説明

分離漁獲用篭

【課題】漁獲用篭において、捕食者であるタコ類と、魚類、被捕食者である甲殻類とを、捕食行為がなされることなく、同一篭での分離捕獲を可能にする。
【解決手段】篭本体12と、篭本体12内の互いにに分離された第1分室13及び第2分室14[14A,14B]と、篭本体12の入口15から内部に向かって開口が狭くなるように設けられ、第1分室13に連通する漏斗状部16[16A,16B]と、漏斗状部16の内側面に、第2分室14に連通するように設けられたスリット部17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海中に配置して甲殻類、魚類、タコ類などを捕獲する分離漁獲用篭に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界中で広くしようされている漁獲用篭、例えば雑魚篭は、甲殻類、魚類、軟体類などを同一篭で同時に捕獲できるように構成されている。図15に、市販されている従来の雑魚篭の一例を示す。この雑魚篭1は、リング状(円形)の底部支持体2と、底部支持体2の中央に差し渡わたされた線状の中央支持体3と、両端が相対向する中央支持体3と底部支持体2との連結部7に連結して、左右対称に円弧を描くように設けられた半円支持体4、5とを有する。さらに、雑魚篭1の一部が開閉可能とするように、底部支持対2に近接するように両端が連結部7に連結した半円状の開閉用支持体8が形成される。半円支持体4,5及び開閉支持体8は連結部7において、回動自在に取り付けられる。そして、雑魚篭1は、これら各支持体2,3、4及び5を取り囲むように、網状体5を架張し、左右対称位置に雑魚を導くための漏斗状部6A、6Bを設けて構成される。漏斗状部6A、6Bは、入口から内部に向かって開口が狭くなるように形成される。雑魚篭1には、雑魚篭の設置、引き上げ時に用いるロープ7が取り付けられている。雑魚篭が閉じた状態では、開閉支持体8が底部支持体5に留め金10を介して係止されている。雑魚篭を開くときは、留め金10外し、開閉支持体8及び半円支持体4,5を、連結部7を中心に回動するようになされる。
【0003】
この雑魚篭1は、餌を入れた状態で海中に配置される。甲殻類、魚類、タコ類は、入口の漏斗状部6A、6Bから篭1内に侵入し、一旦侵入した後は出られず、捕獲される。
【0004】
特許文献1には、海中へ吊り下げ可能で魚類を捕獲できるようにした漁獲用海中網かご装置の例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−73637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の雑魚篭1では、甲殻類、魚類、軟体類などを同時に捕獲することが出来るが、反面、例えば先に入り篭した甲殻類(エビ、カニ類)が、後で入り篭した捕食者であるタコ類により捕食されることがしばしば起こる。これは、雑魚篭1の漁獲機構、特に、雑魚が侵入する入口の漏斗状部6A、6Bに選択性が乏しいことが原因している。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑み、捕食者であるタコ類と、魚類、被捕食者である甲殻類とを、捕食行為がなされることなく、同一篭での分離捕獲を可能にした分離漁獲用篭を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分離漁獲用篭は、篭本体と、篭本体内の互いにに分離された第1分室及び第2分室と、篭本体の入口から内部に向かって開口が狭くなるように設けられた、第1分室に連通する漏斗状部と、漏斗状部の内側面に、第2分室に連通するように設けられたスリット部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の分離漁獲用篭では、篭本体内が、第1分室と第2分室に分離されている。甲殻類、魚類などは、篭本体の入口から漏斗状部を通じて第1分室に侵入して捕獲される。タコ類は、篭本体の入口から漏斗状部に侵入した後、漏斗状部の出口に行く前に、漏斗状部の内側面に設けられたスリット部を通じて第2分室に侵入して捕獲される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る分離漁獲用篭によれば、第1分室と第2分室に分離されて、魚類、甲殻類が第1分室に捕獲され、タコ類が第2分室に捕獲されるので、甲殻類はタコ類に捕食されることがない。従って、捕食行為がなされることなく、同一篭で捕食者であるタコ類と、魚類、被捕食者である甲殻類とを分離して捕獲することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の係る分離漁獲用篭の第1実施の形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の垂直断面図である。
【図3】図1の水平断面図である。
【図4】図1の入口側から見た垂直断面図である。
【図5】第1実施の形態に係る分離漁獲用篭を開いた状態の概略斜視図である。
【図6】本発明の分襟獲用篭の使用方法の説明図である。
【図7】A,B イイダコの行動特性の検証に用いた網地スリット板の正面図、実験水槽の斜視図である。
【図8】イイダコのスリット部への接近・接触行動を示す行動説明図(その1)である。
【図9】イイダコのスリット部の探索行動を示す行動説明図(その2)である。
【図10】イイダコのスリット部の通過行動を示す行動説明図(その3)である。
【図11】本発明の係る分離漁獲用篭の第2実施の形態であって、その開状態を示す概略斜視図である。
【図12】本発明の係る分離漁獲用篭の第2実施の形態であって、その他部の開状態を示す要部の概略平面図である。
【図13】本発明の係る漁獲用篭の第3実施の形態を示す概略断面図である。
【図14】図13の入口から見た垂直断面図である。
【図15】従来の雑魚篭の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
[第1実施の形態]
図1〜図3に、本発明に係る分離漁獲用篭の第1実施の形態を示す。本実施の形態に係る分離漁獲用篭11は、篭本体12と、篭本体12の内部で互いに分離された第1分室13及び第2分室14と、篭本体12の入口15より内部に向かって開口が狭くなるように設けられ、第1分部に連通する漏斗状部16と、漏斗状部16の内側面に、第2分室14に連通するように設けられたスリット部17とを有して構成される。
【0014】
篭本体12は、リング状(円形)の底部支持体21と、底部支持体21の相対向する部位の連結部25[25A,25B]に両端がそれぞれ回動可能に連結されて左右対称に円弧を描くように設けられた半円支持体22[22A,22B,22C,22D]と有する。そして、篭本体12は、これら各支持体21、22を取り囲むように、網状体23を架張して形成される。底部支持体21は、線状体を円形に曲げて形成される。左右対称の半円支持体22[22A,22B,22C,22D]は、線状体を半円形に曲げて形成される。底部支持体21と半円支持体22との連結部25[25A,25B]は、リング状の底部支持体21とその中心を通る線との交わる部位に相当する。なお、図示しないが、連結部25A、25Bに両端が連結され、底部支持体21に差し渡るような線状支持体を設けることもできる。
【0015】
網状体23は、底部支持体21に架張した網状体23Aと、左右対称の半円支持体22[22A,22B,22C,22D]に架張した網状体23Bとを有する。後述するように、分離漁獲用篭11が閉じた状態では、両半円支持体22A及び22Dを底部支持体21に対して留め金26[26A,26B]を介して係止される(図1参照)。分離漁獲用篭11を開くときは、留め金26[26A,26B]を外して、左右の半円支持体22A及び22Dを回動させ、網状体23Bを折りたたむようにして中央に集めるようになされる(図5参照)。この場合、両半円支持体22Aと22Dが開閉支持体に相当する。
【0016】
底部支持体21及び半円支持体22を形成する線状体は、弾性を有する材料、あるいは変形し難い材料、例えば合成樹脂材、金属材などで形成することができる。網状体23は、両網状体23Aと23Bで囲まれた内部に捕獲用の空室が形成されるように、内部空間を形成して架張される。網状体23[23A,23B]は、糸または針金を編んで形成したもので形成することができる。例えば、網状体23としては、化学繊維糸を編んだ網、あるいは金網などを用いることができる。
【0017】
漏斗状部16は網状体で形成され、その入口15及び出口18にリング状の支持部19A、19Bが取り付けられる。篭本体12の入口15は複数設け、漏斗状部16も入口15の数に対応して複数設けることができる。本例では、左右対称位置に2つの入口15が設けられ、これらの入口15に連続して2つの漏斗状部16[16A,16B]が設けられる。
【0018】
第1分室13は、篭本体12の内部空間の少なくとも中央領域に形成される。すなわち、この第1分室13は、左右対称に設けられた漏斗状部16A、16Bの出口18に連通した中央領域を有して形成される。
【0019】
第2分室14は、漏斗状部16の数に対応して単数あるいは複数設けられる。換言すれば、複数の第2分室14を設けるときは、第2分室数と同じ複数の漏斗状部16が設けられる。本例では、2つの漏斗状部16A、16Bに対応して2つの第2分室14A、14Bが設けられる。2つの第2分室14A、14Bは、篭本体12の内部空間において、中央領域の第1分室13を挟んで左右の領域に形成される。第2分室14A、14Bと、第1分室13との間には、両者を分離するための網状体からなる仕切り部24が形成される。網状体の仕切り部24は、底部の網状体23Aに接するように形成されるも、底部の網状体23Aに固定されてない。
【0020】
各漏斗状部16A、16Bの各スリット部17は、対応する第2分室14A、14Bに連通しており、従って、仕切り部24により第1分室13とは分離され、第1分室13に連通していない。仕切り部24は、図4に示すように、漏斗状部16の出口縁に連続して、且つ篭本体12内部空間を漏斗状部16を境に上下2分割するように形成することができる。これによって、第1分室13は、内部空間の中央領域から漏斗状部16A、16Bを境に上半分の領域に延長した領域となる。
【0021】
一方、漏斗状部16[16A,16B]の内側面に形成されたスリット部17は、甲殻類、魚類などが通過不可能で、タコ類のみが通過可能な寸法形状に形成される。スリット部17は、漏斗状部16の内側面のうち、下側面に形成することができる。このスリット部17の寸法形状と、スリット部に対するタコ類の行動特性については、後述する。
【0022】
篭本体12には、分離漁獲用篭11の設置、引き上げ時に用いるロープ27が取り付けられている。
【0023】
次に、図1、図5及び図6を用いて、第1実施の形態に係る分離漁獲用篭11の使用方法を説明する。分離漁獲用篭11を内部に餌を入れた状態で海中に沈める。餌は、第1分室14A及び第2分室14Bのそれぞれに入れる。分離漁獲用篭11は、図1に示すように、留め金26A及び26Bを介して両半円支持体22A及び22Dを底部支持体21に係止することにより、閉状態になる。
【0024】
図6に示すように、えび、しゃこ、かに等の甲殻類37、魚類38は、入口15から漏斗状部16[16A,16B]を通り、第1分室13に侵入する。第1部分室13内に一旦侵入した後は出られず、甲殻類37、魚類38は第1分室13内に捕獲される。タコ類36は、入口15から漏斗状部16[16a,16B]に入る。漏斗状部16にスリット部17が形成されていることにより、タコ類36は、このスリット部17内に侵入し、第2分室14[14A,14B]内に落下して捕獲される。タコ類36は、一旦第2分室14[14A,14B]に侵入したならば、上方のスリット部17をすり抜けることができない。
【0025】
第1分室13と第2分室14[14A,14B]は、仕切り部24により分離されているので、第1分室13に捕獲された甲殻類37、魚類38と、第2分室14A,14Bに捕獲されたタコ類36とが混ざり合うことがない。甲殻類37は、タコ類36に捕食されることがない。
【0026】
甲殻類37、魚類38、タコ類36を捕獲したならば、分離漁獲用篭11を引き上げ、図5に示すように、篭本体12を開き、捕獲した甲殻類37、魚類38、タコ類36を取り出す。すなわち、留め金25A、25Bを外し、両半円支持体22A及び22Dを、連結部25A及び25Bを中心に両側から回動し、各半円支持体22A〜22Dを中央に集めることにより、網状態23Bが折りたたまれて、第1分室13及び第2分室14[14A,14B]が開放される。つまり、篭本体12が開き、捕獲したものを取り出すことができる。
【0027】
次に、スリット部17の寸法形状と、スリット部17に対するタコ類の行動特性について説明する。タコ類は、スリット部があると、このスリット部を自発的にすり抜ける行動特性がある。実験では、長崎県大村湾で捕獲したイイダコを使用した。図7Aに示すように、複数のスリット部17A、17B、17C及び17Dを形成した網地スリット板31を用意する。網地スリット板31の寸法は、縦20cm×横35cmである。スリット部17Aは縦80mm×横25mm、スリット部17Bは縦80mm×横30mmである。スリット部17Cは縦80mm×横35mm、スリット部17Dは縦80mm×横40mmである。
【0028】
水温14〜20℃、塩分3.3%、照度140ルックス(lx)の実験用の水槽(以下、実験水槽という)32(図7B参照)を用意する。実験水槽32内には、直径6cm×長さ10cmの塩化ビニル製パイプによる巣穴30が配置される。その前に網地スリット板31が配置される。タコは巣穴30に向かって移動する性質がある。飼育水槽内にイイダコ33を放ち、30時間以上、馴致する。飼育水槽で30時間以上馴致した比較的大きいイイダコを実験水槽32で2時間馴致した後、実験を開始する。
【0029】
図8に示すように、巣穴30及び網地スリット板31が実験水槽32内に配置されている。イイダコ33は、スリット部17[17A〜17B]へ近接・接触行動を起す。次に、図9に示すように、イイダコ33は、スリット部17[17A〜17B]の探索行動に出る。次に、図10に示すように、イイダコ33は、すり抜けられる例えばスリット部17Cを通過する。
【0030】
このように、タコ類は、条件に合ったスリット幅を有するスリット部17が存在すると、このスリット部17に侵入し通過するという、行動特性を有する。本実施の形態の分離漁獲用篭11は、このタコ類の行動特性を利用して、タコ類と、甲殻類、魚類を分離漁獲する。
【0031】
タコ類が通過するスリット部17においては、特に、スリット幅Wがタコ類の頭幅以上であればタコ類がスリット部17を通過する。スリット部17の長さLは制限がなく、タコ類が通過できる適当な長さがあれば良い。
【0032】
本実施の形態では、漏斗状部16A、16Bに設けるスリット部17として、スリット幅Wがタコ類が通過可能な寸法以上で甲殻類が通過できない寸法に設定される。より詳しくは、スリット幅Wは、タコ類の頭幅以上で、甲殻類の甲幅以下に設定される。
【0033】
例えば、大村湾でのイイダコ及びしゃこを捕獲する場合には、スリット部17のスリット幅Wを、30mm以上で、40mm以下に設定される(30mm≦W≦40mm)。好ましくは40mmに設定される。スリット幅Wが30mmより小さいと、大きなイイダコは通過することが出来ず、第1分室13へ侵入してしまう。スリト幅Wが40mmであると、大きなイイダコもリット部17を通過して第2分室14へ侵入し捕獲することができる。スリット幅Wが40mmを越えると、甲殻類のしゃこ、伊勢えび、かに等がスリット部17を通過してタコ類を捕獲する第2分室14へ侵入してしまう。
【0034】
上例のスリット幅Wの具体的な数値範囲は、大村湾に適したスリット部17のスリット幅である。その他の漁場でも捕獲すべきタコの種類、甲殻類の種類に応じてスリット部17の最適なスリット幅Wが設定される。例えば外洋域で真タコと伊勢えびを捕獲する場合には、真タコ及び伊勢えびの両捕獲に適したスリット幅が設定される。
【0035】
上述の第1実施の形態に係る分離漁獲用篭11によれば、同一篭で、捕食者であるタコ類36と、被捕食者である甲殻類(エビ、カニ、しゃこ類)37、魚類38とを、同時に、且つ捕食行動を起させることなく、捕獲することができる。
【0036】
[第2実施の形態]
図11及び図12に、本発明に係る分離漁獲用篭の第2実施の形態を示す。本実施の形態に係る分離漁獲用篭41は、特に分離漁獲用篭の開閉機構を第1実施の形態と異ならして構成される。すなわち、本実施の形態に係る分離漁獲用篭41は、半円支持体22Dを底部支持体21に固定し、半円支持体22Aのみを留め金26Aの着脱により、底部支持体21に対して開閉可能に配置される。一方、第2分室14B側の底部の網状体23Aの一部に、ファスナー構造、あるいは平素は弾性力で閉じていて、手などによる外力を加えたときに弾性力に抗して開くような構造、等の開閉機構42が設けられる。その他の構成は、第1実施の形態で説明したと同様であるので、重複説明を省略する。
【0037】
第2実施の形態に係る分離漁獲用篭41は、半円支持体22Aを留め金26Aを介して底部支持体21に係止して閉状態にする。そして、第1実施の形態で説明したと同様にして、タコ類と、甲殻類及び魚類を分離して同一篭内に捕獲する。次に、篭41を開くときは、留め金26Aを外して、半円支持体22Aを他の半円支持体22B、22Cと共に、反対側の半円支持体22Dに重なるように回動して網状体23Bを開く、これにより第1分室13内の甲殻類及び魚類が取り出され、第2分室14A内のタコ類を取り出すことができる。一方、第2分室14Bの底部の開閉機構42を、図12の鎖線で示すように、開き、これより第2分室14Bに捕獲されたタコ類を取り出すことができる。
【0038】
第2実施の形態に係る分離漁獲用篭41によれば、第1実施の形態と同様に、同一篭で、捕食者であるタコ類と、被捕食者である甲殻類(エビ、カニ、しゃこ類)、魚類とを、同時に、且つ捕食行動を起させることなく、捕獲することができる。
【0039】
分離漁獲用篭の開閉機構については、第1、第2実施の形態で説明した構造以外にも、種々の構造を採ることができる。第1分室及び第2分室を個別に開かせる構造、あるいは第1分室及び第2分室を一括して開かせる構造など、種々構成成することができる。
【0040】
[第3実施の形態]
図13及び図14に、本発明に係る分離漁獲用篭の第3実施の形態を示す。本実施の形態に係る分離漁獲用篭44は、第1分室13と第2分室14[14A,14B]を分離する仕切り部24の構成を第1実施の形態と異ならして構成される。すなわち、本実施の形態においては、仕切り部24が漏斗状部16A、16Bの出口周縁に連続して、且つ篭本体12の内部空間の底面及び上面にわたって形成して構成される。従って、第1分室13は、内部空間の中央領域で形成され、第2分室141A,14B]は、内部空間の中央領域を挟んで左右の領域に形成されることになる。なお、スリット部17は、漏斗状部16内の下面に形成するのが好ましいが、図14の鎖線で示すように、両側面にスリット部17を設けることも可能である。計3つのスリット部17を設けてもよい。
その他の構成は、第1実施の形態で説明したと同様であるので、重複説明を省略する。
【0041】
第3実施の形態に係る分離漁獲用篭44においても、第1実施の形態で説明したと同様に、同一篭で、捕食者であるタコ類と、被捕食者である甲殻類、魚類とを、同時に、且つ捕食行動を起させることなく、捕獲することができる。
【0042】
上例では、分離漁獲用篭の全体を網あるいは金網などの網状体で形成したが、少なくとも外側の一部あるいは全部を堅牢体で構成することも可能である。例えば、外側を木箱あるいは木枠で覆うようにすることも可能である。木箱とした場合にも、木箱に海水が通り抜ける多数の貫通孔を設けることが好ましい。このように、外側を堅牢体で構成するときは、例えば岩場などが多い海中に分離漁獲用篭を設置した場合にも、破損することがなく、長期使用に耐えることができる。
【0043】
上例では底部支持体21を円形に固定した構成としたが、その他、円形の底部支持体21を連結部25A、25Bから2つ折り可能な構成とすることも可能である。底部支持体21を広げた状態では円形に固定できるようにし、折り畳んだときには、篭全体がコンパクトに折り畳まれ、持ち運びに便利となる。
【0044】
本発明に係る分離漁獲用篭は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、変形、変更した構成をも含むものである。
【符号の説明】
【0045】
11、41、44・・分離漁獲用篭、12・・篭本体、13・・第1分室、14[14A,14B]・・第2分室、15・・入口、16[16A,16B]・・漏斗状部、17・・スリット部、18・・出口、23・・仕切り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
篭本体と、
前記篭本体内の互いに分離された第1分室及び第2分室と、
前記篭本体の入口から内部に向かって開口が狭くなるように設けられ、前記第1分室に連通する漏斗状部と、
前記漏斗状部の内側面に、前記第2分室に連通するように設けられたスリット部とを有する
ことを特徴とする分離漁獲用篭。
【請求項2】
前記篭本体の全体が網状体で形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の分離漁獲用篭。
【請求項3】
前記第1分室が甲殻類、魚類の捕獲室であり、
前記第2分室がタコ類の漁獲室である
ことを特徴とする請求項2記載の分離漁獲用篭。
【請求項4】
複数の前記第2分室と、該第2分室数と同じ複数の前記漏斗状部とを有する
ことを特徴とする請求項3記載の分離漁獲用篭。
【請求項5】
前記スリット部の幅が甲殻類の甲幅以下で、タコ類の頭幅以上に設定された
ことを特徴とする請求項4記載の分離漁獲用篭。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−268752(P2010−268752A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124523(P2009−124523)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】