説明

切り餅

【課題】この発明は、焼き上がりを均等膨張した美しい姿とすることを目的としたものである。
【解決手段】この発明は、平面方形の餅体の上面及び下面並びに対向する二側面へ切り込みを入れた切り餅において、上面及び下面の中央部に側面と平行に切り込みを入れ、前記二側面の切り込みは斜の切り込みを交叉させるように入れたことを特徴とする切り餅により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、平面方形の切り餅の上面及び下面並びに両側面に切り込みを入れた切り餅に関する。
【背景技術】
【0002】
従来切り餅を焼いた場合に、不均等膨化を防止する為に、上面又は上下面に十字状の切り込みを入れ、或いは側面に上面と平行な切り込みを入れる技術が知られている。
【特許文献1】特許第3620045号
【特許文献2】特許第3817255号
【特許文献3】特許第4111382号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来切り餅の上下面に十字の切り込みを入れると共に、長側面へ深さを切り餅の厚さの30〜40%の切り込みを入れた切り餅の提案がある(特許文献1)。また餅体の周側面へ前後深さの異なる切り込みを入れた餅の提案がある(特許文献2)。
【0004】
更に餅体の側面に環状の切り込み部を設け、又は対向二側面に切り込み部を設けた餅の提案がある(特許文献3)
前記従来の発明においては、側面の切り込みを深くしたり、環状の切り込みにしたりして、焼いた際の均等な膨化の達成を目指している。この発明は、上面及び下面に切り込みを入れると共に、側面には環状の切り込みでもなく、切り込みを深くするものでもなく、切り込みを斜めにかつ交叉して設けることにより、各部均等な膨化を達成したのである。
【0005】
元来切り餅は餅搗きにより得られるので、品質は均等であるが、気泡の偏在、又は粘性の不均等、或いは熱伝導の不均等など、僅かな膨張力の不均等により、不均等膨張を生じ易くなる。これを防止する為に、前記従来の発明のように、切り込みを環状に設けたり、切り込み深さに工夫を加えているが、悉く均等膨化を達成させるのは困難であった。
【0006】
前記従来の技術において、切り込みを環状に設けるには、加工工程を1工程増加となり、切り込み深さを大きくするには、切断時に特別の配慮を必要とするなどの加工上の問題点があった。また餅の均質性、焼成時の熱伝導の不均一などによって、前記従来の切り込みであっても不均等膨張を生じるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、切り餅の上面及び下面並びに両側面に切り込みを入れ、前記両側面の切り込みは、斜の切り込みを交叉させて設けることにより、餅搗き、焼成その他の原因により不均等膨張を生じ易い場合であっても、各切り込みから蒸気が抜け易くなり、結果的に均等膨張し、美しい姿の焼き上がりを期待できることに成功したのである。
【0008】
即ちこの発明は、平面方形の餅体の上面及び下面並びに対向する二側面へ切り込みを入れた切り餅において、上面及び下面の中央部に側面と平行に切り込みを入れ、前記二側面の切り込みは斜の切り込みを交叉させるように入れたことを特徴とする切り餅である。
【0009】
前記において、切り餅は平面矩形が多いが、正方形でも同一効果があるため、平面方形の餅体とした。
【0010】
また、平面矩形の餅体の上面及び下面並びに対向する二側面へ切り込みを入れた切り餅において、上面及び下面の中央部に側面と平行に切り込みを入れ、前記二側面には斜の切り込みを交叉させるように入れると共に、上下面方向を向く斜の切り込みの上下端は、上面又は下面に到達しないようにしたことを特徴とする切り餅であり、上面及び下面中央の切り込みは十字状としたものであり、二側面は長側面とし、長側面の切り込みは、上面又は下面に対し、10度〜80度に傾斜させたものであり、側面の切り込みの深さは1.0mm〜5.0mmとしたものである。
【0011】
この発明における斜の切り込みの角度は、前記のように上面又は下面に対し10度〜80度であり、好ましくは20度〜50度である。前記角度が10度以下になると、各斜線を所定の間隔(例えば5mm〜10mm)にすると、切り餅の側面に設ける斜線の数が少なくなるのみならず、交点の数も少なくなって、不均等膨張を生じ易くなる。また前記角度が80度以上になると、同一ピッチでは切り込みの数が多くなるが、前記切り込みが餅の膨化を妨げ、加熱空気が抜けにくくなり、不均等膨張を生じやすくなるので好ましくない。
【0012】
次に切り込みの深さが前記のように1.0mm〜5.0mmで良いのは、切り餅の側面は切断面(切断刃で切断した面)であって、餅の内部と同質(表面硬化などの変質)であるから、膨張力が均等であって、平均的膨張が容易となる。また四周側面へ切り込みを設けても、効果は変わらないので、対向二側面に設けた。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、餅体の上下面に切り込みを設けると共に、二側面に斜の切り込みを交叉して設けたので、餅を焼いた時に均等に膨張し、一部分の異常膨張を防止し均等に膨化し得る効果がある。
【0014】
また切り込みは比較的浅く、かつ対向二側面のみに設ければ十分であるから(矩形形餅の場合には長側面に設けるのが普通である)、加工が簡単であり、製品の製造に際し、工程増加の必要なく、かつ高速加工ができるので、効率を向上し得るなどの諸効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明は、平面矩形の餅体の上面及び下面並びに両長側面へ切り込みを入れた切り餅において、上面及び下面の中央部に側面と平行な切り込みを入れると共に、両長側面には斜の切り込みを交叉させるように入れ、長い切り込みには交点が設けられるようにしたものである。また前記切り込みの深さは1.0mm〜5.0mmとした。
【0016】
前記は平面矩形の切り餅について説明したが、平面正方形であれば、対向する側面の何れか一対(前後側面又は左右側面)に設けることにより、膨張の均等化を達成することができる。
【0017】
従って、矩形切り餅の場合に短側面に切り込みを入れても、効果上大差はない。何故ならば、長側面と対側面との長さの相違が20mm(60mm×40mm)程度であり、何れも切断肌であって、膨張に対する抵抗力は殆ど同一であるから、不均等膨張防止について大差がないからである。然し乍ら、矩形切り餅の場合には長側面に切り込みを設けることが好ましいのは、内部との膨張抵抗力の差をより少なくできるからである。
【0018】
前記切り込みの深さは、餅の状態によっても異なるが、2mm〜4mmが好ましい。例えば深さが1mm未満になると、蒸気の抜け具合が不均等になり易く、深さ5mmを越えても、蒸気の抜け具合に大差がないからである。また深さが4mmに達すると、切り込みの先端に微小亀裂を生じ、蒸気の抜け具合を良好にする場合もある。
【実施例1】
【0019】
この発明の実施例を図1について説明すると、餅体1の上面及び下面に十字切り込み4、4を設け、長側面1a、1bに角度30度の切り込み2a、2bを交叉するように設けてこの発明の切り餅5を構成した。隣接切り込みの間隔(垂直方向)Lは6mm前後とする。但しLの寸法を限定する必要はない。
【0020】
前記実施例は交点3,3が1本の切り込み線上に3個以上あるが、3個以下でも十分目的(膨張の均等化)を達成することができる。前記交点の数に限定する実益がないので、1本の切り込みについて1〜2個あれば十分と考える。
【0021】
前記実施例の切り餅を、通常の要領で焼成すると、図1(c)のようにほぼ均等に膨張し、美しい外観の焼き餅6ができる。
【0022】
餅体の上面及び下面中央部へ十字状の切り込み4を入れ、側面中央部へ上面と平行な切り込み7を入れても均等に膨化する場合もあるが、不均等膨張8のようになる場合もある(図1(d))。要するに前記実施例(図1(c))のようにすれば、均等に美しく膨化する公算が大きいが、従来例(図1(d))の場合には、不均等膨化の場合も少なくないということである。
【0023】
前記実施例の両側面の切り込みによって多数の菱形ができるが、切り込みの角度により、菱形の形状も異なるが、この形状による差はない。
【実施例2】
【0024】
この発明の他の実施例を図2について説明すると、餅体1の上面及び下面に十字切り込み4、4を設け、長側面1a、1bに角度30度の切り込み2a、2bを交叉するように設け、前記切り込み2a、2bの上下端と、上下面とは夫々間隔Hをおいたものである。この間隔Hを設けたのは、前記切り込み2a、2bを入れる際に上面又は下面と交叉させると、該交叉部(c、d点)の餅が若干崩れるおそれがあるからである。
【0025】
前記切り込み2a、2bが上面1c又は下面1dに達しなくとも蒸気を抜く効果には変化はない。また図2(b)中Hは1mm〜3mmであり、通常2mm程度とする。
【0026】
前記実施例1と、この実施例2との差は、前記切り込みが上面1c又は下面1dに達するか否かの差であり、他は同一であるから、前記以外の説明は実施例1によるものとする。この実施例2は、前記斜の切り込みが上面及び下面に達しないので、切り込み部分から欠けるおそれが皆無になった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)この発明の実施例の斜視図、(b)同じく正面図、(c)同じく焼成した縮小斜視図、(d)同じく従来の切り餅の焼成した斜視図。
【図2】(a)同じく他の実施例の斜視図、(b)同じく正面図。
【符号の説明】
【0028】
1 餅体
2a、2b 切り込み
3 交点
4 十字切り込み
5 切り餅
6 焼き餅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面方形の餅体の上面及び下面並びに対向する二側面へ切り込みを入れた切り餅において、上面及び下面の中央部に側面と平行に切り込みを入れ、前記二側面の切り込みは斜の切り込みを交叉させるように入れたことを特徴とする切り餅。
【請求項2】
平面矩形の餅体の上面及び下面並びに対向する二側面へ切り込みを入れた切り餅において、上面及び下面の中央部に側面と平行に切り込みを入れ、前記二側面には斜の切り込みを交叉させるように入れると共に、上下面方向を向く斜の切り込みの上下端は、上面又は下面に到達しないようにしたことを特徴とする切り餅。
【請求項3】
上面及び下面中央の切り込みは十字状としたことを特徴とする請求項1又は2記載の切り餅。
【請求項4】
二側面は長側面とし、長側面の切り込みは、上面又は下面に対し、10度〜80度に傾斜させたことを特徴とする請求項1又は2記載の切り餅。
【請求項5】
側面の切り込みの深さは1.0mm〜5.0mmとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の切り餅。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−94065(P2010−94065A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266864(P2008−266864)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(592221920)株式会社きむら食品 (6)
【Fターム(参考)】