説明

切削研磨システムおよび方法

【課題】外科処置中に硬質物質を切削するのに有用な高圧流体ジェットシステムを提供する。
【解決手段】硬質物質の切削は、上記システムが高圧流体の流れと共に研磨用固形粒子を送出するときに、より有効である。1つの例示的な実施の形態では、研磨用固形粒子は、適用器具のノズルへの上記流体の送出前に、高圧流体の流れと混合可能である。これに代えて、研磨用固形粒子は、高圧流体の流れによって運ばれるか、あるいは高圧流体の流れが研磨用固形粒子の形態である固体あるいは懸濁液を浸食することができる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の技術分野〕
この発明は、高圧流体ジェットを利用した外科器具に関し、特に、外科処置中に硬質物質を切削するために高圧流体ジェットを利用した外科器具に関するものである。
【0002】
〔発明の背景〕
骨およびこれに類似した物質を切削するための圧力流体系の外科器具は、しばしば伝統的な外科切削装置および方法論より多少、優位に立つことができる。特に、高圧流体ジェットは、標的物質を懸濁させる傾向があり、これにより、レーザー切削装置および電気外科切削装置を用いて生じることがある熱的損傷を避けることができる。上記懸濁した物質は、吸引によって手術部位から容易に移送することができる。確かに、高圧流体ジェット切削装置の多くがその装置の一体部分として吸引および排出を含むという事実は、多くの外科処置に利点を追加することになる。
【0003】
骨およびこれに類似したものを切削するのに使用される現在の圧力流体系の外科システムに関連した1つの短所は、上記システムが一般に超高作用圧を必要とする点にあり、外科医の要求を満たすのに十分高感度で、控えめな寸法に設定された室内作用ポンプおよび外科機器を用いた上記のような水圧の送出はしばしば問題となることがある。
【0004】
したがって、流体圧力系の外科器具、特に硬質物質を切削するための流体圧力系の外科器具を改良する必要性がある。
【0005】
〔発明の概要〕
外科処置中において、骨およびこれに類似したものなどの硬質物質を切削するための種々の方法および装置が提供される。1つの例示的な実施の形態では、外科器具を経由して高圧流体の流れを送出して患者体内の硬質物質を切削するステップを含む方法が提供される。この発明を限定するものではない実施の形態によって、種々の流体が切削を実行するのに使用可能であるが、硬質物質を切削する流体は、有機物質から形成された複数の研磨用固形粒子を有する送出用液体を含むものである。上記研磨用固形粒子は種々の物質から形成可能であり、例示的な実施の形態では、上記研磨用固形粒子は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレンオキシド、これらの混合物および共重合体等の生体吸収性物質から形成されている。
【0006】
また、この発明は、例えばノズル経由で送出する前に、高圧流体の流れに研磨用固形粒子を混合するなど、送出用液体に研磨用固形粒子を混合するための種々の方法を提供する。他の実施の形態では、研磨用固形粒子は、高圧流体の流れがノズルから出た後に、高圧流体の流れによって運ばれるか、あるいは、これに代えて、一旦、高圧流体の流れがノズルから出ると、高圧流体の流れによって浸食される固体あるいは懸濁した物質の形態を採ることができる。この発明を限定するものではない実施の形態によって、固形物質が種々の形態を採ることができるが、上記固形物質をロッドとすることができる。さらに、上記固形物質は、固体領域と開口領域を有するプレートの形態を採ることができる。上記プレートの開口領域は、種々の形態を採ることができるが、1つの実施の形態では、上記開口領域は、上記プレートが高圧流体の流れに接触しているときに、硬質物質が開口領域の形状に対して相補的なパターンに切削されるような種々の形状および物質で形成されている。
【0007】
また、この発明は、外科処置中において組織を切削するためのシステムであって、高圧流体の流れを送出するのに有効な外科装置と、切削テンプレートを有するプレートを含むシステムを提供する。切削テンプレートは種々の形態を採ることができ、1つの実施の形態では、切削テンプレートは、高圧流体による浸食に対する抵抗性を有する固形物質から形成された領域と、この領域内に設けられた開口部とを有しており、開口部が研磨物質から形成された浸食可能なプラグによって閉塞可能である。
【0008】
〔発明の実施の形態〕
この発明は、添付図面と共に、次の詳細な記述からより完全に理解されるはずである。
【0009】
この明細書に開示された装置および方法の構造、機能、製造方法および使用方法の原理に対する完全な理解を提供するように、複数の例示的な実施の形態が記述される。1つまたはそれ以上の実施の形態は、添付図面に示されている。この明細書に詳細に記述されかつ添付図面に示された方法および装置がこの発明を限定しない例示的な実施の形態であり、かつこの発明の範囲が特許請求の範囲のみによって規定されることを、この発明の属する技術分野における当業者は理解するはずである。1つの例示的な実施の形態に関連して図示され、あるいは記述された態様は、他の実施の形態の態様と組み合わされてもよい。このような修正および変更はこの発明の範囲内に包含されるように意図されている。
【0010】
この発明は、外科処置中に、硬質物質を切削するのに有用な高圧流体ジェットシステムを提供する。硬質物質の切削は、上記システムが高圧流体で研磨用固形粒子を送出するときに、より有効である。1つの例示的な実施の形態では、研磨用固形粒子は、適用器具のノズルへ高圧流体を送出する前に、高圧流体の流れに混合可能である。これに代えて、研磨用固形粒子は高圧流体の流れによって運ばれるか、あるいは高圧流体の流れは研磨用固形粒子の形態である固体あるいは懸濁液を浸食することができる。この発明の属する技術分野における当業者は、この発明が、人体内で見出され、あるいは使用される骨、軟骨組織、骨セメント、生体接着剤、あるいは他のすべての硬質物質等の種々の硬質物質を切削するために使用可能であるので、広範囲の外科処置において使用可能であると正当に評価するはずである。
【0011】
種々の物質は、この発明の研磨用固形粒子を構成するために使用可能であり、その物質には、有機物質または無機物質が含まれる。1つの例示的な実施の形態では、研磨用固形粒子は生体適合性および生体吸収性である。この発明の属する技術分野における当業者は、上記物質を結晶質あるいは非晶質とすることができるものと正当に評価するはずである。さらに、結晶質物質は氷晶および他の凍結物質を含めることができる。
【0012】
上記研磨用固形粒子を構成するために使用できる生体吸収性物質の適切例は、脂肪族ポリエステル類、ポリ(アミノ酸)、(エーテルーエステル類)共重合体、ポリアルキレンオキザラート類(polyalkylenes oxalates)、ポリアミド類、チロシン誘導ポリカーボネート類、ポリ(イミノカーボネート)類、ポリオルトエステル類、ポリオキサエステル類(polyoxaesters)、ポリアミドエステル類、アミン基含有ポリオキサエステル類、ポリ(無水物)類、ポリホスファゼン類、生体分子(例えば、コラーゲン、エラスチン、生体吸収性デンプン等の生体高分子化合物類)およびこれらの混合物および共重合体からなる群より選択された重合体類を含む。
【0013】
この発明の目的のために、脂肪族ポリエステル類は、ラクチド(乳酸、D−,L−およびメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε―カプロラクトン、p−ジオキサン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチラート(hydroxybutyrate)、ヒドロキシバレレート(hydroxyvalerate)、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体である1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルフォリン(2,5-diketomorpholine)、ピバロラクトン(pivalolactone)、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレンカーボネート、エチレンオキザラート(ethylene oxalate)、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロクタン−7−オン(6,8-dioxabicycloctane-7-one)のホモ重合体および共重合体、およびこれらの重合体混合物を含むが、これらに限定されるものではない。この発明の目的のために、ポリ(イミノカーボネート)類は、ハードウッドアカデミック出版社(Hardwood Academic Press)から1997年に発行され、ドム(Domb)らにより編集された「生分解性高分子ハンドブック(Handbook of Biodegradable Polymers)」251頁〜272頁において、ケンニツアー(Kemnitzer)およびコーン(Kohn)によって記述されたような重合体類を含むものと理解される。この発明の目的のために、(エーテル−エステル類)共重合体は、1988年発行の生体物質研究誌(Journal of Biomaterials Research)第22巻993頁〜1009頁においてコーン(Cohn)およびヤンネス(Younes)によって記述され、かつ1989年発行の重合体プレプリント(Polymer Preprints)(高分子化学のACS部)第30(1)巻498頁においてコーン(Cohn)によって記述されたようなエーテル−エステル類共重合体を含むものと理解される(例えばPEO-PLA)。この発明の目的のために、ポリアルキレンオキザラート類は、米国特許第4,208,511号、同第4,141,087号、同第4,130,639号、同第4,140,678号、同第4,105,034号および同第4,205,399号に記述された物質を含むものと理解される。ポリホスファゼン類や、L−ラクチド、D,L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラ−ジオキサノン、トリメチレンカーボネートおよびε−カプロラクトンから形成された、共重合体、三次およびこれ以上の高次混合単量体系の重合体は、ワイリーインターサイエンス(Wiley Intersciences)、ジョンワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons)から1988年に発行された「高分子科学百科事典(The Encyclopedia of Polymer Science)」第13巻31頁〜41頁においてアルコック(Allcock)によって記述され、かつハードウッドアカデミック出版社(Hardwood Academic Press)から1997年に発行され、ドム(Domb)らにより編集された「生分解性高分子ハンドブック(Handbook of Biodegradable Polymers)」161頁〜182頁において、ヴァンドープ(Vandorpe)らによって記述されたような物質であると理解される。ポリ無水物は、「m」が2〜8の範囲の整数である式H00C−C64−O−(CH2m−O−C64−COOHという形態の二酸類の誘導体と、12個までの炭素数を有する脂肪族のアルファからオメガ二酸と上記式の物質との共重合体を含むものと理解される。ポリオキサエステル類、ポリオキサアミド類およびアミン類および/またはアミド基を含有するポリオキサエステル類は、次の米国特許第5,464,929号、同第5,595,751号、同第5,597,579号、同第5,607,687号、同第5,618,552号、同第5,620,698号、同第5,645,850号、同第5,648,088号、同第5,698,213号、同第5,700,583号および同第5,859,150号のうち、1つまたはそれ以上に記述された物質であると理解される。最後に、ポリオルトエステル類は、ハードウッドアカデミック出版社(Hardwood Academic Press)から1997年に発行され、ドム(Domb)らにより編集された「生分解性高分子ハンドブック(Handbook of Biodegradable Polymers)」99頁〜118頁において、ヘラー(Heller)によって記述された物質であると理解される。
【0014】
生体吸収性物質の例は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレンオキシド、これらの混合物および共重合体を含むが、これらに限定されるものではない。これに代えて、無機物質は、例えばリン酸三カルシウム等の研磨用固形粒子を形成するために使用可能である。
【0015】
結果として得られる研磨用固形粒子は、高圧流体ジェットノズルを劣化させないと同時に、硬質物質の切削を行えるすべてのサイズを採ることができる。1つの実施の形態では、研磨用固形粒子は、この研磨用固形粒子が高圧流体の流れに混合されるときに応じて、約5−200μmの範囲内のサイズを有することができる。例えば、ノズルを経由して高圧ジェットが流れる前に、研磨用固形粒子が高圧流体ジェットに混合する場合に、研磨用固形粒子は、ノズルを詰まらせないか、あるいはノズル性能を漸減させないように寸法設定される。これにより、1つの例示的な実施の形態では、研磨用固形粒子は、約5−200μmの範囲内のサイズ等、ノズルのサイズより実質的に小さいサイズとしてもよい。これに代えて、高圧流体ジェットがノズルから出た後に研磨用固形粒子を混合するステップを含む用途では、ノズルを詰まらせるか、あるいはノズル性能を漸減させることが大きな問題でないため、研磨用固形粒子は例えば約5−200μmの範囲内などの種々のサイズを採ることができる。
【0016】
実質的にすべてのタイプの高圧流体ジェットシステムがこの明細書に開示された種々の実施の形態用として使用できるが、このシステムは概ね、駆動機構および流体供給源を含むものである。流体供給源が人体内に安全に送出される種々の流体を利用できるが、1つの例示的な実施の形態では、流体は生理食塩水である。さらに、流体は、切削されるべき所望の物質のタイプによる種々の速度で、上記システムを通過することができるが、高圧流体の流れの送出圧力は、概ね、約5−50,000psi(ポンド/平方インチ)の範囲内であり、より好ましくは約1,000−20,000psi(ポンド/平方インチ)の範囲内であり、最も好ましくは約5,000−15,000psi(ポンド/平方インチ)の範囲内である。研磨用物質および送出用液体を高圧流体の流れに混合した後で、高圧流体の流れにおける研磨物質の濃度は、約30体積%より低く、より好ましくは約5体積%−20体積%の範囲内である。
【0017】
図1Aは、研磨物質からなる粒子を高圧流体の流れに混合することによって、外科処置において硬質物質を切削するのに有用な高圧流体ジェットシステム10の1つの例示的な実施の形態を示している。図示されているように、上記システム10は、駆動機構16との間で流体が連通する状態にある、生理食塩水等の流体供給源20を含めることができる。駆動機構16は、高圧流体の流れが流体ジェット送出装置すなわち適用器具28に入る前に、研磨用固形粒子および生理食塩水等の送出用液体の濃縮した懸濁液(スラリー)33が高圧流体の流れに混ぜられるように、上記流体を懸濁液ポンプ用駆動機構31に連通させる。流体供給源20は、種々の方法を用いて駆動機構16に連結可能であるが、1つの例示的な実施の形態では、流体供給源20は、流体供給源20と駆動機構16との間に延在する導管26(以下に詳述される)を含むものである。同様に、駆動機構16、懸濁液ポンプ用駆動機構31および適用器具28もまた、流体供給源20と駆動機構16との間に延在する導管26によって連結可能である。この発明の属する技術分野における当業者は、高圧流体ジェットシステム10が他の種々の構成要素を含めることができ、かつ、その各構成要素が種々の形状を有することができるものと正当に評価するはずである。さらに、上記構成要素は、互いに一体に構成されるか、あるいは、互いに取外し可能に取り付けられることが可能である。
【0018】
実質的にすべての公知の駆動機構16が使用可能であるが、駆動機構16は、流体供給源20からの流体を、ポンプカートリッジ(図示せず)を経由して、制御速度で移動させるためのポンプコンソール22を含めることができる。例としてのポンプコンソール22は、このポンプコンソール22内に配されたモーターによって駆動され、かつユーザーが所望のポンプパラメータを入力できる制御部を含むプッシュロッドを含めることができる。使用時において、上記モーターは、上記プッシュロッドをその軸に沿って往復直線運動させるのに有効であり、これにより、ポンプカートリッジ(図示せず)内に配されたピストンを往復直線運動させて、適用器具28に向けてポンプカートリッジ(図示せず)を経由して流体を移動させることができる。
【0019】
駆動機構16は、スラリー33の濃縮物を高圧流体の流れに送出する懸濁液ポンプ用駆動機構31に(導管26により)連結されている。上記スラリー33は、例えば生理食塩水等の送出用液体内に混合されるか、あるいは懸濁され、この明細書に開示された研磨物質のすべての組み合わせを含めることができる。しかしながら、この発明を限定するものではない実施の形態によって、上記スラリー33は、少なくとも約40体積%の研磨用固形粒子、好適な実施の形態では、少なくとも約20体積%の研磨用固形粒子を含有するものである。懸濁液ポンプ用駆動機構31は、駆動機構16に類似しており、図1Bに示されたように、スラリーが高圧流体の流れに押し込まれるようにポンプ空洞38内で摺動可能に移動するピストン40を含めることができるスラリーポンプコンソール30を有している。
【0020】
スラリーポンプコンソール30のポンプ空洞38は種々の形状を有することができるが、ポンプ空洞38は概ね、ピストン40に対して相補的な形状であり、スラリーがポンプ空洞38に入る入口32と、スラリーが高圧流体の流れと究極的に混合するためにスラリーがポンプ空洞38を出る出口36を有している。入口32は、スラリーを移送できる状態にするすべてのサイズ、形状および構造を採ることができる。しかしながら、1つの実施の形態では、入口32は、弁機構34に対して可逆的に、あるいは一体的に嵌合する導管26(以下に詳述される)である。手動弁、二方向弁、一方向弁あるいは自動あるいは電子制御弁等の種々の弁機構34が、上記弁機構34がポンプ空洞38へ入るスラリーの速度および量を制御できる限り、使用可能である。この発明の属する技術分野における当業者は、ポンプ空洞38および究極的には適用器具28に入るスラリーの量を制御する能力により、外科医が種々の異なる研磨物質を用いた種々の異なる外科処置を行えるものと正当に評価するはずである。
【0021】
ピストン40がすべての公知の形状を有することができるが、そのピストン40は概ね、ポンプ空洞38内で移動可能にすることで、スラリーが適用器具に向けて出口36を経由して出るように構成されている。出口36もまた、スラリーを移送するために、当業者にとって公知のすべての形状を採ることができるが、この発明を限定するものではない実施の形態によって、上記出口36は、一体的に形成されるか、あるいは取外し可能に嵌合した導管26(以下に詳述される)である。一旦、スラリーが出口36を経由して出ると、その後に、ピストン40は後退でき、これによりスラリーをポンプ空洞38に再充填することができる。
【0022】
図1Aに戻って参照すると、流体送出用導管26もまた、種々の形状を有することができる。1つの例示的な実施の形態では、流体送出用導管26は、流体を高圧で安全に適用器具28へ送出するのに十分な破裂強度を有する物質から形成可能である。また、この物質は、外科医が適用器具28を自由に操作できるために可撓性とすべきである。1つの例示的な実施の形態では、流体送出用導管26は、この流体送出用導管26の両端部を、取外し可能とすることが望まれる流体供給源20、駆動機構16、懸濁液ポンプ用駆動機構31および/または適用器具28に接続するために、手で締め付けできるコネクタを含むものである。上述したように、流体送出用導管26は、流体供給源20、駆動機構16、懸濁液ポンプ用駆動機構31および/または適用器具28と一体に形成可能であるか、あるいはこれらに取外し可能に嵌合可能である。
【0023】
適用器具28もまた、種々の形状を有することができ、高圧流体ジェットを構成するための実質的にすべての装置はこの明細書に開示された種々の実施の形態用とすることができる。例えば、適用器具28は、流体送出用導管26および高圧流体ジェットを構成するためのノズルとの間で流体が連通する管腔を含めることができる。適用器具28もまた、流体を収集しかつ取り出すための減圧管腔ばかりでなく、上記装置の用途を容易にするための他の種々の態様をも含めることができる。この発明を限定するものではない例示的な実施の形態によって、流体ジェット装置の1つの実施の形態は、本出願人と同一出願人であり、「組織塊の選択的除去および組織の精確な彫刻の方法および装置」という名称で2004年11月11日に出願されたマクラリー(McRury)らによる米国特許出願第10/904,456号に開示されている。
【0024】
図2は、流体114が適用器具あるいは流体ジェット送出装置のノズル128を出た後に、研磨用固形粒子が高圧流体114の流れによって運ばれるこの発明の他の実施の形態を示すものである。図示されているように、第2の、平行ノズル131は上記適用器具のノズル128を包囲し、かつ、空洞129を構成するものであり、前記空洞129は、高圧流体114の流れが空洞129に入るときに、スラリー中の研磨用固形粒子の一部が高圧流体114の流れによって運ばれ、かつ研磨用固形粒子含有の高圧流体の流れが開口部125を経由して空洞129を出るように、上記ノズル128周囲にスラリーを保持するものである。
【0025】
平行ノズル131が種々の形状を有することができるが、1つの実施の形態では、上記平行ノズル131は適用器具のノズル128に対して相補的な形状を有している。平行ノズル131もまた、空洞129へのスラリーの注入を可能にする入口127を有することができ、1つの好適な実施の形態では、入口127は濃縮したスラリーの大量供給につながる導管(図示せず)を含むものである。
【0026】
空洞129は図示されているように種々の形状を採ることができるが、空洞129は平行ノズル131の形状に対して相補的な形状である。さらに、空洞129は、種々のサイズを採ることができるが、この空洞129は適用器具のノズル128の周囲に存在するスラリーを保持するのに十分な大きなサイズとすべきである。使用時において、一旦、空洞129がスラリーで充填されると、高圧流体114の流れがノズル128を介して空洞129に流入する。空洞129への高圧流体114の流れの流入は吸引を創出する、すなわち空洞129内を減圧にし、結果としてスラリーは高圧流体114の流れで運ばれることになる。研磨用固形粒子含有の高圧流体の流れは、平行ノズル131内の開口部125を出た後に、接触時に硬質物質を切削するために使用可能である。この発明の属する技術分野における当業者は、この実施の形態が研磨物質の流れを滞らせるかあるいはそれを解除するためのオンデマンド式制御を選択肢として与えるものと正当に評価するはずである。
【0027】
図3、図4Aおよび図4Bは、高圧流体の流れが、研磨用固形粒子が高圧流体の流れによって運ばれるという結果になる研磨物質の懸濁液あるいは固体を浸食することができる、この発明の他の実施の形態を示している。まず、図3を参照すると、高圧流体の流れは、高圧ジェット212のノズル228から流出して、研磨物質を含有する供給部211に接触する。一旦、高圧流体の流れが供給部211に接触すると、研磨物質の一部は浸食され、結果として研磨用固形粒子が高圧流体の流れによって運ばれるようになり、これにより硬質物質200が接触時に切削される。
【0028】
この発明の属する技術分野における当業者は、研磨物質の供給部211を、使用された物質のタイプによって種々の形態とすることができるものと正当に評価するはずである。1つの例示的な実施の形態では、供給部211は、ロッド状(図示されている)、円筒状、あるいは他のすべての形状である固体、あるいは懸濁液とすることができる。さらに、供給部211は、研磨物質を保持できる、例えば導管等のすべての形状を有することができる。供給部211は、種々の方法で高圧流体の流れ214に向けることができるが、1つの例示的な実施の形態では、供給部211の研磨物質は高圧流体の流れ214に対して相互供給されている。さらに、この発明の属する技術分野における当業者は、研磨物質が硬質物質に送出される前に、この実施の形態が研磨物質の非常に短い滞留時間を必要とするものであり、これにより上述したもの以外の、破砕氷等の研磨物質も使用可能であるものと正当に評価するはずである。
【0029】
図4Aおよび図4Bは、高圧流体の流れ214が硬質物質200上に配置された切削テンプレート257の一部を浸食する、この発明の他の実施の形態を示している。切削テンプレート257は、硬質物質を所望のパターンに切削できるすべての形態を採ることができるが、この発明を限定するものではない実施の形態によって、切削テンプレート257が図4Bに示されたように、固体領域262と開口領域260を有することができる。固体領域262は、金属(例えば、ステンレス鋼)あるいは重合体(例えば、高密度ポリエチレンあるいはポリエーテルエーテルケトン(PEEK))等のすべての生体適合性物質、あるいは高圧流体の流れに接触した際に浸食を受けない他のすべての物質から形成可能である。固体領域262もまた、その形状が固体領域262内に開口領域すなわち研磨物質の塊を有する切削領域(例えば、開口領域260等)を包含することができる限り、プレートあるいはカートリッジ等の種々の形状を採ることができる。開口領域260は、この明細書に列挙された研磨物質からなるすべての閉塞から形成可能であり、図示された開口領域260は半月状であるが、外科医が望む直線状、プラグ状、円形状等の切削タイプによって種々の形状を採ることができる。
【0030】
使用時において、図4Aに示されたように、高圧流体の流れ214は、高圧ジェット212のノズル228から流出して切削テンプレート257に接触する。接触時において、開口領域260内の研磨物質は高圧流体の流れ214によって浸食されることで、固体領域262が変わらないが、研磨用固形粒子が高圧流体の流れ214によって運ばれることになる。結果として、硬質物質200は、開口領域260のパターン形状に相補的なパターン形状で切削される。この発明の属する技術分野における当業者は、固体領域262が高圧流体の流れ214との接触時に浸食されないので、固体領域262が再利用可能であると正当に評価するはずである。
【0031】
この発明の属する技術分野における当業者は、上述した実施の形態に基づいて、この発明の他の態様および利点を正当に評価するはずである。したがって、この発明は、添付した特許請求の範囲によって示された事項を除き、詳細に図示されかつ記述された事項によって限定されるべきではない。この明細書において引用されたすべての刊行物および文献の内容は、参照することによって、そのまま、この明細書に明白に組み込まれるものである。
【0032】
この発明の具体的な実施態様は以下の通りである。
(1)外科処置中に切削を行うための方法であって、
ノズルを経由して高圧流体の流れを送出するのに有効な外科器具を準備するステップと、
前記外科器具を経由して前記ノズルから前記高圧流体の流れを患者体内の硬質物質に向けて送出して、患者体内の前記硬質物質を所望のパターンで切削するステップであって、前記硬質物質を切削する前記流体が有機物質から形成された複数の研磨用固形粒子を有する送出用液体を含む、ステップと、を含む切削方法。
(2)実施態様(1)記載の切削方法であって、
前記送出用液体は生理食塩水である、切削方法。
(3)実施態様(1)記載の切削方法であって、
前記研磨用固形粒子は生体吸収性である、切削方法。
(4)実施態様(1)記載の切削方法であって、
前記研磨用固形粒子は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレンオキシド、これらの混合物および共重合体からなる群より選択される、切削方法。
(5)実施態様(4)記載の切削方法であって、
前記研磨用固形粒子は、5〜200μmの範囲内のサイズを有する粒子から形成されている、切削方法。
【0033】
(6)実施態様(1)記載の切削方法であって、
前記高圧流体の流れは、前記ノズルを経由して、1,000〜20,000psi(ポンド/平方インチ)の範囲内の圧力で送出される、切削方法。
(7)実施態様(1)記載の切削方法であって、
前記研磨用固形粒子は、前記ノズル経由の送出前に、前記高圧流体の流れと混合される、切削方法。
(8)実施態様(1)記載の切削方法であって、
前記複数の研磨用固形粒子は、前記高圧流体の流れが前記ノズルを出た後に、前記高圧流体の流れによって運ばれる、切削方法。
(9)実施態様(1)記載の切削方法であって、
前記ノズルを出る前記高圧流体の流れは、固形物質に接触し、その固形物質の少なくとも一部が前記高圧流体の流れによって浸食されて、前記高圧流体の流れによって前記複数の研磨用固形粒子を運ぶ、切削方法。
(10)実施態様(9)記載の切削方法であって、
前記固形物質は、研磨物質で形成されたロッドである、切削方法。
【0034】
(11)実施態様(9)記載の切削方法であって、
前記固形物質は、固体領域と開口領域を有するプレートであり、前記開口領域は所望の形状で形成されかつ研磨用凝集体によって閉塞されており、これにより、前記プレートが前記高圧流体の流れに接触した際に、前記硬質物質が前記開口領域の形状であるパターンで切削される、切削方法。
(12)実施態様(1)記載の切削方法であって、
前記高圧流体の流れによる浸食に対する抵抗性を有する固形物質で形成された領域と、該領域内に設けられ、所望のパターンに対応するサイズおよび形状を有する切削領域を構成する開口部を有する切削テンプレートを準備するステップであって、前記切削領域が研磨物質から形成されたプラグによって閉塞される、ステップと、
前記高圧流体の流れを前記切削テンプレート上に向けて、前記硬質物質の切削を行う研磨物質で形成された前記プラグから浸食された研磨用固形粒子を運ぶステップと、をさらに含む、切削方法。
(13)実施態様(12)記載の切削方法であって、
前記硬質物質は、骨、骨セメントおよび生体接着剤からなる群より選択される、切削方法。
(14)外科処置中に組織の切削を行うためのシステムであって、
高圧流体の流れを送出するのに有効な外科装置と、
切削テンプレートを有するプレートであって、前記切削テンプレートが前記高圧流体に
よる浸食に対する抵抗性を有する固形物質から形成された領域と、該領域内に設けられた開口部とを有し、前記開口部が研磨物質から形成されたプラグによって閉塞されている、プレートと、を含む、切削システム。
(15)実施態様(14)記載の切削システムであって、
前記開口部は、所望の切削パターンの形状で形成されている、切削システム。
【0035】
(16)実施態様(14)記載の切削システムであって、
前記研磨用固形粒子は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレンオキシド、これらの混合物および共重合体からなる群より選択される、切削システム。
(17)実施態様(14)記載の切削システムであって、
前記研磨用固形粒子は、5〜200μmの範囲内のサイズを有する粒子から形成されている、切削システム。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】この発明の1つの実施の形態による高圧流体ジェットを利用したシステムを示す概略図である。
【図1B】図1Aの高圧流体ジェットを利用したシステム用の懸濁液ポンプを示す概略図である。
【図2】この発明のシステムの1つの実施の形態であって、研磨用固形粒子が高圧流体の流れによって運ばれることを可能にする平行ノズルを利用するシステムを示す概略図である。
【図3】この発明のシステムの他の実施の形態であって、研磨用固形粒子の供給部を有する、高圧流体ジェットを利用したシステムを示す概略図である。
【図4A】この発明のシステムのさらに他の実施の形態であって、高圧流体の流れによって浸食される切削テンプレート用の高圧流体ジェットを利用したシステムを示す概略図である。
【図4B】図4Aの高圧流体ジェットを利用したシステム用の切削テンプレートを示す上部斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科処置中に組織の切削を行うためのシステムであって、
高圧流体の流れを送出するのに有効な外科装置と、
切削テンプレートを有するプレートであって、前記切削テンプレートが前記高圧流体による浸食に対する抵抗性を有する固形物質から形成された領域と、該領域内に設けられた開口部とを有し、前記開口部が研磨物質から形成されたプラグによって閉塞されている、プレートと、を含む、切削システム。
【請求項2】
請求項1記載の切削システムであって、
前記開口部は、所望の切削パターンの形状で形成されている、切削システム。
【請求項3】
請求項1記載の切削システムであって、
前記研磨用固形粒子は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレンオキシド、これらの混合物および共重合体からなる群より選択される、切削システム。
【請求項4】
請求項1記載の切削システムであって、
前記研磨用固形粒子は、5〜200μmの範囲内のサイズを有する粒子から形成されている、切削システム。
【請求項5】
外科処置中に切削を行うための方法であって、
ノズルを経由して高圧流体の流れを送出するのに有効な外科器具を準備するステップと、
前記外科器具を経由して前記ノズルから前記高圧流体の流れを患者体内の硬質物質に向けて送出して、患者体内の前記硬質物質を所望のパターンで切削するステップであって、前記硬質物質を切削する前記流体が有機物質から形成された複数の研磨用固形粒子を有する送出用液体を含む、ステップと、を含む切削方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate


【公開番号】特開2006−187616(P2006−187616A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−378856(P2005−378856)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(504202690)デピュイ・ミテック・インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】