説明

切削工具および切削工具を用いた被削材の切削方法

【課題】 溝入れ加工の中でも特に端面溝入れ加工に適した切削工具を提供する。
【解決手段】 本発明の切削工具1は、切刃5を有する切削インサート1と、先端部に切削インサート1を挟持し、切削インサート1に接触するインサート接触部103a,103bをそれぞれに有する上顎部101および下顎部102を有しているホルダとを備える切削工具1であって、下顎部102のインサート接触部103bは、先端視において、それぞれの端部から中央部に向かうにつれて上方に傾斜している第1接触面104aおよび第2接触面104bを有しており、第1接触面104aと第2接触面104bとがなす角度αは、インサート接触部103bの先端において最も小さくなっている。そのため、特に被削材30の端面に端面溝入れ加工時において、第1接触面104aおよび第2接触面104bが切刃5のねじれモーメントによる切削インサート1の左右方向に働く応力を効果的に分散させ、切削インサートの左右方向の位置ずれを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具および切削工具を用いた被削材の切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具、特に突切り加工用や溝入れ加工用の切削工具について、装着した切削インサートの横ずれを抑制することが検討されている。例えば、特許文献1には、上面側と底面側にホルダ取付け係合面がそれぞれ備えられた切削インサートが開示されている。この切削インサートの上面側の取付け係合面は、その横断面が頂角を有するV突起とされ、底面側の取付け係合面は、その横断面が頂角を有するV溝を呈している。V溝とV突起によって、切削インサートの左右方向の位置ずれが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−149204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような切削インサートを用いた切削工具においても、例えば、被削材の端面に環状の溝を形成する端面溝入れ加工を行なう場合には、切刃の左右において、加工径の違いによって切削速度が異なるため、切刃部分にねじれモーメントが働き、切削インサートが左右に位置ずれしやすくなる場合がある。
【0005】
本発明の目的は、突切り加工および溝入れ加工、特に端面溝入れ加工に適した切削工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の切削工具は、切刃を有する切削インサートと、先端部に前記切削インサートを挟持し、該切削インサートに接触するインサート接触部をそれぞれに有する上顎部および下顎部を有しているホルダとを備える切削工具であって、前記下顎部の前記インサート接触部は、先端視において、それぞれの端部から中央部に向かうにつれて上方に傾斜している第1接触面および第2接触面を有しており、前記第1接触面と前記第2接触面とがなす角度は、前記インサート接触部の先端において最も小さくなっている。
【0007】
また、本発明の切削工具は、切刃を有する切削インサートと、先端部に前記切削インサートを挟持し、該切削インサートに接触するインサート接触部をそれぞれに有する上顎部および下顎部を有しているホルダとを備える切削工具であって、前記下顎部の前記インサート接触部は、先端視において、それぞれの端部から中央部に向かうにつれて下方に傾斜している第1接触面および第2接触面を有しており、前記第1接触面と前記第2接触面とがなす角度は、前記インサート接触部の先端において最も小さくなっている。
【0008】
本発明の被削材の切削方法は、該被削材を回転させる工程と、回転している前記被削材に前記切削工具を近接させる工程と、回転している前記被削材に前記切削工具の切刃を接触させて前記被削材を切削する工程と、切削した前記被削材から前記切削工具を離間させる工程とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の切削工具によれば、下顎部のインサート接触部は、先端視において、それぞれ
の端部から中央部に向かうにつれて上方あるいは下方に傾斜している第1接触面および第2接触面を有しており、第1接触面と第2接触面とがなす角度は、インサート接触部の先端において最も小さくなっている。そのため、特に被削材の端面に環状の溝を形成する端面溝入れ加工時において、第1接触面および第2接触面が切刃のねじれモーメントによって切削インサートの左右方向に働く力を受け止め切削インサートの左右方向の位置ずれを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の切削工具の実施の形態の例を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示す切削工具の側面図であり、(b)は、図2(a)に示す切削工具に用いられるホルダの側面図である。
【図3】(a)は、図2(b)に示すホルダの先端視図であり、(b)は、図3(a)の部分拡大図である。
【図4】(a)は、図2(b)に示すホルダの下顎部のA−A線における断面図であり、(b)は図2(b)のB−B線における断面図であり、(c)は、図2(b)のC−C線における断面図である。
【図5】図1に示す切削工具に用いられる切削インサートの斜視図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の被削材の切削方法の一例を示す概略図であり、(d)は、加工した被削材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<切削工具>
以下、本発明の切削工具の実施の形態の例について、図1〜5を用いて詳細に説明する。本発明の切削工具は、内径の溝入れ加工用、外径の溝入れ加工用、突切り加工用、端面溝入れ加工用のいずれにも適用することができる。本例においては、端面溝入れ加工用に適用する場合を例に挙げて説明する。
【0012】
図1および図2(a)に示すように、切削工具20は、切刃5を有する切削インサート1(以下、単にインサート1ということがある)と、先端部に切削インサート1を挟持するホルダ100とを備えている。ホルダ100は、インサート1を挟持する上顎部101および下顎部102を有している。上顎部101は、下顎部102よりも高い位置にある。なお、インサート1は切刃5が上顎部101の先端から突出するように挟持されている。
【0013】
ホルダ100は、図2(b)に示すように、インサート1に接触するインサート接触部103をそれぞれに有する上顎部101および下顎部102を有している。具体的には、上顎部101にはインサート接触部103aを、下顎部102にはインサート接触部103bを有している。
【0014】
インサート接触部103aは、図3に示すように、先端視において、それぞれの端部から中央部に向かうにつれて下方に傾斜している。この構成によって、インサート1の左右方向の位置ずれを抑制することができる。
【0015】
インサート接触部103bは、先端視において、それぞれの端部から中央部に向かうにつれて上方に傾斜している第1接触面104aおよび第2接触面104bを有している。本例において、図3(b)に示すように、先端視において、第1接触面104aと第2接触面104bは、インサート接触部103bの端部と端部を結んだ直線Lよりも上側で直線Lの垂直2等分線(図示せず)上で交差するように傾斜して凸状を成している。この構成によって、切削時にインサート1の左右方向にかかる力を受け止め、インサート1が左右方向の位置ずれを抑制することができる。また、インサート1にクラック
が生じることを抑制することもできる。なお、本例においては、第1接触面104aおよび第2接触面104bが上方に傾斜している態様を示したが、インサート1の底面形状に応じて、下方に傾斜していてもよい。
【0016】
本例では、インサート接触部103bの先端部において第1接触面104aと第2接触面104bとがなす角度αは、インサート接触部103bの先端において最も小さくなっている。具体的には、図4(a)〜(c)に示す第1接触面104aおよび第2接触面104bの成す角を、それぞれ順にα1,α2,α3とすると、α1<α3<α2である。この構成によって、切削加工の際に、左右方向の力を最も強く受けるインサート接触部103bの先端部において、その力を、第1接触面104aおよび第2接触面104bによって、効果的に受け止めることができるため、インサート1の左右方向の位置ずれを抑制できる。
【0017】
なお、角度αは、インサート1およびホルダ100の強度維持の観点から、90°〜140°の範囲にあるのが好ましい。本例においては、図4に示すように、α1=134°15’,α2=138°48’,α3=136°30’に設定されている。
【0018】
インサート接触部103bの角度αについて、中央部や後端部におけるそれぞれの大きさの関係については特に限定されないが、インサートの拘束力の向上の観点から、インサート接触部103bの後端部における角度αは最も大きいことが好ましい。また、角度αの大きさの変化は、線形であっても非線形であってもよい。また、第1接触面104aおよび第2接触面104bの面の形状についても特に限定されず、第1接触面104aおよび第2接触面104bは、応力の分散をより良好にする観点から、曲面であってもよい。その場合における角度αの大きさとしては、直線Lに平行で、かつ第1接触面104aと第2接触面104bと交差する方向の断面において、曲線として示される第1接触面104aおよび第2接触面104bのそれぞれの接線どうしのなす角度を計測して角度αとすればよい。なお、インサート1にクラックが生じることを抑制するため、図4(b)に示すように、第1接触面104aと第2接触面104bとの間に頂面104cを有していてもよい。この場合、第1接触面104aと第2接触面104bとの仮想延長線のなす角度を計測して角度αとすればよい。
【0019】
また、角度αはインサート接触部103bの先端から後端に向かうにつれて漸次大きくなっているのが好ましい。この構成によって、応力の分散をより良好にし、かつインサート1およびホルダ100の強度を維持できる。なお、インサート1およびホルダ100の強度維持の観点から、角度αの最大値と最小値との差が5°〜10°であるのが好ましい。
【0020】
また、本例においては、図4に示すように、第1接触面104aの幅Waと、第2接触面104bの幅Wbとの関係は、Wa≧Wbである。この構成によって、インサート1を安定して拘束させ、左右方向の位置ずれを抑制できる。
【0021】
なお、端面溝入れ加工に用いられる場合には、インサート接触部103bの先端視において第1接触面104aは第2接触面104bよりも被削材30の回転中心に近い側に位置しており、第1接触面104aの幅Waは、第2接触面104bの幅Wbよりも大きいことが好ましい。
【0022】
端面溝入れ加工において、より負荷の高い切削条件の場合は、切刃の被削材の回転中心に近い側、すなわち加工溝の内周側に位置する端部と、もう一方の切刃の被削材の回転中
心に遠い側、すなわち加工溝の外周側に位置する端部とが受ける切削抵抗の差が大きくなる。具体的には、切削速度の小さな内周側の方が切削抵抗が大きく、切削速度の大きな外周側の方が切削抵抗が小さい。そこで、被削材30の回転中心に近い側に位置した第1接触面104aの幅を、第2接触面104bの幅よりも大きくすることで、左右方向に加わる力のバランスを調整し、インサート1の位置ずれをより確実に抑制することができる。ここで、幅とは、図4に示すように、先端視において、直線として示される第1接触面104aおよび第2接触面104bの長さのことである。第1接触面104aおよび第2接触面104bが曲面の場合は、直線Lに平行で、かつ第1接触面104aと第2接触面104bと交差する方向の断面において、曲線として示される第1接触面104aおよび第2接触面104bの弧の長さを計測すればよい。
【0023】
なお、下顎部102のインサート接触部103bについて詳細に述べたが、より良好にインサート1の左右方向の位置ずれを抑制するために、上顎部101のインサート接触部103aに、インサート接触部103bの形状が適用されていてもよい。
【0024】
また、本例においては、図4に示すように、下顎部102が先端視において、加工溝の外周に沿って湾曲している。下顎部102が先端視において、鉛直に形成されている場合は、端面溝入れ加工では環状の溝を形成するため、加工中に下顎部102が加工溝に接触することとなるので、加工溝の深さは、切刃5から下顎部102までの距離に限られる。したがって、あらかじめ加工径を決定し、その加工溝の外周に沿って下顎部102を湾曲させている。
【0025】
さらに、本例においては、図4に示すように、加工溝の内周側に位置する第1接触面104aと下顎部102との交差部に面取り部104dが設けられている。切削時には、切削インサート1の先端が上方から押圧されるので、上顎部101よりも下顎部102に強い応力がかかりやすい。この構成によって、下顎部の肉厚を大きくし、ホルダの強度を高めることができる。
【0026】
また、環状の溝を加工するため、インサート1とホルダ100との接触部分において、内径側は外径側よりも切屑が入りこみやすくなる。したがって、面取り部104dを設けることで、切屑が下顎部102の下端部側へと流れるようにすることができる。
【0027】
また、図2に示すように、上顎部101および下顎部102に対して後端側には、シャンク部105が形成されている。さらに、本例のホルダ100には、上顎部101から下顎部102にかけてクランプネジ106を挿通するためのネジ穴107が形成されている。
【0028】
また、ホルダ100全体に、特に高い耐久性が求められる場合には、上顎部101、下顎部102およびシャンク部105が一体的に成型されていることが好ましい。これらが一体的に成型されることにより、上顎部101とシャンク部105および下顎部101とシャンク部105との間に接合面が形成されないので、切削工具20の剛性をさらに高めることができる。
【0029】
本発明の効果を得ながら、切削工具20のコストを抑えるためには、上顎部101やシャンク部105の材質よりも下顎部102の材質の剛性が高いことも有効である。切削工具20の使用時には、切削インサート1の先端が上方から押圧されるので、上顎部101やシャンク部105よりも下顎部102に強い応力がかかりやすい。そして、剛性の高い材質は高価であったり、あるいは、加工に高度の技術が要求されることから、比較的大きな応力のかかる下顎部102に高剛性の材質を用い、比較適応力の小さい上顎部101やシャンク部15に下顎部102と比較して剛性の低い加工の容易な材質を用いることで、
耐久性が高く、かつ安価な切削工具20を製造することができる。
【0030】
また、図1および図2に示すように、ホルダ100には、上顎部101および下顎部102よりも後端側にスリット109を備えていることが好ましい。スリット109によって、上顎部101あるいは下顎部102が、より弾性変形し易くなるので、切削インサート1のホルダ100への着脱を容易にすることができる。
【0031】
また、下顎部102には、インサート1の後端側の側面と当接させて位置決めをする当接部108が形成されている。この場合、特に当接面108の上方にスリット109が形成されていることが好ましい。スリット109が当接部108の上方に形成されている場合には、当接面108の下顎部よりも下方に形成されている場合に比べて、スリット109の下方のホルダ100の厚みを大きくすることができる。
【0032】
図5に示すように、本例においては、インサート1は、略角柱状であり、両端部に切削部Iと、切削部Iの間に位置し、ホルダ100で固定される際に上顎部101及び下顎部102と接するクランプ面21,31を有するクランプ部IIとを備えている。
【0033】
また、切削部Iは、平面視において、2つの長辺と2つの短辺とを有した長方形状をなし、上面2と下面3と上面2および下面3に接続されている側面4とを有する。上面2はすくい面として、下面3はホルダへ載置する載置面として、そして側面4は逃げ面として機能する。また、本例においては、インサート1の長手方向の長さが20mmであり、平面視において、長手方向に垂直な幅方向の長さが3〜6mmである。この幅は、加工中、被削材に加工された溝の内壁面にインサートが干渉しないように、クランプ部IIに近づくにつれて小さくなっている。インサート1の下面3から上面2までの高さは、インサート1の幅方向の長さに応じて4〜6mmに設定されている。
【0034】
上面2と側面4との交線部には、切刃5が設けられている。切刃5は、例えば、切削部Iの長手方向および幅方向の交線部に沿って設けられている。切刃5の形状としては、直線状または円弧状など特に制限はされない。
【0035】
また、クランプ部IIには、上方にクランプ面21を、下方にクランプ面31を備え、ホルダ100の上顎部101および下顎部102のインサート接触部103a,103bにそれぞれ嵌合する形状をしていることが好ましい。このようなクランプ面21,31を有していることにより、インサート1の位置が安定し、位置決めの精度をより高め、拘束力を高めることができる。
【0036】
特に、図5に示すように、クランプ面21,31は凹形状であり、図3に示すように、上顎部101および下顎部102にそれぞれ形成されたインサート接触部103a103bが凸形状であることが好ましい。この構成によって、インサート1にクラックが生じる可能性をより抑制できる。
【0037】
切削インサート1の材質としては、例えば、超硬合金あるいはサーメットなどが挙げられる。超硬合金の組成としては、例えば、炭化タングステン(WC)にコバルト(Co)の粉末を加えて焼結して生成されるWC−Co、WC−Coに炭化チタン(TiC)を添加したWC−TiC−Co、WC−TiC−Coに炭化タンタル(TaC)を添加したWC−TiC−TaC−Coがある。また、サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料であり、具体的には、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)を
主成分としたチタン化合物がある。
【0038】
切削インサート1の表面は、化学蒸着(CVD)法または物理蒸着(PVD)法を用いて被膜でコーティングされていてもよい。被膜の組成としては、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)およびアルミナ(Al)などが挙げられる。
【0039】
インサート1のホルダ100への固定は、例えば以下のようにして行なうことができる。図1および図2(a)に示すように、まず、上顎部101と下顎部102との間に、インサート接触部103a,103bに沿うようにして切削インサート1を挿入し、切削インサート1の後端側の側面4を当接部108に押し当てる。
【0040】
次に、クランプネジ106を締め込み、上顎部101を弾性変形させて押し下げる。その結果、インサート1が下顎部102に押圧され、上顎部101と下顎部102との間に挟持固定される。さらにここで、スリット109が形成されているときには、スリット109により上顎部101がより弾性変形しやすくなるので、より容易に上顎部102の先端を押し下げることができる。
【0041】
また、切削インサート1は、切削部Iは、クランプ部IIの両端に対で設けられるのが好ましい。これによって、インサート1は複数の切刃5を備えることになり、長時間の使用による切刃5の摩耗に対しても、別の摩耗していない切刃5を用いることができ、別途新たなインサート1を用意する必要がないので経済的である。例えば、本実施形態の切削工具20にあって、一方の切刃5が摩耗した場合には、切削工具20からインサート1を取り外し、インサート1の切削部Iの他方の切削部Iとを入れ替えて、再度切削工具20に取り付ければよい。これにより、摩耗していない切刃5をホルダ100の外方に位置させ、切削加工に用いることができる。
【0042】
<被削材の切削方法>
以下、本発明の切削工具20を用いて行なう被削材の切削方法の例について、図6を用いて説明する。本例は、端面溝入れ加工であるため、図6(d)に示すように、被削材の端面には、環状の溝31が形成される。なお、図6(a)〜(c)に示された被削材は、一部を断面図で記載している。
【0043】
切削工具20を用いて行なう被削材の切削方法は、以下の(i)〜(iv)の工程を有する。
(i)図6(a)に示すように、被削材30を矢印D方向に回転させる工程。
(ii)切削工具20を矢印E方向に動かし、回転している被削材30に切削工具20を近接させる工程。
(iii)図6(b)に示すように、回転している被削材30に切削工具20の切刃5を接触させて被削材30を切削する工程。
(iv)図6(c)に示すように、切削工具20を矢印F方向に動かし、切削した被削材30から切削工具20を離間させる工程。
【0044】
なお、前記(i)の工程では、被削材30と切削工具20とは相対的に近づけばよく、例えば被削材30を切削工具20に近づけてもよい。これと同様に、前記(iv)の工程では、被削材30と切削工具20とは相対的に遠ざかればよく、例えば被削材30を切削工具20から遠ざけてもよい。また、前記(iii)の工程においては、溝入れ加工の際には、溝を形成する縦送り加工が行なわれるとともに、溝の底面を平坦にする横送り加工が行なわれる。切削加工を継続する場合には、被削材30を回転させた状態を保持したまま、被削材30の異なる箇所に切削工具20の切刃5を接触させる工程を繰り返せばよい。
【0045】
さらに、被削材の材質の代表例としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄、非鉄金属が挙げられる。
【0046】
なお、本例では左勝手のホルダを用いて説明したが、右勝手のホルダであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 切削インサート
2 上面
21 クランプ面
3 下面
31 クランプ面
4 側面
5 切刃
100 ホルダ
101 上顎部
102 下顎部
103 インサート接触部
103a 上顎部のインサート接触部
103b 下顎部のインサート接触部
104 接触面
104a 第1接触面
104b 第2接触面
104c 頂面
104d 面取り部
105 シャンク部
106 クランプネジ
107 ネジ穴
108 当接部
109 スリット
20 切削工具
30 被削材
31 環状の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切刃を有する切削インサートと、先端部に前記切削インサートを挟持し、該切削インサートに接触するインサート接触部をそれぞれに有する上顎部および下顎部を有しているホルダとを備える切削工具であって、
前記下顎部の前記インサート接触部は、先端視において、それぞれの端部から中央部に向かうにつれて上方に傾斜している第1接触面および第2接触面を有しており、
前記第1接触面と前記第2接触面とがなす角度は、前記インサート接触部の先端において最も小さくなっていることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
切刃を有する切削インサートと、先端部に前記切削インサートを挟持し、該切削インサートに接触するインサート接触部をそれぞれに有する上顎部および下顎部を有しているホルダとを備える切削工具であって、
前記下顎部の前記インサート接触部は、先端視において、それぞれの端部から中央部に向かうにつれて下方に傾斜している第1接触面および第2接触面を有しており、
前記第1接触面と前記第2接触面とがなす角度は、前記インサート接触部の先端において最も小さくなっていることを特徴とする切削工具。
【請求項3】
前記第1接触面と前記第2接触面とがなす角度は、前記インサート接触部の先端から後端に向かうにつれて大きくなっている請求項1または2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記第1接触面と前記第2接触面とがなす角度の最大値と最小値との差が5°〜10°である請求項3に記載の切削工具。
【請求項5】
前記切削工具は、回転している被削材の端面に環状の溝を形成するために用いる旋削工具であって、
前記インサート接触部の先端視において、前記第1接触面は前記第2接触面よりも前記被削材の回転中心に近い側に位置しており、
前記第1接触面の幅は、前記第2接触面の幅よりも大きい請求項1から4のいずれかの項に記載の切削工具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの項に記載の切削工具を用いて被削材を切削する方法であって、
該被削材を回転させる工程と、
回転している前記被削材に前記切削工具を近接させる工程と、
回転している前記被削材に前記切削工具の前記切刃を接触させて前記被削材を切削する工程と、
切削した前記被削材から前記切削工具を離間させる工程とを有する被削材の切削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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