる。
【0080】
また、全ての分水栓100の施工を終えた後は、巻回ドラム73を逆回転させて索体71の巻取を行う。
【0081】
このとき、修繕管1内へ落とし込んだヘッド側ロープ体75bや、引止治具本体37の回収も行われる。すなわち、ヘッド側ロープ体75bはヘッド74に接続されているため回収が行われる。また、引止治具本体37には、ワイヤー20が連結されており、巻取方向に移動するワイヤー連結体21に追従して回収が行われる。
【0082】
このようにして、本実施形態に係る分水栓の施工は行われる。特に、修繕管1の外から施工する従来の方法では、ゴム輪31とスリーブ34によって修繕管1の内面の分水栓取付孔68近傍を覆う範囲には限界があるが、本実施形態に係る分水栓の施工方法では、修繕管1の内部から施工するので、修繕管1の内面の分水栓取付孔68近傍をゴム輪31で広く覆って止水することができる。
【0083】
また、ボルト11を用いて上部分割体10a及び下部分割体10bとによりしっかりと修繕管1の管体に取り付けられたサドル及びサドルの分岐部に取り付いた分水栓は、強固に安定して取り付けられている。
【0084】
また、その内部にあるスリーブ34は、修繕管1の管内からゴム輪31を介して分水栓100内のシールリング102dで止水している。また、スリーブ34とスリーブ用ナット43とによってゴム輪31は強く圧接している。
【0085】
このような中で、例えば地震などによってサドル10にずれが生じても、ゴム輪31及びシールリング102dの弾性で止水性能は守られることとなる。
【0086】
また、サドル10のずれによって大きな力が加わっても、スリーブ34が分水栓100の内面に当たるので、それ以上ずれることはない。
【0087】
また、分水栓100に大きな衝撃力が加わっても、スリーブ34の外周に弾性体(ゴム輪31)が介在しているので、衝撃力は吸収される。
【0088】
加えて、スリーブ34は、ゴム輪31に支えられている構造なので、外部の変化に影響を受けにくい構造になっている。このことから、この分水栓の取付構造は耐震性能に優れた構造であるといえる。
【0089】
また、内周面にシールリング102dが配設された分水栓100の取付口部102に、既設管4の内外を連通するスリーブ34を嵌入させて既設管4内の水を分水栓100に流入可能とするとともに、スリーブ34の外周面と取付口部102の内周面との間を止水可能としているため、従来の分岐部の構造に比してコンパクトにすることができ、しかも、分岐部分の十分な水密性を確保することができる。
【0090】
〔変形例〕
次に、分水栓の施工方法の変形例について、図11を参照しながら説明する。前述の分水栓の施工方法では、サドル10の孔部12に形成した雌ネジ部12bに分水栓100を螺入することで施工を行ったが、本変形例では、サドルに形成されているフランジと、分水栓に形成されているフランジとを突き合わせて取り付けを行う例を示す。また、ここでは、分水栓の一形態としてバルブを取り付けることとする。なお、以下の説明において、前述の構成と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0091】
図11に示すように、本変形例におけるサドル110は、前述のサドル10と略同様の構成としているが、バルブ111が取り付けられる孔部112の開口周縁において、半径方向外方へ向けて形成されたフランジ110aが備えられている。
【0092】
また、孔部112に取り付けられるバルブ111は、バルブ本体部111aと、修繕管1からの水を流入させる流入部111bと、バルブ本体部111aを経た水を吐出する吐出部111cとを備えている。
【0093】
吐出部111cの開口端部には、半径方向外方へ突出させて形成したフランジ部111dが形成されており、吐出部111cに吐出側配管111eを接続可能としている。
【0094】
流入部111bは、バルブ本体部111aに連通する流通管路111fを備えた筒状の部位であり、その端部には分水された水を流入させる流入口111gが備えられている。
【0095】
また、流入部111bの伸延方向中途部外周には、半径方向外方へ突出させて形成したフランジ111dが形成されている。
【0096】
また、サドル110にバルブ111を取り付けた際、フランジ111dよりも流入口111g側の流入部111b(以下、先端側流入部という。)は、サドル110の孔部112に挿入されるよう構成している。
【0097】
さらに、流入部111bの流通管路111fの内周面には、シールリング溝102cが刻設されており、同シールリング溝102cには、スリーブ34に形成されている縮径部34dの外径よりも僅かに小さい内径を有するシールリング102dが配設されている。
【0098】
そして、バルブ111の取付に際しては、図11に示すように、流入部111bのフランジ部111dを、孔部112のフランジ110aに、パッキンを介して突き合わせてボルトにより固定することにより取り付けられる。
【0099】
このとき、スリーブ34の縮径部34dは、流通管路111f内に挿入されてシールリング102dが水密状に嵌め合わされることとなる。すなわち、バルブ111の流入口111gに、既設管4の内外を連通するスリーブ34を嵌入させて既設管4内の水をバルブ111に流入可能とするとともに、スリーブ34の外周面と流入口111gの内周面との間を止水可能としている。従って、バルブ111からの水漏れが極めて容易に防止され、また、前述の実施例と同様の効果を享受することができる。
【0100】
また、先端側流入部は、孔部112の空間を埋める役割を有しており、この先端側流入部が孔部112に挿入されることにより、分岐部の剛性を増大させることができる。また、スリーブ34の長さを短くすることができ、コンパクトな分岐部構造とすることができる。
【0101】
上述してきたように、本実施形態に係る分水栓の施工方法によれば、スリーブ(例えば、スリーブ34)を終端に取付けたロープ体(例えば、ロープ体75)の先端を連結したヘッド(例えば、ヘッド74)を、繰り出し自在及び巻取り自在とした索体(例えば、索体71)の先端に取り付けたドラム装置(例えば、ドラム装置70)を用意し、前記ドラム装置から前記索体を繰り出し、当該索体を分水栓取付孔(例えば、分水栓取付孔68)が穿孔された既設管(例えば、既設管4)の一端から送りこむ第1の工程(例えば、送り込み工程)と、前記分水栓取付孔から前記ロープ体を引き出す第2の工程(例えば、ロープ引き出し工程)と、引き出した前記ロープ体を切断して、終端に前記スリーブを取付けたスリーブ側ロープ体(例えば、スリーブ側ロープ体75a)をさらに引きつけて前記スリーブの先端を前記分水栓取付孔に臨ませる第3の工程(例えば、スリーブ引き付け工程)と、前記スリーブを前記分水栓取付孔に嵌合させる第4の工程(例えば、スリーブ嵌合工程)と、前記既設管の外方に露出した前記スリーブに分水栓(例えば、分水栓100)を取付ける第5の工程(例えば、分水栓取付工程)と、を有することとしたため、複合管を用いた更生管であっても、分岐部分の十分な水密性を確保することができ、しかも、比較的容易に分水栓の施工を行うことができる。
【0102】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0103】
1 修繕管
4 既設管
5 更生管
10 サドル
31 ゴム輪
34 スリーブ
36 Oリング
68 分水栓取付孔
70 ドラム装置
71 索体
72 内壁取付部材
73 巻回ドラム
74 ヘッド
75 ロープ体
100 分水栓
111 バルブ
131 ゴム輪
134 スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーブを終端に取付けたロープ体の先端を連結したヘッドを、繰り出し自在及び巻取り自在とした索体の先端に取り付けたドラム装置を用意し、
前記ドラム装置から前記索体を繰り出し、当該索体を分水栓取付孔が穿孔された既設管の一端から送りこむ第1の工程と、
前記分水栓取付孔から前記ロープ体を引き出す第2の工程と、
引き出した前記ロープ体を切断して、終端に前記スリーブを取付けたスリーブ側ロープ体をさらに引きつけて前記スリーブの先端を前記分水栓取付孔に臨ませる第3の工程と、
前記スリーブを前記分水栓取付孔に嵌合させる第4の工程と、
前記既設管の外方に露出した前記スリーブに分水栓を取付ける第5の工程と、
を有することを特徴とする分水栓の施工方法。
【請求項2】
前記ヘッドには、分水栓の数に対応させたスリーブがそれぞれ終端に取付けられた所定数のロープ体の各先端が連結されており、
前記既設管の基端側に近接した分水栓取付孔から順次、前記ロープ体を個別に引き上げ、その後前記第3の工程を実行することを特徴とする請求項1記載の分水栓の施工方法。
【請求項3】
前記既設管の内側面には、
ポリエチレン層、樹脂含浸ポリエステル不織布層、及び樹脂含浸ガラス長繊維層の三層からなる更生管が備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分水栓の施工方法。
【請求項4】
既設管内を流れる水を分水する分水栓の分岐部構造において、
内周面にシールリングが配設された分水栓の流入口に、前記既設管の内外を連通するスリーブを嵌入させて前記既設管内の水を前記分水栓に流入可能とするとともに、前記スリーブの外周面と前記流入口の内周面との間を止水可能としたことを特徴とする分水栓の分岐部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−40675(P2013−40675A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179747(P2011−179747)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【特許番号】特許第5021827号(P5021827)
【特許公報発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000240673)ヨネ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】