説明

分配器及びこれを含む空調装置

【課題】 熱交換器に最適に冷媒を分配することができる分配管の本数を有し、分配管から起因する圧力降下を最小化することで熱交換性能を最大化することができる大きさを有する分配器及びこれを含む空調装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、作動流体が流れる導管と複数本の熱交換配管を含む熱交換器との間に設置され、上記作動流体を分配する分配器に関し、上記導管に連結される分配器ヘッダー、及び上記分配器ヘッダーと上記熱交換配管との間に連結される複数本の分配管を含む。ここで、上記分配器は、次式の少なくとも一つ以上を満足する。
【数1】
L/8≦N≦L/4
【数2】
√(2/N)×D1≦D2≦D3
【数3】
0.5≦S2/S1≦2.8
上記式中、Nは分配管の本数、Lは列をなす熱交換配管の段数、D1は上記導管の直径、D2は上記分配管の直径、D3は上記熱交換配管の直径、S1は導管の断面積、S2は上記分配管の総断面積を意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器を具備する空調装置に係り、より詳しくは、熱交換器に作動流体を分配する分配器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱交換器は、周辺外気と内部を流れる作動流体との間での熱交換をする装置であって、室内の温度を外気の温度に関わらず適切な温度に保つ役割をするエアコン・システムや暖房システムのような空調装置に使用される。
【0003】
最近、冷房サイクル及び熱ポンプサイクルを単一装置で実現し、選択的に室内の冷房及び暖房が可能な冷暖房空調装置(いわゆる、熱ポンプ)の普及が増加しつつある。通常、熱ポンプは、熱交換器を含む室内機、圧縮機、熱交換器を含む室外機、及び膨張機を含む。
【0004】
冷房モードにて使用される際は、室内の熱交換器が蒸発機として作用して、通過する低温・低圧の液体状態の冷媒を蒸発させることで室内の熱を吸収し室内の冷房メカニズムをなす。蒸発機を通過した中温・低圧の冷媒ガスは再び圧縮機を通過することで高温・高圧ガスになる。これに対し、暖房モードでは、室内の熱交換器が凝縮機として作用して、高温・高圧のガス状態の冷媒が上記凝縮機を通過しながら、室内に熱を放出することで室内の暖房メカニズムをなす。すなわち、室外機は、夏期には凝縮機として使用され、冬期には蒸発機として使用される。
【0005】
従来、室外機に使用される熱交換器は複数のサーキットからなり、サーキットの内部に冷媒を分配するために分配器が使用される。分配器は、分配管を介して冷媒を均一に熱交換器の各サーキットに伝達する機能をする。
【0006】
しかしながら、従来には、熱交換器に冷媒を分配する分配器及び分配管が冷媒の圧力を低下させることでシステムの熱交換能力といった性能を低減させるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報第10-0639488号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、熱交換器に最適に冷媒を分配することができる分配管の本数を有し、分配管から起因する圧力降下を最小化することで熱交換性能を最大化することができる大きさを有する分配器及びこれを含む空調装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、本発明の実施形態による分配器は、作動流体が流れる導管と複数本の熱交換配管を含む熱交換器との間に設置され、上記作動流体を分配する分配器であって、上記導管に連結される分配器ヘッダー、及び上記分配器ヘッダーと上記熱交換配管との間に連結される複数本の分配管を含む。
【0010】
ここで、上記分配器は、次式の少なくとも一つ以上を満足する。
【0011】
[数1]
L/8≦N≦L/4
【0012】
[数2]
√(2/N)×D1≦D2≦D3
【0013】
[数3]
0.5≦S2/S1≦2.8
上記式中、Nは分配管の本数、Lは列をなす熱交換配管の段数、D1は上記導管の直径、D2は上記分配管の直径、D3は上記熱交換配管の直径、S1は導管の断面積、S2は上記分配管の総断面積を意味する。
【0014】
また、上記各熱交換配管は、複数の行と列をなすように折り曲げられてなり、上記各熱交換配管の本数と上記分配管の本数とが同じ本数を有するように構成すればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態による分配器では、最適の本数の分配管にて熱交換器を連結することで熱交換率を極大化し、且つ分配管の直径をも最適化することで圧力降下を低減させ熱交換能力を高める。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態による空調装置を概略的に示した図である。
【図2】図1に示した熱交換配管の斜視図である。
【図3】分配管の本数に対する48段熱交換器の熱交換率を示した図である。
【図4】分配管の本数に対する40段熱交換器の熱交換率を示した図である。
【図5】導管、分配管及び熱交換配管の直径を示した図である。
【図6】導管と分配管の断面積の比に対する熱交換器の熱交換能力を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態による分配器を含む空調装置について図面を参照して詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態による空調装置を概略的に示した図であり、図2は、図1に示した熱交換配管の斜視図である。
【0019】
図1を参照すれば、本発明の実施形態による空調装置100は、室内機10、室外機20、膨張機30、及び圧縮機40を含む。室内機10と圧縮機40との間には、冷房及び暖房モードに応じて冷媒の方向を切り替える4方弁50が設置される。室内機10、室外機20、膨張機30、及び圧縮機40は、作動流体である冷媒が流れるように導管60を介して連結される。
【0020】
室外機20は、熱交換器21、導管60と熱交換器21との間に設置される分配器22、及び上部に配置される送風ファン23を含む。熱交換器21は、複数の列と段に配列される熱交換配管24、及び熱交換配管24の一方側に連結される熱交換器ヘッダー25を具備する。
【0021】
単一の熱交換配管24は、図2に示したように、外気との接触面積が拡大されるように折り曲げられた束構造からなる。熱交換配管24の一方側端部241は熱交換器ヘッダー25に連結され、他側端部242は分配器22に連結される。
【0022】
分配器22は、導管60に連結される分配器ヘッダー221及び分配器ヘッダー221から分岐される複数本の分配管222からなる。各分配管222が上記熱交換配管24の他側端部242に連結される。
【0023】
上述した室外機10は、単に説明のために例示したものであって、熱交換器21の配置構造、送風ファン23の配置などは多様に変形することができる。
【0024】
本発明の実施形態による空調装置100では、冷房モードの際、圧縮機40によって高温・高圧になったガス冷媒は導管60を介して室外機20内の熱交換器21に流れていき、この高温・高圧のガス冷媒は熱交換器21で凝縮されて低温・高圧の液体冷媒になる。凝縮された液体冷媒は、分配器22を介して膨張機30に流れていき、そこで減圧されて低温・低圧の液体冷媒になった後、室内機10で蒸発することで室内を冷却しながら中温・低圧の冷媒気体になる。この冷媒気体は、再び圧縮機40に流れていく。冷房モードの際、以上のような循環サイクルにて冷媒が循環する。
【0025】
上述したようなメカニズムは冷房モードで作動する際の説明であって、暖房モードの際は、冷房モードの際の冷媒の循環方向と逆方向に冷媒が循環して室内を暖房する。
【0026】
上記のような構成の空調装置100における分配管222の本数Nは、次式1を満足する。
【0027】
[数1]
L/8≦N≦L/4
上記式中、Lは一列をなす熱交換配管24の段数を意味する。
【0028】
本発明の実施形態による空調装置における熱交換器21は、図1に示したように、5列40段から構成される。すなわち、1列をなす熱交換配管24の段数は40段である。したがって、上記式1を適用すれば、分配管222は、5本以上10本以下の本数Nで構成される。もし、5列48段の熱交換器であるとすれば、分配管は、6本以上12本以下の本数Nで構成される。
【0029】
分配管222の本数がN/8未満であれば、熱交換器21をなす段数に比べて冷媒が入っていく入口及び出口の個数が小さくなるため、結局として、冷媒が通る流路の数も減少するようになる。これにより、一つの流路を形成する熱交換配管24の流路長が長くなることで冷媒が過熱することがある。また、分配管222の本数がN/4を超過すれば、冷媒流路の数が増加することで熱交換配管24の長さが短くなり、熱交換のための十分な面積を確保することができなくなる。
【0030】
図3は、分配管の本数に対する48段熱交換器の熱交換率を示した図であり、図4は、分配管の本数に対する40段熱交換器の熱交換率を示した図である。
【0031】
図3に示したように、48段熱交換器では、分配管222の本数が6未満であるか、12を超過した場合、熱交換率が急減することを確認することができる。また、40段熱交換器では、図4に示したように、分配管222の本数が5未満であるか10を超過した場合、熱交換率が急減することを確認することができる。
【0032】
図5は、導管、分配管及び熱交換配管の直径を示した図である。図5を参照すれば、導管60の直径をD1、分配管222の直径をD2、熱交換配管24の直径をD3であるとすれば、分配管222の直径D2は、次式2を満足する。
【0033】
[数2]
√(2/N)×D1≦D2≦D3
すなわち、分配管222の直径D2は、最大で熱交換配管24の直径D3を有するように形成され、最小で導管60の直径D1に(2/N)の平方根の値を掛けた値を有するように形成される。
【0034】
分配器22は、分配管222を介して冷媒を均一に熱交換器21の各熱交換配管24に伝達すること以外には、熱交換システムの性能を低減させる。すなわち、分配管222は、圧力降下を発生させて熱交換器21の性能を低減させるため、分配管222から起因する圧力降下を最小にする必要がある。圧力降下は、冷媒が流れていく際の配管の内壁との摩擦及び配管内部の流路の急激な直径変化によって発生する。特に、管径の大きい分配器ヘッダー221から管径の小さい分配管222へと冷媒が入っていく時、及び管径の小さい分配管222から管径の大きい熱交換配管24へと入っていく時における、管径の変化によって圧力が降下する。したがって、分配管222の管径は、その分配管222の両方への圧力降下の影響が極力少なくなるよう設計する必要があり、その範囲が次式2を満足する範囲でもある。
【0035】
また、導管60の断面積をS1、分配管222の総断面積をS2であるとすれば、導管60の断面積S1に対する分配管222の総断面積S2の比Rは、0.5ないし2.8の範囲の値を有する(0.5≦S2/S1≦2.8)。上記断面積比Rの範囲内で圧力降下が低減し、熱交換能力が上昇する。すなわち、断面積比Rが0.5より小さい場合、分配管222での冷媒速度が急増するとともに断面積の減少により抵抗が大きくなることで冷媒の流量が減少し、熱交換能力が落ちる。また、断面積比Rが2.8より大きい場合、冷媒が分配管222から熱交換配管24へと入っていくときにボトルネック現象が発生することで冷媒の流量が減少し、熱交換能力が落ちる。
【0036】
図6は、導管と分配管の断面積の比に対する熱交換器の熱交換能力を示した図である。図6を参照すれば、熱交換器21の熱交換能力が0.5〜2.8を外れた範囲で急激に落ちることを確認することができる。
【0037】
なお、以上では分配器が空調装置に適用される実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、分配器は、空調装置だけでなく熱交換器が使用できるあらゆる装置に適用可能である。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付した図面の範囲中で様々に変形し実施することが可能であり、かかる変形実施も本発明の範囲に属することはいうまでもない。
【符号の説明】
【0039】
10 室内機
20 室外機
21 熱交換器
22 分配器
23 送風ファン
24 熱交換配管
25 熱交換器ヘッダー
30 膨張機
40 圧縮機
221 分配器ヘッダー
222 分配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が流れる導管と複数本の熱交換配管を含む熱交換器との間に設置され、前記作動流体を分配する分配器であって、
前記導管に連結される分配器ヘッダー、及び
前記分配器ヘッダーと前記熱交換配管との間に連結される複数本の分配管を含み、次式を満足することを特徴とする分配器。
L/8≦N≦L/4
0.5≦S2/S1≦2.8
前記式中、Nは分配管の本数、Lは一列をなす熱交換配管の段数、S1は導管の断面積、S2は前記分配管の総断面積を意味する。
【請求項2】
前記導管の直径をD1、前記分配管の直径をD2、前記熱交換配管の直径をD3とするとき、次式をさらに満足することを特徴とする請求項1に記載の分配器。
√(2/N)×D1≦D2≦D3
【請求項3】
前記各熱交換配管は、複数の列と段をなすように折り曲げられてなり、前記各熱交換配管の本数と前記分配管の本数とが同じ本数を有するように構成されることを特徴とする請求項2に記載の分配器。
【請求項4】
複数本の熱交換配管を具備する熱交換器を含む空調装置であって、
作動流体が流れる導管と前記熱交換器との間に設置される分配器を含み、
前記分配器は、前記導管に連結される分配器ヘッダー、及び前記分配器ヘッダーと前記熱交換配管との間に連結される複数本の分配管を含み、次式を満足することを特徴とする空調装置。
L/8≦N≦L/4
0.5≦S2/S1≦2.8
前記式中、Nは分配管の本数、Lは一列をなす熱交換配管の段数、S1は導管の断面積、S2は前記分配管の総断面積を意味する。
【請求項5】
前記導管の直径をD1、前記分配管の直径をD2、前記熱交換配管の直径をD3とするとき、次式をさらに満足することを特徴とする請求項4に記載の空調装置。
√(2/N)×D1≦D2≦D3

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−281557(P2010−281557A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271728(P2009−271728)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(508303139)エルエス エムトロン リミテッド (16)
【Fターム(参考)】