説明

切削装置

【課題】比較的細径の管内面の切削を行うこと。
【解決手段】管の内部に配置されるカッタ2を回転させる回転機構3と、カッタ2を所定の軸S1の周りに旋回させる旋回機構4と、カッタ2を軸S1の延在方向Lに沿って移動させる軸方向移動機構5と、カッタ2を軸S1に交差する方向に移動させる交差方向移動機構6と、を備え、回転機構3に動力を伝達する回転動力伝達軸32と、旋回機構4に動力を伝達する旋回動力伝達軸42とを同一軸S1上に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、原子力容器に設けられた管の内面を切削するための切削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、その安全性や信頼性を確保するため、定期的に配管や圧力容器の検査が行われており、同検査には、例えば、超音波を用いた非破壊検査(UT:Ultrasonic Testing)が適用されている。そして、この検査の結果、配管の管台の溶接部に、経年変化によるクラックなどの表面欠陥が発生するおそれのある場合や、経年変化による表面欠陥が判明した場合、これらの箇所を切削・補修する。
【0003】
従来、例えば、特許文献1に記載の切削装置(原子力容器の管台内面の切削方法および切削装置)では、原子炉圧力容器(原子力容器)の側面に設けられている管台と、同管台に接続されている出口管や入口管との溶接部を切削する原子炉圧力容器の管台内面を切削するため、少なくとも管台の下方位置まで冷却水を排水した状態の原子炉圧力容器内に、管台の位置に合わせた開口部を側面に有す架台を設置し、前記開口部から管台内に円筒状の遮蔽体を挿入設置した後、管台内に切削装置を挿入して前記溶接部を切削することが示されている。これにより、原子炉圧力容器の管台と、管台に接続する出口管や入口管との溶接部の切削を、気中状態で、作業員が安全に、迅速かつ容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−349596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、蒸気発生器を2機接続する2ループの原子炉においては、出口管台や入口管台の他に原子炉内に冷却水を注水するための注水配管が接続される注水管台が設けられている。かかる注水管台と注水配管との溶接部においても、必要に応じて内面の切削・補修を行う。
【0006】
しかし、上述した特許文献1の切削装置は、内径がほぼ740mmの出口管台や入口管台の内面の切削に適用されるもので、内径がほぼ87mmの注水管台に挿入することはできない。したがって、注水管台のような細径の管に挿入し、その内面を切削することのできる切削装置が切望されている。特に、原子炉容器内が放射線雰囲気であり、切削作業を安全に、迅速かつ容易に行うことが第一であるから、切削装置の適用は必要不可欠である。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、比較的細径の管内面の切削を行うことのできる切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の切削装置は、管の内部に配置されるカッタを回転させる回転機構と、前記カッタを所定の軸の周りに旋回させる旋回機構と、前記カッタを前記所定の軸の延在方向に沿って移動させる軸方向移動機構と、前記カッタを前記所定の軸に交差する方向に移動させる交差方向移動機構と、を備え、前記回転機構に動力を伝達する回転動力伝達軸と、前記旋回機構に動力を伝達する旋回動力伝達軸とを同一軸上に配置することを特徴とする。
【0009】
この切削装置によれば、回転機構に動力を伝達する回転動力伝達軸と、旋回機構に動力を伝達する旋回動力伝達軸とが同一軸上に配置されていることから、これらの動力の伝達に係り、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行うことができる。
【0010】
また、本発明の切削装置は、前記交差方向移動機構は、前記回転動力伝達軸および前記旋回動力伝達軸と平行に延在する駆動ロッドと、前記回転動力伝達軸および前記旋回動力伝達軸が配置された軸方向に沿って前記駆動ロッドを移動させる交差方向駆動部と、前記カッタを交差方向に移動可能に支持するとともに、前記駆動ロッドの軸方向への移動を摺動によって前記カッタの交差方向への移動に変換する方向変換部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この切削装置によれば、交差方向移動機構について、軸方向に沿って設けられた駆動ロッドを、軸に沿って移動させることで、カッタを交差方向に移動させることから、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行う効果を顕著に得ることができる。
【0012】
また、本発明の切削装置は、前記回転機構を除く前記旋回機構および前記軸方向移動機構による前記カッタの移動に伴って移動可能に設けられ、かつ前記交差方向移動機構によって前記カッタの移動と相反する方向に移動可能に設けられており、前記管の内面形状を計測するセンサ部を備えることを特徴とする。
【0013】
管の内面を切削するにあたり、管の内面形状を計測することが切削深さを一定とするうえで好ましい。この切削装置によれば、管の内面形状を計測するセンサ部を、回転機構を除く旋回機構および軸方向移動機構によるカッタの移動に伴って移動可能に設け、かつ交差方向移動機構によってカッタの移動と相反する方向に移動可能に設けたことで、計測の際にセンサ部を移動させる機構としてカッタを移動させる機構を用いている。この結果、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行う効果を顕著に得ることができる。
【0014】
また、本発明の切削装置は、前記軸方向移動機構による前記センサ部の移動に伴って移動する一方、前記旋回機構による前記センサ部の移動には伴わない非回転部が設けられ、当該非回転部側と前記センサ部との相互間に電気信号を伝達するスリップリングを備えることを特徴とする。
【0015】
センサ部は、電気信号を伝達する必要がある。この切削装置によれば、センサ部の回転移動に伴わない非回転部とセンサ部との間にスリップリングを設けたことで、回転する側と回転しない側との間にケーブルが存在しないため、ケーブルを用いた場合には回転を逆にしてケーブルの捻れを回避する必要があるが、センサ部の回転移動を規制なく行うことが可能になり、かつケーブルの捻れを回避する逆回転の動作を要さないため、計測や切削を円滑に行うことができる。
【0016】
また、本発明の切削装置は、前記軸方向移動機構による前記カッタの移動に伴って移動する態様で、前記管内を撮像する撮像部を備えることを特徴とする。
【0017】
管の内面を切削するにあたり、切削する部位を確認する必要がある。この切削装置によれば、管内を撮像する撮像部を、軸方向移動機構によるカッタの移動に伴って移動可能に設けたことで、計測の際に撮像部を移動させる機構としてカッタを移動させる機構を用いている。この結果、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行う効果を顕著に得ることができる。
【0018】
また、本発明の切削装置は、前記回転機構は、前記回転動力伝達軸から伝達された動力を前記カッタに伝える複数の歯車を有し、前記交差方向移動機構による前記カッタの移動に際して前記カッタの移動を許容しつつ各前記歯車が常に噛み合う態様で各前記歯車をリンクによって連結することを特徴とする。
【0019】
この切削装置によれば、リンクによって、交差方向移動機構によるカッタの移動に際して回転機構の歯車の噛合を維持するため、回転機構と交差方向移動機構との構成の一部を供用することができる。この結果、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行う効果を顕著に得ることができる。
【0020】
また、本発明の切削装置は、前記軸方向移動機構は、前記回転機構、前記旋回機構、および前記交差方向移動機構を、前記回転動力伝達軸および前記旋回動力伝達軸の軸方向に沿ってともに移動させることを特徴とする。
【0021】
この切削装置によれば、軸方向移動機構によって、回転機構、旋回機構、および交差方向移動機構を軸方向に移動させることで、カッタを軸方向に移動させる機構を、回転機構、旋回機構、または交差方向移動機構に介在させることがない。この結果、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行う効果を顕著に得ることができる。
【0022】
また、本発明の切削装置は、前記回転動力伝達軸および前記旋回動力伝達軸を支持するとともに、前記回転機構、前記旋回機構、前記軸方向移動機構および前記交差方向移動機構による前記カッタの移動に伴わない固定部を備え、前記管の内面に対して当接または離隔する態様で前記固定部の外側に出没可能に設けられた拘束機構を備えることを特徴とする。
【0023】
この切削装置によれば、拘束機構を備えることで、装置自身を管の内部に固定することができ、切削を安定かつ精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、比較的細径の管内面の切削を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、原子力設備の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、原子炉容器の横断面図である。
【図3】図3は、注水管台の断面図である。
【図4】図4は、注水管台の切削・補修の説明図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る切削装置の一部裁断した外観図である。
【図6】図6は、図5の切削装置を軸回りに90度回転した状態での軸方向断面の拡大図である。
【図7】図7は、図5の切削装置の軸方向断面の一部拡大図である。
【図8】図8は、図6の切削装置を後端側から視た図である。
【図9】図9は、軸方向移動機構の断面拡大図である。
【図10】図10は、図6から軸方向移動機構を作動させた状態での軸方向断面の拡大図である。
【図11】図11は、図6のA−A断面拡大図である。
【図12】図12は、図6から交差方向移動機構を作動させた状態での軸方向断面の拡大図である。
【図13】図13は、図6のB−B断面拡大図である。
【図14】図14は、図6の矢視C概略拡大図である。
【図15】図15は、図13から交差方向移動機構を作動させた状態の図である。
【図16】図16は、図14から交差方向移動機構を作動させた状態の図である。
【図17】図17は、図13から交差方向移動機構を作動させた状態の図である。
【図18】図18は、図14から交差方向移動機構を作動させた状態の図である。
【図19】図19は、交差方向移動機構を作動させた状態での噛合歯車の動作を示す概略図である。
【図20】図20は、本発明の実施の形態に係る切削装置を適用した切削手順の工程図である。
【図21】図21は、本発明の実施の形態に係る切削装置を適用した切削手順の工程図である。
【図22】図22は、本発明の実施の形態に係る切削装置を適用した切削手順の工程図である。
【図23】図23は、本発明の実施の形態に係る切削装置を適用した切削手順の工程図である。
【図24】図24は、本発明の実施の形態に係る切削装置を適用した切削手順の工程図である。
【図25】図25は、他のカッタを示す切削装置の軸方向断面の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0027】
図1は、原子力設備の一例を示す概略図であり、図2は、原子炉容器の横断面図である。図1に示すように、原子力設備100は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)がある。この原子力設備100は、原子炉容器101、加圧器102、蒸気発生器103およびポンプ104が、一次冷却水管105により順次連結されて、一次冷却水の循環経路が構成されている。また、蒸気発生器103とタービン(図示省略)との間には、二次冷却水の循環経路が構成されている。
【0028】
この原子力設備100では、一次冷却水が原子炉容器101にて加熱されて高温・高圧となり、加圧器102にて加圧されて圧力を一定に維持されつつ、一次冷却水管105を介して蒸気発生器103に供給される。蒸気発生器103では、一次冷却水と二次冷却水との熱交換が行われることにより、二次冷却水が蒸発して蒸気となる。熱交換により蒸気となった二次冷却水は、タービンに供給される。タービンは、二次冷却水の蒸気により駆動される。そして、タービンの動力が発電機(図示省略)に伝達されて発電される。タービンの駆動に供された蒸気は、凝縮して水となり蒸気発生器103に供給される。一方、熱交換後の一次冷却水は、一次冷却水管105を介してポンプ104側に回収される。
【0029】
蒸気発生器103は、図1に示すように、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103aおよび出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。この伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように端部が管板103dに支持されている。また、入口側水室103aは、配管ノズルとしての入口管台103fが設けられ、この入口管台103fに入口側の一次冷却水管105が接続されている。一方、出口側水室103bは、配管ノズルとしての出口管台103gが設けられ、この出口管台103gに出口側の一次冷却水管105が接続されている。
【0030】
原子炉容器101は、図1に示すように、燃料集合体(図示省略)が挿抜できるように、容器本体101aとその上部に装着される容器蓋101bとにより構成されている。容器蓋101bは、容器本体101aに対して開閉可能に設けられている。容器本体101aは、上方が開口し、下方が半球形状とされて閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水を給排する入口管台101cおよび出口管台101dが設けられている。出口管台101dは、蒸気発生器103の入口管台103fに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、入口管台101cは、蒸気発生器103の出口管台103gに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、原子炉容器101は、図2に示すように、容器本体101aにおいて入口管台101cおよび出口管台101dと同等高さの位置に、注水用の管である注水管台101eが設けられている。注水管台101eは、管である注水配管101fが溶接によって接続されている。
【0031】
図3は、注水管台の断面図であり、図4は、注水管台の切削・補修の説明図である。注水管台101eは、上述した原子力設備100の安全性や信頼性を確保するため、定期的に検査が行われる。この検査の結果、図3に示す、注水管台101eと注水配管101fとの接続部分である溶接部101gに、経年変化によるクラックなどの表面欠陥が発生するおそれのある場合や、経年変化による表面欠陥が判明した場合、当該溶接部101gを切削・補修する。具体的には、図4に示すように、溶接部101gの内壁面を、注水管台101eおよび注水配管101fの内壁面の一部とともに切削し、切削された切削部Aに所定合金種の溶接肉盛Bを行う。
【0032】
上記の切削・補修のうちの切削を行うため、本実施の形態に係る切削装置が適用される。図5は、本実施の形態に係る切削装置の一部裁断した外観図であり、図6は、図5の切削装置を軸回りに90度回転した状態での軸方向断面の拡大図であり、図7は、図5の切削装置の軸方向断面の一部拡大図であり、図8は、図6の切削装置を後端側から視た図であり、図9は、軸方向移動機構の断面拡大図であり、図10は、図6から軸方向移動機構を作動させた状態での軸方向断面の拡大図であり、図11は、図6のA−A断面拡大図であり、図12は、図6から交差方向移動機構を作動させた状態での軸方向断面の拡大図であり、図13は、図6のB−B断面拡大図であり、図14は、図6の矢視C概略拡大図であり、図15は、図13から交差方向移動機構を作動させた状態の図であり、図16は、図14から交差方向移動機構を作動させた状態の図であり、図17は、図13から交差方向移動機構を作動させた状態の図であり、図18は、図14から交差方向移動機構を作動させた状態の図であり、図19は、交差方向移動機構を作動させた状態での噛合歯車の動作を示す概略図である。
【0033】
切削装置1は、上述した原子炉容器101の内側であって注水管台101eから注水配管101fに至る管の内部に挿入されるもので、図5に示すように、管内側(IN)に配置される先端部11と、先端部11に連続しつつ管外側(OUT)に配置される基端部12とを有している。
【0034】
先端部11は、管の内部に挿入されるように、当該管の内径よりも細径に形成され、管の延在方向に沿う軸S1に延びる棒状体をなしている。この先端部11は、その先端から管外側順に、円盤状に形成されて外周部分に切削刃が設けられたカッタ2を、円盤状の中心を基に回転可能に支持するカッタ支持部11Aと、当該カッタ支持部11Aに連結されてカッタ2に回転動力を伝えるギア部11Bと、カッタ支持部11Aに連結されており軸S1を中心に回転可能で軸S1の延在方向に沿って移動可能に設けられた回転部11Cと、前記回転部11Cに鉤状のカップリング11F(図6参照)を介して接続されることで軸S1を中心とした回転から切り離されつつ軸S1の延在方向に沿って移動可能に設けられた非回転部11Dと、当該非回転部11Dに接続されて基端部12に固定された先端側固定部11Eとを有している。
【0035】
基端部12は、管外側(OUT)に配置されるため、当該管の内径よりも太径に形成されている。この基端部12は、先端部11の先端側固定部11Eから連続して一体に固定された基端側固定部12Aと、当該基端側固定部12Aの基端側に配置されており、後述の各機構3,4,5,6の駆動源となる各駆動モータ31,41,51,61が配置された駆動源部12Bと、基端側固定部12Aを固定するとともに駆動源部12Bを収納し、管の外部に固定される本体部12Cとを有している。
【0036】
そして、この切削装置1は、上述した先端部11および基端部12において、カッタ2を回転させる回転機構3(図6〜図8参照)と、カッタ2を所定の軸S1の周りに旋回させる旋回機構4(図6〜図8参照)と、カッタ2を前記軸S1の延在方向Lに沿って移動させる軸方向移動機構5(図6、図8〜図11参照)と、カッタ2を軸S1に交差する径方向Wに移動させる交差方向移動機構6(図6、図8、図11〜図19参照)と、を備えており、各機構3,4,5,6により作動されるカッタ2によって、注水管台101eおよび注水配管101fの内壁面の一部を含み、上述の溶接部101gの内壁面を切削する。
【0037】
回転機構3は、図6〜図8に示すように、回転駆動モータ31、回転動力伝達軸32、第一噛合歯車群33、第二噛合歯車群34、および第三噛合歯車群35を含み構成されている。
【0038】
回転駆動モータ31は、図6および図8に示すように、円筒状の本体部12Cの内部で、駆動源部12Bの基端側に固定され、軸S1上に配置されている。
【0039】
回転動力伝達軸32は、回転駆動モータ31の出力軸に連結されて軸S1上に配置され、駆動源部12B、基端側固定部12A、先端側固定部11E、非回転部11D、および回転部11Cの内部を貫通することでギア部11Bに至り延在して設けられている。第一噛合歯車群33および第二噛合歯車群34は、ギア部11Bに設けられている。また、第三噛合歯車群35は、カッタ支持部11Aに設けられている。
【0040】
第一噛合歯車群33は、図7に示すように、はすば歯車である回転主歯車33aおよび回転従歯車33bによって構成されている。回転主歯車33aは、回転動力伝達軸32の先端に固定されている。回転従歯車33bは、ギア部11Bにおいて回転可能であって軸位置が固定して設けられており、回転主歯車33aと噛合されている。
【0041】
第二噛合歯車群34は、図7に示すように、はすば歯車である固定歯車34a、第一移動歯車34b、および第二移動歯車34cによって構成されている。固定歯車34aは、ギア部11Bに対して回転可能であって軸位置が固定して設けられており、第一噛合歯車群33の回転従歯車33bに対して軸が連結されている。第一移動歯車34bは、固定歯車34aに噛合されている。この第一移動歯車34bは、固定歯車34aとの噛合が維持された状態で、当該固定歯車34aの軸の周りに回転移動できるように第一リンク34d(図19参照)によって支持されている。第二移動歯車34cは、第一移動歯車34bに噛合されている。この第二移動歯車34cは、第一移動歯車34bとの噛合が維持された状態で、当該第一移動歯車34bの軸の周りに回転移動できるように第二リンク34e(図19参照)によって支持されている。
【0042】
第三噛合歯車群35は、図7に示すように、はすば歯車である中継歯車35aおよび出力歯車35bによって構成されている。中継歯車35aは、カッタ支持部11Aに対して回転可能であって軸位置が固定して設けられており、第二噛合歯車群34の第二移動歯車34cに対して軸が連結されている。出力歯車35bは、カッタ支持部11Aに対して回転可能に設けられ、中継歯車35aに噛合されている。この出力歯車35bの軸は、カッタ支持部11Aの先端側に延出され、カッタ2が固定されている。
【0043】
このような回転機構3は、回転駆動モータ31の動力が回転動力伝達軸32によって駆動源部12B、基端側固定部12A、先端側固定部11E、非回転部11D、および回転部11Cを貫通して回転主歯車33aに伝えられる。続いて、回転駆動モータ31の動力は、回転主歯車33aから回転従歯車33b、固定歯車34a、第一移動歯車34b、第二移動歯車34c、中継歯車35a、出力歯車35bの順で伝えられ、カッタ2を回転させる。
【0044】
旋回機構4は、図6〜図8に示すように、旋回駆動モータ41および旋回動力伝達軸42を含み構成されている。
【0045】
旋回駆動モータ41は、図6および図8に示すように、円筒状の本体部12Cの内部で、駆動源部12Bの基端側に固定され、上述した回転駆動モータ31の側部に配置されている。旋回駆動モータ41は、その出力軸に旋回主歯車43aが設けられている。
【0046】
旋回動力伝達軸42は、軸S1に沿う方向に延在して円筒状に構成された内部に、上述した回転動力伝達軸32を配置しており、当該回転動力伝達軸32と相対的に同一の軸S1を中心として回転するように設けられている。旋回動力伝達軸42は、その基端側に、回転動力伝達軸32が貫通する旋回従歯車43bが軸S1を中心として設けられている。この旋回従歯車43bは、旋回主歯車43aと噛合されている。また、旋回動力伝達軸42は、回転動力伝達軸32を内部に配置しつつ、駆動源部12B、基端側固定部12A、先端側固定部11Eおよび非回転部11Dに貫通することで、先端が回転部11Cに連結されている。
【0047】
このような旋回機構4は、旋回駆動モータ41の動力が旋回動力伝達軸42によって駆動源部12B、基端側固定部12A、先端側固定部11Eおよび非回転部11Dを貫通し、回転部11Cに伝えられる。この回転部11Cは、カッタ支持部11Aおよびギア部11Bに連結されていることから、当該カッタ支持部11Aおよびギア部11Bとともに軸S1を中心としてカッタ2を旋回させる。
【0048】
なお、旋回機構4は、図8に示すように、バックラッシュ補正モータ44を備えている。バックラッシュ補正モータ44は、円筒状の本体部12Cの内部で、駆動源部12Bの基端側に固定され、旋回駆動モータ41に連動して駆動されることで、カッタ2を旋回させる際の動力伝達系のバックラッシュを打ち消し、かつ当該旋回における振動や切削時の反力を抑制する。
【0049】
軸方向移動機構5は、図9に示す軸方向駆動モータ51を含み構成されている。軸方向駆動モータ51は、円筒状の本体部12Cの内部で、駆動源部12Bの基端側に固定され、上述した回転駆動モータ31の側部に配置されている。軸方向駆動モータ51は、その出力軸に軸S1の延在方向Lに沿って設けられたネジロッド52aが接続されている。このネジロッド52aは、ナット52bが螺合されている。ナット52bは、駆動源部12Bの内部に挿通された基端側固定部12Aの基端に固定されている。
【0050】
駆動源部12Bは、図6および図10に示すように、基端側にスライダ53aが設けられている。このスライダ53aは、基端側固定部12Aにおいて軸S1と平行に固定されたレール53bに対してスライド移動を案内される。なお、スライダ53aおよびレール53bは、軸S1の周りに複数(例えば3つ)設けられている。
【0051】
また、駆動源部12Bは、図6、図8および図10に示すように、その外側に軸S1と平行に設けられたレール54aが設けられている。レール54aは、本体部12Cにおいて固定されたスライダ54bに対してスライド移動を案内される。なお、レール54aおよびスライダ54bは、軸S1の周りに複数(本実施の形態では4つ)設けられている。
【0052】
さらに、駆動源部12Bから先端部11側に延在する回転動力伝達軸32および旋回動力伝達軸42は、図6および図10に示すように、円筒状の軸支持管50の内部に挿通して支持されている。軸支持管50は、駆動源部12Bから先端側固定部11Eに至り延在し、基端側固定部12Aおよび先端側固定部11Eに対して軸Sの延在方向Lに沿ってスライド移動可能に設けられている。この軸支持管50は、図11に示すように、その外側に、軸S1と平行に延在するレール55aが固定されている。レール55aは、先端側固定部11Eにおいて固定されたスライダ55bに対してスライド移動を案内される。なお、レール55aおよびスライダ55bは、軸S1の周りに複数(本実施の形態では3つ)設けられている。また、スライダ55bは、軸S1の延在方向Lで複数設けられていてもよい。
【0053】
このような軸方向移動機構5は、軸方向駆動モータ51の駆動によってネジロッド52aが回転すると、当該ネジロッド52aとナット52bとの螺合関係により、ネジロッド52aとナット52bとが相対的に軸S1に沿う方向にスライド移動する(図9(a)および図9(b)参照)。この場合、ナット52bが基端側固定部12Aに固定されていることから、ネジロッド52a側が軸S1に沿う方向に移動することになる。このため、ネジロッド52aが接続されている軸方向駆動モータ51、軸方向駆動モータ51が固定されている駆動源部12B、駆動源部12Bに支持されている構成が、軸S1に沿う方向にスライド移動する。この結果、回転動力伝達軸32や旋回動力伝達軸42に接続された構成を含めてカッタ2が軸S1に沿う方向にスライド移動する。また、この軸S1に沿う方向へのスライド移動は、スライダ53aおよびレール53b、レール54aおよびスライダ54b、レール55aおよびスライダ55bによって案内される。
【0054】
なお、図8に示すように、駆動源部12Bは、バランサ56が設けられている。このバランサ56は、軸S1と平行に延在するロッドが上述したナット52bのように基端側固定部12Aの基端に固定され、このロッドを挿通する。すなわち、バランサ56は、駆動源部12Bが軸S1に沿う方向にスライド移動する際に、ロッドに対して摺動することで、当該スライド移動のバランスを調整する。
【0055】
なお、図9(a)および図9(b)に示すように、ネジロッド52aが接続された軸方向駆動モータ51の出力軸には、平歯車57aが設けられている。そして、この平歯車57aは、平歯車57bに噛合されており、平歯車57bの軸が軸方向駆動モータ51の側部に延在されている。この平歯車57bの軸は、工具などを嵌合する嵌合凹部57cが設けられている。このため、軸方向駆動モータ51が回転不可の状態となった場合、嵌合凹部57cに工具を嵌合して平歯車57bの軸を回せば、ネジロッド52aを回転させることができ、この結果、手動でカッタ2を軸S1に沿う方向にスライド移動させることが可能である。
【0056】
交差方向移動機構6は、図6、図8、図11〜図19に示すように、交差方向駆動モータ61、駆動ロッド62、交差方向駆動部63および方向変換部64を含み構成されている。
【0057】
交差方向駆動モータ61は、円筒状の本体部12Cの内部で、駆動源部12Bの基端側に固定され、上述した回転駆動モータ31の側部に配置されている。
【0058】
駆動ロッド62は、軸S1に沿う方向であって回転動力伝達軸32および旋回動力伝達軸42と平行に延在して設けられている。駆動ロッド62は、駆動源部12Bから、基端側固定部12Aおよび先端側固定部11Eを貫通し、非回転部11Dに接続されている。この駆動ロッド62は、基端側固定部12Aおよび先端側固定部11Eに対し、軸S1に沿う方向にスライド移動可能に設けられている。また、駆動ロッド62は、図11に示すように、軸S1の周りに複数(本実施の形態では3つ)設けられている。
【0059】
交差方向駆動部63は、軸S1の延在方向Lに沿って設けられて交差方向駆動モータ61の出力軸に接続されたネジロッド63aと、このネジロッド63aに螺合されて各駆動ロッド62に接続されたナット63bとを有している。
【0060】
方向変換部64は、ガイド部64a、レール64b、スライダ64cおよび作動片64dを有している。ガイド部64aは、図6、図12および図13に示すように、旋回動力伝達軸42に固定され、カッタ支持部11Aを両側から挟むように設けられており、カッタ支持部11Aを径方向Wに移動可能に支持している。レール64bは、図13および図14に示すように、軸S1の延在方向Lおよび径方向Wに対して傾斜する方向に延び、カッタ支持部11Aに固定されている。スライダ64cは、レール64bに嵌合して当該レール64bの延在方向に対して相対的な移動を許容されている。また、スライダ64cは、ガイド部64aに対して軸S1の延在方向Lに沿って移動可能に設けられた作動片64dの先端に固定されている。この作動片64dは、基端が回転部11Cに固定されている。回転部11Cは、駆動ロッド62が接続された非回転部11Dに接続されている。
【0061】
このような交差方向移動機構6は、図6および図12に示すように、交差方向駆動モータ61の駆動によって交差方向駆動部63のネジロッド63aが回転すると、当該ネジロッド63aとナット63bとの螺合関係により、ナット63bが軸S1に沿う方向にスライド移動する。そして、このナット63bの移動に伴い、駆動ロッド62が軸S1に沿う方向にスライド移動する。すると、駆動ロッド62が接続された非回転部11Dとともに回転部11Cが軸S1に沿う方向にスライド移動する。すなわち、回転部11Cの移動によって作動片64dが軸S1に沿う方向にスライド移動することになる。このため、軸S1に沿う方向の移動がスライダ64cに伝えられ、ガイド部64aによって軸S1に交差する交差方向である径方向Wに移動可能に支持されたカッタ支持部11Aは、当該スライダ64cとレール64bとの摺動によって、径方向Wに移動することになる。この結果、カッタ2が径方向Wに移動する(図13〜図18参照)。
【0062】
ところで、図13および図14に示すように、カッタ2は、カッタ支持部11Aに対して径方向Wの一方寄りに偏って設けられている。そして、カッタ支持部11Aの径方向Wの他方側には、タッチセンサからなるセンサ部7が設けられている。このため、図15および図16に示すように、上述した交差方向移動機構6によって作動片64dが基端側に引っ張られ、カッタ支持部11Aが径方向Wの他方に移動した場合、センサ部7が管の内面(溶接部101g)に接触する位置に移動する。また、図17および図18に示すように、上述した交差方向移動機構6によって作動片64dが先端側に押し出され、カッタ支持部11Aが径方向Wの一方に移動した場合、カッタ2が管の内面(溶接部101g)に接触する位置に移動する。このように、センサ部7は、カッタ2の径方向Wへの移動に対して相反する位置に配置されている。そして、センサ部7は、上述した回転機構3を除く旋回機構4、軸方向移動機構5および交差方向移動機構6によるカッタ2の移動に伴って移動可能に設けられている。
【0063】
また、センサ部7が設けられたカッタ支持部11Aは、上述した旋回機構4によってギア部11Bや回転部11Cとともに軸S1を中心に回転する。そして、センサ部7は、その作動において電力の供給や検出信号である電気信号が、ギア部11B、回転部11C、非回転部11D、先端側固定部11E、基端側固定部12Aおよび駆動源部12Bを経て、カッタ支持部11Aと本体部12Cの外部との相互間で伝達される必要がある。非回転部11D、先端側固定部11E、基端側固定部12Aおよび駆動源部12Bは、旋回機構4によって回転しない非回転部側として構成されているため、電気信号を伝達する配線が回転することがない。しかし、カッタ支持部11A、ギア部11Bおよび回転部11Cは、旋回機構4によって回転する回転側として構成されているため、電気信号を伝達する配線が回転して装置構成内で捩れることが想定される。そこで、本実施の形態では、図6に示すように、回転部11Cと非回転部11Dとの間に、スリップリング8が設けられている。このため、非回転部側とセンサ部7を有する回転側との間で配線が回転して装置構成内で捩れる事態を防ぎ、非回転部側と回転側との相互間に電気信号を伝達することが可能である。
【0064】
なお、上述した交差方向移動機構6によってカッタ支持部11Aが径方向Wに移動した場合、カッタ支持部11Aに設けられた第三噛合歯車群35の中継歯車35aおよび出力歯車35bも径方向Wに移動する。中継歯車35aは、第二噛合歯車群34における第二移動歯車34cに軸が連結されている。すなわち、中継歯車35aの移動に伴って第二移動歯車34cも移動する。上述したように本実施の形態の切削装置1は、回転機構3において、第一移動歯車34bが固定歯車34aとの噛合が維持された状態で、当該固定歯車34aの軸の周りに回転移動できるように第一リンク34dによって支持されている。また、第二移動歯車34cが第一移動歯車34bとの噛合が維持された状態で、当該第一移動歯車34bの軸の周りに回転移動できるように第二リンク34eによって支持されている。このため、中継歯車35aの移動に伴って第二移動歯車34cが移動しても、各噛合歯車群33,34,35によるカッタ2への回転動力の伝達が切れることはない。
【0065】
なお、交差方向移動機構6は、図13、図15および図17に示すように、カッタ支持部11Aとガイド部64aとの間であって、レール64bと相反する側において、カッタ支持部11Aの径方向Wへの移動のバランスを調整する油圧バランサ65が設けられている。
【0066】
また、図8に示すように、交差方向移動機構6の交差方向駆動モータ61は、軸方向駆動モータ51と同様の構成によって、工具を嵌合する嵌合凹部61aが設けられており、手動でカッタ2およびセンサ部7を径方向Wに移動させることが可能である。
【0067】
上述した切削装置1において、上記構成の他、図5に示すように、非回転部11Dの外側に向けて配置されて管の内部を撮像する撮像部9が設けられている。この撮像部9は、例えば、非回転部11Dの外側に向け、ライト付きの側視CCDカメラとして構成されている。また、撮像部9は、非回転部11Dに設けられていることから、上述の回転機構3、旋回機構4および交差方向移動機構6によるカッタ2やセンサ部7の移動には伴わず、軸方向移動機構5によってのみ軸S1の延在方向Lに移動する。さらに、撮像部9は、電力の供給や検出信号である電気信号が、先端側固定部11E、基端側固定部12Aおよび駆動源部12Bを経て、非回転部11Dと本体部12Cの外部との相互間で伝達されるが、非回転部11Dよりも基端側の非回転側に設けられていることから、配線が回転して装置構成内で捩れることはない。
【0068】
また、切削装置1において、上記構成の他、図11に示すように、管の内部に挿通される先端側固定部11Eの外側に配置されて、当該先端側固定部11Eの外側面に対して出没可能に設けられた拘束機構10が設けられている。この拘束機構10は、アクチュエータ(図示せず)によって先端側固定部11Eの外側面に対して出没するシリンダ10aと、先端側固定部11Eの外側面に設けられた突起10bとを有する。そして、シリンダ10aと突起10bとは、先端側固定部11Eの外側面の相反する位置に設けられた対をなし、かつ先端側固定部11Eの外側面において対称位置に2対配置され1組として構成されている。これにより、拘束機構10は、先端側固定部11Eの外側面の周方向の4箇所で管の内面に当接することで先端側固定部11Eを基に切削装置1を管の内部に固定する。また、本実施の形態において、先端側固定部11Eの外側面の周方向に設けられた1組の拘束機構10は、図5に示すように、先端側固定部11Eの軸S1の延在方向Lに沿って複数組み(本実施の形態では2組)設けられている。このため、先端側固定部11Eを基に切削装置1を管の内部に固定する作用が顕著に得られる。
【0069】
以下、上述した切削装置1による管の内面の切削手順について説明する。図20〜図24は、本実施の形態に係る切削装置を適用した切削手順の工程図である。なお、本工程において、切削装置1による切削対象は、上述した原子炉容器101の注水管台101eと注水配管101fとの溶接部101gの内面とする。
【0070】
まず、図20に示すように、クレーン110により吊り下げた挿入装置111によって、切削装置1を原子炉容器101の容器本体101aの内部にアクセスする。注水管台101eは、容器本体101aの内部側の開口部に、異物落下防止リング112が固定される。この異物落下防止リング112は、特開2006−349596号公報に記載されている有底円筒状の作業架台113に固定される。また、異物落下防止リング112は、その内側に、空間隙間を塞ぐ遮蔽リング114が固定される。遮蔽リング114は、注水管台101eの中心に対してセンタリングして据え付けられる。
【0071】
次に、図21に示すように、挿入装置111により切削装置1を注水管台101eの内部に挿入し、遮蔽リング114に固定する。上述したように、遮蔽リング114は、注水管台101eの中心に対してセンタリングされているため、当該遮蔽リング114に固定された切削装置1は、その軸S1が注水管台101eの中心に対して自動的にセンタリングされることになる。そして、切削装置1は、拘束機構10によって先端部固定部11Eを基に注水管台101eの内部で拘束される。
【0072】
次に、図22に示すように、軸方向移動機構5によってカッタ支持部11A、ギア部11B、回転部11Cおよび非回転部11Dを軸S1の延在方向Lに沿って移動させる。これにより、非回転部11Dに設けられている撮像部9によって注水管台101eの内面を撮影することで、検査時などに予め注水管台101eの内面にマーキングされたポンチ穴を確認する。このため、カッタ2で切削する位置が確認できる。
【0073】
次に、図23に示すように、交差方向移動機構6によってカッタ支持部11Aを径方向Wに移動させることで、センサ部7を注水管台101eの内面に対して当接または離隔させ、かつ旋回機構4によってカッタ支持部11Aを軸S1を中心に旋回させることで、センサ部7を注水管台101eの周方向に移動させ、かつ軸方向移動機構5によってカッタ支持部11Aを軸S1の延在方向Lに沿って移動させることで、センサ部7を注水管台101eの延在方向に移動させる。これにより、センサ部7が、周方向の所定角度の位置で注水管台101eの内面に対して当接し、注水管台101eの内面の周方向の形状を確認し、かつ注水管台101eの延在方向における注水管台101eの内面の周方向の形状を確認する。このため、これから切削する注水管台101eの内面の形状が取得できる。
【0074】
次に、図24に示すように、回転機構3によってカッタ2を回転させ、かつ交差方向移動機構6によってカッタ支持部11Aを径方向Wに移動させることで、カッタ2を注水管台101eの内面に対して当接させ、かつ旋回機構4によってカッタ支持部11Aを軸S1を中心に旋回させることで、カッタ2を注水管台101eの周方向に移動させ、かつ軸方向移動機構5によってカッタ支持部11Aを軸S1の延在方向Lに沿って移動させることで、カッタ2を注水管台101eの延在方向に移動させる。これにより、回転するカッタ2が、注水管台101eの内面に対して交差方向移動し、かつ注水管台101eの内面に沿って周方向に旋回移動し、かつ注水管台101eの延在方向に軸方向移動する。ここで、カッタ2の旋回移動および軸方向移動は、上述した撮像部9によって確認した切削位置に基づいて行うことで所定の範囲を切削できる。さらに、交差方向移動は、上述したセンサ部7によって取得した注水管台101eの内面の形状に基づき行うことで、所定の切削深さで切削できる。
【0075】
なお、上述した実施の形態においてカッタ2は、円盤状に形成されて外周部分に切削刃が設けられており、円盤状の中心を基に回転されることで切削を行う構成である。その他のカッタ2’を図25に示す。図25は、他のカッタを示す切削装置の軸方向断面の一部拡大図である。かかる図25では、図7において同じ構成のものに同一符号を付して説明を省略する。図25に示すように、カッタ2’は、棒状のエンドミルとして軸の先端に砲弾型(球型であってもよい)の切削刃が設けられている。そして、このカッタ2’の回転は、軸S1に交差(直交)して軸を配置して回転させるため、回転機構3において、図7に示す第三噛合歯車群35に換えて第四噛合歯車群36を備える。第四噛合歯車群36は、傘歯車である中継歯車36aおよび出力歯車36bによって構成されている。中継歯車36aは、カッタ支持部11Aに対して回転可能であって軸位置が固定して設けられており、第二噛合歯車群34の第二移動歯車34cに対して軸が連結されている。出力歯車36bは、カッタ支持部11Aに対して回転可能に設けられ、中継歯車36aに対して軸を交差した状態で噛合されている。この出力歯車36bの軸はカッタ2’の軸となる。この図25に示すカッタ2’では、切削範囲が狭いが自身の軸方向への切削深さを深くできるので、管の内面の局所的な切削において適用できる。
【0076】
このように、本実施の形態の切削装置1は、管(注水管台101eおよび注水配管101f)の内部に配置されるカッタ2,2’を回転させる回転機構3と、カッタ2,2’を所定の軸S1の周りに旋回させる旋回機構4と、カッタ2,2’を軸S1の延在方向Lに沿って移動させる軸方向移動機構5と、カッタ2,2’を軸S1に交差する方向(径方向W)に移動させる交差方向移動機構6と、を備え、回転機構3に動力を伝達する回転動力伝達軸32と、旋回機構4に動力を伝達する旋回動力伝達軸42とを同一軸S1上に配置する。
【0077】
この切削装置1によれば、回転機構3に動力を伝達する回転動力伝達軸32と、旋回機構4に動力を伝達する旋回動力伝達軸42とが同一軸S1上に配置されていることから、これらの動力の伝達に係り、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行うことが可能になる。
【0078】
また、本実施の形態の切削装置1は、前記交差方向移動機構6は、回転動力伝達軸32および旋回動力伝達軸42と平行に延在する駆動ロッド62と、回転動力伝達軸32および旋回動力伝達軸42が配置された軸S1方向に沿って駆動ロッド62を移動させる交差方向駆動部63と、カッタ2,2’を交差方向に移動可能に支持するとともに、駆動ロッド62の軸S1方向への移動を摺動によってカッタ2,2’の交差方向への移動に変換する方向変換部64と、を備える。
【0079】
この切削装置1によれば、交差方向移動機構6について、軸S1方向に沿って設けられた駆動ロッド62を、軸S1に沿って移動させることで、カッタ2,2’を交差方向に移動させることから、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行う効果を顕著に得ることが可能になる。
【0080】
また、本実施の形態の切削装置1は、回転機構3を除く旋回機構4および軸方向移動機構5によるカッタ2,2’の移動に伴って移動可能に設けられ、かつ交差方向移動機構6によってカッタ2,2’の移動と相反する方向に移動可能に設けられており、前記管の内面形状を計測するセンサ部7を備える。
【0081】
管の内面を切削するにあたり、管の内面形状を計測することが切削深さを一定とするうえで好ましい。この切削装置1によれば、管の内面形状を計測するセンサ部7を、回転機構3を除く旋回機構4および軸方向移動機構5によるカッタ2,2’の移動に伴って移動可能に設け、かつ交差方向移動機構6によってカッタ2,2’の移動と相反する方向に移動可能に設けたことで、計測の際にセンサ部7を移動させる機構としてカッタ2,2’を移動させる機構を用いている。この結果、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行う効果を顕著に得ることが可能になる。
【0082】
また、本実施の形態の切削装置1は、前記軸方向移動機構5によるセンサ部7の移動に伴って移動する一方、前記旋回機構4によるセンサ部7の移動には伴わない非回転部11Dが設けられ、当該非回転部11D側とセンサ部7との相互間に電気信号を伝達するスリップリング8を備える。
【0083】
センサ部7は、電気信号を伝達する必要がある。この切削装置1によれば、センサ部7の回転移動に伴わない非回転部11Dとセンサ部7との間にスリップリング8を設けたことで、回転する側と回転しない側との間にケーブルが存在しないため、ケーブルを用いた場合には回転を逆にしてケーブルの捻れを回避する必要があるが、センサ部7の回転移動を規制なく行うことが可能になり、かつケーブルの捻れを回避する逆回転の動作を要さないため、計測や切削を円滑に行うことが可能になる。
【0084】
また、本実施の形態の切削装置1は、前記軸方向移動機構5によるカッタ2,2’の移動に伴って移動する態様で、管内を撮像する撮像部9を備える。
【0085】
管の内面を切削するにあたり、切削する部位を確認する必要がある。この切削装置1によれば、管内を撮像する撮像部9を、軸方向移動機構5によるカッタ2,2’の移動に伴って移動可能に設けたことで、計測の際に撮像部9を移動させる機構としてカッタ2,2’を移動させる機構を用いている。この結果、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行う効果を顕著に得ることが可能になる。
【0086】
また、本実施の形態の切削装置1は、前記回転機構3は、回転動力伝達軸32から伝達された動力をカッタ2,2’に伝える複数の歯車を有し、交差方向移動機構6によるカッタ2,2’の移動に際してカッタ2,2’の移動を許容しつつ各歯車が常に噛み合う態様で各歯車をリンク34d,34eによって連結する。
【0087】
この切削装置1によれば、リンク34d,34eによって、交差方向移動機構6によるカッタ2,2’の移動に際して回転機構3の歯車の噛合を維持するため、回転機構3と交差方向移動機構6との構成の一部を供用することができる。この結果、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行う効果を顕著に得ることが可能になる。
【0088】
また、本実施の形態の切削装置1は、前記軸方向移動機構5は、前記回転機構3、旋回機構4、および交差方向移動機構6を、回転動力伝達軸32および旋回動力伝達軸42の軸S1方向に沿ってともに移動させる。
【0089】
この切削装置1によれば、軸方向移動機構5によって、前記回転機構3、旋回機構4、および交差方向移動機構6を軸S1方向に移動させることで、カッタ2,2’を軸S1方向に移動させる機構を回転機構3、旋回機構4、または交差方向移動機構6に介在させることがない。この結果、管の径方向での寸法を比較的小さく構成することができ、比較的細径の管内面の切削を行う効果を顕著に得ることが可能になる。
【0090】
また、本実施の形態の切削装置1は、前記回転動力伝達軸32および旋回動力伝達軸42を支持するとともに、前記回転機構3、旋回機構4、軸方向移動機構5および交差方向移動機構6によるカッタ2,2’の移動に伴わない固定部(先端側固定部11E)を備え、前記管の内面に対して当接または離隔する態様で前記固定部の外側に出没可能に設けられた拘束機構10を備える。
【0091】
この切削装置1によれば、拘束機構10を備えることで、装置自身を管の内部に固定することができる。この結果、切削を安定かつ精度良く行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0092】
1 切削装置
11 先端部
11A カッタ支持部
11B ギア部
11C 回転部
11D 非回転部
11E 先端側固定部
11F カップリング
12 基端部
12A 基端側固定部
12B 駆動源部
12C 本体部
2,2’ カッタ
3 回転機構
31 回転駆動モータ
32 回転動力伝達軸
33 第一噛合歯車群
33a 回転主歯車
33b 回転従歯車
34 第二噛合歯車群
34a 固定歯車
34b 第一移動歯車
34c 第二移動歯車
34d 第一リンク(リンク)
34e 第二リンク(リンク)
35 第三噛合歯車群
35a 中継歯車
35b 出力歯車
36 第四噛合歯車群
36a 中継歯車
36b 出力歯車
41 旋回駆動モータ
42 旋回動力伝達軸
43a 旋回主歯車
43b 旋回従歯車
44 バックラッシュ補正モータ
4 旋回機構
5 軸方向移動機構
51 軸方向駆動モータ
52a ネジロッド
52b ナット
53a スライダ
53b レール
54a レール
54b スライダ
55a レール
55b スライダ
56 バランサ
57a 平歯車
57b 平歯車
57c 嵌合凹部
6 交差方向移動機構
61 交差方向駆動モータ
62 駆動ロッド
63 交差方向駆動部
63a ネジロッド
63b ナット
64 方向変換部
64a ガイド部
64b レール
64c スライダ
64d 作動片
65 油圧バランサ
7 センサ部
8 スリップリング
9 撮像部
10 拘束機構
10a シリンダ
10b 突起
101e 注水管台
101f 注水配管
101g 溶接部
S1 軸
W 径方向
L 軸の延在方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内部に配置されるカッタを回転させる回転機構と、前記カッタを所定の軸の周りに旋回させる旋回機構と、前記カッタを前記所定の軸の延在方向に沿って移動させる軸方向移動機構と、前記カッタを前記所定の軸に交差する方向に移動させる交差方向移動機構と、を備え、
前記回転機構に動力を伝達する回転動力伝達軸と、前記旋回機構に動力を伝達する旋回動力伝達軸とを同一軸上に配置することを特徴とする切削装置。
【請求項2】
前記交差方向移動機構は、
前記回転動力伝達軸および前記旋回動力伝達軸と平行に延在する駆動ロッドと、
前記回転動力伝達軸および前記旋回動力伝達軸が配置された軸方向に沿って前記駆動ロッドを移動させる交差方向駆動部と、
前記カッタを交差方向に移動可能に支持するとともに、前記駆動ロッドの軸方向への移動を摺動によって前記カッタの交差方向への移動に変換する方向変換部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
前記回転機構を除く前記旋回機構および前記軸方向移動機構による前記カッタの移動に伴って移動可能に設けられ、かつ前記交差方向移動機構によって前記カッタの移動と相反する方向に移動可能に設けられており、前記管の内面形状を計測するセンサ部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の切削装置。
【請求項4】
前記軸方向移動機構による前記センサ部の移動に伴って移動する一方、前記旋回機構による前記センサ部の移動には伴わない非回転部が設けられ、当該非回転部側と前記センサ部との相互間に電気信号を伝達するスリップリングを備えることを特徴とする請求項3に記載の切削装置。
【請求項5】
前記軸方向移動機構による前記カッタの移動に伴って移動する態様で、前記管内を撮像する撮像部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の切削装置。
【請求項6】
前記回転機構は、前記回転動力伝達軸から伝達された動力を前記カッタに伝える複数の歯車を有し、前記交差方向移動機構による前記カッタの移動に際して前記カッタの移動を許容しつつ各前記歯車が常に噛み合う態様で各前記歯車をリンクによって連結することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の切削装置。
【請求項7】
前記軸方向移動機構は、前記回転機構、前記旋回機構、および前記交差方向移動機構を、前記回転動力伝達軸および前記旋回動力伝達軸の軸方向に沿ってともに移動させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の切削装置。
【請求項8】
前記回転動力伝達軸および前記旋回動力伝達軸を支持するとともに、前記回転機構、前記旋回機構、前記軸方向移動機構および前記交差方向移動機構による前記カッタの移動に伴わない固定部を備え、前記管の内面に対して当接または離隔する態様で前記固定部の外側に出没可能に設けられた拘束機構を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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