説明

切屑除去装置

【課題】加工作業を中断することなく、連続的に自動で、且つ、確実に切屑を除去するようにした切屑除去装置を提供する。
【解決手段】工作機械等の切削加工部11を包囲する囲繞部12と、囲繞部12内部において旋回する空気流を発生させる複数の横側エア吐出部13と、囲繞部12において切削加工部11の下側から上に向かって空気流を発生させる下側エア吐出部14と、囲繞部12の天井に形成された貫通孔12bに対向した吸い込み口15aを備えた吸塵機15と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の切削加工等を行なう加工装置で生ずる切屑を除去するための切削屑除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金型の切削加工を行なう場合には、図5に示すように、作業台1上に設置された型段取定盤2の上面に切削加工すべき金型3を載置して、この金型3に切削加工を行っている。切削加工の際に生ずる切屑4は、作業台1の周囲に落下したものについては、作業台1の下方に設けられたチップコンベア5によって搬送され、バケット6内に収容されて外部に搬出される。
【0003】
また、金型3上或いは型段取定盤2上に散乱した切屑4は、金型3の切削加工終了後又は加工途中で加工を中断して掃除機7を使用して、即ち掃除機7の吸込みノズル7aを金型3及び型段取定盤2上の切屑4に近づけて吸引することで除去される。
【0004】
これに対して、特許文献1には、工作機械の加工部の近くに開口する集塵ダクトを介して吸入口からブロアにより切屑を取り込んで漏斗状のホッパー内に落下させ、このホッパーの下端に設けられた開閉可能な落し口からバケット内に落下させてバケットによって外部に搬出するようにした、集塵機が開示されている。
【特許文献1】特開2003−251123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した掃除機を使用した切屑の除去方法においては、掃除機の吸引力が弱いことから掃除機の吸引ノズルの先端を切屑に近づける必要がある。このため、作業者が切屑を視認しながら除去作業を行う必要があり、このような作業は煩雑で時間がかかると共に、切屑がある程度溜ってきたら加工作業を中断して切屑の除去作業を行なう必要があり、加工作業の効率が低下してしまう。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、加工作業を中断することなく連続的に且つ確実に切屑を除去するようにした切屑自動除去装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の切屑除去装置は、工作機械等の切削加工部を包囲する囲繞部と、囲繞部内部において旋回する空気流を発生させる複数の横側エア吐出部と、カバー内部において切削加工部の下側から上に向かって空気流を発生させる下側エア吐出部と、囲繞部の上端中央に開口する吸い込み口を備えた吸塵機と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
本発明の切削屑除去装置は、好ましくは、吸塵機の吸い込み口から下方に向かって広がる逆漏斗状の上方カバーと、この上方カバーの下方で上方に向かって広がる漏斗状の下方カバーと、下方カバーの下端から側方に向かって斜め下方に延びる樋と、この樋の先端の下方に配置された搬出手段と、を備えている。
【0009】
本発明による切削屑除去装置は、好ましくは下方カバーが上方カバーより外側まで広がっている。
【0010】
本発明の切削屑除去装置は、好ましくは横側エア吐出部が上方でより強い空気流を発生させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下側エア吐出部によって切削加工部の下側から上に向かって空気流が発生すると共に、横側エア吐出部によって切削加工部の周囲を旋回する空気流が発生するので、下方から上方に向かって渦巻き又は竜巻状の空気流が発生する。これにより、工作機械等の切削加工部の切削加工処理によって発生する切屑は、この渦巻き状又は竜巻状の空気流によって切削加工部から捲き上げられて上方に移動し、囲繞部の天井に形成された開口を介して吸塵機の吸い込み口に入り、吸塵機によって吸引されて外部に搬出される。
【0012】
吸塵機の吸い込み口から下方に向かって広がる漏斗状の上方カバーと、この上方カバーの下方で上方に向かって広がる下方カバーと、下方カバーの下端から側方に向かって斜め下方に延びる樋と、この樋の先端の下方に配置された搬出手段と、を備えている場合には、吸塵機の吸い込み口の中心から外れて吸塵機による吸引力より渦巻き状の空気流による遠心力が大きく作用する切屑が、上方カバーに当たって落下しまたは上方カバーに当たらずに落下して、下方カバーで受け止められ、下方カバーの下端から樋に沿って移動してその先端から下方に落下し、搬出手段によって外部に搬出される。
【0013】
下方カバーが上方カバーより外側まで広がっている場合には、上方カバーに当たらずに落下した切屑が確実に下方カバー上に落下するので、切屑が下方カバーから外側に散乱してしまうことがない。
【0014】
横側エア吐出部が上方でより強い空気流を発生させる場合には、下側エア吐出部及び横側エア吐出部によって捲き上げられた切屑が、上方でより強い空気流により発生する負圧によってより一層確実に上方に捲き上げられる。
【0015】
このようにして、本発明によれば、切削加工部の切削加工作業中に発生した切屑が切削加工部に溜らないので、従来のように切削加工を中断して切屑を除去する必要がなく、切削加工作業の作業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る切屑除去装置10を示す図である。切屑除去装置10は、切削加工部11を包囲する囲繞部12と、囲繞部12内に設けられた横側エア吐出部13及び下側エア吐出部14と、囲繞部12の天井12aに形成された貫通孔12bの上方に吸い込み口15aを備えた吸塵機15と、囲繞部12の天井12aの上側で吸い込み口15aを囲うように配置された上方カバー16と、この上方カバー16の下側に配置された下方カバー17と、この下方カバー17に形成された開口17c(後述)から囲繞部12の周縁を越えて延出した樋部18と、この樋部18の先端部の下方に配置された搬出手段19と、から構成されている。
【0017】
切削加工部11は、例えば、金型の切削加工を行なう装置であって切削工具を備えている。この切削加工部11によって切削加工処理が施される金型11aは型段取定盤11bの上面に載置される。なお、型段取定盤11bは作業台11c上に設置されている。
【0018】
囲繞部12は、切削加工部11全体を包囲するよう、4つの側壁12c(図2参照)と、天井12a(図1参照)とから箱状に形成されており、切削加工部11における切削加工処理によって発生する切屑の飛散を抑制する。また、囲繞部12は、例えば図2に示すように手前側に開閉可能なドア12dを一つの側壁12cに備えており、開放時には切削加工部11の金型11aを囲繞部外へ搬出することができ、閉鎖時には囲繞部12内部が気密的に閉鎖される。さらに、囲繞部12は、その天井12aの中央に上方に向かって空気流を排出するための貫通孔12bを備えている。
【0019】
横側エア吐出部13は、図2に示すように、囲繞部12内において四隅に近接した位置に配置されており、図1に示すように、囲繞部12内で垂直方向に延びてその上端が囲繞部12の天井12aの直下に達している。横側エア吐出部13は、図示しない空気供給源に接続されており、図2に図式的に示すように、それぞれ囲繞部12内で水平方向に時計回りの空気流を発生させるよう、即ち、囲繞部12内における垂直な仮想中心軸X(図2参照)の周りで旋回する空気流を発生させるよう、隣接する左側の横側エア吐出部13側へ向けてエア(矢印A)を吐出する。横側エア吐出部13の下端から上端の領域には、図示省略する複数のエア噴出口が一列に並んで形成されている。さらに、横側エア吐出部13は、図1に図式的に示すように、囲繞部12内の上方領域が下方領域より空気流が強くなるように、即ち横側エア吐出部13の下端から上端へいくにしたがって吐出する空気流が強くなるように、構成されている。
【0020】
下側エア吐出部14は、切削加工部11の作業台11cの下方に設けられており、図示しない空気供給源に接続されていて、作業台11cの下側から上方へ空気流を発生させるようにエア(矢印B)を吐出する。
【0021】
吸塵機15は、囲繞部12の外側に配置されており、例えばホース15b等を介してその吸い込み口15aが囲繞部12の天井12aに形成された貫通孔12bに対向して配置されている。
【0022】
上方カバー16は、図3に示すように、吸塵機15の吸い込み口15aの周囲に密着して取り付けられており、吸い込み口15aを中心に外側下方へ斜めに広がるように逆漏斗状に形成されている。この上方カバー16の外径は、囲繞部12の貫通孔12bから飛び出す切屑が実質的に飛散しないように選定されている。
【0023】
下方カバー17は、図3に示すように、囲繞部12の天井12aの上面に取り付けられており、囲繞部12の貫通孔12bに整合する貫通孔17aを中心に外側上方へ向けて斜めに広がるように漏斗状に形成されている。この下方カバー17は、貫通孔17aの周囲に環状の溝部17bを備えていると共に、この溝部17bの一側(図面で左側)に後述する樋部18に繋がる開口17cを備えている。
【0024】
樋部18は、囲繞部12の上面の中央付近から囲繞部外側へ向かって斜め下方に傾斜して延びており、長手方向の両側が側壁としてその間に溝部を形成している。樋部18の内端18aは、下方カバー17の開口17c内に位置していると共に、外端(先端)18bは囲繞部12の周縁を越えて延びている。これにより、下方カバー17の開口17c内に進入した切屑20が樋部18の溝部内に沿って先端18bまで移動することができる。
【0025】
搬出手段19は、図示の場合、チップコンベア19aと、バケット19bとから構成されている。チップコンベア19aは、樋部18の先端から落下する切屑20を受けてバケット19bまで搬送する。バケット19bは、チップコンベア19aによって搬送されその先端から落下する切屑を回収する。
【0026】
本発明の実施形態に係る切屑除去装置10は以上のように構成されており、囲繞部12のドア12dが開放されて、切削加工すべき金型11aが切削加工部11にセットされる。その後、ドア12dが閉じられて横側エア吐出部13及び下側エア吐出部14が作動する。これにより、横側エア吐出部13から矢印Aで示すようにエアが吐出されると共に、下側エア吐出部14から矢印Bで示すようにエアが吐出されることによって、図1及び図2に矢印Cで示すように、上方へ向かって螺旋状に上昇する渦巻き状又は竜巻状の空気流が発生する。
【0027】
この空気流Cは、横側エア吐出部13から吐出されるエアが囲繞部内の上方にいくにつれて強くなることから、上方領域ではその下方領域に比して強く旋回している。従って、切削加工部11で発生する切屑20はこの空気流Cによって切削加工部11から捲き上げられ、螺旋状に上方に移動して囲繞部12の天井12aの中央に形成された貫通孔12bの領域に達する。
【0028】
囲繞部12の貫通孔12bの領域には、吸塵機15の吸い込み口15aによって吸引力が発生している。このため、図3に示すように、切屑20は、吸引力によって吸い込み口15aから吸塵機15へ吸い込まれて回収される。
【0029】
また、囲繞部12の天井12aに形成された貫通孔12bと吸塵機15の吸い込み口15aとの間の空間において、中心より外側の空気流Eは旋回による遠心力が吸塵機15の吸引力より大きくなると、切屑20は吸い込み口15aから吸引されず、矢印で示すように上方カバー16に当たって下方カバー17に落下する。
さらに、外側の空気流Fは、旋回による遠心力が吸塵機15の吸引力より大きく、且つ、この遠心力自体が大きいので、切屑20は吸い込み口15aから吸引されず、さらに上方カバー16にも当たらずに外側に進んだ後、下方カバー17上に落下する。
【0030】
このようにして、下方カバー17上に落下した切屑20は、下方カバー17の上面の傾斜に従って半径方向内側の溝部17b内に集まり、さらに開口17c内に落下する。これにより、開口17c内に落下した切屑20はさらに樋部18を通って進み、その先端部から搬出手段19のチップコンベア19aに落下する。
【0031】
従って、チップコンベア19aに落下した切屑20は、チップコンベア19aによって搬送されてバケット19b内に回収される。なお、バケット19bが切屑20で一杯になったときには、バケット19bが他の場所に運ばれて集積される。その際、バケット19bが新しい空のバケット19bと交換されてもよく、またバケット19bが一台しかない場合には、チップコンベア19aが一時的に停止されるようにしてもよい。
【0032】
このようにして、本発明の切屑除去装置10によれば、切削加工部11で金型11aの切削加工が行なわれ、その際に発生する切屑20は、囲繞部12内で横側エア吐出部13及び下側エア吐出部14からの空気流によって捲き上げられ、一部が吸塵機15に回収され、吸塵機15に吸引されなかった切屑20は上方カバー16及び下方カバー17並びに樋部18を介して搬出手段19に回収される。
【0033】
従って、切削加工部11で切削加工が行なわれているときでも、発生する切屑20は連続的に自動回収されるので、切削加工部11で発生する切屑20を除去するために切削加工部11の切削加工作業を中断する必要がない。よって、切削加工部11における作業効率が向上する。また、手作業で切屑20を除去する必要がないので、煩雑な切屑除去作業から解放される。
【0034】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
例えば、横側エア吐出部13は、囲繞部12内の四隅近傍領域に配置されているが、これに限らず、必要な渦巻き状又は竜巻状の空気流を形成するために、囲繞部12内で任意に配置され得る。
【0035】
また、上述した実施形態においては、搬出手段19は、チップコンベア19a及びバケット19bから構成されているが、これに限らず、樋部18から落下する切屑20を搬送・回収することができれば、任意の構成の搬出手段が使用され得ることは明らかである。
【0036】
さらに、上述した実施形態においては、切削加工部11は、金型11aの切削加工を行なうようになっているが、これに限らず、切屑20が発生するものであれば、任意の種類の工作機械等における切削加工部であってもよい。
【0037】
以上述べたように、本発明によれば、加工作業を中断することなく、連続的に且つ確実に切屑を除去するようにした、極めて優れた切屑自動除去装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る切屑除去装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1の切屑除去装置における囲繞部の天井中央領域を示す部分拡大断面図である。
【図4】図3の囲繞部の天井における中央領域を示す平面図である。
【図5】従来の切屑除去装置の一例の構成を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 切屑除去装置
11 切削加工部
11a 金型
11b 型段取定盤
11c 作業台
12 囲繞部
12a 天井
12b 貫通孔
12c 側壁
12d ドア
13 横側エア吐出部
14 下側エア吐出部
15 吸塵機
15a 口
15b ホース
16 上方カバー
17 下方カバー
17a 貫通孔
17b 溝部
17c 開口
18 樋部
18a 内端
18b 先端
19 搬出手段
19a チップコンベア
19b バケット
20 切屑
X 仮想中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械等の切削加工部を包囲する囲繞部と、
上記囲繞部内部において旋回する空気流を発生させる複数の横側エア吐出部と、
上記切削加工部の下側から上方へ向けて空気流を発生させる下側エア吐出部と、
上記囲繞部の天井部に形成された貫通孔に対向した吸い込み口を備えた吸塵機と、
を備えていることを特徴とする、切屑除去装置。
【請求項2】
前記吸塵機の吸い込み口から下方へ向けて逆漏斗状に広がる上方カバーと、この上方カバーの下方で漏斗状に広がる下方カバーと、上記下方カバーの下端から側方に向かって斜め下方に延びる樋部材と、この樋部材の先端部下方に配置された搬出手段と、を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の切屑除去装置。
【請求項3】
前記下方カバーが前記上方カバーより外側まで広がっていることを特徴とする、請求項2に記載の切屑除去装置。
【請求項4】
前記横側エア吐出部が、囲繞部内における上方領域で下方領域より強い空気流を発生させることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の切屑除去装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−184025(P2009−184025A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23408(P2008−23408)
【出願日】平成20年2月2日(2008.2.2)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】