説明

分離膜配設体及びその製造方法

【課題】混合物から特定の成分を分離する分離性能、及び透過流束に優れた分離膜配設体を提供する。
【解決手段】多孔質基材と、多孔質基材の表面上及び前記多孔質基材の内部の少なくともいずれかに配設される、水溶性高分子で形成された分離膜とを備えた分離膜配設体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜配設体及びその製造方法に関する。更に詳しくは、混合物から特定の成分を分離する分離性能、及び透過流束に優れた分離膜配設体と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境や省エネルギーの観点から、各種ガス等の混合物から特定のガス等を瀘過分離する分離膜の開発が進められている。このような分離膜として、例えば、ポリスルホン膜、シリコン膜、ポリアミド膜、ポリイミド膜等の高分子膜が知られているが、混合物に有機溶剤が含まれると膜が変質劣化する等の耐化学性や耐熱性の問題点があった。
【0003】
一方、耐熱性・化学的安定性に富む分離膜として、炭素膜が挙げられ、多孔質基材上に炭素膜を形成した分離膜が知られている。例えば、特許文献1には、セラミック多孔質体表面にシリカゾル、アルミナゾル等のコーティング層を形成し、その表面に密着した炭素膜を形成することによる分子ふるい炭素膜が開示されている。なお、この炭素膜は、フェノール樹脂等の液状熱硬化性樹脂をコーティング層の表面に塗布した後、所定の条件下で熱処理すること等によって形成される。この炭素膜には、細孔直径が1nm以下の細孔が多数存在することから、分子直径の異なる各種混合ガスから、特定の分子径の成分のみを分離・精製することができる。
【0004】
【特許文献1】特許第3647985号公報
【特許文献2】特許第2914972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明のように、多孔質基材表面にシリカゾルを含浸させ、その上に炭素膜を形成する方法は、ゾル層形成によって炭素膜の細孔径が大きくなるため、CとCとの混合ガスを分離する場合等のように、分子径が0.43nm以上で分子量が比較的大きい一部のガスに対しては分離性能が向上するが、その他の工業的に有用性が高い、COとCHとの混合ガスの分離、NとOとの混合ガスの分離、水とEtOHとの混合ガスの分離等のように、分子量が比較的小さい系では選択性が低下するものであった。更に、シリカゾルによる圧損の影響で透過流束も低く、依然として多孔質基材上に直接炭素膜を形成したものより分離性能が低いものであった。また、炭素膜を形成するフェノール樹脂を用いる際には、有機溶剤の使用が不可欠であるために、環境に対する負荷が懸念される場合もある。
【0006】
一方、特許文献2には、セルロースやアクリル樹脂の膜を塩化アンモニウム等で処理した後に加熱処理して形成したガス分離用の炭素膜が開示されている。この炭素膜の形成材料としてはセルロース等の水溶性材料を用いるため、有機溶剤を使用する必要はない。しかしながら、分離膜として炭素膜を採用しているために、分子量が比較的小さい系では依然として選択性が低下するものであった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、混合物から特定の成分を分離する分離性能、及び透過流束に優れた分離膜配設体、並びにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、水溶性高分子を用いて分離膜を形成することによって上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下に示す分離膜配設体、及びその製造方法が提供される。
【0010】
[1]多孔質基材と、前記多孔質基材の表面上及び前記多孔質機材の内部の少なくともいずれかに配設される、水溶性高分子で形成された分離膜とを備えた分離膜配設体。
【0011】
[2]前記水溶性高分子が、ヘキソースを主鎖に有する多糖類、及び前記多糖類の誘導体の少なくともいずれかである前記[1]に記載の分離膜配設体。
【0012】
[3]前記水溶性高分子が、アクリル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、並びにポリイタコン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]に記載の分離膜配設体。
【0013】
[4]前記分離膜が、前記多孔質基材の表面上及び前記多孔質基材の内部の少なくともいずれかに配設された、前記水溶性高分子を含有する分離膜前駆部が乾燥処理、又は還元雰囲気中50〜800℃で熱処理されることで形成された前記[1]〜[3]のいずれかに記載の分離膜配設体。
【0014】
[5]多孔質基材の表面上及び前記多孔質基材の内部の少なくともいずれかに、水溶性高分子を含有する分離膜前駆部を配設した後、前記分離膜前駆部を、乾燥処理、又は還元雰囲気中50〜800℃で熱処理することで、前記多孔質基材と、前記多孔質基材の表面上及び前記多孔質基材の内部の少なくともいずれかに配設される、前記水溶性高分子で形成された分離膜とを備えた分離膜配設体を得る分離膜配設体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の分離膜配設体は、混合物から特定の成分を分離する分離性能、及び透過流束に優れているといった効果を奏するものである。
【0016】
本発明の分離膜配設体の製造方法によれば、混合物から特定の成分を分離する分離性能、及び透過流束に優れた分離膜配設体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0018】
1.分離膜配設体:
本発明の分離膜配設体の一実施形態は、多孔質基材と、この多孔質基材の表面上及び多孔質基材の内部の少なくともいずれかに配設される、水溶性高分子で形成された分離膜とを備えたものである。以下、その詳細について説明する。
【0019】
(多孔質基材)
本発明の分離膜配設体を構成する多孔質基材は特に限定されないが、例えば、平均粒子径10〜100μmのアルミナ粒子からなる、平均細孔径1〜30μmのモノリス型のアルミナ多孔質基材上に、平均粒子径0.3〜10μmのアルミナ粒子をろ過製膜により堆積後、焼成し、厚み10〜1000μm、平均細孔径0.1〜3μmの第一の表面緻密層が形成されたものが好ましい。また、この第一の表面緻密層の上に、平均粒子径0.03〜1μmのアルミナ粒子をろ過製膜により堆積後、焼成し、厚み1〜100μm、平均細孔径0.01〜0.5μmの第二の表面緻密層が形成されたものが更に好ましい。
【0020】
多孔質基材の気孔率は、20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることが更に好ましい。なお、本明細書における気孔率は、水銀圧入法によって測定した値である。また、多孔質基材を構成する粒子としては、セラミックス粒子が好ましい。セラミック粒子の好適例としては、アルミナ粒子、シリカ粒子、コージェライト粒子、ジルコニア粒子、ムライト粒子等を挙げることができる。
【0021】
多孔質基体の形状(分離膜配設体の形状も同様)は特に限定されず、円筒、角筒等の筒(チューブ)状;円柱、角柱等の柱状等;円板状、多角形板状等の板状等を挙げることができる。なお、多孔質基材の形状は、分離膜配設体の使用目的等に合致するよう、適宜決定することができる。なお、多孔質基材の形状は、容積に対する膜面積比率が大きいことから、モノリス形状であることが特に好ましい。また、多孔質基体の大きさ(分離膜配設体の大きさも同様)は特に限定されず、分離膜の支持体として必要な強度を満たすとともに、分離する流体の透過性を損なわない範囲で、使用目的等に合わせて適宜決定することができる。
【0022】
(分離膜)
本発明の分離膜配設体を構成する分離膜は、水溶性高分子で形成された膜であり、(1)多孔質基材の表面上、及び(2)多孔質基材の内部、の少なくともいずれかに配設される。ここで、分離膜が多孔質基材の内部に配設された状態とは、分離膜が多孔質基材に形成された細孔の内部に侵入した状態をいう。分離膜の膜厚は、0.01〜100μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることが更に好ましい。分離膜の膜厚が0.01μm未満であると、分離膜自体に欠陥が生じ易くなる場合がある。一方、分離膜の膜厚が100μm超であると、分離の際の透過流束が低下する場合がある。なお、本明細書における「分離膜の膜厚」には、分離膜のうち、多孔質基材の内部に配設された部分の厚み(多孔質基材の内部に侵入した部分の厚み)は含まれない。従って、本明細書における「分離膜の膜厚」とは、多孔質基材の表面上に配設された部分の厚みをいう。
【0023】
(水溶性高分子)
水溶性高分子によって形成された分離膜は、分離性能が高く、透過流束に優れている。更には、工業的に有用性が高い、COとNとの混合ガスの分離、NとCHとの混合ガスの分離、水とEtOHとの混合液の分離等のように、分子量が比較的小さい系であっても優れた選択性を示すものである。また、分離膜の形成材料として水溶性高分子を用いるために、分離膜の形成に際して有機溶媒を使用する必要がなく、環境に対する負荷を低減することができる。更に、本発明の分離膜配設体を構成する分離膜は、高分子化合物が炭化して形成された、いわゆる炭素膜ではない。このため、本発明の分離膜配設体は、特許文献1,2等において開示された炭素膜を用いた従来の分離体と、その構成を異にするものである。
【0024】
水溶性高分子の水溶液粘度は特に限定されないが、25℃において、通常、1〜1000mPa・sの粘度、好ましくは50〜500mPa・sの粘度になるよう水溶性高分子の水溶液を調製する。水溶性高分子の水溶液粘度(25℃)が1000mPa・s超であると、分離膜の形成が困難になる場合がある。
【0025】
水溶性高分子の具体例としては、(1)ヘキソースを主鎖に有する多糖類及びその誘導体;(2)アクリル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、並びにポリイタコン酸及びその塩;等を挙げることができる。これらの水溶性高分子を、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
ヘキソース(六糖類)の具体例としては、マンノース、ガラクトース、グルコース、フルクトース等を挙げることができる。また、ヘキソースを主鎖に有する多糖類及びその誘導体の具体例としては、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム・ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、キサンタンガム、ダイユータンガム、ウェランガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、タマリンドガム、アラビアガム、プルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、寒天、アルギン酸、デンプン、サイリウム、タラガム、ローカストビーンガム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、トリフェニルメチルセルロース、トリメチルシリルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等を挙げることができる。なかでも、グアーガム・ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルセルロースが好ましい。
【0027】
アクリル樹脂には、アクリル酸エステル(共)重合体、及びメタクリル酸エステル(共)重合体が概念的に含まれる。
【0028】
ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩には、(メタ)アクリル酸(共)重合体及びその塩が概念的に含まれる。塩の具体例としては、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等を挙げることができる。
【0029】
また、ポリイタコン酸及びその塩には、イタコン酸(共)重合体及びその塩が概念的に含まれる。塩の具体例としては、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等を挙げることができる。
【0030】
2.分離膜配設体の製造方法:
本発明の分離膜配設体を製造するには、先ず、前述の水溶性高分子を含有する分離膜前駆部を多孔質基材の表面上及び多孔質基材の内部の少なくともいずれかに配設する。多孔質基材の表面上及び多孔質基材の内部の少なくともいずれかに分離膜前駆部を配設するには、例えば、水溶性高分子を水に溶解させて、好ましくは1〜1000mPa・sの粘度、更に好ましくは50〜500mPa・sの粘度に調製した水溶液(塗布液)を多孔質基材の表面に塗布すればよい。多孔質基材の表面に塗布液を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法等を挙げることができる。なお、塗布回数等を調整すること等により、配設される分離膜前駆部の厚みを適宜調整することができる。
【0031】
多孔質基材の表面上及び多孔質基材の内部の少なくともいずれかに配設された分離膜前駆部を、(1)乾燥処理、又は(2)還元雰囲気中、所定の温度で熱処理すれば、多孔質基材の表面上及び多孔質基材の内部の少なくともいずれかに分離膜が形成された本発明の一実施形態である分離膜配設体を得ることができる。
【0032】
分離膜前駆部の乾燥処理は、例えば0〜150℃、好ましくは25〜100℃の温度で、例えば0.1〜24時間、好ましくは0.5〜5時間行えばよい。一方、分離膜前駆部の熱処理は、50〜800℃、好ましくは100〜600℃、更に好ましくは200〜600℃で行う。分離膜前駆部をこの温度範囲内で熱処理することにより、水−エタノール混合液からの脱水性能が向上し、更に水に再溶出し難い膜にすることができる。このため、分離膜前駆部を所定の温度範囲内で熱処理すれば、水を含む液体の分離に好適に使用可能な分離膜配設体を得ることができる。熱処理の温度が50℃未満であると、熱処理による効果が発揮され難い。一方、熱処理の温度が800℃超であると、形成される分離膜が炭化してしまい、分離性能や透過流束が低下する場合がある。なお、ディップコート法等による塗布液の塗布と、乾燥処理又は熱処理を複数サイクル繰り返すと、先に塗布した膜が再溶出することなく膜を重ねることができ、膜厚を増加させたり、膜欠陥を減少させたりすることができるために好ましい。
【0033】
分離膜前駆部を熱処理するに際しての還元雰囲気とは、水溶性高分子が、熱処理時の温度範囲で加熱されても酸化されない雰囲気をいい、具体的には、窒素、アルゴン等の不活性ガス中や真空中等の雰囲気をいう。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
チューブ形状のアルミナからなる多孔質基材(アルミナ多孔質体)に、グアーガム・ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(商品名「MEYPRO−BOND 9806」、Danisco社製、1質量%水溶液の粘度:3500mPa・s(25℃))の0.5質量%水溶液を3回ディップコートし、80℃で3時間乾燥することにより、膜厚2.6μmの分離膜が形成された分離膜配設体(実施例1)を得た。なお、分離膜の膜厚(表面上の膜厚)は、電子顕微鏡を用いて測定した。
【0036】
得られた分離膜配設体について、水−エタノール浸透気化分離法により、分離試験を行い、分離係数α(水/EtOH)、及び透過流束(kg/(m・h))を測定した。以下、分離試験は、すべて水:エタノール=10:90(質量比)を75℃の条件で実施した。結果を表1に示す。
【0037】
(実施例2〜48)
表1〜4に示す分離膜の材料を用いたこと、表1〜4に示す形状の多孔質基材を用いたこと、表1〜4に示す濃度の水溶液を調製したこと、表1〜4に示す回数の成膜(ディップコート)を行ったこと、及び乾燥後に還元雰囲気下で表1〜4に示す温度条件で熱処理したこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして分離膜配設体(実施例2〜22)を得た。得られた分離膜配設体のそれぞれの分離膜の膜厚(表面上の膜厚)を表1〜4に示す。また、得られた分離膜配設体のそれぞれの分離係数α(水/EtOH)、及び透過流束(kg/(m・h))の測定結果を表1に示す。なお、表1〜4中、「表面上の膜厚(μm)」の測定結果が示されていないものは、多孔質基材の内部(細孔内)に分離膜が侵入して配設されており、多孔質基材の表面上に配設された分離膜の膜厚(表面上の膜厚)については測定不能であったことを意味する。また、実施例1の分離膜配設体の断面の状態、及び分離膜表面の状態を示す電子顕微鏡写真を、図1及び図2にそれぞれ示す。また、実施例1及び2の分離膜配設体における分離膜の、赤外吸収スペクトルの測定結果を示すチャートを図3に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
(比較例1)
チューブ形状のアルミナ多孔質体に、市販のポリイミド樹脂前駆体ワニス(ポリアミック酸溶液)(以下、単に「ワニス」ともいう)の10質量%N−メチル−2−ピロリドン溶液を3回ディップコートし、300℃で1時間乾燥することで、表面にワニスの層が形成された多孔質体を得た。得られた多孔質体を、非酸化性雰囲気中、800℃で1時間熱処理してワニスの層を炭化し、膜厚1μmの炭素膜(分離膜)が形成された分離膜配設体(比較例1)を得た。なお、分離膜の膜厚(表面上の膜厚)は、電子顕微鏡を用いて測定した。また、非酸化性雰囲気としては、真空雰囲気を採用した。得られた分離膜配設体の分離係数α(水/EtOH)、及び透過流束(kg/(m・h))の測定結果を表5に示す。
【0043】
(比較例2〜4)
非酸化性雰囲気中、表5に示す温度条件でワニスの層を炭化して炭素膜を形成したこと以外は、前述の比較例1の場合と同様にして分離膜配設体(比較例2〜4)を得た。得られた分離膜配設体のそれぞれの分離膜の膜厚(表面上の膜厚)を表5に示す。また、得られた分離膜配設体のそれぞれの分離係数α(水/EtOH)、及び透過流束(kg/(m・h))の測定結果を表5に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
表1〜5に示すように、所定の水溶性高分子によって形成された分離膜を備えた実施例1〜48の分離膜配設体は、比較例1〜4の分離膜配設体に比して、分離係数(分離性能)及び透過流束の双方において優れていることが明らかである。また、図3に示すように、実施例2の分離膜配設体の分離膜の赤外線吸収強度は、実施例1の分離膜配設体の分離膜の赤外線吸収強度に比して弱いことが明らかである。更に、実施例1と実施例2では、各ピークの形状及び位置に若干の相違が認められる。即ち、熱処理によって、分離膜の材料であるグアーガム・ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの少なくとも一部が分解等して変化したものと推測される。なお、グアーガム・ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを280℃で熱処理して得られたもの(粉末)は、ほとんど水に溶けないものであるとともに、熱処理によって質量が約30%減少したことを別途確認している。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の分離膜配設体は、複数の物質(気体、液体等)の混合物から特定の物質(気体、液体等)を選択的に分離する分離用フィルタとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1の分離膜配設体の断面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1の分離膜配設体の分離膜表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例1及び2の分離膜配設体における分離膜の、赤外吸収スペクトルの測定結果を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、前記多孔質基材の表面上及び前記多孔質基材の内部の少なくともいずれかに配設される、水溶性高分子で形成された分離膜とを備えた分離膜配設体。
【請求項2】
前記水溶性高分子が、ヘキソースを主鎖に有する多糖類、及び前記多糖類の誘導体の少なくともいずれかである請求項1に記載の分離膜配設体。
【請求項3】
前記水溶性高分子が、アクリル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、並びにポリイタコン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載の分離膜配設体。
【請求項4】
前記分離膜が、前記多孔質基材の表面上及び前記多孔質基材の内部の少なくともいずれかに配設された、前記水溶性高分子を含有する分離膜前駆部が乾燥処理、又は還元雰囲気中50〜800℃で熱処理されることで形成された請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離膜配設体。
【請求項5】
多孔質基材の表面上及び前記多孔質基材の内部の少なくともいずれかに、水溶性高分子を含有する分離膜前駆部を配設した後、前記分離膜前駆部を、乾燥処理、又は還元雰囲気中50〜800℃で熱処理することで、
前記多孔質基材と、前記多孔質基材の表面上及び前記多孔質基材の内部の少なくともいずれかに配設される、前記水溶性高分子で形成された分離膜とを備えた分離膜配設体を得る分離膜配設体の製造方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−22871(P2009−22871A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188040(P2007−188040)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】