説明

切削インサートおよび切削工具

両面とも使用できる切削インサート(24)は、頂面および底面(32、34)と、2つの副側面(40)によってつながれた2つの主側面(38)とを有する。各主側面は、反対方向に傾かされて頂面と底面との間に延在する移行面(44)で一体化する2つの別個の逃げ面(42)を有する。第1主切削刃(46)は第1逃げ面と頂面との間に区画形成され、第2主切削刃は第2逃げ面と底面との間に区画形成される。各主切削刃は移行面とインサートの頂面または底面との間に区画形成される関連する移行切削刃の接線である。そのインサート用のインサートホルダ(22)は、インサートの3つの当接部と合う3つの支持部(74、76、78)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削インサートおよびこのようなインサートのための切削工具に向けられている。本発明は、ドリルまたはフライス用の、面取り、および、穴ぐりまたは座ぐり、インサートに特に向けられている。
【背景技術】
【0002】
その技術において、金属を切削するための片面の切削インサートは、特にドリル用の面取りおよび穴ぐりインサート、および、それぞれの工具は知られている。例えば、図1を参照すると、2つのそのようなインサートを備えるドリルが示されている。各インサートは、略偏菱形であり、反対側の頂面および底面と、該頂面と該底面との間に延在する周側面とを有する。周側面は、各々が2つの主側面部を有する2つの主側面を備え、2つの主側面部の一方のみが頂面と切削刃を区画形成する。各2つの主側面部は移行縁部で合流する。切削インサートは、反対側の頂面および底面を貫いて延びる第1軸線周りに180°回転対称性を有する(図2を見よ)。インサートは、2つの当接面および固定ねじを介してドリルに支持される。
【0003】
特許文献1はドリルに関し、該ドリルは、切屑処理溝、先端部に設けられた少なくとも1つの第1切削刃、および、ドリルに配置されると共に少なくとも1つの第2切削刃を備えるリングを有し、少なくとも1つの第2切削刃は第1切削刃によってあけられた穴を面取りする、皿もみする、または座ぐるために第1切削刃からある距離に配置される。リングは凹部を備え、それは溝の反対側に配置され、後者と切屑通路を形成する。
【0004】
先行技術の片面の切削インサートは、一方の面でのみ割り出し可能であり、ドリルの回転方向で多くても2つの切削刃を有する。さらに、主側面部が交わる移行縁部は、インサートと被加工物との間のクリアランスを妨げ、これにより切削深さを制限する。さらに、クランプは、固定ねじおよび2つの当接面のみに頼る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第3610016号明細書
【発明の概要】
【0006】
先行技術の不都合を克服するかまたは低減する、改善された切削インサート、および、そのようなインサート用の工具ホルダを提供することが本発明の目的である。
【0007】
本発明は、両面とも使用できる切削インサート、特にドリル用の面取りおよび穴ぐりまたは座ぐりインサートを取り外し可能に保持するためのインサートホルダを備える切削工具を提供する。切削インサートは反対側の頂面および底面とそれらの間に延在する周側面とを備える。該周側面は、好ましくは、2つの反対側の主側面を備え、各主側面は頂面と底面との間に延在する移行面を介してつながる2つの別個の部分を備える。好ましくは、別個の部分の各々は逃げ面を区画形成する。さらに好ましくは、2つの主側面の各々の2つの逃げ面の各々は、インサートの頂面または底面と1つの主切削刃を区画形成する。好ましくは、2つの別個の逃げ面の一方はインサートの頂面と主切削刃を区画形成し、第2逃げ面はインサートの底面と主切削刃を区画形成する。周側面はさらに2つの反対側の副側面を備え、該2つの反対側の主側面は該2つの反対側の副側面を介してつなげられる。インサートは、好ましくは、略偏菱形状を有する。
【0008】
本発明に係るインサートは好ましくは割り出し可能であり、反対側の頂面および底面と略直角を成してそれらを通して延びる第1軸線に関して180°回転対称性を有し、前記第1軸線に対して概ね直角を成して延びる第2軸線に関して180°回転対称性を有する。切削インサートはまた第1軸線と略直角を成すと共に反対側の副側面を貫通する第3軸線に関して180°回転対称性を有する。
【0009】
好ましくは、一方の主側面の2つの逃げ面が合流する移行面は概して柱状であり、好ましくは概して円柱状または楕円柱状である。換言すると、移行面を構成する主側面の一部は柱の一部を概して形成する。好ましくは、移行面は概して縦向きであり、さらに好ましくはその縦の接線は反対側の頂面と底面と略直角を成してそれらを通して延びる第1軸線に略平行である。
【0010】
さらに好ましい実施形態にしたがって、移行面は、頂面と頂部移行切削刃を区画形成する少なくとも1つの部分と、底面と底部移行切削刃を区画形成する1つの部分とを有する。好ましくは、2つの逃げ面の一方と、インサートの頂面または底面との間に設けられた主切削刃は移行面の接線である。したがって、主切削刃は、好ましくは、移行面とインサートの頂面または底面との間に設けられたそれぞれの頂部または底部移行切削刃と滑らかに同化する。頂面または底面と逃げ面との間に区画形成されると共に切削刃を構成しない主非切削縁部は、これら主非切削縁部は移行面の接線ではないので、移行面とインサートのそれぞれの頂面または底面との間に設けられたそれぞれの移行切削刃と滑らかに同化しない。
【0011】
共通の副側面に隣接する逃げ面は、頂面または底面の平面において、集中角αで集まる。前記角度αは、好ましくは約25°から65°の範囲に、さらに好ましくは約30°から60°の範囲に、なおさらに好ましくは約40°から50°の範囲にあり、さらに好ましくは約45°である。
【0012】
さらに、クリアランスを提供するために、各逃げ面は、好ましくは、その逃げ面の断面視において、第1軸線に対してクリアランス角度μで傾けられる。好ましくは、1つの主側面の2つの逃げ面は、異なる方向に傾けられるが、インサートの反対側の頂面と底面とに設けられたそれぞれの主切削刃に関して同じクリアランスを与えるように同じ角度で傾けられる。好ましくは、各逃げ面は、第1軸線に対して、約±1°から±25°の、さらに好ましくは約±5°から±15°のクリアランス角度μで傾けられる。
【0013】
好ましくは、各副側面は角度γで傾けられ、該角度γは切削インサートの側面視において見られるように第1軸線に対して変化する。
【0014】
さらに好ましい実施形態にしたがって、周側面は、さらに、少なくとも6つの別個の当接部を備え、それらのうちの2つは各主側面に設けられ、それらのうちの1つは反対側の副側面のそれぞれ1つに設けられる。6つの別個の当接部は4つの当接セットを構成し、各当接セットは少なくとも3つの当接部を含み、各当接部は少なくとも2つの当接セットに従属する。各当接セットは、所定の主側面の対応する第1および第2逃げ面に位置付けられた第1および第2当接部と、副側面の1つに位置付けられた第3当接部とを含む。周側面は、一時に、1つの当接セットのみを作用させるように構成される。
【0015】
インサートの平面視において、第1逃げ面と頂面とに関連する主切削刃は、隣接する第2逃げ面とインサートの頂面とに関連する主非切削縁部と、鈍角の第1内角δを形成する。その平面視において、同主切削刃は、隣接する第2逃げ面に関連する主切削刃と鈍角の第2内角εを形成し、鈍角の第2内角εは鈍角の第1内角δよりも大きい。
【0016】
さらに、切削工具に提供されるインサートホルダは、ベース部と、第1、第2および第3支持部を含む固定面とを備えるインサートポケットを有する。好ましくは、第1支持部は第1当接部に当接し、第2支持部は第2当接部に当接し、そして第3支持部は第3当接部に当接する。第3支持部は軸力に対する支持を提供する。さらに、第2支持部は、第3支持部に隣接し、インサートポケットにおける切削インサートの取付および固定の間に切削インサートをそれの最終位置に位置付ける間、両支持部分との接触を維持する。
【0017】
さらに好ましい実施形態にしたがって、第1支持部は、クリアランス角度μよりも大きな(または等しい)角度β1で傾けられる。第3支持部は角度β2で傾けられ、これは第3部分と第3当接部との間の接触の領域で副側面の傾斜角度γよりも大きい(または等しい)。
【0018】
支持部の傾斜は、インサートを、インサートホルダに、しっかりと固定し、よりよいクランプを可能にする。前記インサートを受け入れるための工具のポケットは、そのポケットにおけるインサートの適切な着座を可能にするように、インサートのコーナーを収容するための丸みのある凹部を有する。
【0019】
本発明は先行技術を超える好ましい利点を有し、切削インサートもそのようなインサート用の工具ホルダも、先行技術の欠陥を克服するまたは低減し、また、好ましくは耐久性、耐用年数または寿命、精度、効果および効率について利点を有して提供される。さらに好ましくは、切削プロセスの正確さは、工具ホルダにおける切削インサートの主切削刃のより精密な、より長く継続安定した、再現可能の位置を提供することによって、そして、例えば切削作業の間に、切削インサートまたは工具ホルダに加えられる力に対する抵抗力を好ましくは代わりにまたはより好ましくは付加的に改善することによって、向上させられ得る。本発明のさらにまたは付加的に好まれる利点は、以下に与えられるような好ましい実施形態の詳細な説明ばかりでなく、概括的な上記説明から明らかである。特に、本発明の切削インサートは、4つの割り出し可能な主切削刃の供給を可能にし、それにより、インサートの寿命および効率を改善する。また、付加的な当接面の供給によって、インサートのよりよいクランプおよび位置決めが可能になる。これは、好ましくは、インサートが、より厳しい切削条件に対して用いられることを可能にする。さらに、他の部分に対する述べられた方向における第3支持または当接部分は、好ましくは、インサートが、インサートホルダにおけるそれの最終位置まで回転することを可能にし、同時に、両支持部分との接触を維持する。さらに、移行面はより深い切削を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】先行技術の切削インサートを備えた工具ホルダの概略図を示す。
【図2】図1に示される先行技術の切削インサートの概略の斜視図を示す。
【図3】本発明の実施形態にしたがう切削インサートを備えた工具ホルダの概略の側面図を示す。
【図4】図3に示された、切削インサートの概略の頂面側の斜視図を示す。
【図5】図4に示された切削インサートの概略の側面図を示す。
【図6】図4に示された切削インサートの概略の平面図を示す。
【図7】図6のVII−VII線に沿った切削インサートの概略の断面を示す。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿った切削インサートの概略の断面を示す。
【図9】切削インサートが工具ホルダに取り付けられた状態での、図3に示された工具ホルダの概略の詳細な平面図を示す。
【図10A】図9のX−X線に沿った、工具ホルダおよび切削インサートの概略の断面を示す。
【図10B】図10Aの一部の拡大図を示す。
【図11A】図9のXI−XI線に沿った、工具ホルダおよび切削インサートの概略の断面を示す。
【図11B】図11Aの一部の拡大図を示す。
【図12A】図9のXII−XII線に沿った、工具ホルダおよび切削インサートの概略の断面を示す。
【図12B】図12Aの一部の拡大図を示す。
【図13】本発明の実施形態にしたがう、工具ホルダに設けられたインサートポケットの概略の拡大斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
さて、本発明のよりよい理解のために、そして、実際にはこれがどのように実施され得るのかを示すために、参照は、添付図面になされるであろう。
【0022】
注意はまず、本発明に係る切削工具20を示す図3に引きつけられる。切削工具20は、ドリルまたはフライスに関して、面取りおよび穴ぐりまたは座ぐりのような金属切削作業に対して用いられることができる。切削工具20は、インサートポケット26に保持される両面とも使用できる切削インサート24および切屑排出用の溝28を有するインサートホルダ22を有する。インサートポケット26は、インサート24のコーナーを収容するために丸みを帯びた凹部30を有する。
【0023】
図4は、頂部斜視からの、切削インサート24を示す。切削インサート24は、略偏菱形の本体を有する単一のワンピースの構成物を有し、2つの同一の反対側の頂面および底面32、34と、頂面32と底面34との間に延在する周側面36とを有する。頂面32と底面34との区別は、述べられるインサート、特に述べられる割り出し可能なインサートを、特定方向に限定しないが、2つの別個の頂部主表面および底部主表面を参照することにより、インサートの特徴を明確に定める働きを単にする。
【0024】
周側面36は、2つの同一の反対側の主側面38と、2つの同一の反対側の副側面40とを有する。2つの反対側の主側面38は、2つの反対側の副側面40を介してつながれている。各主側面38は、外観上は副側面40と異なる移行面44を介してつながれている2つの別個の逃げ面42を有する。
【0025】
各主側面38についての2つの逃げ面42のうちの第1のものは、インサートの頂面32と主切削刃46を区画形成し、切削刃を構成しない主非切削縁部48をインサートの底面34と区画形成する。一方、その2つの逃げ面42のうちの、隣り合った第2のものは、インサートの底面34と主切削刃46を区画形成し、インサートの頂面32と主非切削縁部48を区画形成する。副側面40は、頂面32および底面34の両方のそれぞれと副非切削縁部41を形成する。
【0026】
図6に見られるように、インサートの平面視において、(図6において隠れている)第1逃げ面42および頂面32と関連する主切削刃46は、隣接する第2逃げ面42およびインサートの頂面32と関連する主非切削縁部48と鈍角の第1内角δを形成する。平面視において、同じ主切削刃46は隣接する第2逃げ面42と関連する主切削刃46と鈍角の第2内角εを形成し、鈍角の第2内角εは鈍角の第1内角δよりも大きい(すなわち、ε>δ)。
【0027】
本発明に係る切削インサート24は、好ましくは、対向する頂面32および底面34を通して概ね直角に交わるように延びる第1軸線Aと、第1軸線Aと概ね直角を成すと共に対向する移行面44を貫通するように延びる第2軸線Bとを備える。これらの軸線は好ましくは対称性についての軸線である。インサートは、明示されるように割り出し可能であり、第1軸線Aに関して180°回転対称性を有し、第2軸線Bに関して180°回転対称性を有する。図6に見られるように、切削インサートはまた、第1軸線Aに対して概ね直交すると共に、対向する副側面40を貫通する第3軸線Cを備える。第3軸線Cはまた、対称性についての軸線であり、故に、インサートは第3軸線Cに関して180°回転対称性を有する。しかし、軸線C周りにインサートを180°回転することは、まず中間位置までインサートを軸線B周りに180°回転させ、次に軸線A周りにインサートを180°回転させるときと同じ正確な位置に、4つの主切削刃を向けることが注目される。各主側面と関連する逃げ面が同じ長さである場合、すなわち、切削インサートが略偏菱形である場合、第3軸線Cが第2軸線Bと略直交することがさらに注目される。
【0028】
さらに、インサートは、好ましくは、固定ねじ52によってインサートホルダ22にインサートを固定するために頂面32と底面34との間に延びる貫通孔50を備え、前記第1軸線Aは好ましくは貫通孔50の軸線に相当する。頂面32および底面34はそれぞれ主切削刃46から貫通孔50に向けて延在するすくい面54を有する。
【0029】
概して、共通の主側面38に関連する逃げ面42は、第1軸線(A)に対して反対の方向に傾けられているが、傾斜に関してのそれらの相違を調整する移行面44でつながる。幾つかの実施形態にしたがって、移行面44は、柱(cylinder)の一部分として表されることができる。その柱は、任意の所望の断面形状を有することができる。幾つかの実施形態において、移行面44は、円柱の一部分であることができる。幾つかの実施形態において、移行面44は楕円柱の一部分であることができる。移行面44は、概ね縦に延在し、反対側の頂面32および底面34に対して概ね直角を成し、好ましくは、それの縦の接線58は第1軸線Aに略平行である(さらに図5を見よ)。移行面44は略均一の半径を有するとき概ね好まれるが、その半径は、例えば切削インサート24の頂面図または底面図に見られるように、また変化し得る。したがって、幾つかの実施形態において、移行面44と各逃げ面42との間の結合部60は線または三次元湾曲部である。好ましい実施形態にしたがって、主切削刃46は、頂面32または底面34で移行面44の接線である。主切削刃46は移行面44とインサートの頂面32または底面34との間に区画形成される移行切削刃62と結合する。各移行面44は、移行面44と頂面32との間に区画形成される頂部移行切削刃62と、移行面44と底面34との間に区画形成される底部移行切削刃62とを有する。主非切削縁部48は移行面44の接線ではなく、故に、移行面44とインサートの頂面32または底面34との間に区画形成される移行切削刃62と同化しない。
【0030】
各副側面40は、概して湾曲させられ、または、部分的に湾曲させられて部分的に平らであり得る。切削インサート24の側面視において、各副側面40の各箇所は、第1軸線Aに対して、すなわち第1軸線Aに対して平行な縦線56に対して、角度γで傾けられる。角度γは、側面視から理解されるように、頂面32から底面34へ各副側面40に沿って変化し得る。
【0031】
共通の副側面40に隣接する逃げ面42は、頂面32または底面34の平面において、集中角αで集まる。前記角度αは、好ましくは、約25°から65°までの範囲に、より好ましくは約30°から60°までの範囲に、さらにより好ましくは約40°から50°までの範囲にあり、さらに好ましくは約45°である。
【0032】
各逃げ面42は、好ましくは、その逃げ面の断面視において、第1軸線Aに対して(すなわち縦線56に対して)角度μで傾けられる。切削作業の間、その傾斜は、その逃げ面42に関連する主切削刃46と被加工物との間のクリアランスを提供する。1つの主側面38の2つの逃げ面42は、割り出し可能なインサートの特徴を維持するべく、異なるまたは反対の方向において同じ角度で傾けられている。その傾斜は、図4、7および8においてよく理解されることができる。好ましくは、クリアランス角度μは、約±1°から±25°であり、さらにより好ましくは約±5°から±15°である。
【0033】
さて、注意は、本発明にしたがう切削工具20に保持された切削インサート24を示す図9〜12に引きつけられる。周側面36は6つの別個の当接部を有する。各主側面38は、それぞれの逃げ面42に位置付けられた第1および第2当接部64、66を有し、各副側面40は、第3当接部68を有する。6つの異なる当接部は、4つの当接セットを構成し、各当接セットは少なくとも3つの当接部を含み、各当接部は少なくとも2つの当接セットに属する。各当接セットは、所定の主側面の対応する第1および第2逃げ面に位置付けられた第1および第2当接部と、副側面の一方に位置付けられた第3当接部とを含む。周側面は、一時に、1つの当接セットのみを作用させるように構成されている。したがって、各台座の方向において、主側面38の一方の第1および第2当接部64、66は作用する第1および第2当接部64、66としての機能を果たし、第3当接部68の一方は作用する第3当接部68としての機能を果たす。
【0034】
図13は、ベース部70と、第1、第2および第3支持部74、76、78を含む、ベース部70から延在する固定面72とを有するインサートポケット26を示す。第1支持部74は作用する第1当接部64に当接し、第2支持部76は作用する第2当接部66に当接し、そして、第3支持部78は作用する第3当接部68に当接する(図9から図12を見よ)。第2支持部76は第3支持部78に隣接する。各支持部は、接触の領域(または箇所)で対応する当接部に当接する。第3支持部78の付加は、先行技術と比べれば、よりよいクランプを提供し、それはより厳しい切削状態に耐えることができる。第3支持部78は軸力に耐え、故に、インサートホルダ22にしっかりと切削インサート24を保持することに寄与する。第2支持部76に隣接する第3支持部78の位置が、インサートポケット26に切削インサート24を固定すると同時に両方の支持部との接触を維持しながら、インサート24が、それの最終位置まで回転することを可能にするので、正確なクランプは達成される。
【0035】
図9において理解されるように、切削インサートが取り付けられているとき、周側面に沿って第1および第3当接部64、68間に位置を定められる第2当接部66は、作用する主切削刃46Bと反対側にある関連する作用しない主切削刃46Aを有する。
【0036】
図10〜12は、様々な支持および当接部の傾きを示す。第1支持部分74は、第1軸線Aに対して(すなわち縦線56に対して)第1角度β1で傾けられている。第1角度β1は、クリアランス角度μより大きいまたは等しいとよい。第3部分78は、第1軸線Aに対して(すなわち縦線56に対して)第2角度β2で傾けられている。第2角度β2は、第3部分78と第3当接部分68との間の接触の領域(または箇所)で、角度γよりも大きい、または、等しいとよい。支持部分74、78の傾きは、切削力によってもたらされる固定ねじ52におけるテンションを減少させる。
【0037】
本発明は新しい両面切削インサート24を備える新しい切削工具20を提供し、それは面取りおよび穴ぐりまたは座ぐり用のドリルと関連して用いられることができ、先行技術の片面切削インサートにおける2つの主切削刃と対比して、4つの主切削刃46という利点を有し、切削インサート24の寿命、より深い切削を可能にするための筒状の移行面44、被加工物とのクリアランス、および、的確なクランプを改善し、より厳しい切削状態に耐えることができる。的確なクランプは、第3支持部78の付加、および、第2および第3支持部76、78が互いに近接しているという事実のために、そして、支持部74、78の傾斜によって、与えられる。
【0038】
本発明がある程度詳細に説明されたけれども、以下に請求されるような本発明の範囲から逸脱することなしに、様々な修正や変更がなされ得ることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面とも使用できる切削インサート(24)であって、
反対側の頂面(32)および底面(34)とそれらの間に延在する周側面(36)とを備え、
該周側面(36)は、少なくとも2つの反対側の主側面(38)を備え、該主側面の各々は少なくとも2つの別個の逃げ面(42)を有し、各逃げ面は該頂面または該底面(32、34)と主切削刃(46)を区画形成し、
該2つの逃げ面(42)は該頂面および該底面(32、34)間に延在する移行面(44)を介してつながれ、
該周側面(36)は、2つの反対側の副側面(40)を備え、該2つの反対側の主側面(38)は該2つの反対側の副側面(40)を介してつながれ、
該切削インサート(24)は、該反対側の頂面および該底面(32、34)を通して延びる第1軸線(A)に関して180°回転対称性を概して有し、前記第1軸線に対して概ね直角を成して延びる第2軸線(B)に関して概して180°回転対称性を概して有し、
貫通孔(50)が該第1軸線(A)に沿って軸線方向に延びる、
両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項2】
前記移行面(44)は柱の一部分のように形成される、請求項1に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項3】
前記移行面(44)は、概して縦向きであり、前記第1軸線(A)に略平行である縦の接線(58)を有する、請求項2に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項4】
前記移行面(44)は、少なくとも2つの反対側の部分を有し、該部分の1つは前記頂面(32)と頂部移行切削刃(62)を区画形成し、該部分の1つは前記底面(34)と底部移行切削刃(62)を区画形成する、請求項3に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項5】
前記主切削刃(46)は前記移行面(44)の接線であり、そして、
前記頂面または前記底面(32、34)と前記逃げ面(42)との間に区画形成されると共に切削刃を構成しない主非切削縁部(48)は、該移行面(44)の接線ではない、
請求項4に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項6】
共通の副側面(40)に隣接する前記逃げ面(42)は、前記頂面または前記底面(32、34)の平面において、集中角(α)で集まる、請求項1に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項7】
前記集中角(α)は、約40°から50°である、請求項6に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項8】
前記逃げ面(42)は、断面視において、前記第1軸線(A)に対してクリアランス角度(μ)で傾けられている、請求項1に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項9】
各主側面(38)の前記逃げ面(42)は、異なる方向に傾けられている、請求項8に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項10】
前記クリアランス角度(μ)は、前記第1軸線(A)に対して、約±5°から±15°である、請求項8に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項11】
各副側面(40)は前記第1軸線(A)に対して角度(γ)で傾けられていて、そして、
該角度(γ)は、該切削インサート(24)の側面視において見られるように、前記頂面(32)から前記底面(34)へ変化する、
請求項1に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項12】
前記周側面(36)は、少なくとも6つの別個の当接部(64、66、68)を有し、
該6つの別個の当接部(64、66、68)は4つの当接セットを構成し、各当接セットは少なくとも3つの当接部(64、66、68)を含み、各当接部は少なくとも2つの当接セットに従属し、
各当接セットは、所定の主側面(38)の対応する第1および第2逃げ面(42)に位置付けられた第1および第2当接部(64、66)と、前記副側面(40)の一方に位置付けられた第3当接部(68)とを含み、そして、
前記周側面(36)は、一時に、1つの当接セットのみを作用させるように構成されている、
請求項1に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項13】
略偏菱形状を有する、請求項1に記載の両面とも使用できる切削インサート(24)。
【請求項14】
切削工具(20)であって、
ベース部(70)と、該ベース部(70)から延在する固定面(72)とを備えるインサートポケット(26)を有するインサートホルダ(22)であって、該固定面が第1、第2および第3支持部(74、76、78)を含む、インサートホルダ(22)と、
該インサートポケット(26)に取り外し可能に保持される切削インサート(24)であって、請求項1に記載の切削インサート(24)と
を備え、
該第1支持部(74)は、該切削インサート(24)の主側面(38)の1つの逃げ面(42)に形成された第1当接部(64)に当接し、
該第2支持部(76)は、該切削インサート(24)の同じ該主側面(38)の別の逃げ面(42)に形成された第2当接部(66)に当接し、
該第3支持部(78)は、該切削インサート(24)の副側面(40)に形成された第3当接部(68)に当接し、
該第2当接部(66)は、該周側面(36)に沿って該第1当接部と該第3当接部(64、68)との間にあり、そして、
該第2当接部(66)は、該切削工具の作用する主切削刃(46B)と反対側にある関連する作用しない主切削刃(46A)を有する、
切削工具(20)。
【請求項15】
前記逃げ面(42)は、断面視において、前記第1軸線(A)に対してクリアランス角度(μ)で傾けられ、
前記第1支持部(74)は、該第1軸線(A)に対して第1角度(β1)で傾けられ、該第1角度(β1)は該クリアランス角度(μ)より大きいまたは等しく、
前記第3支持部(78)は、該第1軸線(A)に対して第2角度(β2)で傾けられ、
前記切削インサート(24)の各副側面(40)は、該第1軸線(A)に対して角度(γ)で傾けられ、該角度(γ)は該切削インサート(24)の側面視において見られるように前記頂面(32)から前記底面(34)へ変化し、そして、
該第2角度(β2)は、該第3部(78)と該第3当接部(68)との間の接触の領域で、該角度(γ)よりも大きいまたは等しい、
請求項14に記載の切削工具(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−515660(P2012−515660A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547051(P2011−547051)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/IL2009/001228
【国際公開番号】WO2010/084485
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(306037920)イスカーリミテッド (93)
【Fターム(参考)】