説明

分注装置および自動分析装置

【課題】容器の小型化に対応しつつ、微量の液体試料を精度よく分注することができる分注装置および自動分析装置を提供すること。
【解決手段】検体分注装置9は、分析対象の検体を反応容器内に分注する。このとき、分注制御部98は、分析に必要なサンプル量が所望の分注精度を達成できる所定液量以下の場合に押出し分注動作を制御し、分注量が反応容器の容量によって定まる最大分注量以下となるように、サンプル量の検体を押出し液とともに反応容器内に分注する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象の液体試料を容器内に分注する分注装置およびこの分注装置を備えた自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検者から採取した血液や体液等の検体(液体試料)を容器内に分注して分析する自動分析装置が知られている。また、この自動分析装置で用いられる分注装置の分注精度を均一に保つための技術として、予め設定される駆動プロファイルをもとにピストンの駆動を制御するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、分注装置の分注方式として、分析に必要な液量の検体を容器内に分注する定量分注方式が知られている。また、別の分注方式として、分析に必要な液量の液体試料を純水等の押出し液によって押出して容器内に分注する水押出し分注方式がある。この水押出し分注方式は、例えば小児検体のように、採取される検体量が微量の検体について複数項目の分析を行いたい場合等に用いられている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−343243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、被検者の負担軽減や装置の運用コスト低減等を目的として、検体の微量化が求められている。しかしながら、微量の検体を定量分注方式で分注すると、分注精度にばらつきが生じてしまい、一定の分注精度を確保できないという問題があった。また、検体の粘度の違いによっても分注精度にばらつきが生じ、サンプル量が微量になるほど粘度の違いが分注精度に影響するという問題があった。一方で、水押出し分注方式での分注によれば、押出し液によって分注量を水増しさせることができるので、分注精度を安定させることができる。しかしながら、検体の微量化に伴って容器自体も小型化しており、検体量によっては容器の容量を超えてしまう事態が生じ、問題であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容器の小型化に対応しつつ、微量の液体試料を精度よく分注することができる分注装置および自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる分注装置は、分析対象の液体試料を容器内に分注する分注装置であって、前記液体試料の分析に必要な液量が所望の分注精度を達成できる所定液量以下の場合に、分注量が前記容器の容量によって定まる最大分注量以下となるように、前記分析に必要な液量の前記液体試料を押出し液とともに前記容器内に分注する押出し分注動作を行うことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる分注装置は、上記の発明において、前記分析に必要な液量と前記最大分注量とから前記押出し液の押出し液量が設定されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる分注装置は、上記の発明において、前記所定液量と前記最大分注量とから前記押出し液の押出し液量が設定されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる分注装置は、上記の発明において、前記分析に必要な液量が前記所定液量より多い場合には、前記分析に必要な液量の前記液体試料を前記容器内に分注する定量分注動作を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる分注装置は、上記の発明において、前記分析に必要な液量が前記所定液量より多い場合には、前記押出し分注動作または前記分析に必要な液量の前記液体試料を前記容器内に分注する定量分注動作を選択的に行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる分注装置は、上記の発明において、前記所定液量が10μL以下の液量であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる分注装置は、上記の発明において、前記最大分注量が20μLであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記構成の分注装置を備え、前記分注装置によって前記容器内に分注された液体を光学的に測定して分析することを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記押出し分注動作の際に前記分注装置が分注する前記押出し液の押出し液量を、分注量が前記最大分注量以下となるように設定する押出し液量設定手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記分析に必要な液量が前記所定液量より多い場合における前記分注装置の分注方式として、押出し分注動作を行う分注方式および定量分注動作を行う分注方式のいずれか一方を設定する分注方式設定手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液体試料の分析に必要な液量が所望の分注精度を達成できる所定液量以下の場合に、分注量が容器の容量によって定まる最大分注量以下となるように液体試料を水増しさせて容器内に分注することができるので、分注精度を安定させることができる。したがって、容器の小型化に対応しつつ、微量の液体試料を精度よく分注することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の自動分析装置1の内部構成の一例を示す概略斜視図である。また、図2は、この自動分析装置1の制御系を説明するための主要ブロック図である。自動分析装置1は、複数の検体(液体試料)の生化学的、免疫学的あるいは遺伝学的な分析を自動的に行う装置であり、検体供給装置2と、反応テーブル4と、2つの試薬テーブル5,6と、分注装置としての検体分注装置9と、2つの試薬分注装置10,11と、2つの攪拌装置12,13と、測定光学系14と、洗浄装置15とを備える。また、自動分析装置1は、図2に示すように、装置を構成する各部を制御する制御部16を備え、各部への動作タイミングの指示やデータの転送等を行って装置全体の動作を統括的に制御する。
【0020】
検体供給装置2は、図1に示すように、血液や尿等の検体(サンプル)を収容した複数の検体容器2bが搭載された複数のラック2aを収納する。この検体供給装置2は、制御部16の制御のもと、図1中の矢印で示す移動経路に沿ってラック2aを順次移送し、ラック2a上の各検体容器2bを順次検体分取位置に搬送する。そして、この検体分取位置に搬送された検体容器2b内の検体が、検体分注装置9によって反応テーブル4上を配列して搬送される容器としての反応容器(キュベット)C内に分注される。
【0021】
検体供給装置2によって移送されるラック2aの移動経路上には、検体読取装置3が設置されている。検体読取装置3は、例えばバーコードリーダであって、検体容器2bに付された不図示のバーコードを読み取って検体番号等の検体情報を取得し、制御部16に出力する。検体容器2bに付されるバーコードは、検体情報を所定の規格に従ってコード化したものである。この検体読取装置3によって取得される検体情報に基づいて、検体容器2b内の検体の認識・選別が行われる。
【0022】
反応テーブル4は、キュベットホイール41と保温部材43とを有する。キュベットホイール41は、検体や試薬が分注される複数の反応容器Cを保持し、制御部16の制御のもと、不図示の駆動機構によってその中心を回転軸として回転する。例えば、キュベットホイール41は、一周期で反時計方向に(1周−1キュベット)/4分回転し、四周期で時計方向に1キュベット分回転する。このキュベットホイール41の回転によって、各反応容器Cは、第1試薬分注位置や検体分注位置、第2試薬分注位置、第1〜第3攪拌位置、測定位置、洗浄位置等の各位置に順次搬送される。保温部材43は、キュベットホイール41の半径方向内側および外側に配置され、反応容器C内の液体を体温程度の温度に保温する。この保温部材43には、測定光学系14と対応する測定位置に搬送された反応容器C内の液体に、分析光を照射するための開口45が形成されている。
【0023】
試薬テーブル5,6は、それぞれ分析項目に応じた所定の試薬が収容された試薬容器5a,6aを収納する。例えば、一方の試薬テーブル5には、第1試薬を収容した試薬容器5aが収納され、他方の試薬テーブル6には、第2試薬を収容した試薬容器6aが収納される。各試薬テーブル5,6は、制御部16の制御のもと、それぞれ不図示の駆動機構によってその中心を回転軸とした間欠的な回動が可能に構成されており、所望の試薬容器5a,6aを試薬分取位置に搬送する。また、各試薬テーブル5,6の下方には、それぞれ不図示の恒温槽が設けられており、試薬容器5a,6aに収容された試薬を保冷する。これにより、試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0024】
各試薬テーブル5,6の外周側には、それぞれバーコードリーダ等の試薬読取装置7,8が設置されている。試薬読取装置7,8は、各試薬テーブル5,6にそれぞれ収納された試薬容器5a,6aに付された不図示のバーコードを読み取って試薬情報を取得し、制御部16に出力する。試薬情報には、例えば、試薬の名称、ロット番号、有効期限等の情報が適宜含まれる。この試薬読取装置7,8によって取得される試薬情報に基づいて、試薬容器5a,6a内の試薬の認識・選別が行われる。
【0025】
検体分注装置9は、検体の吸引および吐出を行う分注プローブ91を有し、制御部16の制御のもと分注動作を行い、検体分取位置の検体容器2bから分注プローブ91によって検体を吸引するとともに、検体分注位置の反応容器C内に検体を吐出して分注を行う。分注プローブ91は、分注終了後、洗浄水が供給される不図示の洗浄槽で流水・洗浄される。
【0026】
図3は、検体分注装置9の構成を示す概念図である。図3に示すように、検体分注装置9は、分注プローブ91の他、プローブ駆動部92、シリンジ93、シリンジ駆動部94、ポンプ95、検体分注装置9を構成する各部を制御して分注動作させる分注制御部98等を備え、分注プローブ91が、シリンジ93やポンプ95を設けた管路によって純水または生理食塩水等の押出し液(以下、「押出し水」と呼ぶ。)を貯留した押出し水タンク96と接続されて構成されている。また、シリンジ93とポンプ95との間には、制御弁97が取り付けられている。
【0027】
プローブ駆動部92は、分注制御部98の制御のもと、分注プローブ91を検体分取位置と検体分注位置との間で移動させるとともに、各位置で分注プローブ91を昇降動作させる。シリンジ駆動部94は、分注制御部98の制御のもと、シリンジ93のピストンを往復動させてシリンジ93を吸排動作させる。
【0028】
そして、分注制御部98は、制御部16の制御のもと、制御弁97を開放し、ポンプ95を動作させて管路内に押出し水を満たした状態でシリンジ駆動部94を駆動してシリンジ93に吸排動作を行わせ、検体分注装置9の分注動作を制御する。このとき、分注方式が定量分注方式の場合には、分注制御部98は、検体分注装置9の定量分注動作を制御する。すなわち、定量分注動作では、分注プローブ91によって、分析に必要な液量(以下、「サンプル量」と呼ぶ。)に検体の希釈を防止するためのダミー量を加えた量の検体を検体容器2b内から吸引する。そして、分注プローブ91に吸引させた検体のうち、サンプル量を反応容器C内に吐出させる。一方、分注方式が水押出し分注方式の場合であれば、分注制御部98は、検体分注装置9の押出し分注動作を制御する。すなわち、押出し分注動作では、分注プローブ91によって、サンプル量の検体を検体容器2b内から吸引する。そして、分注プローブ91に吸引させたサンプル量の検体を、押出し水タンク96から供給される押出し水によって押出し、予め設定される押出し水の押出し液量(以下、「押出し水量」と呼ぶ。)の押出し水とともに反応容器C内に吐出させる。
【0029】
試薬分注装置10,11は、図1に示すように、それぞれ試薬の吸引および吐出を行う分注プローブ101,111を有する。そして、試薬分注装置10は、制御部16の制御のもと、試薬テーブル5上の試薬分取位置の試薬容器5aから分注プローブ101によって第1試薬を吸引するとともに、第1試薬分注位置の反応容器C内に第1試薬を吐出して分注を行う。同様にして、試薬分注装置11は、制御部16の制御のもと、試薬テーブル6上の試薬分取位置の試薬容器6aから分注プローブ111によって第2試薬を吸引するとともに、第2試薬分注位置の反応容器C内に第2試薬を吐出して分注を行う。各試薬分注装置10,11の分注プローブ101,111は、分注終了後、洗浄水が供給される不図示の洗浄槽で流水・洗浄される。なお、この試薬分注装置10,11は、図3に示した検体分注装置9と同様に構成される。
【0030】
攪拌装置12,13は、ステッピングモータによって昇降移動し、装置下方に搬送された反応容器C内の液体の攪拌を行う。具体的には、攪拌装置12は、攪拌棒121,123を有し、攪拌棒121によってこの攪拌棒121下方の第1攪拌位置に搬送された反応容器C内の液体を攪拌するとともに、攪拌棒123によってこの攪拌棒123下方の第2攪拌位置に搬送された反応容器C内の液体を攪拌する。また、攪拌装置13は、攪拌棒131を有し、攪拌棒131によってこの攪拌棒131下方の第3攪拌位置に搬送された反応容器C内の液体を攪拌する。各攪拌棒121,123,131は、攪拌終了後、洗浄水が供給される不図示の洗浄槽で流水・洗浄される。
【0031】
測定光学系14は、測定位置に搬送された反応容器Cに分析光を照射し、この反応容器C内の反応液を透過した光を受光して分光強度測定を行う。例えば、図1に示すように、反応容器C内の反応液を分析するための分析光(340〜800nm)を出射する光源141と、光源141から出射されて反応容器C内の反応液を透過した光量を測光する測光センサ145とを有する。この測定光学系14による測定値は、制御部16に出力され、制御部16と接続された分析部17によって分析される。
【0032】
洗浄装置15は、制御部16の制御のもと、測定光学系14による測定が終了して装置下方の洗浄位置に搬送された反応容器C内の反応液を吸引して排出するとともに、反応容器C内に洗浄水を吐出および吸引・排出することによってその内部を洗浄・乾燥する。洗浄・乾燥された反応容器Cは、再び分析に使用される。
【0033】
制御部16は、マイクロコンピュータ等で構成され、装置内の適所に収められる。制御部16は、自動分析装置1の各部の動作を制御し、反応容器Cを第1試薬分注位置や検体分注位置、第2試薬分注位置、第1〜第3攪拌位置、測定位置、洗浄位置の各位置に順次搬送して分析処理を行う。ここで、反応テーブル4上の1つの反応容器Cに着目し、この反応容器Cを対象として行う分析処理について説明すると、反応容器Cは先ず、第1試薬分注位置に搬送される。そして、試薬分注装置10がこの反応容器C内に試薬容器5a内の第1試薬を分注する。続いて反応容器Cは、第1攪拌位置に搬送される。そして、攪拌装置12がこの反応容器C内の液体を攪拌棒121で攪拌する。続いて反応容器Cは、検体分注位置に搬送される。そして、検体分注装置9がこの反応容器C内に検体容器2b内の検体を反応容器C内に分注する。続いて反応容器Cは、第2攪拌位置に搬送される。そして、攪拌装置12がこの反応容器C内の液体を攪拌棒123で攪拌する。続いて反応容器Cは、第2試薬分注位置に搬送される。そして、試薬分注装置11がこの反応容器C内に試薬容器6a内の第2試薬を分注する。続いて反応容器Cは、第3攪拌位置に搬送される。そして、攪拌装置13がこの反応容器C内の液体を攪拌棒131で攪拌する。
【0034】
また、第1攪拌位置で攪拌された反応容器Cや、第2攪拌位置で攪拌された反応容器C、第3攪拌位置で攪拌された反応容器Cは、キュベットホイール41の回転に伴って測定位置を通過するが、このとき、測定光学系14がこの反応容器C内の液体の分光強度測定を行う。測定値は分析部17に出力され、分析される。第3攪拌位置での攪拌の後、測定光学系14によって反応容器C内の反応液が測定されたならば、反応容器Cは洗浄位置に搬送され、洗浄装置15がこの反応容器C内の反応液を排出し、内部の洗浄・乾燥を行う。洗浄位置で洗浄・乾燥された反応容器Cは再び第1試薬分注位置に搬送され、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0035】
この制御部16は、図2に示すように、分析部17と接続されており、測定光学系14による測定値が適宜出力されるようになっている。分析部17は、測定光学系14による測定値をもとに検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。
【0036】
また、制御部16は、検体数や分析項目等、分析に必要な情報を入力するためのキーボードやマウス等の入力装置で構成される入力部18や、分析結果画面や警告表示画面、各種設定入力のための入力画面等を表示するためのLCDやELD等の表示装置で構成される表示部19、自動分析装置1の動作に必要な各種データや分析結果等を記憶する記憶部20と接続されている。
【0037】
そして、制御部16は、分注方式切換部161を備える。分注方式切換部161は、検体分注装置9の定量分注方式および水押出し分注方式を切り換える。
【0038】
ここで、定量分注方式および水押出し分注方式による分注で得られる分注精度について説明する。図4は、サンプル量が1μLおよび5μLの場合に各分注方式で達成可能な分注精度を説明する図であり、各サンプル量での分注精度のばらつき(CV)を示している。図4に示すように、サンプル量が1μLの場合、定量分注方式での分注精度のばらつきは2%〜3%である。これに対し、水押出し分注方式での分注精度のばらつきは約1%である。また、サンプル量が5μLの場合、定量分注方式での分注精度のばらつきは約1%であり、水押出し分注方式での分注精度のばらつきは約0.5%である。例えば、分注精度のばらつきとして1%程度が要求されているとする。この場合、サンプル量を1μLとすると、定量分注方式では要求される分注精度を達成できない。このように、サンプル量が微量になると、定量分注方式では分注精度のばらつきが大きく安定しないため、分注精度が低下する。また、サンプル量が微量になると、検体の粘度の違いが分注精度に影響するという問題もあった。そこで、分注方式切換部161は、サンプル量に応じて定量分注方式および水押出し分注方式を切り換える。
【0039】
図5は、実施の形態1におけるサンプル量毎の分注方式を示す図であり、0.5μL〜20μLのサンプル量(μL)毎の分注方式、押出し水量(μL)および分注量(μL)を一覧で示している。実施の形態1では、所望の分注精度を達成できる検体の所定液量を10μLとする。また、最大分注量を20μLとする。そして、分注方式切換部161は、サンプル量が10μL以下の場合に、分注方式を水押出し分注方式として切り換える。また、分注方式切換部161は、分注方式を水押出し分注方式とした場合には、反応容器C内に吐出させる分注量が最大分注量である20μL以下となるように、押出し水量を例えば10μLに設定する。例えば、サンプル量が4μLの場合の分注量は、押出し水10μLを含む14μLとなる(R11)。そして、分注制御部98は、検体容器2b内の検体4μLを10μLの押出し水とともに反応容器C内に分注する。一方、分注方式切換部161は、サンプル量が10μLより多い場合の分注方式を定量分注方式として切り換える。例えばサンプル量が14μLの場合、制御部16が分注方式を定量分注方式とする。この場合には、分注制御部98は、検体容器2b内の14μLの検体を反応容器C内に分注する。この場合の分注量は、14μLとなる(R13)。
【0040】
なお、押出し水量は、10μLに限定されるものではない。例えば、前述の所定液量10μLをもとにして、分注量が最大分注量の20μL以下となるように10μL以下の値を適宜設定することができる。あるいは、実際に分注するサンプル量をもとにして、分注量が最大分注量の20μL以下となるように押出し水量を設定するようにしてもよい。また、所定液量は、10μLに限定されるものではない。例えば、10μL以下の値を適宜設定することができる。実際に分注精度のばらつきが大きく問題となるのは5μLの微量サンプルの分注時であり、例えば所望の分注精度を達成できる所定液量を5μLとして定量分注方式と水押出し分注方式とを切り換えるようにしてもよい。あるいは、所定液量をさらに微量の3μLとして定量分注方式と水押出し分注方式とを切り換えるようにしてもよい。
【0041】
以上説明した構成の自動分析装置1は、分析対象の検体について分析項目毎の分析を行う。ここで、サンプル量は、分析項目毎に予め定義される。また、各検体について行う分析項目は、分析処理に先立ちユーザ操作に従って設定される。すなわち、制御部16は、分析処理の開始前に、分析対象の検体および各検体の分析項目の入力を受け付ける。そして、制御部16は、入力部18を介して入力された各検体の分析項目を、その検体番号と対応付けて記憶部20に記憶しておく。また、分析処理時には、制御部16は、検体読取装置3から入力される分析対象の検体の検体番号をもとに、記憶部20からその分析項目を読み出し、読み出した分析項目に従って分析処理を行う。このとき、分注方式切換部161は、分析項目に応じたサンプル量をもとに分注方式を切り換える。そして、検体分注装置9の分注制御部98は、分注方式切換部161によって切り換えられる分注方式に従って検体分注装置9の押出し分注動作または定量分注動作を制御し、分析項目に応じたサンプル量の検体を反応テーブル4上の反応容器Cに順次分注していく。
【0042】
図6は、実施の形態1において反応テーブル4上のある1つの反応容器Cに対して行う検体分注処理の手順を示すフローチャートである。検体分注処理では先ず、分注方式切換部161が、分析項目に従ってサンプル量を決定する(ステップS101)。そして、分注方式切換部161は、サンプル量が10μL以下の場合には(ステップS103:Yes)、分注方式を水押出し分注方式とし、押出し水量(実施の形態1では10μL)を設定する(ステップS105)。このとき、分注方式切換部161は、切り換えた分注方式(水押出し分注方式)と押出し水量とをサンプル量とともに分注制御部98に出力する。そして、分注方式切換部161は、押出し水量に応じた水薄まり分をもとに、測定値の補正情報を算出する(ステップS107)。この補正情報は、分析部17に出力され、この補正情報によって測定値の水薄まり分が補正されるようになっている。あるいは、この補正情報によって測定値を補正した上で分析部17に出力するようにしてもよい。
【0043】
この場合には、分注制御部98が、検体分注装置9の押出し分注動作を制御する(ステップS109)。これによって、検体分注装置9は、検体分取位置の検体容器2bからサンプル量の検体を吸引し、検体分注位置の反応容器Cに対して吸引したサンプル量の検体を押出し水量(10μL)の押出し水とともに吐出する。
【0044】
一方、分注方式切換部161は、サンプル量が10μLより多い場合には(ステップS103:No)、分注方式を定量分注方式とし、切り換えた分注方式(定量分注方式)をサンプル量とともに分注制御部98に出力する(ステップS111)。この場合には、続いて分注制御部98が、検体分注装置9の定量分注動作を制御する(ステップS113)。これによって、検体分注装置9は、検体分取位置の検体容器2bからサンプル量にダミー量を加えた量の検体を吸引し、検体分取位置の反応容器Cに対して吸引した検体のうち、サンプル量の検体を吐出する。
【0045】
以上説明したように、実施の形態1によれば、サンプル量が所望の分注精度を達成できる所定液量として予め設定される10μL以下の場合に、水押出し分注方式で検体の分注を行い、分注量が反応容器Cの容量によって定まる最大分注量以下となるように検体を水増しさせて反応容器C内に分注することができる。これにより、分注精度を安定させることができる。また、サンプル量が10μLより多く、サンプル量の分注によって所望の分注精度が達成できる場合には、定量分注方式で検体の分注を行うことができる。したがって、反応容器Cの小型化に対応しつつ、サンプル量が微量であっても、検体を精度良く分注することが可能となる。また、微量の検体を分注するための制御が複雑化することもないため、分注時のストロークが間に合わず、分析処理の高速化に対応できないといった事態が生じることもない。
【0046】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。図7は、実施の形態2の自動分析装置1bの制御系を説明するための主要ブロック図である。なお、図7において、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付している。
【0047】
図7に示すように、自動分析装置1bは、制御部16bを備え、自動分析装置1bの各部の動作を制御して分析処理を行う。実施の形態2の制御部16bは、分注方式切換部161bと、押出し液量設定手段および分注方式設定手段としての分注設定部163bとを備える。分注方式切換部161bは、検体分注装置9の定量分注方式および水押出し分注方式を切り換える。分注設定部163bは、分注方式として水押出し分注方式を設定した場合の押出し水量、およびサンプル量が10μLより多い場合の分注方式をユーザ操作に従って設定する分注方式設定処理を行う。
【0048】
図8は、実施の形態2におけるサンプル量毎の分注方式を示す図であり、0.5μL〜20μLのサンプル量(μL)毎の分注方式、押出し水量(μL)および分注量(μL)を一覧で示している。実施の形態2では、実施の形態1と同様に、サンプル量が所望の分注精度を達成できる所定液量を例えば10μLとし、最大分注量を例えば20μLとする。そして、分注方式切換部161bが、サンプル量が10μL以下の場合に、分注方式を水押出し分注方式として切り換える。また、分注設定部163bが、分注方式および水押出し分注方式の場合のサンプル量毎の押出し水量を分析処理に先立って事前に設定する。具体的には、分注設定部163bは、サンプル量が10μLより多い場合の分注方式を、水押出し分注方式として設定する。一方、分注設定部163bは、サンプル量が10μLより多い場合の分注方式については、定量分注方式および水押出し分注方式のいずれかをユーザ操作に従って設定する。そして、分注設定部163bは、分注方式を水押出し分注方式とした場合の押出し水量をユーザ操作に従って設定する。このとき、サンプル量をもとに、分注量が略20μLとなるように押出し水量の設定操作を受け付ける。例えば、サンプル量が5μLであれば、押出し水量を1μL〜15μLの範囲内で設定する(R21)。また、サンプル量が15μLの場合の分注方式を水押出し分注方式として設定した場合には、押出し水量を1μL〜5μLの範囲内で設定する(R23)。設定したサンプル量毎の分注方式および押出し水量のデータは、記憶部20に保持される。
【0049】
ここで、実施の形態2の検体分注処理について説明する。図9は、実施の形態2の自動分析装置1bが反応テーブル4上のある1つの反応容器Cに対して行う検体分注処理の手順を示すフローチャートである。検体分注処理では先ず、分注方式切換部161bが、分析項目に従ってサンプル量を決定する(ステップS201)。続いて、分注方式切換部161bは、サンプル量が10μL以下の場合には(ステップS203:Yes)、分注方式を水押出し分注方式とする(ステップ205)。一方、分注方式切換部161bは、サンプル量が10μLより多い場合には、分注方式を分注処理前に分注設定部163bによって設定された水押出し分注方式または定量分注方式とする(ステップS207)。
【0050】
そして、分注方式切換部161bは、切り換えた分注方式を判定する(ステップS209)。分注方式が水押出し分注方式の場合には、分注方式切換部161bは、押出し水量を分注処理前に分注設定部163bによって設定された値とする(ステップS211)。このとき、分注方式切換部161bは、切り換えた分注方式(水押出し分注方式)と押出し水量とをサンプル量とともに分注制御部98に出力する。そして、分注方式切換部161bは、押出し水量に応じた水薄まり分をもとに、測定値の補正情報を算出する(ステップS213)。この補正情報は、測定値の水薄まり分の補正に用いられる。そして、分注制御部98が、検体分注装置9の押出し分注動作を制御する(ステップS215)。
【0051】
一方、分注方式が定量分注方式の場合には、分注方式切換部161bは、切り換えた分注方式(定量分注方式)をサンプル量とともに分注制御部98に出力する。この場合には、分注制御部98が、検体分注装置9の定量分注動作を制御する(ステップS217)。
【0052】
次に、分注設定部163bが行う分注方式設定処理について説明する。例えば、装置の動作設定を行うためのメニュー項目の1つとして分注設定を行う分注設定メニューを提示するように構成し、分注設定部163bは、この分注設定メニューの選択時に分注方式設定処理を行う。図10は、分注方式設定処理の手順を示すフローチャートである。
【0053】
図10に示すように、分注設定部163bは先ず、サンプル量毎の分注設定を依頼する設定依頼画面を表示部19に表示する制御を行って、サンプル量毎の分注設定を依頼する(ステップS301)。そして、分注設定部163bは、入力部18を介して入力されるユーザ操作に従って、分注設定を行うサンプル量を設定する(ステップS303)。続いて分注設定部163bは、設定されたサンプル量が10μL以下の場合には(ステップS305:Yes)、このサンプル量での分注方式を水押出し分注方式として設定する(ステップS307)。続いて、分注設定部163bは、サンプル量をもとに、分注量が20μLとなる押出し水量の範囲を設定範囲として表示部19に表示する制御を行い(ステップS309)、この設定範囲内で押出し水量の設定操作を受け付ける。そして、分注設定部163bは、入力部18を介して入力されるユーザ操作に従って、このサンプル量での押出し水量を設定する(ステップS311)。その後、ステップS321に移行する。
【0054】
一方、設定されたサンプル量が10μLより多い場合には(ステップS305:No)、分注設定部163bは、設定されたサンプル量が20μLか否かを判定する。そして、分注設定部163bは、設定されたサンプル量が20μLでない場合、すなわち、10μLより多く20μL未満のサンプル量が設定された場合には(ステップS313:No)、入力部18を介して入力されるユーザ操作に従って、このサンプル量での分注方式を水押出し分注方式または定量分注方式として設定する(ステップS315)。そして、設定した分注方式が水押出し分注方式の場合には(ステップS317:Yes)、ステップS309に移行して押出し水量の設定を行う。また、設定した分注方式が定量分注方式の場合には(ステップS317:No)、ステップS321に移行する。
【0055】
また、設定されたサンプル量が20μLの場合には(ステップS313:Yes)、このサンプル量での分注方式を定量分注方式として設定し(ステップS319)、ステップS321に移行する。
【0056】
ステップS321では、分注方式の設定を終了するか否かを判定し、終了する場合には(ステップS321:Yes)、本処理を終える。一方、別のサンプル量についての分注設定を続けて行う場合には(ステップS321:No)、ステップS303に戻る。
【0057】
図11および図12は、ユーザが分注設定を行う際の操作例を示す図であり、設定依頼画面の一例を示している。設定依頼画面には、0.5μL〜20μLの範囲でサンプル量の各値を選択するためのスピンボックスI1が配置されており、ユーザは、入力部18を介してスピンボックスI1の選択肢の中からサンプル量を選択し設定する。ここで、図11は、サンプル量として10μL以下の値を設定した場合(図11では5μL)の設定依頼画面を示しており、スピンボックスI1に10μL以下の値を設定すると、自動的に分注方式が水押出し分注方式として設定されるようになっている。この場合には、押出し水量の設定を依頼するメッセージM11とともに、サンプル量に応じた設定範囲内で押出し水量の各値を選択するためのスピンボックスI11が表示され、ユーザは、入力部18を介してスピンボックスI11の選択肢の中から押出し水量を選択し設定する。一方、図12は、サンプル量として10μLより多い値を設定した場合(図12では15μL)の設定依頼画面を示しており、スピンボックスI1に10μLより多い値を設定した場合、分注方式として定量分注方式または水押出し分注方式を選択可能なスピンボックスI21が配置される。この設定依頼画面において操作を確定する場合には設定ボタンB1を押下し、操作を取り消す場合には取消ボタンB3を押下する。
【0058】
以上説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を奏することができるとともに、分注方式として水押出し分注方式を設定した場合の押出し水量、およびサンプル量が所望の分注精度を達成できる所定液量として予め設定される10μLより多い場合の分注方式を、ユーザ操作に従って設定することができる。また押出し水量の設定に際しては、分注量が反応容器Cの容量によって定まる最大分注量以下となるように、設定可能な押出し水量の上限値を制限できる。なお、上記した実施の形態では、押出し液として水(純水)を用いる場合について説明したが、水に限らず、例えば生理食塩水を押出し液として用いることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施の形態1の自動分析装置の内部構成の一例を示す概略斜視図である。
【図2】実施の形態1の自動分析装置の制御系を説明するための主要ブロック図である。
【図3】検体分注装置の構成を示す概念図である。
【図4】定量分注方式および水押出し分注方式で達成可能な分注精度を説明する図である。
【図5】実施の形態1におけるサンプル量毎の分注方式を示す図である。
【図6】実施の形態1の検体分注処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態2の自動分析装置の制御系を説明するための主要ブロック図である。
【図8】実施の形態2におけるサンプル量毎の分注方式を示す図である。
【図9】実施の形態2の検体分注処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】分注設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】設定依頼画面の一例を示す図である。
【図12】設定依頼画面の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1,1b 自動分析装置
2 検体供給装置
3 検体読取装置
4 反応テーブル
5,6 試薬テーブル
7,8 試薬読取装置
9 検体分注装置
91 分注プローブ
92 プローブ駆動部
93 シリンジ
94 シリンジ駆動部
95 ポンプ
96 押出し水タンク
97 制御弁
98 分注制御部
10,11 試薬分注装置
12,13 攪拌装置
14 測定光学系
15 洗浄装置
16,16b 制御部
161,161b 分注方式切換部
163b 分注設定部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
20 記憶部
2a ラック
2b 検体容器
C 反応容器
5a,6a 試薬容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象の液体試料を容器内に分注する分注装置であって、
前記液体試料の分析に必要な液量が所望の分注精度を達成できる所定液量以下の場合に、分注量が前記容器の容量によって定まる最大分注量以下となるように、前記分析に必要な液量の前記液体試料を押出し液とともに前記容器内に分注する押出し分注動作を行うことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記分析に必要な液量と前記最大分注量とから前記押出し液の押出し液量が設定されることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記所定液量と前記最大分注量とから前記押出し液の押出し液量が設定されることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項4】
前記分析に必要な液量が前記所定液量より多い場合には、前記分析に必要な液量の前記液体試料を前記容器内に分注する定量分注動作を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の分注装置。
【請求項5】
前記分析に必要な液量が前記所定液量より多い場合には、前記押出し分注動作または前記分析に必要な液量の前記液体試料を前記容器内に分注する定量分注動作を選択的に行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の分注装置。
【請求項6】
前記所定液量が10μL以下の液量であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の分注装置。
【請求項7】
前記最大分注量が20μLであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の分注装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の分注装置を備え、前記分注装置によって前記容器内に分注された液体を光学的に測定して分析することを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
前記押出し分注動作の際に前記分注装置が分注する前記押出し液の押出し液量を、分注量が前記最大分注量以下となるように設定する押出し液量設定手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記分析に必要な液量が前記所定液量より多い場合における前記分注装置の分注方式として、押出し分注動作を行う分注方式または定量分注動作を行う分注方式を設定する分注方式設定手段を備えることを特徴とする請求項8または9に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−25748(P2010−25748A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187419(P2008−187419)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】