説明

分離株JA−142に基づく、豚繁殖・呼吸障害症候群ワクチン

【課題】豚繁殖・呼吸障害症候群を引き起こす非典型的ウイルスの実質的な無毒型の提供と、PRRSに対して有用なワクチンの提供。
【解決手段】PRRSの有毒型の細胞培養継代から得られる、豚繁殖・呼吸障害症候群の原因であるウイルスの実質的な無毒型および対応するワクチンが提供される。得られた無毒な非典型的PRRSウイルスは、宿主動物に接種することによってPRRS特異的な抗体応答が誘導され、それによってPRRSウイルスの既知株および新規に分離された非典型的PRRSウイルス株の両方に対する効果的な免疫を与えるという点で、ワクチンとして有用である。好ましい継代技術は、実質的にプロセスの始めから終わりまでの間、弱毒化を達成するために必要な時間を最小化する対数増殖期をウイルスが維持することを確実にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、1999年4月22日に出願された特許出願S/N 09/298号の部分継続出願である。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、ブタに非典型的豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルス(PRRSV)に対する免疫を与えるために、ブタに投与する弱毒化された弱毒化PRRSV、およびこれに相当する生ウイルスワクチンに関する。本発明は、またPRRSVに対してブタに免疫を与える方法、およびウイルスを弱毒化するために継代する新規で、効率の高い方法を含む。
【背景技術】
【0003】
2.従来技術の説明
PRRSは、ブタの重大なウイルス疾患として1980年代後半に発生した。PRRSVは、妊娠中の雌ブタに重大な生殖不全を生じ、早産の形で顕在化し、死産、ミイラ状態での出産、弱い個体としての出産の数を増加し、分娩率を低下させ、発情期への戻りを遅らせる。さらに、PRRSVに感染したブタの呼吸器は、悪影響を受け、感染したブタの肺への病変の出現として顕在化する。PRRSV感染に関連する問題を克服するため、現存のPRRSV株への免疫を与えるワクチンが開発されている。
【0004】
非典型的PRRSと呼ばれる重大な、通常見られない形態のPRRSが、1996年の後期に北アメリカで初めて認められた。それらは、以下の点で通常のPRRSと区別される。
1)病気の徴候がより深刻で、かつより長期に及ぶ。
2)流産の事例が、特に懐胎早期および中期により多い。
3)若い雌ブタおよび成熟した雌ブタの死亡率が高い。
4)流産した胎児、早産したブタおよび生産されたブタから分離されるPRRSVがより少ない。おそらく流産が、経胎盤感染よりむしろ深刻な母体の疾病によるためである。
5)影響を受けた若いブタの肺の病変は、より広範囲に及ぶ。
6)商業的に利用可能なワクチンはほとんど防御効果がないか、全く防御効果がない。
【0005】
総体的に、これらの結果は、より強毒で、抗原が全く異なるPRRSV株の出現および新たなPRRSワクチンの製造の必要性を示している。
【0006】
弱毒化された生ワクチンを製造するのに最もよく使用される方法は、ウイルスをワクチンとして使用するのに十分に弱毒化されるまで(すなわち、毒性または疾病発生能が減退化される)、天然の宿主以外の(通常細胞培養)物質中で連続的に継代培養させることである。初代の培養に関して、細胞培養は、選択された接種源に感染させる。ウイルスの複製の明確な証拠が得られた後(例えば、感染された細胞におけるウイルスに誘導された細胞変性効果(CPE))、初代培養の細胞培養媒体のアリコット、若しくは感染された細胞、またはその両方を、第2代の細胞培養に感染させるのに使用する。この工程を、ウイルスのゲノムに1回またはそれ以上の突然変異が起こり、ワクチンとして使用するのに十分に弱毒化されるまで繰り返す。弱毒化の程度は、通常天然の宿主に接触させた際に、ウイルスが積極的に移動するレベルにより決定する。
【0007】
上記の手順は、本質的に安定であり、ヒトおよび家畜類に使用される多数のワクチンの開発に広く使用されている。しかし、突然変異が最もよく起こりやすいウイルス複製の対数段階は、ウイルス複製の証拠が明確に現れる前にしばしば完了している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、近年発見された非典型的PRRSV株を含んだPRRSV株に対する効果的な免疫を与えるワクチンに関して明白な需要が存在している。また、そのようなワクチンを製造する方法に関する需要も存在している。最後に、必要とされる方法は、これまで可能と考えられていた方法よりもより効果的にウイルスを弱毒化し、得られた弱毒化されたウイルスがブタの体内にPRRSV固有の抗体を誘導し、それによりPRRSVに対する効果的な免疫を与えるウイルスの培養方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の簡単な説明
本発明は、上に略述した問題を解決し、新たに発見された非典型的PRRSV株に対する効果的な免疫を与える弱毒化された非典型的PRRSV株、およびこれに相当する改善され、改良された生ワクチンを提供する。効果的な免疫とは、非典型的PRRSV感染を含んだブタのPRRSV感染から、実質的な疾病の臨床兆候に至るのを防止するワクチンの能力を呼ぶ。すなわち、免疫を与えられたPRRSVに対して血清学的に陽性であってもなくても、いかなる実質的な病気の徴候を示さない。非典型的PRRSVとは、通常のPRRSV株よりも実質的に強毒なこれら新種のPRRSV株を呼ぶ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましい形態において、本発明のワクチンは、弱毒化された生ウイルスを含む。得られた弱毒化されたウイルスは、毒性が弱く、効果的な免疫を与える。継代培養を通じて弱毒化するのに、特に深刻なPRR症候群を引き起こし、非典型的PRRSVの主要な株を表す非典型的PRRSの特定の強毒株(JA−142と命名されている)を選択した。得られた弱毒化されたウイルスは、メリーランド州ロックビルの米国種培養収集機関(American Type Culture Collction(ATCC))1999年2月2日に寄託され、ATCC受託番号VR−2638が与えられた。この弱毒化されたウイルスは、継代培養され、効果的なPRRSVワクチンとして開発される好ましい原種ウイルスである。
【0011】
弱毒化されていないウイルスに与えられた名称JA−142は、制限酵素パターンに由来する。1は、酵素Mlu Iのオープンリーディングフレーム5(ORF5)でのウイルスの切断不能を表す。4は、ORF5の塩基対部118および249および短連続配列におけるHinc IIによる切断を表す。
【0012】
ウイルスの継代培養による弱毒化は、効率を増加させる新規の方法により実現した。具体的には、弱毒化の時間を実質的に短縮するため、複数の細胞培養の継代を通じてウイルスの複製における対数期間を維持した。これは、各細胞において、存在するウイルスに対して、予め感染していない細胞が過剰に存在することを保証することで実現した。したがって、継代時において、少数のウイルスのみを移植させることにより、対数複製を保証した。
【0013】
実際には、工程は通常、数個の独立した細胞培養に、より少量のウイルスアリコット(すなわち、各培養におけるウイルス数がより少ない)を積極的に接種することにより開始する。例えば、開始時の培養は、200μl、20μlおよび2μlのウイルスアリコットを含む。開始時の短い培養期間(例えば〜24時間)の後、各細胞培養から同じウイルスアリコット(例では200μl、20μlおよび2μl)を独立した新しい(予め感染されていない)培養に移植し、その一方で、開始時の培養は、細胞変性効果(CPE)が観察されるか否かをモニタする。この手順は、各場合において同じウイルスアリコットを用いて、複数の継代に渡って連続して継続し、CPE観察用の培養を保存する。選択された培養数が完了した後、連続する培養継代の全てでCPEを示された場合、より大きなウイルスアリコット群を終了させ、より小さなウイルスアリコット(例えば、2μl、0.2μlおよび0.02μl)を実施し、その手順を再度繰り返し、CPE観察用の移植した後に細胞培養を保存してもよい。
【0014】
この連続したより小さなウイルスアリコット培養手順のある段階において、与えられた細胞培養中にCPEが観察されなくなる。この時点で、CPEが観察されなくなった継代を、1つ上の濃度の、CPEを示すウイルスアリコットと置き換える。そして次の継代は、先に実施したウイルスアリコットを用いて培養する。
【0015】
ウイルスが細胞への感染がより効果的になり、また経時的に細胞培養により高い感染価を繰り返す傾向がある限り、一連の移植の際に、感染を維持するのに必要なウイルスアリコットはますます小さくなると了解される。感染を維持するのに最小のアリコットの使用は、ウイルスの複製が手順を通じて対数段階を維持していることを保証するのを補助する。
【0016】
201代継代からの弱毒化継代ウイルスのDNA配列が、その後、従来の方法により決定された。この弱毒化ウイルスのDNA配列は、MSV JA−142継代番号201と命名され、そのDNA配列は配列番号1として与えられている。強毒性ウイルスJA−142のDNA配列は、配列番号2として与えられている。
【0017】
本明細書において、以下の定義を適用する。配列同一とは、公知のように2またはそれ以上のポリペプチド配列間での関係、すなわち、レファレンス配列とレファレンス配列と比較される配列との関係を呼ぶ。配列同一は、配列の類似性の程度が最も高くなるように最適にアラインした後、配列の鎖間での一致を測定することにより決定する。そのようなアラインメントに関して、配列同一は、位置対位置の基準で確認される。そのような位置同一の合計数をレファレンス配列の合計数で割り、配列同一(%)を与える。例えば、配列は、特定の部位でヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同一であれば、その部位は同一である。
【0018】
配列同一は、限定的ではない、以下の文献に記載された公知の方法により容易に計算される。
Computational Molecular Biology,Lesk,A.N.,ed.,Oxford University Press,New York(1988)
Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York(1993)
Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M..,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey(1994)
Sequence Analysis in Moleculer Biology,von Heinge,G.,Academic Press(1987)
Sequence Analysys Primer,Gribskov,M. and Devereux,J.,eds.,M.Stockton Press,New York(1991)
Carillo,H., and Lipman,D.,SIAM J.Applied Math.,48:1073(1988)
これらの教示は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0019】
配列同一を決定するための好ましい方法は、試験された配列間で最大の位置を与えることである。配列識別を決定する方法は、与えられた配列間で配列識別を決定するための公衆利用可能なコンピュータプログラムで分類することができる。
【0020】
そのようなプログラムの具体例は、限定的ではない以下のプログラムを含む。
GCGプログラムパッケージ(Deveruex,J.,et al.,Nucleic Acids Research,12(1):387(1984))BLASTP,BLASTNおよびFASTA(Altschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.,215:403−410(1990))
BLASTXプログラムは、NCBIおよび他のソース(BLASTマニュアル,Altschul,S. F.et al.,J.Molec.Biol.,215:403−410,これらの教示は引用することにより本明細書の一部をなす)から公衆利用可能である。
【0021】
これらのプログラムは、与えられた配列とレファレンス配列との間での最大レベルの配列同一を得るために、デフォルトギャップウェイトを用いて、配列を最適にアラインする。実例として、レファレンスヌクレオチド配列と、例えば少なくとも95%の配列同一を有するヌクレオチド配列を持ったポリヌクレオチドでは、与えられたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、レファレンスヌクレオチド配列の、各々100のヌクレオチドにつき、5個所まで突然変異を含んでよいことを除いて、レファレンスヌクレオチドと一致している。言い換えると、レファレンスヌクレオチドに対して少なくとも95%同一性を有するヌクレオチド配列を持ったポリヌクレオチドにおいて、レファレンスヌクレオチドの5%までの数のヌクレオチドが欠失若しくは他のヌクレオチドで置換されていてもよく、またはレファレンスヌクレオチドの全ヌクレオチドの5%までの数のヌクレオチドがレファレンスヌクレオチドに挿入されていてもよい。これらのレファレンスヌクレオチドの突然変異は、レファレンスヌクレオチドの5’末端若しくは3’末端、またはこれらの末端の間のいずれかの場所で起こり、レファレンスヌクレオチド中のヌクレオチド類のいずれか、またはレファレンスヌクレオチド内の1またはそれ以上の連続する基を変化させる。
【0022】
同じく、レファレンスアミノ酸配列と、例えば少なくとも95%の配列同一を有するアミノ酸配列を持ったポリペプチドでは、ポリペプチドの与えられたアミノ酸配列は、レファレンスアミノ酸配列の各々100のアミノ酸配列につき、5つまでのアミノ酸の変化を含んでもよい点以外はレファレンスアミノ酸配列と同一である。言い換えると、レファレンスアミノ酸配列と、少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドを配列を得るためには、レファレンス配列のアミノ酸残基の5%までが欠失若しくは他のアミノ酸で置換されてもよく、またはレファレンス配列の全アミノ酸残基の数の5%までの数のアミノ酸がレファレンス配列に挿入されてもよい。レファレンス配列でのこれらの変化は、レファレンスアミノ酸配列のアミノ末端位置若しくはカルボキシ末端位置、またはこれら末端位置の間のいずれかの場所で起こってよく、レファレンス配列中の残基のうちのいずれか、またはレファレンス配列中の1またはそれ以上の基を変化させる。おそらく、同一でない残基の位置は、保存的なアミノ酸の置換により異なる。しかし、保存的な置換は、配列同一を決定する際に一致に含まれない。
【0023】
同様に、本明細書で使用される配列相同とは、2つの配列の相関を決定するための方法を呼ぶ。配列相同を決定するために、2またはそれ以上の配列は、上記のようにして最適にアラインされ、必要に応じてギャップが導入される。しかし、配列同一とは対照的に、配列相同を決定する際には、保存的なアミノ酸置換は、一致として計算される。言い換えると、レファレンス配列と、95%の配列相同を有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドを得る為には、レファレンス配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドの95%が一致しているか、または他のアミノ酸若しくはヌクレオチドとの保存的な置換を含む必要があるが、そうであれば保存的な置換を含まないアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの合計数の5%までの数のアミノ酸またはヌクレオチドが、レファレンス配列に挿入されていてもよい。
【0024】
保存的な置換とは、アミノ酸残基若しくはヌクレオチドを、全体的な機能を実質的に変化させない、大きさ、疎水性等を含んだ特徴または特性が類似した他のアミノ酸残基若しくはヌクレオチドで置換することを呼ぶ。
【0025】
分離されたとは、その自然状態から人間の手により変化させられること、すなわち、それが自然に発生した場合に、変化させられるか、もしくは原初の環境から除去されるか、またはその両方を意味する。例えば、生体内に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本明細書で使用する用語では、分離されていない。
【0026】
好ましくは、配列番号1と少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の配列相同を有する配列は、そのような相同配列を含んだ弱毒化ウイルスで動物をワクチン接種して免疫を与えるのに効果的である。または、配列番号1と、少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、さらにより好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約95%の配列同一を有する配列は、そのような同一配列を含んだ弱毒化されたワクチンを動物に接種して免疫を与えるのに効果的である。
【0027】
また、本発明の他の実施の態様は以下の(1)〜(36)である。
(1)弱毒化が達成されるまで、各個体細胞培養組織でウイルスを接種および複製することによる、上記ウイルスを連続的に複製する工程を含むウイルスを弱毒化するための多段継代方法において、少なくとも上記のある細胞培養組織中で、対数的比率でウイルスが複製され、細胞変性効果の誘発の前に、少なくともある細胞培養組織からウイルスを含む検体を取り出し、および、次の各細胞培養継代組織へ該検体を接種する工程を含む、改良を特徴とする多段継代方法。
(2)上記取り出し工程が、上記細胞培養組織の接種後24時間で発生する、上記(1)に記載の方法。
(3)細胞の単一層を含む上記継代組織が、70%コンフルーエント以上である、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)さらに、前記後代ウイルスが弱毒化されているかどうかを定期的に試験する工程を含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)さらに、上記取り出し工程後に上記のある細胞培養組織を保持し、および、上記保持された細胞培養組織中に細胞変性効果の誘発がされているか否かを観察する工程を含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)上記接種が最終的にCPEを引き起こす最少数のウイルスを含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)ATCC受託番号VR−2638を有するPRRSウイルス。
(8)ATCC受託番号VR−2638を有する、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法により非典型的PRRSV JA−142株から弱毒化されたウイルス。
(9)上記ウイルスが、細胞培養組織中で最低200回継代された、上記(8)に記載のウイルス。
(10)上記ウイルスが実質的に無毒である、上記(9)に記載のウイルス。
(11)ブタで抗体応答を誘導することができる、上記(10)に記載のウイルス。
(12)上記抗体応答が豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス株に特異的である、上記(11)に記載のウイルス。
(13)上記(8)に記載のウイルスを含むワクチン。
(14)さらに、薬学的に許容しうる担体を含む、上記(13)に記載のワクチン。
(15)上記ワクチンが宿主動物で抗体応答を誘導することができる、上記(13)に記載のワクチン。
(16)上記宿主動物がブタを含む、上記(15)に記載のワクチン。
(17)上記抗体応答誘導が豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス株に特異的である、上記(15に記載のワクチン。
(18)上記ウイルス株が、非典型的な豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス株を含む、上記(17)に記載のワクチン。
(19)配列番号1で表されるDNA配列と少なくとも65%の配列同一性を有する、分離されたDNA配列。
(20)配列番号1で表されるDNA配列と少なくとも75%の配列相同性を有する、分離されたDNA配列。
(21)上記(19)に記載の配列を含むPRRSウイルス。
(22)上記(20)に記載の配列を含むPRRSウイルス。
(23)弱毒化が達成されるまで、各個体細胞培養組織でウイルスを接種および複製することによる、上記ウイルスを連続的に複製する工程を含むウイルスを弱毒化するための多段継代方法において、少なくとも上記のある細胞培養組織中で、対数的比率でウイルスが複製され、細胞変性効果の誘発の前に、少なくともある細胞培養組織からウイルスを含む検体を取り出し、および、次の各細胞培養継代組織へ該検体を接種する工程を含む、改良を特徴とする繰返し継代方法により弱毒化されている、上記(22)に記載のウイルス。
(24)上記ウイルスが、細胞培養組織中で最低200回継代される、上記(22)に記載のウイルス。
(25)上記ウイルスが、弱毒化されている、上記(22)に記載のウイルス。
(26)上記ウイルスが、実質的に無毒である、上記(22)に記載のウイルス。
(27)上記ウイルスがブタで抗体応答を誘導することができる、上記(22)に記載のウイルス。
(28)上記抗体応答が豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス株に特異的である、上記(27)に記載のウイルス。
(29)上記(20)に記載のDNA配列を含むワクチン。
(30)さらに、薬学的に許容しうる担体を含む、上記(29)に記載のワクチン。
(31)上記ワクチンが宿主動物で抗体応答を誘導することができる、上記(29)に記載のワクチン。
(32)上記宿主動物がブタを含む、上記(31)に記載のワクチン。
(33)上記抗体応答が豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス株に特異的である、上記(32)に記載のワクチン。
(34)上記ウイルス株が非典型的豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス株を含む、上記(33)に記載のワクチン。
(35)上記配列の宿主動物への投与により効果的な免疫を与える、上記(20)に記載のDNA配列。
(36)上記(13)〜(18)のいずれかに記載のワクチンをブタに投与する工程を含む、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス株に対してブタを免疫する方法。
【実施例】
【0028】
発明の好ましい実施態様
以下に示す実施例は、本発明の好ましい態様を示す。しかしながら、これら実施例は説明のためのものであり、これにより何ら本発明の総体的な範囲を限定するものでないと理解されるべきである。
【0029】
実施例1
材料および方法
この実施例は、ウイルスが好ましくは対数関数的な複製となることを確実にすることによって弱毒化効果を最大限とするウイルス弱毒化の継代方法を記載する。ウイルスを一日おきに継代培養した(すなわち、ウイルスを含む栄養培地、非結合細胞、およびウイルス感染細胞培地由来の細胞壊死組織片を非感染培養の栄養培地に栄養培地に添加した。)。複数の培地を用いて、各インターバル毎にウイルスの添加量を変化させた。たとえば、最初に200μlを1つの非感染培地に転移し、第2の非感染培地に20μlを、第3の非感染培地に2μlを添加した。最後に、複製サイクルが次期転移まで継続できる余地のある細胞量となるようにする。細胞がいずれCPEを示せば方法は成功したと考えられる。しかしながら、PRRSV惹起されたCPEは対数関数的成長状態後となるまで現われないため、最終的にうまくいったかどうかはわからないまま、継代接種した(“ブラインド継代”)。ウイルス惹起CPEにおける継代の結果は、“獲得(take)”といえた。継代が獲得されてなければ、獲得できなかった最後の継代由来の最大希釈液を用いて再び継代を始めた。何代も継代するほど、ウイルスは細胞株中の複製に順応しやすくなり、その起源宿主における疾患症候の産生を低減することができた。これら変化は、複製の間におきるランダムな変異により生じる。
【0030】
この方法を用い、本発明に係る代表的なウイルス、MSV,JA−142を以下の手順により継代した。この菌種を、MARC−145細胞培地で一日おきに継代接種した。プロセスに必要な細胞量および栄養培地量を最小限とし、かつ複合アリコット継代技術を簡素化するために24ウエルプレートを用いた。細胞および栄養培地を各ウエルに添加し、細胞を集密的単層に形成またはほぼ形成(約70%より多く)させた。栄養培地は、概略90%でのアール(Earle)液に調整された塩溶液最小必須培地(MEM)、10%ウシ胎仔血清および0.05%mgm/mlの硫酸ゲンタマイシンからなる。使用した栄養培地の容量は、ほぼ1mlである。通常、転移されるウイルスの各量あたりカラムの3ウエルを使用した。先代由来の栄養培地のアリコットを、カラム中の最初のウエルに細胞培地を調製後、48または72時間で転移し、最初のウエル由来の栄養培地を同一カラムの第2のウエルに72または96時間で、同一カラムの第3のウエルに96または120時間で転移した。プレートは、ある時には該カラムの第4のウエルを使用し、ある時には使用せず、通常1週あたり2回セットアップした。継代接種の条件は、5%COを含む湿気雰囲気中、37℃に保持した。
【0031】
各継代に対し、ウイルス量がCPEを惹起するに足りる量であるかを測定するため、大きさの異なるアリコット(ウイルス含有量の異なる)を試験した。たとえば、別々のアリコット転移(継代)系それぞれ200μl、20μlおよび2μlを最小アリコットが、CPEを産生する最小のアリコットに転移しうる最終物に一致するCPEを示すまで使用した。各アリコット群の最小アリコット(たとえば0.2μl)CPEの結果に一致するように試験する場合、より少量(たとえば0.2μlおよび0.02μl)を試験した。ある濃度でCPEを示さない時、その培地系は、その継代でのCPEでは結果のでない量の次に少ない量で再び開始した(すなわち、25代継代の2μl転移がCPEの産生に不充分であるが、25代継代の20μl転移であれば達成できるのであれば、2μl転移液(transfers)とともに20μlを用いて26代継代のための再開を繰り返す。)。
【0032】
この方法を用いて、CPEを獲得するための転移に必要な最小ウイルス量を決定した。ウイルスは、下記量のウイルス感染栄養培地(CPEの結果が得られる高希釈を反映し[すなわち最小アリコット]、他の希釈も同様に機能するであろうと考えられるような希釈)を用いることにより一日おきに充分に継代された。
【0033】
【表1】

【0034】
結果および考察
上記方法で使用したウイルスの継代により、PRRSV,JA−142は弱毒化した。親代のように、ウイルスは細胞培地中でより順応して複製するようになり、それ故、継代保持のために転移されるウイルス感染栄養培地の要求量はより低減した。極めて少量のウイルス感染栄養培地(たとえば0.2μlおよび0.02μl)を用いる転移では、別々の希釈液が必要であった。この希釈は、少量のウイルス感染栄養培地を多量の栄養培地に添加することにより成される。たとえば、0.2μl、2μlのウイルス感染栄養培地の転移を獲得するために、20μlの栄養培地に添加され、その希釈培地の2μlを当該系の次ぎの培地に添加する。この試みにより、CPE結果の得られる高希釈物が使用され、その時ウイルス継代に必要な最小量が決定する。一日おきの継代により、ウイルスは常に対数関数的に複製されることを保証した。また日毎の継代接種は、ウイルス複製のための充分な細胞数であったことを保証した。
【0035】
複製の間、弱毒化のみが起きるという結果であるような変異(おそらく累積)により、全ての細胞に感染させ、次世代転移の前に、進行を遅くさせるかまたは停止させることは本質的に利点がない。前記PRRSVの研究に基づけば、複製サイクルは約8時間であり、それゆえ、ウイルス感染栄養培地由来のウイルスの最小量を一日おきに非感染栄養培地に転移すれば、ウイルスは常に複製するに充分な細胞と共存することが分った。
【0036】
すでに分ったように、この方法を用いた継代では、それ以前には不可能と考えられていたような時間短縮である(すなわち各継代時間の要求する時間は短い。)。このことはウイルス弱毒化に充分な高次継代が求められるとき、特に重要である。従来の方法を用いれば、各継代は3日おきで行われるが、本発明の方法を用いれば、200代継代に要求される工程に費やすのは400日より少ない日数であろう。
【0037】
実施例2
材料および方法
この実施例は、200代PRRSウイルス、JA−142は宿主動物において、6回継代した時、毒性が戻るかを試験した。この研究は、6グループで行なった。グループ1の5頭のブタ(プリンシプルグループ)に、PRRMSV、200代JAー142を内鼻腔接種し、一方、グループ1Aの3頭のブタ(コントロールグループ)に滅菌希釈液を内鼻腔接種した。これら動物には、試験の間、随意に市販飼料および水を与えた。両処理グループのブタを、毎日臨床的に観察した(外観、呼吸、便など)。6日後、動物の体重を測定し、血液採取した。各動物の肺疾患スコアを記録した後、肺洗浄物を収集した。それぞれの戻し継代(Backpassage)1および1Aを調製するため、肺洗浄物を凍結し、一度解凍し、血清2.0mlおよびグループの各動物からの肺洗浄物2.0mlを用いてプールを調製した。このプールを用いて、グループ2およびグループ2Aの動物に試みた(内鼻腔に)。このプロセスは、グループ3および3Aに対し、6および6Aを介して繰り返された。各グループの動物は、別々であるが、同一条件の舎で飼育した。
【0038】
以下のように接種した血液サンプルを収集し、体温を観察した。各動物の直腸温度を、−1DPE(暴露後日数)から6DPEおよび定期的に測定し、同一グループの他動物の温度とともに平均した。各動物の健康状態を試験の間毎日観察した。結果は全部、日別観察形式でスコア記録した。記録内容は以下のとおりである。
【0039】
1.外観
正常=0;元気がない=1;興奮=2;昏睡/死亡=30。
2.呼吸
正常=0;くしゃみ=1;咳=1;速/短=2;呼吸困難=3。
3.糞便
正常=0;乾燥=1;弛緩=2;液便=3。
4.目
正常=0;涙目=1;にごり=2;陥没=3。
5.鼻孔
正常=0;水鼻=1;赤/炎症=2;潰瘍痂皮=3。
6.口
正常=0;よだれ=2;痂皮=3。
7.動作
NA
8.食欲
正常=0;減退=1;食欲不振(なし)=3。
9.他
【0040】
また動物は、接種および剖検に先だって体重測定した。各グループあたりの平均体重を算出して比較した。試験およびコントロール物質に動物を暴露し、PRRS固相酵素免疫検定法(ELISA)および血清中和(SN)検定を行なった。血清試料からPRRSVを分離する試みがMA−104細胞で成された。ワクチン接種の前および後で、全白血球細胞カウント数を、COULTER COUNTER MODEL Z1,Coulter Corp.,マイアミ、フロリダ州を用いて測定した。剖検では、各動物の肺スコアを記録した。肺のスコアは、肺を7つの部位に分け、各部位を囲む全肺面積に対するパーセンテージとして肺発症量のパーセンテージ(各部位あたり損傷または発赤として影響のみられる肺面積を、全肺の概略面積分を乗じたパーセンテージ)を求めた。
【0041】
発症の左肺尖(Apical)ローブ% X 0.10 =
発症の左噴門(Cardiac )ローブ% X 0.10 =
発症の横隔膜(Diaphragmatic )ローブ% X 0.25 =
発症の右肺尖ローブ% X 0.10 =
発症の右噴門ローブ% X 0.10 =
発症の横隔膜ローブ% X 0.25 =
発症の右肺中間ローブ% X 0.10 =
トータル(最右カラム中全数値の総量) =
【0042】
結果および考察
各グループのブタを接種後、6日間観察した。臨床スコアは、すべてのグループで低かった。臨床スコアを表1に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
直腸温や日々の体重増加には、重要な差異は見られなかった。すべての肺の記録(lung score)は陰性(negative)であった。
【0048】
血清学的には、ELISA S/P比およびSN滴定は、各グループの試験期間を通して、陰性であった。ウイルス分離がすべての血清サンプルおよび肺洗浄について試みられた。6日目までに、JA−142、パッセージ200および引き続いてのバックパスにより与えられたグループからの血清サンプルの60−100%は、陽性(positive)であった。生理食塩水により与えられたグループは、陰性であった。最初の三つのパスにおいて、ウイルスは肺洗浄でブタの20−40%のみから回収されたが、最後の三つのパスにおいて、ウイルスはブタの50−80%から回収された。
【0049】
このデータによれば、JA−142パッセージ200は、ブタを6回通ったときにおいて、毒性に戻らなかった。
【0050】
実施例3
材料および方法
この実施例は、MSV、JA−142、パッセージ200の安全性の減衰のレベルが、宿主動物(host animal)における6回のバックパッセージの間に、大きくは変化しないことを証明した。減衰のレベルまたは安全性の評価は、妊娠している雌ブタモデルを用い、生殖能力への影響をモニタリングすることにより行われた。このモデルは、最も感度の高い試験法であり、毒性テストの主観的要因(subjective factor)に依存しない。この実施例は、四つのグループ(A、B、CおよびD)からなり、各グループは七匹の雌ブタを有していた。グループAは、PRRS MSV、JA−142パッセージ200を鼻腔内に接種された。グループBは、JA−142、パッセージ200、バックパッセージ6を鼻腔内に接種された。グループCは、正常なコントロールとするために、無菌の希釈剤を鼻腔内に接種された。グループDは、PRRSV JA−142、パッセージ4を鼻腔内に接種された。被験物質(JA−142、パッセージ4での試行)は、約93日間の妊娠期間において与えられた。雌ブタの体温は、接種後の最初の7日間、モニタリングされた。雌ブタからは、血液サンプルが週に一度および分娩のときに採取された。子ブタからは、誕生時、7日時および14日時に血液サンプルが採取され、体重が記録された。各動物の健康状態は、調査期間に一致して、および、分娩後14日間、毎日モニタリングされた。分娩能力は、誕生した子ブタの健康状態を観察することにより評価された。
【0051】
PRRS ELISA検定(assay)は、雌ブタの被験物質への曝露に続いて行われた。PRRS ELISA検定は、分娩後毎週、子ブタの血清についても行われた。被験物質への曝露に続いて、血清サンプルからPRRSVを分離する試みが、MA−104セルに対して行われた。直腸温は、0接種後日数(DPV)から7DPVまで測定され、各グループの平均温度が決定された。接種の前および後に、総白血球数が実施例1と同様に決定された。実施例2と同様の雌ブタの臨床観察が、−1DPVから分娩まで行われた。子ブタの臨床観察が、分娩から誕生後14日まで行われた。最後に、検死において、各子ブタの肺は、ラングインバルブメント(lung involvement)のパーセントを記録された。
【0052】
結果
ELISAの結果は、この調査に用いられた動物がPRRSVにナイーブ(naive)であったことを示す。ウイルス接種材料、グループA、BおよびDを受けたこれらの動物は、処理後14日で血清変化した(sero−converted)。グループBの三匹の雌ブタは、処理後14日において陰性のままであった。分娩の時、グループBの陰性の雌ブタは、PRRSVの抗体に対して陽性という結果が出た。
【0053】
ブタのELISAの結果は、グループAおよびBの雌ブタに生まれた子ブタの大多数(majority)は、授乳(nursed)後、サンプルとされた。分娩後ゼロ日(0DPF)に陰性であったこれらのブタは、7DPFには陽性という結果が出た。グループCの雌ブタに生まれたすべてのブタは、調査を通して、血清陰性(sero−negative)という結果が出た。大部分は死産またはひからびた死体(mummies)のいずれかであったため、グループDからは、少数のブタのみが試験を受けた。試験されたこれらのブタの半分は、血清陽性(sero−positive)であった。このことは、血清陰性のブタは、授乳前にサンプルとされたか、授乳することができなかったかを示した。グループDの雌ブタに生まれたすべての子ブタは、7DPF前に死亡した。グループAおよびBの雌ブタからのPRRSVの分離は、散発した。ELISA試験の結果が、これらの雌ブタがウイルスの被験物質を成功裡に接種されたことを示したにもかかわらず、多くの場合、血清からのウイルスの分離は陰性のままであった。
【0054】
グループAおよびBの雌ブタに生まれたブタの大部分は、調査の実施の間、ウイルスの分離に対して陽性という結果を示した。グループAの一匹の雌ブタからの同腹子は、決して陽性という結果を示さず、グループBの一匹の雌ブタからの同腹子は、八匹の子ブタに対して二匹のみがウイルスの分離に対して陽性という結果を示した。グループCの雌ブタに生まれた子ブタからは、ウイルスは回収されなかった。グループDの雌ブタから生まれた子ブタの大部分(71%)からは、ウイルスが回収された。
【0055】
処理後の直腸温は、注目すべきものではなかった。MSV、バックパッセージ6または無菌の希釈剤のいずれかで処理されたグループは、101.7゜Fを超えることはなかった。グループD、即ち、JA−142、パッセージ4で処理されたものは、(七匹中)四匹の雌ブタが102゜Fを超え、一匹はある一日103.4゜Fに届く温度を経験した。グループA(MSVで処理)およびB(MSV、バックパッセージ6で処理)の雌ブタに生まれた子ブタの体重増加能力は、グループCのコントロールの雌ブタに生まれたブタのそれよりも優れていた。14日間の観察期間における平均体重増加は、7.9ポンドであった。グループAについては7.7ポンドであり、グループBおよびCについては6.9ポンドであった。体重増加の差異は、14日まで残った同腹子の数とは無関係であった。平均の同腹子の数は、14分娩後日数(DPF)において、グループAについて9、グループBについて7、グループCについて10であった。グループDの雌ブタに生まれたブタで、3DPFを超えて生存したものはなかった。
【0056】
グループA、BおよびCの雌ブタについての白血球(WBC)数は、比較的一定にとどまっていた。試行前の値の平均パーセンテージは、観察期間の間、92%以上であった。グループDの三匹の雌ブタは、WBC数が期待される通常の範囲(7−20×106/ml)より低かった。
【0057】
接種後の臨床観察は、グループAおよびBの雌ブタについては、注目すべきものではなかった。グループCのいくつかの雌ブタは、臨床上の兆候を数日の期間において経験したことが観察された。観察された臨床上の症状の大部分は、食欲減退、呼吸系の症状および機能低下(depression)の範疇に属するものであった。グループCの一匹の雌ブタは、試験31日目に慢性細菌性肺炎で死亡した。グループDの七匹の雌ブタのうち六匹は、臨床上の兆候が観察された。それは主に、種々の程度の食欲の欠如であり、食欲減退から拒食症までの範囲にわたっていた。雌ブタについての臨床観察の結果は、表2に示される。
【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
【表10】

【0063】
【表11】

【0064】
子豚の臨床的観察は2つの主たるカテゴリー、死と食欲減退に集約される。リッター当たりの平均死亡数(DPL)の分野でA、B、C群の間で大きな違いはなかった。A群は、1.3DPLの平均値であり、B群は2.4DPLの平均値、C群は2.0DPLの平均値であった、そしてD群からは、分娩後3日を越えて生存する子豚はなかった。子豚の臨床スコアは表3に示される。
【0065】
【表12】

【0066】
【表13】

【0067】
【表14】

【0068】
【表15】

【0069】
【表16】

【0070】
【表17】

【0071】
【表18】

【0072】
【表19】

【0073】
【表20】

【0074】
【表21】

【0075】
【表22】

【0076】
【表23】

【0077】
【表24】

【0078】
分娩能力結果は、様々な処置グループ間で最も強烈な相違と類似性を提供した。処置は、同腹子の大きさには影響しないであろうから、分娩結果を比較する最も適した方法は、パーセンテージ値を用いて行うことであろう。グループAの平均生産率は85%(SD+/−9.6)であった。グループBの平均生産率は89%(SD+/−11.6)であった。対照グループ(グループC)の平均生産率は83.4%(SD+/−7.9)であった。グループA、BおよびCの平均死産率はそれぞれ、8.8(SD+/−9.66)、6.6(SD+/−9.7)、14(SD+/−11.39)であった。グループA、BおよびCの雌豚からの平均ミイラ化出産率はそれぞれ、6.1(SD+/−6.01)、3.9(SD+/−4.45)および2.6(SD+/−4.01)であった。グループDの平均生産率、平均死産率、雌豚からの平均ミイラ化出産率はそれぞれ、8.7(SD+/−8.92)、10.7(SD+/−11.39)および81.9(SD+/−17.18)であった。
【0079】
この実施例の結果は、宿主動物に6回通過させた後のMSV、JA−142、継代200の安定性を実証していた。MSVで処置した雌豚群(グループA)と、戻し継代(Backpassage)6ウイルスに暴露した雌豚(グループB)との間には、分娩能力、白血球減少、直腸温度、および雌豚または子豚の臨床観察のカテゴリーで大差はなかった。さらに、グループAとグループBでのこれらの同じカテゴリーでの結果は、滅菌希釈剤で処置したグループCにより達成されるものに匹敵していた。最後に、MSV、JA−142、継代4の毒性親ウイルスに暴露した雌豚の能力は、明らかに、MSVの弱毒レベルと、Backpassage6、JA−142ウイルスによる毒性転化がないことを示していた。
【0080】
実施例4
材料および方法
この実施例では、MSV、JA−142、継代201を10倍濃度で投与した際の安全性と弱毒レベルを評価した。妊娠中の雌豚モデルで調査を実施し、生殖能力についてこの用量の効果を監視した。この調査は、3つのグループA、CおよびDからなっていた。グループAには、PRRS MSV、JA−142、継代200を鼻腔内接種した。グループCには、正常な対照グループとして作用すべく、滅菌希釈剤を鼻腔内接種した。グループDには、10xJA−142、継代201を鼻腔内接種した。全ての接種物は、約93日の妊娠期間中与えた。接種(ワクチン接種)後の最初の7日間、雌豚の体温を監視した。週に1回、それから分娩時に雌豚から血液試料を採取した。接種の前後に、実施例2と同様に、全白血球量を調べた。分娩前後の14日間、毎日各動物の健康状態を監視した。−1DPVから分娩まで、雌豚の臨床観察を行った。生まれた子豚の健康状態を観察することにより、分娩能力を評価した。雌豚を試験製品に暴露した後に、PRRSV ELISAアッセイを行った。試験製品に暴露した後、MA−104細胞で、血清試料からPRRSVの分離を試みた。分娩から生後14日目まで、子豚の臨床観察を行った。出生時、生後7日目および14日目に子豚から血液試料を採取した。分娩後週1回、子豚の血清でPRRSV ELISAアッセイを行った。出生時、分娩から7日目、および検死時に子豚の体重も計量した。検死時に、各子豚の肺を、肺障害パーセントでスコアをつけた。
【0081】
結果および考察
10倍用量のMSV、JA−142、継代201を与えたグループと、正規用量のMSV、JA−142、継代200を与えたグループと、滅菌稀釈液を与えたグループとの間で有意の相違は認められなかった。従って、MSV、JA−142、継代200の安全性および減衰性、ならびに上記グループ同士の比較結果に有意の相違が認められないことに基づき、10倍用量のMSV、JA−142、継代201は安全で、減衰し、かつPRRSVに対する抗体の誘起に有効であることが判明した。
【0082】
実施例5
材料および方法
この実施例では、MSV+5 を表わすPRRSV、JA−142、継代205を最小ワクチン用量で用いた場合、飼養ブタの呼吸器攻撃実験モデルに効力を発揮することを証明した。ブタを3グループに分けた。グループ1には、PRRS MSV、JA−142、継代205を2.0logs/用量の力価で筋肉内接種した。グループ2には、滅菌稀釈液を筋肉内接種した。グループ3は正常対照とした。ワクチン接種後28日目にグループ1および2のブタを、144のRFLPパターンを有するPRRSV分離物で攻撃した。ブタの体温をワクチン接種後最初の7日間、および攻撃後は毎日モニタした。各個体の体重を、ワクチン接種時、攻撃時、研究の間中週1回、および検視時に測定した。血液試料をワクチン接種後週1回、および攻撃後は1日おきに採取した。
各個体の健康状態を研究期間中毎日モニタした。検視時、各個体を殺し、実施例2の場合同様肺を肺関与(lung involvement)のパーセンテージについて評価した。ブタを試験品に暴露し、かつ攻撃してからPRRSV ELISAアッセイを行なった。
試験品への暴露後、MA−104細胞において血清試料からのPRRSV分離を試みた。ウイルス分離およびELISAの結果を、陽性個体のパーセンテージが各グループで同じであるかどうかを検定するカイ二乗分析を用いて分析した。実施例2同様、白血球計数を行なった。
【0083】
結果および考察
この実施例のあらゆる局面において、グループ1のブタ(ワクチン接種したブタ)はグループ2のブタ(滅菌稀釈液を与えたブタ)より良好であった。臨床評価、直腸温度、および肺関与のパーセンテージではそのいずれにおいても、滅菌稀釈液を与えたブタの方が高値を示した。体重増加および白血球数は滅菌稀釈液を与えたブタの方が少なかった。ワクチンを与えたグループでは、攻撃後4日目からウイルス血症の著しい低減もみられた。攻撃後10日目および11日目、ワクチン接種グループではウイルス血症陽性の個体数はさらに減少したが、滅菌稀釈液を与えたグループでは該個体数に変化は無かった。
【0084】
ELISAを用いて、ワクチン接種および攻撃の前およびあとの抗PRRSV血清状態をモニタした。ワクチン接種時、ブタは総て陰性であった(S/P比<0.4)。ワクチン接種した個体を含め、総てのブタが7 DPV(ワクチン接種後日数)において陰性であった。7日後、試験の結果、ワクチン接種したブタ22頭中21頭がPRRSVに対する抗体に関して陽性であると判明した。グループ1のブタのうち2頭は攻撃前の期間中陰性のままで、攻撃後8日目(8 DPC)に血清学的に変換された。グループ2のブタは総て、トライアル0日目に陰性で、かつ攻撃前の期間中陰性であり続けた。トライアル39日目(8 DPC)、試験の結果、ワクチン接種せずに攻撃したブタ22頭(グループ2)中17頭が血清反応陽性と判明した。グループ3のブタ(正常対照)は総て、研究の間中血清反応陰性のままであった。
【0085】
血清からのウイルス分離を、ワクチン接種の前およびあとに行なった。ワクチン接種した22頭のブタのうち、2 DPVまでに17頭、4 DPVまでに18頭、7 DPVまでに19頭が陽性となった。ワクチン接種後、ワクチンウイルスを、1頭のブタからは全く回収せず、その他のブタからは0 DPCまで回収しなかった。このような結果は、ワクチン接種後観察期間中のこれらのブタの血清反応陰性状態に対応する。攻撃時、ワクチン接種したブタの55%がウイルス血症陽性であった。攻撃後、このパーセンテージは82%に上昇し(2 DPC時点)、その後漸次低下して11 DPCには9%となった。グループ2のブタは、0 DPCにはいずれも陰性であったが、2 DPCに陽性が82%となり、4 DPCには91%となった。6 DPCおよび10 DPCにはグループ2の約82%がウイルス陽性で、11 DPCにはこのグループの73%が陽性であった。グループ3の正常対照は研究の間中陰性のままであった。
【0086】
グループ2について直腸体温測定した結果、グループ全体が上昇することがわかった。このグループの半分の豚は、11日間の観察期間のうち2日以上、攻撃前の平均値よりも1°F超高い体温を示した。これに対し、ワクチン接種を行ったグループは、22匹のうち4匹のみが攻撃前の平均値よりも1°F超高い体温を示した。2日以上の体温上昇を示した動物の平均日数は、グループ1では2.2日であり、グループ2では4日であった。グループ3の豚で、攻撃前の平均値よりも1°F超高い体温を2日以上示した豚はなかった。
【0087】
体重増加は11日間観察した。グループ3の豚は平均1.06ポンド/日、グループ2の豚は平均0.94ポンド/日、グループ1の豚は平均0.53ポンド/日の体重増加を示した。したがって、ワクチン接種を行わないで攻撃を行った豚は、ワクチン接種を行った豚と比べて約57%の体重増加を示し、通常にコントロールされた豚の約50%の体重増加を示した。
【0088】
攻撃後に白血球減少(白血球数)を観察した。グループ3の試験日33(2DPC)の平均値は、攻撃前の平均と比べて5%減少した。グループ2では、白血球数は平均41%減少し、11DPCまで攻撃前の水準に戻らなかった。ワクチン接種を行ったグループの試験日34(3DPC)の平均値は、グループ平均で12%減少した。白血球数は、次の日には攻撃前の水準に戻り、観察期間中、攻撃前の水準を維持していた。
【0089】
毎日の臨床観察は、試験日28(−4DPC)から試験日42(11DPC)の間行った。すべての豚は、攻撃前には何ら臨床上の徴候は観察されなかった。グループ3は攻撃後も臨床上の徴候は観察されなかった。グループ2のうち5匹で、攻撃後にいくつか臨床上の徴候が観察された。これらの徴候は、6DPCには明白となったが、重大なものではないと考えられる。ワクチン接種を行った豚については、攻撃後11日間の観察期間で1つだけ臨床上の徴候が観察された。
【0090】
本研究終了時に、観察された肺の損傷について診断した。グループ3の豚の肺は正常であり、グループの平均スコアは0.02であった。グループ2の個々の豚のスコアは、低いもので33から高いもので98まであり、グループの平均スコアは78.33であった。ワクチン接種を行ったグループは、30から90の範囲であり、グループの平均スコアは53.20であった。
【0091】
本実施例データは、変形した生ワクチンである変種PRRSウイルスワクチンの効能を示している。このワクチンは、MSV(JA−142、継代205)の上の5番目の継代を含み、最小服用量2.0logs/doseで投与される。このワクチンの効能は、肺損傷の顕著な減少、攻撃後の顕著な白血球減少および攻撃後の発熱により示される。また、ワクチン接種を行って攻撃した豚は、通常にコントロールされた豚を攻撃した場合と比較すると、通常の成長速度を維持しており、ワクチン接種を行わずに攻撃した豚よりも著しく良好な成長速度を示した。
【0092】
実施例6
材料および方法
この実施例では、4つのグループ、それぞれ20匹の豚からなるグループ1、2および3、および10匹の豚からなるグループ4を比較する。グループ1には、PRRS MSV,JA−142,継代205を、約2.5logs/doseタイターで筋肉摂取(IM)した。グループ2には、PRRS MSV,JA−142,継代205を、約5.0logs/doseタイターで、鼻腔摂取した。グループ3には、滅菌希釈剤を筋肉摂取した。グループ4は、精密にコントロールして行った。豚は、ワクチン摂取後28日目に、RFLPパターン144をもつ南ダコタ州立大学(SDSU)から分離したPRRSVを用いて攻撃した。豚の体温は攻撃後毎日測定した。各動物は、ワクチン摂取時、攻撃時、研究期間中毎週、および検死時に体重測定を行った。血液サンプルはワクチン摂取後毎週、および攻撃後は2日ごとに採取した。各動物の健康状態は研究期間中毎日観察した。研究終了時に動物を殺し、肺を含む部位を切り取って肺を採取した。
【0093】
この豚について下記の試験(test articles)および攻撃を行った後、PPRSV ELISA試験を行った。血清サンプルからのPRRSVの分離は、下記試験を行った後、MA−104細胞についても同様に行った。WBC値および臨床観察は、実施例2と同様にワクチン摂取後に行った。
【0094】
結果および考察
ワクチン摂取後0日目(DPV)に、14DPVでS/P比<0.4を示したことから、この実施例に用いたすべての豚はPRRSVに対して血清学上ネガティヴを示し、グループ1の豚の70%およびグループ2の豚の95%が、抗PRRSV抗体に対してポジティヴを示した。ワクチン摂取を行ったグループ1の豚のうち1匹だけが、攻撃前期間中血清ネガティヴを示した。この豚は、攻撃後(DPC)7日目に血清ポジティヴを示した。グループ3および4の豚すべてが攻撃前期間中血清ネガティヴを示した。9DPCで、滅菌希釈剤を筋肉摂取したグループ3の豚すべてがPRRSV抗体のELISA試験に対してポジティヴを示した。通常にコントロールされたグループ4は、この研究期間中ネガティヴを示した。
【0095】
このウイルス分離の結果は血清学的結果と非常に高い相関関係を示した。一頭の豚だけが血清からのウイルス分離に対し陰性を保ち、これはワクチン接種後の血清陰性状態と合致した。これらの結果は、ワクチン接種後のウイルス血症とワクチン投与による血清学的転換との関係を示唆する。14DPVにおいて、血清陽性が70%だったグループ1に対して、グループ2は100%血清陽性であった。多量投与グループ(グループ2)は14および21DPVにおいて、それぞれ85%ならびに90%であった。比較として、少量投与グループ(グループ1)は、同一のテスト実施日において55%ならびに85%であった。
【0096】
抗原投与の後、グループ3の動物の89%が2日間以上にわたり抗原投与前より華氏1度以上高い温度を示した。グループ1では動物の1.75%が2日間以上にわたり華氏1度以上高い温度を示した。グループ2の動物の45%だけが高温を示したが、それに対して通常管理グループ(グループ4)の30%が観察期間11日間のうち2日以上、高温を示した。
【0097】
多量投与と少量投与のいずれも、ワクチン接種後の成長に何ら害を与えないと見られる(−3DPVから28DPV)。グループ1および2の一日の平均増加体重は、それぞれ一日当たり0.77ポンドならびに0.76ポンドであった。比較として、グループ3および4はそれぞれ一日当たり0.77ポンドならびに0.78ポンドであった。抗原投与の後、ワクチン接種されたグループは希釈殺菌剤のグループを凌ぎ、その差は一日当たり0.05ポンド(グループ1)ならびに0.15ポンド(グループ2)だった。通常管理グループはワクチン接種グループに対し、同期間中、一日当たり平均0.4から0.5ポンド劣った。
【0098】
希釈殺菌剤処置を受けたグループであるグループ3の84%(19頭中16頭)に、抗原投与後1日以上、WBCに25%以上の低下が見られた。通常管理のグループは10頭中3頭(30%)に同様の低下が見られた。抗原投与後、ワクチン接種グループでは、少量投与(グループ1)および多量投与(グループ2)はそれぞれ20頭中11頭(55%)ならびに20頭中3頭(15%)に、1日間以上にわたり25%の白血球減少症が見られた。
【0099】
抗原投与前に行われた臨床観察では、これらの豚は良好な健康状態を示した。抗原投与後、抗原投与された豚(グループ1、2、および3)に健康状態レベルの大きな変化は見られなかった。無気力、呼吸器(障害)の兆候、および食欲喪失が観察されたが、これらの症状は軽度であった。グループ2の豚のうち1頭について報告された臨床的兆候は、その豚がかかっていた細菌性肺炎(後述の肺障害に関する検討参照)に起因すると考えられる。通常管理のグループ(グループ4)は、11日間の観察期間中、特に臨床的徴候は見られなかった。
【0100】
実験終了時において、これらの豚は殺され、肺の影響を記録しPRRS様の棒変について観察された。(肺の)各葉について影響の割合が記録され、肺の総容量に対する割合を乗じて算出された。例えば横隔膜葉について、50%の肺の影響は肺の総容量の12.5%に相当させるべく25%を乗じた。得られる最大スコアは100である。通常管理(グループ4)のグループ平均スコアはゼロだった。希釈殺菌剤処置グループのグループ平均スコアは70.08だった。ワクチン処置グループの平均スコアは、少量投与(グループ1)は48.83、大量投与グループ(グループ2)は17.76だった。一頭の豚について62.5というグループ2の中で最も高い肺スコアが記録された。この豚の肺に見つかった病変は、上述の細菌性肺炎に関係があった。
【0101】
この実験の結果から、どちらの非典型的PRRS MSVワクチン投与レベルでも、PRRSVによって生じる呼吸器系疾患にかかわる臨床的徴候の程度が減少した。多量投与は最少量投与に勝ることが、肺の病変のスコアにおける顕著な減少によって示されている。
【0102】
実施例7
材料および方法
本実施例では、弱毒化したMSVである201回継代からのJA−142および現場分離ウイルスJA−142の継代3の配列を決定した。弱毒化ウイルスの分離は、PRRSに感染した豚から分離したPRRSVのMA−104シミアン細胞の201回継代を表す原種ストックから取得した。
【0103】
このウイルスは、サル肝臓細胞線、またはMA−104およびUSU−104とも称される2621細胞上で成長させた(Gravell et al.、181 Proc.Soc.Exp.Biol.Med.112−119(1986)、Collins et al.,北米における豚不妊・呼吸症候群ウイルス(分離株ATCC VR−2332)の分離およびノトバイオート豚における実験的な疾病の再現、4 J、Vet.Diagn.Invest.117−126(1992))(これらの教示は引例することにより本明細書の一部をなす)。細胞は、Dulbeccoの改良された鷹のMEM培養液(Life Technologies、Inc.、Gaithersburg、MD)、10%牛の胎児の血清および50μg/mlのゲンタミシン(Sigma Chemical Co.、St.Louis、MO)に入った75cmプラスチック製組織培養フラスコの中で37℃、湿度5%のCO雰囲気で培養された。細胞は5〜7日間隔で継代を維持した。細胞はトリプシンverseneを用いて表面から取り除かれ、1:4に分割された。細胞を感染させるために、培養液をデカントし、ウイルスの入った細胞の上澄み1mlがおよそ10〜10の細胞培養感染量(TCID50)滴定量で30分間かけて添加された。4%の胎児の牛の血清を含む新鮮な培養液30mlを添加された。細胞は上述のように5日間培養され、その時点で培養中の細胞変性効果が現れていた。ウイルスを含む培養液はべックマンTJ6遠心分離機により2000rpmでペレット状の細胞片に遠心分離された。
【0104】
ウイルス性ゲノムRNAは、1120μlの好適なバッファAVL(QIAamp Viral RNA分離キット、Qiagen)(QIAGEN、Inc.Valencia、CA)キャリアRNAを、ウイルスを含む培養液サンプル280μlに添加して精製された。その混合液は10分間常温で攪拌しながら培養された。1120μlのエタノールが加えられ、その混合液は数回置換された。RNAは、630μアリコットを1分間6000xgで繰り返し遠心分離することにより、QIAampスピンカラムのマトリクスに吸収された。このカラムは500μlのバッファAWにより洗浄され、微量の洗浄液を全て取り除くために遠心分離された。RNAは、常温でピロ炭酸ジエチル処理された水60μlを用いてこのカラムから溶出された。精製されたRNAは−70℃で保管、またはcDNAの合成に即時使用された。
【0105】
cDNA合成するため、ウイルス性RNAを67℃で7分間加熱し、任意のヘキサマーまたはPRRSV特定プライマーによって活性化(好ましい性質を引き出す処理)し、スーパースクリプトII RNase H逆転写酵素(RT)(Life Technologies、Inc.)を用いて逆転写した。40μlの反応混合物は、MgClが5 mM、1X標準バッファII(Perkin Elmer Corp.Wellesley、MA)、dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP各1mM、RNase抑制剤1ユニット/μl、RTが2ユニット、およびRNA1μlを含んでいた。反応混合物は、99℃で5分間、ならびに5℃で5分間培養させた。
【0106】
以下の配列を達成するため、得られたDNAフラグメントにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。:cDNA反応混合液の10μl部分を以下の試薬と組み合わせて、2mM MgCl、1X標準バッファII(Perkin Elmer)、各0.2mMのdATP、dCTP、dGTP、及びdTTP、0.3μMの−5’および−3’PRRSV特定プライマー、そして0.375ユニットのAmpliTaq Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)を含んだ25μlの反応生成物を得た。反応は、温度循環機の中で93℃で4分間加熱され、50〜59℃で30秒間、72℃で30〜60秒間、そして94℃で30秒間を35回繰り返された。各反応におけるプライマーのアニーリング温度と増幅物の予想される長さにより、所定時間や温度は異なった。最後の培養は72℃で10分間行われ、反応は4℃に置かれた。PCR生成物はMicrocon 100キット(Amicon、Bedford、MA)によって精製された。
【0107】
cDNA末端(ends)(RACE)の急速増幅(Rapid amplification)は、ゲノムのRNAの5′末端配列を得るために、Frohman,MA.,On Beyond Classic RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends),4PCR Methods and Applications S40−S58(1994)(この文献の教示は、引用することにより本明細書の一部をなす。)の方法に基づいて行われた。ウイルスのRNAは分離され、上述したように、ランダムヘキサマーをプライマーとしてcDNAに変換された。反応生成物は、Microcon 100カラム(Amicon)で精製された。poly(dA) tailは、cDNAの10μlをIXバッファ4(New England Biolabs,Beverly,MA)、2.5mMのCoCl2 、0.5mMのdATPおよび2ユニットのターミナルトランスフェラーゼ(New England Biolabs)を含有する20μlの反応系において、15分間37℃で培養することにより、3′末端に加えられた。反応は5分間65℃で加熱することにより停止され、その後、水で200μlに希釈された。
【0108】
PCRは、Expanda Long Template PCR System(Boehringer Mannheim,Mannheim,Germany)を用いて、poly(dA)−tailed cDNA、IXバッファー3、それぞれ0.35mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、0.625mMのMgCl、0.04μMのQtプライマー(Frohman,1994)、0.3μMのQ0プライマー(Frohman,1994)、0.3μMの5′−CGCCCTAATTGAATAGGTGAC−3′ならびに混合酵素の0.75μlを含有する50μlの反応系において、行われた。反応系は、93℃で2分間サーマルサイクラーの中で加熱され、93℃10秒間、63℃30秒間および68℃12分間からなる各サイクルを25回、繰り返された。25回のサイクルの後、反応系は、68℃で7分間培養され、4℃で維持された。分取された反応系の一部は100倍に希釈され、希釈物の5μlが、50μl中に、IXバッファ1、それぞれ0.35mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、0.3μMのプライマーQi(Frohman,1994)、0.3μMの5′−CCTTCGGCAGGCGGGGAGTAGTGTTTGAGGTGCTCAGC−3′ならびに混合酵素の0.75μlを含有する第二PCR反応系に加えられた。反応系は、93℃で2分間サーマルサイクラーの中で加熱され、93℃10秒間、63℃30秒間および68℃4分間からなる各サイクルを25回、繰り返された。25回のサイクルの後、反応系は、68℃で7分間培養され、4℃で維持された。反応生成物は1%のアガロースゲルの上で電気泳動され、約1500bpのバンドがQIAgen QXIIゲル精製キットを用いて精製された。溶出したDNAは、pGEM−Tベクター(Promega,Madison,WI)中に、定法を用いて、クローン化された。個々のクローンは分離され、QIAgenプラスミド分離キットを用いて、プラスミドDNAの分離のために成長させられた。
【0109】
PCR生成物およびプラスミドDNAは、Genbankにあり、または、公知の配列に由来する、関係するPRRSV配列に基づく適当なプライマに結合され、ミネソタ大学先進遺伝子分析センター(the University of Minnesota Advanced Genetic Analysis Center)にて、Taq DyeDeoxyターミネータサイクルシークエンシングキット(Applied Biosystems,Foster City,CA)およびPR2400Thermocycler(Perkin Elmer)による自動シークエンシング反応に供された。
【0110】
反応は、応用バイオシステム3700DNA配列上で(electrophesed)電気泳動される。呼び出し読み込まれる配列ベースは、主としてPhred Program(University of Washington Genome Center)で行われ、フラグメントアセンブリは、主としてPharp Program(University of Washington Genome Center)で行われた。配列を分析するのに、Lasergene Package(DNASTAR Inc.,Madison,WI)、Wisconsin Package version 9.1(Genetics Computer Group,Madison,WI)およびEuGene(Molecular Biology Information Resource,Houston,TX)を含む別のコンピュータソフトウェアが用いられた。最終的なウイルスの遺伝子配列は、約100のPCR反応と428のDNA配列反応により合成された。
【0111】
結果
実施例7の結果は、配列番号1および2として得られ、配列番号1はマスターシードウイルス、JA−142の201回継代したDNA配列を表し、配列番号2は組織から分離された毒性の強いウイルス、JA−142の3回継代後のDNA配列を表す。
【受託番号】
【0112】
ATCC VR−2638

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンリーディングフレーム5において、制限酵素Mlu I、Hinc IIおよびSac IIによる、それぞれ、1−4−2の制限酵素切断パターンを有するウイルス。
【請求項2】
オープンリーディングフレーム5において、Mlu Iにより切断されない、請求項1に記載のウイルス。
【請求項3】
請求項1に記載のウイルスを含有するワクチン。
【請求項4】
さらに、薬学的に許容しうる担体を含む、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
前記ワクチンが宿主動物で抗体応答を誘導することができる、請求項3または4に記載のワクチン。
【請求項6】
前記宿主動物がブタを含む、請求項5に記載のワクチン。
【請求項7】
前記抗体応答が豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス株に特異的である、請求項5または6に記載のワクチン。
【請求項8】
前記ウイルス株が非典型的豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス株を含む、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれかに記載のワクチンをブタに投与する工程を含む、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス株に対してブタを免疫する方法。
【請求項10】
配列番号2で表されるDNA配列と少なくとも65%の配列同一性を有する、分離されたDNA配列。
【請求項11】
配列番号2で表されるDNA配列と少なくとも75%の配列相同性を有する、分離されたDNA配列。

【公開番号】特開2010−239973(P2010−239973A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166476(P2010−166476)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【分割の表示】特願2000−614369(P2000−614369)の分割
【原出願日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【出願人】(501457154)
【出願人】(501458933)
【Fターム(参考)】