説明

切り屑除去機械加工用回転工具及びそのルーズトップ

【課題】本発明は、切り屑除去機械加工用回転工具及びそのルーズトップを提供する。
【解決手段】本発明は回転可能なルーズトップ工具のためのルーズトップであって、前端と後端を含み、その間に中心軸が延び、同様にセンタリングピンが該ルーズトップから軸方向後方に突出しているタイプのルーズトップに関する。センタリングピンは直径方向で対向する二つの表面(29,30)を含み、その第1のものは軸方向に延びる二つの境界母線(31a,31b)の間に接線方向に延びる接触表面(29)を形成し、境界母線は想像上の外接円(S1)に沿って位置し、その円の中心は該中心軸(C)と合致し、その間の円弧角(α)は180°より小さく、該接触表面は該境界母線(31a,31b)を介して該外接円(S1)から間隔があいた該第2の表面に変わってゆく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の様態で、本発明は、切り屑除去機械加工のための回転工具であって、一方において前端と後端を有し、その間に第1の中心軸が延伸する基体(basic body)であって、基体がその中心軸のまわりで回転できる基体を含み、他方において、前端と後端を含みその間に第2の中心軸が延伸しているルーズトップ(loose top)を含んで成るタイプの回転工具に関する。基体の前端は、二つのトルク伝達ドライバと中間底面によって画定されるジョー(jaw)を含み、それがルーズトップの一部を受け入れることができ、ルーズトップから軸方向後方に突出するセンタリングピンが、ジョー底面に開口し孔壁を有するセンターホールに挿入可能であり、孔壁は基体の内側に軸方向に延び、そこにセンタリングピンと協同動作するねじのためのねじ溝がついた孔が開口している。
【0002】
別の様態で、本発明はまた、このようなルーズトップそのものに関する。
【0003】
問題としているタイプの工具は、鋼、鋳鉄、アルミニウム、チタン、イエローメタル、などの金属のワークピースの切り屑除去又は切削機械加工に適する。この工具はいろいろなタイプの複合材料の機械加工にも使用できる。
【背景技術】
【0004】
10年以上前から、一体型の工具と異なり、二つの部分から、すなわち基体とそれに着脱可能に結合された、したがって交換可能な、ヘッドから構成され、このヘッドに必要な刃が含められる工具、例えばシャンクエンドミルの形の孔開け工具、並びにフライス削り工具、が開発されている。こうすると、工具の大きな部分は小さな弾性率の比較的安価な材料、例えば鋼、で製造することができ、小さな部分、すなわちヘッドはもっと硬い高価な材料、例えば超硬合金、サーメット、セラミックなど、から製造することができ、必要な切れ刃、良い切り屑除去能力、高い加工精度、及び長い使用寿命が得られる。別の言い方をすると、ヘッドは摩耗した後で廃棄できる摩耗部分となり、基体は何回でも(例えば10回から20回取り替えて)再使用できる。このような切れ刃がついたヘッドは“ルーズトップ”という呼び名が現在では認められており、この明細書でも以下ではこの呼び方が用いられる。
【0005】
ルーズトップタイプの回転工具には、複数の必要条件が課されるが、そのひとつは、ルーズトップは正確かつ信頼できる仕方で基体に対して中心を合わせて保持されなければならないということである。したがって、ルーズトップの中心軸と基体の中心軸の間の意図されない偏心は0.01mm以下でなければならない。最も好ましくは、正確な中心合わせが達成できない場合、偏心は0.005mmより小さくなければならない。ユーザーの側からのもうひとつの要求又は希望は、駆動する機械から基体を取り外すことを必要とせずにルーズトップを迅速かつ簡単に取り付けたり外したりできるということである。
【0006】
ルーズトップタイプの穴あけ工具、並びにフライス削り工具(シャンクエンドミル)は広く知られており、設計の基本となっている考え方によっていくつかの異なるカテゴリーに分けられる。すなわち、いくつかの工具は、後方センターピンを有するルーズトップを用い、このセンターピンがルーズトップを基体に対して中心合わせするという目的を(他の結合細部と共に)全部又は一部満たす。このカテゴリーの工具には、特に特許文献1が属している。そこに開示されたルーズトップドリルでは、ルーズトップの後方結合部がジョーの二つの曲がらないドライバの間に軸方向に挿入され、ドライバの内側には軸方向に延びるトルクを伝達する隆起があり、それがルーズトップの結合部の対応する樋(chute)と係合し、そのわきでルーズトップから後方に突出するセンターピンがジョーの底面に開口しているセンターホールに挿入される。ピンと基体のラジアルホールに取り付けられたねじが、基体に対してルーズトップをロックする目的で協同して動作する。これに関連して、センターピンは円筒形であり、同じように円筒形のセンターホールにクロースフィット(ぴったりのフィット)で挿入することができ、ドライバと結合部の、それぞれ凹と凸の接触表面と共に、ルーズトップの中心合わせという目的を満たす。センターピンとホールの間だけでなく、ドライバと結合部の間のフィットも同時に必要であるため、製造精度に、実際に達成不可能であるとまで言わなくても、きわめて厳しい要求が課せられ、たとえ高い精度がひょっとして達成できたとしても、ルーズトップの取り付けと取り外しはきわめて厄介になるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6012881号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特許文献1による工具の上述のような欠点を軽減し、改良されたルーズトップ工具を提供することを目指している。したがって、本発明の第1の目的は、最初に述べたようなルーズトップ工具であって、ルーズトップを基体に対して細部まで正確な仕方で中心合わせすることができ、さらに単純で簡便な仕方で取り付け、取り外しできるルーズトップ工具を提供することである。別の目的は、ルーズトップを有する工具であって、ルーズトップのセンタリングピンを正確な中心合わせのためだけでなく、直接又は間接に―ラジアルねじと協同して、ルーズトップの単純で簡便な軸方向ロッキングを可能にするために利用できる工具を提供することである。もっと正確に言うと、ルーズトップは、ルーズトップをジョーから軸方向に引き抜こうとするネガティブな軸方向の力に、特にドリルで開けた穴からドリルを引き出すことに関連して、耐えることができなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって、少なくとも第1の目的は、請求項1の特徴部分によって達成される。本発明による工具の好ましい実施形態はさらに従属請求項2〜9に定義されている。
【0010】
第2の様態では、本発明はまたルーズトップそのものに関する。このルーズトップの決定的な特徴は独立請求項10に見られ、その他に好ましい実施形態が従属請求項11〜17に定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ドリルの形のルーズトップ工具を示す部分切断斜視図、その基体とルーズトップが構成された、動作する状態で示されている。
【図2】基体から分離されたルーズトップを示す分解斜視図である。
【図3】基体に含まれるジョーを上からの斜視図で、ルーズトップを下からの斜視図で示す拡大分解図である。
【図4】基体の前部を示す部分側面図である。
【図5】図4のA−A断面、基体から分離されたねじを示す。
【図6】図4のA−A断面、基体のラジアルホールに挿入された同じねじを示す。
【図7】ルーズトップに含まれるセンタリングピンの幾何形状デザインを示す拡大概略図である。
【図8】ピンの別の実施形態を示す同様の図である。
【図9】本発明によるルーズトップの別の実施形態を示す分解斜視図である。
【図10】図9によるルーズトップを長い辺に沿って見た側面図である。
【図11】図10で見たものに対して90°の角度で見たルーズトップの側面図である。
【図12】基体をそのラジアルねじのレベルで切った断面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明とクレームでは、それぞれ基体とルーズトップの表面のいくつかの協同動作する対が記載される。これらの表面が基体に存在する場合、それは“支持表面”と呼ばれ、ルーズトップの対応する表面は“接触表面”と呼ばれる(例えば、それぞれ、“軸方向支持表面”と“軸方向接触表面”)。
【0013】
図では、本発明は二つの穴あけ工具の形、詳しくはツイストドリル、すなわちその切り屑フルートがらせん形であるドリルの形で例示されている。図1と2に示された工具は、基体1とルーズトップ2を含み、必要な切れ刃3はルーズトップ2に含まれる。図1による組立てられた動作する状態で、穴あけ工具はCで表された中心軸のまわりで回転できる、詳しくは回転Rの方向に回転できる。図2では、基体1が前端と後端4,5を含み、その間に基体に特有な中心軸C1が延伸していることが見られる。前端4から後方へ円筒状の包絡面6が延び、そこに二つの切り屑フルート7が食い込んでおり、それはこの場合らせん形である(本発明は真っ直ぐな切り屑フルートを有するいわゆるタップボーラーにも適用できる)。この例では、切り屑フルート7は、駆動機械(図示せず)に取り付けられるための後部8に含まれるカラーで終わっている。
【0014】
ルーズトップ2も、前端と後端9,10と自身の中心軸C2を含み、二つの包絡部分表面11がそれと同軸である。これらの包絡部分表面11の間に、二つのらせん形の切り屑フルート又は切り屑フルート部分12が食い込んでおり、ルーズトップを基体に取り付けたときにそれは基体1の切り屑フルート7の延長になっている。ルーズトップ2が基体に対して正しく中心合わせされた場合、個々の中心軸C1とC2は組み立てられた穴あけ工具の中心軸Cと合致する。
【0015】
基体1の主要部分は本発明に関連した興味が乏しいので、以下ではその前端部分だけをルーズトップ2と合わせて図示する、詳しくは拡大して図示する。
【0016】
次に図3〜6も参照すると、そのうち図3は基体1の切り屑フルート7がらせん形境界線14,15の間に延びる凹表面13によって画定される様子を示している。同様に、ルーズトップ2の各切り屑フルート12も画定する凹表面13を含む。ルーズトップの前端9には切れ刃3が含まれるが、切れ刃が前部先端15で出会い(図2を参照)、中心軸C2がそれを通っているということ以外本発明に関連した興味に乏しい。
【0017】
図3に見られるように、基体1の前部にはジョー16が形成され、二つの直径方向に離れているドライバ17a,17b、及び平面の形の中間底面によって画定されている。底面18にはセンターホール19が開口し、ルーズトップ2に含まれる後方結合部21から軸方向後方に突出し平面の端面20aを有するセンターピン20をそこに挿入できる。ドライバ17a,17bは(弾性的に曲がるブランチと異なり)曲がらないラグ(lugs)である。この場合、センターホール19の孔壁は円筒状であり、基体に深く延びて、ラジアルホール22(図5を参照)がそこに開口できる。ホール22は雌ねじ溝を含み、これはねじ23の雄ねじ溝と協同して、ねじ23がホール22に出入りしてピン20をクランプする役目をすることができる。図示した実施形態では、ルーズトップの結合部21が、ドライバ17a,17bの自由端の支持表面25に押しつけることができる二つの軸方向接触表面24を隔てている。結合部21は、最初は軸方向でドライバの間に挿入することができ、次に、ねじ23によって、それを最終位置に回すことができ、その位置では結合部21の隆起26の形の雄部材がドライバ17a,17bの内側の雌状の樋27と係合する。隆起と樋は側面を含み、その側面を介してトルクをドライバからルーズトップに伝達することができる。図3にはっきりと見られるように、ドライバの内側は、結合部21の二つの隆起のように非対称な形に作られ、ルーズトップが基体のジョーに間違った仕方で取り付けられることを防ぐようになっている。
【0018】
洗浄媒体のダクト28が、基体の軸方向支持表面25並びにルーズトップの軸方向接触表面24に開口していることにも注意しておきたい。ダクトは洗洗浄媒体をルーズトップの切れ刃のところまで運ぶということを目的としている。
【0019】
次に図7を参照すると、この図はセンタリングピン20の幾何形状デザインを拡大した概略図で示している。この図で、S1はピン20に外接する円を表し、その中心はルーズトップの中心軸C2と合致している。同時に、この場合円S1はセンターホール19の円筒状の孔壁を表しており、これは基体の中心軸C1と同心である。ルーズトップが基体に対して正しく中心合わせされると、個々の中心軸C1とC2は構成された工具の中心軸Cと合致する。したがって図7には中心軸Cだけが示されている。ピン20には、二つの直径方向で対向する表面が含まれ、その第1のものは接触表面29を形成し、この例ではそれは円筒状の基本形を有し、ほぼ図3で30と記されている表面フィールドにあるセンターホール19の孔壁に押しつけることができる。この表面フィールドは本質的にセンターホール19におけるラジアルホール22の開口と対向している。接触表面29は、外接円S1に沿って位置する二つの軸方向に延びる境界母線31a,31bの間で接線方向に延びる(境界母線の間の表面に沿って位置するすべての任意の点と同様)。接触表面29の接線方向の延長は円弧角αによって決定され、それは本発明によると180°より小さい。図7の例では、αは170°である。二つの境界母線31a,31bで、接触表面29は逃げ面32a,32bに変わってゆき、それらは第3の表面32cと共に全体が33で表される第2の表面に含まれ、それが接触表面29と直径方向で対向している。この場合、表面32cは平面であり、ねじ23のショルダー表面を形成し、他方、逃げ面32a,32bは凸である。詳しく言うと、逃げ面32a,32bは個別に円筒状で想像上の共通の円(仮想円)S2に接しており、その中心Mは外接円S1の中心、すなわち中心軸C、に対して偏心している。偏心度はEで表される。
【0020】
図7にはっきりと見られるように、二つの逃げ面32a、32bは円形ラインS1から(したがって、穴19の孔壁から)間隔があいており、円S1とそれぞれの逃げ面の間の径方向距離は境界母線31a、31bから二つの境界母線34a、34bの方向に順次大きくなり、そこで逃げ面が平面のショルダー表面32cに変わってゆく。この幾何形状によって、二つの逃げ面32a、32bはルーズトップの動作エンド位置で孔壁と接触するようにならないことが保証される。さらに、この幾何形状の結果、ピン20の中心軸と境界母線31a、31bの間で画定されている接触表面29に沿った任意の点との間の径方向距離r1は、孔壁と基体の中心軸の間の対応する径方向距離r2と常に同じ大きさになる。このことは、接触表面29が(ねじ23によって)孔壁に押しつけられると、ピンはその中心軸C2と共に確実に穴の中心軸C1と合致する位置になるということを意味する。正確な中心合わせを保証するために、ピンの接触表面50をきわめて高い寸法精度で、例えば精密研削によって、作ることができる。このようにして0.01mm(又はそれより良い)寸法精度が得られる。
【0021】
図示した例では、表面32a,32b、32cは、接触表面29と対向し二つの境界母線31aと31bの間で延びる共通の表面33の部分表面である。表面33は、ルーズトップが動作エンド位置を取ったときにも孔壁と接触せず、したがってそれ自体唯一の逃げ面であると見なすことができる。
【0022】
これに関連して、実際に生産されるルーズトップは超硬合金又は他の硬い耐摩耗性材料から、詳しくは成形又は射出成形及び焼結によって製造される。そのさい、製造の結果にはばらつきがあり、少なくとも接触表面29に高い寸法精度を与えるためにはその後で精密加工することが好ましい。これに対し、基体1は通常は鋼から製造され、センターホール19の穴開け又はフライス削りは何も困難なしに一回の作業で高い精度が得られる。
【0023】
図7には、ラジアルホール22の中心軸C3が一点鎖線で示されており、それは平面であるショルダー表面32cと鈍角βを成す。ルーズトップの隆起をジョー27に回し込む前にピン20が基体のジョー16で最初の位置をとるとき、ショルダー表面32cと中心軸C3はこの角度βを成し、この例でそれは115°になる。ねじ23がショルダー表面32cに中心軸C2の方向に押しつけられると、ピンに力がかかり、結合部21がドライバ17a,17bの内側に当接するまで、すなわち隆起26が樋27と係合するまで、その力がピンを回す。たぶん、ねじ23による機械的な回し込みの前に、手による最初の回し込みが行われるであろう。
【0024】
ピン24は、その幾何形状によって、穴19の断面積よりも小さな断面積を有することは自明であろう。
【0025】
図8には、ピン20の別の実施形態が示されている。この場合にも、穴19の孔壁は円筒状であり、その断面積はピン20の断面積よりも大きい。この場合、ピン20の接触表面29は円筒状でなく、接触表面の接線方向の延長を決定する二つの境界母線31a,31bの間で楕円状である。それによって接触表面と孔壁の間に三日月形のギャップ35が生じ、ピンはふたつの離れた場所で、すなわち境界母線31a,31bに沿って、孔壁と線接触する。接触表面29に高い寸法精度を付与することにより、ピン、及びルーズトップの中心軸C2と境界母線31a,31bの間の径方向距離r1は、この場合も孔壁と基体の中心軸Cの間の半径r2と正確に同じ大きさになる。したがって、ピンが傾斜したショルダー表面32cに押しつけられると、ピンがどの位置に回されるかに関わりなくルーズトップの正確な中心合わせが得られる。
【0026】
実際には、接触表面29の境界母線31a、31bの間の円弧角αは、少なくとも90°、高々175°でなければならない。
【0027】
ルーズトップ2を基体1のジョー16に取り付けるとき、ねじ23は、その内側端が基体のセンターホール19から出ている初期位置で保持される。この状態で、ルーズトップ2の結合部21が軸方向にドライバ17a、17bの間に挿入され、ピン20がセンターホール19にはまり込む。ピンの断面積がセンターホールの断面積よりも小さいので、センターホールへのピンの挿入は何の困難もなく行うことができる。結合部の最初の挿入の間、ルーズトップの軸方向接触表面23はドライバ17a、17bの軸方向支持表面25に押しつけられてそこに静止して、結合部の下側がジョーの底面に接触することはない。ルーズトップをそのエンド位置の方へ手で回し込んだ後、ねじ23が図6に示されるような仕方で締められる。そうすることで、ねじはピンのショルダー表面32cに押しつけられ、これがラジアルホール22の中心軸C3に対して傾斜しているため、ピンは、結合部21の外側接触面が圧されてドライバ内側の対応する表面と密に接触するようになるまで回される。ルーズトップは基体に対して軸方向にロックされるこの位置で、ねじ23がピンを想定された回転角度位置に保持する限り、ルーズトップは信頼できる仕方でクランプされる。ねじ23が締められると、ピンの接触表面29は、ルーズトップの中心軸C2が基体の中心軸C1と正確に一致する位置で孔壁に密に接触して押しつけられる。
【0028】
次に図9〜12を参照すると、ここには本発明による工具の別の実施形態が示されている。この場合、ルーズトップ2は、前述した実施形態に含まれる後方結合部を欠いている。このため、ルーズトップはその全体が基体の二つのドライバ17a、17bの間に収容され、ルーズトップの下側の軸方向接触表面24がジョー16の底面18に押しつけられ、したがってこれがルーズトップに対する軸方向支持表面の役目をする。ルーズトップの対向する側面にある外側接触面36がドライバの内側に、詳しくはルーズトップのセンタリングピン20がねじ23による回す力を受けることによって、ドライバの内側に押しつけられる。
【0029】
前述の実施形態では、ピン20の平面のショルダー表面32cがピンの端20aからピンの全長に沿って延びているが、図9〜12によるピン20は二つの傾斜したチャンファー表面によって囲まれたショルダー表面32cを含み、そのうち表面32cの軸方向背後に位置するチャンファー表面37はねじがショルダー表面32cに押しつけられるとねじと接触する。詳しくいうと、この場合、図12に見られるように、ねじはその前端にはっきりした円錐表面38を含む。図12には、この場合、ねじ穴の中心軸C3はルーズトップと基体に共通する中心軸Cに対して偏心して延びている、詳しく言うと、中心軸C3は中心軸Cのわきに向いている。この結果、円錐表面38がチャンファー表面37に押しつけられると同時に、ねじの平面の端面39はショルダー表面32cに偏心して押しつけられる。このようにして、ピンに軸方向接触表面24を軸方向支持表面18に押しつけようとするポジティブな軸方向の力が作用すると同時にピンは回るようになる。図12による動作状態で、ねじ23はルーズトップをジョーから引き出そうとするネガティブな軸方向の力に抗してルーズトップをロックする。同時に、ねじはルーズトップの外側接触面をドライバ17a、17bの内側に押しつけられた状態で保持し、それによってトルクをドライバからルーズトップへ遊びなしに伝達できる。
【0030】
本発明の根本的な利点は、それがルーズトップの取り付け及び取り外しを難しくすることなく、ルーズトップのきわめて正確な中心合わせを保証することである。さらに、ルーズトップのピンは―記載されたような適当に平面であるショルダー表面を含んで形成されることによって―ピンを回すためだけにも、ルーズトップに軸方向の引っ張り力を加えるためだけにも使用できる。図9〜12で例示されたように、回すことを軸方向の後退と組み合わせることもできる。
【0031】
本発明は、以下のクレームの範囲内でいろいろな形に変形することができる。したがって、ルーズトップのピンが中心合わせのためだけに用いられる場合、ねじのための上述したショルダー表面は全く省くことができる。そのような場合、ねじは接触表面に対向する第2の表面に押しつけることができ、それが孔壁から離れている(clears from)限り、どんなデザインであってもよい。基体のセンターホールも、穴の断面積がピンの断面積より大きい限り、真に円筒状である必要はない。したがって、穴は、ピンの接触表面を押しつけることができる部分円筒表面を含むことだけが必要とされる。さらに、“接触表面”という概念は広い意味で解釈すべきであり、表面の形が孔壁との完全な面接触を与えるか、又は部分接触(例えば、図8の例による線接触)しか与えないかに関わりなく、任意の凸表面形態を含むと考えられる。完全を期して、本発明は、穴あけ工具、特にシャンクエンドミルなどのフライス削り工具以外の他の回転可能なルーズトップ工具にも適用できるということを指摘しておかなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り屑除去機械加工のための回転工具であって、
一方において、前端と後端(4,5)を有し、前端と後端(4,5)の間に第1の中心軸(C1)が延伸し、第1の中心軸(C1)の回りで回転できる基体(1)を備え、
他方において、前端と後端(9,10)を含み、前端と後端(9,10)の間に第2の中心軸(C2)が延伸しているルーズトップ(2)を備え、
基体(1)の前端は、トルクを伝達する二つのドライバ(17a、17b)と中間底面(18)とによって画定されるジョー(16)を含み、ジョー(16)はルーズトップ(2)の一部を受け入れることができ、
ルーズトップから軸方向後方に突出するセンタリングピン(20)が、ジョー(16)の底面(18)に開口するセンターホール(19)に挿入可能であり、
センターホール(19)は基体の内側に軸方向に延びる孔壁を有し、孔壁にセンタリングピン(20)と協同動作するねじ(23)のためのねじ溝付き穴(22)が開口している回転工具において、
センタリングピン(20)が、センターホール(19)の断面積より小さな断面積を有し、直径方向で対向する二つの接触表面(29,33)を含み、第1の表面(29)は二つの軸方向に延びる境界母線(31a,31b)の間で接線方向に延びる接触表面(29)を構成し、境界母線は中心がルーズトップの中心軸(C2)と合致する仮想円(S1)に沿って位置し、境界母線(31a,31b)の間の円弧角が180°より小さく、境界母線を介して、外接円から内向きに間隔があいている第2の表面(33)に移行することを特徴とする工具。
【請求項2】
ピン(20)の第2の表面(33)は、ピンに回す力を加えるためにねじ(23)に向いているショルダー表面(32c)を含み、ショルダー表面(32c)が境界母線(31a,31b)から延びる二つの逃げ面(32a,32b)によって囲まれる、ことを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項3】
ルーズトップ(2)のピン(20)のショルダー表面(32c)が平面である、ことを特徴とする請求項2に記載の工具。
【請求項4】
ねじ(23)の中心軸(C3)が、径方向に工具の中心軸(C)の方へ向けられたねじ溝付き穴(22)に配置され、ルーズトップ(2)のピン(20)が、ドライバ(17a,17b)の間の最初の位置で、平面のショルダー表面(32c)がねじ溝付き穴(22)の中心軸(C3)と鈍角(β)を成すように調整される、ことを特徴とする請求項3に記載の工具。
【請求項5】
ルーズトップ(2)のピン(20)のショルダー表面(32c)がピンの自由な後端(20a)から前方へ延びている、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の工具。
【請求項6】
ルーズトップのピンの平面のショルダー表面(32c)の軸方向背後に、傾斜したチャンファー表面(37)が存在し、それによって軸方向に引く力をピンに加えることができる、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工具。
【請求項7】
センターホール(19)の孔壁、及びルーズトップ(2)のピンの接触表面(29)、が円筒状である、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の工具。
【請求項8】
センターホール(19)の孔壁が円筒状であり、ルーズトップ(2)のピンの接触表面(29)が楕円状である、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の工具。
【請求項9】
ルーズトップのピンの二つの逃げ面(32a,32b)が含まれる第2の表面(33)が、その中心(M)が工具の中心軸(C)に対して偏心している第2の仮想円(S2)によって定められる円筒状の基本形を有する、ことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の工具。
【請求項10】
切り屑除去機械加工用の回転工具のためのルーズトップであって、前端と後端(9,10)を含み、前端と後端(9,10)の間に中心軸(C2)が延伸し、センタリングピン(20)がルーズトップから軸方向後方に突出しているルーズトップにおいて、
センタリングピン(20)が二つの直径方向で対向する表面(29,33)を含み、
その第1の表面(29)は二つの軸方向に延びる境界母線(31a,31b)の間で接線方向に延びる接触表面(29)を構成し、
境界母線は、中心が中心軸(C2)と合致する想像上の外接円(S1)に沿って位置し、二つの境界母線間の円弧角(α)が180°より小さく、
接触表面(29)が境界母線(31a,31b)を介して外接円(S1)から内向きに間隔があいた第2の表面(33)に移行していく、ことを特徴とするルーズトップ。
【請求項11】
第2の表面(33)がショルダー表面(32c)を含み、それによって回す力をセンタリングピンに加えることができ、ショルダー表面は境界母線(31a,31b)から延びる二つの逃げ面(32a,32b)によって囲まれる、ことを特徴とする請求項10に記載のルーズトップ。
【請求項12】
ショルダー表面(32c)が平面であり、外接円の内側でコード状に延びている、ことを特徴とする請求項11に記載のルーズトップ。
【請求項13】
ショルダー表面(32c)がセンタリングピンの自由端(20a)から前方に延びている、ことを特徴とする請求項11又は12に記載のルーズトップ。
【請求項14】
平面のショルダー表面(32c)の軸方向背後にチャンファー表面(37)が存在し、それがショルダー表面(32c)に対して傾斜し、それによって軸方向引っ張り力をセンタリングピンに加えることができる、ことを特徴とする請求項11又は12に記載のルーズトップ。
【請求項15】
接触表面(29)が円筒状である、ことを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載のルーズトップ。
【請求項16】
接触表面(29)が楕円状である、ことを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載のルーズトップ。
【請求項17】
第2の表面(33)が円筒状の基本形を有し、それが第2の円(S2)によって定められ、その中心(M)が中心軸(C2)に対して偏心している、ことを特徴とする請求項11〜16のいずれか1項に記載のルーズトップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−5631(P2011−5631A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142885(P2010−142885)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】