切刃付き容器およびピン
【課題】容器から切刃のみを嵩張ることなく分離させる。
【解決手段】紙製の容器本体10と、容器本体10に設けられた切刃20とを備え、切刃20は、ほぼ一定幅の薄肉金属板であって、容器本体10とは反対側へ引くことにより剥離方向Dに剥がすことが可能であって、その方向に容器本体10へ固定するための複数の固定部22を有し、各固定部22のそれぞれが、矩形領域Aを2つの対角線で切断して設けられた4つの三角片23、24、25、26を、剥離方向Dの上流側と下流側とにそれぞれ2つずつ配した状態に有し、4つの三角片のうちの1つであって下流側のもの23が、他の3つの三角片24、25、26よりも食い込み深さを浅くなしていて、その食い込み深さが浅い三角片23を有する下流側2つの三角片による引き抜き強度Y1が、上流側の2つの三角片による引き抜き強度Yよりも小さく、これにより切刃20が弾性変形の範囲内で剥がされる。
【解決手段】紙製の容器本体10と、容器本体10に設けられた切刃20とを備え、切刃20は、ほぼ一定幅の薄肉金属板であって、容器本体10とは反対側へ引くことにより剥離方向Dに剥がすことが可能であって、その方向に容器本体10へ固定するための複数の固定部22を有し、各固定部22のそれぞれが、矩形領域Aを2つの対角線で切断して設けられた4つの三角片23、24、25、26を、剥離方向Dの上流側と下流側とにそれぞれ2つずつ配した状態に有し、4つの三角片のうちの1つであって下流側のもの23が、他の3つの三角片24、25、26よりも食い込み深さを浅くなしていて、その食い込み深さが浅い三角片23を有する下流側2つの三角片による引き抜き強度Y1が、上流側の2つの三角片による引き抜き強度Yよりも小さく、これにより切刃20が弾性変形の範囲内で剥がされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば軸部材に巻回した樹脂フィルムを内蔵するとともに、解いた樹脂フィルムを切断する切刃を備えた切刃付き容器およびその切刃付き容器の製造に用いる新規なピンに関する。
【背景技術】
【0002】
上述した切刃付き容器は、内蔵する樹脂フィルムが無くなると廃棄される。その廃棄に際して、リサイクルにより省資源化を図るべく紙製容器から金属製切刃を分離している。その分離の仕方として、切刃が固定された紙製容器の一部を、切刃と一緒に紙製容器から切り落す方式が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−171177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した提案方式による場合には、金属製切刃を紙製容器の一部と一緒に廃棄することになるため、切刃と容器の一部との材質分離が不十分でリサイクル上問題があった。
【0005】
そこで、金属製切刃のみを紙製容器から剥がすことが考えられる。これにより、紙と金属とを完全に分離させることが可能になり、リサイクルし易い状況にできることとなるが、実際には剥がした切刃が大きく湾曲して嵩張るという難点があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、容器から切刃のみを嵩張ることなく分離させ得る切刃付き容器およびピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の切刃付き容器は、軸部材に巻回した樹脂フィルムを内蔵する紙製の容器本体と、その容器本体のフィルム引出し口の縁部近傍であって引出し口の縁に沿う状態で剥離可能に設けられ、所望長さ分だけ引出した樹脂フィルムを切断する切刃とを備え、前記切刃は、ほぼ一定幅の薄肉金属板であって、容器本体とは反対側へ引くことにより引出し口の縁に沿う剥離方向に剥がすことが可能であって、その方向に容器本体へ固定するための複数の固定部を有し、各固定部のそれぞれが、矩形領域を2つの対角線で切断して設けられた4つの三角片を、前記剥離方向の上流側と下流側とにそれぞれ2つずつ配した状態に有し、前記4つの三角片のそれぞれが、前記2つの対角線の交点に対応する頂点部分を反対側に向け、紙製の容器本体に食い込むように折り返されるとともに、前記4つの三角片のうちの1つであって下流側のものが、他の3つの三角片よりも食い込み深さを浅くしていて、その食い込み深さが浅い三角片を有する下流側2つの三角片による引き抜き強度が、上流側の2つの三角片による引き抜き強度よりも小さく、これにより切刃が弾性変形の範囲内で剥がされるように構成されていることを特徴とする。本発明による場合には、同一の固定部において、剥離方向上流側の2つの三角片による引き抜き強度が高く、一方剥離方向下流側の2つの三角片による引き抜き強度が低いので、切刃を容器本体とは逆方向に引いて、上流側の2つの三角片を容器本体から剥離させる引き剥がし強度は高く、下流側の2つの三角片を容器本体から剥離させる引き剥がし強度は低くなる。よって、剥離する際に、剥離方向上流側の2つの三角片を容器本体から剥離させた力により、剥離方向下流側の2つの三角片を容器本体から容易に剥離させることができることになる。よって、切刃を屈曲しない状態で、つまり弾性変形の範囲内で引くことができ、容器本体と完全に分離させた切刃が真っ直ぐ、またはそれに近い状態になり、容器から切刃のみを嵩張ることなく分離させ得る。
【0008】
この構成の切刃付き容器において、前記下流側の2つの三角片のうちの食い込み深さが浅いものが、もう一つの三角片よりも前記切刃の刃先に近い側に配されていることが好ましい。この構成による場合には、フィルムを切断する際に、刃先に近い側に配されている三角片を支点として刃先から遠い側に配されている三角片に、フィルムを引っ張る力が大きく作用するが、刃先から遠い側に食い込み深さが大きい三角片を配し、刃先に近い側に食い込み深さが浅い三角片を配しておくことで、フィルム切断に伴って切刃が容器本体から剥離するのを防止することが可能になる。
【0009】
本発明のピンは、刃付き容器を構成する切刃に設ける4つの三角片を有する固定部を形成するためのピンであって、前記矩形領域に応じた矩形断面を有し、先端部が概略四角錐状に尖っているとともに、前記矩形領域の1辺に対応する1側面の軸心に対する第1傾斜角が、他の3側面の前記軸心に対する第2傾斜角よりも小さくなっていることを特徴とする。本発明のピンにあっては、小さい第1傾斜角の1側面が他の3側面に比べてピンの軸方向の長さが長いため、この小さい第1傾斜角の1側面とこの側面により形成される三角片との接触が、他の側面と他の側面により形成される三角片との接触よりも長くなり、大きく折り返えされ、折り返し部分が大きく倒れる状態になる。よって、容器本体に三角片を食い込ませる場合に、その食い込み深さを浅くすることが可能になる。
【0010】
この構成のピンにおいて、前記第1傾斜角が25゜〜29゜、前記第2傾斜角が第1傾斜角よりも2゜以上大きくかつ27゜〜33゜であることが好ましい。この構成による場合には、4つの三角片が、容器本体に食い込ませたときに、その食い込み深さを丁度よい寸法に調整でき、これにより引き抜き強度を、切刃に屈曲が発生しない弾性変形の範囲内で切刃を剥離させ得る値に調節することが可能になる。
【0011】
また、この構成のピンにおいて、概略四角錐状の先端部に繋がる基端側部分の四隅の角部が丸く形成されていることが好ましい。このピンによる場合には、形成された固定部の上流側三角片と下流側三角片との繋ぎ目が円弧状になり、その円弧状の部分で切刃に屈曲が発生し難くすることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による場合には、同一の固定部において、剥離方向上流側の2つの三角片による引き抜き強度が高く、一方剥離方向下流側の2つの三角片による引き抜き強度が低いので、切刃を屈曲しないように弾性変形の範囲内で引き剥がすことができ、容器から切刃のみを嵩張ることなく分離させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る切刃付き容器を示す外観斜視図である。
【図2】図1の切刃付き容器の展開図である。
【図3】切刃の固定状態を示す図である。
【図4】切刃の引き剥がし状態の説明図である。
【図5】切刃の固定部を示す図である。
【図6】切刃の固定部を形成するピンを示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図7】図6のピンの先端部の説明図(拡大図)である。
【図8】図6のピンによる固定部の形成過程を示す図である。
【図9】図8に示すようにして形成された三角片のかしめ過程を示す図である。
【図10】同一の固定部の4つの三角片を全て同一条件で形成した場合に屈曲が発生する理由を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施形態による場合に屈曲が発生しない理由を説明するための図である。
【図12】図2に示す切刃付き容器の製造ラインの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態につき具体的に説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る切刃付き容器を示す外観斜視図であり、図2は図1の切刃付き容器の展開図、図3は切刃の固定状態を示す図、図4は切刃の引き剥がし状態の説明図、図5は切刃の固定部を示す図である。
【0016】
この切刃付き容器1は、軸部材2に巻回した樹脂フィルム3を内蔵する紙製の容器本体10と、樹脂フィルムを切断する切刃20とを備える。容器本体10は、図示例では、5つの広面10a、10b、10c、10d、10eのうち、2つの広面10a、10eが互いに対向しかつ貼着されている。また、一方の広面10aの内面側には切刃20が取付けられるとともに、広面10aの切刃20よりも外側が切り取り部Aとなっている。そして、使用するに際して、切刃20の刃先21を露出させるべく、前記切り取り部Aが切り取られる。また、切り取り部Aの切り取りにより、切刃20の刃先21が露出するとともに容器本体10が開封される。その開封により、前記2つの広面10a、10eの間に、フィルム3を引き出すための引出し口11が形成される。
【0017】
前記切刃20は、ほぼ一定幅の薄肉金属板、例えばブリキ板であって、引出し口11の縁(切り取り部Aが切り取られた後の広面10aの端)11aに沿って設けられ、切刃20の長さは引出し口11の縁11aよりも少し短くなっている。前記刃先21は引出し口11から少し露出(突出)させてあって、引出し口11から引き出したフィルム3を容器本体10とは反対側へ引くと、刃先21がフィルム3を切断するように構成されている。
【0018】
前記切刃20は、容器本体10へ固定するための複数の固定部22を有するとともに(図3参照)、容器本体10とは反対側へ引くことにより引出し口11の縁11aに沿う剥離方向Dに剥がすことが可能である。本実施形態における剥離方向Dは、図4に示すように、引出し口11を開いて切刃20を上向きかつ手前側にした状態で右方から左方へ向かう方向である。なお、逆向きにしてもよい。
【0019】
各固定部22は、それぞれ矩形領域Aを2つの対角線B1、B2で切断して設けられた4つの三角片23、24、25、26を、剥離方向Dの上流側と下流側とにそれぞれ2つずつ配した状態に有する。
【0020】
前記4つの三角片23、24、25、26のそれぞれは、図5に示すように前記2つの対角線B1、B2の交点Oに対応する頂点部分23a、24a、25a、26aを交点Oとは反対側に向け、紙製の容器本体10に食い込むように折り返されるとともに、前記4つの三角片23〜26のうちの1つであって下流側のもの23が、他の3つの三角片24〜26よりも食い込み深さを浅くなしている。そして、その食い込み深さが浅い三角片23を有する下流側2つの三角片23、24による引き抜き強度が、上流側の2つの三角片25、26による引き抜き強度よりも小さくなっている。なお、上記食い込みについては、後述する。
【0021】
このような構成の4つの三角片23〜26は、図6及び図7に示すピン30により図8に示すような「切り起こし」と、図9に示すような容器本体10への「かしめ」とにより形成される。
【0022】
ピン30は、断面が矩形状、本実施形態では正方形状の金属棒の先端(上端)が四角錐状に尖った切起部(先端部)31を有し、4つの切起面33、34、35、36を備える。ここで、ピン30を切刃の素材に刺し通すことにより、切起面33と切起面34の間の峰37aと、切起面35と切起面36の間の峰37bとが、前記対角線B1の箇所を切断し、切起面34と切起面35の間の峰37cと、切起面36と切起面33の間の峰37dとが、前記対角線B2の箇所を切断する。この切断に伴って切起面33により三角片23が形成され、切起面34により三角片24が、切起面35により三角片25が、切起面36により三角片26がそれぞれ形成される。
【0023】
上記ピン30は、切起面33の軸心Mに対する第1傾斜角θ1を、同じ角度である他の3つの切起面34、35、36の軸心Mに対する第2傾斜角θ2よりも小さくしている。なお、図7中の二点鎖線は第2傾斜角θ2と同じ角度を表している。よって、切起面33の長さL1が、他の3つの切起面34、35、36の長さL2よりも長くなっている。なお、第1傾斜角θ1は25゜〜29゜の範囲内で選ばれ、第2傾斜角θ2は、第1傾斜角θ1よりも2゜以上大きく、かつ27゜〜33゜の範囲内で選ばれる。
【0024】
また、軸心M上の位置から、その位置を通る軸心Mに対する垂線が切起面33を横切る位置までの距離N1が、同じ軸心M上の位置から、その位置を通る軸心Mに対する垂線が切起面35を横切る位置までの距離N2よりも小さくなる。
【0025】
図8は、このピン30による切り起こし過程を示し、(a)は初期状態を、(b)は途中状態を、(c)は終盤状態を、(d)は最終的に三角片が形成された状態を示す。なお、図8の左側は三角片23の形成過程を表し、同右側は三角片25の形成過程を表す。
【0026】
図8(a)の初期状態では、矩形領域Aの中心である交点Oに、対角線B1、B2に沿った十字状の切り目が形成される。
【0027】
続いて、図8(b)の途中状態では、ピン30の進入に伴って対角線B1、B2に沿った十字状の切り目が徐々に大きくなる。つまり、形成途中の三角片23の大きさと、形成途中の三角片25の大きさが徐々に大きくなる。このとき、前記距離N1が距離N2よりも小さいので、図右側の形成途中の三角片25に対して図左側の形成途中の三角片23はサイズ的に小さく、カーブ(曲がり)が大きい。
【0028】
続いて、図8(c)の終盤状態では、切起面35の終端での切り起こしがほぼ終了しているものの、切起面33ではその後においても切り起こしが続行される状態となっている。つまり、図右側の三角片25はそれ以上大きくなることがないが、図左側の三角片23はこのタイミングでは形成途中であって、対角線B1、B2に沿った十字状の切り目が更に形成されるために、これ以降においても大きくなる。
【0029】
続いて、図8(d)の最終状態では、図右側の三角片25は少し外側(矩形領域Aの外側)に倒れ加減となった切り起こし姿勢になり、図左側の三角片23は三角片25よりも大きく外側に倒れた状態の切り起こし姿勢になる。その後、ピン30は引き抜かれる。上述の三角片23の切り起こし姿勢の傾きは、切起面33の角度、つまり第1傾斜角θ1の大きさに基づいて決まり、一方の三角片25の切り起こし姿勢の傾きは、切起面35の角度、つまり第2傾斜角θ2の大きさに基づいて決まる。よって、三角片23を三角片25よりも大きく外側に倒れた状態の切り起こし姿勢にすべく、第1傾斜角θ1を第2傾斜角θ2よりも小さくしている。
【0030】
なお、他の2つの三角片24、26は、三角片23に近い部分では三角片23の影響を受け、三角片25に近い部分では三角片25の影響を受けるため、三角片23寄りの部分と三角片25寄りの部分とで形状が少し異なるものの、三角片24と三角片26は軸心Mを通る対称面を挟んで面対称に形成される。また、三角片24と三角片26の切り起こし姿勢は、三角片25にほぼ近い状態に形成される。
【0031】
図9に、切刃に対して容器本体を相対的に接近させ、容器本体に対して三角片をかしめる過程を示す。なお、この図9では、便宜上、三角片23と25をかしめる場合を示す。この図において、(a)、(c)、(e)は三角片23をかしめる場合で、(b)、(d)、(f)は三角片25をかしめる場合である。また、(b)は容器本体10に三角片25が当接した状態を表し、(a)は三角片25が容器本体10に当接したタイミングにおける三角片23の状態を表し、(c)、(d)はかしめの途中状態を表し、(e)、(f)はかしめが終了した状態を表している。また、容器本体の切刃とは反対側(図9の上側)には、図示しない押し当て部材が押し当てられている。
【0032】
この図9より理解されるように、(a)、(b)に示すように、容器本体10に三角片25が当接したとき、三角片25よりも大きく倒れた切り起こし姿勢の三角片23は容器本体10との間に隙間がある。その後、容器本体10と切刃とを接近させると、その接近に伴って三角片25が徐々に外側に倒れていき、容器本体10に三角片25の先端が食い込んでいく((d)参照)。このように三角片の先端が容器本体10の中を通ることを食い込みといい、図9中の12が食い込み部分である。一方、始めから三角片25よりも大きく倒れた切り起こし姿勢の三角片23は、その先端が容器本体10へ向かずに容器本体10にほぼ平行な状態で容器本体10に食い込み始めるので、容器本体10への食い込み量が三角片25の場合よりも極めて少ない状態になる。したがって、かしめが終了した状態において、三角片25は容器本体10への食い込み量が大きく(食い込み部分12の量が大きく)、引き抜き強度が大きい。一方の三角片23は、容器本体10への食い込み量が小さく(食い込み部分12の量が小さく)、引き抜き強度が小さい。なお、説明は省略するが、三角片24、26の容器本体10への食い込み量は、三角片25の容器本体10への食い込み量よりも小さく、三角片23の容器本体10への食い込み量よりも大きくなり、三角片24、26の引き抜き強度は、三角片25の引き抜き強度と、三角片23の引き抜き強度との間の値になる。
【0033】
したがって、同一の固定部において、剥離方向Dの上流側の2つの三角片25、26による引き抜き強度に対し、剥離方向Dの下流側の2つの三角片23、24による引き抜き強度を小さくすることができるので、以下に説明するように、切刃を引き剥がすときに屈曲が発生しないようにできる。すなわち、図10に示すように同一の固定部の4つの三角片27を全て、上述した実施形態の前記三角片25と同一条件で形成した場合には、剥離方向Dの上流側の2つの三角片27、27では引き抜き強度Yが非常に強くなり、また下流側の2つの三角片27、27でも引き抜き強度Yが同じく非常に強くなる。このため、上流側の2つの三角片27、27を引き剥がす力は、切刃20が大きく屈曲しないために小さい引き剥がし強度Xで済むが、一方、下流側の2つの三角片27、27を引き剥がす力は、切刃20における幅方向の端20aから固定部22までの距離が最も短いL3(L4)のところ、つまり最小幅の部分28で、塑性変形を起こして屈曲するために大きい引き剥がし強度X2(>X)になる。そのために、上流側の2つの三角片27、27を引き剥がした後に、上流側の2つの三角片27、27と下流側の2つの三角片27、27との間の最小幅の部分28で切刃20が大きく屈曲して屈曲(折れ曲がり)が発生する。これに対して、本実施形態において図11に示すように、剥離方向Dの上流側の2つの三角片25、26による引き抜き強度Yに対し、剥離方向Dの下流側の2つの三角片23、24による引き抜き強度Y1(<Y)を小さく、例えば半分程度にしているので、その引き抜き強度Y1の部分では引き剥がす力として、引き剥がし強度Xよりも十分に小さい引き剥がし強度X1(<X)で引き剥がせばよく、最小幅の部分28に作用する曲げ応力が小さくなって、屈曲(折れ曲がり)の発生を防止することが可能になる。つまり、弾性変形の範囲内で切刃20を剥がすことが可能になる。そのために第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2を所定範囲に設定している。
【0034】
したがって、引き剥がされた切刃20は、元の真っ直ぐな状態に戻るため嵩張ることがなく、また容器本体10から完全に分離しているので、リサイクルし易い状態にできる。なお、図10、図11中の支点1は、剥離方向Dの上流側の2つの三角片25、26を引き剥がすときの支点を示し、同支点2は剥離方向Dの下流側の2つの三角片23、24を引き剥がすときの支点を示す。
【0035】
図12は、上述した切刃付き容器1の製造ラインを示す模式図である。
【0036】
紙から所定の形状の容器本体10に形成し搬送する第1ライン40と、巻回されたブリキコイル41を解きつつ第1ライン40の下側に配した切断機42に逆方向から導く第2ライン43と、ブリキコイル41の幅方向の片方の端部に貼着される樹脂テープ44を、第2ライン43の切断機42よりも上流側に案内する第3ライン45とを備える。上記樹脂テープ44は、図2及び図4に示すように切刃20の片端に取付けてあり、これを把持して切刃を引き剥がすためのものである。切断機42は一定高さ位置に設けた固定刃42aと、昇降可能に設けた移動刃42bとを有して構成され、移動刃42bは昇降部材46により昇降される。また、昇降部材46における第2ライン43の搬送方向上流側に、ブリキコイル41の幅方向に複数のピン30が設けられていて、これら複数のピン30は、昇降台47の上に一列に配置されている。
【0037】
この製造ラインにあっては、第2ライン43により搬送されてきたブリキコイル41の先端部に、昇降台47を上昇させてピン30によりブリキコイル41の幅方向に複数の固定部を形成する。この段階では、各固定部の4つの三角片は切り起こされた状態にまて形成されている。続いて、ブリキコイル41を少し送り出して、昇降部材46を上昇させて切断機42によりブリキコイル41を切断し、切刃20を作製する。固定刃42aと移動刃42bには、ギザギザ状の刃先21を形成する刃が設けられている。続いて、昇降部材46を更に上昇させる。この上昇以前に、第1ライン40により作製された所定の形状の容器本体10が第1ライン40に設けたストッパ48により所定位置に止められていて、上記昇降部材46の上昇により、固定部の4つの切り起こされた状態の三角片をかしめる。上記ストッパ48は、容器本体10を前記所定位置に止めるときに降下し、その他のときは上昇する。第1ライン40におけるライン上側には、ストッパ48で止められた容器本体10を上側から押し当てる前述した押し当て部材49が設けられている。
【0038】
この製造ラインにより、本実施形態の切刃付き容器1を連続して製造することが可能になる。
【0039】
また、本実施形態では、図3に示したように、下流側の2つの三角片のうちの食い込み深さが浅いもの23が、もう一つの三角片24よりも切刃20の刃先21に近い側に配されている。この理由は、フィルムを切断する際に、刃先21にフィルムを切断する力が作用するが、その力が、引出し口11の縁11aを支点として各々の三角片23、24、25、26に対し引き抜く力として作用するので、刃先21から遠い側に食い込み深さが最も大きい三角片25を配し、刃先21に近い側に食い込み深さが浅い三角片23を配しておくことで、フィルム切断に伴って切刃20が容器本体10から外れるのを防止することが可能になるからである。
【0040】
また、上述した実施形態では、図6に示すように概略四角錐状に尖っている切起部(先端部)31に繋がる部分の四隅に位置する角部32を丸く形成しているが、その理由は、以下の通りである。即ち、このピン30による場合には、図5、図11に示すように、形成された固定部22の上流側と下流側との最小幅の部分28が円弧状になり、その円弧状の部分28で切刃20に屈曲が発生し難くすることが可能になるからである。
【0041】
更に、上述した実施形態では第1傾斜角θ1は25゜〜29゜の範囲内で選ばれ、第2傾斜角θ2は、第1傾斜角θ1よりも2゜以上大きく、かつ27゜〜33゜の範囲内で選ばれるように設定した理由は、以下の通りである。即ち、4つの三角片が、容器本体に食い込ませたときに、その食い込み深さを丁度よい寸法に調整でき、これにより引き抜き強度を、切刃に屈曲が発生しない弾性変形の範囲内で切刃を剥離させ得る値に調節することが可能になるからである。
【0042】
なお、上述した実施形態ではピン30に、断面が正方形状のものを用いているが、本発明は正方形状に限らず、断面が矩形状などであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 切刃付き容器
2 軸部材
3 樹脂フィルム
10 容器本体
11 引出し口
20 切刃
21 刃先
22 固定部
23、24、25、26 三角片
23a、24a、25a、26a 頂点部分
30 ピン
A 矩形領域
B1、B2 対角線
D 剥離方向
O 交点
θ1 第1傾斜角
θ2 第2傾斜角
M 軸心
X、X1、X2 引き剥がし強度
Y、Y1 引き抜き強度
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば軸部材に巻回した樹脂フィルムを内蔵するとともに、解いた樹脂フィルムを切断する切刃を備えた切刃付き容器およびその切刃付き容器の製造に用いる新規なピンに関する。
【背景技術】
【0002】
上述した切刃付き容器は、内蔵する樹脂フィルムが無くなると廃棄される。その廃棄に際して、リサイクルにより省資源化を図るべく紙製容器から金属製切刃を分離している。その分離の仕方として、切刃が固定された紙製容器の一部を、切刃と一緒に紙製容器から切り落す方式が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−171177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した提案方式による場合には、金属製切刃を紙製容器の一部と一緒に廃棄することになるため、切刃と容器の一部との材質分離が不十分でリサイクル上問題があった。
【0005】
そこで、金属製切刃のみを紙製容器から剥がすことが考えられる。これにより、紙と金属とを完全に分離させることが可能になり、リサイクルし易い状況にできることとなるが、実際には剥がした切刃が大きく湾曲して嵩張るという難点があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、容器から切刃のみを嵩張ることなく分離させ得る切刃付き容器およびピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の切刃付き容器は、軸部材に巻回した樹脂フィルムを内蔵する紙製の容器本体と、その容器本体のフィルム引出し口の縁部近傍であって引出し口の縁に沿う状態で剥離可能に設けられ、所望長さ分だけ引出した樹脂フィルムを切断する切刃とを備え、前記切刃は、ほぼ一定幅の薄肉金属板であって、容器本体とは反対側へ引くことにより引出し口の縁に沿う剥離方向に剥がすことが可能であって、その方向に容器本体へ固定するための複数の固定部を有し、各固定部のそれぞれが、矩形領域を2つの対角線で切断して設けられた4つの三角片を、前記剥離方向の上流側と下流側とにそれぞれ2つずつ配した状態に有し、前記4つの三角片のそれぞれが、前記2つの対角線の交点に対応する頂点部分を反対側に向け、紙製の容器本体に食い込むように折り返されるとともに、前記4つの三角片のうちの1つであって下流側のものが、他の3つの三角片よりも食い込み深さを浅くしていて、その食い込み深さが浅い三角片を有する下流側2つの三角片による引き抜き強度が、上流側の2つの三角片による引き抜き強度よりも小さく、これにより切刃が弾性変形の範囲内で剥がされるように構成されていることを特徴とする。本発明による場合には、同一の固定部において、剥離方向上流側の2つの三角片による引き抜き強度が高く、一方剥離方向下流側の2つの三角片による引き抜き強度が低いので、切刃を容器本体とは逆方向に引いて、上流側の2つの三角片を容器本体から剥離させる引き剥がし強度は高く、下流側の2つの三角片を容器本体から剥離させる引き剥がし強度は低くなる。よって、剥離する際に、剥離方向上流側の2つの三角片を容器本体から剥離させた力により、剥離方向下流側の2つの三角片を容器本体から容易に剥離させることができることになる。よって、切刃を屈曲しない状態で、つまり弾性変形の範囲内で引くことができ、容器本体と完全に分離させた切刃が真っ直ぐ、またはそれに近い状態になり、容器から切刃のみを嵩張ることなく分離させ得る。
【0008】
この構成の切刃付き容器において、前記下流側の2つの三角片のうちの食い込み深さが浅いものが、もう一つの三角片よりも前記切刃の刃先に近い側に配されていることが好ましい。この構成による場合には、フィルムを切断する際に、刃先に近い側に配されている三角片を支点として刃先から遠い側に配されている三角片に、フィルムを引っ張る力が大きく作用するが、刃先から遠い側に食い込み深さが大きい三角片を配し、刃先に近い側に食い込み深さが浅い三角片を配しておくことで、フィルム切断に伴って切刃が容器本体から剥離するのを防止することが可能になる。
【0009】
本発明のピンは、刃付き容器を構成する切刃に設ける4つの三角片を有する固定部を形成するためのピンであって、前記矩形領域に応じた矩形断面を有し、先端部が概略四角錐状に尖っているとともに、前記矩形領域の1辺に対応する1側面の軸心に対する第1傾斜角が、他の3側面の前記軸心に対する第2傾斜角よりも小さくなっていることを特徴とする。本発明のピンにあっては、小さい第1傾斜角の1側面が他の3側面に比べてピンの軸方向の長さが長いため、この小さい第1傾斜角の1側面とこの側面により形成される三角片との接触が、他の側面と他の側面により形成される三角片との接触よりも長くなり、大きく折り返えされ、折り返し部分が大きく倒れる状態になる。よって、容器本体に三角片を食い込ませる場合に、その食い込み深さを浅くすることが可能になる。
【0010】
この構成のピンにおいて、前記第1傾斜角が25゜〜29゜、前記第2傾斜角が第1傾斜角よりも2゜以上大きくかつ27゜〜33゜であることが好ましい。この構成による場合には、4つの三角片が、容器本体に食い込ませたときに、その食い込み深さを丁度よい寸法に調整でき、これにより引き抜き強度を、切刃に屈曲が発生しない弾性変形の範囲内で切刃を剥離させ得る値に調節することが可能になる。
【0011】
また、この構成のピンにおいて、概略四角錐状の先端部に繋がる基端側部分の四隅の角部が丸く形成されていることが好ましい。このピンによる場合には、形成された固定部の上流側三角片と下流側三角片との繋ぎ目が円弧状になり、その円弧状の部分で切刃に屈曲が発生し難くすることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による場合には、同一の固定部において、剥離方向上流側の2つの三角片による引き抜き強度が高く、一方剥離方向下流側の2つの三角片による引き抜き強度が低いので、切刃を屈曲しないように弾性変形の範囲内で引き剥がすことができ、容器から切刃のみを嵩張ることなく分離させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る切刃付き容器を示す外観斜視図である。
【図2】図1の切刃付き容器の展開図である。
【図3】切刃の固定状態を示す図である。
【図4】切刃の引き剥がし状態の説明図である。
【図5】切刃の固定部を示す図である。
【図6】切刃の固定部を形成するピンを示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図7】図6のピンの先端部の説明図(拡大図)である。
【図8】図6のピンによる固定部の形成過程を示す図である。
【図9】図8に示すようにして形成された三角片のかしめ過程を示す図である。
【図10】同一の固定部の4つの三角片を全て同一条件で形成した場合に屈曲が発生する理由を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施形態による場合に屈曲が発生しない理由を説明するための図である。
【図12】図2に示す切刃付き容器の製造ラインの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態につき具体的に説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る切刃付き容器を示す外観斜視図であり、図2は図1の切刃付き容器の展開図、図3は切刃の固定状態を示す図、図4は切刃の引き剥がし状態の説明図、図5は切刃の固定部を示す図である。
【0016】
この切刃付き容器1は、軸部材2に巻回した樹脂フィルム3を内蔵する紙製の容器本体10と、樹脂フィルムを切断する切刃20とを備える。容器本体10は、図示例では、5つの広面10a、10b、10c、10d、10eのうち、2つの広面10a、10eが互いに対向しかつ貼着されている。また、一方の広面10aの内面側には切刃20が取付けられるとともに、広面10aの切刃20よりも外側が切り取り部Aとなっている。そして、使用するに際して、切刃20の刃先21を露出させるべく、前記切り取り部Aが切り取られる。また、切り取り部Aの切り取りにより、切刃20の刃先21が露出するとともに容器本体10が開封される。その開封により、前記2つの広面10a、10eの間に、フィルム3を引き出すための引出し口11が形成される。
【0017】
前記切刃20は、ほぼ一定幅の薄肉金属板、例えばブリキ板であって、引出し口11の縁(切り取り部Aが切り取られた後の広面10aの端)11aに沿って設けられ、切刃20の長さは引出し口11の縁11aよりも少し短くなっている。前記刃先21は引出し口11から少し露出(突出)させてあって、引出し口11から引き出したフィルム3を容器本体10とは反対側へ引くと、刃先21がフィルム3を切断するように構成されている。
【0018】
前記切刃20は、容器本体10へ固定するための複数の固定部22を有するとともに(図3参照)、容器本体10とは反対側へ引くことにより引出し口11の縁11aに沿う剥離方向Dに剥がすことが可能である。本実施形態における剥離方向Dは、図4に示すように、引出し口11を開いて切刃20を上向きかつ手前側にした状態で右方から左方へ向かう方向である。なお、逆向きにしてもよい。
【0019】
各固定部22は、それぞれ矩形領域Aを2つの対角線B1、B2で切断して設けられた4つの三角片23、24、25、26を、剥離方向Dの上流側と下流側とにそれぞれ2つずつ配した状態に有する。
【0020】
前記4つの三角片23、24、25、26のそれぞれは、図5に示すように前記2つの対角線B1、B2の交点Oに対応する頂点部分23a、24a、25a、26aを交点Oとは反対側に向け、紙製の容器本体10に食い込むように折り返されるとともに、前記4つの三角片23〜26のうちの1つであって下流側のもの23が、他の3つの三角片24〜26よりも食い込み深さを浅くなしている。そして、その食い込み深さが浅い三角片23を有する下流側2つの三角片23、24による引き抜き強度が、上流側の2つの三角片25、26による引き抜き強度よりも小さくなっている。なお、上記食い込みについては、後述する。
【0021】
このような構成の4つの三角片23〜26は、図6及び図7に示すピン30により図8に示すような「切り起こし」と、図9に示すような容器本体10への「かしめ」とにより形成される。
【0022】
ピン30は、断面が矩形状、本実施形態では正方形状の金属棒の先端(上端)が四角錐状に尖った切起部(先端部)31を有し、4つの切起面33、34、35、36を備える。ここで、ピン30を切刃の素材に刺し通すことにより、切起面33と切起面34の間の峰37aと、切起面35と切起面36の間の峰37bとが、前記対角線B1の箇所を切断し、切起面34と切起面35の間の峰37cと、切起面36と切起面33の間の峰37dとが、前記対角線B2の箇所を切断する。この切断に伴って切起面33により三角片23が形成され、切起面34により三角片24が、切起面35により三角片25が、切起面36により三角片26がそれぞれ形成される。
【0023】
上記ピン30は、切起面33の軸心Mに対する第1傾斜角θ1を、同じ角度である他の3つの切起面34、35、36の軸心Mに対する第2傾斜角θ2よりも小さくしている。なお、図7中の二点鎖線は第2傾斜角θ2と同じ角度を表している。よって、切起面33の長さL1が、他の3つの切起面34、35、36の長さL2よりも長くなっている。なお、第1傾斜角θ1は25゜〜29゜の範囲内で選ばれ、第2傾斜角θ2は、第1傾斜角θ1よりも2゜以上大きく、かつ27゜〜33゜の範囲内で選ばれる。
【0024】
また、軸心M上の位置から、その位置を通る軸心Mに対する垂線が切起面33を横切る位置までの距離N1が、同じ軸心M上の位置から、その位置を通る軸心Mに対する垂線が切起面35を横切る位置までの距離N2よりも小さくなる。
【0025】
図8は、このピン30による切り起こし過程を示し、(a)は初期状態を、(b)は途中状態を、(c)は終盤状態を、(d)は最終的に三角片が形成された状態を示す。なお、図8の左側は三角片23の形成過程を表し、同右側は三角片25の形成過程を表す。
【0026】
図8(a)の初期状態では、矩形領域Aの中心である交点Oに、対角線B1、B2に沿った十字状の切り目が形成される。
【0027】
続いて、図8(b)の途中状態では、ピン30の進入に伴って対角線B1、B2に沿った十字状の切り目が徐々に大きくなる。つまり、形成途中の三角片23の大きさと、形成途中の三角片25の大きさが徐々に大きくなる。このとき、前記距離N1が距離N2よりも小さいので、図右側の形成途中の三角片25に対して図左側の形成途中の三角片23はサイズ的に小さく、カーブ(曲がり)が大きい。
【0028】
続いて、図8(c)の終盤状態では、切起面35の終端での切り起こしがほぼ終了しているものの、切起面33ではその後においても切り起こしが続行される状態となっている。つまり、図右側の三角片25はそれ以上大きくなることがないが、図左側の三角片23はこのタイミングでは形成途中であって、対角線B1、B2に沿った十字状の切り目が更に形成されるために、これ以降においても大きくなる。
【0029】
続いて、図8(d)の最終状態では、図右側の三角片25は少し外側(矩形領域Aの外側)に倒れ加減となった切り起こし姿勢になり、図左側の三角片23は三角片25よりも大きく外側に倒れた状態の切り起こし姿勢になる。その後、ピン30は引き抜かれる。上述の三角片23の切り起こし姿勢の傾きは、切起面33の角度、つまり第1傾斜角θ1の大きさに基づいて決まり、一方の三角片25の切り起こし姿勢の傾きは、切起面35の角度、つまり第2傾斜角θ2の大きさに基づいて決まる。よって、三角片23を三角片25よりも大きく外側に倒れた状態の切り起こし姿勢にすべく、第1傾斜角θ1を第2傾斜角θ2よりも小さくしている。
【0030】
なお、他の2つの三角片24、26は、三角片23に近い部分では三角片23の影響を受け、三角片25に近い部分では三角片25の影響を受けるため、三角片23寄りの部分と三角片25寄りの部分とで形状が少し異なるものの、三角片24と三角片26は軸心Mを通る対称面を挟んで面対称に形成される。また、三角片24と三角片26の切り起こし姿勢は、三角片25にほぼ近い状態に形成される。
【0031】
図9に、切刃に対して容器本体を相対的に接近させ、容器本体に対して三角片をかしめる過程を示す。なお、この図9では、便宜上、三角片23と25をかしめる場合を示す。この図において、(a)、(c)、(e)は三角片23をかしめる場合で、(b)、(d)、(f)は三角片25をかしめる場合である。また、(b)は容器本体10に三角片25が当接した状態を表し、(a)は三角片25が容器本体10に当接したタイミングにおける三角片23の状態を表し、(c)、(d)はかしめの途中状態を表し、(e)、(f)はかしめが終了した状態を表している。また、容器本体の切刃とは反対側(図9の上側)には、図示しない押し当て部材が押し当てられている。
【0032】
この図9より理解されるように、(a)、(b)に示すように、容器本体10に三角片25が当接したとき、三角片25よりも大きく倒れた切り起こし姿勢の三角片23は容器本体10との間に隙間がある。その後、容器本体10と切刃とを接近させると、その接近に伴って三角片25が徐々に外側に倒れていき、容器本体10に三角片25の先端が食い込んでいく((d)参照)。このように三角片の先端が容器本体10の中を通ることを食い込みといい、図9中の12が食い込み部分である。一方、始めから三角片25よりも大きく倒れた切り起こし姿勢の三角片23は、その先端が容器本体10へ向かずに容器本体10にほぼ平行な状態で容器本体10に食い込み始めるので、容器本体10への食い込み量が三角片25の場合よりも極めて少ない状態になる。したがって、かしめが終了した状態において、三角片25は容器本体10への食い込み量が大きく(食い込み部分12の量が大きく)、引き抜き強度が大きい。一方の三角片23は、容器本体10への食い込み量が小さく(食い込み部分12の量が小さく)、引き抜き強度が小さい。なお、説明は省略するが、三角片24、26の容器本体10への食い込み量は、三角片25の容器本体10への食い込み量よりも小さく、三角片23の容器本体10への食い込み量よりも大きくなり、三角片24、26の引き抜き強度は、三角片25の引き抜き強度と、三角片23の引き抜き強度との間の値になる。
【0033】
したがって、同一の固定部において、剥離方向Dの上流側の2つの三角片25、26による引き抜き強度に対し、剥離方向Dの下流側の2つの三角片23、24による引き抜き強度を小さくすることができるので、以下に説明するように、切刃を引き剥がすときに屈曲が発生しないようにできる。すなわち、図10に示すように同一の固定部の4つの三角片27を全て、上述した実施形態の前記三角片25と同一条件で形成した場合には、剥離方向Dの上流側の2つの三角片27、27では引き抜き強度Yが非常に強くなり、また下流側の2つの三角片27、27でも引き抜き強度Yが同じく非常に強くなる。このため、上流側の2つの三角片27、27を引き剥がす力は、切刃20が大きく屈曲しないために小さい引き剥がし強度Xで済むが、一方、下流側の2つの三角片27、27を引き剥がす力は、切刃20における幅方向の端20aから固定部22までの距離が最も短いL3(L4)のところ、つまり最小幅の部分28で、塑性変形を起こして屈曲するために大きい引き剥がし強度X2(>X)になる。そのために、上流側の2つの三角片27、27を引き剥がした後に、上流側の2つの三角片27、27と下流側の2つの三角片27、27との間の最小幅の部分28で切刃20が大きく屈曲して屈曲(折れ曲がり)が発生する。これに対して、本実施形態において図11に示すように、剥離方向Dの上流側の2つの三角片25、26による引き抜き強度Yに対し、剥離方向Dの下流側の2つの三角片23、24による引き抜き強度Y1(<Y)を小さく、例えば半分程度にしているので、その引き抜き強度Y1の部分では引き剥がす力として、引き剥がし強度Xよりも十分に小さい引き剥がし強度X1(<X)で引き剥がせばよく、最小幅の部分28に作用する曲げ応力が小さくなって、屈曲(折れ曲がり)の発生を防止することが可能になる。つまり、弾性変形の範囲内で切刃20を剥がすことが可能になる。そのために第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2を所定範囲に設定している。
【0034】
したがって、引き剥がされた切刃20は、元の真っ直ぐな状態に戻るため嵩張ることがなく、また容器本体10から完全に分離しているので、リサイクルし易い状態にできる。なお、図10、図11中の支点1は、剥離方向Dの上流側の2つの三角片25、26を引き剥がすときの支点を示し、同支点2は剥離方向Dの下流側の2つの三角片23、24を引き剥がすときの支点を示す。
【0035】
図12は、上述した切刃付き容器1の製造ラインを示す模式図である。
【0036】
紙から所定の形状の容器本体10に形成し搬送する第1ライン40と、巻回されたブリキコイル41を解きつつ第1ライン40の下側に配した切断機42に逆方向から導く第2ライン43と、ブリキコイル41の幅方向の片方の端部に貼着される樹脂テープ44を、第2ライン43の切断機42よりも上流側に案内する第3ライン45とを備える。上記樹脂テープ44は、図2及び図4に示すように切刃20の片端に取付けてあり、これを把持して切刃を引き剥がすためのものである。切断機42は一定高さ位置に設けた固定刃42aと、昇降可能に設けた移動刃42bとを有して構成され、移動刃42bは昇降部材46により昇降される。また、昇降部材46における第2ライン43の搬送方向上流側に、ブリキコイル41の幅方向に複数のピン30が設けられていて、これら複数のピン30は、昇降台47の上に一列に配置されている。
【0037】
この製造ラインにあっては、第2ライン43により搬送されてきたブリキコイル41の先端部に、昇降台47を上昇させてピン30によりブリキコイル41の幅方向に複数の固定部を形成する。この段階では、各固定部の4つの三角片は切り起こされた状態にまて形成されている。続いて、ブリキコイル41を少し送り出して、昇降部材46を上昇させて切断機42によりブリキコイル41を切断し、切刃20を作製する。固定刃42aと移動刃42bには、ギザギザ状の刃先21を形成する刃が設けられている。続いて、昇降部材46を更に上昇させる。この上昇以前に、第1ライン40により作製された所定の形状の容器本体10が第1ライン40に設けたストッパ48により所定位置に止められていて、上記昇降部材46の上昇により、固定部の4つの切り起こされた状態の三角片をかしめる。上記ストッパ48は、容器本体10を前記所定位置に止めるときに降下し、その他のときは上昇する。第1ライン40におけるライン上側には、ストッパ48で止められた容器本体10を上側から押し当てる前述した押し当て部材49が設けられている。
【0038】
この製造ラインにより、本実施形態の切刃付き容器1を連続して製造することが可能になる。
【0039】
また、本実施形態では、図3に示したように、下流側の2つの三角片のうちの食い込み深さが浅いもの23が、もう一つの三角片24よりも切刃20の刃先21に近い側に配されている。この理由は、フィルムを切断する際に、刃先21にフィルムを切断する力が作用するが、その力が、引出し口11の縁11aを支点として各々の三角片23、24、25、26に対し引き抜く力として作用するので、刃先21から遠い側に食い込み深さが最も大きい三角片25を配し、刃先21に近い側に食い込み深さが浅い三角片23を配しておくことで、フィルム切断に伴って切刃20が容器本体10から外れるのを防止することが可能になるからである。
【0040】
また、上述した実施形態では、図6に示すように概略四角錐状に尖っている切起部(先端部)31に繋がる部分の四隅に位置する角部32を丸く形成しているが、その理由は、以下の通りである。即ち、このピン30による場合には、図5、図11に示すように、形成された固定部22の上流側と下流側との最小幅の部分28が円弧状になり、その円弧状の部分28で切刃20に屈曲が発生し難くすることが可能になるからである。
【0041】
更に、上述した実施形態では第1傾斜角θ1は25゜〜29゜の範囲内で選ばれ、第2傾斜角θ2は、第1傾斜角θ1よりも2゜以上大きく、かつ27゜〜33゜の範囲内で選ばれるように設定した理由は、以下の通りである。即ち、4つの三角片が、容器本体に食い込ませたときに、その食い込み深さを丁度よい寸法に調整でき、これにより引き抜き強度を、切刃に屈曲が発生しない弾性変形の範囲内で切刃を剥離させ得る値に調節することが可能になるからである。
【0042】
なお、上述した実施形態ではピン30に、断面が正方形状のものを用いているが、本発明は正方形状に限らず、断面が矩形状などであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 切刃付き容器
2 軸部材
3 樹脂フィルム
10 容器本体
11 引出し口
20 切刃
21 刃先
22 固定部
23、24、25、26 三角片
23a、24a、25a、26a 頂点部分
30 ピン
A 矩形領域
B1、B2 対角線
D 剥離方向
O 交点
θ1 第1傾斜角
θ2 第2傾斜角
M 軸心
X、X1、X2 引き剥がし強度
Y、Y1 引き抜き強度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材に巻回した樹脂フィルムを内蔵する紙製の容器本体と、その容器本体のフィルム引出し口の縁部近傍であって引出し口の縁に沿う状態で剥離可能に設けられ、所望長さ分だけ引出した樹脂フィルムを切断する切刃とを備え、
前記切刃は、ほぼ一定幅の薄肉金属板であって、容器本体とは反対側へ引くことにより引出し口の縁に沿う剥離方向に剥がすことが可能であって、その方向に容器本体へ固定するための複数の固定部を有し、
各固定部のそれぞれが、矩形領域を2つの対角線で切断して設けられた4つの三角片を、前記剥離方向の上流側と下流側とにそれぞれ2つずつ配した状態に有し、
前記4つの三角片のそれぞれが、前記2つの対角線の交点に対応する頂点部分を反対側に向け、紙製の容器本体に食い込むように折り返されるとともに、前記4つの三角片のうちの1つであって下流側のものが、他の3つの三角片よりも食い込み深さを浅くなしていて、その食い込み深さが浅い三角片を有する下流側2つの三角片による引き抜き強度が、上流側の2つの三角片による引き抜き強度よりも小さく、これにより切刃が弾性変形の範囲内で剥がされるように構成されていることを特徴とする切刃付き容器。
【請求項2】
請求項1に記載の切刃付き容器において、
前記下流側の2つの三角片のうちの食い込み深さが浅いものが、もう一つの三角片よりも前記切刃の刃先に近い側に配されていることを特徴とする切刃付き容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の切刃付き容器を構成する切刃に設ける4つの三角片を有する固定部を形成するためのピンであって、
前記矩形領域に応じた矩形断面を有し、先端部が概略四角錐状に尖っているとともに、前記矩形領域の1辺に対応する1側面の軸心に対する第1傾斜角が、他の3側面の前記軸心に対する第2傾斜角よりも小さくなっていることを特徴とするピン。
【請求項4】
請求項3に記載のピンにおいて、
前記第1傾斜角が25゜〜29゜、前記第2傾斜角が第1傾斜角よりも2゜以上大きくかつ27゜〜33゜であることを特徴とするピン。
【請求項5】
請求項3または4に記載のピンにおいて、
概略四角錐状に尖っている先端部に繋がる部分の四隅に位置する角部が丸く形成されていることを特徴とするピン。
【請求項1】
軸部材に巻回した樹脂フィルムを内蔵する紙製の容器本体と、その容器本体のフィルム引出し口の縁部近傍であって引出し口の縁に沿う状態で剥離可能に設けられ、所望長さ分だけ引出した樹脂フィルムを切断する切刃とを備え、
前記切刃は、ほぼ一定幅の薄肉金属板であって、容器本体とは反対側へ引くことにより引出し口の縁に沿う剥離方向に剥がすことが可能であって、その方向に容器本体へ固定するための複数の固定部を有し、
各固定部のそれぞれが、矩形領域を2つの対角線で切断して設けられた4つの三角片を、前記剥離方向の上流側と下流側とにそれぞれ2つずつ配した状態に有し、
前記4つの三角片のそれぞれが、前記2つの対角線の交点に対応する頂点部分を反対側に向け、紙製の容器本体に食い込むように折り返されるとともに、前記4つの三角片のうちの1つであって下流側のものが、他の3つの三角片よりも食い込み深さを浅くなしていて、その食い込み深さが浅い三角片を有する下流側2つの三角片による引き抜き強度が、上流側の2つの三角片による引き抜き強度よりも小さく、これにより切刃が弾性変形の範囲内で剥がされるように構成されていることを特徴とする切刃付き容器。
【請求項2】
請求項1に記載の切刃付き容器において、
前記下流側の2つの三角片のうちの食い込み深さが浅いものが、もう一つの三角片よりも前記切刃の刃先に近い側に配されていることを特徴とする切刃付き容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の切刃付き容器を構成する切刃に設ける4つの三角片を有する固定部を形成するためのピンであって、
前記矩形領域に応じた矩形断面を有し、先端部が概略四角錐状に尖っているとともに、前記矩形領域の1辺に対応する1側面の軸心に対する第1傾斜角が、他の3側面の前記軸心に対する第2傾斜角よりも小さくなっていることを特徴とするピン。
【請求項4】
請求項3に記載のピンにおいて、
前記第1傾斜角が25゜〜29゜、前記第2傾斜角が第1傾斜角よりも2゜以上大きくかつ27゜〜33゜であることを特徴とするピン。
【請求項5】
請求項3または4に記載のピンにおいて、
概略四角錐状に尖っている先端部に繋がる部分の四隅に位置する角部が丸く形成されていることを特徴とするピン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−235906(P2011−235906A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106555(P2010−106555)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000177911)山下印刷紙器株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000177911)山下印刷紙器株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
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