説明

切削工具

【課題】刃部に測温部を設けて刃先温度を測定可能とした切削工具において、切削時における切り屑の測温部への接触を適切に防止する。
【解決手段】被切削部材Kを切削する三角形板状をなす刃部10を備え、刃部10のうちの一方の板面10aの一角部が刃先11とされており、刃部10には、刃先11近傍の温度を検出する測温部20が設けられ、刃部10が固定されて支持される支持部30を備える切削工具において、測温部20は、刃部10の側面10cのうち刃先11寄りの部位に配置されており、刃部10には、刃先11を露出させつつ測温部20とは離れて対向した状態で測温部20を覆うことにより、切削時に刃先11によって被切削部材Kから発生する切り屑から測温部20を保護するカバー部材50が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切削部材を切削する刃部と、刃部の刃先近傍に設けられ刃先近傍の温度を検出する測温部とを備える切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の切削工具としては、多角形板状をなし一方の板面の一つの角部を刃先とする刃部と、刃部に設けられ刃先近傍の温度を検出する測温部と、この刃部が固定されて支持される支持部とを備えるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような切削工具は、たとえば被切削部材を回転させて切削する、いわゆる旋削などの加工に用いられる。そして、切削時に刃先の温度を高応答性をもって計測することが可能であるため、加工状態の微小変化を感度良く検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3213725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、測温部は一般にサーミスタや熱電対よりなるが、刃部の刃先にて被切削部材を切削するとき、切り屑が測温部に接触して、測温部に衝撃を加えることがある。そうすると、測温部の長期的な信頼性を確保することが困難になる。
【0006】
また、これに対して、たとえば測温部をTiN(窒化チタン)などの薄膜でコーティングすることが考えられる。しかし、この場合、TiNという異種金属で測温部をコーティングすることになるため、その異種金属の温度が外乱となって、測温部で検出される温度が、刃部の母材金属の温度を正確に反映しづらいものとなる。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、刃部に測温部を設けて刃先温度を測定可能とした切削工具において、切削時における切り屑の測温部への接触を適切に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来の上記特許文献1の切削工具について鋭意検討を行った。上記特許文献1では、刃部の板面であるすくい面に測温部を設けていた。そして、本発明者は、高速度撮影による切削状態の観察を行ったところ、切り屑は、刃部のうち主として上記すくい面に直接接触しやすく、当該すくい面に比べて、刃部の板厚方向に沿って延びる側面(いわゆる横逃げ面)の方が接触しにくいことを確認した。そこで、この刃部の側面に測温部を設けることにした。
【0009】
さらに検討を進めたところ、本発明者の上記切削状態の観察によれば、切り屑が被切削部材から切れずに延びる場合には、その切り屑は刃部の側面にまで延びて当該側面に接触することが発生することを確認した。そこで、この側面に設けた測温部を保護するカバー部材を設けることに着目した。本発明は、このような検討の結果、創出されたものである。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明では、被切削部材を切削する多角形板状をなす刃部(10)を備え、刃部(10)のうちの一方の板面(10a)の一角部が刃先(11)とされており、刃部(10)には、刃先(11)近傍の温度を検出する測温部(20)が設けられ、刃部(10)が固定されて支持される支持部(30)を備える切削工具において、測温部(20)は、刃部(10)における板厚方向に沿って延びる側面(10c)のうち刃先(11)寄りの部位に配置されており、刃部(10)には、刃先(11)を露出させつつ測温部(20)とは離れて対向した状態で測温部(20)を覆うことにより、切削時に刃先(11)によって被切削部材から発生する切り屑から測温部(20)を保護するカバー部材(50)が取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
それによれば、刃部(10)の側面(10c)に測温部(20)を設けているので、刃部(10)の一方の板面(10a)に測温部(20)を設ける場合に比べて、被切削部材の切削時に発生する切り屑が測温部(20)に接触しにくい。また、切り屑が刃部(10)の側面(10c)に向かってきた場合でも、測温部(20)はカバー部材(50)で保護されているので、切り屑は測温部(20)に当たらず測温部(20)がダメージを受けるのを防止できる。
【0012】
また、カバー部材(50)は、測温部(20)とは隙間を介して離れた状態とされているので、カバー部材(50)の温度が測温部(20)の検出温度に影響することは、極力回避され、刃先(11)近傍の温度を正確に検出することができる。よって、本発明によれば、切削時における切り屑の測温部(20)への接触を適切に防止することができる。
【0013】
ここで、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の切削工具においては、カバー部材(50)は、刃部(10)の一方の板面(10a)に接して一方の板面(10a)に固定された第1の板部(51)と、この第1の板部(51)から測温部(20)が配置されている側面(10c)に沿って曲げられて測温部(20)を被覆する第2の板部(52)とを備えるものにできる。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の切削工具において、刃部(10)は、その板厚方向に貫通する穴(12)を有しており、この穴(12)に挿入されたボルト(40)によって刃部(10)は支持部(30)にねじ止めされており、ボルト(40)は、カバー部材(50)の第1の板部(51)を貫通して第1の板部(51)を刃部(10)の一方の板面(10a)にねじ止めしていることを特徴とする。
【0015】
それによれば、カバー部材(50)の刃部(10)への取り付けと、刃部(10)の支持部(30)への固定とを、ボルト(40)のねじ止めにより一括して簡単に行える。
【0016】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る切削工具の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1中の刃部において測温部が設けられている側面の概略構成を示す平面図である。
【図3】図2中のA−A概略断面図である。
【図4】サーミスタの平面形状の一例を示す図である。
【図5】実施形態の切削工具を用いた切削時の状態を切り屑とともに示す概略斜視図である。
【図6】実施形態の効果を具体的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る切削工具の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1中の刃部10において測温部21が設けられている側面10cの概略構成を示す平面図である。図3は、図2中の一点鎖線A−Aに沿った概略断面図である。なお、図1、図3においては、測温部20の形状を表すために、測温部20を被覆する保護膜14は省略してある。
【0020】
本実施形態の切削工具は、大きくは、被切削部材Kを切削する刃部10と、刃部10に設けられ刃先11近傍の温度を検出する測温部20と、刃部10が固定されて支持される支持部30と、を備えて構成されている。
【0021】
刃部10は、サーメット等の導電性金属を母材としたものであり、多角形板状をなすものである。ここでは、刃部10は表裏の両板面10a、10bが三角形である三角形板状をなしており、当該両板面10a、10bの一方を支持部30に接した状態で、刃部10は支持部30に支持されている。
【0022】
ここでは、刃部10は、刃部10を板厚方向に貫通する穴12(図3参照)を有しており、この穴12に挿入されたボルト40によって刃部10は支持部30にねじ止めされている。この支持部30は、たとえば鉄系金属等よりなるもので、刃部10を固定・支持するとともに、刃部10が被切削部材Kに当たるように、刃部10を所定位置に移動させるものである。
【0023】
具体的には、鉄系金属等などよりなるボルト40は、刃部10の当該貫通穴12を貫通し、支持部30側に突出したボルト40の先端部が、支持部30に設けられた図示しないネジ穴にネジ止めされることにより、ボルト40とともに刃部10は支持部30に固定されるようになっている。また、このボルト40により、刃部10は、支持部30に対して取り付け・取り外しが可能とされている。
【0024】
そして、この刃部10のうちの一方の板面10a、具体的には支持部30に支持される側の板面10b(図3参照)とは反対側の板面10aの一つの角部が刃先11とされている。ここで、当該一方の板面10aのうち刃先11およびその近傍部が、いわゆる、すくい面として構成されている。
【0025】
そして、この刃先11が被切削部材Kに直接接触することで、被切削部材Kが切削される。なお、実際には、刃先11は若干、R形状とされている。ここで、被切削部材Kは、たとえば金属製棒状のものであり、切削時には図1中の矢印に示されるように、その軸方向に回転する。
【0026】
そして、ここでは、この回転する被切削部材Kの周面に刃部10の刃先11を当てることにより、被切削部材Kは、その径が細くなるように切削されて加工されるようになっている。具体的には、図1において、被切削部材Kのうち刃先11よりも左側が径が太くなっており、右側が切削されて径が細くなっている。
【0027】
また、刃先11近傍の温度を検出する測温部20は、刃部10のうち刃先11近傍の部位に設けられているが、この測温部20は、刃先11には接触せず離れて配置されている。ここでは、測温部20は、刃部10における板厚方向に沿って延びる側面10cのうち刃先11寄りの部位に配置されている。なお、この側面10cは、この種の切削工具において横逃げ面と呼ばれている面である。
【0028】
図2には、刃部10の側面10cのうち刃先11として用いられる部位は、切り込み量の領域として示してある。そして、当該側面10cには、この切り込み量の領域を避けて絶縁層13が形成されている。この絶縁層13は電気絶縁性材料よりなるもので、たとえば厚さ10μm程度のSiOなどよりなり、スパッタや蒸着などにより成膜される。
【0029】
なお、図2では、この切り込み量の領域は、刃先11となる角部(図2中の左側)からこれとは反対側(図2中の右側)の角部まで幅を持つものとされているが、これは、絶縁層13のパターニング成膜を容易にするためである。可能ならば、刃先11となる角部近傍のみを避けて、絶縁層13を形成したものであってもかまわない。
【0030】
そして、図2、図3に示されるように、測温部20は、この絶縁層13の上に形成され、測温部20と刃部10とは絶縁層13によって電気的に絶縁されている。本実施形態では、測温部20は、サーミスタ21と、このサーミスタ21の両端に接続された電極22、23よりなる。
【0031】
これらサーミスタ21および電極22、23は、同種の薄膜金属(ここではPt)からなるもので、上記特許文献1などと同様、スパッタやフォトリソグラフ法などのパターニング成膜技術を用いて形成されたものである。つまり、本実施形態の測温部20は、複数種の金属ではなく、単種金属よりなる薄膜より構成されたものである。
【0032】
ここで、図4は、サーミスタ21の平面形状の一例を示す図である。サーミスタ21は、刃先11近傍の温度を感知する部位であり、測温部20のうち最も刃先11に近い部位に配置されている。図4に示されるように、サーミスタ21は、複数回折り返された線によって全体として正方形状をなすように構成されたものであり、たとえば0.5mm角以下の正方形とされている。
【0033】
そして、各電極22、23はそれぞれ、サーミスタ21の各端部に一体に接続されており、温度変化に伴うサーミスタ21の抵抗値変化を電気的に取りだすものとして構成されている。これら電極22、23は、刃部10および支持部30に設けられた図示しない配線によって、パソコンなどにより構成される図示しない処理回路に電気的に接続されている。
【0034】
また、図1、図2では図示を省略しているが、図3に示されるように、刃部10の側面10cにおいては、絶縁層13の上に測温部20を被覆するように、保護膜14が形成されている。この保護膜14は、絶縁層13と略同一の平面形状を有するもので、保護膜14と絶縁層13とにより測温部20が挟まれた状態とされている。
【0035】
つまり、本切削工具においては、刃部10のうち支持部30に支持される側とは反対側の板面10aの一角部である刃先11は、絶縁層13、保護膜14のいずれにも被覆されておらず、また異種金属等によるコーティングもされておらず、サーメット等の母材が露出した刃先11として構成されている。
【0036】
ここで、保護膜14は電気絶縁性材料よりなるもので、たとえば厚さ2μm程度のSiOなどよりなり、スパッタや蒸着などにより成膜される。この保護膜14により、測温部20は、切削時における切削水などから保護されるため、測温部20の電気的な短絡等が防止されるようになっている。
【0037】
そして、図1、図2に示されるように、本実施形態の切削工具においては、さらに、刃部10とは別体であって測温部20を被覆して保護するカバー部材50が、刃部10に取り付けられている。このカバー部材50は、刃先11を露出させつつ測温部20とは離れて対向した状態で測温部20を覆うものであり、鉄系金属などよりなる。
【0038】
具体的には、本実施形態のカバー部材50は、刃部10の上記すくい面側となる一方の板面10aに接して当該一方の板面10aに固定された第1の板部51と、第1の板部51から測温部20が配置されている刃部10の側面10cに沿って曲げられて測温部20を被覆する第2の板部52とを備えるものである。なお、刃部10の一方の板面10aのうち上記すくい面は、第1の板部51より露出している。
【0039】
つまり、このカバー部材50は、刃部10における一方の板面10aと側面10cとの間の角部にて折り曲げられたL字状の板材とされている。そして、第2の板部52は、測温部20とは空間を持って離れた状態で測温部20を覆っている。このことは、第2の板部52は、測温部20を被覆している上記保護膜14(図3参照)とも隙間を介して離れているということである。
【0040】
ここで、上述したが、刃部10は、その板厚方向に貫通する穴12(図3参照)に挿入されたボルト40によって支持部30にねじ止めされているが、このボルト40によって、カバー部材40は刃部10にネジ止めされ、固定されている。
【0041】
具体的には、カバー部材50の第1の板部51には、ボルト40が貫通する図示しない穴が設けられている。そして、ボルト40は、カバー部材50の第1の板部51を貫通して第1の板部51を刃部10の一方の板面10aにねじ止めしている。
【0042】
このようなボルト40を用いた固定構成によれば、第2の板部52で測温部20を覆いつつ第1の板部51を一方の板面10aに接触させるように、カバー部材50を刃部10に搭載するとともに、これらカバー部材50および刃部10を支持部30に搭載した後、ボルト40によって、これら3個の部材10、30、50を一括してネジ止めしてやることで、図1に示される切削工具ができあがる。
【0043】
かかる切削工具を用いた切削について、図5を参照して述べる。図5は、本実施形態の切削工具を用いた切削時の状態を切り屑Cとともに示す概略斜視図である。
【0044】
図5中の矢印に示されるように、軸方向に回転する棒状の被切削部材Kに対して、その周面に刃部10の刃先11を当てることにより、被切削部材Kは、その径が細くなるように切削されて加工されるようになっている。
【0045】
このとき、当該加工と同時に、測温部20からの電気信号が上記図示しない処理回路に送られることにより、刃先11近傍の温度が高応答で検出される。そして、この検出信号の変化によって、加工状態の変化をモニターすることが可能となり、たとえば刃先11の劣化や被切削部材Kの加工異常などを検出できる。
【0046】
ここで、本発明者の高速度撮影による切削状態の観察によれば、切削時に発生するほとんどの切り屑は、刃先11から上記すくい面としての一方の板面10a上に飛び散るように発生するのが通常である。しかし、図5に示されるように、切り屑Cが被切削部材Kから切れずに延びる場合には、その切り屑Cは、被切削部材Kの回転方向に沿ってらせん状に巻きながら、刃部10の側面10cにまで成長することが確認された。
【0047】
このような切削状態に対して、本実施形態では、刃部10の側面10cに測温部20を設けているので、刃部10の一方の板面10aに測温部20を設ける場合に比べて、被切削部材Kの切削時に発生する切り屑が測温部20に接触しにくい。
【0048】
また、図5に示されるように、切り屑Cが刃部10の側面10cに向かってきた場合でも、測温部20はカバー部材50で保護されているので、切り屑Cは測温部20に当たらない。そのため、本実施形態によれば、切り屑Cによる測温部20の損傷を回避でき、測温部20の信頼性の向上が可能となる。
【0049】
また、本実施形態によれば、カバー部材50は、測温部20とは隙間を介して離れた状態とされているので、カバー部材50の温度が測温部20の検出温度に影響することは、極力回避され、刃先11近傍の温度を正確に検出することができる。このように、本実施形態によれば、切削時における切り屑の測温部20への接触を適切に防止することができる。
【0050】
ここで、図6は、本実施形態の効果を具体的に示す概念図であり、横軸に切削速度、縦軸に切り込み量を表している。図6の縦横両軸内において右上に行くほど、すなわち、切削時において、加工条件である切り込み量および切削速度がそれぞれ大きくなるほど、切り屑は多く且つ大きくなる傾向にある。ここで、本発明者が必要と考えている通常加工条件は、図6中の一点鎖線で囲まれた範囲である。
【0051】
この通常加工条件に対して、従来のカバー部材を持たないものでは、切り込み量および切削速度が小さいうちは、図6中の「カバー無し測温可能範囲」に示されるように、測温が可能であるが、切り込み量および切削速度が大きくなると、切り屑による測温部20の損傷が大きくなり、測温が不可能となる。
【0052】
それに対して、本実施形態では、カバー部材50により測温部20を切り屑から被覆・保護しているので、図6中の「カバー付測温可能範囲」に示されるように、従来よりも測温可能範囲が広くなり、通常加工条件の全域にて測温可能とされる。
【0053】
また、本実施形態によれば、カバー部材50を、切削に必要とされる刃先11に直接接触しないような配置としているため、カバー部材50の設置による切れ味への影響もない。また、刃部10の側面10cにおける上記絶縁膜13を、刃先11となる領域を避けて配置しているため、これも切れ味に影響することがない。
【0054】
このように、本実施形態によれば、切削加工時の測温応答性、本来の切れ味を維持したまま、測温部20の信頼性を向上することができる。そして、より厳しい加工条件においても、測温可能な切削工具を実現できる。
【0055】
また、本実施形態によれば、刃部10を支持部30にねじ止めするボルト40によって、カバー部材50を刃部10にねじ止めするようにしているので、カバー部材50の刃部10への取り付けと、刃部10の支持部30への固定とを、ボルト40のねじ止めにより一括して簡単に行える。
【0056】
(他の実施形態)
なお、測温部20の全体がカバー部材50によって被覆されたものであることが好ましいが、切り屑の接触を防止できる範囲で、測温部20の一部、たとえば刃先11寄りの一部がカバー部材50からはみ出していてもよい。
【0057】
また、刃部10は、上記した三角形板状のものに限定されるものではなく、支持部30に支持される側の板面の一角部が刃先とされるものであれば、たとえば、正方形、長方形、菱形など、あるいは、5以上の多角形板状のものであってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、カバー部材50は、第1の板部51が刃部10の一方の板面10aに接して第2の板部52が刃部10の側面10cに位置する測温部20を被覆するようにL字状に折り曲げられた板材とした。その他、カバー部材50としては、第1の板部51が、刃部10における上記一方の板面10aとは反対側の他方の板面10b(図2参照)、すなわち、刃先11となる板面とは反対側の他方の板面10bに接し、この他方の板面10bに位置する第1の板部51から第2の板部52が折り曲げられL字状にされたものとしてもよい。
【0059】
また、カバー部材50は、上記したL字に折り曲げられた板材に限定されるものではなく、刃先11を露出させつつ測温部20とは離れて対向した状態で測温部20を覆うように刃部10に取り付けられるものであれば、種々の形状が可能である。
【0060】
また、カバー部材50の刃部10への固定方法としては、上記ボルト40によるネジ止め以外にも、たとえば接着やかしめなどであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 刃部
10a 刃部の一方の板面
10c 刃部の側面
11 刃先
20 測温部
30 支持部
40 ボルト
50 カバー部材
51 カバー部材の第1の板部
52 カバー部材の第2の板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切削部材を切削する多角形板状をなす刃部(10)を備え、
前記刃部(10)のうちの一方の板面(10a)の一角部が刃先(11)とされており、
前記刃部(10)には、前記刃先(11)近傍の温度を検出する測温部(20)が設けられ、
前記刃部(10)が固定されて支持される支持部(30)を備える切削工具において、
前記測温部(20)は、前記刃部(10)における板厚方向に沿って延びる側面(10c)のうち前記刃先(11)寄りの部位に配置されており、
前記刃部(10)には、前記刃先(11)を露出させつつ前記測温部(20)とは離れて対向した状態で前記測温部(20)を覆うことにより、切削時に前記刃先(11)によって前記被切削部材から発生する切り屑から前記測温部(20)を保護するカバー部材(50)が取り付けられていることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記カバー部材(50)は、前記刃部(10)の前記一方の板面(10a)に接して前記一方の板面(10a)に固定された第1の板部(51)と、この第1の板部(51)から前記測温部(20)が配置されている前記側面(10c)に沿って曲げられて前記測温部(20)を被覆する第2の板部(52)とを備えるものであることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記刃部(10)は、その板厚方向に貫通する穴(12)を有しており、この穴(12)に挿入されたボルト(40)によって前記刃部(10)は前記支持部(30)にねじ止めされており、
前記ボルト(40)は、前記カバー部材(50)の前記第1の板部(51)を貫通して前記第1の板部(51)を前記刃部(10)の前記一方の板面(10a)にねじ止めしていることを特徴とする請求項2に記載の切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115968(P2012−115968A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270294(P2010−270294)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】