説明

切り屑除去機械加工用の穴あけ工具及び穴明け工具のルーズトップ

【課題】本発明は、切り屑除去機械加工のためのルーズトップタイプの穴あけ工具及び穴あけ工具のルーズトップを提供する。
【解決手段】基体の前端には、ジョー(20)が形成され、ジョーは二つの弾性的に曲げることができるブランチ(21)と中間軸方向支持表面(22)によって画定され、ルーズトップ(2)をそこにしっかりとつかむことができる、詳しくは、ブランチ(21)の内側支持表面(24)がルーズトップの外側接触表面(26)に弾力的に押しつけられることによってつかむことができる。ルーズトップの二つの外側接触表面(26)は、ルーズトップの前端(9)に含まれる逃げ面(28)から後方へ延びる。対向する外側接触表面(26)の間の直径方向の寸法を大きく形成するほど、ルーズトップの前端が近くなり、ジョーのブランチ(21)が、ブランチがその最大の曲げ能力を有するその前端の領域でルーズトップをしっかりつかむことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第一の様態で、本発明は切り屑除去機械加工のための穴あけ工具に関し、この穴あけ工具のタイプは、一方において、前端と後端、及び二つの凹設された切り屑フルートを含む包絡面を有する基体(basic body)を含み、この包絡面はある中心軸と同心であり該基体がその中心軸のまわりで与えられた回転方向に回転でき、他方において、前端と後端を含むルーズトップ(loose top)を含み、そのうち後端は、軸方向接触表面並びにある中心軸と同心である包絡面として働き、この包絡面は二つの凹設された切り屑フルートを含み、その間に中心コアから径方向に突出する二つのバーが画定され、二つのバーは前端においてそれぞれ切れ刃を含み、複数の逃げ面が回転方向でその背後に位置する。基体の前端は、底面とそこから軸方向に突出し、周縁に位置する二つのブランチ(branches)で画定されるジョー(jaw)を含み、ブランチは弾性的に曲がることができ、その目的はルーズトップをジョーにクランプすることであり、詳しくは、ブランチの一対の内側支持表面がルーズトップの一対の外側接触表面に押しつけられる。すなわち、ブランチが力を受けたときに、外側接触表面の間の直径を通る最大寸法が内側支持表面の間の同様の直径を通る寸法より長くなり、その結果として、ブランチの一対の内側支持表面がルーズトップの一対の外側接触表面に押しつけられ、ルーズトップがクランプされる。これによって、ルーズトップを、回転自在に基体のジョーに取り付けたり、取り外したりすることができる。
【0002】
別の様態で、本発明はまた、ルーズトップに関する。
【0003】
問題としている種類の穴あけ工具は、鋼、鋳鉄、アルミニウム、チタン、イエローメタル、などの金属のワークピースの切り屑除去又は切削機械加工(特に穴あけ)に適する。また、この工具はいろいろなタイプの複合材料の機械加工にも使用できる。
【背景技術】
【0004】
10年以上前から、一体型のドリルと異なり、二つの部分から、すなわち基体又はドリルボディーとそれに着脱可能に結合された、したがって交換可能な、ヘッドから構成され、このヘッドに必要な切れ刃が含められている穴あけ工具が開発されてきた。こうすると、工具の大きな部分は小さな弾性率の比較的安価な材料、例えば鋼、で製造することができ、他方小さな部分、すなわちヘッド、はもっと硬い高価な材料、例えば超硬合金、サーメット、セラミックなど、から製造することができ、それによって切れ刃に、良い切り屑除去能力、高い加工精度、及び長い使用寿命が得られる。別の言い方をすると、ヘッドは摩耗した後で廃棄できる摩耗部分となり、基体は何回でも(例えば10回から20回取り替えて)再使用できる。このような切れ刃がついたヘッドは“ルーズトップ”という呼び名が現在では認められており、この明細書でも以下ではこの呼び方が用いられる。
【0005】
ルーズトップタイプの穴あけ工具には、複数の要求が課される。そのひとつは、回転する駆動される基体からトルクが信頼できる仕方でルーズトップに伝達されなければならないということである。さらに、穴あけなどの動作中にルーズトップに加わる後方への軸方向の力に基体が問題なく耐えることができなければならない。もうひとつの必要条件は、ルーズトップは信頼できる仕方で基体に対して中心合わせされて保持されなければならないということである。さらに別の要求は、穴を開けているときだけでなく、穴あけ工具を穴から引き抜くときも、ルーズトップは基体に対して保持されなければならないということである。さらに、ユーザーの側からの要求又は希望は、ルーズトップを、駆動する機械から基体を取り外す必要なく、オペレーターが迅速かつ簡単な仕方で取り付けたり取り外したりできるということである。さらに、工具は、特に高価な材料で作られるルーズトップは、低いコストで製造できなければならない。
【0006】
ルーズトップタイプの穴あけ工具並びにフライス削り工具(シャンクエンドミル)は広く知られており、設計の基礎となる考え方によっていくつかの異なるカテゴリーに分けられる。
【0007】
第一のカテゴリー(特許文献1〜10参照)では、工具の基体は、その前端に、軸方向支持表面の背後に位置する二つのブランチを分離する溝が形成され、ブランチは基体の材料(通常は鋼)に固有な弾性によって曲げることができ(例えば、ラジアルねじ、偏心キーなどによって)、いろいろな仕方でルーズトップをクランプするのに利用できるということが基礎になっている。しかし、いろいろな理由により、このようなルーズトップ工具を工業規模で製造する試みは成功していない。とりわけ、溝が軸方向だけでなく側方へもトラップを形成するような形で開き、そこで除去された金属切り屑が絡み合って問題、例えば切り屑の密集、を引き起こすということで成功しなかった。
【0008】
第二のカテゴリーの工具(特許文献11参照)は、最初にあげたカテゴリーと同様、基体に形成されたフレキシブルな又は弾性的に曲げられるブランチを利用してルーズトップをクランプするもので、ルーズトップに軸方向接触表面から後方に突出し、ブランチの間そして必要な軸方向支持表面の背後に位置するキャビティーに挿入できる締め付けピンを形成し、締め付けピンはそのキャビティーより部分的に太くなっていて、キャビティーに挿入するときにブランチに弾力的なクランプ力を及ぼしてピンをしっかりとつかみ、ルーズトップを所望のポジションに固定するということが基礎になっている。しかし、このルーズトップ工具も問題や欠点を克服し難く、工業規模での製造はもっと困難であった。ひとつの欠点は、ルーズトップの軸方向長さが直径に対してかなり大きいということである。このため、ルーズトップの全体積が比較的大きくなり、製造における材料の消費が高価になる。別の欠点は、ルーズトップとブランチの間のつかみ又はグリップがブランチの後部(必要な軸方向支持表面の背後)になり、そこではブランチが曲がる能力がきわめて小さくなる。したがって、クランピングでブランチが大きく離れるほど、ブランチの前部とルーズトップの接触が失われる危険が大きくなる。極端な場合、ルーズトップの外側とブランチ前部の内側支持表面の間に隙間が生ずることさえあり得る。さらにいくつかの欠点があるが(特に、製造の複雑さ)、もうひとつあげると、ルーズトップの軸方向接触表面と対応する基体の軸方向支持表面という協働動作する対がかなり小さく、周縁部にあることである。こうなると、ルーズトップと基体の間の軸方向の力の伝達が信頼できないものになる可能性があり、アンバランスが生じてルーズトップの中心合わせがうまくできなくなる恐れがある。
【0009】
上述した工具と著しく異なるルーズトップ工具が特許文献12に開示されている。この場合、中間軸方向支持表面と共にルーズトップをしっかりとつかむジョーを形成する二つのフレキシブルなブランチが、平面の軸方向支持表面から軸方向に突出する周縁に位置するフィンガー状材料部分として形成される。このルーズトップ工具は、切り屑が捕まる可能性がある溝やキャビティーを設けて交叉させる必要がない。動作に必要な締め付けピンがルーズトップの軸方向接触表面から後方に突き出すことがなくなるため、ルーズトップは直径に対してかなり短く作ることができ、これは材料の節約になりコストも減らせる。さらに、ルーズトップの軸方向接触表面並びに基体の軸方向支持表面が周縁に位置する両端の間に伸びている、すなわちこれらの表面の長さ又は直径方向寸法はドリルの直径と同じ大きさになる。
【0010】
しかし、特許文献2の穴あけ工具の欠点は、ブランチのルーズトップに対するグリップが弱く信頼できないものになる危険があるということである。このため、ブランチは、切り屑フルートによって画定されるルーズトップのバーの外側を形成する二つの凸の包絡面の後部に凹設されたポケットに回し込むように配置される。各ポケットの軸方向の拡がりは画定されており、それがブランチの可能な最大長さを制限する。さらに、ブランチの二つの円錐状内側支持表面は、ルーズトップの対応する円錐状内側接触表面にクランプされるが、それがジョーの支持表面とブランチの自由端のほぼ中間に位置している。このことは、ブランチの内側支持表面がルーズトップをその後端に比較的近く位置している平面でつかむということを意味する。言い換えると、ルーズトップの後部だけがブランチの間にクランプされて保持されるが、その前部(そこで切削力が最も強くなる)は有効にクランプされない。ブランチの長さが限られていることによる別のマイナスの効果は、ルーズトップのポケットの協働動作する表面にトルクを伝達する目的を有する接線方向接触表面が限られた面積しかないということである。このため、面の圧力が大きくなり、変形損傷を生ずる恐れがある。さらに、ルーズトップは、正確にルーズトップを中心合わせすることができる精度で製造するのが難しい。したがって、実際にはポケットの内側に位置する外側接触表面を精密研削することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1306152号明細書
【特許文献2】欧州特許第1328366号明細書
【特許文献3】欧州特許第1555075号明細書
【特許文献4】PCT特許出願03/031104
【特許文献5】米国特許第6695551号明細書
【特許文献6】米国特許第6783308号明細書
【特許文献7】米国特許第6899495号明細書
【特許文献8】米国特許第7114892号明細書
【特許文献9】米国特許第7134186号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2008/0193237号明細書
【特許文献11】米国特許第7360974号明細書
【特許文献12】欧州特許第1013367号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特許文献12によって知られる穴あけ工具の上述した欠点を軽減し、改良された穴あけ工具を提供することを目指している。したがって、本発明の第一の目的は、工具の基体においてジョーのブランチの間で全体が信頼できる仕方でクランプされて保持されるルーズトップを有する穴あけ工具を提供することである。そのさい、ブランチの固有の弾性が好適に利用されてルーズトップに最適なグリップが得られる。別の目的は、ルーズトップがその直径に対して最小の長さ(したがって最小の体積)を有する穴あけ工具を提供することである。その目的は、製造に関連して高価な材料の消費を最小に減らすことである。さらに別の目的は、基体が大きなトルクをルーズトップに伝達できる穴あけ工具を提供することである。さらに、穴あけ工具は、簡単なキー以外に他の手段なしでルーズトップを迅速かつシンプルに簡単に取り替えることができ、基体を必ずしも駆動機械から取り外す必要がないようにしなければならない。スムースな取り替えを保証する重要な因子は、ブランチがルーズトップを信頼できる仕方でクランプして保持する能力は高くても、基体のジョーへのルーズトップの回し込みに対してブランチが小さな抵抗しか示さないということである。さらに別の目的は、ルーズトップが基体に対して正確に中心合わせされ - その中心合わせされた状態を保持する - 穴あけ工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によって、少なくとも第一の目的は、請求項1の特徴部分によって達成される。本発明による穴あけ工具の好ましい実施形態はさらに従属請求項2〜20に定義されている。
【0014】
別の様態で、本発明はまた、ルーズトップそのものに関する。このルーズトップの特徴は独立請求項21に定義されている。ルーズトップの好ましい実施形態は従属請求項22〜36に定義されている。
【0015】
本発明は、基体のジョーを画定する二つのブランチは、その後端の付近ではなく、その自由端のエリアで最大の曲げ能力を(それによって最適のグリップ能力を)有するという理解に基礎をおいている。ルーズトップの外側接触表面をルーズトップの自由端の近くに配置することによって、上記の理解を利用してルーズトップの切れ刃に隣接する前部に沿った強力なグリップ又はつかみを可能にしている。与えられたルーズトップの軸方向長さで、さらにブランチの最適な設計を行って、本来の締め付け作用を改善する他に、ブランチの接線方向接触表面をルーズトップと同じ長さにすることでブランチがトルクを伝達する能力も改善できる。さらに、本発明による協働動作する表面の配置と設計は、この明細書のあとの方で説明するような他のいくつかの利点も与える。
【0016】
上記特許文献12で開示されている穴あけ工具では、ルーズトップが、それ自身、ルーズトップの前端と境を接する凸の外側を含んでいる。この場合、しかし、ルーズトップのクランピングは、基体の軸方向支持表面の背後に位置し二つのフレキシブルなブランチの間で画定されるキャビティーに挿入できる後部締め付けピンによって可能になる。このことは、ルーズトップのクランピングが、前に指摘したように、ブランチの曲げ能力及びグリップ能力が本質的にその前部におけるよりも小さくなるエリアで行われるということを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】構成された状態の穴あけ工具の基体とルーズトップを示す切断斜視図である。
【図2】基体から分離されたルーズトップを示す分解斜視図である。
【図3】ルーズトップと基体の前端を上からの斜視図で示す拡大分解図である。
【図4】基体とルーズトップを側面図で示す分解図である。
【図5】基体とルーズトップを上からの斜視図で示す分解図である。
【図6】図4の基体のVI−VI断面図である。
【図7】図4のルーズトップのVII−VII断面図である。
【図8】基体のジョーへの回し込みに関連してルーズトップを初期位置で示す斜視図である。
【図9】図8による位置におけるルーズトップの上からの平面図である。
【図10】図8によるルーズトップの側面図である。
【図11】図8と同じ位置におけるルーズトップを、その図とは別の角度で見て示す斜視図である。
【図12】図11におけるXII−XII細部断面図である。
【図13】側面図での分解図である。
【図14】図13のXIV−XIV断面図である。
【図15】図13のXV−XV断面図である。
【図16】基体とルーズトップの重要な幾何的特徴を、それぞれ、誇張されたスケールで示す概略分解図である。
【図17】図16によるイメージを補う概略平面図である。
【図18】本発明の別の実施形態を示す分解斜視図である。
【図19】本発明の別の実施形態を示す分解斜視図である。
【図20】本発明の別の実施形態を示す分解斜視図である。
【図21】第三の実施形態を示す分解斜視図である。
【図22】本発明のさらに別の実施形態を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明とクレームでは、基体とルーズトップのそれぞれの表面で協働動作するいくつかの対が記載される。これらの表面が基体に存在する場合、それは“支持表面”と呼ばれ、ルーズトップの対応する表面は“接触表面”と呼ばれる(例えば、それぞれ、“軸方向支持表面”と“軸方向接触表面”)。さらに、ルーズトップは平面の形の後端を含み、それが基体の軸方向支持表面に押しつけられる軸方向接触表面としての役目をすることを指摘しておきたい。文脈によって、この表面は“後端”又は“軸方向接触表面”と呼ばれる。図面では、穴あけ工具の動作状態で互いに接触する協働動作する表面は同じような表面パタンで示されている。
【0019】
図1と2に示されている穴あけ工具は、本発明にしたがって作られ、いわゆるツイストドリルの形をしており、基体1とルーズトップ2を含み、ルーズトップに必要な切れ刃3が含まれている。図1により構成された動作する状態で、この穴あけ工具はCで表される中心軸のまわりで、詳しくは回転方向Rに回転できる。図2では、基体1が前端4と後端5を含み、その間を基体の固有な中心軸C1が伸びていることが見られる。前端4から後方へ、円筒状の包絡面6が伸び、そこに二つの切り屑フルート7が、この場合はらせん形に(真っ直ぐであってもよい)凹設されている。この例では、切り屑フルート7は駆動機械(図示せず)に取り付けることを意図した後部8に含まれるカラーの付近で終わっている。
【0020】
ルーズトップ2も前端9と後端10、及び自身の中心軸C2を含み、包絡面11がこの中心軸に対して同心である。上記包絡面11には二つのらせん形切り屑フルート又は切り屑フルート12が凹設されている(図3〜7参照)。これらは、ルーズトップが基体に取り付けられたときに、基体の切り屑フルート7の延長になる。ルーズトップ2が基体1に対して正しく中心合わせされるならば、個々の中心軸C1とC2は構成された穴あけ工具の中心軸Cと一致する。
【0021】
基体1の大きな部分は本発明に関連した興味が乏しいので、以下(図3〜15)ではその前端部分だけをルーズトップ2と合わせて図示する、詳しくは拡大して図示する。
【0022】
主として図3〜7を参照すると、そこには本発明の本質部分が図示されており、切り屑フルート7がらせん形のエッジ14,15の間に延びる凹面13によって画定される。図6の断面図から見られるように、二つの切り屑フルート7の凹の限界表面13は二つのバーを画定し、その間に中心コア17aがあり、そこからバーが径方向に突出し、詳しくは基体1が平面P1で直径D1を有する。上記コア17aは互いに最も近く位置している凹面13の部分の間、基体1が最も薄くなっているところに内接する円によって構成される。コア17aはD2で表される直径を有する。各バー16の周縁の、凸の部分表面は6で表されるが、それは基体の包絡面の一部をなしているからである。同様に、ルーズトップ2の切り屑フルート12の凹面18(図7参照)は一対のバー19を画定している。上記のバーの周縁の凸面は、ルーズトップの包絡面の部分表面を構成しているので11で表される。
【0023】
基体の前端には、二つの同一なブランチ21及びルーズトップに対する軸方向支持表面を形成する中間底面22によって画定されるジョー20(図3と4参照)が形成されている。各ブランチは、一方において、この場合は凹である内側支持表面24と、他方において、回転の方向Rで前に向いてトルクをブランチからルーズトップに伝達することを目的とする接線方向支持表面25を含む。それ自体知られている仕方で、個々のブランチ21は曲がってルーズトップ2を弾力的にクランプすることができる。これは、基体1の少なくとも前部の材料がある程度の固有の弾性(ルーズトップの材料より小さな弾性率)を有する、適切には鋼から成ることによって実現される。ルーズトップの材料は、従来のやり方では超硬合金(バインダー金属中の硬い炭化物粒子)、サーメット、セラミック、などである。好適には、ジョー20の底面又は軸方向支持表面22は平面であって、中心軸C1と垂直に伸び、同時に二つのバーの包絡面6の間で直径方向に延びる。言い換えると、軸方向支持表面22は直径方向長さの拡がりが基体の直径D1と同じ大きさである。
【0024】
図5に見られるように、ルーズトップ2の後端10は軸方向接触表面で表され、それは、軸方向支持表面22と同様、最も適切には平面であり、中心軸C2に垂直に延びる。軸方向接触表面10も、直径方向で対向する包絡部分表面(複数)、すなわち表面(複数)11の間で延びる。さらに、ルーズトップ2は、外側接触表面26を含み、それはこの例では凸であり、ブランチの内側支持表面24がクランプされる。
【0025】
切れ刃3が含まれるルーズトップの前端9(図3参照)は、複数の部分表面で構成される端面で代表され、複数の部分表面はこのケースではペア毎に同一であり、したがって個々に記載しない。個々の切れ刃3の背後(回転の方向で見て)に、第1逃げ面27が形成され、それは小さな逃げ角を有し、もっと大きな逃げ角を有する第2逃げ面28に、詳しくは境界線29を介して、変わってゆく。別の境界線30を介して、第2逃げ面28は第3逃げ面31に変わってゆき、それはさらにアーチ状境界線32を介して切り屑フルート12に変わってゆく。切り屑フルート12の凹面18は、切れ刃3まで少なくとも部分的に延び、そこで切れ刃3のための切り屑表面を形成する。もちろん、構成された最終表面9には、図に例示されているもの以外の他の部分表面も含まれる。包絡面11に隣接して、ガイドパッド33が形成され、それは逃げ面を含み、穴あけ工具をガイドすることを目的とするが、それだけでなく、切れ刃の背後に軸方向に生成された孔壁の表面仕上げ又はワイピングも目的である。あけられる穴の直径は、切れ刃3がガイドパッド33に出会う周縁点3a、3bの間の直径方向距離によって決まる。さらに、二つの切れ刃は先端Tに収斂し、それがルーズトップの最先端部分となり、そこにはいわゆるチゼルエッジと最小のセンタリングパンチも含まれる(記号なし)。
【0026】
ルーズトップの二つの凸の外側接触表面26(図3と5参照)は、ルーズトップの前端9から軸方向後方に延びる、詳しくはブランチのつかみ又はグリップをルーズトップに沿ってできるだけ前方で確立することを可能にすることが目的である。外側接触表面26は二つの直径方向で対向するわずかにC形のウエブ(web)部分26aに形成される(図7参照)。このウエブ部分は、ルーズトップに含まれ、この場合は基体1のコア17aと本質的に同じ直径D2を有するコア17bに対して厚くなっている材料部分である。したがって、外側接触表面(複数)26の間の直径方向の寸法(一般にDMで表される)は、コア17bの直径D2(これは二つの切り屑フルートの凹の限界表面(複数)18の間の最小距離によって決まる)よりかなり大きい。
【0027】
図3と5に見られるように、個々の外側接触表面26は前方及び後方境界線35,36,並びに一対の側方境界線37,38によって画定される。前方の折れた境界線35は前端9の二つの逃げ面28,31への移行部を形成し、後方の境界線36はルーズトップの後方軸方向接触表面10の近くに位置し、狭いアール移行部39だけによってそれから分離されている。側方境界線37は切り屑フルート12の凹の限界表面18への移行部を形成する。この場合切り屑フルートはらせん形なので、側方境界線37はルーズトップの中心軸C2に対して小さな鋭角(記号なし)で延びる。側方境界線37は前方と後方の端点40,41の間に伸び、そのうち後方のもの41は回転で前方のもの40のあとを追い、前方のもの40は、後方のもの41よりも中心軸C2からの大きな径方向距離に位置している(以下の具体例では0.03mm)。反対側の側方境界線38はくぼんだ表面42への移行部を形成している。図7に最もよく見られるように、上記くぼんだ表面42は包絡面11のすぐ近くで接線方向接触表面43に変わってゆく。動作する状態で、ブランチ21の接線方向支持表面25は、ルーズトップにトルクを伝達するために表面43に押しつけられて保持され、同時にブランチの内側支持表面24はルーズトップを固定するために接線方向接触表面の回転方向後方の外側接触表面26に押しつけられて保持される。
【0028】
図3〜5に見られるように、一緒になって前部端面又は全体で9と表される前端に含まれるいろいろな部分表面は、異なるレベルにあり互いに対して異なる角度にある。上記の部分表面のうち、二つの部分表面28,31は個々の切れ刃3の背後の逃げ面を構成し、それに外側接触表面26が結合しており、部分的にくさび形で前部先端Tの方へテーパーがついている。
【0029】
図1〜7において肉眼には見えない別の重要な特徴が、図16と17に誇張されたスケールの概略図で示されている。これらの図で、フレキシブルなブランチ21は、負荷されておらず、歪んでいないと想定している。この場合、ブランチ21の内側支持表面24は円筒状で中心軸C3と同心であり、r1で表される曲率半径を有する。この例では、上記中心軸C3は基体の中心軸C1と平行である、すなわち、表面24はC1と平行に伸びている。ルーズトップ2の外側接触表面26も円筒状で中心軸C4と同心であり、曲率半径r2を有する。しかし、この場合、中心軸C4はルーズトップの後端10から前端9の方向に発散する、もっと正確に言うと発散角αで発散する。RPaはルーズトップの中心軸C2と垂直に延び、ルーズトップの後端10から距離L1にある基準面を表す。この例では、RPaは外側接触表面26の前端境界線35と同じレベルで、すなわちルーズトップの前端9の第2逃げ面28への移行部に、挿入されていると想定される。基体1を通る基準面RPbはブランチの自由端51のレベルにある、もっと正確に言うと軸方向支持表面22から軸方向距離L2にある。
【0030】
他の二つの基準面RPcとRPd(最初のものは外側接触表面26の後端境界線36と同じレベルにある)は、それぞれ、軸方向接触表面10と軸方向支持表面22から同じ軸方向距離にあるという点で同等である。寸法DM1はブランチ(複数)の内側支持表面(複数)24の間の直径方向の寸法(“直径”という概念と混同してはならない)を表す。内側支持表面24は基体の中心軸C1と平行に伸びているので、ブランチが負荷されていない限り、DM1は距離L2に沿った任意のセクションで常に等しい大きさである。さらに、DM2は、平面RPcにおける外側接触表面(複数)26の間の直径方向寸法を表し、DM3は平面RPaにおける対応する寸法を表す。外側接触表面(複数)26は発散角αで拡がってゆくのでDM3はDM2より大きくなる。このことは、上記直径方向の寸法が、平面RPcにおける最小値DM2から平面RPaにおける最大値DM3まで順次増大するということを意味する。別の表現をすると、中心軸C2に沿った任意の基準面における直径方向の最大寸法は、基準面が前端9に近いほど大きくなるということを意味する。
【0031】
本発明による穴あけ工具のある具体的な実施形態では、DM2は9.00mmになり、DM3は9.08mmになる。このことは、αが0.56°(α/2=0.28°)になるということを意味する。DM1は、それ自身、DM2と正確に同じ大きさであってよい。しかし、ルーズトップを取り付け易くし、許容公差の問題を避けるためには、DM1がある程度オーバーサイズであることが好ましいので、上記の条件の下で好適には9.02mmと決められる。したがって、ルーズトップがジョーに取り付けられたとき、それは軸方向の押し込みでなく、回し込みによって行われ、各ブランチはその前方の自由端のエリアで0.08/2-0.02/2=0.03mm振れる。言い換えると、ブランチ21のつかみ又はグリップはブランチの曲げ能力が最大になるブランチの自由端51と同じレベルにある基準面RPbに集中される。回し込みで、ブランチ21は前端9から後方への伸張長さL2の大きな部分に沿ってルーズトップの拡がる形に一致する。
【0032】
図17には、内側支持表面24がDM1の半分よりも小さな曲率半径r1を有し(r1<DM1/2)、中心軸C3が基体の中心軸C1に対して偏心した位置にあることが示されている。本発明の範囲内で、C1とC3は一致して、二つの表面24は共通の円筒又は円の部分であってもよい。さらに、ルーズトップの外側接触表面26は、この場合、r1より小さな曲率半径r2を有し、表面26,24は動作状態でシンプルな線接触をする。また、表面26の曲率半径r2はそれと異なることもあり、r1と同じ大きさ(一致する表面の接触)又はもっと大きくなり、二重の線接触になることもある。
【0033】
次に図5を参照すると、この図からルーズトップの軸方向接触表面10が§状の輪郭形状になることが見られる。§状の輪郭形状は、とりわけ、ルーズトップを中心コアに対して厚くしているC形のウエブ部分26aの存在(図7参照)によって生じている。図3で、基体1の軸方向支持表面22がルーズトップ2の軸方向接触表面10と同じ§状の輪郭形状を有することが見られる。この形状は、表面25と対向する表面44(図の左側のブランチでは見られないが、右側のものではよく見える)の間のブランチの幅又は接線方向の拡がりが包絡面6の対応する幅に対して小さく成っていることによって可能になる。こうして、各ブランチ21の回転方向前方に存在するスペースを利用して,斧の刃状の周縁表面部分を設けることができ、その形状は表面10の対応する周縁表面部分に対応する。図5で、さらに、軸方向接触表面10が包絡面11に隣接するアーチ状境界線(複数)11aの間に直径方向に延びていることが見られる。同様に、軸方向支持表面22(図3参照)はアーチ状境界線(複数)6aの間で基体の包絡面6の方へ伸びている。
【0034】
図3と4を参照すると、個々のブランチ21は二つのタイプのアール移行部を含む。すなわち、第一の、内側支持表面24と接線方向支持表面25の間の直立するアール移行部45,及び第二の、軸方向支持表面22と表面24,25の間の横たわるアール移行部46である。アール移行部46(これは凹である)は、ルーズトップ上の対応するアール移行部39より小さなアールを有する。直立するアール移行部45(これは凸である)は、くぼんだ表面42より大きなアールを有する(図3と7参照)。
【0035】
通常、基体のブランチ(複数)21の間の弾力的なつかみは、ルーズトップにそれをジョーから引き出すような力が作用する穴あけ工具を穴から引き抜くときにも、ルーズトップをジョーに保持するのに十分でなければならない。ルーズトップの意図しない抜け出しを防ぐために、基体には特別なロック手段が設けられており、図1〜15による実施形態では、それはブランチ21の前端51から突出するブラケット又はリップ47である。個々のリップは、それ自身、付属するブランチから径方向内側に突出することもできるであろうが、この好ましい実施形態では、リップはルーズトップの前端9に含まれる部分表面48(図3参照)に重なるためにトルクを伝達する接線方向支持表面25に隣接して形成される。上記部分表面48は周縁に位置し、斜め下向き/後方へ(回転の方向で)ルーズトップの接線方向接触表面43の方へ傾いている。リップ47はくさび形で、部分表面48に向いている傾斜した下方ストップ表面49を含む(図4と5参照)。しかし、表面48,49は穴あけの間互いに当接しない。すなわち、リップ47は動作状態では表面48とある距離に位置している。これは図12の細部断面図で最もはっきりと見られる。この図は、リップのストップ表面49が部分表面48から短い距離で間隔をあけている様子を示す。弾性的なブランチが過酷な条件の下でルーズトップに対する弾力的な摩擦グリップを解放した場合にのみリップ47は機能し始める。言い換えると、正常な状態ではリップは機能せず、必要とされる場合にのみ機能する。この点に関連して、穴あけ工具は引き抜くときにもまだ回転しており、表面25は常にルーズトップの表面43に強く押しつけられて保持されるということを指摘しておきたい。したがって、リップ47は、穴あけ工具を引き抜くときにフールプルーフなロック手段となる。
【0036】
図6と12で、参照数字50は基体1を通り、ブランチ21の前端表面51に開口する二つの冷却液ダクトを表す(図3参照)。
【0037】
図8〜11に、ルーズトップ2が基体のジョー20への回し込みの直前の初期位置で示されている。この位置に、ルーズトップはブランチの間へ軸方向に挿入できる。ルーズトップの中心部分はジョーにまさにこの状態で格納されているからである。ルーズトップがその後のジョーへの回し込みの間暫定的に基体に対してかなり良く中心合わせされた位置を保つために、協働動作する粗い精度の中心合わせ手段が基体とルーズトップに形成されている。図1〜15の実施形態において、前記手段は、一方において、ルーズトップ2の軸方向接触表面10から軸方向後方へ突出する、中心軸C2と同心の円筒状ピン52(図4と5参照)であり、他方において、基体の軸方向支持表面22に開口する、中心軸C1と同心の孔53(図3参照)である。このピンの目的は回し込みの間ルーズトップをかなり良く中心合わせされた位置に保つことであるから、ピンは孔の内径よりも小さな直径を有する。言い換えると、ピンも孔も穴開けの間は互いに面接触しないので動作的に活性化されない。したがって、ピンと孔は寸法精度についての何も要求せずに設けることができる。
【0038】
図3で、ルーズトップ2はノッチ又はシート(複数)55の形のキーグリップを含み、それらが周縁に位置し、包絡面11並びに前端9に(第1逃げ面27に隣接して)開いていることが見られる。シート55が周縁に配置される結果、シート間の距離が最適になり、適切に形成されたキー(図示せず)がルーズトップに強いトルクを加えても、回し込みに関連する人の手にかかる力は過大にならない。
【0039】
次に図13〜15を参照すると、そのうち図13は側面図による分解図であり、図14と15は、それぞれ、ルーズトップと基体の断面図である。図14の断面図から、ルーズトップの接線方向接触表面43がくぼんだ表面42に接する想像上の半径と鋭角βをなすことが見られる。図15では、個々のブランチ21の接線方向支持表面25が、表面25と内側支持表面24の間のアール移行部45への想像上の半径と角γをなす。これらの表面25,43が穴開けのときに互いに押しつけられると、ルーズトップは個々のブランチ21にブランチをルーズトップのコアに押しつけようとする力を加える。別の言い方をすると、ブランチの固有の弾性が保証するクランプ力に加えて、表面25,43の傾斜がブランチの内側支持表面24を外側接触表面26にはっきりと押しつけられた状態で保持することに寄与する。角βとγは等しい大きさで、例えば20-30°の範囲内であってもよい。しかし、それらは異なっていて、例えばγがβより少し大きくてもよい。こうすることによって、トルクの伝達がくぼんだ表面42に隣接する接線方向接触表面の内側部分に集中する。
【0040】
少なくとも外側接触表面26と接線方向接触表面43の対を精密な寸法精度に精密研削するか又は別の仕方で仕上げることによって、ルーズトップの中心合わせと位置決めの良い精度が得られる。接線方向接触表面43の仕上げは、それによってブランチ(複数)21がそれに同時に、そして遊びなく、押しつけられることが保証されるので中心合わせと位置決めの良い精度に寄与する。また、軸方向接触表面10も精密研削されると有利である。
【0041】
ルーズトップ2が基体1に用いられるとき、ルーズトップは軸方向でジョー20にブランチ21の間に図8〜11に示される初期位置に挿入される。ここで、ピン52が孔53と係合してルーズトップを暫定的に中間ポジションで保持する。この初期位置から、ルーズトップは基体の回転方向Rと反対の回動方向(turning direction)Vに、表面25,43が互いに接触するまで回される。ルーズトップの外側接触表面26がブランチ21の内側支持表面24に最初に近づくと、側方境界線37(図16によるDM1とDM2の差によるが、下方端点41からある軸方向距離にある)が最初に内側支持表面に接触し、側方境界線37の残りは内側支持表面から前方で(図では上向きに)拡がるギャップGだけ隔たっている(図10参照)。この位置から回し続けると、側方境界線37のますます大きな部分が順次内側支持表面と接触するようになり、それが、理想的条件の下で、内側支持表面の長さの大きな部分と接触しているエンドポジションに達する。上記エンドポジションで、ブランチの接線方向支持表面25は協働動作するルーズトップの接線方向接触表面43に押しつけられた状態で保持される。回し込み(turning-in)の間、ブランチ21は順次増大するクランプ力をルーズトップの外側接触表面26に加え、その力が最後に最大値に到達する。個々の外側接触表面26の境界線37がルーズトップの中心軸に対して傾いている、それと平行に伸びていない、ことの利点は、ルーズトップが最初は小さな抵抗で回すことができ、それが順次ルーズトップが動作するエンドポジションをとるまで増加するということである。実際には、これは、ルーズトップをなめらかに回すことができ、問題のキーに過大な手の力を加える必要がないということを意味する。
【0042】
ルーズトップを外そうとするときは、回す方向Vを逆にし、そのあとルーズトップを軸方向に引っ張って基体のジョーから外す。
【0043】
本発明による工具の根本的な利点は、ルーズトップがいかなる場合も二つの外側接触表面のブランチが最も曲げ易く最適なクランプ力を生ずる前方部分の間にしっかりとつかまれるということである。外側接触表面が、図示された例のように、後部の軸方向接触表面までずっと延びている場合、ルーズトップはその長さの大きな部分でしっかりとつかまれる(DM1とDM2が等しい大きさに作られている場合、全長にわたってつかむことも可能である)。このようにして、きわめて良いグリップが保証され、さらにルーズトップの体積を直径に対して最小にすることができる。図示された例では、ルーズトップの軸方向の長さが直径に比べてかなり小さい。さらに詳しくは、全長(軸方向接触表面10から先端Tまで)は直径のほぼ60%にしかならない。この関係の好適な結果として、ルーズトップにおける高価な材料の消費が絶対の最小まで減少する。別の利点は、ブランチの接線方向支持表面に最適な長さを与えることができるので、基体が大きなトルクをルーズトップに伝達できることである。さらに、ルーズトップはシンプルなキー以外に他の手段を用いることなく簡単で便利な仕方で取り付けたり取り外したりできる。なめらかな取り付けには、ルーズトップの外側接触表面が傾斜した側方限界線で画定され、それが順次ブランチの内側支持表面と接触するようになるということが大きく寄与している。さらに、基体に対するルーズトップの中心合わせが工業規模の製造に関連したシンプルな仕方で保証される。そのため、ルーズトップの二つの外側接触表面だけでなく、軸方向接触表面及び二つのトルクを担う接線方向接触表面も十分に露出され、それらの表面を精密研削する研削工具が容易にアクセスできる。別の言い方をすると、表面は、特許文献12によるルーズトップでポケットに含まれているようなタイプの突出する限界表面で画定されていない。
【0044】
図18〜20には別の実施形態が示されており、この実施形態ではルーズトップの外側接触表面が短くなって後端10からある距離で終わっている。詳しくは、外側接触表面26は一対の凸面56aによって画定されるウエスト56に変わってゆく。表面26と56aの間の移行部は好適には円錐表面57である。個々の表面56aは、ジョーの内側支持表面と軸方向支持表面の間の領域における境界58の円筒状又は他の回転対称な形の表面58aと協働動作し、いっしょに前に記載したピンと孔の組み合わせに代わる粗い精度の中心合わせ手段を構成する。表面56aの直径は表面58aの直径より小さく、それによってこれらの表面は動作状態では互いに接触しない。しかし、動作する表面の対56a、58aはルーズトップを回し込みに関連して中間ポジションに保持する手段として機能する。さらに、外側接触表面26が短くなっていることは、ルーズトップの後部における許容公差エラー(tolerance error)のリスクがなく、ルーズトップのつかみが表面26の長さの拡がりで決まるルーズトップの前部に集中するという利点がある。
【0045】
図21には、粗い精度の中心合わせのための別のピン59が示されている。これは基体の軸方向支持表面22から突き出し、中心軸C1と同心である。上記ピンはルーズトップの軸方向接触表面10に開口するセンターホール60と協働動作する。図1〜15の実施形態と同様、ホール60の直径はピン59の直径より大きく、したがってピンもホールも細かい寸法精度を必要としない。このピンとホールの目的は、ルーズトップの回し込みを開始するためにルーズトップを一時的に粗く中心合わせすることだけである。
【0046】
図22には、図1〜15に示されているものとは別のタイプの軸方向にロックするロック手段を含む別の穴あけ工具が示されている。このケースにおいて、ロック手段は、個々のブランチ21の後端に凹設されたシート61と,ルーズトップ2の軸方向接触表面10の近くに位置し、ルーズトップを最終的にクランプする、ブランチの間の動作するエンドポジションに回し込んだときにシートに挿入できる雄部材62である。好ましい実施形態では、シート61はブランチの個々の接線方向支持表面25の背後に位置するシュートの形をしている。もっと具体的に言うと、シート61はジョー20の接線方向支持表面25と軸方向支持表面22の間に位置している。凹の逃げ面63がシュートと軸方向支持表面の間の移行部を形成している。雄部材62はルーズトップの軸方向接触表面10と接線方向接触表面43の後端の間に形成された隆起である。隆起62の断面積はシュート61の断面積より小さく、したがってルーズトップに対するブランチ21のグリップがそれをジョー20に保持するのに十分な強いものである限り、隆起の凸の限界表面はシュートの凹の限界表面と接触しない。言い換えると、このロック手段及び前述した実施形態におけるリップ47は通常は受動的(passive)で働かず、ブランチが意図せずにルーズトップに対するグリップを失いそうになった場合にのみ機能する。
【0047】
以下の独立クレームに定義されるような本発明の範囲内で、多くの変更を加えることができる。すなわち、ルーズトップの外側接触表面には、ルーズトップの前端から軸方向後方に伸びている限り、いろいろな長さ、並びにいろいろな形を与えることができる。それに対応して、基体の前方のジョーを画定するブランチは、内側支持表面が前述したようにルーズトップの外側接触表面と協働動作することができる限り、いろいろな仕方で形成することができる。ルーズトップの外側接触表面とブランチの内側支持表面の直径方向寸法の必要な差は、正確に円筒状表面による以外の別の仕方で、例えば円錐状表面又は円筒状と円錐状表面の組み合わせによって実現することもできる。外側接触表面と内側支持表面は、それぞれ凸と凹面とする代わりに、平面にすることもできる。さらに、本発明は、ルーズトップが三枚の切れ刃、三つの切り屑フルート、及び三つの外側接触表面を含み、それが三つのフレキシブルなブランチと協働動作をする穴あけ工具に適用することも可能である。さらに、ルーズトップの後部軸方向接触表面は必ずしもひとつの平面の表面である必要はない。したがって、この表面は共通平面にある二つ以上の互いに分離された部分表面を含むこともできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り屑除去機械加工のための穴あけ工具であって、
一方において、前端と後端(4,5)及び包絡面(6)を有する基体(1)を含み、包絡面(6)は二つの凹設された切り屑フルート(7)を含むと共に中心軸(C1)と同心であり、その中心軸(C1)のまわりで基体(1)は与えられた回転方向(R)に回転可能であり、
他方において、前端と後端(9,10)とを有するルーズトップを含み、後端(10)は軸方向接触表面として働くと共に、中心軸(C2)と同心である包絡面(11)を含み、包絡面(11)は二つの凹設された切り屑フルート(12)を含み、二つの切り屑フルート(12)の間に中心コア(17b)から径方向に突出する二つのバー(19)が画定され、バーは前端に各切れ刃(3)含むと共に回転方向に後方に複数の逃げ面(27,28,31)を含み、
基体(1)の前端(4)は、底面(22)及びそれから軸方向に突出する周縁に位置する二つのブランチ(21)によって画定されるジョー(20)を含み、ブランチは、弾性的に曲がることができ、ルーズトップ(2)の一対の外側接触表面(26)がブランチ(21)の一対の内側支持表面(24)に弾性的に押されることによって、ルーズトップ(2)をジョー(20)にクランプし、ブランチが力を受けているときに外側接触表面の間の直径方向の最大寸法が内側支持表面の間の同様の直径方向の寸法よりも大きいことの結果として、ルーズトップを回して基体のジョー(20)と係合させたり外したりできる穴あけ工具において、
ルーズトップ(2)の二つの外側接触表面(26)は前端(9)に含まれる少なくともひとつの逃げ面(28)から後方に延び、外側接触表面(26)の間のルーズトップの中心軸(C2)に垂直であって後端(10)よりも前端(9)に近く位置する基準面(RPa)における直径方向の最大寸法(DM3)が、ブランチ(21)が力を受けていないときのブランチ(21)の内側支持表面(24)の間の直径方向の最大寸法(DM1)よりも大きい、
ことを特徴とする穴あけ工具。
【請求項2】
ルーズトップの中心軸(C2)に対し垂直に延びる任意の基準面における直径方向の最大寸法(DM3)が、基準面が前端(9)に近く位置しているほど大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の穴あけ工具。
【請求項3】
ブランチ(21)の内側支持表面(24)が凹であり、ルーズトップ(2)の外側接触表面(26)が凸である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の穴あけ工具。
【請求項4】
二つのブランチ(21)の内側支持表面は、ブランチ(21)が力を受けていないとき、基体(1)の中心軸(C1)と平行に延びる中心軸(C3)と同心である第一の円筒表面(24)であり、
ルーズトップ(2)の二つの外側接触表面がルーズトップの後端(10)から前端(9)への方向に発散する中心軸(C4)と同心である第二の円筒表面(26)であり、
直径方向の寸法(DM3)が最大となる基準面(RPa)が円筒表面(26)の前端(35)と同平面である、ことを特徴とする請求項3に記載の穴あけ工具。
【請求項5】
ルーズトップ(2)の後端(10)に最も近い基準面(RPc)における直径方向の最大寸法(DM2)が、対応する基準面(RPd)におけるブランチ(21)の複数の内側支持表面(24)の間の直径方向の最大寸法(DM1)と高々同じ大きさである、ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項6】
個々の第一の円筒表面(24)が、協働動作する第二の円筒表面(26)の曲率半径(r2)と異なる曲率半径(r1)を有する、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の穴あけ工具。
【請求項7】
基体(1)の軸方向支持表面(22)がルーズトップ(2)の軸方向接触表面(10)と本質的に同じ形とサイズを有する、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項8】
ルーズトップ(2)の個々の外側接触表面(26)がらせん形である切り屑フルート(7)に結合し、外側接触表面がルーズトップ(2)の中心軸(C2)に対して側面図で見て鋭角で延びる側方境界線(37)を含む、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項9】
ルーズトップ(2)の個々の外側接触表面(26)が前方及び後方端境界線(35,36)の間に延び、前方端境界線(35)はルーズトップの前端(9)における逃げ面(28)への直接の移行部を形成し、後方端境界線(36)はルーズトップの前端(9)より後端(10)に近く位置している、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項10】
ルーズトップ(2)の二つの外側接触表面(26)が前端(9)の逃げ面(28)から軸方向接触表面(10)へのアール移行部(39)まで軸方向にずっと延びている、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項11】
ルーズトップ(2)の二つの外側接触表面(26)が、前端(9)の逃げ面(28)から軸方向後方へ、外側接触表面(26)より中心軸(C2)に近く位置する二つの対向する凸の部分表面によって画定される後部ウエスト(56)まで延びている、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項12】
基体(1)のジョー(20)へのその回し込みと関連してルーズトップ(2)の暫定的な粗い精度の中心合わせのための中心合わせ手段(52,53,56,58,59,60)を含む、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項13】
中心合わせ手段が、ルーズトップ(2)の軸方向接触表面(10)から軸方向後方に突出する中央に位置するピン(52)と、ピン(52)より大きな直径を有し基体の軸方向支持表面(22)に開口する中央に位置する孔(53)とから成る、ことを特徴とする請求項12に記載の穴あけ工具。
【請求項14】
中心合わせ手段が、
一方において、ルーズトップ(2)の軸方向接触表面(10)に開口する中央に位置する孔(60)を含み、
他方において、基体(1)の軸方向支持表面(22)から突出する孔より小さな直径を有し中央に位置するピン(59)とを含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の穴あけ工具。
【請求項15】
中心合わせ手段が、ルーズトップのウエスト(56)の二つの凸の部分表面と、ブランチ(21)の後端に隣接して形成された凹のガイド表面を有する一対の境界(58)から成る、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の穴あけ工具。
【請求項16】
基体(1)が、ジョー(20)からのルーズトップ(2)の意図しない軸方向抜け出しを防止するためにロック手段(47,48,61,62)を含む、ことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の穴あけ工具。
【請求項17】
ロック手段は個々のブランチ(21)の自由端に形成されたブラケット(47)である、ことを特徴とする請求項16に記載の穴あけ工具。
【請求項18】
ブラケット(47)はブランチ(21)のトルクを伝達する接線方向支持表面(25)の軸方向延長部分に位置し、ルーズトップ(2)の前端(9)に含まれる部分表面(48)から間隔があいている、ことを特徴とする請求項17に記載の穴あけ工具。
【請求項19】
ロック手段が、
一方において、個々のブランチ(21)の後端に凹設されたシート(61)を含み、
他方において、ルーズトップ(2)の軸方向接触表面(10)に隣接して位置するシートの挿入可能な雄部材(61)を含む、ことを特徴とする請求項16に記載の穴あけ工具。
【請求項20】
シートはブランチの接線方向支持表面(25)の背後に位置する樋(61)であり、雄部材はルーズトップ(2)の協働動作する接線方向接触表面(43)の背後に位置する隆起(62)である、ことを特徴とする請求項19に記載の穴あけ工具。
【請求項21】
穴あけ工具のためのルーズトップであって、
前端及び後端(9,10)と、中心軸(C2)と同心であり、少なくとも二つの切り屑フルート(12)が凹設された包絡面(11)と、を含み、
切り屑フルート(12)の間に中心コア(17b)から径方向に突出する二つのバー(19)が画定され、
バーの前端(9)は各切れ刃(3)と回転方向の後方に位置する複数の逃げ面(27,28,31)を含むと共に、協働動作する基体の二つのブランチの間に位置しルーズトップを受け入れるジョーを広げる目的を有する二つの外側接触表面(26)を含み、
後端は中心軸(C2)と直角をなす軸方向接触表面(10)であって、包絡面(11)に隣接する直径方向で対向する境界線(11a)の間に延びる、ルーズトップにおいて、
二つの外側接触表面(26)は前端(9)に含まれる少なくともひとつの逃げ面(28)から後方に延びる、
ことを特徴とするルーズトップ。
【請求項22】
中心軸(C2)に垂直に延びる任意の基準面(RP)における外側接触表面(26)の間の直径方向の最大寸法(DM)は、基準面(RP)が前端(9)に近く位置しているほど大きい、ことを特徴とする請求項21に記載のルーズトップ。
【請求項23】
外側接触表面が円筒表面(26)であり、後端(10)から前端(9)の方向に拡がる中心軸(C4)と同心である、ことを特徴とする請求項22に記載のルーズトップ。
【請求項24】
外側接触表面(26)がコア(17b)に対して厚くなっているウエブ部分(34)に含まれる、ことを特徴とする請求項21〜23のいずれか1項に記載のルーズトップ。
【請求項25】
個々の外側接触表面(26)がらせん形である切り屑フルート(12)に結合し、外側接触表面が側面図で見て中心軸(C2)に対して鋭角で延びる側方境界線(37)を有する、ことを特徴とする請求項21〜24のいずれか1項に記載のルーズトップ。
【請求項26】
個々の外側接触表面(26)が前方及び後方端境界線(35,36)の間に延び、
そのうち前方のもの(35)は前端(9)の第2逃げ面(28)への直接の移行部を形成し、
後方のもの(36)はルーズトップの前端(9)よりも後端(10)に近く位置している、
ことを特徴とする請求項21〜25のいずれか1項に記載のルーズトップ。
【請求項27】
二つの外側接触表面(26)が前端(9)の逃げ面(28)から軸方向接触表面(10)と境を接するアール移行部(39)まで軸方向にずっと延びている、ことを特徴とする請求項26に記載のルーズトップ。
【請求項28】
二つの外側接触表面(26)が前端(9)の逃げ面(28)から断面積が小さくなっている後部ウエスト(56)まで軸方向に延びている、ことを特徴とする請求項26に記載のルーズトップ。
【請求項29】
ルーズトップは協働動作する基体のジョーへの回し込みに関連して一時的な粗い精度の中心合わせのための中心合わせ手段を含む、ことを特徴とする請求項21〜28のいずれか1項に記載のルーズトップ。
【請求項30】
粗い精度の中心合わせ手段が軸方向接触表面(10)から軸方向後方に突出する中央に位置するピン(52)である、ことを特徴とする請求項29に記載のルーズトップ。
【請求項31】
粗い精度の中心合わせ手段が軸方向接触表面(10)に開口する中央に位置する孔(60)である、ことを特徴とする請求項29に記載のルーズトップ。
【請求項32】
ウエスト(56)が二つの凸のガイド表面(56a)を含み、粗い精度の中心合わせ手段として働く、ことを特徴とする請求項28又は29に記載のルーズトップ。
【請求項33】
ルーズトップは後方軸方向接触表面(10)に隣接して位置し、ルーズトップを軸方向にロックするために突出する雄部材(62)を含む、ことを特徴とする請求項21〜32のいずれか1項に記載のルーズトップ。
【請求項34】
雄部材(62)が軸方向接触表面(10)と個々のバー(19)のトルクを担う接線方向接触表面(43)の間に位置している、ことを特徴とする請求項33に記載のルーズトップ。
【請求項35】
雄部材が隆起(62)である、ことを特徴とする請求項34に記載のルーズトップ。
【請求項36】
ルーズトップは前端(9)の周縁にくぼませた一対のノッチ(55)の形のキーグリップを含む、ことを特徴とする請求項21〜35のいずれか1項に記載のルーズトップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−5633(P2011−5633A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142903(P2010−142903)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】