分離膜エレメント選定装置、分離膜エレメント選定方法
【課題】水処理装置において再使用される複数の分離膜エレメントを、一定以上の性能を保った状態で保管することを支援する。
【解決手段】分離膜エレメント選定装置が、複数の水処理装置において再使用される分離膜を識別する分離膜識別情報と、分離膜が使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部に記憶されている検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超える分離膜エレメントを選定して警告を出力する。
【解決手段】分離膜エレメント選定装置が、複数の水処理装置において再使用される分離膜を識別する分離膜識別情報と、分離膜が使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部に記憶されている検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超える分離膜エレメントを選定して警告を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置において再使用される分離膜エレメントを選定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水を扱う工場などにおいて、水をろ過する分離膜を用いた水処理装置が利用されている。図9は、このような分離膜であるスパイラル型のRO膜(逆浸透膜:Reverse Osmosis Membrane)を有する分離膜エレメント1の例を示す図である。分離膜エレメント1は、透過水集水用のセンターパイプ5に分離膜2をスパイラル状に捲装した構造となっており、分離膜はこのような単位で扱われる。分離膜エレメント1に対して符号aに示す箇所から水が供給されると、分離膜2を透過した透過水は、センターパイプ5に集水され取り出される。分離膜2を透過しなかった濃縮水は、スパイラル状の分離膜2の膜間を通過し、符号bに示す箇所から排出される。
図10は、このような分離膜エレメント1を用いたろ過装置を示す図である。ここでは、ベッセル(圧力容器)7に、4本の分離膜エレメント1が直列に充填されている。各分離膜エレメント1は、ブラインシール3によってベッセル7内に区画され、コネクタ4によって直列に接続される。ベッセル7に供給水が供給されると、複数のRO膜2を順次透過した透過水が、センターパイプ5から取り出される。最後段の分離膜エレメント1を透過しなかった濃縮水は、濃縮水出口6から排水される。特許文献1には、このようなろ過装置において使用される分離膜エレメントを洗浄して再使用する際に、分離膜の運転時間、洗浄履歴、性能データ等を記憶させたRFID(Radio Frequency IDentification)を分離膜エレメントに装着させて管理する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ひとつの工場の水処理装置における分離膜エレメント1の再使用を管理するものであり、用途の異なる複数の水処理装置、工場において分離膜エレメント1が再使用されることを想定したものではない。ここで、分離膜エレメント1の資源をより有効に、効率的に使用するためには、用途の異なる複数の水処理装置、工場において使用される分離膜エレメント1を互いに融通し合うことが望ましい。例えば、図11は、異なる用途で用いられる複数の水処理用のRO(Reverse Osmosis)装置を有する工場の例を示す図である。符号a〜fに示すように、RO装置は、冷却塔用、純水用(純水製造用)、排水回収用、廃液濃縮用など、様々な用途で用いられている。このような複数の水処理装置において使用された複数の分離膜エレメント1を洗浄して保管する場合には、再使用される大量の分離膜エレメント1が分離膜再生工場に保管され発注内容に応じて適した分離膜エレメントが選定されることになると考えられる。ここで、分離膜エレメント1は、洗浄により性能を回復させて保存液で内部を満たして適切に保管するとしても、保管状態が一定期間を超えるような場合には、性能が劣化すると考えられる。そこで、このように洗浄後の保管期間が一定期間を超えるような場合には、分離膜エレメント1を再洗浄して一定以上の性能に回復させて改めて保管するようにすることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、水処理装置において再使用される複数の分離膜エレメントを、一定以上の性能を保った状態で保管することを支援する分離膜エレメント選定装置、分離膜エレメント選定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを識別する分離膜識別情報と、分離膜エレメントが使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部と、検査日記憶部に記憶されている検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超える分離膜エレメントを選定して警告を出力する警告部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、警告部が警告を出力した後、経過期間が限度期間を超えると判定された分離膜エレメントが再検査されたことを示す再検査結果の入力を受付ける入力部と、入力部に入力される再検査結果に応じて、検査日記憶部に記憶されている検査日を更新する検査結果更新部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを識別する分離膜識別情報と、分離膜エレメントが使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部を備える分離膜選定装置の分離膜選定方法であって、検査日記憶部に記憶されている検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超える分離膜エレメントを選定して警告を出力するステップを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを、一定以上の性能を保った状態で保管する分離膜選定方法であって、分離膜エレメントが使用された後に洗浄され検査された検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超える場合に、分離膜エレメントの再洗浄と再検査を行ない、再度保管するステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、分離膜エレメント選定装置が、複数の水処理装置において再使用される分離膜を識別する分離膜識別情報と、分離膜が使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部に記憶されている検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超える分離膜エレメントを選定して警告を出力するようにしたので、水処理装置において再使用される複数の分離膜エレメントを、一定以上の性能を保った状態で保管することを支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による分離膜エレメント選定装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による水処理装置情報記憶部に記憶される水処理装置情報のデータ例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による分離膜情報記憶部に記憶される分離膜情報のデータ例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による分離膜エレメント選定処理の動作例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による分離膜エレメント選定処理の動作例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態による分離膜エレメント選定処理の動作例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による警告処理の動作例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による水処理装置が有する複数の分離膜エレメントを示す図である。
【図9】分離膜エレメントの例を示す図である。
【図10】分離膜エレメントを用いたろ過装置の例を示す図である。
【図11】工場が有する複数の水処理装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による分離膜エレメント選定装置10の構成を示すブロック図である。ここでは、異なる用途の水処理装置(水処理装置21−1、水処理装置21−2、・・・)を備える複数の分離膜使用工場20(分離膜使用工場20−1、分離膜使用工場20−2、・・・)において使用された分離膜エレメント1が、分離膜再生工場30において洗浄され、性能が検査されて保管されているものとする。分離膜再生工場30における再検査結果は、分離膜エレメント選定装置10の入力部11に入力される。ここで、図1において一点鎖線によって示される情報の経路は、接続されたネットワークを介して情報が通信されるようにしても良いし、ユーザ等によって伝達され入力されるようにしても良い。
分離膜エレメント選定装置10は、分離膜再生工場30に保管されている分離膜エレメント1の情報を管理するコンピュータ装置であり、入力部11と、表示部12と、水処理装置情報記憶部13と、分離膜情報記憶部14と、警告部15と、分離膜エレメント選定部16と、検査結果更新部17とを備えている。
【0013】
入力部11は、キーボードやマウスなどの入力デバイスであり、ユーザからのデータ入力を受付ける。
表示部12は、情報を表示するディスプレイである。
水処理装置情報記憶部13には、再使用される分離膜エレメント1の提供対象である水処理装置毎に、その水処理装置の属性を示す水処理装置情報が記憶される。
図2は、水処理装置情報記憶部13に記憶される水処理装置情報のデータ例を示す図である。水処理装置情報には、顧客名と、原水種と、原水含有成分と、忌避成分と、脱塩率レベルと、フラックスレベルと、回収率レベルとの情報が含まれる。ここでは、簡単のため、ひとつの顧客(工場)に対してひとつの水処理装置が設置されているとして顧客単位で水処理装置情報が記憶される例を説明するが、ひとつの顧客の複数の水処理装置毎に水処理装置情報が対応付けられて記憶されるようにしても良い。
【0014】
水処理装置情報に含まれる顧客名は、分離膜エレメント1の提供対象である顧客を識別する水処理装置識別情報である。原水種は、対応する顧客の水処理装置において処理される原水の種別を示す。例えば、原水種としては、「排水回収」、「純水」、「工水」、「上水」、「井水」、・・・などの種別が考えられる。原水含有成分は、対応する水処理装置の原水が含有する成分を示す。例えば、原水含有成分としては、「Ag」、「Ca」、「Na」、「TOC」、「Fe」、・・・などの成分が考えられる。忌避成分は、対応する水処理装置において忌避される成分である。すなわち、忌避成分が含まれる原水において使用された分離膜エレメントは、対応する水処理装置において再使用しないように選定される。例えば、忌避成分としては、「Ag」、「As」、「Hg」、「Pb」などが適用できる。
【0015】
水処理装置情報に含まれる脱塩率レベル(L1)、フラックスレベル(L2)、回収率レベル(L3)は、対応する顧客の水処理装置において要求される分離膜エレメント1の要求性能を示す。脱塩率は、分離膜エレメント1の塩類(イオン成分)の除去率であり、脱塩性能を示す。フラックスは、分離膜エレメント1の透過性能(透過流束)を示す。回収率は、分離膜エレメント1への供給水量に対する透過水量の割合を示す。ここでは、それぞれのレベルをA〜Dに分類しており、レベルAはより性能が高いことを示し、レベルDはより性能が低いことを示す。
【0016】
例えば、脱塩率レベルは、「L1A≧97%>L1B≧95%>L1C≧92%>L1D」のように定義される。すなわち、「L1A」は、脱塩率が97%以上であることを示す。「L1B」は、97%未満、95%以上であることを示す。「L1C」は、95%未満、92%以上であることを示す。「L1D」は、92%未満であることを指す。
フラックスレベルは、「L2A≧1.2>L2B≧1.0>L2C≧0.8>L2D」のように定義される。すなわち、「L2A」は、フラックスが1.2m3/(m2・日)以上であることを示す。「L2B」は、1.2m3/(m2・日)未満、1.0m3/(m2・日)以上であることを示す。「L2C」は、1.0m3/(m2・日)未満、0.8m3/(m2・日)以上であることを示す。「L2D」は、0.8m3/(m2・日)未満であることを指す。ここでは、フラックスを、単位膜面積当たり1日にろ過できる水量によって示す。
回収率レベルは、「L3A≧70%>L3B≧60%>L3C≧50%>L3D」のように定義される。すなわち、「L3A」は、脱塩率が70%以上であることを示す。「L3B」は、70%未満、60%以上であることを示す。「L3C」は、60%未満、50%以上であることを示す。「L3D」は、50%未満であることを指す。
【0017】
図1に戻り、分離膜情報記憶部14には、水処理装置において再使用される分離膜エレメント毎に、分離膜エレメントの属性を示す情報が対応付けられた分離膜情報が記憶される。図3は、分離膜情報のデータ例を示す図である。分離膜情報には、膜IDと、顧客名履歴(履歴1と、履歴2と、履歴3、・・・履歴n)と、脱塩率レベルと、フラックスレベルと、回収率レベルと、予約コードと、検査日と、予約先と、納期との情報が含まれる。
【0018】
分離膜情報に含まれる膜IDは、水処理装置において再使用される分離膜エレメント1を識別する分離膜識別情報である。膜IDは、対応する分離膜エレメント1に対して、刻印、シール、バーコード、二次元コード、RFIDなどに書き込まれて装着される。顧客名履歴(履歴1、履歴2、履歴3、・・・履歴n)としては、対応する分離膜エレメント1が使用された水処理装置を有する顧客の顧客名が記憶される。ここには、対応する分離膜エレメント1が複数回に亘り水処理装置において使用されていれば、使用される毎に履歴が記憶される。脱塩率レベル、フラックスレベル、回収率レベルは、水処理装置情報に含まれる同名の情報に対応し、使用済みの分離膜エレメント1が再生洗浄された後の性能の検査結果であり、対応する分離膜エレメントの性能の程度を示す。予約コードは、分離膜再生工場30に保管された分離膜エレメント1が、水処理装置において利用されることが予約されていることを示す識別情報である。
【0019】
分離膜情報に含まれる検査日は、分離膜エレメント1が検査された日を示す。予約先は、対応する分離膜エレメント1の再使用を予約した顧客名を示す。納期は、対応する分離膜エレメント1を、予約した顧客に納品する期日を示す。ここで、分離膜エレメント1が要求される場合に、要求される用途、性能に応じた分離膜エレメント1が分離膜情報記憶部14に記憶されていない場合には、新規に未使用の分離膜エレメント1を適用することになる。このような場合、新規の分離膜エレメント1を予約することを示す情報が、分離膜情報記憶部14に記憶される。例えば、この図では、膜IDが「new」の行は、このような新規の分離膜エレメント1が予約されていることを示す。
【0020】
図1に戻り、警告部15は、分離膜情報記憶部14に記憶されている検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超えると判定すると警告を出力する。限度期間は、洗浄後の分離膜エレメント1の性能が劣化する期間に応じて予め定められて警告部15の記憶領域に記憶されており、例えば2年である。ここで、警告部15は、例えば一日一回定められた時間などに、定期的に警告処理を行う。警告部15は、計時機能を備えており、定められた時間になると、計時機能により現在日時を示す情報を読み出し、検査日から現在日時までの経過期間を算出する。また、警告部15は、自身の記憶領域に経過期間の限度期間が予め記憶されており、算出した経過期間と、予め定められた限度期間とを比較する。警告部15は、算出した経過期間が、予め定められた限度期間よりも小さいと判断すれば、警告を出力しない。一方、算出した経過期間が、予め定められた限度期間よりも大きいと判断すれば、警告を出力する。
【0021】
ここで、警告部15が出力する警告は、例えば、予め定められた管理者の宛先に、定められた文面の電子メールを送信するようにしても良いし、分離膜エレメント選定装置10にユーザがログインしたときに分離膜エレメント選定装置10の表示部12に定められた文面を表示させるようにしても良い。警告の文面には、経過期間が限度期間を経過した分離膜エレメントの分離膜識別情報や、分離膜再生工場30において保管されている位置などの情報が記載されるようにしても良い。これにより、例えば、分離膜エレメント1の管理者などに、分離膜エレメント1が、性能が劣化するほどの長期間に亘り保管されていることを知らせることができ、複数の分離膜エレメント1の在庫期間ができるだけ均等になるように管理することが可能となる。
【0022】
分離膜エレメント選定部16は、水処理装置情報記憶部13に記憶されている水処理装置情報と、入力部11に入力される情報とに対応する分離膜情報を、分離膜情報記憶部14に記憶されている分離膜情報から選定し、表示部12に表示させる。ここで、分離膜エレメント選定部16は、再使用する分離膜エレメントの提供対象である水処理装置を識別する水処理装置識別情報に応じて定められた水処理装置識別情報に対応付けられて分離膜情報記憶部14に記憶された分離膜識別情報を、選定対象の分離膜識別情報として読み出す。例えば、分離膜エレメント選定部16は、分離膜エレメントを再使用する水処理装置に対応する顧客名に対応付けられて水処理装置情報記憶部13に記憶されている忌避成分と、分離膜情報記憶部14に記憶される原水含有成分とを比較して、忌避成分が原水含有成分に含まれない分離膜識別情報を選定対象として読み出す。
【0023】
検査結果更新部17は、警告部15が警告を出力した後、入力部11に、経過期間が限度期間を超えると判定された分離膜エレメントが再検査されたことを示す再検査結果が入力されると、入力された再検査結果に応じて、分離膜情報記憶部14に記憶されている検査日等の検査結果を更新する。例えば、検査結果更新部17は、入力部11に、再検査された分離膜エレメント1の膜IDと、その検査結果である脱塩率、フラックスレベル、回収率レベル、検査日などとが入力されると、対応する膜IDの分離膜情報を更新する。
【0024】
次に、図面を参照して、本実施形態の分離膜エレメント選定装置10の動作例を説明する。図4〜図6は、本実施形態の分離膜エレメント選定装置10による分離膜エレメント選定処理の動作例を示すフローチャートである。
まず、図4において、分離膜エレメント選定装置10の入力部11が、ユーザから入力される顧客名と、必要本数と、希望納期との情報を受付ける(ステップS1)。顧客名は、再生工場に保管された分離膜エレメント1の提供を希望する顧客を示す情報である。必要本数は、提供を希望する分離膜エレメント1の数である。希望納期は、顧客が希望する分離膜エレメント1の納期である。ここでは、顧客名として「E薬品」が、必要本数として「2」が、希望納期として「10/05/10」(yy/mm/dd形式)が入力されたとして、以下、説明する。
【0025】
分離膜エレメント選定部16は、分離膜情報記憶部14から、予約先が未登録である分離膜情報を選定候補の分離膜情報として読み出す(ステップS2)。ここでは、膜ID「0002」と、膜ID「0009」の分離膜情報には予約先が登録されているため、膜ID「0001」、「0003」〜「0008」の7件の分離膜情報を選定候補として読み出す。また、分離膜エレメント選定部16は、ステップS1において入力された顧客名に対応する水処理装置情報を、水処理装置情報記憶部13から読み出す(ステップS3)。ここでは、「E薬品」に対応する水処理装置情報を読み出す。
【0026】
そして、分離膜エレメント選定部16は、読み出した水処理装置情報に、忌避成分が対応付けられているか否かを判定する(ステップS4)。忌避成分が対応付けられていないと判定すれば(ステップS4:なし)、ステップS7に進む。一方、忌避成分が対応付けられていると判定すれば(ステップS4:あり)、分離膜エレメント選定部16は、水処理装置情報記憶部13から、原水含有成分に忌避成分を含む忌避対象の水処理装置情報を読み出す(ステップS5)。ここでは、水処理装置情報における「E薬品」は、「TOC」と「As」との忌避成分が対応付けられている。そこで、分離膜エレメント選定部16は、原水含有成分に「TOC」を含む顧客名「C製鉄」と、原水含有成分に「As」を含む顧客名「G化学」とを読み出す。
【0027】
分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報(膜ID「0001」、「0003」〜「0008」)から、顧客名履歴に忌避対象の顧客名(「C製鉄」、「G化学」)を含まない分離膜情報を、選定候補として抽出する(ステップS6)。ここでは、膜ID「0001」の分離膜情報の顧客名履歴には「C製鉄」が含まれており、膜ID「0006」、「0007」の分離膜情報の顧客名履歴には「G化学」が含まれているので、これらを除外し、膜ID「0003」〜「0005」、「0008」の4件の分離膜情報を選定候補として読み出す。
【0028】
分離膜エレメント選定部16は、ステップS1において入力された必要本数と、選定候補の分離膜情報の数とを比較し、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在するか否かを判定する(ステップS7)。分離膜エレメント選定部16が、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在しないと判定すると(ステップS7:なし)、図6のステップS23に進む。分離膜エレメント選定部16は、必要本数と、選定候補の分離膜情報の数との差分を、分離膜エレメント1の不足本数として、表示部12に表示させる(ステップS23)。分離膜エレメント選定部16は、分離膜エレメント1の不足本数に対応する新膜予約レコードを、分離膜情報記憶部14に記憶させる(ステップS24)。
【0029】
図4に戻り、分離膜エレメント選定部16が、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在すると判定すると(ステップS7:あり)、「E薬品」の水処理装置情報から脱塩率レベルを取得する(ステップS8)。ここでは、必要本数は「2」であり、選定候補の分離膜情報の数は4件であるから、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在すると判定し、「E薬品」に対応する脱塩率レベルである「L1B」を読み出す。そして、分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報から、脱塩率レベルが一致する分離膜情報を、選定候補として抽出する(ステップS9)。ここでは、選定候補の4件の分離膜情報(膜ID「0003」〜「0005」、「0008」)のうち、脱塩率レベル「L1B」に一致する膜ID「0004」の分離膜情報を、選定候補として抽出する。
【0030】
分離膜エレメント選定部16は、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在するか否かを判定する(ステップS10)。ここで、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在しないと判定すると(ステップS10:なし)、上位の脱塩率レベルが存在するか否かを判定する(ステップS11)。ここで、分離膜エレメント選定部16が、上位の脱塩率レベルが存在しないと判定すれば(ステップS11:なし)、ステップS23に進む。上位の脱塩率レベルが存在すると判定すれば(ステップS11:あり)、分離膜エレメント選定部16は、1段階上の脱塩率レベルに一致する分離膜情報を読み出し、選定候補の分離膜情報に加える(ステップS12)。ここでは、ステップS10において、選定候補の分離膜情報は1件(膜ID「0004」)のみであり、必要本数「2」に満たないので、ステップS12に進み、上位の脱塩率レベル「L1A」に対応する膜ID「0008」の分離膜情報を、選定候補に加える。これにより、選定候補の分離膜情報の数は2件(膜ID「0004」、「0008」)となり、必要本数「2」を満たす。
【0031】
ステップS10において、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在すると判定すると(ステップS10:あり)、図5に進み、分離膜エレメント選定部16は、「E薬品」の水処理装置情報に対応するフラックスレベルを取得する(ステップS13)。ここでは、「E薬品」に対応するフラックスレベルである「L2C」を読み出す。そして、分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報から、フラックスレベルが一致する分離膜情報を、選定候補として抽出する(ステップS14)。ここでは、選定候補の2件の分離膜情報(膜ID「0004」、「0008」)のうち、いずれもがフラックスレベル「L2C」に一致し、いずれもの分離膜情報を、選定候補とする。
【0032】
分離膜エレメント選定部16は、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在するか否かを判定する(ステップS15)。ここで、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在しないと判定すると(ステップS15:なし)、上位のフラックスレベルが存在するか否かを判定する(ステップS16)。ここで、分離膜エレメント選定部16が、上位のフラックスレベルが存在しないと判定すれば(ステップS16:なし)、ステップS23に進む。上位のフラックスレベルが存在すると判定すれば(ステップS16:あり)、分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報に、1段階上のフラックスレベルに一致する分離膜情報を加える(ステップS17)。ステップS15において、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在すると判定すると(ステップS15:あり)、分離膜エレメント選定部16は、「E薬品」の水処理装置情報から、回収率レベルを取得する(ステップS18)。ここでは、ステップS15において、選定候補の分離膜情報は2件(膜ID「0004」、「0008」)であり、必要本数「2」を満たすので、ステップS18に進む。
【0033】
ここでは、「E薬品」に対応する回収率レベルである「L3C」を読み出す。そして、分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報から、回収率レベルが一致する分離膜情報を、選定候補として抽出する(ステップS19)。ここでは、選定候補の2件の分離膜情報(膜ID「0004」、「0008」)のうち、いずれもが回収率レベル「L3C」に一致し、いずれもの分離膜情報を、選定候補とする。
【0034】
分離膜エレメント選定部16は、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在するか否かを判定する(ステップS20)。ここで、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在しないと判定すると(ステップS20:なし)、上位の回収率レベルが存在するか否かを判定する(ステップS21)。ここで、分離膜エレメント選定部16が、上位の回収率レベルが存在しないと判定すれば(ステップS21:なし)、ステップS23に進む。上位の回収率レベルが存在すると判定すれば(ステップS21:あり)、分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報に、1段階上の回収率レベルに一致する分離膜情報を加える(ステップS22)。
【0035】
ステップS20において、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在すると判定すると(ステップS20:あり)、図6に進み、選定候補の分離膜情報から、検査日が古い順に必要本数の分離膜情報を選定する(ステップS25)。ここでは、ステップS22において、選定候補の分離膜情報は2件(膜ID「0004」、「0008」)であり、必要本数「2」を満たすので、ステップS25に進む。選定候補の2件の分離膜情報(膜ID「0004」、「0008」)は、検査日が同一であり、いずれもの分離膜情報を、同様に選定する。そして、分離膜エレメント選定部16は、選定した2件の分離膜情報に、新規の予約コード、顧客名、希望納期を登録し、分離膜情報記憶部14に記憶させる(ステップS26)。ここでは、例えば、新規の予約コードとして「1001−04」と「1001−05」とを、予約先として「E薬品」を、納期として「10/05/10」を記憶させる。
【0036】
図7は、本実施形態の分離膜エレメント選定装置10による警告処理の例を示すフローチャートである。
警告部15は、定められた時間になると、分離膜情報記憶部14に記憶されている分離膜情報を読み出す(ステップS30)。警告部15は、読み出した分離膜情報に含まれる検査日から現在日時までの経過期間を算出し(ステップS31)、経過期間が、予め定められた限度期間を超えるか否かを判定する(ステップS32)。ここで、警告部18が、経過期間が予め定められた限度期間を超えると判定すると(ステップS32:YES)、警告を出力する(ステップS33)。経過期間が予め定められた限度期間を超えないと判定すると(ステップS32:NO)、警告を出力せず、処理を終了する。
【0037】
なお、本実施形態では、スパイラル型のRO膜を例として説明したが、同様の他の分離膜についても、本実施形態と同様の構成により再使用を管理するようにしても良い。
また、本実施形態では、水処理装置毎に分離膜情報を管理するようにしたが、同一の水処理装置内における複数の分離膜エレメント1を、設置された位置に応じて管理するようにしても良い。例えば、図8に示されるように、直列に接続された複数の分離膜エレメント1を、供給水側から透過水側にA−1、A−2、・・・のように設置位置の識別情報を付与し、設置位置の識別情報毎に洗浄、検査結果などの管理を行うようにしても良い。
また、本実施形態では、分離膜情報記憶部14に顧客名履歴を記憶しているが、使用された現場の原水含有成分を蓄積した原水含有成分履歴を記憶して、水処理装置情報記憶部13の忌避成分と関連付けて忌避対象の原水含有性分履歴を含まない分離膜情報を選定候補として抽出するようにしても良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、異なる用途の複数の水処理装置に提供する分離膜エレメントを、効率的かつ安全に再使用することが可能となる。
【0038】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより分離膜エレメントの選定を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0039】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
10 分離膜エレメント選定装置
11 入力部
12 表示部
13 水処理装置情報記憶部
14 分離膜情報記憶部
15 警告部
16 分離膜エレメント選定部
17 検査結果更新部
20 分離膜使用工場
21 水処理装置
30 分離膜再生工場
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置において再使用される分離膜エレメントを選定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水を扱う工場などにおいて、水をろ過する分離膜を用いた水処理装置が利用されている。図9は、このような分離膜であるスパイラル型のRO膜(逆浸透膜:Reverse Osmosis Membrane)を有する分離膜エレメント1の例を示す図である。分離膜エレメント1は、透過水集水用のセンターパイプ5に分離膜2をスパイラル状に捲装した構造となっており、分離膜はこのような単位で扱われる。分離膜エレメント1に対して符号aに示す箇所から水が供給されると、分離膜2を透過した透過水は、センターパイプ5に集水され取り出される。分離膜2を透過しなかった濃縮水は、スパイラル状の分離膜2の膜間を通過し、符号bに示す箇所から排出される。
図10は、このような分離膜エレメント1を用いたろ過装置を示す図である。ここでは、ベッセル(圧力容器)7に、4本の分離膜エレメント1が直列に充填されている。各分離膜エレメント1は、ブラインシール3によってベッセル7内に区画され、コネクタ4によって直列に接続される。ベッセル7に供給水が供給されると、複数のRO膜2を順次透過した透過水が、センターパイプ5から取り出される。最後段の分離膜エレメント1を透過しなかった濃縮水は、濃縮水出口6から排水される。特許文献1には、このようなろ過装置において使用される分離膜エレメントを洗浄して再使用する際に、分離膜の運転時間、洗浄履歴、性能データ等を記憶させたRFID(Radio Frequency IDentification)を分離膜エレメントに装着させて管理する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ひとつの工場の水処理装置における分離膜エレメント1の再使用を管理するものであり、用途の異なる複数の水処理装置、工場において分離膜エレメント1が再使用されることを想定したものではない。ここで、分離膜エレメント1の資源をより有効に、効率的に使用するためには、用途の異なる複数の水処理装置、工場において使用される分離膜エレメント1を互いに融通し合うことが望ましい。例えば、図11は、異なる用途で用いられる複数の水処理用のRO(Reverse Osmosis)装置を有する工場の例を示す図である。符号a〜fに示すように、RO装置は、冷却塔用、純水用(純水製造用)、排水回収用、廃液濃縮用など、様々な用途で用いられている。このような複数の水処理装置において使用された複数の分離膜エレメント1を洗浄して保管する場合には、再使用される大量の分離膜エレメント1が分離膜再生工場に保管され発注内容に応じて適した分離膜エレメントが選定されることになると考えられる。ここで、分離膜エレメント1は、洗浄により性能を回復させて保存液で内部を満たして適切に保管するとしても、保管状態が一定期間を超えるような場合には、性能が劣化すると考えられる。そこで、このように洗浄後の保管期間が一定期間を超えるような場合には、分離膜エレメント1を再洗浄して一定以上の性能に回復させて改めて保管するようにすることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、水処理装置において再使用される複数の分離膜エレメントを、一定以上の性能を保った状態で保管することを支援する分離膜エレメント選定装置、分離膜エレメント選定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを識別する分離膜識別情報と、分離膜エレメントが使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部と、検査日記憶部に記憶されている検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超える分離膜エレメントを選定して警告を出力する警告部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、警告部が警告を出力した後、経過期間が限度期間を超えると判定された分離膜エレメントが再検査されたことを示す再検査結果の入力を受付ける入力部と、入力部に入力される再検査結果に応じて、検査日記憶部に記憶されている検査日を更新する検査結果更新部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを識別する分離膜識別情報と、分離膜エレメントが使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部を備える分離膜選定装置の分離膜選定方法であって、検査日記憶部に記憶されている検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超える分離膜エレメントを選定して警告を出力するステップを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを、一定以上の性能を保った状態で保管する分離膜選定方法であって、分離膜エレメントが使用された後に洗浄され検査された検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超える場合に、分離膜エレメントの再洗浄と再検査を行ない、再度保管するステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、分離膜エレメント選定装置が、複数の水処理装置において再使用される分離膜を識別する分離膜識別情報と、分離膜が使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部に記憶されている検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超える分離膜エレメントを選定して警告を出力するようにしたので、水処理装置において再使用される複数の分離膜エレメントを、一定以上の性能を保った状態で保管することを支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による分離膜エレメント選定装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による水処理装置情報記憶部に記憶される水処理装置情報のデータ例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による分離膜情報記憶部に記憶される分離膜情報のデータ例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による分離膜エレメント選定処理の動作例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による分離膜エレメント選定処理の動作例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態による分離膜エレメント選定処理の動作例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による警告処理の動作例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による水処理装置が有する複数の分離膜エレメントを示す図である。
【図9】分離膜エレメントの例を示す図である。
【図10】分離膜エレメントを用いたろ過装置の例を示す図である。
【図11】工場が有する複数の水処理装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による分離膜エレメント選定装置10の構成を示すブロック図である。ここでは、異なる用途の水処理装置(水処理装置21−1、水処理装置21−2、・・・)を備える複数の分離膜使用工場20(分離膜使用工場20−1、分離膜使用工場20−2、・・・)において使用された分離膜エレメント1が、分離膜再生工場30において洗浄され、性能が検査されて保管されているものとする。分離膜再生工場30における再検査結果は、分離膜エレメント選定装置10の入力部11に入力される。ここで、図1において一点鎖線によって示される情報の経路は、接続されたネットワークを介して情報が通信されるようにしても良いし、ユーザ等によって伝達され入力されるようにしても良い。
分離膜エレメント選定装置10は、分離膜再生工場30に保管されている分離膜エレメント1の情報を管理するコンピュータ装置であり、入力部11と、表示部12と、水処理装置情報記憶部13と、分離膜情報記憶部14と、警告部15と、分離膜エレメント選定部16と、検査結果更新部17とを備えている。
【0013】
入力部11は、キーボードやマウスなどの入力デバイスであり、ユーザからのデータ入力を受付ける。
表示部12は、情報を表示するディスプレイである。
水処理装置情報記憶部13には、再使用される分離膜エレメント1の提供対象である水処理装置毎に、その水処理装置の属性を示す水処理装置情報が記憶される。
図2は、水処理装置情報記憶部13に記憶される水処理装置情報のデータ例を示す図である。水処理装置情報には、顧客名と、原水種と、原水含有成分と、忌避成分と、脱塩率レベルと、フラックスレベルと、回収率レベルとの情報が含まれる。ここでは、簡単のため、ひとつの顧客(工場)に対してひとつの水処理装置が設置されているとして顧客単位で水処理装置情報が記憶される例を説明するが、ひとつの顧客の複数の水処理装置毎に水処理装置情報が対応付けられて記憶されるようにしても良い。
【0014】
水処理装置情報に含まれる顧客名は、分離膜エレメント1の提供対象である顧客を識別する水処理装置識別情報である。原水種は、対応する顧客の水処理装置において処理される原水の種別を示す。例えば、原水種としては、「排水回収」、「純水」、「工水」、「上水」、「井水」、・・・などの種別が考えられる。原水含有成分は、対応する水処理装置の原水が含有する成分を示す。例えば、原水含有成分としては、「Ag」、「Ca」、「Na」、「TOC」、「Fe」、・・・などの成分が考えられる。忌避成分は、対応する水処理装置において忌避される成分である。すなわち、忌避成分が含まれる原水において使用された分離膜エレメントは、対応する水処理装置において再使用しないように選定される。例えば、忌避成分としては、「Ag」、「As」、「Hg」、「Pb」などが適用できる。
【0015】
水処理装置情報に含まれる脱塩率レベル(L1)、フラックスレベル(L2)、回収率レベル(L3)は、対応する顧客の水処理装置において要求される分離膜エレメント1の要求性能を示す。脱塩率は、分離膜エレメント1の塩類(イオン成分)の除去率であり、脱塩性能を示す。フラックスは、分離膜エレメント1の透過性能(透過流束)を示す。回収率は、分離膜エレメント1への供給水量に対する透過水量の割合を示す。ここでは、それぞれのレベルをA〜Dに分類しており、レベルAはより性能が高いことを示し、レベルDはより性能が低いことを示す。
【0016】
例えば、脱塩率レベルは、「L1A≧97%>L1B≧95%>L1C≧92%>L1D」のように定義される。すなわち、「L1A」は、脱塩率が97%以上であることを示す。「L1B」は、97%未満、95%以上であることを示す。「L1C」は、95%未満、92%以上であることを示す。「L1D」は、92%未満であることを指す。
フラックスレベルは、「L2A≧1.2>L2B≧1.0>L2C≧0.8>L2D」のように定義される。すなわち、「L2A」は、フラックスが1.2m3/(m2・日)以上であることを示す。「L2B」は、1.2m3/(m2・日)未満、1.0m3/(m2・日)以上であることを示す。「L2C」は、1.0m3/(m2・日)未満、0.8m3/(m2・日)以上であることを示す。「L2D」は、0.8m3/(m2・日)未満であることを指す。ここでは、フラックスを、単位膜面積当たり1日にろ過できる水量によって示す。
回収率レベルは、「L3A≧70%>L3B≧60%>L3C≧50%>L3D」のように定義される。すなわち、「L3A」は、脱塩率が70%以上であることを示す。「L3B」は、70%未満、60%以上であることを示す。「L3C」は、60%未満、50%以上であることを示す。「L3D」は、50%未満であることを指す。
【0017】
図1に戻り、分離膜情報記憶部14には、水処理装置において再使用される分離膜エレメント毎に、分離膜エレメントの属性を示す情報が対応付けられた分離膜情報が記憶される。図3は、分離膜情報のデータ例を示す図である。分離膜情報には、膜IDと、顧客名履歴(履歴1と、履歴2と、履歴3、・・・履歴n)と、脱塩率レベルと、フラックスレベルと、回収率レベルと、予約コードと、検査日と、予約先と、納期との情報が含まれる。
【0018】
分離膜情報に含まれる膜IDは、水処理装置において再使用される分離膜エレメント1を識別する分離膜識別情報である。膜IDは、対応する分離膜エレメント1に対して、刻印、シール、バーコード、二次元コード、RFIDなどに書き込まれて装着される。顧客名履歴(履歴1、履歴2、履歴3、・・・履歴n)としては、対応する分離膜エレメント1が使用された水処理装置を有する顧客の顧客名が記憶される。ここには、対応する分離膜エレメント1が複数回に亘り水処理装置において使用されていれば、使用される毎に履歴が記憶される。脱塩率レベル、フラックスレベル、回収率レベルは、水処理装置情報に含まれる同名の情報に対応し、使用済みの分離膜エレメント1が再生洗浄された後の性能の検査結果であり、対応する分離膜エレメントの性能の程度を示す。予約コードは、分離膜再生工場30に保管された分離膜エレメント1が、水処理装置において利用されることが予約されていることを示す識別情報である。
【0019】
分離膜情報に含まれる検査日は、分離膜エレメント1が検査された日を示す。予約先は、対応する分離膜エレメント1の再使用を予約した顧客名を示す。納期は、対応する分離膜エレメント1を、予約した顧客に納品する期日を示す。ここで、分離膜エレメント1が要求される場合に、要求される用途、性能に応じた分離膜エレメント1が分離膜情報記憶部14に記憶されていない場合には、新規に未使用の分離膜エレメント1を適用することになる。このような場合、新規の分離膜エレメント1を予約することを示す情報が、分離膜情報記憶部14に記憶される。例えば、この図では、膜IDが「new」の行は、このような新規の分離膜エレメント1が予約されていることを示す。
【0020】
図1に戻り、警告部15は、分離膜情報記憶部14に記憶されている検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、経過期間が限度期間を超えると判定すると警告を出力する。限度期間は、洗浄後の分離膜エレメント1の性能が劣化する期間に応じて予め定められて警告部15の記憶領域に記憶されており、例えば2年である。ここで、警告部15は、例えば一日一回定められた時間などに、定期的に警告処理を行う。警告部15は、計時機能を備えており、定められた時間になると、計時機能により現在日時を示す情報を読み出し、検査日から現在日時までの経過期間を算出する。また、警告部15は、自身の記憶領域に経過期間の限度期間が予め記憶されており、算出した経過期間と、予め定められた限度期間とを比較する。警告部15は、算出した経過期間が、予め定められた限度期間よりも小さいと判断すれば、警告を出力しない。一方、算出した経過期間が、予め定められた限度期間よりも大きいと判断すれば、警告を出力する。
【0021】
ここで、警告部15が出力する警告は、例えば、予め定められた管理者の宛先に、定められた文面の電子メールを送信するようにしても良いし、分離膜エレメント選定装置10にユーザがログインしたときに分離膜エレメント選定装置10の表示部12に定められた文面を表示させるようにしても良い。警告の文面には、経過期間が限度期間を経過した分離膜エレメントの分離膜識別情報や、分離膜再生工場30において保管されている位置などの情報が記載されるようにしても良い。これにより、例えば、分離膜エレメント1の管理者などに、分離膜エレメント1が、性能が劣化するほどの長期間に亘り保管されていることを知らせることができ、複数の分離膜エレメント1の在庫期間ができるだけ均等になるように管理することが可能となる。
【0022】
分離膜エレメント選定部16は、水処理装置情報記憶部13に記憶されている水処理装置情報と、入力部11に入力される情報とに対応する分離膜情報を、分離膜情報記憶部14に記憶されている分離膜情報から選定し、表示部12に表示させる。ここで、分離膜エレメント選定部16は、再使用する分離膜エレメントの提供対象である水処理装置を識別する水処理装置識別情報に応じて定められた水処理装置識別情報に対応付けられて分離膜情報記憶部14に記憶された分離膜識別情報を、選定対象の分離膜識別情報として読み出す。例えば、分離膜エレメント選定部16は、分離膜エレメントを再使用する水処理装置に対応する顧客名に対応付けられて水処理装置情報記憶部13に記憶されている忌避成分と、分離膜情報記憶部14に記憶される原水含有成分とを比較して、忌避成分が原水含有成分に含まれない分離膜識別情報を選定対象として読み出す。
【0023】
検査結果更新部17は、警告部15が警告を出力した後、入力部11に、経過期間が限度期間を超えると判定された分離膜エレメントが再検査されたことを示す再検査結果が入力されると、入力された再検査結果に応じて、分離膜情報記憶部14に記憶されている検査日等の検査結果を更新する。例えば、検査結果更新部17は、入力部11に、再検査された分離膜エレメント1の膜IDと、その検査結果である脱塩率、フラックスレベル、回収率レベル、検査日などとが入力されると、対応する膜IDの分離膜情報を更新する。
【0024】
次に、図面を参照して、本実施形態の分離膜エレメント選定装置10の動作例を説明する。図4〜図6は、本実施形態の分離膜エレメント選定装置10による分離膜エレメント選定処理の動作例を示すフローチャートである。
まず、図4において、分離膜エレメント選定装置10の入力部11が、ユーザから入力される顧客名と、必要本数と、希望納期との情報を受付ける(ステップS1)。顧客名は、再生工場に保管された分離膜エレメント1の提供を希望する顧客を示す情報である。必要本数は、提供を希望する分離膜エレメント1の数である。希望納期は、顧客が希望する分離膜エレメント1の納期である。ここでは、顧客名として「E薬品」が、必要本数として「2」が、希望納期として「10/05/10」(yy/mm/dd形式)が入力されたとして、以下、説明する。
【0025】
分離膜エレメント選定部16は、分離膜情報記憶部14から、予約先が未登録である分離膜情報を選定候補の分離膜情報として読み出す(ステップS2)。ここでは、膜ID「0002」と、膜ID「0009」の分離膜情報には予約先が登録されているため、膜ID「0001」、「0003」〜「0008」の7件の分離膜情報を選定候補として読み出す。また、分離膜エレメント選定部16は、ステップS1において入力された顧客名に対応する水処理装置情報を、水処理装置情報記憶部13から読み出す(ステップS3)。ここでは、「E薬品」に対応する水処理装置情報を読み出す。
【0026】
そして、分離膜エレメント選定部16は、読み出した水処理装置情報に、忌避成分が対応付けられているか否かを判定する(ステップS4)。忌避成分が対応付けられていないと判定すれば(ステップS4:なし)、ステップS7に進む。一方、忌避成分が対応付けられていると判定すれば(ステップS4:あり)、分離膜エレメント選定部16は、水処理装置情報記憶部13から、原水含有成分に忌避成分を含む忌避対象の水処理装置情報を読み出す(ステップS5)。ここでは、水処理装置情報における「E薬品」は、「TOC」と「As」との忌避成分が対応付けられている。そこで、分離膜エレメント選定部16は、原水含有成分に「TOC」を含む顧客名「C製鉄」と、原水含有成分に「As」を含む顧客名「G化学」とを読み出す。
【0027】
分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報(膜ID「0001」、「0003」〜「0008」)から、顧客名履歴に忌避対象の顧客名(「C製鉄」、「G化学」)を含まない分離膜情報を、選定候補として抽出する(ステップS6)。ここでは、膜ID「0001」の分離膜情報の顧客名履歴には「C製鉄」が含まれており、膜ID「0006」、「0007」の分離膜情報の顧客名履歴には「G化学」が含まれているので、これらを除外し、膜ID「0003」〜「0005」、「0008」の4件の分離膜情報を選定候補として読み出す。
【0028】
分離膜エレメント選定部16は、ステップS1において入力された必要本数と、選定候補の分離膜情報の数とを比較し、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在するか否かを判定する(ステップS7)。分離膜エレメント選定部16が、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在しないと判定すると(ステップS7:なし)、図6のステップS23に進む。分離膜エレメント選定部16は、必要本数と、選定候補の分離膜情報の数との差分を、分離膜エレメント1の不足本数として、表示部12に表示させる(ステップS23)。分離膜エレメント選定部16は、分離膜エレメント1の不足本数に対応する新膜予約レコードを、分離膜情報記憶部14に記憶させる(ステップS24)。
【0029】
図4に戻り、分離膜エレメント選定部16が、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在すると判定すると(ステップS7:あり)、「E薬品」の水処理装置情報から脱塩率レベルを取得する(ステップS8)。ここでは、必要本数は「2」であり、選定候補の分離膜情報の数は4件であるから、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在すると判定し、「E薬品」に対応する脱塩率レベルである「L1B」を読み出す。そして、分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報から、脱塩率レベルが一致する分離膜情報を、選定候補として抽出する(ステップS9)。ここでは、選定候補の4件の分離膜情報(膜ID「0003」〜「0005」、「0008」)のうち、脱塩率レベル「L1B」に一致する膜ID「0004」の分離膜情報を、選定候補として抽出する。
【0030】
分離膜エレメント選定部16は、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在するか否かを判定する(ステップS10)。ここで、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在しないと判定すると(ステップS10:なし)、上位の脱塩率レベルが存在するか否かを判定する(ステップS11)。ここで、分離膜エレメント選定部16が、上位の脱塩率レベルが存在しないと判定すれば(ステップS11:なし)、ステップS23に進む。上位の脱塩率レベルが存在すると判定すれば(ステップS11:あり)、分離膜エレメント選定部16は、1段階上の脱塩率レベルに一致する分離膜情報を読み出し、選定候補の分離膜情報に加える(ステップS12)。ここでは、ステップS10において、選定候補の分離膜情報は1件(膜ID「0004」)のみであり、必要本数「2」に満たないので、ステップS12に進み、上位の脱塩率レベル「L1A」に対応する膜ID「0008」の分離膜情報を、選定候補に加える。これにより、選定候補の分離膜情報の数は2件(膜ID「0004」、「0008」)となり、必要本数「2」を満たす。
【0031】
ステップS10において、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在すると判定すると(ステップS10:あり)、図5に進み、分離膜エレメント選定部16は、「E薬品」の水処理装置情報に対応するフラックスレベルを取得する(ステップS13)。ここでは、「E薬品」に対応するフラックスレベルである「L2C」を読み出す。そして、分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報から、フラックスレベルが一致する分離膜情報を、選定候補として抽出する(ステップS14)。ここでは、選定候補の2件の分離膜情報(膜ID「0004」、「0008」)のうち、いずれもがフラックスレベル「L2C」に一致し、いずれもの分離膜情報を、選定候補とする。
【0032】
分離膜エレメント選定部16は、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在するか否かを判定する(ステップS15)。ここで、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在しないと判定すると(ステップS15:なし)、上位のフラックスレベルが存在するか否かを判定する(ステップS16)。ここで、分離膜エレメント選定部16が、上位のフラックスレベルが存在しないと判定すれば(ステップS16:なし)、ステップS23に進む。上位のフラックスレベルが存在すると判定すれば(ステップS16:あり)、分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報に、1段階上のフラックスレベルに一致する分離膜情報を加える(ステップS17)。ステップS15において、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在すると判定すると(ステップS15:あり)、分離膜エレメント選定部16は、「E薬品」の水処理装置情報から、回収率レベルを取得する(ステップS18)。ここでは、ステップS15において、選定候補の分離膜情報は2件(膜ID「0004」、「0008」)であり、必要本数「2」を満たすので、ステップS18に進む。
【0033】
ここでは、「E薬品」に対応する回収率レベルである「L3C」を読み出す。そして、分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報から、回収率レベルが一致する分離膜情報を、選定候補として抽出する(ステップS19)。ここでは、選定候補の2件の分離膜情報(膜ID「0004」、「0008」)のうち、いずれもが回収率レベル「L3C」に一致し、いずれもの分離膜情報を、選定候補とする。
【0034】
分離膜エレメント選定部16は、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在するか否かを判定する(ステップS20)。ここで、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在しないと判定すると(ステップS20:なし)、上位の回収率レベルが存在するか否かを判定する(ステップS21)。ここで、分離膜エレメント選定部16が、上位の回収率レベルが存在しないと判定すれば(ステップS21:なし)、ステップS23に進む。上位の回収率レベルが存在すると判定すれば(ステップS21:あり)、分離膜エレメント選定部16は、選定候補の分離膜情報に、1段階上の回収率レベルに一致する分離膜情報を加える(ステップS22)。
【0035】
ステップS20において、必要本数に対応する数の選定候補の分離膜情報が存在すると判定すると(ステップS20:あり)、図6に進み、選定候補の分離膜情報から、検査日が古い順に必要本数の分離膜情報を選定する(ステップS25)。ここでは、ステップS22において、選定候補の分離膜情報は2件(膜ID「0004」、「0008」)であり、必要本数「2」を満たすので、ステップS25に進む。選定候補の2件の分離膜情報(膜ID「0004」、「0008」)は、検査日が同一であり、いずれもの分離膜情報を、同様に選定する。そして、分離膜エレメント選定部16は、選定した2件の分離膜情報に、新規の予約コード、顧客名、希望納期を登録し、分離膜情報記憶部14に記憶させる(ステップS26)。ここでは、例えば、新規の予約コードとして「1001−04」と「1001−05」とを、予約先として「E薬品」を、納期として「10/05/10」を記憶させる。
【0036】
図7は、本実施形態の分離膜エレメント選定装置10による警告処理の例を示すフローチャートである。
警告部15は、定められた時間になると、分離膜情報記憶部14に記憶されている分離膜情報を読み出す(ステップS30)。警告部15は、読み出した分離膜情報に含まれる検査日から現在日時までの経過期間を算出し(ステップS31)、経過期間が、予め定められた限度期間を超えるか否かを判定する(ステップS32)。ここで、警告部18が、経過期間が予め定められた限度期間を超えると判定すると(ステップS32:YES)、警告を出力する(ステップS33)。経過期間が予め定められた限度期間を超えないと判定すると(ステップS32:NO)、警告を出力せず、処理を終了する。
【0037】
なお、本実施形態では、スパイラル型のRO膜を例として説明したが、同様の他の分離膜についても、本実施形態と同様の構成により再使用を管理するようにしても良い。
また、本実施形態では、水処理装置毎に分離膜情報を管理するようにしたが、同一の水処理装置内における複数の分離膜エレメント1を、設置された位置に応じて管理するようにしても良い。例えば、図8に示されるように、直列に接続された複数の分離膜エレメント1を、供給水側から透過水側にA−1、A−2、・・・のように設置位置の識別情報を付与し、設置位置の識別情報毎に洗浄、検査結果などの管理を行うようにしても良い。
また、本実施形態では、分離膜情報記憶部14に顧客名履歴を記憶しているが、使用された現場の原水含有成分を蓄積した原水含有成分履歴を記憶して、水処理装置情報記憶部13の忌避成分と関連付けて忌避対象の原水含有性分履歴を含まない分離膜情報を選定候補として抽出するようにしても良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、異なる用途の複数の水処理装置に提供する分離膜エレメントを、効率的かつ安全に再使用することが可能となる。
【0038】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより分離膜エレメントの選定を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0039】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
10 分離膜エレメント選定装置
11 入力部
12 表示部
13 水処理装置情報記憶部
14 分離膜情報記憶部
15 警告部
16 分離膜エレメント選定部
17 検査結果更新部
20 分離膜使用工場
21 水処理装置
30 分離膜再生工場
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを識別する分離膜識別情報と、当該分離膜エレメントが使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部と、
前記検査日記憶部に記憶されている前記検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、前記経過期間が前記限度期間を超える前記分離膜エレメントを選定して警告を出力する警告部と、
を備えることを特徴とする分離膜エレメント選定装置。
【請求項2】
前記警告部が警告を出力した後、前記経過期間が前記限度期間を超えると判定された前記分離膜エレメントが再検査されたことを示す再検査結果の入力を受付ける入力部と、
前記入力部に入力される前記再検査結果に応じて、前記検査日記憶部に記憶されている前記検査日を更新する検査結果更新部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の分離膜エレメント選定装置。
【請求項3】
複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを識別する分離膜識別情報と、当該分離膜エレメントが使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部を備える分離膜選定装置の分離膜選定方法であって、
前記検査日記憶部に記憶されている前記検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、前記経過期間が前記限度期間を超える前記分離膜エレメントを選定して警告を出力するステップ
を備えることを特徴とする分離膜エレメント選定方法。
【請求項4】
複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを、一定以上の性能を保った状態で保管する分離膜選定方法であって、
前記分離膜エレメントが使用された後に洗浄され検査された検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、前記経過期間が前記限度期間を超える場合に、当該分離膜エレメントの再洗浄と再検査を行ない、再度保管するステップ
を備えることを特徴とする分離膜エレメント選定方法。
【請求項1】
複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを識別する分離膜識別情報と、当該分離膜エレメントが使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部と、
前記検査日記憶部に記憶されている前記検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、前記経過期間が前記限度期間を超える前記分離膜エレメントを選定して警告を出力する警告部と、
を備えることを特徴とする分離膜エレメント選定装置。
【請求項2】
前記警告部が警告を出力した後、前記経過期間が前記限度期間を超えると判定された前記分離膜エレメントが再検査されたことを示す再検査結果の入力を受付ける入力部と、
前記入力部に入力される前記再検査結果に応じて、前記検査日記憶部に記憶されている前記検査日を更新する検査結果更新部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の分離膜エレメント選定装置。
【請求項3】
複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを識別する分離膜識別情報と、当該分離膜エレメントが使用された後に洗浄され性能が検査された検査日とが対応付けられて記憶される検査日記憶部を備える分離膜選定装置の分離膜選定方法であって、
前記検査日記憶部に記憶されている前記検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、前記経過期間が前記限度期間を超える前記分離膜エレメントを選定して警告を出力するステップ
を備えることを特徴とする分離膜エレメント選定方法。
【請求項4】
複数の水処理装置において再使用される分離膜エレメントを、一定以上の性能を保った状態で保管する分離膜選定方法であって、
前記分離膜エレメントが使用された後に洗浄され検査された検査日からの経過期間と、予め定められた限度期間とを比較し、前記経過期間が前記限度期間を超える場合に、当該分離膜エレメントの再洗浄と再検査を行ない、再度保管するステップ
を備えることを特徴とする分離膜エレメント選定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−212617(P2011−212617A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84511(P2010−84511)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】
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